(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108245
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】窪み計測装置、窪み計測方法、及び窪み計測プログラム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20230728BHJP
G01B 11/28 20060101ALI20230728BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20230728BHJP
G06T 7/62 20170101ALI20230728BHJP
【FI】
G01B11/24 A
G01B11/28 Z
G06T7/00 C
G06T7/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009257
(22)【出願日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000232254
【氏名又は名称】日本電気通信システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】河野 研二
(72)【発明者】
【氏名】青木 教之
(72)【発明者】
【氏名】高岡 真則
(72)【発明者】
【氏名】上野 悟己
(72)【発明者】
【氏名】安達 ゆり
【テーマコード(参考)】
2F065
5L096
【Fターム(参考)】
2F065AA21
2F065AA53
2F065AA59
2F065BB05
2F065DD03
2F065DD06
2F065FF05
2F065FF11
2F065GG04
2F065HH04
2F065JJ03
2F065JJ05
2F065JJ26
2F065QQ25
2F065QQ28
2F065QQ31
2F065SS02
2F065SS04
2F065SS13
5L096AA09
5L096CA18
5L096CA24
5L096FA08
5L096FA77
5L096GA51
5L096MA07
(57)【要約】
【課題】地物の表面に形成された窪みの特定及び計測を容易に行なうことができる窪み計測装置、窪み計測方法、及び窪み計測プログラムを提供する。
【解決手段】窪み計測装置200は、地物の表面に形成された窪みの少なくとも一部を含む測定空間を3次元センサにより測定して得られる測定空間の点群データを取得する測定データ取得部201と、測定空間の点群データに対して窪みが含まれる対象領域を指定する対象領域指定部221と、対象領域の点群データに基づき窪みを特定する窪み特定部222と、特定された窪みの点群データに基づき窪みの体積を算出する体積算出部223と、を有し、窪み特定部222は、整地から窪みを特定する第1特定処理と不整地から窪みを特定する第2特定処理とのいずれか一方を選択して窪みを特定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地物の表面に形成された窪みの少なくとも一部を含む測定空間を3次元センサにより測定して得られる前記測定空間の点群データを取得する測定データ取得部と、
前記測定空間の点群データに対して体積を求める前記窪みが含まれる対象領域を指定する対象領域指定部と、
前記対象領域の点群データに基づき前記窪みを特定する窪み特定部と、
特定された前記窪みの点群データに基づき前記窪みの体積を算出する体積算出部と、を有し、
前記窪み特定部は、
前記表面の凹凸量が予め設定した閾値よりも小さい整地から前記窪みを特定する第1特定処理と前記表面の凹凸量が前記閾値以上の不整地から前記窪みを特定する第2特定処理とのいずれか一方を選択して前記窪みを特定する窪み計測装置。
【請求項2】
前記第1特定処理では、
前記対象領域の点群データから平面部分を除去する処理と、
前記平面部分が除去された前記点群データに対してクラスタリングを行うことにより平面除去クラスタを生成する処理と、
前記平面除去クラスタ毎に前記窪みの上面部分の点群データを捕間する処理と、
を行う請求項1に記載の窪み計測装置。
【請求項3】
前記第2特定処理では、
前記対象領域の点群データに対して前記窪みの深さ方向と直交する前記窪みの陥没面をレイヤ化する処理と、
前記陥没面をレイヤ化したレイヤ毎の点群データを取得し、前記レイヤ毎の点群データを上位の前記レイヤから順次追加して生成される検索クラスタ毎にクラスタリングを行うことにより生成された各レイヤクラスタに対して前記陥没面内に存在する下位の前記レイヤを順次検索する処理と、
を行う請求項1又は2に記載の窪み計測装置。
【請求項4】
前記体積算出部は、
前記窪みにおいて前記3次元センサによる測定が不能なオクルージョンがある場合は、
前記窪みの点群データから得られる欠損補間点群を前記オクルージョンによってできた欠損部に補間した後、前記窪みの体積を算出する第1算出処理を行い、
前記オクルージョンがない場合は、
前記窪み特定部により特定された前記窪みの点群データに基づき前記窪みの体積を算出する第2算出処理を行なう、
請求項1~3のいずれか1項に記載の窪み計測装置。
【請求項5】
前記体積算出部は、
特定された前記窪みの高さ、幅、奥行きの寸法のうち少なくとも1つを算出する請求項1~4のいずれか1項に記載の窪み計測装置。
【請求項6】
地物の表面に形成された窪みの少なくとも一部を含む測定空間を3次元センサにより測定して得られる前記測定空間の点群データを取得するステップと、
前記測定空間の点群データに対して体積を求める前記窪みが含まれる対象領域を指定するステップと、
前記対象領域の点群データに基づき前記窪みを特定するステップと、
特定された前記窪みの点群データに基づき前記窪みの体積を算出するステップと、を有し、
前記窪みを特定するステップでは、
前記表面の凹凸量が予め設定した閾値よりも小さい整地から前記窪みを特定する第1特定方法と前記表面の凹凸量が前記閾値以上の不整地から前記窪みを特定する第2特定方法とのいずれか一方を選択して前記窪みを特定する窪み計測方法。
【請求項7】
コンピュータに実行させる窪み計測プログラムであって、
地物の表面に形成された窪みの少なくとも一部を含む測定空間を3次元センサにより測定して得られる前記測定空間の点群データを取得する処理と、
前記測定空間の点群データに対して体積を求める前記窪みが含まれる対象領域を指定する処理と、
前記対象領域の点群データに基づき前記窪みを特定する処理と、
特定された前記窪みの点群データに基づき前記窪みの体積を算出する処理と、を実行させ、
前記窪みを特定する処理では、
