(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108250
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】画像形成システム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20230728BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
G06F3/12 344
G06F3/12 312
G06F3/12 331
G06F3/12 351
G06F3/12 343
B41J29/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009266
(22)【出願日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【弁理士】
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【氏名又は名称】半田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】設楽 涼
【テーマコード(参考)】
2C061
【Fターム(参考)】
2C061AP01
2C061AQ06
2C061AS06
2C061HJ08
2C061HP06
(57)【要約】
【課題】連続紙を用いて印刷を行う場合、途中で印刷速度を変えると画像ずれ等の印刷不良が発生するため、印刷データの全ページをラスタライズしたのちスプールしてから印刷を開始していたが、その分印刷終了までの時間が長くかかってしまう課題があった。
【解決手段】ラスタライズデータを生成するラスタライズ処理部101、ラスタライズデータを保存する画像データ保存部104、ラスタライズデータを送信する外部I/F106、その送信を制御する送信制御部(105,102,103)、ラスタライズデータを受信する外部I/F202、受信したラスタライズデータに基づく画像を連続紙に印刷する印刷部200を備え、送信制御部(105,102,103)は、判断結果に基づいて、ラスタライズ処理部がラスタライズ処理を実行しているとき、生成したラスタライズデータを外部I/F106から送信する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷データをラスタライズ処理してラスタライズデータを生成するラスタライズ処理部と、
前記ラスタライズデータを保存する保存部と、
前記ラスタライズデータを送信する送信部と、
前記ラスタライズデータの送信を制御する送信制御部と、
前記送信部から送信される前記ラスタライズデータを受信する受信部と、
前記受信部で受信した前記ラスタライズデータに基づく画像を連続紙に印刷する印刷部と
を備え、
前記送信制御部は、判断結果に基づいて、前記ラスタライズ処理部が前記ラスタライズ処理を実行しているとき、生成した前記ラスタライズデータを前記送信部から送信することを特徴とする画像形成システム。
【請求項2】
前記送信制御部は、前記印刷データのページ毎のラスタライズ処理時間を計測するラスタライズ速度計測部を備え、各ページ間のラスタライズ処理時間のバラツキに基づいて、前記受信部への前記ラスタライズデータの送信タイミングを変更することを特徴とする請求項1記載の画像形成システム。
【請求項3】
前記送信制御部は、前記送信部による前記ラスタライズデータの送信処理速度を計測する通信処理速度計測部を備え、
前記送信制御部は、前記印刷部によって印刷処理される前記ラスタライズデータの印刷処理速度、前記送信処理速度、及び前記ラスタライズ処理部によるラスタライズ処理速度に基づいて、前記ラスタライズデータの送信タイミングを変更することを特徴とする請求項2記載の画像形成システム。
【請求項4】
前記送信制御部は、
前記バラツキが所定の範囲内であり、且つ
前記送信処理速度≧前記印刷処理速度
であり、且つ
前記ラスタライズ処理速度≧前記印刷処理速度
である場合、前記送信部から前記ラスタライズデータを送信することを特徴とする請求項3記載の画像形成システム。
【請求項5】
前記送信制御部は、
前記バラツキが所定の範囲内であり、且つ
前記送信処理速度<前記印刷処理速度
であり、且つ
前記ラスタライズ処理速度≧前記印刷処理速度
である場合、前記印刷処理速度が前記送信処理速度以下となるように印刷速度を設定した後、前記送信部から前記ラスタライズデータを送信することを特徴とする請求項3記載の画像形成システム。
