(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108344
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】軸受ユニット
(51)【国際特許分類】
F16C 33/76 20060101AFI20230728BHJP
F16C 33/58 20060101ALI20230728BHJP
F16C 35/067 20060101ALI20230728BHJP
F16C 23/08 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
F16C33/76 A
F16C33/58
F16C35/067
F16C23/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009410
(22)【出願日】2022-01-25
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】399042395
【氏名又は名称】小林 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100157428
【弁理士】
【氏名又は名称】大池 聞平
(72)【発明者】
【氏名】小林 英一
【テーマコード(参考)】
3J012
3J117
3J216
3J701
【Fターム(参考)】
3J012AB01
3J012DB02
3J012FB10
3J117AA01
3J117BA10
3J117CA01
3J117DB04
3J216AA02
3J216AA14
3J216AB01
3J216AB31
3J216BA23
3J216CC48
3J216DA11
3J701AA02
3J701AA42
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA51
3J701BA54
3J701BA56
3J701FA46
(57)【要約】
【課題】カバーの取付構造を有する軸受ユニットにおいて、カバーの着脱作業を容易化する。
【解決手段】軸受ユニット1は、軸受10と、軸受10が内側に設けられる軸受箱25と、軸受10における軸方向の片側を覆うように軸受箱25に取り付けられるカバー15とを備え、カバー15の外周部には、外側に向かって突出する複数の突出部43が形成され、軸受箱25の内周部には、入口36aを有して該入口36a側から周方向に延びる溝として、複数の突出部43を導入可能な複数の溝部36が形成されている。軸受ユニット1は、カバー15を回転させて、各溝部36における入口36a側と奥側との間で各突出部43を移動させることで、カバー15の取り付け及び取り外しが可能である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトが挿通される内輪と、前記内輪を回転自在に支持する外輪とを有する軸受と、
前記軸受が内側に設けられる軸受箱と、
前記軸受における軸方向の片側を覆うように、前記軸受箱に取り付けられるカバーとを備え、
前記カバーの外周部には、外側に向かって突出する複数の突出部が形成され、
前記軸受箱の内周部には、入口を有して該入口側から第1の周方向に延びる溝として、前記複数の突出部を導入可能な複数の溝部が形成され、
前記軸受における軸方向の片側に前記カバーを被せた状態で、前記カバーを前記第1の周方向に回転させて、前記各溝部の入口側から奥側に前記各突出部を移動させることで、前記軸受箱に対して前記カバーが取り付けられ、
前記軸受箱に取り付けられたカバーを前記第1の周方向とは反対の周方向に回転させて、前記各溝部の奥側から入口側に前記各突出部を移動させることで、前記軸受箱に対して前記カバーの取り外しが可能となる、軸受ユニット。
【請求項2】
前記軸受箱の内周部の前側部分には、前記軸受の外周部の凸部を入れるための複数の凹部が、前記カバーにおける複数の突出部を前側から導入可能に形成され、
前記各溝部の入口は、前記各凹部における前記第1の周方向側の側面に設けられている、請求項1に記載の軸受ユニット。
【請求項3】
前記カバーにおいて中心から前記突出部の先端までの距離は、前記突出部及び前記凹部を周方向において互いに対応する箇所で比較した場合に、前記軸受箱において軸心から前記凹部の底までの距離よりも短く、
前記軸受箱に前記カバーが取り付けられた状態では、前記突出部及び前記溝部の奥側部分を周方向において互いに対応する箇所で比較した場合に、前記カバーにおいて中心から前記突出部の先端までの距離が、前記軸受箱において軸心から前記奥側部分の底までの距離よりも短くなる箇所がある、請求項2に記載の軸受ユニット。
【請求項4】
前記溝部では、前記軸受箱に対する前記カバーの取付け状態で前記突出部が収まる奥側部分よりも入口側に、底が前記軸受箱の軸心側に隆起した山状部が設けられ、
