(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108210
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】水力発電用河川構造及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
E02B 9/06 20060101AFI20230728BHJP
【FI】
E02B9/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009207
(22)【出願日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】591165355
【氏名又は名称】常田 幸
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】常田 幸
(57)【要約】
【課題】河川の外観を損ねにくいうえ、安定して発電を行うことができる水力発電用河川構造及びその施工方法を提供する。
【解決手段】水力発電用河川構造は、河川1の川底10に設けられた集水用の凹み2と、凹み2の底部から河川1の下流部に向けて下り勾配で延び、底部と下流部とをつなぐトンネル3と、トンネル3の内側に設置される複数の水力発電装置4と、を備える。水力発電用河川構造の施工方法は、掘削工程、トンネル形成工程、及び設置工程を備える。掘削工程では、河川1の川底10の一部を掘削して集水用の凹み2を形成する。トンネル形成工程では、前記のトンネル3を形成する。設置工程では、トンネル3内に複数の水力発電装置4を設置する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川の川底に設けられた集水用の凹みと、
前記凹みの底部から前記河川の下流部に向けて下り勾配で延び、前記底部と前記下流部とをつなぐトンネルと、
前記トンネルの内側に設置される複数の水力発電装置と、を備える、
ことを特徴とする水力発電用河川構造。
【請求項2】
前記凹みの深さは、10m以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の水力発電用河川構造。
【請求項3】
前記凹みは、前記河川の水が流れる方向に対して交差する方向に延びた長溝である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の水力発電用河川構造。
【請求項4】
前記長溝の底面は、前記長溝の長手方向の片側に向かって傾斜し、
前記長溝を挟む一対の側面のうち、前記河川の下流側の側面の底部から、前記トンネルが前記河川の前記下流部に向けて延びている、
ことを特徴とする請求項3に記載の水力発電用河川構造。
【請求項5】
前記トンネルの長さは、300m以上である、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の水力発電用河川構造。
【請求項6】
河川の川底の一部を掘削して集水用の凹みを形成する掘削工程と、
前記凹みの底部から前記河川の下流部に向けて下り勾配で延び、前記底部と前記下流部とをつなぐトンネルを形成するトンネル形成工程と、
前記トンネル内に複数の水力発電装置を設置する設置工程と、を備える、
ことを特徴とする水力発電用河川構造の施工方法。
【請求項7】
前記トンネル形成工程は、シールド工法によって前記トンネルを形成する、
ことを特徴とする請求項6に記載の水力発電用河川構造の施工方法。
【請求項8】
前記掘削工程の前に行う敷設工程と、
前記設置工程の後に行う除去工程と、を更に備え、
前記敷設工程では、前記河川の前記川底の前記一部に止水用板を敷き、
前記掘削工程では、前記河川の岸に穴を掘削し、前記穴から前記止水用板の下方の土砂を掘削して前記川底の前記一部に前記凹みを形成し、
前記除去工程では、前記川底から前記止水用板を取り除く、
