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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108254
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】数値制御装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 15/00 20060101AFI20230728BHJP
   G05B 19/4093 20060101ALI20230728BHJP
   G05B 19/4155 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
B23Q15/00 D
G05B19/4093 H
G05B19/4155 T
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009274
(22)【出願日】2022-01-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智司
(74)【代理人】
【識別番号】100184631
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 隆
(72)【発明者】
【氏名】土持 幸次
【テーマコード(参考)】
3C269
【Fターム(参考)】
3C269AB01
3C269AB31
3C269BB14
3C269EF25
3C269EF39
3C269MN08
3C269PP02
3C269QB17
3C269QC01
3C269QC03
3C269QD02
(57)【要約】
【課題】加工工程について熟知していないオペレータの加工再開操作であって、工具とワークとの干渉を確実に回避することができる数値制御装置を提供する。
【解決手段】数値制御装置10は、プログラム記憶部16、表示装置21、自動運転制御部13、一時停止処理部12、プログラム操作部15及び自動運転監視部14などを備える。自動運転監視部14は、自動運転制御部13の実行状態を監視し、一時停止処理部12により、NCプログラムの実行が一時停止された後、当該NCプログラムの実行が再開されるとき、再開直前にプログラム操作部15において指定された文字を含む再開ブロックが、予め定められた再開可能なブロックであるか否かを確認し、再開可能なブロックであるときには、自動運転制御部13における前記再開ブロックからの処理を再開させ、再開可能なブロックではないときには、処理を中止させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の運動機構部を数値制御する数値制御装置であって、
NCコードを記述した複数のブロックから構成されるNCプログラムを記憶するプログラム記憶部と、
少なくともNCプログラムを文字表示する表示装置と、
数値制御の下、前記NCプログラム記憶部に記憶されたNCプログラムを実行して前記運転機構部を動作させる自動運転制御部と、
前記自動運転制御部がNCプログラムを実行しているときに、該NCプログラムの実行を一時停止させた後、該NCプログラムの実行を再開させる一時停止処理部と、
前記一時停止処理部によって、前記自動運転制御部の処理が一時停止されているときに、前記表示装置に表示された実行中のNCプログラムについて、表示された文字を指定した状態で前記表示装置における文字表示を操作可能にし、又は該NCプログラムを編集可能にするプログラム操作部とを備えた数値制御装置において、
前記自動運転制御部の実行状態を監視し、前記一時停止処理部により、NCプログラムの実行が一時停止された後、該NCプログラムの実行が再開されるとき、再開直前に前記プログラム操作部において指定された文字を含む再開ブロックが、予め定められた再開可能なブロックであるか否かを確認し、再開可能なブロックであるときには、前記自動運転制御部における前記再開ブロックからの処理を再開させ、再開可能なブロックではないときには、処理を中止させる自動運転監視部を設けたことを特徴とする数値制御装置。
【請求項2】
実行されるNCプログラムについて予め定められたブロックであって、自動運転を再開可能なブロックを記憶する記憶部を更に備え、
前記自動運転監視部は、前記自動運転制御部によりNCプログラムの実行が再開されるとき、前記記憶部に格納された再開可能ブロックと、前記再開ブロックとを比較して、前記再開ブロックが前記記憶部に格納された再開可能ブロックと一致するとき、前記再開ブロックが再開可能なブロックであると判定するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の数値制御装置。
【請求項3】