【請求項6】
前記送信制御部は、
前記バラツキが所定の範囲内であり、且つ前記印刷データの全ページ数が不明な場合、前記印刷処理速度が、前記送信処理速度及び前記ラスタライズ処理速度以下となるように印刷速度を設定した後、前記送信部から前記ラスタライズデータを送信することを特徴とする請求項3記載の画像形成システム。
【請求項7】
前記送信制御部は、
前記バラツキが所定の範囲内であり、且つ前記印刷データの全ページ数がわかり、且つ
前記送信処理速度≧前記印刷処理速度
であり、且つ
前記ラスタライズ処理速度<前記印刷処理速度
である場合、前記全ページ数を前記印刷部が印刷するのに要する印刷時間と、前記ラスタライズ処理していない未ラスタライズページをすべてラスタライズ処理するのに要するラスタ時間を計算し、
前記印刷時間>前記ラスタ時間
となるまで、1ページ毎の、前記ラスタライズ処理及び該ラスタライズ処理したラスタライズデータの前記保存部への保存を繰り返した後、前記送信部から前記ラスタライズデータを送信することを特徴とする請求項3記載の画像形成システム。
【請求項8】
前記送信制御部は、
前記バラツキが所定の範囲内であり、且つ前記印刷データの全ページ数がわかり、且つ
前記送信処理速度<前記印刷処理速度
であり、且つ
前記ラスタライズ処理速度<前記印刷処理速度
である場合、
前記印刷処理速度が前記送信処理速度以下となるように印刷速度を設定し、
前記全ページ数を前記印刷部が印刷する印刷時間と、前記ラスタライズ処理していない未ラスタライズページをすべてラスタライズ処理するラスタ時間を計算し、
前記印刷時間>前記ラスタ時間
となるまで、1ページ毎の、前記ラスタライズ処理及び該ラスタライズ処理したラスタライズデータの前記保存部への保存を繰り返した後、前記送信部から前記ラスタライズデータを送信することを特徴とする請求項3記載の画像形成システム。
【請求項9】
前記画像形成システムは、上位装置と画像形成装置とを有し、
前記ラスタライズ処理部、前記保存部、前記送信部、及び送信制御部が前記上位装置に属し、前記印刷部及び前記受信部が前記画像形成装置に属することを特徴とする請求項1から8までの何れかに記載の画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連続紙印刷が可能な画像形成システムによる印刷において、印刷データの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続紙を用いて印刷を行う場合、途中で用紙搬送速度を遅くしたり、停止したりすると画像ずれ等の印刷不良が発生するため、搬送速度を一定に保つ必要があった。従って、印刷データのラスタライズが印刷に間に合わないとエラーになるため、受信した印刷データの全ページをラスタライズしたのちスプールしてから印刷を開始していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-170587号公報(第12頁、
図9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来技術では、全ページをラスタライズするまで待って印刷開始するため、その分、印刷終了までの時間が長くかかってしまう課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による画像形成システムは、印刷データをラスタライズ処理してラスタライズデータを生成するラスタライズ処理部と、前記ラスタライズデータを保存する保存部と、前記ラスタライズデータを送信する送信部と、前記ラスタライズデータの送信を制御する送信制御部と、前記送信部から送信される前記ラスタライズデータを受信する受信部と、前記受信部で受信した前記ラスタライズデータに基づく画像を連続紙に印刷する印刷部とを備え、
前記送信制御部は、判断結果に基づいて、前記ラスタライズ処理部が前記ラスタライズ処理を実行しているとき、生成した前記ラスタライズデータを前記送信部から送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、例えばバリアブル印刷において、印刷データをラスタライズ処理しながら、一定の印刷速度で印刷することが可能となるため、印刷終了までの時間を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明による実施の形態1の画像形成システムの構成を示す要部ブロック図である。