前記表面の凹凸量が予め設定した閾値よりも小さい整地から前記窪みを特定する第1特定方法と前記表面の凹凸量が前記閾値以上の不整地から前記窪みを特定する第2特定方法とのいずれか一方を選択して前記窪みを特定する処理を実行させる窪み計測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窪み計測装置、窪み計測方法、及び窪み計測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力業界やガス業界等では、地中に敷設した配管を定期的に点検する必要があり、掘削機等によって地面を掘削して配管の点検を行っている。掘削作業にあたっては、配管が露出するように掘削量が調整されるが、必要以上に掘削を行うと地中の配管を破損してしまう虞があるため、掘削量を正確に計測できる技術が求められている。
【0003】
一方、建設業界や土木業界等では、工事等によって生じた掘削箇所の埋め戻し作業において、埋め戻しに必要な土砂の残量を把握するために、掘削領域の体積を計測できる技術が求められている。また、鉄道業界等では、地中の空洞化によって地上の線路が沈下すると、陥没事故を引き起こす虞があるため、線路の沈下箇所を早期に発見する技術が求められている。
【0004】
掘削等による窪みを計測する技術として、3次元センサを用いて測定される点群データに基づいて窪みの深度や体積を計測する方法が知られている。このような技術の一例として、特許文献1が挙げられる。
【0005】
特許文献1には、以下のデータ解析装置、データ解析方法、及びプログラムが開示されている。近傍空間設定手段は各要素点を注目点とし、当該注目点を包含し予め定められた3次元形状及び大きさを有する要素点近傍空間を設定する。3次元空間フィルタリング手段は各要素点近傍空間において、点群の要素点が予め設定した複数個以上包含される場合に、当該要素点を検出対象である段差又は亀裂に由来する特徴点として抽出する。亀裂検出手段は特徴点の配置から検出対象の位置を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の技術によって、地物表面から計測された点群の3次元座標データに基づいて地物表面に生じた変状である亀裂、段差を検出する作業の自動化を可能とすることが記載されている。しかしながら、特許文献1の技術は、亀裂や段差等の窪みを検出するものであり、窪みを特定して、窪みの体積や寸法を計測することができないという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、上述した課題を鑑み、地物の表面に形成された窪みの特定及び計測を容易に行なうことができる窪み計測装置、窪み計測方法、及び窪み計測プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施の形態にかかる窪み計測装置は、地物の表面に形成された窪みの少なくとも一部を含む測定空間を3次元センサにより測定して得られる測定空間の点群データを取得する測定データ取得部と、測定空間の点群データに対して体積を求める窪みが含まれる対象領域を指定する対象領域指定部と、対象領域の点群データに基づき窪みを特定する窪み特定部と、特定された窪みの点群データに基づき窪みの体積を算出する体積算出部と、を有し、窪み特定部は、表面の凹凸量が予め設定した閾値よりも小さい整地から窪みを特定する第1特定処理と表面の凹凸量が閾値以上の不整地から窪みを特定する第2特定処理とのいずれか一方を選択して窪みを特定する。
【0010】
また、一実施の形態にかかる窪み計測方法は、地物の表面に形成された窪みの少なくとも一部を含む測定空間を3次元センサにより測定して得られる測定空間の点群データを取得するステップと、測定空間の点群データに対して体積を求める窪みが含まれる対象領域を指定するステップと、対象領域の点群データに基づき窪みを特定するステップと、特定された窪みの点群データに基づき窪みの体積を算出するステップと、を有し、窪みを特定するステップでは、表面の凹凸量が予め設定した閾値よりも小さい整地から窪みを特定する第1特定方法と表面の凹凸量が閾値以上の不整地から窪みを特定する第2特定方法とのいずれか一方を選択して窪みを特定する。
【0011】
また、一実施の形態にかかる窪み計測プログラムは、コンピュータに実行させる窪み計測プログラムであって、地物の表面に形成された窪みの少なくとも一部を含む測定空間を3次元センサにより測定して得られる測定空間の点群データを取得する処理と、測定空間の点群データに対して体積を求める窪みが含まれる対象領域を指定する処理と、対象領域の点群データに基づき窪みを特定する処理と、特定された窪みの点群データに基づき窪みの体積を算出する処理と、を実行させ、窪みを特定する処理では、表面の凹凸量が予め設定した閾値よりも小さい整地から窪みを特定する第1特定方法と表面の凹凸量が閾値以上の不整地から窪みを特定する第2特定方法とのいずれか一方を選択して窪みを特定する処理を実行させる。
【発明の効果】
【0012】
地物の表面に形成された窪みの特定及び計測を容易に行なうことができる窪み計測装置、窪み計測方法、及び窪み計測プログラムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態1にかかる窪み計測装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】測定空間を3次元センサにより測定する様子を示す図である。
【
図3】実施の形態2にかかる窪み計測装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図3に示す窪み計測装置の動作を示すフローチャートである。
【
図5】窪み特定部における第1特定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】整地上に窪みが存在する地物のイメージ図である。
【
図7】窪み特定部における第2特定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】不整地上に窪みが存在する地物のイメージ図である。
【
図11】オクルージョンの影響がある場合の測定空間を3次元センサにより測定する様子を示す図である。
【
図12】体積算出部における第1算出処理の流れを示すフローチャートである。
【
図13】欠損部に最下点P1によって与えられる欠損補間点群を補間する前のイメージ図である。
【
図14】欠損部に最下点P1によって与えられる欠損補間点群を補間した後のイメージ図である。
【
図15】欠損部に窪みの傾斜角度θによって与えられる欠損補間点群を補間する前のイメージ図である。
【
図16】欠損部に窪みの傾斜角度θによって与えられる欠損補間点群を補間した後のイメージ図である。
【
図17】
図3に示す窪み計測装置により窪みを計測した後のイメージ図である。
【
図18】
