(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108213
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/14 20060101AFI20230728BHJP
【FI】
H05K3/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009214
(22)【出願日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森 貴洋
【テーマコード(参考)】
5E343
【Fターム(参考)】
5E343AA02
5E343AA24
5E343BB23
5E343BB35
5E343BB49
5E343BB52
5E343CC62
5E343DD25
5E343ER11
5E343GG20
(57)【要約】
【課題】 基板上に形成される下地膜及び上地膜を備えた積層膜を所定形状に容易に形成することができる基板の製造方法を提供する。
【解決手段】 基板上に下地膜と当該下地膜上に形成された上地膜とを備えた基板の製造方法であって、基板1上に開口部21を有する第1のレジスト膜2を形成する第1レジスト膜形成工程と、前記基板1及び前記第1のレジスト膜2上に前記下地膜となる第1の膜30を形成する第1膜形成工程と、前記第1の膜30上に、前記第1のレジスト膜2の開口部21より小さい開口部41を備えた第2のレジスト膜4を形成する第2レジスト膜形成工程と、前記第1の膜30及び前記第2のレジスト膜4上に前記上地膜となる第2の膜50を形成する第2膜形成工程と、前記第1のレジスト膜2及び前記第2のレジスト膜4を前記基板1上から除去するレジスト膜除去工程と、を有する基板の製造方法とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に下地膜と当該下地膜上に形成された上地膜とを備えた基板の製造方法であって、
基板上に開口部を有する第1のレジスト膜を形成する第1レジスト膜形成工程と、
前記基板及び前記第1のレジスト膜上に前記下地膜となる第1の膜を形成する第1膜形成工程と、
前記第1の膜上に、前記第1のレジスト膜の開口部より小さい開口部を備えた第2のレジスト膜を形成する第2レジスト膜形成工程と、
前記第1の膜及び前記第2のレジスト膜上に前記上地膜となる第2の膜を形成する第2膜形成工程と、
前記第1のレジスト膜及び前記第2のレジスト膜を前記基板上から除去するレジスト膜除去工程と、
を有することを特徴とする基板の製造方法。
【請求項2】
前記上地膜の外形は前記下地膜の外形より小さいことを特徴とする請求項1に記載の基板の製造方法。
【請求項3】
前記上地膜の断面は略台形形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の基板の製造方法。
【請求項4】
前記レジスト膜除去工程は、前記第1のレジスト膜及び前記第2のレジスト膜の除去にともない前記第1のレジスト膜上に形成された前記第1の膜及び前記第2のレジスト膜上に形成された前記第2の膜が前記基板上より除去されることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面に膜が形成された基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィー技術を用いて基板上に金属膜を形成する方法として、開口部を有するレジストを基板の表面に形成し、レジストの開口部に露出した基板の表面及びレジストの表面に金属膜を形成した後、レジストを基板から剥離して、基板表面の所定領域に金属膜を形成する、リフトオフ法を用いた基板の製造方法が知られている。
【0003】
このような金属膜が形成された基板に用いられるレジストには、フィルム状のドライフィルムレジストや液状レジストを利用することができる。特にドライフィルムレジストは、レジスト層の厚さを任意に選択でき、レジストの塗布装置が不要で均一な膜厚が得ることができるため、多様な製造工程に適用できるといった特徴があり、液状レジストに比べて作業性や生産性に優れ、プリント配線基板等の製造で広く利用されている。
【0004】
特許文献1には、基板の表面にバリのない金属パターンを形成する方法として、非感光層と感光層の2層からなるドライフィルムレジストを基板の表面に形成し、このドライフィルムレジストをパターニングしてドライフィルムレジストにおける上方に位置する感光層が下方に位置する非感光層に対してオーバーハングした断面庇形状の開口を持つレジストを形成し、このレジストをマスクとして基板の表面に金属膜を形成することが記載されており、このように形成された金属膜は断面台形形状であることが示されている。