【
図2】印刷部を構成するロール紙プリンタの要部構成を示す概略構成図である。
【
図3】4つの画像形成ユニットの要部構成を示す要部構成図である。
【
図4】上位装置が画像形成装置に対してラスタライズした画像データを送信するまでの画像データ送信処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図4のフローチャートのステップS106での処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図6】
図4のフローチャートのステップS106での処理の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、本発明による実施の形態1の画像形成システムの構成を示す要部ブロック図である。
【0009】
同図において、上位装置1は、アプリケーション(オペレーティングシステムを含む)100、ラスタライズ処理部101、通信処理速度計測部102、ラスタライズ速度計測部103、画像データ保存部104、データ送信判断部105、外部I/F106、及びアプリケーション判断部107で構成される。
【0010】
アプリケーション100は、ラベル印刷をするためのアプリケーションや、長尺印刷するためのアプリケーションであり、印刷するためのデータを作成する。ラスタライズ処理部101は、アプリケーション(オペレーティングシステムを含む)で作成されるベクター画像等の印刷データからビットマップ画像等の画像データ(ラスタライズデータ)を生成する。通信処理速度計測部102は、外部I/F106を使用しての通信相手との通信処理速度を計測する。
【0011】
ラスタライズ速度計測部103は、ラスタライズ処理部101が行う1ページ毎のラスタライズ時間を計測したり、印刷データの残ページに対してラスタライズ処理が完了するまでの時間を予測したりする。保存部としての画像データ保存部104は、ラスタライズ処理部101が生成した画像データを、外部I/F106から送信するまでの間、一時的に保存しておく。
【0012】
データ送信判断部105は、後述するように、通信相手の印刷処理速度、ラスタライズ処理速度、及び通信処理速度から、画像データを送信し始めるタイミングを判断する。送信部としての外部I/F106は、通信相手となる画像形成装置2と通信を行う有線LAN(Local Area Network)、無線LANなどで構成され、通信を行う。尚、データ送信判断部105、通信処理速度計測部102、及びラスタライズ速度計測部103が通信制御部に相当する。
【0013】
画像形成装置2は、印刷部200、印刷速度保存部201、及び外部I/F202で構成される。印刷部200は、後述するロール紙プリンタ10(
図2)及びロール紙プリンタ10を駆動制御する図示しない駆動制御部等のハードウェアで構成され、画像データに基づく画像をラベルロール紙31(
図2)等の印刷媒体に転写して画像形成を行う。
【0014】
印刷速度保存部201は、上位装置1からの要求に応じて応答するための印刷速度の最高速度データを保持したり、上位装置1からの指示により、受け取った画像データを印刷する際に一時的に利用される印刷速度データを保持したりする。受信部としての外部I/F202は、携帯端末やパーソナルコンピュータといったデバイス(上位装置1)と通信を行う有線LAN(Local Area Network)、無線LANなどで構成され、通信を行う。
【0015】
図2は、印刷部200を構成するロール紙プリンタ10の要部構成を示す概略構成図である。このロール紙プリンタ10は、例えばラベル印刷に対応した電子写真方式のカラープリンタである。
【0016】
同図において、ロール紙プリンタ10は、モノクロ画像を形成するものであってもよく、カラー画像を形成するものであってもよいが、ここでは、中間転写方式によって連続紙のラベルロール紙31に印刷を行うカラー印刷装置である場合について説明する。
【0017】
ロール紙プリンタ10は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各色のトナー画像を各々に形成する4つの独立した画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Kを有し、これらが、中間転写ベルトユニット90の中間転写ベルト12が、中間転写ベルトユニット90の上部で移動する移動方向を示す矢印B方向に沿って、その上流側から順に配置されている。