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の水力発電用河川構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水力発電用河川構造及びその施工方法に関し、より詳細には、河川の水を利用して発電可能な水力発電用河川構造及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、河川の水を利用して発電を行う水力発電装置が記載されている。この水力発電装置は、水面よりも下方に位置する2つの回転ローラーと、水面よりも上方に位置する回転ローラーと、この3つの回転ローラーを取り囲むベルトコンベアと、ベルトコンベアの表面に固定された複数の受け板とを備える。
【0003】
この水力発電装置では、河川の水を複数の受け板で受けて、ベルトコンベア及び3つの回転ローラーを回転させることで、回転ローラーにつないだ発電機が発電を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の水力発電装置では、一部が水面よりも上方に位置するため、河川の外観が損なわれるおそれがあり、また、増水時と平常時とでベルトコンベアにかかる負荷が変化するため、安定して発電を行いにくいおそれがある。
【0006】
上記事情を鑑みて、本開示は、河川の外観を損ねにくいうえ、安定して発電を行うことができる水力発電用河川構造及びその施工方法を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の水力発電用河川構造は、河川の川底に設けられた集水用の凹みと、前記凹みの底部から前記河川の下流部に向けて下り勾配で延び、前記底部と前記下流部とをつなぐトンネルと、前記トンネルの内側に設置される複数の水力発電装置と、を備える。
【0008】
また、本開示の一態様の水力発電用河川構造の施工方法は、掘削工程、トンネル形成工程、及び設置工程を備える。前記掘削工程では、河川の川底の一部を掘削して集水用の凹みを形成する。前記トンネル形成工程では、前記凹みの底部から前記河川の下流部に向けて下り勾配で延び、前記底部と前記下流部とをつなぐトンネルを形成する。前記設置工程では、前記トンネル内に複数の水力発電装置を設置する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様の水力発電用河川構造及びその施工方法は、河川の外観を損ねにくいうえ、安定して発電を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態の水力発電用河川構造を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、同上の水力発電用河川構造の上流部を概略的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図2のA-A線における概略的な断面図である。
【
図4】
図4は、
図2のB-B線における概略的な断面図である。
【
図5】
図5Aから
図5Dは、同上の水力発電用河川構造を施工する様子を示す概略的な平面図である。
【
図6】
図6Aから
図6Cは、同上の水力発電用河川構造を施工する様子を示す概略的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(一実施形態)
1.概要
図1から
図4に示す一実施形態の水力発電用河川構造は、河川1の川底10に設けられた集水用の凹み2と、凹み2の底部20から河川1の下流部11に向けて下り勾配で延び、底部20と下流部11とをつなぐトンネル3と、トンネル3の内側に設置される複数の水力発電装置4と、を備える。
【0012】
また、
図5Aから
図5D及び
図6Aから
図6Cに示す一実施形態の水力発電用河川構造の施工方法は、掘削工程、トンネル形成工程、及び設置工程を備える。前記掘削工程では、河川1の川底10の一部を掘削して集水用の凹み2を形成する。前記トンネル形成工程では、凹み2の底部20から河川1の下流部11に向けて下り勾配で延び、底部20と下流部11とをつなぐトンネル3を形成する。前記設置工程では、トンネル3内に複数の水力発電装置4を設置する。
【0013】