実行されるNCプログラムについて予め定められたNCコードであって、自動運転を再開可能であると定義されるNCコードを記憶する記憶部を更に備え、
前記自動運転監視部は、前記自動運転制御部によりNCプログラムの実行が再開されるとき、前記再開ブロック中に、前記記憶部に格納されたNCコードが含まれるか否かを確認し、前記再開ブロックが前記記憶部に格納されたNCコードを含むブロックであるとき、前記再開ブロックが再開可能なブロックであると判定するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の数値制御装置。
【請求項4】
前記自動運転監視部は、前記再開ブロックが、再開可能なブロックではないときには、更に、外部にアラームを出力するように構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の数値制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の運動機構部を数値制御する数値制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の数値制御装置は、加工用に作成されたNCプログラムを実行することで、当該工作機械の運動機構部を数値制御するように構成されている。
【0003】
このようなNCプログラムは、当初に作成されたもの殆どは、改良の余地があるものであり、通常の場合、試加工や、その後の運用を経て判明した、より適したツールパスや、加工条件に変更される。その際、数値制御装置に格納されたNCプログラムは、オペレータによる操作の下で、数値制御装置に備えられたプログラム編集機能によって、その内容が改定(編集)される。
【0004】
そして、例えば、試加工中に、ツールパスの誤りを発見した場合や、加工条件の再設定を行う必要が生じた場合に、当該NCプログラムに必要な修正を加えた後、修正した加工部分から加工を再開させるといったことが行われている。この場合に、オペレータは、NCプログラムの適正な箇所から加工を再開する必要があるが、例えば、オペレータの不注意により、不適正な箇所から加工を再開すると、工具とワークが干渉するなど、重大な問題を生じる恐れがある。
【0005】
そこで、従来、例えば、特開平5-158518公報(下記引用文献1)に開示されるような途中起動方法が提案されている。この途中起動方法は、加工プログラム(NCプログラム)を構成するブロックの中から特定ブロックを途中起動ブロックとして選択させ、この途中起動ブロックから加工プログラムを実行するように構成される。そして、途中起動ブロックを選択する際には、加工プログラムから工具交換指令が記述されている工具指令ブロックを抽出し、抽出した工具指令ブロックに指令されている工具番号或いは工具オフセット番号を工具指令ブロック毎に表示した後、表示した工具番号或いは工具オフセット番号の中から特定の工具番号或いは特定の工具オフセット番号を選択させ、このようにして選択された特定の工具番号或いは特定の工具オフセット番号が指令されている工具指令ブロックを途中起動ブロックとして選択する。
【0006】
この従来の途中起動方法によれば、画面に表示されている工具番号或いは工具オフセット番号の中から、加工したい加工工程で使用する工具の工具番号或いは工具オフセット番号をカーソルキー等により選択することにより、選択した工具番号或いは工具オフセット番号が指令されている工具指令ブロック、即ち、加工したい加工工程の先頭ブロックから途中起動ができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5-158518公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上述した従来の途中起動方法には、以下に説明するような問題があった。即ち、上記従来の途中起動方法では、加工プログラムの途中から加工を再開させる際に、1)加工プログラムから工具交換指令が記述されている工具指令ブロックを抽出し、2)抽出した工具指令ブロックに指令されている工具番号或いは工具オフセット番号を工具指令ブロック毎に表示した後、3)表示した工具番号或いは工具オフセット番号の中から特定の工具番号或いは特定の工具オフセット番号を選択させるという処理を実行する必要があり、途中起動のための制御装置における処理が過大な上、オペレータが、各加工工程で使用される工具を熟知していなければならないという問題があった。
【0009】
工作機械を操作するオペレータの中には、加工工程を十分に熟知していない者も含まれており、このようなオペレータが、加工を一時停止させて、加工プログラムを操作した後、加工を再開させる場合には、正しい工具を選択できない場合がある。
【0010】
