(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108199
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】床版打替構造および床版打替方法
(51)【国際特許分類】
E01D 22/00 20060101AFI20230728BHJP
E01D 19/12 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
E01D22/00 A
E01D19/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009188
(22)【出願日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390002185
【氏名又は名称】大成ロテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 理
(72)【発明者】
【氏名】越川 喜孝
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA14
2D059GG02
2D059GG39
2D059GG55
(57)【要約】
【課題】既設床版上に施工した打替部の施工目地部における目開きを抑制し、構造上の弱点となることを防ぐことを可能とした、床版打替構造および床版上打替工法を提案する。
【解決手段】既設床版2の上面に形成された先行打替層3と、端面41を先行打替層3の端面31と突き合せた状態で既設床版2の上面に形成された後行打替層4と、先行打替層3と後行打替層4とに跨って設けられた補強材5とを備える床版打替構造1。先行打替層3の端面31には、下側が後行打替層4側に突出する段差が形成されている。また、後行打替層4の端面41は、先行打替層3の端面31に形成された段差と係合するように上側が先行打替層3側に突出している。さらに、補強材5は、既設床版2の上面と平行な格子状の面材である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設床版の上面に形成された先行打替層と、
端面を前記先行打替層の端面と突き合せた状態で前記既設床版の上面に形成された後行打替層と、
前記先行打替層と前記後行打替層とに跨って設けられた補強材と、を備える床版打替構造であって、
前記先行打替層の端面には、下側が前記後行打替層側に突出する段差が形成されており、
前記後行打替層の端面は、前記先行打替層の端面に形成された段差と係合するように上側が前記先行打替層側に突出していて、
前記補強材は、前記既設床版の上面と平行な格子状の面材であることを特徴とする、床版打替構造。
【請求項2】
前記先行打替層および前記後行打替層が、繊維補強コンクリート製または繊維補強モルタル製であることを特徴とする、請求項1に記載の床版打替構造。
【請求項3】
前記補強材が炭素繊維強化プラスチック材またはアラミド繊維強化プラスチック材からなることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の床版打替構造。
【請求項4】
既設床版の上面コンクリートを除去する除去工程と、
前記既設床版の上に型枠を設置する型枠設置工程と、
前記型枠の一方側に打替コンクリートを打設して先行打替層を形成する第一打設工程と、
前記型枠を撤去する型枠撤去工程と、
前記先行打替層の他方側に打替コンクリートを打設して後行打替層を形成する第二打設工程と、を備える床版打替方法であって、
前記型枠は、前記除去工程後の前記既設床版の上面に載置される第一型枠と、前記第一型枠の上方に載置される第二型枠とを有し、
前記第二型枠の一方側の端面は、前記第一型枠の一方側の端面よりも一方側に突出しており、
前記型枠設置工程では、前記第一型枠と前記第二型枠との間に、前記型枠の一方側と他方側に張り出す格子状の面材からなる補強材を介設することを特徴とする、床版打替方法。
【請求項5】
前記第二打設工程の前に、前記第二型枠を撤去することにより形成された前記先行打替層の端部の突出部分の上面に接着剤を付着する接着剤付着工程を備えていることを特徴とする、請求項4に記載の床版打替方法。
【請求項6】
前記第一型枠の下面と前記除去工程後の前記既設床版の上面との間に緩衝材を介設することを特徴とする、請求項4または請求項5に記載の床版打替方法。
【請求項7】
前記第一打設工程の前に、前記第二型枠の一方側の端面および底面に、複数の凹部または複数の凸部が形成された面材を固定することを特徴とする、請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載の床版打替方法。
【請求項8】
