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  • 特開-ガス吹き込みプラグ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108191
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】ガス吹き込みプラグ
(51)【国際特許分類】
   C21C 7/072 20060101AFI20230728BHJP
   C21C 5/48 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
C21C7/072 J
C21C5/48 D
C21C7/072 P
C21C5/48 C
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009175
(22)【出願日】2022-01-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001971
【氏名又は名称】品川リフラクトリーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083172
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 豊明
(72)【発明者】
【氏名】古川 哲也
【テーマコード(参考)】
4K013
4K070
【Fターム(参考)】
4K013CA21
4K013CA23
4K013CF13
4K013CF19
4K070CG04
4K070CG10
(57)【要約】
【課題】プラグ交換時に耐火物の一部が残存することなく取り外し可能で、交換作業をスムーズに行うことができるガス吹き込みプラグ。
【解決手段】通気性耐火物の外側をメタルケースで被覆し、さらにその外側をキャスタブル耐火物で被覆したガス吹き込みプラグであって、前記メタルケースから径方向外向きに補強部材が突設され、前記補強部材は前記メタルケースの周方向に延設され二点以上で固定され、固定部を除き前記メタルケースから離隔し、ガス吹き込みプラグ軸長方向の下部1/3の範囲に配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性耐火物の外側をメタルケースで被覆し、さらにその外側をキャスタブル耐火物で被覆したガス吹き込みプラグであって、
前記メタルケースから径方向外向きに突設された補強部材が配設され、
前記補強部材は、前記メタルケースの周方向に延設され二点以上で固定され、
固定部を除き前記メタルケースから離隔し、
本体の軸長方向の下部1/3の範囲に配置されている
ことを特徴とするガス吹き込みプラグ。
【請求項2】
通気性耐火物の外側をキャスタブル耐火物で被覆し、さらにその外側をメタルケースで被覆したガス吹き込みプラグであって、
前記メタルケースから径方向内向きに突設された補強部材が配設され、
前記補強部材は前記メタルケースの周方向に延設されるとともに、前記メタルケースの二点以上で固定され、
固定部を除き前記メタルケースから離隔しており、
本体の軸長方向の下部1/3の範囲に配置されている、
ことを特徴とするガス吹き込みプラグ。
【請求項3】
前記補強部材は、板状、棒状または波形状である請求項1または2のガス吹き込みプラグ。
【請求項4】
前記補強部材は周方向に2個以上配置されている請求項3のガス吹き込みプラグ。
【請求項5】
前記補強部材は、本体の軸長方向に段違いで2個以上配置されている請求項3~4のいずれかに記載のガス吹き込みプラグ。
【請求項6】
前記補強部材は2点以上で前記メタルケースに溶接され、溶接部分は上下互い違いとした請求項3~5のいずれかに記載のガス吹き込みプラグ。
【請求項7】
前記補強部材と前記メタルケースの離隔距離は3mm以上である請求項3~6のいずれかに記載のガス吹き込みプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属容器に設置されるガス吹き込みプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