その一方、加工工程を十分に熟知していないオペレータが、加工を一時停止させて、制御装置を加工プログラムの編集モードに移行させた後、加工プログラムの操作を行い、この後、加工を再開させるべく、例えば、加工を一時停止させたときに実行されていた加工プログラムのブロックが、加工を再開可能なブロックであるか否かを、オペレータの判断によることなく判定することができれば、工具とワークとの干渉を確実に回避することができて有益である。
【0011】
本発明は以上の実情に鑑みなされたものであって、加工工程について十分に熟知していないオペレータが加工再開操作を行っても、工具とワークとの干渉を確実に回避することができる数値制御装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明は、工作機械の運動機構部を数値制御する数値制御装置であって、
NCコードを記述した複数のブロックから構成されるNCプログラムを記憶するプログラム記憶部と、
少なくともNCプログラムを文字表示する表示装置と、
数値制御の下、前記NCプログラム記憶部に記憶されたNCプログラムを実行して前記運転機構部を動作させる自動運転制御部と、
前記自動運転制御部がNCプログラムを実行しているときに、該NCプログラムの実行を一時停止させた後、該NCプログラムの実行を再開させる一時停止処理部と、
前記一時停止処理部によって、前記自動運転制御部の処理が一時停止されているときに、前記表示装置に表示された実行中のNCプログラムについて、表示された文字を指定した状態で前記表示装置における文字表示を操作可能にし、又は該NCプログラムを編集可能にするプログラム操作部とを備えた数値制御装置であって、
前記自動運転制御部の実行状態を監視し、前記一時停止処理部により、NCプログラムの実行が一時停止された後、該NCプログラムの実行が再開されるとき、再開直前に前記プログラム操作部において指定された文字を含む再開ブロックが、予め定められた再開可能なブロックであるか否かを確認し、再開可能なブロックであるときには、前記自動運転制御部における前記再開ブロックからの処理を再開させ、再開可能なブロックではないときには、処理を中止させる自動運転監視部を備えた数値制御装置に係る。
【0013】
この数値制御装置によれば、自動運転制御部により、プログラム記憶部に記憶されたNCプログラムが実行され、工作機械の運転機構部が数値制御される。また、一時停止処理部は、自動運転制御部がNCプログラムを実行しているときに、自動運転制御部による当該NCプログラムの実行を一時停止させることができるとともに、自動運転制御部による当該NCプログラムの実行を再開させることができる。また、プログラム操作部は、一時停止処理部によって、自動運転制御部の処理が一時停止されているときに、表示装置に表示された実行中のNCプログラムについて、表示された文字を指定した状態で表示装置における文字表示を操作可能にし、又は当該NCプログラムの編集を可能にする。
【0014】
そして、自動運転監視部は、自動運転制御部の実行状態を監視し、一時停止処理部により、NCプログラムの実行が一時停止された後、当該NCプログラムの実行が再開されるとき、再開直前にプログラム操作部において指定された文字を含む再開ブロックが、予め定められた再開可能なブロックであるか否かを確認し、再開可能なブロックであるときには、自動運転制御部における、当該再開ブロックからの処理を再開させ、再開可能なブロックではないときには、処理を中止させる。
【0015】
このように、本発明に係る数値制御装置によれば、自動運転監視部により、自動運転制御部の実行状態(運転状態)が監視され、NCプログラムの実行が一時停止された後、当該NCプログラムの実行が再開されるときには、再開ブロックが再開可能なブロックであるか否かが確認され、再開可能なブロックであるときにのみ、加工が再開されるので、例えば、オペレータによる操作ミスがあったとしても、工具とワークとの干渉を確実に回避することができる。また、再開可能なブロックであるか否かをオペレータの判断によることなく判定することができるので、オペレータは、当該工作機械で実行される加工工程について、十分に熟知している必要はない。
【0016】
尚、本発明に係る数値制御装置は、実行されるNCプログラムについて予め定められたブロックであって、自動運転を再開可能なブロックを記憶する記憶部を更に備えることができ、この場合、前記前記自動運転監視部は、前記自動運転制御部によりNCプログラムの実行が再開されるとき、前記記憶部に格納された再開可能ブロックと、前記再開ブロックとを比較して、前記再開ブロックが前記記憶部に格納された再開可能ブロックと一致するとき、前記再開ブロックが再開可能なブロックであると判定するように構成された態様を採ることができる。
【0017】
この態様の数値制御装置によれば、再開可能ブロックが予め設定されているので、再開ブロックが再開可能なブロックであるか否かの確認処理を迅速に行うことができる。
【0018】