【0018】
尚、4つの画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Kは、基本的に同一の構成を有するもので、使用するトナーの色のみが異なる。従って、説明上、4つの画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Kを特に区別する必要がない場合には、単に画像形成ユニット20として説明する。更に、画像形成ユニット20が含む各部材及びその他の部材についても、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各色に対応するものとして区別する必要がある場合にはY、M、C及びKの符号を付与して説明し、特に区別する必要がない場合には、Y、M、C及びKの符号を付与せずに説明する。
【0019】
中間転写ベルトユニット90は、図示せぬ駆動部より駆動される駆動ローラ13、中間転写ベルト12の移動経路を定めるアイドルローラ14、コイルスプリング等の付勢手段により中間転写ベルト12に張力を付与するテンションローラ18、2次転写ローラ16aに対向して配置されて2次転写ニップ部16を構成する2次転写バックアップローラ16b、及びそれらのローラに張架された中間転写ベルト12を備える。中間転写ベルト12は、駆動ローラ13が回転駆動されることにより、矢印B方向に回転移動する。
【0020】
中間転写ベルトユニット90は、更に、中間転写ベルト12を介して各画像形成ユニット20の感光体ドラム11に対向して配置され、各感光体ドラム11上に形成された各色のトナー像を順次重ねて中間転写ベルト12上に1次転写するために所定の電圧を付加する4つの1次転写ローラ15等を備える。各1次転写ローラ15は、それぞれ、図示されないスプリングによって対応する感光体ドラム11に押し当てられ、1次転写ニップ部を形成している。
【0021】
図3は、4つの画像形成ユニット20の要部構成を示す要部構成図である。ここではブラック(K)の画像形成ユニット20Kを参照しながらその構成を説明する。
【0022】
同図に示すように、画像形成ユニット20は、像担持体としての感光体ドラム11、感光体ドラム11の表面を帯電させるチャージローラ21、帯電した感光体ドラム11の表面を選択的に露光して静電潜像を書き込むLEDヘッド22、感光体ドラム11の表面の静電潜像を現像剤としてのトナーで現像する現像ローラ23、この現像ローラ23の表面にトナーを供給しつつ現像ローラ23との間でトナーを擦り付けてマイナス極性に摩擦帯電させるスポンジローラ24、現像ローラ23の表面に供給されたトナーを均一な薄層にする現像ブレード25、スポンジローラ24に所定色(ここではブラック(K))のトナーを供給するトナータンク26、及び感光体ドラム11の表面に残留したトナーをクリーニングするクリーニングブレード27を有する。
【0023】
感光体ドラム11、現像ローラ23、スポンジローラ24、チャージローラ21は、それぞれが
図3に示す矢印方向に回転する。図示しない駆動手段により感光体ドラム11が回転駆動され、図示しないギアによって感光体ドラム11から現像ローラ23へ駆動が伝わり、同じく図示しないアイドルギアにより現像ローラ23からスポンジローラ24へ駆動が伝わり回転する。チャージローラ21は、感光体ドラム11に接することにより連れ周りで回転する。
【0024】
感光体ドラム11と1次転写ローラ15とが、中間転写ベルト12を介して圧接する1次ニップ部では、感光体ドラム11上に形成された現像剤像としてのトナー画像の、中間転写ベルト12上への転写が行われ、中間転写ベルト12は、表面に転写されたトナー画像を担持して、2次転写ニップ部16にまで搬送する。
【0025】
ラベルロール紙31は、
図1に示すように、図示されない芯の周囲にあらかじめ巻き付けられたロール31´の状態で用意され、この芯を中心にして回転可能となるように、ユーザによってロール紙プリンタ10に装着される。そして、ラベルロール紙31が繰り出されて搬送されるのに伴ってロール31´が回転してラベルロール紙31を供給する。像形成済みのラベルロール紙31は、ロール紙プリンタ10から排出されるが、その際にカッター38によってロール31´から切り離される。
【0026】
印刷部200は、以上説明したロール紙プリンタ10と、ロール紙プリンタ10を駆動制御する図示しない駆動制御部とからなり、所定の印刷速度、或いは上位装置1から指定され、印刷速度保存部201に保存される印刷速度データによる印刷速度でラベルロール紙31へのラベル印刷を実行する。