図3に示す窪み計測装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。さらに、以下の説明において同一又は同等の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
図1は、実施の形態1にかかる窪み計測装置の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、窪み計測装置200は、測定データ取得部201と、対象領域指定部221と、窪み特定部222と、体積算出部223と、を有している。
【0016】
測定データ取得部201は、地物10の表面に形成された窪み1の少なくとも一部を含む測定空間を3次元センサ20により測定(撮影)して得られる測定空間の点群データである測定データ100を取得する。対象領域指定部221は、測定データ100に対して体積を求める窪み1が含まれる対象領域503を指定する。窪み特定部222は、対象領域503の点群データに基づき窪み1を特定する。また、窪み特定部222は、表面の凹凸量が予め設定した閾値よりも小さい整地501から窪み1(502)を特定する第1特定処理と表面の凹凸量が閾値以上の不整地701から窪み1(702)を特定する第2特定処理とのいずれか一方を選択して窪み1を特定する。体積算出部223は、特定された窪み1の点群データに基づき窪み1の体積を算出する。
【0017】
本実施形態にかかる窪み計測装置200によれば、地物の表面に形成された窪みの特定及び計測を容易に行なうことができる。
【0018】
実施の形態2
次に、
図2~18を参照して、本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態では、実施の形態1で説明した窪み計測装置200について、さらに詳細に説明する。まず、
図2は、測定空間を3次元センサにより測定する様子を示す図である。
【0019】
図2に示すように、窪み計測装置200は、測定空間を3次元センサ20により測定(撮影)して得られる当該測定空間の点群データである測定データ100を取得し、測定データ100の中から地物10に形成された窪み1(502、702)を自動的に特定するとともに、特定した窪み1(502、702)の体積を算出する装置である。
【0020】
本実施形態では、表面が平坦な整地501上に存在する窪み502と、表面が不定形な不整地701上に存在する窪み702と、が形成された地物10を例に挙げて、窪み計測装置200が行う処理を説明する。本実施形態では、整地501が水平面であるものとして説明するが、整地501は鉛直方向に延びる壁面であってもよく、斜面であってもよく、曲面であってもよい。
【0021】
3次元センサ20は、地物10の表面に形成された窪み502、702の少なくとも一部を含む測定空間を撮影可能な位置に設けられている。
図2に示す例では、窪み502、702の斜め上方付近に3次元センサ20が設置されている。3次元センサ20は、例えばToF(Time-of-Flight)カメラ、ステレオカメラ、3D-LiDAR(Light Detection And Ranging)等の3次元空間における距離を測定するセンサである。
【0022】
3次元センサ20は、撮影した画像から測定データ100を生成する。3次元センサ20は、例えば有線又は無線の通信網であるネットワークを介して窪み計測装置200と通信可能に接続されている。
【0023】
測定データ100は、各測定点のセンサからの距離を含む3次元点群データである。3次元とは、緯度、経度、及び海抜(高さ)情報でもよいし、ユーザが設定した特定の位置を原点とした3次元ユークリッド座標系でも極座標系でもよい。以下の例では、ユーザが設定した原点における3次元ユークリッド座標系(各方向をX、Y、Z座標とする)を想定する。各座標の単位はメートル(m)やセンチメートル(cm)、及びミリメートル(mm)で表現されるが、他の単位でもよい。また、Z座標の値は、高さ(深さ)情報を意味する。
【0024】
3次元点とは、各点にその点群データが撮影された時刻や、レーザーの反射強度や赤・青・緑等の色情報等が付与されている点である。3次元点に付与される情報に制限はないが、少なくとも位置情報である3次元座標(X、Y、Z座標)が付与されたものであり、点群とはその3次元点が2点以上集まった集合である。また、本実施形態において、ユークリッド座標系のZ軸方向は鉛直方向を意味し、X軸とY軸の張る2次元平面は水平面を意味する。
【0025】
窪み計測装置200は、GPS(Global Positioning System)やIMU(Inertial Measurement Unit)等の位置姿勢センサ、RGB(Red Green Blue)カメラ、環境センサ等の他のセンサと3次元センサ20とを組み合わせて生成された測定データ100を取得してもよい。また、窪み計測装置200は、外部システム(例えば、外部の装置、点検、工事等)と連携する機能を有していてもよい。
【0026】
なお、測定データ100の取得方法として、任意の方法を採用することができる。例えば、自動車等の車両、移動ロボット等の移動体に3次元センサ20を搭載して、移動体によって3次元センサ20を移動させながら測定空間を測定してもよい。測定データ100の取得方法の一形態として、ドローン等の空中移動体に3次元センサ20を搭載すれば、測定空間を空撮することができる。
【0027】
次に、
図3を参照して窪み計測装置200の構成について説明する。
図3は、実施の形態2にかかる窪み計測装置の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、窪み計測装置200は、前処理部210と、計測部220と、ユーザインターフェース部230と、により構成される。
【0028】
前処理部210は、
図1で説明した測定データ取得部201に相当し、3次元センサ20から測定データ100を取得する。前処理部210は、計測部220における処理の前に、データを整形するための前処理を測定データ100に対して行い、前処理された測定データ100を計測部220に出力する。前処理部210は、フォーマット変換部211と、ノイズ除去部212と、角度変換部213と、を有する。
【0029】
フォーマット変換部211は、測定データ100のデータ形式を窪み計測装置200で使用可能な所定のフォーマットに変換する機能を有する。フォーマット変換部211は、所定のフォーマットに変換された測定データ100をノイズ除去部212に出力する。なお、3次元センサ20から取得した測定データ100が所定のフォーマットである場合には、フォーマット変換部211の処理は省略される。また、フォーマット変換部211は、データ形式の変換だけでなく、複数のデータの合成や、他のセンサや外部システムから取得されたデータとの融合や統合を行ってもよい。
【0030】