上記構成を備える一実施形態の水力発電用河川構造及びその施工方法では、河川1を流れる水Wを、河川1の川底10の凹み2に集めて、下り勾配のトンネル3に流すことができ、トンネル3内を流れる水Wを利用して、複数の水力発電装置4によって発電することができる。ここで、一実施形態の水力発電用河川構造及びその施工方法では、トンネル3及び複数の水力発電装置4が、河川1の水面よりも下方に位置して露出しないため、河川1の外観を損ねにくい。また、一実施形態の水力発電用河川構造及びその施工方法では、トンネル3内を流れる水Wの流速が、凹み2内に集まった水Wの水圧に応じた速度となるため、増水時と平常時とで速度が変わりにくくて、トンネル3内の複数の水力発電装置4による発電が安定しやすい。
【0014】
2.詳細
続いて、
図1から
図6に示す一実施形態の水力発電用河川構造及びその施工方法について更に詳しく説明する。
図1から
図4は、一実施形態の水力発電用河川構造を概略的に示している。
【0015】
2-1.水力発電用河川構造
まず、
図1から
図4に示す本実施形態の水力発電用河川構造について説明する。
【0016】
河川1は、水Wが常時流れる川であって、トンネル3を設ける区間の高低差が一定以上(例えば10m以上)ある川である。
【0017】
図2に示す水力発電用河川構造では、河川1の上流部の川底10には、集水用の凹み2が設けられている。
【0018】
凹み2は、河川1の水Wが流れる方向に対して交差する方向に延びた長溝である。本実施形態では、凹み2は、河川1の一方の岸12から他方の岸12に向かうように、河川1の水Wが流れる方向に対して直交する方向に、延びている。凹み2は、例えば、河川1の川底10の幅方向の全長にわたるように設けられる。
【0019】
図4に示すように、長溝(凹み2)の底面21は、長溝の長手方向の片側に向かって傾斜している。
図2から
図4に示すように、長溝を挟む一対の側面22,23のうち、河川1の下流側の側面22の底部から、トンネル3が河川1の下流部11に向けて延びている。長溝の内面(底面21、一対の側面22,23、他の側面24等)のそれぞれは、コンクリートで舗装されている。
【0020】
凹み2の深さ(詳しくは河川1の川底10(凹み2の周囲の部分)から底面21の最下部までの深さ)は、本実施形態では、10m以上である。
【0021】
水力発電用河川構造は、凹み2の上端開口を覆う網状のカバー(図示せず)を更に備える。カバーは、凹み2内への土砂、流木等の流入を抑制する。
【0022】
トンネル3は、凹み2の底部20から河川1の下流部11に向けて下り勾配で延び、底部20と下流部11とをつなぐ。トンネル3が有する下り勾配によって、トンネル3の内部の水Wは河川1の下流部11側へと流れやすい。
【0023】
トンネル3は、例えば、直線状に延びる筒体である。ここで、直線状とは、厳密な直線状に限らず、多少湾曲したものも含まれる。なお、トンネル3は、トンネル3の内部の水Wが河川1の下流部11へと流れるように構成されたものであればよい。
【0024】
トンネル3は、内径が例えば2m~3mの円筒状である。この場合、施工者がトンネル3内で作業しやすく、トンネル3内への複数の水力発電装置4の設置やメンテナンスがしやすい。トンネル3の長さは、本実施形態では、300m以上であり、1000m以下である。トンネル3の下り勾配は、水平方向に対して例えば1°程度である。
【0025】
トンネル3の上流端開口は、凹み2の底部20の内部空間と連通している。トンネル3の下流端開口は、河川1の下流部11において、水Wが流れる空間と連通している。トンネル3の下流端開口は、例えば、河川1の水Wが流れる方向に向けて開口するように設けられる。
【0026】
トンネル3は、少なくとも上流側の端部と下流側の端部が、河川1の川底10の下方に配置されている。河川1が蛇行している場合、トンネル3の長手方向の他の部分は、河川1の周囲の地面の下方に配置される。
【0027】
複数の水力発電装置4のそれぞれは、トンネル3内を流れる水Wを利用して発電を行う装置である。複数の水力発電装置4は、トンネル3の内側に、トンネル3の長手方向に間隔をおいて設置される。水力発電装置4は、例えば、トンネル3の内径よりも若干短い径のプロペラと、このプロペラの回転によって発電を行う発電機と、を有する。トンネル3の内側に設置される複数の水力発電装置4の数は、トンネル3の長さや、必要とする発電量に応じて適宜設定される。
