(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108349
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/06 20060101AFI20230728BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20230728BHJP
H01L 21/8238 20060101ALI20230728BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20230728BHJP
H01L 21/76 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
H01L29/06 301F
H01L29/78 301D
H01L29/78 301W
H01L27/092 A
H01L27/088 A
H01L21/76 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009416
(22)【出願日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】青木 宏憲
【テーマコード(参考)】
5F032
5F048
5F140
【Fターム(参考)】
5F032AB02
5F032AC04
5F032BB04
5F048AA04
5F048AC01
5F048AC03
5F048BC03
5F048BC05
5F048BE02
5F048BE03
5F048BE09
5F048BH02
5F140AA16
5F140AA24
5F140AB03
5F140AC21
5F140BA01
5F140BD18
5F140BH14
5F140BH30
5F140BH43
5F140BH47
5F140CD09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】分離領域の反転層の形成を抑制し、高圧回路領域から分離領域及びトランジスタ素子領域へのリーク電流を抑制する半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体基板上に設けられた、高圧回路領域2Aと、トランジスタ素子領域2Bと、トランジスタ素子領域と高圧回路領域とを素子分離する分離領域4と、複数列の導電体を含む容量結合型フィールドプレート20A、20Bを備えた半導体装置であって、半導体装置の平面視において、容量結合型フィールドプレート20Bは、トランジスタ素子領域2Bを横断するとともに、高圧回路領域2Aを囲むように配置されており、容量結合型フィールドプレートの複数列の導電体のうちの少なくとも1つの列は、導電体を分断して不連続とする分断部を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に設けられた、高圧回路領域と、トランジスタ素子領域と、前記トランジスタ素子領域と前記高圧回路領域とを素子分離する分離領域と、複数列の導電体を含む容量結合型フィールドプレートを備えた半導体装置であって、
前記半導体装置の平面視において、前記容量結合型フィールドプレートは、前記トランジスタ素子領域を横断するとともに、前記高圧回路領域を囲むように配置されており、
前記容量結合型フィールドプレートの前記複数列の導電体のうちの少なくとも1つの列は、前記導電体を分断して不連続とする分断部を備えたものであることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記半導体装置の平面視において、前記分断部は、前記分離領域を基準として前記高圧回路領域側に配置されたものであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体装置の平面視において、前記分断部は、前記分離領域を基準として前記トランジスタ素子領域側に配置されたものであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記容量結合型フィールドプレートは、前記半導体装置の平面視において、前記分離領域を基準として前記高圧回路領域側に配置された前記分断部を備えた少なくとも1つの列の導電体と、前記分離領域を基準として前記トランジスタ素子領域側に配置された前記分断部を備えた少なくとも1つの列の導電体とを含むものであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記分断部は、前記半導体装置の平面視において、前記分離領域と重なるように配置されたものであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記分断部上に配置されたシールド電極を備えたものであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記容量結合型フィールドプレートは、前記複数列の導電体の全てが前記分断部を備えたものであることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体装置の平面視で、前記高圧回路領域の周囲にリサーフ領域が配置されているものであることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記半導体装置の平面視で、前記リサーフ領域が、前記高圧回路領域と前記トランジスタ素子領域に挟まれた領域に配置されていないことを特徴とする請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記半導体装置の平面視において、前記分断部による前記導電体の分断幅は、前記分離領域の幅以下であることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
さらに、低圧回路領域を備えたものであることを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記半導体基板は第1導電型を有するものであり、
前記高圧回路領域は、前記半導体基板上の第2導電型の第1半導体領域内に配置されたものであり、
前記トランジスタ素子領域は、前記半導体基板上において、前記第1半導体領域と離間する第2導電型の第2半導体領域上の高圧側主電極と、低圧側主電極及び前記高圧側主電極と前記低圧側主電極の間に配置された制御電極とを備えるものであり、
前記分離領域は第1導電型の半導体領域であり、
前記容量結合型フィールドプレートは、前記半導体装置の平面視において、前記高圧回路領域の外縁の一部と重なり、複数列の導電体が容量性結合するように互いに離間した第1の導電体群と、前記トランジスタ素子領域の前記高圧側主電極と前記制御電極間に配置され、複数列の導電体が容量性結合するように互いに離間した第2の導電体群を備え、前記第1の導電体群の一端は前記第1半導体領域と電気的に接続し、前記第1の導電体群の他端は前記半導体基板と電気的に接続した第1導電型の第3半導体領域と電気的に接続し、前記第2の導電体群の一端は、前記高圧側主電極と電気的に接続し、前記第2の導電体群の他端は前記制御電極又は前記低圧側主電極と電気的に接続したものであり、
前記分断部は、前記第1の導電体群の導電体、及び、該第1の導電体群の導電体と隣り合う前記第2の導電体群の導電体のそれぞれを分断して不連続とするものであることを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
高圧回路領域と、トランジスタ素子領域と、トランジスタ素子領域と高圧回路領域とを素子分離する分離領域と、複数列の導電体を含む容量結合型フィールドプレートを備えた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IGBTやパワーMOSFETなどのパワーデバイスは、モータ制御用のインバータのほか、PDP(プラズマディスプレイパネル)、液晶パネルなどの電源用途、エアコンや照明といった家電用インバータなど多くの分野で利用されている。近年、LSI(大規模集積回路)技術の進歩により、AC400V系の産業用電源などに用いられる1200Vクラスまでの高耐圧半導体装置(高耐圧IC)が実用化されている。
【0003】
ローサイド駆動回路と、ハイサイド駆動回路と、制御信号のレベルアップ/レベルダウン機能を担うレベルシフト回路を一つのチップに内蔵した、高耐圧のゲートドライバICであるHVIC(High Voltage Integrated Circuit)が用いられている。
図19は、特許文献1の
図1に記載された半導体装置の半導体領域の平面図であり、レベルシフト素子の一般的なHVICの平面図を示す。
図19に例示されるように、高圧回路領域(ハイサイド駆動回路)は、その外周を高耐圧分離領域32bに囲われた第1半導体領域(N拡散領域42b)に搭載される。
【0004】
後述する
図18の高電位側回路部110等が搭載される高圧回路領域と、後述する
図18のHVNMOS101,102に相当するレベルシフト回路の高耐圧LDMOSFET(Laterally Diffused Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor。単に高耐圧LDMOSということもある。)等が、同じ半導体基板上に形成された構造のHVICが知られている。HVICにおいては、特許文献1や特許文献2に記載の高耐圧分離領域は、リサーフ(RESURF;REduced SURface Field)分離構造で形成されている。また、高耐圧分離領域の第1半導体領域と高耐圧LDMOSとなる第2半導体領域は、特許文献3に記載の環状トレンチや特許文献4に記載のトレンチ分離構造等のトレンチ分離、特許文献1や特許文献5のP―スリット領域に記載のPN接合分離などで構成された分離領域により互いに電気的に分離されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-283716号公報