前記軸受箱に対する前記カバーの取り付け及び取り外しでは、前記突出部が前記溝部の通過途中に前記山状部を乗り越えるように構成されている、請求項1乃至3の何れか1つに記載の軸受ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバーの取付構造を有する軸受ユニット等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カバーの取付構造を有する軸受ユニットが知られている。カバーは、作業者の安全面や防塵・防水対策などの目的で、軸受を覆うように軸受箱に取り付けられる。この種の軸受ユニットが特許文献1に記載されている。
【0003】
具体的に、特許文献1には、ピローブロック型の軸受ユニットが記載されている。この軸受ユニットでは、軸受箱の反ジャーナル端面に取付カバーが取り付けられている。また、軸受箱のジャーナル側には、裏カバーが取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“インサート軸受ユニット(止めねじ固定方式)取扱説明書”[online],令和3年12月25日,旭精工株式会社,[令和4年1月24日検索],インターネット<URL:https://www.asahiseiko.co.jp/system/download/technote/bearings/manual_uc_j.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の軸受ユニットでは、シャフトの回転時の振動によってカバーが外れないように、ボルトによって軸受箱にカバーを取り付けたり、ハンマーによって軸受箱にカバーを叩き込んだりするなどの方法により、カバーが強固に軸受箱に固定される。そのため、軸受を洗浄する際などカバーの取り外しが必要な場合に、カバーの取り外しに時間を要する。また、再びカバーを取り付けるのにも時間を要する。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、カバーの取付構造を有する軸受ユニットにおいて、カバーの着脱作業を容易化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するべく、第1の発明は、シャフトが挿通される内輪と、内輪を回転自在に支持する外輪とを有する軸受と、軸受が内側に設けられる軸受箱と、軸受における軸方向の片側を覆うように、軸受箱に取り付けられるカバーとを備え、カバーの外周部には、外側に向かって突出する複数の突出部が形成され、軸受箱の内周部には、入口を有して該入口側から第1の周方向に延びる溝として、複数の突出部を導入可能な複数の溝部が形成され、軸受における軸方向の片側にカバーを被せた状態で、カバーを第1の周方向に回転させて、各溝部の入口側から奥側に各突出部を移動させることで、軸受箱に対してカバーが取り付けられ、軸受箱に取り付けられたカバーを第1の周方向とは反対の周方向に回転させて、各溝部の奥側から入口側に各突出部を移動させることで、軸受箱に対してカバーの取り外しが可能となる、軸受ユニットである。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、軸受箱の内周部の前側部分には、軸受の外周部の凸部を入れるための複数の凹部が、カバーにおける複数の突出部を前側から導入可能に形成され、各溝部の入口は、各凹部における第1の周方向側の側面に設けられている。
【0010】
第3の発明は、第2の発明において、カバーにおいて中心から突出部の先端までの距離は、突出部及び凹部を周方向において互いに対応する箇所で比較した場合に、軸受箱において軸心から凹部の底までの距離よりも短く、軸受箱にカバーが取り付けられた状態では、突出部及び溝部の奥側部分を周方向において互いに対応する箇所で比較した場合に、カバーにおいて中心から突出部の先端までの距離が、軸受箱において軸心から奥側部分の底までの距離よりも短くなる箇所がある。
【0011】
第4の発明は、第1乃至第3の何れか1つの発明において、溝部では、軸受箱に対するカバーの取付け状態で突出部が収まる奥側部分よりも入口側に、底が軸受箱の軸心側に隆起した山状部が設けられ、軸受箱に対するカバーの取り付け及び取り外しでは、突出部が溝部の通過途中に山状部を乗り越えるように構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、カバーの外周部に複数の突出部が形成され、さらに軸受箱の内周部に、複数の突出部を導入可能な複数の溝部が形成されている。ここで、本願発明者は、従来の軸受ユニットにおいて軸受箱の内周部に形成されている一対の軸受箱切欠き部(非特許文献1のP.16参照。請求項2の凹部に相当する。)