前記先行打替層および前記後行打替層の上面に基層を直接形成し、前記基層の上面に表層を形成する舗装工程を備えていることを特徴とする、請求項4乃至請求項7のいずれか1項に記載の床版打替方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床版打替構造および床版打替方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート床版を使用した道路橋においては、交通荷重等による疲労劣化が既設床版に生じる場合がある。また、既設床版は、施工当時の設計基準に基づいて施工されているため、現行の設計基準と比較して、鉄筋量が不足している場合や、床版の厚さが不足している場合がある。
そのため、既設床版に対して補修を行うことで、現行の設計基準に沿った構造を確保する場合がある。
既設床版の補修方法として、既設床版コンクリート上面に新たに鋼繊維補強コンクリートを打設し、増厚一体化することにより、床版の耐荷性能を回復若しくは向上させる床版打替工法がある(例えば、特許文献1参照)。
また、特許文献2には、既設床版の上面をなすコンクリート(上面コンクリート)を取り除き、コンクリートを取り除いた部分と同じ厚み寸法で、緻密なマトリックスを有する繊維補強コンクリートを打設する床版打替工法が開示されている。
床版打替工法において、既設床版上に連続的に繊維補強コンクリートを打設する際には、一定の間隔毎に施工目地を設ける必要があるが、施工目地では、鋼繊維補強コンクリートに含有される鋼繊維による架橋効果を期待することができず、目開きが生じるおそれがある。そのため、施工目地においては、先行して形成された打替層(増厚コンクリート層または打替コンクリート層)の端面(垂直面)に塗布した接着剤により、後行の打替層と一体化を図ることが標準とされている(非特許文献1参照)。
ところが、接着剤のみでは、施工目地に作用する引張力により目開きが生じる場合がある。施工目地で目開きが生じると、水や塩分が浸入することによって床版の劣化が進行するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-149244号公報
【特許文献2】特開2020-172751号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「設計要領 第二集 橋梁保全編」、令和元年7月、東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社、p.5-30~5-33
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、既設床版上に施工した打替部の施工目地部における目開きを抑制し、構造上の弱点となることを防ぐことを可能とした、床版打替構造および床版上打替工法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明の床版打替構造は、既設床版の上面に形成された先行打替層と、前記先行打替層の端面と突き合せた状態で前記既設床版の上面に形成された後行打替層と、前記先行打替層と前記後行打替層とに跨がって設けられた補強材とを備えている。前記先行打替層の端面には、下側が前記後行打替層側に突出する段差が形成されていて、前記後行打替層の端面は、前記先行打替層の端面に形成された段差と係合するように上側が前記先行打替層側に突出している。また、前記補強材は、前記既設床版の上面と平行な格子状の面材である。
なお、前記先行打替層および前記後行打替層は、繊維補強コンクリート製または繊維補強モルタル製であるのが望ましい。また、前記補強材は、炭素繊維強化プラスチック材またはアラミド繊維強化プラスチック材であるのが望ましい。
【0007】
また、本発明の床版打替方法は、既設床版の上面コンクリートを除去する除去工程と、除去工程後の前記既設床版の上に型枠を設置する型枠設置工程と、前記型枠の一方側に打替コンクリートを打設して先行打替層を形成する第一打設工程と、前記型枠を撤去する型枠撤去工程と、前記先行打替層の他方側に打替コンクリートを打設して後行打替層を形成する第二打設工程とを備えている。前記型枠は、前記既設床版の上面に載置される第一型枠と、前記第一型枠の上方に載置される第二型枠とを有している。また、前記第二型枠の他方側の端面は、前記第一型枠の他方側の端面よりも他方側に突出している。そして、前記型枠設置工程では、第一型枠と前記第二型枠との間に、前記型枠の一方側と他方側に張り出す格子状の面材からなる補強材を介設する。
【0008】
かかる床版打替構造および床版打替方法によれば、先行打替層と後行打替層との施工目地部に横架された補強材により、施工目地部に作用する引張力に対する耐力が確保される。そのため、施工目地部の目開きが抑制されて、ひいては、施工目地部から水や塩分が浸透することを抑制できる。
