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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108180
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】弁体監視装置、及び、弁体監視方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 37/00 20060101AFI20230728BHJP
【FI】
F16K37/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009158
(22)【出願日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】山岸 良彰
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 史明
【テーマコード(参考)】
3H065
【Fターム(参考)】
3H065AA02
3H065AA03
3H065BA01
3H065BA07
3H065BC02
3H065CA01
3H065CA07
(57)【要約】
【課題】弁体の挙動を表す物理量の計測に要する消費電力を低減する。
【解決手段】弁体監視装置10は、流体の流量を制御する弁体12の動作開始を検出する第1センサ15と、第1センサ15よりも消費電力が多く、弁体12の挙動を表す物理量を計測する第2センサ16と、第1センサ15により弁体12の動作開始が検出されたことを契機として、第2センサ16に物理量の計測を開始させるコントローラ17と、を備える。コントローラ17は、第2センサ16により物理量が計測されている期間の少なくとも一部において第1センサ15を動作させない。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流量を制御する弁体の動作開始を検出する第1センサと、
前記第1センサよりも消費電力が多く、前記弁体の挙動を表す物理量を計測する第2センサと、
前記第1センサにより前記弁体の動作開始が検出されたことを契機として、前記第2センサに前記物理量の計測を開始させるコントローラと、
を備える弁体監視装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記第2センサにより前記物理量が計測されている期間の少なくとも一部において前記第1センサを動作させない、
請求項1に記載の弁体監視装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記第2センサにより前記物理量が計測されている期間においても前記第1センサの動作を継続させる、
請求項1に記載の弁体監視装置。
【請求項4】
前記第1センサと前記第2センサとの各消費電力は、Q1<(1-α)Q2の関係を有し、
前記関係のうち、αは、前記弁体を備える装置の稼働期間に対する前記第2センサの動作期間の割合であり、Q1は、前記稼働期間における第1センサの消費電力であり、Q2は、前記稼働期間における第2センサの消費電力である、
請求項3に記載の弁体監視装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記第1センサにより前記弁体の動作開始が検出されたか否かに関わらず、前記第2センサに前記物理量の計測を間欠的に行わせる、
請求項1から4のいずれか1項に記載の弁体監視装置。
【請求項6】
前記弁体は、回転することで前記流量を制御する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の弁体監視装置。
【請求項7】
前記弁体は、直線移動することで前記流量を制御する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の弁体監視装置。
【請求項8】
弁体の動作開始を検出する第1センサにより前記弁体の動作開始が検出されたことを契機として、前記第1センサよりも消費電力が多く、前記弁体の挙動を表す物理量を計測する第2センサに前記物理量の計測を開始させる、