【0005】
また、特許文献2には、半導体素子の搭載基板として用いられるセラミック配線基板が記載されている。このセラミック配線基板は、レジストを利用してセラミック基板の表面に下地金属膜、拡散防止膜、半田膜等からなる積層の金属膜が形成され、金属膜の最表面である半田膜に半導体素子が搭載される。セラミック基板の表面に形成される金属膜は、半田膜の下面に拡散防止膜を形成することで半導体素子の接合強度を高めることができると共に、接続部の抵抗増大やそれに基づく半導体素子の動作電流の上昇を防ぐことが可能とであり、更に、拡散防止膜の外周部は全周にわたって半田膜の端部からはみ出した形状とすることで、半田膜の溶融不良及び半導体素子の高さ方向位置不良等を防ぐことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-90380号公報
【特許文献2】特開2013-16838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
基板上に表層側の膜より基板側に位置する下地膜の外形が大きな積層膜を形成しようとした場合、特許文献1に記載されるような断面庇形状の開口を持つレジストを利用すると、レジストのオーバーハングした部分が妨げとなり、レジストの基板側に位置する開口(断面庇形状のレジストの開口において、オーバーハングした部位より基板側に位置する開口)の縁部まで下地膜を形成することが困難である。したがって、下地膜を所定形状に形成できず、その外形ばらつきも生じやすいという課題がある。
【0008】
このような課題に対して、基板上に下地膜形成のための第1レジスト膜を塗布、パターニングして下地膜を形成し、その後、第1レジスト膜を剥離してから表層側の膜を形成するための第2レジスト膜を下地膜及び基板上に塗布しパターニングして表層側の膜を形成することで、所定形状の膜を得る方法がある。しかしこの方法では、レジスト膜の形成及び剥離を膜の積層数やパターン形状の数に応じて行う必要があり、多くの工程、工数が必要となることが課題である。
【0009】
本発明は、上記課題を解決しようとするもので、基板上に形成される下地膜及び上地膜を備えた積層膜を所定形状に容易に形成することができる基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
基板上に下地膜と当該下地膜上に形成された上地膜とを備えた基板の製造方法であって、基板上に開口部を有する第1のレジスト膜を形成する第1レジスト膜形成工程と、前記基板及び前記第1のレジスト膜上に前記下地膜となる第1の膜を形成する第1膜形成工程と、前記第1の膜上に、前記第1のレジスト膜の開口部より小さい開口部を備えた第2のレジスト膜を形成する第2レジスト膜形成工程と、前記第1の膜及び前記第2のレジスト膜上に前記上地膜となる第2の膜を形成する第2膜形成工程と、前記第1のレジスト膜及び前記第2のレジスト膜を前記基板上から除去するレジスト膜除去工程と、を有する基板の製造方法とする。
前記上地膜の外形は前記下地膜の外形より小さくしてもよい。また、前記上地膜の断面は略台形形状であってもよい。
さらにまた、前記レジスト膜除去工程は、前記第1のレジスト膜及び前記第2のレジスト膜の除去にともない前記第1のレジスト膜上に形成された前記第1の膜及び前記第2のレジスト膜上に形成された前記第2の膜が前記基板上より除去されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の基板の製造方法によれば、基板上に形成される下地膜及び上地膜を備えた積層膜を所定形状に容易に形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る配線基板の製造方法を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る配線基板の製造方法を示す模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る基板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の基板の製造方法について図面を用いて説明する。図面においては各構成をわかりやすくするために実際の形状や実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0014】
図3は本発明の一実施形態に係る基板の断面図である。配線基板10は、配線基板10の基材である基板1と、基板1の一方の表面に形成され、下地膜の一例としての下地金属膜3と、下地金属膜3の表面に形成され、上地膜の一例としてのはんだ膜5とを備える。基板1は外形約4インチの略正方形の平板であり、厚みは0.5mmの炭化ケイ素基板である。また、下地金属膜3は、基板1の表面側より、基板1との密着性を得るためのTi膜、Ti膜がはんだ膜5へ拡散することを防止するPt膜、はんだ膜5との密着を得るためのAu膜が順に積層された積層金属膜である。下地金属膜3は厚み0.3μm、上面視したときの外形は一辺0.4mmの矩形状であり、基板1の中央部に配置されている。はんだ膜5は、AuSn合金を主成分とする膜であり、厚み0.5μm、上面視したときの外形は一辺0.3mmの矩形状と下地金属膜3の外形より小さく、下地金属膜3の外形の内側にはんだ膜5の外形が収まるよう配置され、その断面形状は基板1の表面側から徐々に外形が小さくなる略台形形状である。
【0015】
次に、本発明の基板の製造方法を説明する。
図1及び
図2は本発明の一実施形態に係る配線基板10の製造方法を示す模式図である。配線基板10は以下の方法により製造される。
【0016】
[第1レジスト膜形成工程1:
図1(a)]
まず、配線基板10の基材となる基板1を準備して、この基板1の一方の面に第1のレジスト膜2を形成する。本実施形態では、第1のレジスト膜2は厚み約0.015mmのドライフィルムレジストであり、ドライフィルムレジストの一方の面に設けられた粘着層を基板1に接着することで基板1上に第1のレジスト膜2を形成している。
【0017】
[第1レジスト膜形成工程2:
図1(b)]
次に、公知のフォトリソグラフィー技術を用いて第1のレジスト膜2をパターニングし、第1のレジスト膜2の配線基板10における下地金属膜3の形成部位に該当する箇所(以下、下地膜形成領域と呼ぶ。)に開口部21を形成する。なお、開口部21の外形は下地膜形成領域よりわずかに大きく、具体的には後述する第1の膜形成工程において開口部21の側面に付着する金属膜30の厚み分だけ、下地膜形成領域の外形より大きく設定されている。
【0018】
[第1の膜形成工程:
図1(c)]
次に、第1のレジスト膜2が形成された基板1上に配線基板10における下地金属膜3となる第1の膜(以下、金属膜30と呼ぶ。)を形成する。金属膜30の形成は、第1のレジスト膜2が形成された基板1上にTi膜、Pt膜及びAu膜の各膜を蒸着法やスパッタリング法などによって順次形成することで行う。この結果、第1のレジスト膜2の表面、第1のレジスト膜2の開口部21の側面、及び第1のレジスト膜2の開口部21から露出した基板1の表面に金属膜30が形成される。
【0019】
[第2レジスト膜形成工程1:
図1(d)]
次に、金属膜30が形成された基板1上に第2のレジスト膜4を形成する。本実施形態では、第2のレジスト膜4は第1のレジスト膜2と同じドライフィルムレジストを用いた。第2のレジスト膜4の形成は、第2のレジスト膜4の粘着層を金属膜30に接着、より具体的には第2のレジスト膜4の粘着層を第1のレジスト膜2上に形成された金属膜30の表面に接着する。このように基板1上に形成した第2のレジスト膜4は、基板1の表面に直接形成された下地膜形成領域における金属膜30の表面とは接着されず、下地膜形成領域における金属膜30とは空隙をもって対峙した状態である。
【0020】
[第2レジスト膜形成工程2:
図2(e)]
次に、公知のフォトリソグラフィー技術を用いて第2のレジスト膜4をパターニングし、第2のレジスト膜4の配線基板10におけるはんだ膜5の形成部位に該当する箇所(以下、はんだ膜形成領域と呼ぶ。)に開口部41を形成する。なお、開口部41の外形は、はんだ膜形成領域よりわずかに小さく設定されており、下地膜形成領域の外形よりも小さい。開口部41が形成された第2のレジスト膜4は、第1のレジスト膜2の表面及び開口部21の側面に形成された金属膜30の端部から、開口部41の端部が下地膜形成領域にせり出した(オーバーハングした)状態であり、第2のレジスト膜4のオーバーハング部42は、下地膜形成領域に形成された金属膜30と空隙をもって対峙している。
【0021】
[第2の膜形成工程:
図2(f)]
次に、第2のレジスト膜4が形成された基板1上に第2の膜(以下、はんだ膜50と呼ぶ。)を形成する。はんだ膜50は配線基板10におけるはんだ膜5となる膜であり、はんだ膜50の形成は蒸着法やスパッタリング法などによって行う。この結果、第2のレジスト膜4の表面、第2レジスト膜4の開口部41の側面、及び第2のレジスト膜4の開口部41から露出した金属膜30の表面にはんだ膜50が形成される。金属膜30の表面に形成されるはんだ膜50は、第2のレジスト膜4がオーバーハングした状態であり、第2のレジスト膜4のオーバーハング部42と下地膜形成領域に形成された金属膜30とが空隙をもって対峙しているため、その断面は基板1の表面側から上方へ向かって徐々に外形が小さくなる略台形形状となり、金属膜30と接した部位におけるはんだ膜50の外形は開口部41より大きい。また本実施例では、はんだ膜50の外形が下地膜形成領域の外形より小さくなるよう第2のレジスト膜40の開口部41の外形の大きさ、厚み等を設定している。なお、はんだ膜50を断面台形形状としなくともよい場合は、第2のレジスト膜4のオーバーハング部42を基板1に向かって垂れ下がった状態としても構わない。