或いは、本発明に係る数値制御装置は、実行されるNCプログラムについて予め定められたNCコードであって、自動運転を再開可能であると定義されるNCコードを記憶する記憶部を更に備えることができ、この場合、前記自動運転監視部は、前記自動運転制御部によりNCプログラムの実行が再開されるとき、前記再開ブロック中に、前記記憶部に格納されたNCコードが含まれるか否かを確認し、前記再開ブロックが前記記憶部に格納されたNCコードを含むブロックであるとき、前記再開ブロックが再開可能なブロックであると判定するように構成された態様を採ることができる。
【0019】
この態様の数値制御装置によっても、再開可能ブロックがNCコードを介して予め設定されているので、再開ブロックが再開可能なブロックであるか否かの確認処理を迅速に行うことができる。
【0020】
また、本発明において、前記自動運転監視部は、前記再開ブロックが、再開可能なブロックではないときには、更に、外部にアラームを出力するように構成されているのが好ましい。
【0021】
この態様の数値制御装置によれば、再開ブロックが、再開可能なブロックでないときには、外部にアラームが出力されるので、オペレータは、自身の操作ミスを瞬時に理解することができる。この場合、オペレータは、加工プログラムの冒頭から実施するなどの対応をとることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明に係る数値制御装置によれば、NCプログラムの実行が一時停止された後、当該NCプログラムの実行が再開されるときには、再開ブロックが再開可能なブロックであるか否かが確認され、再開可能なブロックであるときにのみ、加工が再開されるので、オペレータによる操作ミスがあったとしても、工具とワークとの干渉を確実に回避することができる。
【0023】
また、再開可能なブロックであるか否かをオペレータの判断によることなく判定することができるので、当該工作機械で実行される加工工程について十分な知識を有しているといった専門性の高いオペレータでなくても、当該工作機械を操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る工作機械の概略構成を示したブロック図である。
図2】本実施形態に係る自動運転監視部における処理を示したフローチャートである。
図3】本実施形態に係る再開可能条件記憶部に格納されるデータを示した説明図である。
図4】本実施形態に係るNCプログラムの一例を示した説明図である。
図5】本発明の変形例に係る再開可能条件記憶部に格納されるデータを示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1に示すように、本例の工作機械1は、数値制御装置10、入出力装置20、及び運動機構部25などから構成される。尚、工作機械1には、前記数値制御装置10によって、前記運動機構部25が数値制御される構成を有する従来公知の全ての種類のものが含まれ、一例として、旋盤、マシニングセンタなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0027】
前記運動機構部25は、前記数値制御装置10により制御されて動作する機構部であり、例えば、旋盤の場合には、主軸モータ及びこれによって回転される主軸から構成される主軸機構、送りモータ及びこれによって移動される往復台及び刃物台などから構成される送り装置、並びに刃物台に装着されるタレットなどが含まれる。また、マシニングセンタの場合には、同じく主軸モータ及びこれによって駆動される主軸、並びに送りモータ及びこれによって移動される主軸頭などから構成される主軸機構、送りモータ及びこれによって移動される往復台及びテーブルなどから構成される送り装置などが含まれる。
【0028】
前記入出力装置20は、表示装置21及び入力装置22から構成される。この表示装置21には、文字や画像を表示するディスプレイが含まれ、入力装置22には、キーボードや、ディスプレイに表示されるポインタを用いた態様のものも含まれるが、これら表示装置21及び入力装置22は、完全に別体に設けられていなくてもよく、例えば、タッチパネルのように、表示部と入力部が一体的になっている態様も含まれ、更には、入出力装置20は、このような一体的な態様に加えて、独立した表示部及び入力部が混在した態様も含まれる。
【0029】
前記数値制御装置10は、入出力制御部11、一時停止処理部12、自動運転制御部13、自動運転監視部14、プログラム操作部15、プログラム記憶部16及び再開可能条件記憶部17などを備えて構成される。尚、この構成は、あくまでも、本発明を具現化するために必要な構成であって、当然のことながら、数値制御装置10は、他の機能部分を含むことができる。
【0030】