また、先行打替層と後行打替層との施工目地部に既設床版の上面と平行な面または水平面を含む段差が形成されているため、垂直面同士を突き合わせる従来の目地部に比べて水や塩分が浸透し難い。
【0009】
前記第二打設工程の前に、前記第二型枠を撤去することにより形成された前記先行打替層の端部の突出部分の上面(既設床版の上面と平行な面または水平面)に接着剤を付着する接着剤付着工程を備えていれば、防水性がより高まる。
また、前記第一型枠の下面と前記既設床版の上面との間に緩衝材を介設すれば、不陸がある既設床版と第一型枠との間に隙間が形成されることを抑制し、打設時に打替コンクリート(フレッシュコンクリート)が型枠の外側に流出することを防止できる。
また、前記第一打設工程の前に、前記第二型枠の一方側の端面および底面に、複数の凹部または複数の凸部が形成された面材を固定すれば、先行打替層の端面(後行打替層との当接面)に複数の凹凸が形成され、先行打替層と後行打替層との接合性がより高まる。
なお、前記先行打替層および前記後行打替層の上面に基層を直接形成し、前記基層の上面に表層を形成する舗装工程を備えていてもよい。先行打替層と後行打替層との施工目地部は、防水性に優れているため、施工目地部の上面に防水層を設けることなく、基層を直接形成することで、防水層の施工に伴う手間や費用を省略できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の床版打替構造および床版打替工法によれば、既設床版上に施工した打替部の施工目地部における目開きを抑制し、構造上の弱点となることを防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る床版打替構造を示す図であって、(a)は縦断図、(b)はA-A断面図である。
【
図2】床版打替工法の手順を示すフローチャートである。
【
図3】床版打替工法の各工程を示す断面図であって、(a)は除去工程、(b)は型枠設置工程、(c)は第一打設工程である。
【
図4】
図3に続く床版打替工法の各工程を示す断面図であって、(a)は型枠撤去工程、(b)は第二打設工程、(b)は舗装工程である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態では、既存の道路橋について、既設床版2の上部の劣化した部分(上面コンクリート)を除去して、この除去した部分に繊維補強コンクリートを打設することにより既設床版2の改修を行う床版打替構造1について説明する。
図1に本実施形態の床版打替構造1を示す。
本実施形態の床版打替構造1は、
図1(a)に示すように、既設床版2の上面に形成された先行打替層3と、先行打替層3の端面31と突き合せた状態で既設床版2の上面に形成された後行打替層4と、先行打替層3と後行打替層4とに跨って設けられた補強材5とを備えている。
【0013】
先行打替層3は、既設床版2の上面(コンクリートを除去した部分)に打設された繊維補強コンクリートからなる。先行打替層3の端面(端部)31には、下側部分32(補強材5の下の部分)が上側部分33よりも後行打替層4側に突出する段差が形成されている。
後行打替層4は、既設床版2の上面(コンクリートを除去した部分)に打設された、先行打替層3と同じ配合の繊維補強コンクリートからなる。後行打替層4の端面(端部)41には、上側部分43(補強材5の上の部分)が下側部分32よりも先行打替層3側に突出する段差が形成されている。後行打替層4の上側部分43の突出長は、先行打替層3の下側部分32の突出長と同等である。すなわち、後行打替層4の端面41の段差は、先行打替層3の端面31の段差と係合するように形成されている。
補強材5は、
図1(a)および(b)に示すように、既設床版2の上面と平行な格子状の面材である。補強材5は、炭素繊維強化プラスチック材(CFRP)からなる。補強材5の一端は先行打替層3に埋め込まれており、補強材5の残りの部分は後行打替層4に埋め込まれている。補強材5は、先行打替層3の下側部分32の上面に配置されている。
【0014】
以下、床版打替構造1の施工方法(床版打替工法)について説明する。
図2に床版打替工法の手順を示す。
図2に示すように、床版打替工法は、除去工程S1、型枠設置工程S2、第一打設工程S3、型枠撤去工程S4、接着剤付着工程S5、第二打設工程S6および舗装工程S7を備えている。
図3および
図4に床版打替工法の各工程を示す。
除去工程S1は、
図3(a)に示すように、既設床版2の上面側の劣化した部分21を取り除く工程である。具体的には、既設床版2の上面を数センチ程度切削した後、切削面をウォータージェット等ではつる。なお、既設床版2の切削に先立ち、既設床版2上に敷設された舗装8を切削しておく。
【0015】
型枠設置工程S2は、既設床版2の上に型枠6を設置する工程である。