【0022】
[レジスト膜除去工程:
図2(g)]
最後に、第1のレジスト膜2及び第2のレジスト膜4を基板1から除去する。このとき第2のレジスト膜4の表面に形成されたはんだ膜50及び第1のレジスト膜2の表面及び側面に形成された金属膜30もリフトオフプロセスによって第1のレジスト膜2及び第2のレジスト膜4とともに除去され、基板1の表面に残存しない。第2のレジスト膜4及び第1のレジスト膜2の除去は、第2のレジスト膜4及び第1のレジスト膜2に紫外線を照射し粘着層を硬化することで接着力を低下させ、第2のレジスト膜4と第1のレジスト膜2とを基板1上から剥離する。このように第2のレジスト膜4及び第1のレジスト膜2の粘着層の接着力を低下することによって第2のレジスト膜4及び第1のレジスト膜2を基板1から容易に除去することができる。
【0023】
本実施形態における基板の製造方法では、基板1に第1のレジスト膜2を形成後に金属膜30を形成し、その後、第1のレジスト膜2を剥離することなく金属膜30上に第2のレジスト膜4、はんだ膜50を形成し、最後に第1のレジスト膜2及び第2のレジスト膜4を除去することで金属膜30及びはんだ膜50の不要部分をリフトオフプロセスによって除去している。また、第2のレジスト膜4を第1のレジスト膜2にオーバーハングさせ、レジスト膜の断面を庇形状とている。レジスト膜の断面を庇形状とした場合、通常、下地膜を所定形状に精度よく形成することは困難である。しかし本実施形態のように、第1のレジスト膜2を形成後に金属膜30を形成し、その状態で第2のレジスト膜4を形成してはんだ膜50を形成することで、金属膜30を第1のレジスト2の開口部21から露出した基板1表面の全面へ確実に形成することができ、下地膜を精度よく形成することが可能である。また、本実施例では第1のレジスト膜2を除去することなく第2のレジスト膜4を金属膜30上に形成し、最後に第1のレジスト膜2と第2のレジスト膜4を除去している。そのため、第1のレジスト膜2と第2のレジスト膜4とを、金属膜30やはんだ膜50の形成直後にそれぞれ除去する場合と比べ、工程数を少なくすることが可能である。
【0024】
以上、本発明の基板の製造方法について、実施例に基づき説明してきたが、本発明の範囲は前述の実施例に限定されるものではなく本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。例えば、基板1の基材は炭化ケイ素としたが、炭化ケイ素に限定されず窒化アルミニウム等の他の材料を用いても構わない。また、基板1は矩形基板に限定されず円形基板でも構わない。
【0025】
また、第1のレジスト膜2及び第2のレジスト膜4にドライフィルムレジストを利用したが、第1のレジスト膜2及び第2のレジスト膜4を、液状レジストを用いてもよい。ただし、第2の膜を断面台形形状としたい場合は、第2のレジスト膜4にオーバーハング部42を設けるために第2のレジスト膜4にフィルム状のドライフィルムレジストを利用することが好ましい。なお、レジスト膜除去工程において、第2のレジスト膜4及び第1のレジスト膜2の除去は、第2のレジスト膜4及び第1のレジスト膜2に紫外線を照射し粘着層を硬化することで接着力を低下させ、第2のレジスト膜4と第1のレジスト膜2とを基板1上から剥離したが、例えば、溶剤中に基板1を浸漬させて、溶剤によって第2のレジスト膜4及び第1のレジスト膜2の粘着層を溶かすことで接着力を低下させ、第2のレジスト膜4と第1のレジスト膜2とを基板1上から剥離しても構わない。さらにまた、下地膜をTi膜、Pt膜、Au膜が積層した下地金属膜3としたが、下地膜は積層膜に限定されず単層膜であってもよく、その材料も限定されるものではない。また、上地膜はAuSn合金を主成分とするはんだ膜5としたが、上地膜の材料ははんだに限定されるものではなく、また、複数の膜からなる積層膜であってもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 基板
2 第1のレジスト膜
21 開口部
3 下地金属膜
30 金属膜
4 第2のレジスト膜
41 開口部
42 オーバーハング部
5 はんだ膜
50 はんだ膜
10 配線基板