ノイズ除去部212は、測定データ100に含まれる点群データの中から外れ値等の不要な点群データを除去する機能を有する。ノイズ除去の方法として、例えば平滑化処理、フィルタリング、外れ値の除去処理や補正処理等が挙げられる。ノイズ除去部212は、ノイズが除去された測定データ100を角度変換部213に出力する。
【0031】
角度変換部213は、最短計測の前処理として測定データ100が所定の角度となるように回転させる角度変換を行う機能を有する。角度変換部213は、他のセンサや外部システムの情報等に基づいて測定データ100の角度変換を行う。例えば、角度変換部213は、IMUにより所定の角度となる鉛直方向を取得したり、他のセンサや外部システムからの地勢・地理情報、CAD(Computer Aided Design)、出来形図等の情報を参照したりすることにより測定データ100の角度変換を行うことができる。本実施形態では、窪み502、702の深さ方向が鉛直方向(Z軸方向)となるように回転させることによって測定データ100が所定の角度となるように角度変換が行なわれる。
【0032】
また、角度変換部213は、窪み502、702の陥没面が水平方向となるように回転させることによって測定データ100が所定の角度となるように角度変換を行ってもよい。また、測定データ100の角度変換は、角度変換部213を用いずに、操作部231が受け付けたユーザの操作により入力された情報に基づいて手動で行ってもよい。
【0033】
続いて、計測部220は、測定データ100に基づいて窪み502、702の少なくとも一部を特定し、特定した窪み502、702の少なくとも一部から窪み502、702の体積を算出(推定)する機能を有する。計測部220は、対象領域指定部221と、窪み特定部222と、体積算出部223と、により構成される。
【0034】
対象領域指定部221は、指定された条件に基づいて、前処理部210から取得した測定データ100に対して体積を求める窪み502、702が含まれる対象領域503を指定する機能を有する。対象領域指定部221は、例えば操作部231が受け付けたユーザの操作により指定された条件(高さ、幅、奥行き等)に基づいて対象領域503を指定する。ユーザは、測定空間内で窪み502、702が存在しない領域を除外して対象領域503を指定することができる。対象領域指定部221は、操作部231を介して取得した条件に基づく対象領域503に関する情報を窪み計測装置200のメモリ120に記憶する処理を行うとともに、対象領域503に関する情報を窪み特定部222に出力する。対象領域503に関する情報は、操作部231を介して取得した条件と対象領域503の点群データである対象領域点群とを含む。
【0035】
なお、対象領域指定部221は、条件が指定されていない場合、測定データ100の全体(測定空間の全景)を対象領域503として指定する。すなわち、対象領域指定部221は、条件が指定されていない場合、前処理が完了した測定データ100に相当する対象領域点群を窪み特定部222に出力する。対象領域指定部221は、指定された対象領域503に関する情報を複数保存しておき、保存されたデータを読み出すことで対象領域503を切り替えできるようにしてもよい。
【0036】
窪み特定部222は、対象領域指定部221から取得した対象領域点群に基づき、対象領域503内の窪み502、702を自動的に特定(クラスタリング)する機能を有する。窪み502、702を特定する具体的な方法として、地物10の表面に窪み502、702が発生する前後の点群データを比較して得られる差分を抽出する方法が挙げられる。窪み502、702を特定する他の方法として、窪み502、702の寸法や体積に閾値を設けるとともに閾値を超える箇所を抽出する方法、窪み502、702の寸法や体積に応じて色分けした画像を表示部232に表示する方法等が挙げられる。また、窪み特定部222は、上記したRGBカメラ等の他のセンサと連携して窪み502、702を特定してもよい。
【0037】
窪み特定部222は、地物10の表面の形状(凹凸量)に応じて第1特定処理と第2特定処理とのいずれか一方を選択して、整地501上に存在する窪み502又は不整地701上に存在する窪み702を特定することができる。窪み特定部222は、特定された窪み502、702の少なくとも一部の点群データである3次元マップを生成して体積算出部223に出力する。窪み特定部222における第1特定処理及び第2特定処理の詳細は後述する。
【0038】
体積算出部223は、窪み特定部222から取得した3次元マップに基づき窪み502、702の体積を算出(推定)する機能を有する。体積算出部223は、3次元センサ20による測定が不能なオクルージョンの影響の有無に応じて、第1算出処理と第2算出処理とのいずれか一方を選択して、窪み502、702の体積を算出(推定)することができる。
【0039】
また、体積算出部223は、窪み502、702の体積だけでなく窪み502、702の高さ、幅、奥行きの寸法のうち少なくとも1つを算出(推定)することもできる。窪み502、702の寸法を算出する場合は、3次元マップに含まれる点群データからX、Y、Z座標のそれぞれ最大値及び最小値を求め、各座標の最大値と最小値の差分から寸法を算出する。
【0040】
オクルージョンの影響の有無を確認する方法としては、対象領域指定部221によって窪み502、702ができるだけ過不足なく収まるように対象領域503を指定し、当該対象領域503に基づいて特定した窪み502、702の寸法によって判定するとよい。
【0041】
体積算出部223は、体積の算出結果を表示部232に出力する。なお、算出結果には、体積だけでなく寸法の算出結果が含まれていてもよい。体積算出部223における第1算出処理及び第2算出処理の詳細は後述する。
【0042】
体積算出部223は、他のセンサから取得される情報を用いて窪み502、702の体積を算出してもよい。例えば、体積算出部223は、RGBカメラや環境センサ等の情報を用いて窪み502、702の位置情報や大きさ(寸法)の情報を補正すること等により、体積の算出精度を高めることができる。また、体積算出部223は、外部システムから取得された情報や操作部231が受け付けたユーザの操作により入力された情報を用いて体積の算出を行なってもよい。ここで、窪み502、702の体積を算出するための情報として、特定対象の種別(例えば、材質)や状況(例えば、土壌の粘度、土壌の含水量等)、環境(例えば、降水、温湿度等)等が挙げられる。
【0043】
ユーザインターフェース部230は、窪み計測装置200で扱う点群データの可視化や操作、及び計測部220により計測された計測結果等の表示を行う機能を有する。ユーザインターフェース部230は、操作部231と、表示部232と、を有する。ユーザインターフェース部230は、操作部231及び表示部232へのインタフェース回路だけでなく、外部システム(例えば、警報システム等)へのインタフェース回路を含んでいてもよい。
【0044】