また、数値制御装置10は、CPU、RAM、ROMなどを含むコンピュータから構成され、前記入出力制御部11、一時停止処理部12、自動運転制御部13、自動運転監視部14及びプログラム操作部15は、コンピュータプログラムによってその機能が実現され、後述する処理を実行する。また、プログラム記憶部16及び再開可能条件記憶部17はRAMなどの適宜記憶媒体から構成される。
【0031】
前記入出力制御部11は、前記入出力装置20の入出力を制御する機能部である。例えば、入出力制御部11は、前記入力装置20から入力される再開可能条件に係るデータを再開可能条件記憶部17に格納するとともに、当該再開可能条件記憶部17に格納された再開可能条件を表示装置21に表示する。また、前記入力装置20から入力されるNCプログラムを、詳しくは後述するプログラム操作部15による処理の下で、プログラム記憶部16に格納するとともに、当該プログラム記憶部16に格納されたNCプログラムを表示装置21に表示する。
【0032】
前記プログラム記憶部16は、加工用に作成されたNCプログラムを記憶する機能部であり、上述のようにして前記入力装置22及び入出力制御部11を介して入力されるNCプログラムを記憶する。尚、NCプログラムは、NCコードを記述した複数のブロックから構成されるもので、例えば、図4に示すような構成を有する。また、各ブロックはNに続く連番で表されるシーケンス番号で定義される。
【0033】
前記再開条件記憶部17は、実行されているNCプログラムが一時停止された後、その途中から実行することができるブロック、即ち、シーケンス番号を記憶する機能部であり、上述のようにして前記入力装置22及び入出力制御部11を介して入力されるデータを、データテーブルの形式で記憶する。この再開条件記憶部17に格納されるデータテーブルの一例を図3に示す。図3では、NCプログラム毎に予め設定された再開可能なブロック(シーケンス番号)が設定されている。尚、O0001、O0002はプログラム番号である。
【0034】
また、前記入出力制御部11は、前記入力装置22から入力される操作信号を、対応する処理部、即ち、前記一時停止処理部12、自動運転制御部13、自動運転監視部14及びプログラム操作部15のうちのいずれかに選択的に送信する処理を行う。
【0035】
前記プログラム操作部15は、前記入力装置22及び入出力制御部11から入力される操作信号を受信して、処理を実行する。例えば、前記入力装置22及び入出力制御部11からNCプログラムを入力する操作信号を受信すると、これに続いて、前記入力装置22及び入出力制御部11から入力されるNCプログラムを前記プログラム記憶部16に格納する処理を実行する。
【0036】
また、プログラム操作部15は、前記入力装置22及び入出力制御部11からNCプログラムを操作する信号を受信すると、対応するNCプログラムを、入出力制御部11を介して表示装置21に表示して、表示された文字を指定した状態での表示装置21における文字表示を操作可能にし、又は該NCプログラムの編集を可能にし、NCプログラムが変更された場合には、変更されたNCプログラムで、前記プログラム記憶部16に格納されたNCプログラムを更新する処理を行う。尚、このプログラム操作は、前記自動運転制御部13による処理が実行されていないとき、又は、前記自動運転制御部13による処理が一時停止されているときに実行可能となっている。
【0037】
前記自動運転制御部13は、前記プログラム操作部15による処理の下で、前記入出力制御部11を介して表示装置21に表示されたNCプログラムを実行する操作信号を、前記入力装置22及び入出力制御部11を介して受信すると、対応するNCプログラムを前記プログラム記憶部16から順次ブロック順に読み出して、これを実行し、前記運動機構部25を数値制御の下で動作させる。その際、前記入出力制御部11を介して、実行しているブロックを識別可能に表示装置21に表示する。この態様の一例としては、表示装置21に表示されたNCプログラムについて、実行中のブロックにアンダーラインを付す、あるいは白黒反転して表示するといった態様が例示される。
【0038】
前記一時停止処理部12は、前記自動運転制御部13がNCプログラムを実行しているときに、このNCプログラムの実行を一時停止させる信号を、前記入出力制御部11を介して前記入力装置22から受信すると、前記自動運転制御部13に一時停止信号を送信して、前記自動運転制御部13における処理を一時停止させる。また、前記入出力制御部11を介して前記入力装置22から自動運転再開信号(指令)を受信すると、前記自動運転制御部13に自動運転再開信号を送信して、前記自動運転制御部13における処理を再開可能にする。尚、入力装置22から入力される一時停止信号及び自動運転再開信号は、前記入出力制御部11を介して、後述する前記自動運転監視部14にも送信される。
【0039】