図3(b)に示すように、型枠6は、劣化した部分21を取り除かれた既設床版2の上面に載置される第一型枠61と、第一型枠61の上方に載置される第二型枠62とを有している。第二型枠62の一方側(
図3(b)において右側)の端面は、第一型枠61の一方側の端面よりも一方側に突出している。
型枠6を設置する際には、第一型枠61と第二型枠62との間に、補強材5を介設する。補強材5は、型枠6よりも大きな幅(施工目地と直交する方向の長さ)を有していて、補強材5の両端は、それぞれ型枠6の一方側と他方側(
図3(b)において左側)に張り出している。
また、型枠6を設置する際には、第一型枠61の下面と既設床版2の上面との間に緩衝材7を介設する。緩衝材7には、既設床版2上面の不陸を吸収し、打設コンクリートの流出を防止可能な材料であれば限定されるものではなく、例えば、独立気泡のスポンジ材や樹脂系の弾性板材(例えばゴム板)等が使用可能である。
第二型枠62の一方側の端面および底面には、複数の凹部または複数の凸部が形成された凹凸面材63を固定しておく。凹凸面材63には、例えば、ポリプロピレン製のメッシュ材や網状に編み込まれた布等を使用すればよい。
【0016】
第一打設工程S3は、
図3(c)に示すように、型枠6の一方側に打替コンクリートCを打設して先行打替層3を形成する工程である。打替コンクリートCには、鋼繊維補強コンクリートを使用する。第一打設工程S3では、補強材5の一方側の端部(型枠6の一方側に突出した部分)を巻き込んだ状態で打替コンクリートCを流し込む。
型枠撤去工程S4は、
図4(a)に示すように、型枠6(緩衝材7も含む)を撤去する工程である。型枠撤去工程S4は、打替コンクリートCが硬化して、先行打替層3に必要な強度(型枠6を撤去することが可能な強度)が発現してから行う。型枠6を撤去すると、
図4(a)に示すように、下側部分32が上側部分33よりも突出した先行打替層3が形成される。先行打替層3の下側部分32の上面32aおよび上側部分33の先端面33aには、凹凸面材63を撤去することにより形成された凹凸が形成されている。
【0017】
接着剤付着工程S5は、先行打替層3の端面に接着剤を塗着する工程である。接着剤は、接着範囲31aに塗布される(
図4(a)参照)。具体的には、接着剤は、第二型枠62を撤去することにより形成された先行打替層3の端部の突出部分(下側部分32)の上面(水平面)32aと、上側部分33の先端面(鉛直部分)33aに塗着する。接着剤には、エポキシ樹脂接着剤を使用する。本実施形態では、先行打替層3の端面31(接着範囲31a)に接着剤を塗布するが、接着剤を付着させる方法は限定されるものではなく、例えば、吹付けてもよい。なお、接着剤を塗着する前に、接着範囲31aにプライマーを付着させてから、接着剤を塗着させても良い。
第二打設工程S6は、
図4(b)に示すように、先行打替層3の他方側に打替コンクリートCを打設して後行打替層4を形成する工程である。第二打設工程S6では、補強材5の他方側端部(先行打替層3から突出した部分)を巻き込んだ状態で、打替コンクリートCを流し込む。打替コンクリートCには、先行打替層3を形成する際に使用した鋼繊維補強コンクリートとの同じ配合の鋼繊維補強コンクリートを使用する。
舗装工程S7は、
図4(c)に示すように、先行打替層3および後行打替層4の上に舗装8を形成する工程である。舗装8は、先行打替層3および後行打替層4の上面に基層81を直接形成し、この基層81の上面に表層82を形成することにより形成する。舗装8の施工は、先行打替層3および後行打替層4の養生後に行う。
【0018】
本実施形態の床版打替構造1および床版打替方法によれば、先行打替層3と後行打替層4との施工目地部に横架された補強材5により、施工目地部に作用する引張力に対する耐力が確保される。そのため、施工目地部の目開きが抑制されて、ひいては、施工目地部から水や塩分が浸透することを抑制できる。
また、先行打替層3と後行打替層4との施工目地部に水平面を含む段差が形成されているため、垂直面同士を突き合わせる従来の施工目地部に比べて水や塩分が浸透し難い。
先行打替層3の下側部分32の上面(水平面)32aに接着剤を塗着しているため、施工目地部からの水の浸透を防止し、防水性がより高まる。
先行打替層3の下側部分32の上面32aおよび上側部分33の先端面33aが、凹凸面材63により形成された凹凸面であるため、後行打替層4の端面41との付着面積が大きくなり、接合性がより高められている。また、当接面に凹凸が形成されていることにより、水分が浸透し難い。
このように、本実施形態の床版打替構造1および床版打替方法によれば、施工目地部の防水性が優れているため、施工目地部の上面に防水層を設けることなく、基層81を直接形成することができる。そのため、防水層の施工に伴う手間や費用を省略できる。