【特許文献2】国際公開第2018/051412号
【特許文献3】特開2018-195640号公報
【特許文献4】特開2004-349296号公報
【特許文献5】特開2018-117069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図18に、特許文献5の
図5に記載されるレベルシフト素子を内蔵した通常のHVICの回路構成を示す。
図18に示すHVIC100は、ブリッジ回路120の例えば一相分を形成するIGBT121,122の高電位側(上アーム)のIGBT121を駆動するゲートドライバICである。ブリッジ回路120は、主直流電源の正極側の電位(電源電位)Vdcと、負極側である共通電位COMとの間に、直列に接続されている。
【0007】
符号OUTは、ブリッジ回路120の上アームのIGBT121のエミッタと低電位側(下アーム)のIGBT122のコレクタとの接続点であり、ブリッジ回路120の交流出力端子である。レベルシフト素子200のHVNMOS(高耐圧のnチャネル型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)101,102、負荷抵抗(抵抗体)103,104、定電圧ダイオード105,106、NOT回路107,108、RSフリップフロップ(RS-FF)109、高電位側回路部110及び補助直流電源E1は、ブリッジ回路120の上アームのIGBT121を駆動するためのレベルシフト回路である。符号Vcc1は、高電位側の補助直流電源E1の正極ラインの電位(HVICの最高電位)であり、カソード端子の電位である。
【0008】
HVNMOS101は制御回路(不図示)により作られたパルスのオン信号131の入力を受けて導通し、HVNMOS101の導通による負荷抵抗103の電圧降下を信号としてIGBT121がオンされる。HVNMOS102は制御回路で作られたパルスのオフ信号132が入力されて導通し、HVNMOS102の導通による負荷抵抗104の電圧降下を信号としてIGBT121がオフされる。制御回路は、共通電位COMを基準とした低電圧側の補助直流電源E2の正極ラインの電位Vcc2から電流を供給される。
【0009】
レベルシフト回路のうち、2つのHVNMOS101,102は、共通電位COMを基準とした信号を後段(NOT回路107,108)に入力する回路部分となる。HVNMOS101とHVNMOS102及び負荷抵抗103と負荷抵抗104とは、通常、それぞれ互いに等しく構成されている。HVNMOS101,102は、ソースと共通電位COMとの間に電流負帰還用の抵抗体111,112がそれぞれ接続され、ソースフォロア構成になっている。
【0010】
高圧回路領域のN型拡散層である第1半導体領域とトランジスタ素子領域のN型拡散層である第2半導体領域の間は所定の耐圧(例えば30V)が必要であり、高圧回路領域とトランジスタ素子領域との間にリーク電流も流れないことが求められている。高圧回路領域とトランジスタ素子領域の高耐圧分離構造において、例えば第1半導体領域と電気的に接続した導電体、第2半導体領域と電気的に接続した導電体とを含む容量結合型フィールドプレート(MFFP:Multiple Floating Field Plate)が採用されることがある。この技術を
図19等に記載のHVICに適用し、例えば分離領域と対向する高圧回路領域の電位が、分離領域と対向するトランジスタ素子領域の電位よりも高まったとき(以下、「異電圧となった場合」ともいう)、フィールドプレートの電位変化に応じて、フィールドプレート下の分離領域の電位も変動してしまう可能性がある。また、分離領域表面の導電型の反転現象が発生し、高圧回路領域と高耐圧LDMOS(トランジスタ素子領域)とを分離する分離領域の表面に、反転層のリーク経路が生成されてしまう可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、半導体基板上に設けられた、高圧回路領域と、トランジスタ素子領域と、前記トランジスタ素子領域と前記高圧回路領域とを素子分離する分離領域と、複数列の導電体を含む容量結合型フィールドプレートを備えた半導体装置であって、
前記半導体装置の平面視において、前記容量結合型フィールドプレートは、前記トランジスタ素子領域を横断するとともに、前記高圧回路領域を囲むように配置されており、
前記容量結合型フィールドプレートの前記複数列の導電体のうちの少なくとも1つの列は、前記導電体を分断して不連続とする分断部を備えたものである半導体装置を提供する。
【0012】
このような半導体装置によれば、分離領域と対向する高圧回路領域とトランジスタ素子領域の電位とが異電圧となっても、分離領域の表面側の電位変動を低減することができる。また、高圧回路領域、分離領域、トランジスタ素子領域の寄生トランジスタによる、高圧回路領域から分離領域、トランジスタ素子領域へのリーク電流を抑制することができるものとなる。