【0027】
尚、上記したロール紙プリンタ10による、ラベル印刷等のロール紙印刷では、印刷中にカラー調整/濃度補正を行わないので、上位装置1側でラスタライズ処理しても、画像形成装置2側でラスタライズ処理した場合に比べて印刷品位に差は生じない。
【0028】
以上の構成において、本発明による画像形成システムの動作について説明する。
図4は、上位装置1が画像形成装置2に対してラスタライズ処理した画像データを送信するまでの画像データ送信処理の流れを示すフローチャートであり、
図5、
図6は、
図4のフローチャートのステップS106での処理の詳細を示すフローチャートであり、これ等のフローチャートを参照しながら画像形成システムの動作について説明する。
【0029】
先ずユーザがアプリケーション100で印刷指示をすると、アプリケーション判断部107で、ラベル印刷をするためのアプリケーションなのか否かを、印刷実行したアプリケーション名から判断し(ステップS101)、ラベル印刷をするためのアプリケーション名でなければ(ステップS101、No)、全印刷データをラスタライズ処理部101で画像データに変換し、画像データ保存部104に保存して、即ちスプールしてから画像データを送信する(ステップS102)。尚、ここでの全印刷データとは、例えば1つの印刷ジョブ分のデータに相当する。
【0030】
一方、ラベル印刷をするためのアプリケーション名であれば(ステップS101、Yes)、1ページ分の印刷データをラスタライズ処理してそのラスタライズ時間を計測すると共に、変換した画像データを画像データ保存部104に保存する(ステップS103)。そしてこの処理をNページ分繰り返す(ステップS104、No)。
【0031】
Nページ分のラスタライズ処理を行うと(ステップS104、Yes)、ラスタライズ処理時間のバラツキが大きいか否かを判定し(ステップS105)、バラツキが大きい場合(ステップS105、Yes)、バリアブルデータでないと判断する。このように途中でラスタライズ処理時間の大きいページがある場合、ラスタライズ処理に予想外の時間が費やされて後述する判断(ステップS201等)が難しくなる可能性があるため、全印刷データをラスタライズ処理部101で画像データに変換し、画像データ保存部104に保存して、即ちスプールしてから画像データを送信する(ステップS102)。
【0032】
一方、ラスタライズ処理時間のバラツキが小さい場合(ステップS105、Yes)、ラベル紙用のバリアブルデータであると判断してラスタライズ処理しながらデータ送信する(ステップS106)。尚、ラベル印刷のようなバリアブル印刷の場合、一部の文字を変えながら印刷するものであるため、通常、ページ毎のラスタライズ処理時間に大きな差は生じない。換言すると、各ページ間のラスタライズ処理時間のバラツキに基づいて、前記受信部への前記ラスタライズデータの送信タイミングを変更する。
【0033】
ここで、ステップS105で行うラスタライズ処理時間のバラツキの大小判定方法の一例について説明する。ラスタライズ処理時間のバラツキは、計算機内の誤差によるものなので正規分布に従うと仮定すると、そのサンプルは(平均値-3×標準偏差)~(平均値+3×標準偏差)の範囲に99.7%が収まる。このことから、
バラツキが小さい → 得られた全てのサンプルが99.7%の範囲内にある場合、
バラツキが大きい → 得られたサンプルの1つでも99.7%の範囲外にある場合、
と仮定する。
【0034】
一方、実際にラスタライズ処理時間が異なる3つのデータで、標準偏差(バラツキ)を見ると表1のような結果が得られる。
【表1】
【0035】
表1に示すように、各データにおいて、10回のサンプルは全て99.7%の範囲内となっている。また表1で示す結果から、標準偏差は、ラスタライズ処理時間に比例しないため、事前にラスタライズ処理時間に基づく標準偏差の値をドライバ内の保持させておく必要があることがわかる。そのため表2に示すように、0.5sec刻みの各平均ラスタライズ処理時間に対応する標準偏差を予め設定したテーブルを上位装置1内に保存しておく。
【表2】
【0036】
従がって、ステップS105で行う、ここでのラスタライズ処理時間のバラツキの大小判定では、例えば最初の5ページをラスタライズ処理してみてその平均時間が1.4secであれば、一番近い1.5secの標準偏差を用いて、