また、ユーザインターフェース部230は、入力又は算出された情報を時系列に沿って窪み計測装置200のメモリ120に蓄積する処理を行ったり、入力又は算出された情報を抽象化したデータを窪み計測装置200のメモリ120に蓄積する処理を行ったりしても良い。さらに、メモリ120に蓄積されたこれらの情報及びデータを読み出してユーザや外部システムに伝達する処理を行ってもよい。
【0045】
操作部231は、ユーザからの操作を受け付ける。操作部231は、ユーザが窪み計測装置200に対して指示や情報等を入力可能な入力装置を有する。入力装置は、キーボード、マウス、テンキー、ボタン等の物理キーであってもよいし、ディスプレイと一体的にタッチパネルとして構成されていてもよい。ユーザは、操作部231を操作することにより、例えば対象領域503を指定するための条件を窪み計測装置200に入力することができる。
【0046】
表示部232は、窪み特定部222により特定された窪み502、702の特定結果や体積算出部223により算出された体積の算出結果等を表示する表示装置を有する。表示装置は、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイなどのプラットパネルディスプレイである。
【0047】
次に、
図4を参照して、本実施形態にかかる窪み計測装置200の動作を説明する。
図4は、
図3に示す窪み計測装置の動作を示すフローチャートである。
図4に示すように、窪み計測装置200は、ステップS301~S307の窪み計測処理を実行する。
【0048】
ステップS301において、前処理部210は、測定データ100を取得する。このステップでは、測定空間を3次元センサ20により測定して得られる測定データ100が取得される。測定データ100を取得したフォーマット変換部211は、必要に応じて、測定データ100のデータ形式を所定のフォーマットに変換する。
【0049】
続いて、ステップS302において、ノイズ除去部212は、ステップS301で取得された測定データ100に含まれる点群データの中から外れ値などの不要な点群データを除去する。
【0050】
続いてS303において、角度変換部213は、ステップS302のノイズ除去処理が行われた測定データ100が所定の角度となるように回転させる角度変換を行う。このステップでは、測定データ100における窪み502、702の上面から底面に向かう深さ方向が鉛直下向き(Z軸下向き)になるように角度変換を行う。このようにして、前処理が完了した測定データ100が生成される。
【0051】
続いて、ステップS304において、対象領域指定部221は、ステップS303の前処理が完了した測定データ100に対して体積を求める窪み502、702が含まれる対象領域503を指定する。このステップでは、操作部231が受け付けた条件に基づいて前処理が完了した測定データ100に対して対象領域503を指定し、対象領域点群を生成する。
【0052】
続いて、ステップS305において、窪み特定部222は、ステップS304で生成された対象領域点群に基づき窪み502、702を特定(クラスタリング)する。窪み計測装置200は、整地501上に存在する窪み502を特定する第1特定処理と、不整地701上に存在する窪み702を特定する第2特定処理と、のいずれか一方を選択して窪みの特定を行う。窪み計測装置200は、地物10の表面の凹凸量に応じて、第1特定処理と第2特定処理とを自動で切り替えて窪み502、702の特定を行う。
【0053】
具体的には、窪み特定部222は、地物10の表面における凸部と凹部とのZ座標の値の差分である凹凸量が閾値より小さい場合に整地501と判定して第1特定処理(ステップS400)を実行し、地物10の表面における凹凸量が閾値以上である場合に不整地701と判定して第2特定処理(ステップS600)を実行する。
【0054】
そこで、
図5及び
図6を参照して、第1特定処理の流れを説明する。
図5は、窪み特定部における第1特定処理の流れを示すフローチャートである。
図6は、整地上に窪みが存在する地物のイメージ図である。窪み計測装置200は、
図5に示すステップS401~S403に示す第1特定処理(ステップS400)を実行し、
図6に示す整地501上の窪み502を特定する。
【0055】
まず、ステップS401において、窪み特定部222は、対象領域指定部221から取得した対象領域点群の中から平面部分(例えば、平坦な地面、路面等)を除去する平面除去を行ない、平面除去点群を生成する。このステップにおいて、窪み特定部222は、測定空間内で窪み502が存在しない領域が除外された対象領域点群を対象領域指定部221から取得することが好ましい。
【0056】
平面部分は、例えばRANSAC(Random Sample Consensus)等のアルゴリズムにしたがって抽出することができる。平面部分を除去することで、地面や壁面のように平坦な同じ形状の物体が除去されて、正しくクラスタリングを行えるため、誤分類を抑えることができる。平面除去点群に対して、必要に応じてノイズ除去部212によってノイズ除去処理を行うように構成しても良い。
【0057】
続いて、ステップS402において、ステップS401で生成された平面除去点群に対してクラスタリングを行い、平面除去クラスタを生成する。クラスタリングは、点群データ(ここでは、平面除去点群)を複数のクラスタに分割又は分類する手法であり、例えばk平均法等を採用することができる。
【0058】
さらに、ステップS403において、ステップS402で生成された平面除去クラスタ毎に欠損している窪み502の上面部分502a(鉛直上側の面)の点群データである上面補間点群を補間する点群補間を行なうことにより、上面補間点群が補間された3次元マップを生成する。ここで生成される3次元マップは、整地501上に存在する窪み502を表す3次元マップであり、特定された窪み502毎に生成されるものである。上面補間点群の3次元座標は、ステップS304で指定した対象領域503の条件によって与えられる。
【0059】
ここで、「補間」とは、計測で得られた部位の値に基づいて、計測していない部位の値を算出することをいう。窪み特定部222は、生成した3次元マップを体積算出部223に出力する。以上が第1特定処理の流れである。
【0060】
一方、
図7及び
図8を参照して、第2特定処理の流れを説明する。
図7は、窪み特定部における第2特定処理の流れを示すフローチャートである。
図8は、不整地上に窪みが存在する地物のイメージ図である。窪み計測装置200は、
図7に示すステップS601~S610に示す第2特定処理を実行し、
図8に示す不整地701上の窪み702を特定する。
【0061】
