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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108188
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】鼻用の外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/06 20060101AFI20230728BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20230728BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20230728BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20230728BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
A61K9/06
A61K47/06
A61K47/24
A61K47/46
A61P11/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009171
(22)【出願日】2022-01-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】521556831
【氏名又は名称】株式会社オフィスシステムサービス
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】野口 秀成
【テーマコード(参考)】
4C076
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076BB25
4C076CC10
4C076DD34
4C076DD63G
4C076DD63P
4C076EE58T
4C076FF17
4C076FF35
(57)【要約】
【課題】外鼻孔周辺に塗布することで、鼻の不快感の解消や抑制、アレルギーの原因となる物質の侵入を防止することができる外用剤を提供する。
【解決手段】ワセリン90~99質量%と、レシチン0.5~5質量%と、を含む、鼻用の外用剤。さらに、ハーブエッセンス0.1~2.0質量%とを含むものとすることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワセリン90~99質量%と、
レシチン0.5~5質量%と、を含む、鼻用の外用剤。
【請求項2】
さらに、ハーブエッセンス0.1~2.0質量%とを含む、請求項1に記載の外用剤。
【請求項3】
前記ワセリンと、前記レシチンと、前記ハーブエッセンスとからなる、請求項2に記載の外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鼻用の外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
日本では全国民の4人に1人が通年性鼻炎や、スギ花粉症と推計されており、近年その若年化も課題となっている。一方で、セルフメディケーションの普及等の影響や、体質と諦める人も多く医療機関への受診は進んでいない。
【0003】
アレルギー性鼻炎は、原因物質(アレルゲン)によって体内に生成されるヒスタミンによりアレルギー症状が起きる。このヒスタミンが起こす症状を抑えることがアレルギー性鼻炎の治療にも有効と考えられている。
【0004】
一般的に用いられている内服薬としては、アレルギー反応を起こす刺激物質を抑える抗アレルギー薬と抗ロイコトリエ薬などが知られている。抗アレルギー薬は、ヒスタミンの発生と放出を抑えることにより主にくしゃみや鼻汁の軽減が期待できる比較的即効性がある薬である。
【0005】
作用の強い薬は脳の覚醒を維持するヒスタミン受容体にも同時に作用し眠気を起こす場合がある。一方、抗ロイコトリエン薬は鼻粘膜にあるロイコトリエン受容体に作用することで鼻閉に効果を示し、即効性は低いが、眠気が生じにくい。
【0006】
中等症以上では鼻粘膜の炎症を抑える鼻噴霧用ステロイド剤も使用されている。ステロイドは副腎で作られるホルモンであり、強い抗炎症効果がある。鼻噴霧用ステロイド薬でのステロイドは副作用の恐れは低い。これらの他の市販薬としても、様々な内服薬や、鼻腔内スプレーなどが販売されているが、副作用の恐れもある。舌下免疫療法なども検討されているが費用も高く、効果が出るまで1年程度の長期間がかかる。
【0007】
特許文献1は、フェキソフェナジン塩酸塩の抗アレルギー作用を増強して、湿疹、蕁麻疹などの皮膚炎、くしゃみ、鼻汁などの鼻炎の予防及び/又は治療効果を向上する医薬組成物を提供するものであり、フェキソフェナジン塩酸塩と、ビタミンB2及び/又はビタミンCを含有する、抗ヒスタミン剤組成物を開示している。
【0008】
特許文献2は、アレルギー治療効果に優れた外用剤の提供するものであり、(A)ケトチフェン及びこれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される1以上の成分と、(B)糖類及び無機塩類からなる群より選択される1以上の成分とを組み合わせてなる、眼科用剤又は点鼻剤であるアレルギー性疾患治療用、水性外用液剤を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013-129652号公報