さらに、本実施形態では、補強材5として、軽量で腐食しない材料(炭素繊維強化プラスチック材)を使用しているため、水分や塩分が浸透した場合であっても、腐食することがない。
第一型枠61の下面と既設床版2の上面との間に緩衝材7を介設しているため、不陸がある既設床版2と第一型枠61との間に隙間が形成されることを抑制し、打替コンクリートC(フレッシュコンクリート)が型枠6の外側に流出することを防止できる。
【0019】
以下、本実施形態の床版打替構造1について実施した実験結果を示す。本実験では、本実施形態の床版打替構造1の施工目地部における目開きの抑制効果を確認するため、基盤20(既設床版2)と打替層11とが一体となった供試体10を作成し、打替層11が引張側となるように、供試体10を設置して、JISA1106に準拠した曲げ強度試験を実施した。
図5に供試体10を示す。
表1に実験で使用した材料を示し、表2に基盤20を構成する基盤コンクリートの配合、表3に打替層11を構成する打替コンクリートの配合を示す。
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
まず、表2に示す配合からなる基盤コンクリートにより基盤20を形成した。基盤20は、幅10cm、高さ6cm、長さ40cmとした。次に、基盤20の上面に、表3に示す配合からなる打替コンクリートを打設することにより、打替層11(先行打替層30および後行打替層40)を形成した。打替層11は、幅10cm、高さ4cm、長さ40cmとした。打替層11は、先行打替層30および後行打替層40からなり、長さ方向中央に施工目地部(先行打替層30と後行打替層40との境界)を有している。施工目地部には、先行打替層30の下側部分32が後行打替層40側に突出するように、段差が形成されているとともに、先行打替層30と後行打替層40とに跨って補強材5を配設されている。補強材5は、厚さ4mmの炭素繊維強化プラスチック製の格子状面材であって、筋断面積が公称26.4mm2、引張強度が1400N/mm2である。また、先行打替層30の下側部分32の上面32aと上側部分33の先端面33aは、凹凸面となっており、下側部分32の上面32aと上側部分33の先端面33aに接着剤を塗布した状態で後行打替層40を形成した。なお、接着剤の塗布する前にプライマーを塗着した。また、先行打替層30の下側部分32の上面32aおよび上側部分33の先端面33aが、凹凸面材63により複数の凹凸面が形成されている。
【0024】
曲げ試験は、供試体10に対して、JISA1106「コンクリートの曲げ強度試験方法」に準拠して実施した。実験は、打替層11側に引張力が作用するように荷重Pを加えた。
図6に試験結果(写真)を示す。
図6の写真では、基盤20が上、打替層11が下になっている。
試験の結果、供試体10(打替層11)は、
図6に示すように、施工目地部(供試体10の中央部:20cm付近)から離れた位置(供試体10の3等分点外)において破断した。すなわち、供試体10においては、施工目地部が弱部になっていない。
以上の実験から、本実施形態の床版打替構造1によれば、引張力が作用した場合であっても、施工目地部における目開きを抑制できることが確認できた。
【0025】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
前記実施形態では、先行打替層3および後行打替層4の厚さを、既設床版2の除去部分と同じ厚さとし、改修前後における床版の厚さが同じになるようにする場合について説明したが、先行打替層3および後行打替層4の厚さは、既設床版2の除去部分の厚さよりも大きくてもよいし、小さくてもよい。
前記実施形態では、先行打替層3および後行打替層4が、繊維補強コンクリート製である場合について説明したが、先行打替層3および後行打替層4を構成する材料はこれに限定されるものではなく、例えば、繊維補強モルタル製であってもよい。
前記実施形態では、補強材5に炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を使用する場合について説明したが、補強材5を構成する材料はこれに限定されるものではなく、例えば、アラミド繊維強化プラスチック(AFRP)を使用してもよい。
凹凸面材63は、必要に応じて使用すればよい。
既設床版2の上面側の劣化した部分21を取り除いた後(除去工程S1後)、鋼繊維コンクリート(打替コンクリートC)の打設前(第一打設工程S3および第二打設工程S6の前)に、除去後の既設床版2の上面を湿潤させるか接着剤を塗布しても良い。
【符号の説明】
【0026】
1 床版打替構造
2 既設床版
3 先行打替層
31 端面
4 後行打替層
41 端面
5 補強材
6 型枠
61 第一型枠
62 第二型枠
63 凹凸面材
7 緩衝材
8 舗装
81 基層
82 表層