弁体監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁体監視装置、及び、弁体監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業プラント及び大型ビルなどの各種の建物では各種の配管を通して流体の送受が行われ、当該送受にはバルブが用いられている。配管にはバルブのみでなく多数の機器・装置が接続されてシステムが構築されるため、1つの機器の故障による悪影響がシステム全体へと波及しかねず、バルブを含む各機器の適切な監視が必要とされている。このような監視のため、特許文献1では、弁体(ここでは、回転弁)の挙動を表す物理量(ここでは、角速度)を半導体式ジャイロセンサで測定し、測定した当該物理量に基づいて弁体の挙動を監視するバルブの状態把握システムが提案されている。この挙動の監視により、弁体及び弁軸の摩耗などの不具合の有無を診断できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/235599号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載のバルブの状態把握システムでは、弁体の挙動を表す物理量を計測するセンサを常時動作させる必要があり、その消費電力が問題となる。特に、工業用のバルブでは、外部電源の確保が難しい場合に電源として電池が利用されることがあり、このような場合、電池寿命を延ばすため、消費電力の低減がより強く望まれる。
【0005】
本発明は、弁体の挙動を表す物理量の計測に要する消費電力を低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る弁体監視装置は、流体の流量を制御する弁体の動作開始を検出する第1センサと、前記第1センサよりも消費電力が多く、前記弁体の挙動を表す物理量を計測する第2センサと、前記第1センサにより前記弁体の動作開始が検出されたことを契機として、前記第2センサに前記物理量の計測を開始させるコントローラと、を備える。
【0007】
前記コントローラは、前記第2センサにより前記物理量が計測されている期間の少なくとも一部において前記第1センサを動作させない、ようにしてもよい。
【0008】
前記コントローラは、前記第2センサにより前記物理量が計測されている期間においても前記第1センサの動作を継続させる、ようにしてもよい。
【0009】
前記第1センサと前記第2センサとの各消費電力は、Q1<(1-α)Q2の関係を有し、前記関係のうち、αは、前記弁体を備える装置の稼働期間に対する前記第2センサの動作期間の割合であり、Q1は、前記稼働期間における第1センサの消費電力であり、Q2は、前記稼働期間における第2センサの消費電力である、ようにしてもよい。
【0010】
前記コントローラは、前記第1センサにより前記弁体の動作開始が検出されたか否かに関わらず、前記第2センサに前記物理量の計測を間欠的に行わせる、ようにしてもよい。
【0011】
前記弁体は、回転することで前記流量を制御する、ようにしてもよい。
【0012】
前前記弁体は、直線移動することで前記流量を制御する、ようにしてもよい。
【0013】
本発明に係る弁体監視方法は、弁体の動作開始を検出する第1センサにより前記弁体の動作開始が検出されたことを契機として、前記第1センサよりも消費電力が多く、前記弁体の挙動を表す物理量を計測する第2センサに前記物理量の計測を開始させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、弁体の挙動を表す物理量の計測に要する消費電力が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る弁体監視装置の概略構成図である。
図2図2は、図1の弁体監視装置のうちの第1センサ及び第2センサの動作制御に係る部分を示すブロック図である。
図3図3は、図1の弁体監視装置における、弁体の開度の時間変換と、第1センサの出力信号及び動作タイミングと、第2センサの出力信号及び動作タイミングと、の関係を示す図である。
図4図4は、第2実施形態に係る弁体監視装置における、弁体の開度の時間変換と、第1センサの出力信号及び動作タイミングと、第2センサの出力信号及び動作タイミングと、の関係を示す図である。
図5図5は、本発明の第3実施形態に係る弁体監視装置の概略構成図である。
図6図6は、第3実施形態に係る弁体監視装置における、弁体の開度の時間変換と、第1センサの出力信号及び動作タイミングと、第2センサの出力信号及び動作タイミングと、の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る弁体監視装置及び弁体監視方法について図面を参照して説明する。
【0017】
[第1実施形態]
図1に示すように、本実施形態に係る弁体監視装置10は、配管90の途中に配置されている。弁体監視装置10は、配管90内を流れる流体の流量を制御する流量制御バルブとして構成されている。弁体監視装置10は、管11と、弁体12と、弁軸13と、アクチュエータ14と、第1センサ15と、第2センサ16と、コントローラ17と、電池18と、を備える。弁体監視装置10は、弁体12の挙動(動き)を表す物理量を測定することで当該挙動を監視する。