【特許文献2】特開2019-70026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
アレルギー性鼻炎は潜在的な患者も含めて患者が多い。このため、その対策として用いるものも、前述の文献や技術のみでなく、需要者に応じたより多くの選択肢が求められている。
【0011】
アレルギー性鼻炎の症状は、鼻周辺の不快感などもある。また、花粉や、PM2.5、ハウスダスト、ウイルス、ダニの屍骸などの微粒子が鼻腔内に侵入し付着することで生じる。
【0012】
本願は、鼻の不快感の解消や抑制、アレルギーの原因となる物質の侵入を防止するための外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
【0014】
<1>ワセリン90~99質量%と、レシチン0.5~5質量%と、を含む、鼻用の外用剤。
<2>さらに、ハーブエッセンス0.1~2.0質量%とを含む、前記の外用剤。
<3>前記ワセリンと、前記レシチンと、前記ハーブエッセンスとからなる、前記の外用剤。
【発明の効果】
【0015】
本発明の外用剤を外鼻孔周辺に塗布することで、鼻の不快感の解消や抑制、アレルギーの原因となる物質の侵入を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
【0017】
[本発明の外用剤]
本発明の外用剤は、ワセリン90~99質量%と、レシチン0.5~5質量%と、を含む、鼻用の外用剤である。本願発明の外用剤を外鼻孔周辺に塗布することで、鼻の不快感の解消や抑制、アレルギーの原因となる物質の侵入を防止することができる。
【0018】
本発明の外用剤は、ワセリンを主たる成分として、レシチンを含むものである。ワセリン単独で用いると流動性が高すぎて、外鼻孔や鼻腔周辺に十分に留まらずに、効果が継続しない。本発明者は、ワセリンにさらにレシチンを混合することを考えた。レシチンは食用にも用いられており、安全性が高い。このレシチンを混合したジェル状とすると、鼻腔周辺で留まりやすくなり、長時間安定して効果が得られ、アレルギー性鼻炎などを従来よりも気にせずに生活できるものとなることを見出した。
【0019】
[ワセリン]
本発明の外用剤はワセリンを含む。ワセリンは、医療用などに相当する白色ワセリンを用いることができる。本発明の外用剤は、ワセリンを主たる成分として含む。本発明の外用剤のワセリン濃度は、90~99質量%である。ワセリン濃度の下限は、92質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、97質量%以上がさらに好ましい。また、ワセリン濃度の上限は、98質量%以下としてもよい。ワセリンは、外鼻孔や鼻腔内、鼻下などに存在することで膜を張り、水分の蒸発を抑えたり、アレルゲンの侵入などを防止することができる。
【0020】
[レシチン]
本発明の外用剤はレシチンを含む。レシチンは、グリセロリン脂質の一種である。レシチンは、加工食品用や、化粧品用、医薬品(部外品)用のものなどを用いることができる。レシチンは、大豆リン脂質を用いることが好ましい。特に、水素添加大豆リン脂質を用いることが好ましい。本発明の外用剤は、レシチンを含む。本発明の外用剤のレシチン濃度は、0.5~5質量%である。レシチン濃度の下限は、0.8質量%以上や、1.0質量%以上とすることができる。レシチン濃度の上限は、3質量%以下や、2質量%以下、1.5質量%以下とすることができる。レシチンを含むことで、ジェル状の外用剤が、外鼻孔や鼻腔周辺等に長時間とどまり効果を継続して得ることができる。
【0021】
[ハーブエッセンス]
本発明の外用剤は、さらに、ハーブエッセンスを含むものとすることができる。ワセリンやレシチンは刺激がほぼない、いわゆる無臭の成分である。このため、即効性の効果や、塗布部分を体感しにくい場合がある。このため、ワセリンやレシチンに加えて他の成分を含んでもよい。このような成分としてハーブエッセンスを含むことが好ましい。ハーブエッセンス濃度は、0.1~2.0質量%を含むものとすることができる。ハーブエッセンス濃度の下限は、0.3質量%以上や、0.5質量%以上とすることができる。ハーブエッセンス濃度の上限は、1.5質量%以下や、1.2質量%以下、1.0質量%以下とすることができる。ハーブエッセンスは、このような濃度のとき、微香性で長時間の使用にも適している。
【0022】
[外用剤]
本発明の外用剤は、外用で塗布して用いられる。本発明の外用剤は、前述したような濃度で調製されたものであり、ジェル状である。本発明の外用剤は、外鼻孔や鼻腔内、鼻下などの、鼻炎の症状が生じやすい患部やその原因となる部分に塗布して用いる。塗布量は、季節や症状、体調などに応じて、適宜調整できるが、例えば、数g弱程度の量を指や布、紙、綿棒等にとり、外鼻孔や鼻腔周辺に直接塗布して用いることができる。特に鼻腔内粘膜が、アレルゲンの侵入や、アレルゲンへの抵抗の直接の場所となるため漏れがないように十分に広げて塗布することが好ましい。
【0023】
本発明の外用剤は、外鼻孔周辺に塗布することで、鼻の不快感の解消や抑制、アレルギーの原因となる物質の侵入を防止するものである。本発明の外用剤が有効なアレルギーとしては、例えば、アレルギー性鼻炎、花粉症、アトピー性皮膚炎等の鼻周辺が原因や患部となる疾患などが挙げられる。すなわち、本発明の外用剤は、抗アレルギー用とすることができる。本発明の外用剤は、アレルギーによる症状の緩和や、予防のために用いるものとすることができる。