に着目した。この軸受箱切欠き部は、外輪の外周面から突出する外輪回り止めピンを入れる箇所である。そして、本願発明者は、カバーの外周部に複数の突出部を設け、各軸受箱切欠き部に連続して周方向に延びる溝部を設けることで、カバーの回転によりカバーの着脱が可能となることを思いつき、さらに上位概念化した本発明に到達した。本発明によれば、カバーを回転させるという簡単な作業により、軸受箱に対してカバーの着脱が可能となるため、カバーの着脱作業を容易化することができる。なお、本発明は、カバーの各突出部を軸受箱の各溝部に導入できればよく、軸受箱切欠き部を利用することは必須ではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態に係る軸受ユニットを前側の上方から見た斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1に示すAーA切断位置における軸受ユニットの断面図であり、
図2(b)は、
図1の軸受ユニットのうちBーB切断位置における外輪の断面図であり、
図2(c)は、
図1の軸受ユニットのうちAーA切断位置における軸受箱の断面と、軸心側から見た軸受箱の内周面とを表す図である。
【
図3】
図3は、軸受箱を前側斜め上方から見た斜視図である。
【
図4】
図4(a)は、カバーの裏側を斜めから見た斜視図であり、
図4(b)は、カバーを裏側の正面から見た図である。
【
図5】
図5は、軸受箱に対するカバーの取付方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の一例であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0015】
本実施形態は、
図1~
図2に示すように、シャフト5を回転自在に支持する軸受10と、軸受10が内側に設けられる軸受箱25と、軸受10における軸方向の片側(本実施形態では、前側)を覆うように軸受箱25に取り付けられるカバー15とを備えたインサート軸受ユニット(「軸受ユニット」と言う。)1である。本実施形態では、軸受ユニット1が、錆びにくいステンレス製であり、食品加工機械などに使用される。また、軸受ユニット1は、無給油式である。なお、
図1では、カバー15の記載を省略している。
図2(a)では、後述するカラー14の記載を省略している。
【0016】
[軸受の構成]
軸受10は、シャフト5が挿通される内輪11と、内輪11を回転自在に支持する外輪12と、内輪11と外輪12の間に配置されてリテーナー(図示省略)により一定の位置に保持される複数の転動体13(ころ又は玉)と、内輪11の内側に挿通されたシャフト5を固定するためのカラー14とを備えている。本実施形態では、カラー14を設ける側を「前側」、その反対側を「後ろ側」と言う。
【0017】
内輪11は、略円筒状に形成されている。内輪11は、軌道輪を構成する内側溝部11aが外周面に形成された内輪本体21と、内輪本体21の前側に設けられて内輪本体21よりも厚みが薄い円筒状のシャフト締付部22とを備えている。内輪本体21とシャフト締付部22は、内径が互いに等しい。内輪11では、内輪本体21が外輪12の内側に配置されている。シャフト締付部22には、前端面から後ろ側に延びる複数のスリット23が、周方向に間隔を空けて形成されている。
【0018】
外輪12は、略円筒状に形成され、内輪本体21を囲うように設けられている。外輪12の内周面には、内側溝部11aと共に軌道輪を構成する外側溝部12aが設けられている。外輪12は、その外側を囲う軸受箱25に嵌め込まれる。外輪12の外周面には、軸受箱25に外輪12を嵌め込む際に、後述する凹部35に入れられる一対の凸部12bが、外輪12の回り止めピンとして設けられている。なお、
図2(b)は、
図1に示すB-B切断位置の断面図であり、
図2(a)とは切断位置が異なる。
【0019】
カラー14は、シャフト締付部22の外側に嵌め込まれる略円筒状の部材である。カラー14には、外面から内面まで延びる一対のネジ穴14aが、所定の角度間隔で形成されている。軸受10へのシャフト5の取り付けは、内輪11の内側にシャフト5を挿通させた状態で、各ネジ穴14aに埋設された止めネジ(図示省略)をそれぞれ螺合することでなされる。
【0020】
軸受箱25は、ピロー形の軸受箱である。軸受箱25は、鋳型で鋳造された鋳物製品であり、鋳放しの状態のままの形態である(つまり、鋳仕上げ終了後に機械加工や熱処理が施されていない)。軸受箱25は、
図1及び
図3に示すように、ネジ又はボルト等の挿通部が形成された一対の取付部26と、一対の取付部26の間に設けられて軸受10を内側に収納する収納部27とを備えている。軸受10は、機械装置の設置面に一対の取付部26の裏面を当接させた状態で、各取付部26の挿通部に通したネジ又はボルトにより機械装置に固定される。