前記自動運転監視部14は、前記自動運転制御部13の実行状態を監視し、前記一時停止処理部12により、NCプログラムの実行が一時停止された後、該NCプログラムの実行が再開されるとき、再開直前に前記プログラム操作部15において指定された文字を含む再開ブロックが、予め定められた再開可能なブロックであるか否かを確認し、再開可能なブロックであるときには、前記自動運転制御部13における前記再開ブロックからの処理を再開させ、再開可能なブロックではないときには、処理を中止させる処理を行う。
【0040】
具体的には、自動運転監視部14は、図2に示した処理を実行する。即ち、前記自動運転監視部14は、数値制御装置10が起動されることによって処理を開始し、前記自動運転制御部13による処理が開始されたどうかを監視する(ステップS1)。そして、自動運転制御部13による処理が開始されると、以後、一時停止信号が入力装置22から入力されたかどうか、言い換えれば、入力装置22から一時停止処理部12に一時停止信号が送信されて、自動運転制御部13における処理が一時停止されたかどうかを監視する(ステップS2)。
【0041】
そして、ステップS2において、一時停止信号が入力されたことが確認されると、自動運転監視部14は、一時停止維持指令(信号)を前記自動運転制御部14に送信して(ステップS3)、自動運転制御部14に一時停止状態を維持させる。即ち、自動運転制御部14は、一時停止維持指令を受信することによって一時停止状態を維持し、この間に、入力装置22から自動運転再開指令が入力され、これが入出力制御部11及び一時停止処理部12を介して入力されたとしても、一時停止状態を維持する。
【0042】
次に、自動運転監視部14は、入力装置22から自動運転再開信号が入力されたかどうかを、入出力制御部11を介して監視する(ステップS4)。そして、自動運転再開信号が入力されたことが確認されると(ステップS4)、次に、前記プログラム操作部15の処理状況から、自動運転制御部13によって実行中のプログラムが操作されたかどうかを確認し(ステップS5)、プログラムが操作されていない場合には、自動運転再開信号を前記自動運転制御部13に送信して、当該自動運転制御部13による処理を再開させる(ステップS7)。
【0043】
一方、前記ステップS5において、実行中のプログラムが操作されたことが確認された場合には、次に、自動運転再開信号が入力された時の再開ブロックを、表示装置21の表示状態から認識、即ち、前記プログラム操作部15による処理の下で、表示装置21上で指定された文字を含むブロックを再開ブロックとして認識し、認識された再開ブロックが再開可能なブロックとして設定されたブロックであるか否かを、前記再開可能条件記憶部17に格納されたデータを参照して確認し(ステップS6)、再開可能なブロックである場合には、前記ステップS7の処理を実行し、再開不可なブロックである場合には、前記入出力制御部11を介して前記表示装置21にアラームを表示させる(ステップS9)。
【0044】
例えば、自動運転制御部13が図4に示したNCプログラムを実行している途中に一時停止信号が入力されて、当該自動運転制御部13による処理が一時停止され、一時停止中に、プログラム操作部15による処理の下で、実行中のNCプログラムが操作された場合に、図4において(1)の位置からNCプログラムが再開される場合、自動運転監視部13は再開可能条件記憶部17に格納された図3に示すデータを参照して、「シーケンス番号N0001」が再開可能なブロックであるか否かを確認(判別)する。この場合、「シーケンス番号N0001」は再開可能なブロックであるので、自動運転制御部13による自動運転が再開される。
【0045】
図3に示した例では、上記の他に「シーケンス番号N0012」、「シーケンス番号N0020」、「シーケンス番号N0051」などは再開可能なブロックであるので、例えば、図4の(2)及び(3)で示したブロックからの自動運転の再開は自動運転監視部14によって許可される。一方、「シーケンス番号N0025」、「シーケンス番号N0026」などは再開不可なブロックであるので、例えば、図4の(4)及び(5)で示したブロックからの自動運転の再開は自動運転監視部14によって拒絶される。尚、「シーケンス番号N0001」は、NCプログラムの冒頭のブロックであるので、常時再開可能なブロックである。
【0046】
そして、自動運転監視部14は、ステップS7を実行後、加工が終了されるまでステップS1以降の処理を繰り返して実行し、また、当該加工が終了された後は、数値制御装置10における処理が終了されるまで、ステップS1以降の処理を繰り返して実行する。
【0047】
以上のように構成された本例の数値制御装置10によれば、入力装置22から実行指令に係る操作信号が入力されると、プログラム操作部15による処理の下で表示装置21に表示されたNCプログラムが、自動運転制御部13によって実行される。そして、この入力装置22から入力される操作信号の入力状況、及び自動運転制御部13における処理状況が自動運転監視部14によって監視される。