(1.4-3×c)~(1.4+3×c)
の範囲にその5ページの各ラスタライズ処理時間が入っているか否かで、バラツキの大小を判断する。
【0037】
次に、ステップS106での処理の詳細を示す
図5、
図6のフローチャートを参照し、ラスタライズ処理しながらデータ送信する処理について更に説明する。
【0038】
データ送信判断部105は、画像形成装置2との通信処理速度、画像形成装置2の印刷処理速度、ラスタライズ処理部101のラスタライズ処理速度とを比較し、どのタイミングで画像データを画像形成装置2に送信するべきかを判断する。
【0039】
ここで、印刷処理速度、通信処理速度、及びラスタライズ処理速度の比較について説明する。
印刷処理速度とラスタライズ処理速度との比較は、画像形成装置2が、ロール紙の厚みや種類などに応じた所定の印刷速度で印刷している時の画像データの平均処理速度と、ラスタライズ処理部101で処理される画像データの平均処理速度の比較である。
印刷処理速度と通信処理速度との比較は、画像形成装置2が所定の印刷速度で印刷している時の画像データの平均処理速度と、外部I/F106,202が行う画像データの通信処理速度の比較である。尚、通信処理速度は、例えば外部I/F106,202が有線LANか無線LANかなどによって異なる。
【0040】
即ち、(通信処理速度≧印刷処理速度)且つ(ラスタライズ処理速度≧印刷処理速度)であるか否かを判断し(ステップS201)、条件を満たすと判断した場合(ステップS201、Yes)、先ず画像データ保存部104に保存されているラスタライズ処理済みの画像データ(ラスタライズデータ)を読み出しての送信を開始し(ステップS202)(
図6)、その送信と同時に、残りの印刷データに対するラスタライズ処理を、印刷データが無くなるまで繰り返す(ステップS203、ステップS204)。
【0041】
従って、ここでは、画像データ保存部104に保存された画像データ及び印刷処理速度よりも速い処理速度で新たにラスタライズ処理される画像データが順次送信されるため、所定の印刷速度での印刷が終了するまで、印刷のための画像データが不足することがない。
【0042】
一方、ステップS201で条件を満たさないと判断した場合、更に(通信処理速度<印刷処理速度)且つ(ラスタライズ処理速度≧印刷処理速度)であるか否かを判断し(ステップS205)、条件を満たすと判断した場合(ステップS205、Yes)、画像形成装置2の印刷処理速度が通信処理速度を下回るような印刷速度で印刷するように設定・指示をし(ステップS206)、その後、上記したステップS202~ステップS204の処理を実行する。
【0043】
従って、ここでは印刷処理速度を通信処理速度より遅く設定した上で、画像データ保存部104に保存された画像データ及び印刷処理速度よりも速い処理速度で新たにラスタライズ処理される画像データが順次送信されるため、設定された印刷速度での印刷が終了するまで、印刷のための画像データが不足することがない。
【0044】
一方、ステップS205で条件を満たさないと判断した場合、アプリケーション100から印刷データの全ページ数がわかるか否かを確認し(ステップS207)、全ページ数がわかれば(ステップS207、Yes)、更に(通信処理速度≧印刷処理速度)且つ(ラスタライズ処理速度<印刷処理速度)であるか判断し(ステップS208)、条件を満たせば(ステップS208、Yes)、全ページを装置が印刷する時間(プリント時間と称す場合がある)を計算し(ステップS209)、未ラスタライズ処理ページを全てラスタライズ処理する時間(ラスタ時間と称す場合がある)を計算で予測し(ステップS210)、(プリント時間)>(ラスタ時間)であるか否かを判断し(ステップS211)、条件を満たせば(ステップS211、Yes)、上記したステップS202~ステップS204の処理を実行し、条件を満たさなければ(ステップS211、No)、1ページラスタライズ処理を行って(ステップS212)、ステップS210へ進み、ステップS211の条件が満たされるまで1ページのラスタライズ処理を繰り返す。
【0045】
従って、ここでは通信処理速度は印刷処理速度より速いが、ラスタライズ処理速度が印刷処理速度より遅い。このため、先ず全ページ(全印刷データ)を最高速度で印刷した場合のプリント時間を算出し、ラスタ時間がプリント時間より短くなるまで1ページ毎のラスタライズ処理を実行することでラスタ時間がプリント時間以下となった段階で、画像データ保存部104に保存された画像データ及び新たにラスタライズ処理される画像データが順次送信される。