精錬効率の向上を目的として、取鍋等の溶融金属容器にガス吹き込みプラグが設置される。ガス吹き込みプラグはポーラス体やスリットを形成した通気性を有する耐火物を非通気性のキャスタブル耐火物で被覆し、更にその周囲をメタルケースで補強した構成のものがある。また、引用文献1に開示するように、通気性を有する耐火物をメタルケースで被覆し、更にその周囲を非通気性のキャスタブル耐火物で被覆した構成のものもある。さらにはガス吹き込みプラグと周辺の羽口れんがを一体化したものなどがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-3931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガス吹き込みプラグが損耗すると、損耗したプラグを溶融金属容器から引き抜き新しいプラグに交換する。その際、通気性を有する耐火物が周囲の非通気性耐火物から肌分れして外れ、周囲の非通気性耐火物が溶融金属容器に残存することがある。その場合は残存した非通気性耐火物を除去するため非常に時間がかかる問題がある。
【0005】
特許文献1は、前記したように、プラグ本体の通気性耐火物の外周面を鉄皮で被覆し、当該鉄皮の外周面に一体的に固定された補強部材から構成される溶湯用吹込みポーラスプラグを開示する。
【0006】
しかしながら、前記補強部材は鉄皮の外周面に沿って上下方向に延設されたものであり、プラグ交換の際に、前記キャスタブル層を外層と内層に縁切りすることになる。このため、ガス吹き込みプラグを交換するときに、前記内層と外層に肌分れが生じ、外層側のキャスタブルが溶融金属容器側に残存する現象が発生することがある。
【0007】
特に、稼働面に近い側(溶湯に近い側)では、前記補強部材の損耗が激しいところから、前記のこの現象が発生しやすい。そこで、前記キャスタブル層の単位体積あたりの補強部材の密度は、溶湯に近い側が溶湯に遠い側よりも大きく設定している(請求項2)。しかしながら、部位によって補強部材の密度を異なる構成とする工程は煩雑である。さらには稼働面に近い側は温度が高く金属製の補強部材の強度は低下する。そのため依然として前記肌分れが生じることになる。
【0008】
すなわち、特許文献1に記載の内容では従来からの課題が依然として解決されないことになる。
【0009】
本発明は上記従来の事情に鑑みて提案されたものであって、耐火物の一部が溶融金属側に残存することなく取り外し可能で、交換作業をスムーズに行うことができるガス吹き込みプラグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、通気性耐火物の外側をメタルケースで被覆し、さらにその外側をキャスタブル耐火物で被覆したガス吹き込みプラグを対象とする。
【0011】
補強部材が前記メタルケースから径方向外向きに突設されて配設される。前記補強部材は、前記メタルケースの周方向に延設され二点以上で固定され、固定部を除き前記メタルケースから所定距離離隔し、本体の軸長方向の下部1/3の範囲に配置される。
【0012】
前記補強部材は、板状、棒状または波形状のいずれであってもよい。波形状とすれば、キャスタブル耐火物とのなじみが良くなり補強効果がより向上する。また、前記補強部材は周方向に2個以上配置されてもよい。このような構成を有することによって補強効果がより向上する。この場合、補強部材は本体の軸長方向に段違いで2個以上配置されても良い。さらには、前記補強部材は2点以上で前記メタルケースに溶接され、溶接部分は上下互い違いとしても良い。このような構成を有することによって補強部材の変形を抑制でき補強効果がより向上する。
【0013】
本発明は、通気性耐火物の外側をキャスタブル耐火物で被覆し、さらにその外側をメタルケースで被覆したガス吹き込みプラグを対象とすることもできる。この場合は、前記補強部材は、前記メタルケースから径方向内向きに突設されることになる。
【発明の効果】
【0014】
プラグ交換時に耐火物の一部が溶融金属容器側に残存することなく取り外し可能で、交換作業をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態の一例を示す斜視図である。
図2図1の補強部材を示すA-A‘断面図である。
図3】本発明の実施形態の他の一例を示す斜視図である。
図4図3の補強部材を示すB-B‘断面図である。
図5】補強部材の他の一例を示す図である。
図6】補強部材の設置位置と溶接部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施の形態1>
図1は本発明の1実施形態を示す斜視図であり、図2図1のA-A’断面図である。
【0017】