【0021】
収納部27には、軸受10が嵌め込まれる円形の貫通孔が形成されている。収納部27の内周部には、前後方向の寸法がその外側部分(本体部)27aに比べて短い軸受保持部27bが設けられている。断面視における軸受保持部27bの内周面は、外側に膨らむ曲面となっており、この曲面により外輪12は保持される。
【0022】
収納部27の内周面の前側部分には、
図2(c)及び
図3に示すように、収納部27に対し軸受10を組み付ける際に、外輪12の外周部の凸部12bを入れるための一対の凹部35が形成されている。凹部35は、軸受箱切欠き部と呼ばれたりする部分であり、前側が開放された窪みである。一対の凹部35は、収納部27の軸心(軸受10の軸心)に対し点対称に形成されている。一対の凹部35は、収納部27の軸心を挟んで、反対側に配置されている(
図1参照)。一対の凹部35の位置は、周方向において互いに180°ずれている。
【0023】
凹部35は、収納部27の前端から、後ろ側に向かって延びる溝である。凹部35は、収納部27における前後方向の中心よりも少し後ろ側の位置まで形成されている。凹部35は、カバー15の突出片43(
図4参照)を前側から導入可能な大きさ(周方向の寸法、及び、深さ)を有する。凹部35は、
図3に示すように、軸受保持部27bの厚みよりも深い溝であり、厚さ方向の形成範囲が本体部27aの内側部分にまで及ぶ。
【0024】
収納部27の内周部には、
図3に示すように、入口36aを有して該入口36a側から第1の周方向(
図3において時計回り)に延びる溝として、カバー15における一対の突出片43を導入可能な一対の溝部36が形成されている。一対の溝部36は、一対の凹部35に対応して設けられている。一対の溝部36は、軸受10の周方向において互いに同じ側に延びている。
【0025】
溝部36は、対応する凹部35から、第1の周方向側に連続して形成されている。溝部36の入口36aは、凹部35における第1の周方向側の側面35aに設けられている(
図5における破線内の拡大図を参照)。また、溝部36は、
図3に示すように、収納部27において軸受保持部27bよりも前側部分の本体部27aの内周面に形成されている。溝部36は、本体部27aの内周面のうち、本体部27aと軸受保持部27bの段差付近に位置している。溝部36は、軸受10の周方向において、例えば30°程度の角度範囲に亘って形成されている。溝部36では、軸受箱25に対するカバー15の取付け状態で突出片43が収まる奥側部分36bよりも入口36a側に、底が軸受箱25の軸心側に隆起した山状部36cが設けられている。
【0026】
カバー15は、金属製の部品である。カバー15は、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、略円形の本体部41と、本体部41の外周に連続して形成された円筒部42とを有する。円筒部42は、周方向に亘って高さが略一定に形成され、本体部41の外周から、本体部41の厚さ方向の片側に延びている。
【0027】
円筒部42における高さ方向の一端側(本体部41とは反対側)には、中心側から外側(径方向の外側)に向かって突出する一対の突出片(突出部)43が形成されている(
図4(b)の破線内に示すC-C断面を参照)。突出片43は、円筒部42の外面から斜めに延びている。また、円筒部42の一端側では、周方向における各突出片43の両側に、一端から高さ方向に延びる切欠き42aが形成されている。そのため、円筒部42のうち一対の切欠き42a間の部分は、突出片43の先端から力を受けた際に、内側に弾性変形をしやすくなっている。
【0028】
一対の突出片43は、円筒部42の周方向において複数の凹部35に対応する位置に形成されている。一対の突出片43は、円筒部42の軸心に対し点対称に形成されている。一対の突出片43は、円筒部42の軸心を挟んで、反対側に配置されている。一対の突出片43の位置は、周方向において互いに180°ずれている。
【0029】
円筒部42の一端側の直径は、軸受保持部27bの内周面の直径と同じ又は近い寸法である。また、カバー15において中心から突出片43の先端までの距離X(
図5参照)は、突出片43及び凹部35を周方向において互いに対応する箇所で比較した場合に、収納部27において軸心から凹部35の底までの距離Z1よりも短い。また、円筒部42の周方向における突出片43の寸法Y(
図4(b)参照)は、収納部27の周方向における凹部35の寸法よりも短い。そのため、突出片43をスムーズに凹部35に導入することができる。
【0030】