【0048】
そして、自動運転制御部13によってNCプログラムが実行されているときに、入力装置22から一時停止処理部12に一時停止信号が送信され、この一時停止処理部12によって自動運転制御部13における処理が一時停止されると、この後、自動運転監視部14は、一時停止維持指令(信号)を自動運転制御部14に送信して、自動運転制御部14に一時停止状態を維持させる。
【0049】
そして、この状態で、自動運転監視部14は、入力装置22から自動運転再開指令(信号)が入力されたかどうかを、入出力制御部11を介して監視し、自動運転再開指令が入力されたことが確認されると、次に、前記プログラム操作部15の処理状況から、自動運転制御部13によって実行中のプログラムが操作されたかどうかを確認し、プログラムが操作されていない場合には、自動運転再開指令を前記自動運転制御部13に送信して、当該自動運転制御部13による処理を再開させる。
【0050】
一方、実行中のプログラムが操作されたことが確認された場合には、自動運転監視部14は、自動運転再開指令が入力された時の再開ブロックを、表示装置21の表示状態から認識し、認識された再開ブロックが再開可能なブロックとして設定されたブロックであるか否かを、再開可能条件記憶部17に格納されたデータを参照して確認し、再開可能なブロックである場合には、自動運転再開指令を前記自動運転制御部13に送信して、当該自動運転制御部13による処理を再開させ、再開不可なブロックである場合には、前記入出力制御部11を介して前記表示装置21にアラームを表示させる。
【0051】
斯くして、本例の数値制御装置10によれば、自動運転監視部14により、自動運転制御部13の実行状態が監視され、NCプログラムの実行が一時停止された後、当該NCプログラムの実行が再開されるときに、当該自動運転監視部14により、再開ブロックが再開可能なブロックであるか否かが確認され、再開可能なブロックであるときにのみ、加工が再開されるので、例えば、オペレータによる加工再開操作にミスがあったとしても、工具とワークとの干渉を確実に回避することができる。
【0052】
また、本例の数値制御装置10によれば、再開可能なブロックであるか否かをオペレータの判断によることなく判定することができるので、オペレータは、当該工作機械1で実行される加工工程について、熟知している必要はない。また、この数値制御装置10によれば、再開ブロックが、再開可能なブロックでないときには、表示装置21にアラームが表示(出力)されるので、オペレータは、自身が操作ミスしたことを瞬時に理解することができ、この場合、オペレータは、NCプログラムの冒頭から実施するなどの対応をとることができる。
【0053】
また、本例の数値制御装置10によれば、再開可能ブロックに係る情報が予め設定されて前記再開可能条件記憶部17に格納されているので、自動運転監視部14において、再開ブロックが再開可能なブロックであるか否かの確認処理を迅速に行うことができる。
【0054】
以上、本発明の一具体的な実施の形態について説明したが、本発明が採り得る態様は、何ら上例のものに限定されるものではない。
【0055】
例えば、上述した例では、再開可能なブロックの設定に当たり、ブロック自体を定義するシーケンス番号(N番号)、即ちブロックの固有値を用いたが、これに限られるものではなく、特定のNCコードを基準に、再開可能なブロックであるか否かを識別するようにしても良い。この例を、図5に示す。図5に示した例では、再開可能なブロックを定義するためのNCコードとして、「M1」などMコードを用いており、このように設定されたNCコードに係る情報がNCプログラム毎に設定されて、前記再開可能条件記憶部17に格納される。
【0056】
この場合、自動運転監視部14は、自動運転再開指令が入力された時の再開ブロックを、表示装置21の表示状態から認識し、認識された再開ブロックが中に再開可能なNCコードとして設定されたNCコードが再開ブロック中に含まれるか否かを、再開可能条件記憶部17に格納されたデータを参照して確認し、再開可能なNCコードを含むブロックである場合には、自動運転再開指令を前記自動運転制御部13に送信して、当該自動運転制御部13による処理を再開させ、再開可能なNCコードを含まないブロック、即ち、再開不可ブロックである場合には、前記入出力制御部11を介して前記表示装置21にアラームを表示させる。
【0057】
尚、「M1」はオプショナルストップ意味するものであり、このオプショナルストップ「M1」を有効にした運転モードでは、自動運転が一時停止される。したがって、この「M1」から自動運転を再開させても、工具とワークとの干渉を回避することが可能であり、このため、この例では、「M1」を再開可能であることを定義するNCコードに用いている。また、再開可能であると定義可能なNCコードは、このM1に限られるものではなく、当然のことながら、他のNCコードを用いることができる。