【0028】
2-2.水力発電用河川構造の施工方法
続いて、
図5Aから
図5D及び
図6Aから
図6Cに示す一実施形態の水力発電用河川構造の施工方法の一例について説明する。本実施形態の施工方法は、掘削工程、トンネル形成工程、及び設置工程を備える。本実施形態の施工方法は更に、掘削工程の前に行われる敷設工程と、設置工程の後に行われる除去工程と、掘削工程よりも後に行われる舗装工程とを備える。
【0029】
まず、敷設工程では、
図5Aに示すように、河川1の川底10の一部に止水用板5を敷設する。止水用板5は、凹み2(長溝)よりも幅広のものが用いられる。止水用板5は、河川1の川底10の幅方向の一端から他端にわたって敷設される。止水用板5としては、例えば、複数の鋼板が用いられる。
【0030】
次いで、掘削工程では、河川1の川底10の一部を掘削して集水用の凹み2を形成する。本実施形態では、掘削工程は、トンネル形成工程の前に行われる第一掘削工程と、トンネル形成工程の後に行われる第二掘削工程とを有する。
【0031】
第一掘削工程では、
図5Bに示すように、河川1の岸12に穴6を掘削して、穴6から止水用板5の下方の土砂を掘削して、川底10の一部に凹み2の一部2aを形成する。ここで、穴6は、穴6の底面が、凹み2の底面21の最下部と略同じ深さとなるように、設けられる。
【0032】
次いで、トンネル形成工程では、
図5Cに示すように、凹み2の底部20(詳しくは凹み2の一部2aの下流側の側面22の底部)から河川1の下流部11に向けて下り勾配で延び、底部20と下流部11とをつなぐトンネル3を形成する。トンネル形成工程では、例えば、シールド工法によってトンネル3を形成する。
【0033】
なお、シールド工法とは、シールドマシンと呼ばれる筒状の機械で、土の中を進み、前方の土砂を削りとりながら、シールドマシン内部でセグメント(トンネル3の外壁となるブロック)を筒状に組み立てて、シールドマシンの後方にトンネル3の壁を形成していく工法である。
【0034】
次いで、第二掘削工程では、
図5Dに示すように、凹み2の一部2aから止水用板5の下方の土砂を更に掘削して、凹み2の残りの部分2bを形成する。凹み2は、河川1の川底10の幅方向の一端から他端の全長にわたるように長溝状に形成される。長溝(凹み2)の底面21は、長溝の長手方向の片側に向かって傾斜するように形成される(
図4参照)。
【0035】
次いで、設置工程では、
図6Aに示すように、トンネル3内に複数の水力発電装置4を設置する。複数の水力発電装置4は、例えば、トンネル3の下流側から上流側へと順に、間隔をおいて設置する。
【0036】
次いで、舗装工程では、
図6Bに示すように、長溝(凹み2)の内面(底面21、一対の側面22,23)のそれぞれを、コンクリート等で舗装する。次いで、舗装工程では、穴6と凹み2の間の空間をコンクリート等で埋め、穴6をコンクリート、土砂等で塞ぐ。
【0037】
次いで、除去工程では、
図6Cに示すように、止水用板5を川底10から取り除く。この後、凹み2の上端開口を網状のカバー(図示せず)で塞ぐ。
【0038】
上述した敷設工程、第一掘削工程、トンネル形成工程、第二掘削工程、設置工程、舗装工程、及び除去工程をこの順に行うことで、
図1から
図4に示す本実施形態の水力発電用河川構造が形成される。
【0039】
2-3.水力発電用河川構造の発電方法
以上説明した本実施形態の水力発電用河川構造では、河川1を流れる水Wが、凹み2に流れ込む。このとき、凹み2は長溝であり、河川1の幅方向の全長にわたっているため、河川1を流れる水Wを凹み2内へと流入させやすい。河川1を流れる水Wのうち、凹み2内に流入しなかった水Wは、河川1の凹み2よりも下流側へと流れる。
【0040】
次いで、凹み2に流れ込んだ水Wは、凹み2の底部20において開口したトンネル3の上流端開口に流れ込む。このとき、本実施形態では、凹み2の底面21が、凹み2の底部20に向かって下り傾斜しているため、凹み2に流入した水Wを、トンネル3内へと流入させやすい。
【0041】