また、軸受箱25にカバー15が取り付けられた状態(「取付け状態」と言う。)で、突出片43及び溝部36の奥側部分36bを周方向において互いに対応する箇所で比較した場合に、カバー15において中心から突出片43の先端までの距離Xは、収納部27において軸心から奥側部分36bの底までの距離Z2よりも短くなる箇所(本実施形態では、少なくとも奥側部分36bの中央部以外の箇所で、X<Z2となる。)がある。そのため、取付け状態のカバー15は、軸受箱25により一対の突出片43が内側に押し込まれ、カバー15の位置が保持される。
【0031】
さらに、カバー15において中心から突出片43の先端までの距離Xの最大値(本実施形態では、突出片43における周方向の中央部で最大値となる。)は、収納部27において軸心から溝部36の山状部36cの頂部までの距離Z3よりも長い。
【0032】
[カバーの着脱方法]
続いて、カバー15の着脱方法について説明を行う。
【0033】
まずカバー15の取り付けに際しては、一対の突出片43が一対の凹部35の前方に位置するようにカバー15を移動させ、各突出片43が前側から各凹部35に導入されるように、軸受10の前側(軸方向の片側)にカバー15を被せる。そして、この状態で、カバー15を第1の周方向(
図5において時計回り)に回転させることにより、各凹部35の側面35aの入口36aから各突出片43が各溝部36に導入され、さらに各溝部36の入口36a側から奥側部分36bに各突出片43を移動させることができる。この状態では、カバー15を後ろ側に移動させても、突出片43が奥側部分36bの前壁に引っ掛かるため、カバー15は外れない。カバー15は、軸受箱25に対して取り付けられた状態になる。
【0034】
続いてカバー15の取り外しに際しては、取付け状態のカバー15を第1の周方向とは反対の周方向(第2の周方向)に回転させることにより、溝部36の奥側部分36bから入口36a側に各突出片43を移動させ、各突出片43を各凹部35に到達させる。そして、この状態からカバー15を後ろ側に移動させることで、軸受箱25からカバー15を取り外すことができる。
【0035】
[実施形態の効果等]
本実施形態によれば、カバー15を回転させるという簡単な作業により、軸受箱25に対してカバー15の着脱が可能となるため、カバー15の着脱作業を容易化することができる。そのため、軸受10に対して洗浄などのメンテナンス作業を容易に行うことができる。食品加工機械に軸受ユニット1を使用する場合は、軸受10を清潔な状態に維持しやすく、軸受10においてバクテリア等の細菌が繁殖する事態が起きにくい。
【0036】
また、本実施形態では、外輪12の外周部の凸部12bを入れる凹部35が、突出片43を溝部36に導入するために利用される。ここで、突出片43を溝部36に導入するために凹部35を利用しない場合は、溝部36の前壁に、突出片43を通す入口を形成する必要があり、溝部36の形状が複雑化する。それに対し、本実施形態では、溝部36を周方向にだけ形成すればよく、軸受箱25の製造が容易である。
【0037】
また、本実施形態では、距離Xの最大値が、軸受箱25において軸心から溝部36の山状部36cの頂部までの距離Z3よりも長い。そのため、カバー15の取り付け及び取り外しで、突出片43が、溝部36の通過途中に山状部36cを乗り越える。そのため、シャフト5の回転時の振動などにより、取付け状態のカバー15が第2の周方向に回転したとしても、山状部36aによって突出片43が入口36aに到達することが阻止され、意図せずにカバー15が外れることを防止することができる。
【0038】
[その他の実施形態]
上述の実施形態では、凹部35の側面35aに溝部36の入口36aを設けているが、溝部36の入口36aは、溝部36aの前壁に設けてもよい。この場合に、収納部27の内周面の前側部分に凹部35を設けてもよいし、後ろ側部分に凹部35を設けてもよい。
【0039】
上述の実施形態では、軸受10の前側を覆うカバー15、及び、カバー15の取付構造に本発明を適用したが、軸受10の後ろ側を覆うカバー(シャフト5を通すカバー)、及び、そのカバーの取付構造に本発明を適用してもよい。
【0040】
上述の実施形態において、カバー43に設ける突出部43の数は3つ以上であってもよい。その場合、溝部36も同数設ける。
【0041】
上述の実施形態では、軸受ユニット1の材料にステンレスを用いたが、鋼など他の材料を用いてもよい。
【0042】
上述の実施形態では、軸受ユニット1が、無給油タイプであるが、給油タイプであってもよい。また、軸受箱25は、ピロー形以外のタイプ(フランジ形など)であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、カバーの取付構造を有する軸受ユニット等に適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 軸受ユニット
5 シャフト
10 軸受
11 内輪
12 外輪
15 カバー
25 軸受箱
35 凹部
36 溝部
36a 入口
43 突出片(突出部)