【0018】
管11は、配管90に接続されている。弁体12は、管11内に配置されており、回転することで管11を流れる配管90からの流体の流量を制御する回転弁体である。流量の制御により、配管90を流れる流体の流量が制御される。弁体12としては、ボール弁体、又は、バタフライ弁体などが挙げられる。弁体12は、弁軸13に固定されている。弁体12と弁軸13とは一体的に回転する。アクチュエータ14は、弁軸13を回転させることで弁体12を回転させ、これにより、管11を開閉する。
【0019】
第1センサ15は、弁体12の回転開始を検出する。ここでは、第1センサ15は、弁軸13の加速度を電圧信号に変換し、変換後の信号を出力信号として、コントローラ17に出力する。コントローラ17は、出力信号の電圧値が所定の閾値に達した場合、弁体12が回転開始したと判別する。当該閾値に達した出力信号を、弁体12の回転開始を示す検出信号ともいう。第1センサ15は、前記の加速度を前記の検出信号に変換することで弁体12の回転開始を検出する。なお、第1センサ15は、弁軸13の加速度を電圧信号以外の電気信号、例えば、電流信号に変換してもよい。弁軸13は回転する部材であるが、回転運動は当然直線方向の加速度も伴うため、弁体12が静止しているか回転しているか否か、つまり、弁体12の回転開始は、加速度センサでも検出することができる。
【0020】
第1センサ15は、弁体12の回転によりオフ又はオンとなることで、弁体12の回転開始を検出するリミットスイッチなどからなってもよい。第1センサ15は、弁体12と一体的に回転する弁軸13に取り付けられた永久磁石との相対角を検出することで、弁体12の回転開始を検出する磁気センサであってもよい。磁気センサとしては、ホールセンサ、磁気抵抗センサなどが挙げられる。
【0021】
第2センサ16は、弁体12の挙動を表す物理量を計測する。第2センサ16は、弁体12の挙動を表す物理量を電気信号(電圧信号又は電流信号)に変換することにより当該物理量を計測する。第2センサ16は、変換した電気信号を出力信号としてコントローラ17に出力する。物理量は、ここでは、角速度である。第2センサ16は、弁軸13の角速度を計測することで、弁体12の角速度を計測する。第2センサ16は、例えば、ジャイロセンサである。物理量は、弁体12の開度又は弁体12の回転角などの物理量であってもよい。開度又は回転角は、コントローラ17で角速度の算出に使用されてもよい。第2センサ16としてどのセンサが採用されるかは、計測対象としての物理量の種類に応じて適宜決定されればよい。例えば、第2センサ16は、開度又は回転角を計測するセンサである磁気センサ又はロータリエンコーダなどであってもよい。
【0022】
第1センサ15をジャイロセンサとし、第2センサ16を加速度センサとした場合、これらセンサは、パッケージ化されたIMU(Inertial Measurement Unit)チップが備えるセンサにより実現されてもよい。このようなIMUチップとしては、TDK株式会社製のICM-20600を用いることができる。このIMUチップにおけるジャイロセンサ駆動時の消費電流は2.79mAである。他方、加速度センサ駆動時の消費電流は、321μAであり、ジャイロセンサ駆動時の11%程度となっている。このように、第2センサ16の単位時間当たりの消費電力は第1センサ15の単位時間当たりの消費電力よりも大きい。
【0023】
コントローラ17は、アクチュエータ14を制御して弁体12の回転を制御する。コントローラ17は、第1センサ15及び第2センサ16を制御し、第1センサ15及び第2センサ16により弁体12の回転を監視する。コントローラ17は、各種回路により構成される。各種回路には、マイクロコンピュータなどのプロセッサなどが含まれる。コントローラ17の少なくとも一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などの各種論理回路により構成されてもよい。コントローラ17の動作については後述する。
【0024】
電池18は、アクチュエータ14、第1センサ15、第2センサ16、及び、コントローラ17に電力を供給する。
【0025】
図2に示すように、コントローラ17は、第1スイッチ回路17A、第2スイッチ回路17B、タイマ17C、及び、制御回路17Dを備える。
【0026】
第1スイッチ回路17Aは、電池18からの電力の第1センサ15への供給と非供給とを切り替える。第2スイッチ回路17Bは、電池18からの電力の第2センサ16への供給と非供給とを切り替える。タイマ17Cは、制御回路17Dに時間情報を供給する。
【0027】