次いで、トンネル3内に流入した水Wは、トンネル3の長手方向の一端(上流端)から他端(下流端)へと流れ、トンネル3内を流れる水Wによって複数の水力発電装置4が動作されて(プロペラが回転させられて)、複数の水力発電装置4が発電する。このとき、トンネル3内を流れる水Wの流速は、凹み2内に集まった水Wの水圧に応じた速度となるため、複数の水力発電装置4による発電量が安定しやすい。また、トンネル3内の水Wは、トンネル3の下り勾配によって河川1の下流部11側に向けて連続的に流れやすい。
【0042】
トンネル3内を流れる水Wは、トンネル3の下流端開口から排出され、河川1の下流部11を流れる水Wと合流する。
【0043】
3.作用効果
以上説明した本実施形態の水力発電用河川構造では、トンネル3及び複数の水力発電装置4がいずれも、河川1の水面よりも下方に位置するため、河川1の外観を損ねにくい。そのうえ、本実施形態の水力発電用河川構造では、河川1の川底10に凹み2を設け、凹み2の底部20からトンネル3が延びているため、トンネル3内を流れる水Wの流速が、凹み2内に集まった水Wの水圧に応じた速度となる。そのため、本実施形態の水力発電用河川構造では、トンネル3内を流れる水Wの流速が、増水時と平常時とで速度が変わりにくくて、トンネル3内の複数の水力発電装置4による発電が安定しやすい。
【0044】
また、本実施形態の水力発電用河川構造では、凹み2が河川1の水Wが流れる方向に対して交差する方向に延びた長溝であるため、河川1を流れる水Wを凹み2内へと導きやすく、トンネル3内に水Wが流れ込みやすい。加えて、長溝(凹み2)の底面21は、下り傾斜しているため、凹み2に流れ込んだ水Wは、トンネル3内に流れ込みやすい。
【0045】
また、本実施形態の水力発電用河川構造では、河川1を流れる水Wが、凹み2内に流入した後、トンネル3内を流れるため、トンネル3内の水Wの流速が安定しやすくて、複数の水力発電装置4による発電が安定しやすい。
【0046】
また、本実施形態の水力発電用河川構造では、トンネル3が下り勾配で延びているため、トンネル3内を流れる水Wの流速が安定しやすくて、水力発電装置4による発電量が安定しやすい。
【0047】
また、本実施形態の水力発電用河川構造では、川底10の凹み2の底部20から延びるトンネル3内に複数の水力発電装置4を設置しているため、河川1の増水による影響を各水力発電装置4が受けにくくて、各水力発電装置4の破損を抑えやすい。
【0048】
また、本実施形態の水力発電用河川構造では、トンネル3内に設置する複数の水力発電装置4の数に応じた電力を得ることができて、大きな電力を得やすい。
【0049】
また、本実施形態の水力発電用河川構造の施工方法では、シールド工法によってトンネル3を形成するため、トンネル3の形成が簡単に行えて、既存の河川1を水力発電用河川構造へと改造しやすい。
【0050】
また、本実施形態の水力発電用河川構造の施工方法では、シールド工法によってトンネル3を形成するため、河川1が蛇行していても、トンネル3を直線状に設けることができるため、トンネル3の形成がしやすい。
【0051】
また、本実施形態の水力発電用河川構造の施工方法では、河川1の岸12に穴6を掘削して、この穴6から川底10に敷設した止水用板5の下方の土砂を掘削して凹み2を形成するため、河川1の水Wを堰き止める必要がなくて、施工がしやすい。
【0052】
4.変形例
続いて、上述した一実施形態の水力発電用河川構造及びその施工方法の変形例について説明する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせ可能である。
【0053】
凹み2の深さは、10m以上に限定されず、必要とする発電量や、施工コスト等に応じて、適宜選択可能である。
【0054】
凹み2は、河川1の水Wが流れる方向に対して交差する方向に延びた長溝に限定されない。例えば、凹み2は、平面視正方形状、円形状等の凹みであってもよく、シールド工法で用いるシールドマシンが挿入可能な大きさであることが好ましい。また、凹み2は、河川1の幅方向の全長ではなく、幅方向の一部にのみ形成されてもよい。
【0055】
また、長溝(凹み2)の底面21は、長溝の長手方向の片側に向かって傾斜する斜面に限定されず、長さ方向の全長にわたって上下位置が一定であってもよい。