まず、S601において、窪み特定部222は、対象領域指定部221から取得した対象領域点群を構成する各3次元点の3次元座標(X、Y、Z座標)のうちZ座標の値を基準として3次元点をサンプリングし、対象領域点群をレイヤ化する。この時のサンプリング数をnとする。このステップにおいて、窪み特定部222は、条件が指定されていない対象領域点群を対象領域指定部221から取得することが好ましい。なお、Z軸は、鉛直方向に沿った窪み702の深さ方向を指す。また、X軸は窪み702の幅方向を指し、Y軸は窪み702の奥行き方向を指す。
【0062】
窪み特定部222は、サンプリングした3次元点を深度(Z座標の値)に応じて色分けした色データを生成する。
図9は、色データを示すイメージ図である。
図9に示す色データは、X軸方向からみた地物10の側面を表している。
図9に示す例では、色が濃いほど深度が深いことを示し、色が淡いほど深度が浅いことを示している。
【0063】
続いて、S602において、ステップS601でサンプリングした3次元点の3次元座標(X、Y、Z座標)をX-Y平面へ射影して2次元座標(X、Y座標)に変換し、2次元の射影データを生成する。
図10は、射影データを示すイメージ図である。
図10に示す射影データは、3次元座標を2次元座標に変換することにより得られる2次元点が集合した2次元点群データからなり、Z軸方向からみた地物10の平面図を表している。
図10に示す例では、色が濃い領域ほど深度が深いことを示し、色が淡い領域ほど深度が浅いことを示している。なお、X-Y平面は、Z軸に直交する窪み702の陥没面を指す。
【0064】
続いて、S603において、レイヤカウンタmを「1」に設定する。レイヤカウンタmとは、第2特定処理において、レイヤ化された対象領域点群について上位レイヤ(m=1)から下位レイヤ(m=n)まで検索する窪み検索を行なうためのカウンタである。なお、下位レイヤは、上位レイヤより鉛直下側に位置するレイヤである。
【0065】
続いて、S604において、レイヤ化された対象領域点群のうち、m番目のレイヤの点群データであるレイヤ点群を取得し、検索されたレイヤをグループ化するための検索クラスタに追加する。
【0066】
続いて、S605において、検索クラスタに対してクラスタリングを行い、窪み702毎のレイヤクラスタを生成する。
【0067】
続いて、S606において、各レイヤクラスタに対して、各レイヤクラスタの領域内でX-Y平面に下位レイヤが存在するか否かを検索する。検索の結果、X-Y平面に下位レイヤが存在する場合(ステップS606;YES)は、窪み702が存在すると判定してステップS607に進む。そして、ステップS607において、ステップS606で検索された下位レイヤのレイヤ点群を取得し、ステップS608に進む。X-Y平面に下位レイヤが存在しない場合(ステップS606;NO)は、窪み702が存在しないと判定してステップS608に進む。
【0068】
続いて、S608において、レイヤカウンタに「1」を加算(m=m+1)する。その後、S604に戻り、レイヤ化された対象領域点群のうち最下位の下位レイヤ(m=n)が検索されるまで、ステップS604~S607に示す窪み検索の一連の処理を繰り返し行う。レイヤカウンタがm=nとなる最下位の下位レイヤまで窪み検索を終えたらステップS609に進む。
【0069】
続いて、S609において、ステップS604~S608の窪み検索によって取得したm=1~nの各レイヤのレイヤ点群に対して射影の復元を行う。このステップでは、レイヤ点群を構成する2次元点の2次元座標(X、Y座標)を3次元座標(X、Y、Z座標)に変換する。
【0070】
続いて、ステップS610において、ステップS609で3次元に復元したレイヤ点群に対してクラスタリングを行なうことにより窪み702毎の3次元マップを生成する。以上が第2特定処理の流れである。
【0071】
そして、窪み特定部222は、第1特定処理又は第2特定処理により生成した3次元マップを体積算出部223に出力する。
【0072】
ここで、第2特定処理において窪み702を特定する他の方法としては、例えば、上記した窪み検索を行なうことなく、
図9に示した色データの画像や
図10に示した射影データの画像を用いて窪み702を特定する方法が挙げられる。さらに別の方法として、エッジ検出等のアルゴリズムによって射影データから輪切り状になっている箇所(陥没面の外郭)を検出し、輪切り状になっている箇所に囲まれた領域内に下位レイヤが存在するか否かを検索する窪み検索の方式を採用してもよい。
【0073】
図3に戻り、S306において、体積算出部223は、ステップS400及びS600で生成された3次元マップに基づき窪み1の体積を算出(推定)する。体積算出部223は、オクルージョンがある場合、窪み特定部222により特定された窪み1の3次元マップから得られる欠損補間点群をオクルージョンによってできた欠損部903に補間した後、窪み1の体積を算出する第1算出処理を行なう。体積算出部223は、オクルージョンがない場合、窪み特定部222により特定された窪み1の3次元マップから窪み1の体積を算出する第2算出処理を行なう。体積算出部223は、オクルージョンの影響の有無に応じて第1算出処理と第2算出処理とのいずれか一方を選択して体積の算出を行なう。
【0074】
ここで、
図11は、オクルージョンの影響がある場合の測定空間を3次元センサにより測定する様子を示す図である。以下の説明では、
図11に示す地物10の表面に形成された窪み1を特定対象とした場合について説明する。
【0075】
図11に示すように、3次元センサ20と特定対象の窪み1との間に障害物がある場合には、手前にある障害物が背後にある窪み1の一部を隠して見えなくするオクルージョンが発生する。そのため、窪み1のうち障害物の背後の領域は3次元センサ20による測定が不能である。
図11に示す例では、3次元センサ20が窪み1の手前側(
図11において左側)に配置されており、3次元センサ20と窪み1との間に存在する地物10の手前側部分が障害物となっている。オクルージョンの影響があると、窪み特定部222から取得した3次元マップは、オクルージョンにより一部の点群データが欠損した状態となる。
【0076】
このように、測定データ100が点群データを含まない欠損部903を有している場合、窪み特定部222から取得した3次元マップに対して体積を算出しても、オクルージョン部分の体積を得ることができないため、窪み1全体の正確な体積が算出できない。そこで、窪み計測装置200は、オクルージョンの影響の有無に応じて、第1算出処理(ステップS800)と第2算出処理(ステップS900)とを自動で切り替えて窪み1の体積を算出する。なお、測定データ100をユーザが目視で確認することによりオクルージョンの影響の有無を判断し、第1算出処理と第2算出処理とを手動で切り替えるようにしてもよい。
【0077】
図12を参照して、第1算出処理の流れを説明する。
図12は、体積算出部における第1算出処理の流れを示すフローチャートである。