制御回路17Dは、上位装置80からの弁体12を回転させる指示、例えば、弁体12を全開又は全閉とする指示に基づいて、アクチュエータ14を駆動し、弁体12を回転させる。電池18からの電力は、制御回路17Dを介してアクチュエータ14に供給される。
【0028】
制御回路17Dは、第1スイッチ回路17Aを制御して、電池18からの電力を第1センサ15に供給する又は供給しないことで、第1センサ15を動作させる又は動作させない。同様に、制御回路17Dは、第2スイッチ回路17Bを制御して、電池18からの電力を第2センサ16に供給する又は供給しないことで、第2センサ16を動作させる又は動作させない。このようにして、制御回路17Dは、第1センサ15及び第2センサ16のそれぞれの動作/非動作を制御する。
【0029】
制御回路17Dによる第1センサ15及び第2センサ16の動作/非動作の制御について、弁体12が全閉状態から全開状態となり、その後、再度全閉状態となる場合を例として、図3を参照して説明する。図3の最上段のグラフは、弁体12の回転による開度の時間変化を示す。上から2段目のグラフは、第1センサ15からの出力信号の信号波形を示す。上から3段目のグラフは、第1センサ15の動作(ON)/非動作(OFF)のタイミングチャートである。上から4段目のグラフは、第2センサ16からの出力信号の信号波形を示す。最下段のグラフは、第2センサ16の動作(ON)/非動作(OFF)のタイミングチャートである。
【0030】
制御回路17Dは、弁体12の回転開始の前(タイミングT1以前)において第1センサ15を動作させ、第2センサ16を動作させていない。制御回路17Dは、動作中の第1センサ15からの出力信号を監視し、出力信号の値が所定の閾値を超えたとき、つまり、第1センサ15から弁体12の回転開始を示す検出信号が供給されたときに(タイミングT1)、第1センサ15が弁体12の回転開始を検出したと判別する。当該検出信号は、ここでは、弁体12が全開する方向に回転開始したことを示す。制御回路17Dは、前記の判別を契機として、第1センサ15を非動作とし、第2センサ16の動作を開始させる(タイミングT1)。上からの2段目の第1センサ15からの出力信号の信号波形を示すグラフにおける一点鎖線は、第1センサ15を動作状態としたままと仮定したときの仮想の信号波形である。
【0031】
第2センサ16は、動作開始後、弁体12の挙動を表す物理量(ここでは角速度)を計測し、計測した物理量を制御回路17Dに出力する。制御回路17Dは、第2センサ16からの物理量を監視して弁体12の回転終了を検知する(タイミングT2)。例えば、角速度が0になったときに、回転終了が検知される。制御回路17Dは、この検知を契機として、第2センサ16の動作を終了させて第2センサ16を非動作とし、第1センサ15の動作を開始させる(タイミングT2)。
【0032】
制御回路17Dは、動作中の第1センサ15から、弁体12の回転開始を示す検出信号が供給されたときに(タイミングT3)、第1センサ15が弁体12の回転開始を検出したと判別する。当該検出信号は、ここでは、弁体12が全閉する方向に回転開始したことを示す。制御回路17Dは、前記の判別を契機として、第1センサ15を非動作とし、第2センサ16の動作を開始させる(タイミングT3)。
【0033】
第2センサ16は、動作開始後、弁体12の挙動を表す物理量(ここでは角速度)を計測し、計測した物理量を制御回路17Dに出力する。制御回路17Dは、第2センサ16からの物理量を監視して弁体12の回転終了を検知する(タイミングT4)。制御回路17Dは、この検知を契機とし、第2センサ16を非動作とし、第1センサ15の動作を開始させる(タイミングT4)。
【0034】
制御回路17Dは、タイミングT1~T2、及び、タイミングT3~T4の各期間において、第2センサ16からの出力信号又は当該出力信号が表す物理量を上位装置80に供給する。上位装置80は、供給された出力信号又は物理量つまり弁体12の挙動を監視して、弁体12又は弁軸13の摩耗、詰まり又は固着などの動作不良の有無などを診断する。
【0035】
第1センサ15は、タイミングT1~T2、及び、タイミングT3~T4の各期間において動作しないので、この期間では第1センサ15から電気信号が出力されない。このため、図3では、その出力信号の電圧値が「0」となっている。第2センサ16は、タイミングT1~T2、及び、タイミングT3~T4の各期間以外の期間において動作しないので、この期間では第2センサ16から電気信号が出力されない。このため、図3では、その出力信号の電圧値が「0」となっている)。
【0036】