【0056】
また、トンネル3の長さは、300m以上に限定されず、必要とする発電量や、施工コスト等に応じて、適宜選択可能である。
【0057】
水力発電用河川構造は、トンネル3の上流端開口を開閉する扉と、トンネル3の下流端開口を開閉する扉とを更に備えてもよい。この場合、各水力発電装置4のメンテナンス、交換等の際に、トンネル3内への水の浸入を一対の扉によって防ぐことができる。
【0058】
また、水力発電用河川構造は、河川1の川底10のうち、凹み2の上流側に設けられた第二凹みと、第二凹みに設置された土砂堆積センサーと、を更に備えてもよい。この場合、第二凹みによって凹み2内への土砂の流入を更に抑制できるうえ、第二凹み内に堆積した土砂の量を土砂堆積センサーによって検出することができ、第二凹み内の土砂の除去を促すことができる。
【0059】
また、水力発電用河川構造の施工方法は、上述した掘削工程、トンネル形成工程、及び設置工程を備えればよく、その他の工程(敷設工程、舗装工程、及び除去工程)を含まなくてもよい。
【0060】
掘削工程は、河川1の岸12に穴6を掘削して、穴6から河川1の川底10の一部を掘削する工程に限定されない。例えば、掘削工程は、河川1の川底10の一部を、鋼矢板等の囲い部材で囲んで、直接掘削する工程であってもよい。
【0061】
また、トンネル形成工程は、シールド工法に限らず、推進工法、スーパーマルチモール工法等の他の非開削工法でトンネル3を形成してもよいし、開削工法、沈埋工法等の他の工法でトンネル3を形成してもよい。
【0062】
また、掘削工程は、凹み2の一部2a(長溝の長手方向の一端部)を形成する第一掘削工程と、凹み2の残りの部分2bを形成する第二掘削工程とを有さなくてもよく、トンネル形成工程の前に凹み2の全体を形成してもよい。
【0063】
また、トンネル3は、河川1が蛇行しておらず、直線状に延びている場合、全長にわたって河川1の川底10の下方に位置してもよい。
【0064】
(まとめ)
以上説明した一実施形態及びその変形例のように、第一態様の水力発電用河川構造は、下記の構成を備える。
【0065】
すなわち、第一態様の水力発電用河川構造は、河川1の川底10に設けられた集水用の凹み2と、凹み2の底部20から河川1の下流部11に向けて下り勾配で延び、底部20と下流部11とをつなぐトンネル3と、トンネル3の内側に設置される複数の水力発電装置4と、を備える。
【0066】
上記構成を備える第一態様の水力発電用河川構造では、河川1を流れる水Wを、河川1の川底10の凹み2に集めて、下り勾配のトンネル3に流すことができ、トンネル3内を流れる水Wを利用して、複数の水力発電装置4によって発電することができる。ここで、第一態様の水力発電用河川構造では、トンネル3及び複数の水力発電装置4が、河川1の水面よりも下方に位置して露出しないため、河川1の外観を損ねにくい。また、第一態様の水力発電用河川構造では、トンネル3内を流れる水Wの流速が、凹み2内に集まった水Wの水圧に応じた速度となるため、増水時と平常時とで速度が変わりにくくて、トンネル3内の複数の水力発電装置4による発電が安定しやすい。
【0067】
また、上述した一実施形態及びその変形例のように、第二態様の水力発電用河川構造は、第一態様の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0068】
すなわち、第二態様の水力発電用河川構造では、凹み2の深さは、10m以上である。
【0069】
上記構成を備える第二態様の水力発電用河川構造では、凹み2内に集まった水Wの水圧によって、トンネル3内を流れる水Wの流速を一定以上確保しやすくて、複数の水力発電装置4による発電量を大きくしやすい。
【0070】
また、上述した一実施形態及びその変形例のように、第三態様の水力発電用河川構造は、第一又は第二態様の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0071】
すなわち、第三態様の水力発電用河川構造では、凹み2は、河川1の水Wが流れる方向に対して交差する方向に延びた長溝である。
【0072】