【0058】
また、上例では、自動運転監視部14と再開可能条件記憶部17とを別々の機能部として構成したが、これらが一つの機能部として観念されるように構成しても良い。
【0059】
繰り返しになるが、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1 工作機械
10 数値制御装置
11 入出力制御部
12 一時停止処理部
13 自動運転制御部
14 自動運転監視部
15 プログラム操作部
16 プログラム記憶部
17 再開可能条件記憶部
20 入出力装置
21 表示装置
22 入力装置
25 運動機構部
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-05-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
工作機械の運動機構部を数値制御する数値制御装置であって、
NCコードを記述した複数のブロックから構成されるNCプログラムを記憶するプログラム記憶部と、
少なくともNCプログラムを文字表示する表示装置と、
数値制御の下、前記プログラム記憶部に記憶されたNCプログラムを実行して前記運機構部を動作させる自動運転制御部と、
前記自動運転制御部がNCプログラムを実行しているときに、該NCプログラムの実行を一時停止させた後、該NCプログラムの実行を再開させる一時停止処理部と、
前記一時停止処理部によって、前記自動運転制御部の処理が一時停止されているときに、前記表示装置に表示された実行中のNCプログラムについて、表示された文字を指定した状態で前記表示装置における文字表示を操作可能にし、又は該NCプログラムを編集可能にするプログラム操作部とを備えた数値制御装置において、
前記自動運転制御部の実行状態を監視し、前記一時停止処理部により、NCプログラムの実行が一時停止された後、該NCプログラムの実行が再開されるとき、再開直前に前記プログラム操作部において指定された文字を含む再開ブロックが、予め定められた再開可能なブロックであるか否かを確認し、再開可能なブロックであるときには、前記自動運転制御部における前記再開ブロックからの処理を再開させ、再開可能なブロックではないときには、処理を中止させる自動運転監視部を設けたことを特徴とする数値制御装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
上記課題を解決するための本発明は、工作機械の運動機構部を数値制御する数値制御装置であって、
NCコードを記述した複数のブロックから構成されるNCプログラムを記憶するプログラム記憶部と、
少なくともNCプログラムを文字表示する表示装置と、
数値制御の下、前記プログラム記憶部に記憶されたNCプログラムを実行して前記運機構部を動作させる自動運転制御部と、
前記自動運転制御部がNCプログラムを実行しているときに、該NCプログラムの実行を一時停止させた後、該NCプログラムの実行を再開させる一時停止処理部と、
前記一時停止処理部によって、前記自動運転制御部の処理が一時停止されているときに、前記表示装置に表示された実行中のNCプログラムについて、表示された文字を指定した状態で前記表示装置における文字表示を操作可能にし、又は該NCプログラムを編集可能にするプログラム操作部とを備えた数値制御装置であって、
前記自動運転制御部の実行状態を監視し、前記一時停止処理部により、NCプログラムの実行が一時停止された後、該NCプログラムの実行が再開されるとき、再開直前に前記プログラム操作部において指定された文字を含む再開ブロックが、予め定められた再開可能なブロックであるか否かを確認し、再開可能なブロックであるときには、前記自動運転制御部における前記再開ブロックからの処理を再開させ、再開可能なブロックではないときには、処理を中止させる自動運転監視部を備えた数値制御装置に係る。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
この数値制御装置によれば、自動運転制御部により、プログラム記憶部に記憶されたNCプログラムが実行され、工作機械の運機構部が数値制御される。また、一時停止処理部は、自動運転制御部がNCプログラムを実行しているときに、自動運転制御部による当該NCプログラムの実行を一時停止させることができるとともに、自動運転制御部による当該NCプログラムの実行を再開させることができる。また、プログラム操作部は、一時停止処理部によって、自動運転制御部の処理が一時停止されているときに、表示装置に表示された実行中のNCプログラムについて、表示された文字を指定した状態で表示装置における文字表示を操作可能にし、又は当該NCプログラムの編集を可能にする。