図12に示すように、窪み計測装置200は、オクルージョンの影響が有ることを確認した場合に、ステップS801~S804に示す第1算出処理を実行する。
【0078】
まず、ステップS801において、ステップS305の窪み特定部222によって特定した窪み1の3次元マップ904に含まれる点群データの中から必要に応じて外れ値を除去する。
【0079】
続いて、ステップS802において、ステップS801の外れ値の除去を行った3次元マップに含まれる点群データの中から、最も深度が深い位置に存在するZ座標を含む3次元点である最下点P1を検索する(最下点検索)。そして、最下点検索を行なうことにより検索された最下点P1の3次元座標を取得する。
【0080】
続いて、ステップS803において、欠損部903に欠損補間点群を補間する点群補間を行うことにより完成された3次元マップを生成する。なお、完成された3次元マップは、特定された窪み1毎に生成される。
【0081】
ここで、ステップS803の点群補間を行なうにあたっては、2つの方法が挙げられる。まず、
図13及び
図14を参照して、1つ目の方法について説明する。
図13は、欠損部に最下点P1によって与えられる欠損補間点群を補間する前のイメージ図である。
図14は、欠損部に最下点P1によって与えられる欠損補間点群を補間した後のイメージ図である。
【0082】
図13に示す測定データ100は、3次元マップ904に含まれる最下点P1を通るX軸を中心軸とした場合、オクルージョンの影響によって中心軸よりY軸手前側(
図13において左側)の点群データの少なくとも一部が欠損した欠損部903を有している。すなわち、
図13に示す欠損部903は、実際の最下点(最下点P1)を含んでいない。この場合、ステップS802で検索された最下点P1を、特定された窪み1の底面部分(鉛直下側の面)と仮定する。
【0083】
1つ目の方法は、ステップS802で検索された最下点P1が実際の最下点と一致する場合に好適である。検索された最下点P1が実際の最下点と一致するとは、実際の最下点が欠損していないことであって、実際の最下点が欠損部903に含まれていないことを意味する。1つ目の方法を適用する場合、欠損補間点群の3次元座標は、ステップS802で検索された最下点P1によって与えられる。
【0084】
図14には、最下点P1によって与えられる欠損補間点群が欠損部903に補間された3次元マップ905を示している。最下点P1によって与えられる欠損補間点群は、3次元マップ904のうち中心軸からY軸奥側(
図13、14において右側)の奥行きLの範囲(
図13)に位置する点群データと中心軸に関して対称となる点群データである。すなわち、欠損補間点群は、中心軸からY軸手前側(
図13、14において左側)の奥行きLの範囲に位置する点群データである。最下点P1によって与えられる欠損補間点群を欠損部903に補間することにより生成された3次元マップ905は、完成された3次元マップである。このように、窪み特定部222から取得した3次元マップから
図13に示す欠損部903の形状を推定し、完成された3次元マップを生成することができる。
【0085】
一方、2つ目の方法は、ステップS802で検索された最下点P1が実際の最下点と一致しない場合に好適である。検索された最下点P1が実際の最下点と一致しないとは、実際の最下点が欠損していることであって、実際の最下点が欠損部903に含まれていることを意味する。2つ目の方法を適用する場合、欠損補間点群の3次元座標は、窪み1の傾斜角度によって与えられる。
【0086】
そこで、
図15及び
図16を参照して、2つ目の方法について説明する。
図15は、欠損部に窪みの傾斜角度θによって与えられる欠損補間点群を補間する前のイメージ図である。
図16は、欠損部に窪みの傾斜角度θによって与えられる欠損補間点群を補間した後のイメージ図である。
【0087】
図15に示す測定データ100は、窪み1の底面部分に対応する実際の最下点がオクルージョンにより欠損した欠損部903を有している。すなわち、
図15に示す欠損部903は、実際の最下点を含んでいる。この場合、ステップS802で検索された最下点P1は、実際の最下点よりも鉛直上側に位置する3次元点である。そのため、
図15に示す3次元マップ904に含まれる最下点P1を用いて1つ目の方法と同様の方法で完成された3次元マップを生成し、体積を算出すると、実際の窪み1の体積との間の誤差が増大する可能性がある。
【0088】
そこで、実際の最下点が欠損している場合は、
図16に示すように、点群補間を行う前に、3次元マップ904の点群データから窪み1の傾斜角度θを算出する。傾斜角度θは、例えば3次元マップ904のうち3次元センサ20から見て最も奥側及び最も手前側に位置する各3次元点の3次元座標を用いて算出することができる。なお、3次元センサ20から見て奥側は
図15、16において右側であり、3次元センサから見て手前側は
図15、16において左側である。ここで算出される窪み1の傾斜角度θは、窪み1の傾斜面と水平方向とのなす角度である。
【0089】
そして、窪み1の上面部分のY軸における両端から傾斜角度θに沿った形状を表す欠損補間点群を補間する。これにより、仮想的な最下点P2が求められる。傾斜角度θによって与えられる欠損補間点群を欠損部903に補間することにより生成された3次元マップ905は、完成された3次元マップである。このように、窪み特定部222から取得した3次元マップから、
図15に示す欠損部903の形状を推定し、完成された3次元マップを生成することができる。なお、完成された3次元マップは、特定された窪み1毎に生成されるものである。
【0090】
続いて、ステップS804において、完成された3次元マップに対して体積の算出を行う。体積は、例えば完成された3次元マップの点群データの凸包を作成することで求めることができる。ここで、凸包は、与えられた集合を含む最小の凸集合である。凸包は、例えばQuickhull法を用いたアルゴリズムによって作成することができる。Quickhull法を用いたアルゴリズムで作成した凸包は、複数の四面体により構成される。四面体の底面積をS、高さをhとすると、四面体の体積Viは三角錐の体積の下記式(1)から算出することができる。
Vi=Sh/3・・・式(1)
【0091】
このようにして、作成された凸包を構成する四面体の体積を算出することで、完成された3次元マップの体積を算出することができる。
【0092】
一方、第2算出処理では、欠損補間点群を補間することなく、窪み特定部222から取得した3次元マップに対して体積を算出する。体積は、例えば窪み特定部222から取得した3次元マップの点群データの凸包を作成し、作成された凸包を構成する四面体の体積を算出することで、窪み特定部222から取得した3次元マップの体積を算出することができる。凸包による体積の計算方法は、第1算出処理で説明した計算方法と同様である。
【0093】