制御回路17Dは、第2センサ16を予め定められた間隔で間欠的に動作させてもよい。つまり、制御回路17Dは、第1センサ15により弁体12の回転開始が検出されたか否かに関わらず、第2センサ16に弁体12の挙動を表す物理量の計測を間欠的に行わせてもよい。当該計測の間隔は、一定期間でも、非一定期間であってもよい。このような計測は、タイマ17Cからの時間情報に基づいて行われる。制御回路17Dは、第2センサ16を間欠的に動作させる期間中に、第1センサ15を動作させてもよいし、動作させなくてもよい。なお、第1センサ15を動作させることで、第2センサ16の間欠的な動作中でも弁体12の回転開始が検出される。この検出があった場合、制御回路17Dは、第2センサ16を、予め定められた間欠動作の終了タイミングと、弁体12の回転終了の検知タイミングとのうちの遅いタイミングまで動作させるとよい。
【0037】
以上の通り、この実施形態では、コントローラ17が、第1センサ15により弁体12の動作開始(ここでは回転開始)が検出されたことを契機として、第1センサ15よりも消費電力の大きい第2センサ16に弁体12の挙動を表す物理量の計測を開始させる。このような構成により、第2センサ16による弁体12の挙動を表す物理量の計測つまり弁体12の監視を可能としつつ、消費電力の大きい第2センサ16が動作しない期間を設けることができる。従って、その分、弁体12の挙動を表す物理量の計測に要する消費電力が低減される。
【0038】
さらに、この実施形態では、第2センサ16の動作中、第1センサ15が動作していないので、これにより消費電力が低減される。なお、制御回路17Dは、第2センサ16の動作期間のうちの一部期間において、第1センサ15を動作させてもよい。
【0039】
流量制御バルブとしての弁体監視装置10は、その取り付け先により、長時間、弁体12の開度が一定に保たれる場合がある。例えば、弁体12は1日1回のみ開閉するような場合がある。このような場合、第2センサ16を弁体12の動作時のみ動作させるとすると、第2センサ16が長期間動作しない事態が生じる。この実施形態では、制御回路17Dが、第2センサ16を弁体12の動作開始の検出の有無に関わらず間欠的に動作させる。これにより、第2センサ16が長期間動作しない事態の発生が抑制される。
【0040】
ここで、第1センサ15及び第2センサ16をIMUチップ、より具体的にはTDK株式会社製のICM-20600により実現し、第1センサ15つまりジャイロセンサを常時駆動する場合を考える。この場合、電池18を大容量一次電池として知られる容量19Ahの塩化チオニルリチウム電池としたときに、弁体監視装置10の駆動可能時間は単純計算で284日程度となる。実際にはジャイロセンサ以外の要素にも電力が必要であるため、電池交換の周期は284日以下に設定する必要が生じてしまう。他方、第2センサ16であるジャイロセンサの動作と非動作のデューティ比を例えば50パーセントにすることができれば、ジャイロセンサの平均消費電流を50パーセントに抑えることができ、従って、単純計算で電池交換の周期を1年以上とすることができる。ここで、流量制御バルブとしての弁体監視装置10は、弁体12が動作している時間よりも静止している時間の方が長いため、デューティ比を例えば50パーセントにすることは容易に実現される。
【0041】
[第2実施形態]
第2実施形態では、図4に示すように、コントローラ17(制御回路17D)は、第2センサ16により弁体12の動作の状態が計測されている期間においても第1センサ15の動作を継続させる。このような場合、例えば、第1スイッチ回路17Aが省略されてもよい。
【0042】
本実施形態では、第1センサ15と第2センサ16との各消費電力が、以下の数式1の関係を有する。
Q2>αQ2+Q1、つまり、Q1<(1-α)Q2・・・(数式1)
ここで、αは、弁体監視装置10の稼働期間に対する、弁体12が動作する期間つまり第2センサ16の動作期間(過渡状態時間)の割合(過渡状態時間率)である。Q1は、前記の稼働期間における第1センサ15の消費電力であり、Q2は、前記の稼働期間における第2センサ16の消費電力である。
【0043】
本実施形態は、第1実施形態に比べて、第1センサ15が起動している時間が長くなるため弁体監視装置10全体の消費電力は大きくなるが、弁体12の動作中も第1センサ15が起動している。これにより、コントローラ17(制御回路17D)は、第1センサ15及び第2センサ16からの各出力信号(電圧値など)に基づいて、弁体12の挙動などに関する情報をより多く取得できる。第1センサ15が加速度センサであれば、第2センサ16が計測した角速度では求めることができない、弁体12の回転の加速度のピーク位置が取得される。なお、コントローラ17が上位装置80に第1センサ15及び第2センサ16からの各出力信号(電圧値など)を送信し、上位装置80側で、当該各出力信号に基づく、弁体12の監視などが行われてもよい。また、第1センサ15及び第2センサ16が同時に動いて同時に同じ弁体12についての計測を行うことで、コントローラ17又は上位装置80は、第1センサ15及び第2センサ16それぞれからの出力信号に基づいて、第1センサ15及び第2センサ16相互の正常性を確認できる。