【0046】
このため、保存されたラスタライズ処理済の画像データの送信及び印刷が開始されてから、ロール紙の厚みや種類などに応じた所定の印刷速度でのプリント時間の印刷が終了するまでに、全印刷データのラスタライズ処理が終了するため、ロール紙の厚みや種類などに応じた所定の印刷速度での印刷が終了するまで、印刷のための画像データが不足することがない。
【0047】
一方、ステップS208で条件を満たさないと判断した場合、画像形成装置2の印刷処理速度が通信処理速度を下回るような印刷速度で印刷するように設定・指示をし(ステップS213)、ステップS209へ進み、ステップS209~ステップS212の処理を実行した後、上記したステップS202~ステップS204の処理を実行する。
【0048】
従って、ここでは印刷速度を通信処理速度より遅く設定した上で、上記した処理を実行するため、保存されたラスタライズ処理済の画像データの送信及び印刷が開始されてから、設定された印刷速度でのプリント時間の印刷が終了するまでに、全印刷データのラスタライズ処理が終了するため、印刷途中で印刷のための画像データが不足することがない。換言すると、前記印刷部によって印刷処理される前記ラスタライズデータの印刷処理速度、前記送信処理速度、及び前記ラスタライズ処理部によるラスタライズ処理速度に基づいて、前記ラスタライズデータの送信タイミングを変更することで、印刷途中で印刷のための画像データが不足することがない。
【0049】
そして、ステップS207で印刷データの全ページ数が不明な場合(ステップS207、No)、画像形成装置2の印刷処理速度が、通信処理速度及びラスタライズ処理速度を下回るような印刷速度で印刷するように設定・指示をし(ステップS214,S215)、上記したステップS202~ステップS204の処理を実行する。尚、アプリケーションによっては、ここでの場合のように、印刷データの全ページ数が不明な場合が生じる。
【0050】
従って、ここでは、画像データ保存部104に保存された画像データ及び印刷処理速度よりも速い処理速度で新たにラスタライズ処理されることになる画像データが順次送信されるため、設定された印刷速度での印刷が終了するまで、印刷のための画像データが不足することがない。
【0051】
尚、本実施の形態では、バリアブル印刷でないと判断したときに上位装置1側で全ての印刷データをラスタライズ処理し、画像データを保存していたが、画像形成装置2がラスタライズ処理部、画像データ保存部を持っていれば、バリアブル印刷でない場合、印刷データを画像形成装置2に渡すことで、上位装置1の処理を軽減し利用ユーザにリソース(CPUといった計算資源)を早く解放させることも可能である。
【0052】
以上のように、本実施の形態の画像形成システムによれば、バリアブル印刷において、上位装置1のラスタライズ処理速度と、画像形成装置2のとの通信処理速度、画像形成装置2の印刷処理速度から、全ての印刷データをラスタライズ処理する前にデータ送信を開始することが可能となり、印刷のスループットを向上させることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本実施の形態の上位装置としてパーソナルコンピュータや携帯端末が適用可能であり、本実施の形態ではロール紙プリンタとしてカラープリンタを用いて説明したが、単色プリンタにも適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 上位装置、 2 画像形成装置、 10 ロール紙プリンタ、 11 感光体ドラム、 12 中間転写ベルト、 13 駆動ローラ、 14 アイドルローラ、 15 1次転写ローラ、 16 2次転写ニップ部、 16a 2次転写ローラ、 16b 2次転写バックアップローラ、 18 テンションローラ、 20 画像形成ユニット、 21 チャージローラ、 22 LEDヘッド、 23 現像ローラ、 24 スポンジローラ、 25 現像ブレード、 26 トナータンク、 27 クリーニングブレード、 31 ラベルロール紙、 31´ ロール、 90 中間転写ベルトユニット、 100 アプリケーション、 101 ラスタライズ処理部、 102 通信処理速度計測部、 103 ラスタライズ速度計測部、 104 画像データ保存部、 105 データ送信判断部、 106 外部I/F、 107 アプリケーション判断部、 200 印刷部、 201 印刷速度保存部、 202 外部I/F。