なお、上記した凸包を作成する方法に代えて、例えば体積の算出に用いる3次元マップをボクセルと呼ばれる立方体に加工したボクセルデータに対して窪み1の体積を算出してもよい。
【0094】
そして、体積算出部223は、第1算出処理又は第2算出処理により生成された体積の算出結果を表示部232に出力する。なお、オクルージョンの影響が小さい測定データ100を取得することにより欠損部903が削減され、体積の算出精度を向上することができる。オクルージョンの影響が小さい測定データ100を取得する方法として、3次元センサ20を移動させながら測定空間を種々の方向から測定する方法が挙げられる。オクルージョンの影響が小さい測定データ100を取得する他の方法として、測定空間に対して複数の3次元センサ20を設置し、複数の3次元センサ20から取得された複数のデータの中から最もオクルージョンの影響が小さい測定データ100を抽出する方法等が挙げられる。
【0095】
図4に戻り、S307において、表示部232は、体積算出部223から算出結果を取得する。算出結果を取得した表示部232は、算出結果を表示する結果表示を行う。
図17は、
図3に示す窪み計測装置により窪みを計測した後のイメージ図である。
図17に示すように、算出結果は、窪み1の体積Vに関する情報の他に、例えば、測定データ100、対象領域503、特定された窪み1、窪み1の寸法(高さH、幅W、奥行きD)等に関する各種情報を含んでもよい。
【0096】
本実施形態にかかる窪み計測処理は、ユーザの使用するPC(Personal Computer)やタブレット等の端末において実現することができる。
図18は、
図3に示す窪み計測装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図18に示すように、窪み計測装置200は、入出力インタフェース110、メモリ120、及びプロセッサ130を有する。
【0097】
入出力インタフェース110は、他の任意の装置と通信するために使用される。例えば、入出力インタフェース110は、3次元センサ20から測定データ100を取得するために用いられてもよいし、算出結果に関するデータを他の装置に出力するために用いられてもよい。
【0098】
メモリ120は、例えば、揮発性メモリ及び不揮発性メモリの組み合わせによって構成される。メモリ120は、プロセッサ130により実行される、1以上の命令を含むソフトウェア(コンピュータプログラム)、及び窪み計測装置200の各種処理に用いるデータなどを格納するために使用される。
【0099】
プロセッサ130は、メモリ120からソフトウェア(コンピュータプログラム)を読み出して実行することで、上述した
図4に示すフローチャートを用いて説明した窪み計測装置200の処理を行う。ここで、窪み計測プログラムは、地物10の表面に形成された窪み1の少なくとも一部を含む測定空間を3次元センサ20により測定して得られる測定空間の点群データを取得する処理と、測定空間の点群データに対して体積を求める窪み1が含まれる対象領域503を指定する処理と、対象領域503の点群データに基づき窪み1を特定する処理と、特定された窪み1の点群データに基づき窪み1の体積を算出する処理と、をコンピュータに実行させるものである。また、窪み計測プログラムは、窪み1を特定する処理では、表面の凹凸量が予め設定した閾値よりも小さい整地501から窪み1(502)を特定する第1特定方法と表面の凹凸量が閾値以上の不整地701から窪み1(702)を特定する第2特定方法とのいずれか一方を選択して窪み1を特定する処理をコンピュータに実行させるものである。
【0100】
プロセッサ130は、例えば、マイクロプロセッサ、MPU(Micro Processor Unit)、又はCPU(Central Processing Unit)などであってもよい。プロセッサ130は、複数のプロセッサを含んでもよい。
【0101】
なお、窪み計測装置200で実行される上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。以上、実施の形態について説明した。
【0102】
ここで、上記に関連する技術として、複数の窪みの深度等を計測する場合に、点群データから検出対象となる窪みを目視で確認し、目視確認により検出した窪みのそれぞれに対して計測を行なう技術が挙げられるが、このような技術ではコストが増大するという問題がある。
【0103】
また、例えば、窪みにおける特定の深度を計測する技術では、窪み全体の寸法や体積を計測するために、窪み全体の点群データを取得する必要がある。しかしながら、このような技術では、オクルージョン等によって窪みの一部が欠けた状態である場合に、窪みの一部の点群データだけでは窪み全体の寸法や体積を算出できないため、窪みの計測ができなくなる可能性があるという問題がある。
【0104】
これに対し、本実施形態では、体積を求める窪み1が含まれる対象領域503を任意に指定するため、窪み1の特定及び計測を容易に行なうことができコストを削減できるとともに、窪み1の特定及び計測の精度を高めることができる。さらに、体積を求める窪み1が含まれる対象領域503を任意に指定することにより、窪み1の全体の体積だけでなく、窪み1の部分的な体積を算出することができる。そのため、本実施形態によれば、体積計測のシミュレーションが可能である。
【0105】
また、本実施形態では、オクルージョン等によって窪み1の一部が欠けた状態であっても、窪み1の少なくとも一部の点群データに基づいて欠損部903に欠損補間点群を補間することで窪み1を計測することができる。
【0106】
そして、本実施形態では、窪み1が存在する表面が整地501であっても不整地701であっても窪み1を特定して計測することができる。したがって、複雑な形状の環境下における窪み1を特定して計測することが求められる場合にも適用できる。
【0107】
上記実施の形態で説明した窪み計測装置、窪み計測方法、及び窪み計測プログラムは、建設業界における掘削作業の進捗管理、ガス・電力業界における掘削作業の掘削量監視、土木業界における道路・設備の点検監視、農業・林業における農地の異常監視や溜池の貯水量監視等に利用することができる。
【符号の説明】
【0108】
1、502、702 窪み
10 地物
20 3次元センサ
100 測定データ
110 入出力インタフェース
120 メモリ
130 プロセッサ
200 窪み計測装置
201 測定データ取得部
210 前処理部
211 フォーマット変換部
212 ノイズ除去部
213 角度変換部
220 計測部
221 対象領域指定部
222 窪み特定部
223 体積算出部
230 ユーザインターフェース部
231 操作部
232 表示部
501 整地
502a 上面部分
503 対象領域
701 不整地
903 欠損部
904、905 3次元マップ
P1、P2 最下点