【0024】
アレルギー性鼻炎などは、鼻閉、鼻漏などもあり、これらを抑えることで、稔鼻回数も減少し、使用者の不快感が減る。よって、本発明の外用剤により、鼻炎などの症状が抑えられ、生活の質(QOL: quality of life)を向上することにも寄与することができる。
【0025】
本発明の外用剤は、ワセリンと、レシチンと、ハーブエッセンスとから実質的になる外用剤であることが好ましい。ワセリンや、レシチン、ハーブエッセンスはいずれも副作用が少なく、これらの成分からなるものであれば、長期間の使用にも適している。このような観点から、本発明の外用剤は、ワセリン、レシチン、およびハーブエッセンスの総量が占める割合が、98質量%以上であることが好ましく、99質量%以上や、99.5質量%以上、99.8質量%以上、99.9質量%以上とすることができ、他の成分を含まない100質量%とすることができる。なお、その他の成分としては、製造上含まれる不可避的な不純物などがあげられる。
【実施例0026】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0027】
[試薬等]
・ワセリン:クローダジャパン株式会社「クロラータムV(登録商標)」
・レシチン:辻製油株式会社「SLP-ホワイトH」(水素添加大豆リン脂質、粉末状、化粧品・医薬品(部外品)用の仕様)
・ハーブエッセンス:テイアンドエム株式会社社製「ハーブエッセンス」(食品香料・食品添加物・アレルギー物質なし)
【0028】
[実施例1]
・ワセリン:97.2質量%、レシチン2.0質量%、ハーブエッセンス:0.8質量%を混合して、ジェル状の外用剤(1)を調製した。
【0029】
外用剤(1)を、アレルギー性鼻炎を有する被験者(70代、男性)が、1年間使用した。使用時に、あずき粒大程度を取出して外鼻孔周辺や、鼻腔内、鼻下周辺に塗布した。指先で塗布し、ティッシュペーパーなどで鼻をつまみ鼻腔全体に拡げた。塗布頻度は、季節や体調にもよるが、1回/日以上で、アレルギー原因が多い場合や、鼻汁を拭き取って鼻腔内等の残存量が低下しているときは、適宜、2~3時間置きに塗布した。
【0030】
外用剤(1)を使用している間、鼻炎アレルギーの症状を予防することができ、症状が抑制できた。なお、この外用剤(1)は、アレルギー物質を一切使用しないため、副作用が極めて少なく幼児から老人まで使用が可能で多くの人に、そのメリットを提供することができる。
【0031】
[比較例]
外用剤(1)のレシチンを含まず、レシチン量をワセリンに置き換えて調整した外用剤(a)を使用した。この外用剤(a)は、流動性が高く、塗布直後に多少の鼻のかゆみを抑える効果はあったが、効果が継続せず、頻繁に塗布する必要があった。
【0032】
外用剤(1)のハーブエッセンスを含まずに、ハーブエッセンス量をメンソールに置き換えて調整した外用剤(b)を使用した。鼻のかゆみを抑える効果はあったが、メンソールの刺激が強く、継続して使用することを忌避するものであった。
【0033】
実施例1に係る検討経緯をより詳しく説明する。被験者は、70歳代・男性で、35年前突然アレルギー性鼻炎を発症した者である。当初はくしゃみ、鼻水、鼻詰まり程度だったが、症状が悪化したため、耳鼻科、耳鼻咽喉科、内科のいろいろな病院を受診しアレルギーの原因が、スギ花粉・ヒノキ花粉・ハウスダスト等であった。
【0034】
当初は病院で処方される内服薬や点鼻薬・鼻腔洗浄などを行っていたが、1次的には症状が緩和されるが、十分に継続しなかった。市販の鼻炎スプレーも4種類使用したがアレルギー発作が出たときに短時間は症状の緩和ができるが、すぐに症状が繰り返していた。
【0035】
近年は、5年前より内科で処方された漢方薬の小青竜湯を服用していた。これは1回につき6錠の服用で、症状が軽い時は症状の緩和ができるが、症状が悪化すると倍の12錠を服用しないと緩和できなかった。その旨を、医者に確認したところ、使用量は守ることを指示されていた。一方で、症状が悪化しているときは6錠では効かず、継続して12錠を服用していた。
【0036】
そこで、主な患部であり症状の原因ともなる鼻腔内にクリームを塗布することで症状を緩和することを考えた。塗布するものとして、ワセリンを検討したがが、幾つかの問題点が出てきた。1つは塗布する量、1つは効果を保てる時間、1つは副作用である。
【0037】
これらの問題点にたいして、効果を長く保ち、安全性も考慮し、様々な物質の配合を検討した結果、粉末のレシチンを数%配合することが有効であることが判明した。1回の使用量については、あずき粒大が最適であることが判明した。
【0038】
また、塗布した時の爽快感を得るために、薄荷や、メントール、ミント、ハーブエッセンスを数%で比率を検討して配合して試用した結果、他の成分は刺激が強すぎる場合が多く、ハーブエッセンスが安全性、鼻腔への刺激等で最適であることを見出して、実施例(1)の組成の外用剤を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、外用剤として利用することができ、産業上有用である。
【手続補正書】
【提出日】2022-04-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワセリン95~99質量%と、
レシチン0.5~質量%と、
ハーブエッセンス0.1~2.0質量%と、からなる鼻用の外用剤。