ガス吹き込みプラグは、中央部の通気性耐火物1の外側をメタルケース2で被覆し、さらにその外側をキャスタブル耐火物で被覆した構造を有する。
【0018】
前記通気性耐火物1はポーラス質耐火物、スリットを有する耐火物、多細管を有する耐火物等を用いる。前記メタルケース2を通気性耐火物1に被覆するについては、例えば、プレス機で通気性耐火物1をメタルケース2に押し込む方法が採用される。
【0019】
また通気性耐火物1とメタルケース2はモルタル等(図示せず)の接着剤を使用して接着しても良いし、焼き嵌め等によることもできる。
【0020】
図2に示すように、前記通気性耐火物1にメタルケース2が固定された状態で、当該メタルケース2の径方向外側に補強部材4が溶接等で固定される。
【0021】
プラグ引き抜き時にキャスタブル耐火物3の引き抜き方向への追従性を向上させ、補強部材4にかかる荷重が均等になるよう、前記補強部材4の取り付け位置をプラグの軸方向から見た時に対称の位置に設置すると好ましい。
【0022】
図2において、メタルケース2の外周に3点の固定点を介して左右に周方向に1/4の長さの線状の補強部材4が形成されている。前記補強部材4は、メタルケース2から所定距離(例えば3mm以上)離れた位置に配置され、これによって、この後に充填するキャスタブル耐火物の充填性が向上し、強度を高めることができる。
【0023】
前記において、補強部材4の形状は特に限定されないが板状、棒状または波形状などを使用することができる。また、図6に示すように、波形状体を使用することができる。この場合、前記固定点として、波形状の底部を利用することができる。
【0024】
溶融金属が高温であるところから、稼働面(溶融金属と接する面)に近い位置に補強部材4を設置すると、当該補強部材4の損耗が激しくなる。そこで、補強部材4の健全性を維持する必要上、補強部材4は、ガス吹き込みプラグの本体の軸方向の下部1/3の範囲に配置することが好ましい。
【0025】
補強部材4の個数は特に限定されることはなく、メタルケース2の全周に渡ってもよいし、図示のように、途中で分割して2個以上としても良い。2個以上とする場合は、軸方向に段違いで配置しても良い。また、メタルケース2の一周を超えてスパイラル形状に配置しても良い。これらのバリエーションを採用すれば、補強部材4がキャスタブル耐火物3と一体化しやすく、強度が高まるので好ましい。
【0026】
当該補強部材4は2点以上好ましくは3点以上でメタルケース2に固定することが好ましい。固定点は一般的な溶接とすることができる。
【0027】
ガス吹き込みプラグは、引き抜くときには、引き抜き方向に力が働くとともに、溶融金属容器からの引っ張り力を受ける。そこで、図6に示すように、前記複数の固定点(溶接部)7は、水平方向に見た場合、補強部材4の上下互い違いにするのが好ましい。これによって、プラグの引き抜き方向、および溶融金属容器からの引っ張り力に対する補強部材4の固定強度を確保できることになる。
【0028】
前記のようにして補強部材4を取り付けたメタルケース2付きの通気性耐火物1を構成し、当該メタルケース2付き通気性耐火物1を枠(図示せず)にセットし、外周にキャスタブル耐火物3を流し込む。
【0029】
キャスタブル耐火物3は使用条件に応じて適宜材質を選択でき、例えばアルミナ質、アルミナ・スピネル質、アルミナ・マグネシア質、マグネシア質、スピネル質などを用いることができる。キャスタブル耐火物3が硬化すれば脱枠し、その後乾燥する。
【0030】
最後にメタルケース2下部にガス導入管6付きの底板5を溶接して本発明のガス吹き込みプラグが完成する。
【0031】
<実施の形態2>
図3は、上記とは別のタイプのガス吹き込みプラグに本発明を適用した例を示す斜視図であり、図4図3のB-B‘断面図である。
【0032】
通気性耐耐火物1をキャスタブル耐耐火物3で被覆し、更にその外側をメタルケースで被覆した構成である。
【0033】
この場合、メタルケース2の内側に前記補強部材4の固定がなされる。このメタルケース2を枠として、キャスタブル耐火物3が通気性耐火物1とメタルケース2との間に流し込まれ、その後にガス導入管6を取り付けた低板5が溶接されることになる。
【0034】
補強部材の形状、固定箇所数、配置位置等は、前記図1の場合と同様である。
【符号の説明】
【0035】
1 通気性耐火物
2 メタルケース
3 キャスタブル耐火物
4 補強部材
5 底板
6 ガス導入管
7 固定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6