上記構成を備える第三態様の水力発電用河川構造では、河川1を流れる水Wを、凹み2内に流入させやすい。
【0073】
また、上述した一実施形態及びその変形例のように、第四態様の水力発電用河川構造は、第三態様の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0074】
すなわち、第四態様の水力発電用河川構造では、長溝の底面21は、長溝の長手方向の片側に向かって傾斜し、長溝を挟む一対の側面22,23のうち、河川1の下流側の側面22の底部から、トンネル3が河川1の下流部11に向けて延びている。
【0075】
上記構成を備える第四態様の水力発電用河川構造では、長溝に流れ込んだ河川1の水Wが、長溝の底面21の傾斜によって、長溝の底部20に集まりやすくて、トンネル3内へと流れ込みやすい。
【0076】
また、上述した一実施形態及びその変形例のように、第五態様の水力発電用河川構造は、第一から第四のいずれか1つの態様の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0077】
すなわち、第五態様の水力発電用河川構造では、トンネル3の長さは、300m以上である。
【0078】
上記構成を備える第五態様の水力発電用河川構造では、トンネル3内に多数の水力発電装置4を設置することができて、発電量を大きくしやすい。
【0079】
また、上述した一実施形態及びその変形例のように、第六態様の水力発電用河川構造の施工方法は、下記の構成を備える。
【0080】
すなわち、第六態様の水力発電用河川構造の施工方法は、掘削工程、トンネル形成工程、及び設置工程を備える。前記掘削工程では、河川1の川底10の一部を掘削して集水用の凹み2を形成する。前記トンネル形成工程では、凹み2の底部20から河川1の下流部11に向けて下り勾配で延び、底部20と下流部11とをつなぐトンネル3を形成する。前記設置工程では、トンネル3内に複数の水力発電装置4を設置する。
【0081】
上記構成を備える第六態様の水力発電用河川構造の施工方法では、河川1を比較的簡単な工事で改造して、上述した水力発電用河川構造を形成することができる。
【0082】
また、上述した一実施形態及びその変形例のように、第七態様の水力発電用河川構造の施工方法は、第六態様の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0083】
すなわち、第七態様の水力発電用河川構造の施工方法では、前記トンネル形成工程は、シールド工法によってトンネル3を形成する。
【0084】
上記構成を備える第七態様の水力発電用河川構造の施工方法では、シールド工法によってトンネル3を形成するため、トンネル3の形成が簡単に行えて、既存の河川1を水力発電用河川構造へと改造しやすい。
【0085】
また、上述した一実施形態及びその変形例のように、第八態様の水力発電用河川構造の施工方法は、第六又は第七態様の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0086】
すなわち、第八態様の水力発電用河川構造の施工方法は、前記掘削工程の前に行う敷設工程と、前記設置工程の後に行う除去工程と、を更に備える。前記敷設工程では、河川1の川底10の一部に止水用板5を敷く。前記掘削工程では、河川1の岸12に穴6を掘削し、穴6から止水用板5の下方の土砂を掘削して川底10の一部に凹み2を形成する。除去工程では、川底10から止水用板5を取り除く。
【0087】
上記構成を備える第八態様の水力発電用河川構造の施工方法では、河川1を流れる水Wを堰き止めずに、川底10の一部に凹み2を形成することができて、既存の河川1を水力発電用河川構造へと改造しやすい。
【0088】
以上、本開示を添付図面に示す形態に基づいて説明したが、本開示は上記の形態に限定されるものではなく、本開示の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 河川
10 川底
11 下流部
12 岸
2 凹み
20 底部
21 底面
22 側面
23 側面
3 トンネル
4 水力発電装置
5 止水用板
6 穴
W 水