【0044】
第1実施形態と同様、コントローラ17(制御回路17D)は、第2センサ16を間欠的に動作させてもよい。このような場合は、第1センサ15と第2センサ16との各消費電力は、以下の数式2の関係を有するとよい。
Q2>(α+β)Q2+Q1、つまり、Q1<(1-α―β)Q2・・・(数式2)
ここで、Q1,Q2及びαは、上記数式1と同じである。βは、弁体監視装置10の稼働期間に対する、上記過渡状態時間以外の、上記間欠的に弁体12を動作させる期間つまり第2センサ16の動作期間の割合である。
【0045】
本実施形態でも、消費電力の大きい第2センサ16が動作しない期間を設けることができる。従って、消費電力が低減される。
【0046】
[第3実施形態]
本実施形態に係る弁体監視装置110は、図5に示すように、弁体12の代わりに、直線状に動作する弁軸113により直線移動することで管11の開閉を切り替える直動弁である弁体112を有する。弁体監視装置110は、アクチュエータ14の代わりに、弁体112を直線状に移動させるアクチュエータ114を備える。この場合、第1センサ15の代わりに、弁体112が全閉位置及び全開位置にあるときの弁軸113の位置をそれぞれ検出する一対のリードスイッチ又は一対のリミットスイッチなどの一対の機械式スイッチからなる第1センサ15が採用されるとよい。一対の機械式スイッチのうちの一方は、弁体112が全閉位置に位置するときにのみONとなり、他方は、弁体112が全開位置に位置するときにのみONとなる。前記一方を、全閉側スイッチともいう。前記他方を全開側スイッチともいう。第2センサ16としては、弁軸113の挙動を表す物理量を計測する加速度センサ又は変位センサが採用されてもよい。挙動を監視する監視対象の弁体は、どのような弁体でもよい。第3実施形態の他の構成については、第1又は第2実施形態に準じる。
【0047】
図6に、第1センサ15として一対の機械式スイッチが採用され、第2センサ16として加速度センサが採用された場合の出力信号波形などを示す。一対の機械式スイッチのいずれもONでない時間帯(OFFの時間帯)は直動弁の動作中(中間開度)の期間であり、制御回路17Dは、この期間中に第2センサ16を動作させる。制御回路17Dは、一対の機械式スイッチのうちの一方(全閉側スイッチ又は全開側スイッチ)がONからOFFとなったときに第2センサ16に動作(つまり弁体12の挙動を表す物理量の計測)を開始させる。制御回路17Dは、他方(全開側スイッチ又は全閉側スイッチ)がONとなったときに第2センサ16を非動作とする。制御回路17Dは、第1実施形態などと同様に第2センサ16を間欠的に動作させて、第2センサ16に物理量の計測を間欠的に行わせてもよい。
【0048】
本実施形態でも、第1センサ15に比べ消費電力の大きい第2センサ16が動作しない期間を設けることができる。従って、消費電力が低減される。
【0049】
[変形例]
弁体監視装置10及び110の構成は、適宜変更可能である。弁体監視装置10は、上記部品11~18のうち、第1センサ15、第2センサ16、及び、コントローラ17(特に、第1スイッチ回路17A、第2スイッチ回路17B、及び、制御回路17Dを構成する部分)のみを備えてもよい。つまり、弁体監視装置10は、各種の弁体を備えるバルブに外付けされてもよい。このようなことは、弁体監視装置110についてもいえる。
【0050】
[本発明の範囲]
以上、実施形態及び変形例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態及び変形例に限定されるものではない。例えば、本発明には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る、上記実施形態及び変形例に対する様々な変更が含まれる。上記実施形態及び変形例に挙げた各構成は、矛盾の無い範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0051】
10…弁体監視装置、11…部品、11…管、12…弁体、13…弁軸、14…アクチュエータ、15…第1センサ、16…第2センサ、17…コントローラ、17A…第1スイッチ回路、17B…第2スイッチ回路、17C…タイマ、17D…制御回路、18…電池、80…上位装置、90…配管、110…弁体監視装置、112…弁体、113…弁軸、114…アクチュエータ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6