【0013】
このとき、前記半導体装置の平面視において、前記分断部は、前記分離領域を基準として前記高圧回路領域側に配置されたものとすることができる。
【0014】
これにより、寄生トランジスタによる、高圧回路領域から分離領域、トランジスタ素子領域へのリーク電流を、より効果的に抑制することができるものとなる。
【0015】
また、前記半導体装置の平面視において、前記分断部は、前記分離領域を基準として前記トランジスタ素子領域側に配置されたものとすることができる。
【0016】
これにより、寄生トランジスタによる、高圧回路領域から分離領域、トランジスタ素子領域へのリーク電流を、より効果的に抑制することができるものとなる。また、高圧回路領域側から分離領域上に導電体を延ばすことで、電荷が分離領域上の導電体に注入されてもトランジスタ素子領域内の素子のON抵抗への影響を抑制することが可能となる。
【0017】
また、前記容量結合型フィールドプレートは、前記半導体装置の平面視において、前記分離領域を基準として前記高圧回路領域側に配置された前記分断部を備えた少なくとも1つの列の導電体と、前記分離領域を基準として前記トランジスタ素子領域側に配置された前記分断部を備えた少なくとも1つの列の導電体とを含むものとすることができる。
【0018】
これにより、寄生トランジスタによる、高圧回路領域から分離領域、トランジスタ素子領域へのリーク電流を、より効果的に抑制することができるものとなる。また、高圧回路領域側から分離領域上に導電体を延ばすことで、電荷が分離領域上の導電体に注入されてもトランジスタ素子領域内の素子のON抵抗への影響を抑制することが可能となる。
【0019】
また、前記分断部は、前記半導体装置の平面視において、前記分離領域と重なるように配置されたものとすることができる。
【0020】
これにより、寄生トランジスタによる、高圧回路領域から分離領域、トランジスタ素子領域へのリーク電流を、より効果的に抑制することができるものとなる。
【0021】
また、本発明に係る半導体装置では、前記分断部上に配置されたシールド電極を備えたものとすることができる。
【0022】
これにより、外部イオンの影響を抑制できるものとなる。
【0023】
このとき、前記容量結合型フィールドプレートは、前記複数列の導電体の全てが前記分断部を備えたものとすることができる。
【0024】
これにより、リーク電流をより効果的に抑制することができるものとなる。
【0025】
このとき、前記半導体装置の平面視で、前記高圧回路領域の周囲にリサーフ領域が配置されているものとすることができる。
【0026】
本発明はこのようなリサーフ領域を有する半導体装置において特に有効なものである。
【0027】
このとき、前記半導体装置の平面視で、前記リサーフ領域が、前記高圧回路領域と前記トランジスタ素子領域に挟まれた領域に配置されていないものとすることができる。
【0028】
このような半導体装置であっても、本発明によれば高圧回路領域からのリーク電流の抑制効果を有するものとなる。
【0029】
また、本発明に係る半導体装置では、前記半導体装置の平面視において、前記分断部による前記導電体の分断幅は、前記分離領域の幅以下とすることができる。
【0030】
これにより、安定してフィールドプレートの効果とリーク電流の抑制効果が得られるものとなる。
【0031】
このとき、本発明に係る半導体装置は、さらに、低圧回路領域を備えたものとすることができる。
【0032】
本発明はこのような半導体装置において特に有効なものである。
【0033】
このとき、前記半導体基板は第1導電型を有するものであり、
前記高圧回路領域は、前記半導体基板上の第2導電型の第1半導体領域内に配置されたものであり、
前記トランジスタ素子領域は、前記半導体基板上において、前記第1半導体領域と離間する第2導電型の第2半導体領域上の高圧側主電極と、低圧側主電極及び前記高圧側主電極と前記低圧側主電極の間に配置された制御電極とを備えるものであり、
前記分離領域は第1導電型の半導体領域であり、
前記容量結合型フィールドプレートは、前記半導体装置の平面視において、前記高圧回路領域の外縁の一部と重なり、複数列の導電体が容量性結合するように互いに離間した第1の導電体群と、前記トランジスタ素子領域の前記高圧側主電極と前記制御電極間に配置され、複数列の導電体が容量性結合するように互いに離間した第2の導電体群を備え、前記第1の導電体群の一端は前記第1半導体領域と電気的に接続し、前記第1の導電体群の他端は前記半導体基板と電気的に接続した第1導電型の第3半導体領域と電気的に接続し、前記第2の導電体群の一端は、前記高圧側主電極と電気的に接続し、前記第2の導電体群の他端は前記制御電極又は前記低圧側主電極と電気的に接続したものであり、
前記分断部は、前記第1の導電体群の導電体、及び、該第1の導電体群の導電体と隣り合う前記第2の導電体群の導電体のそれぞれを分断して不連続とするものとすることができる。
【0034】
これにより、分離部表面の半導体領域の反転を抑制し、高圧回路領域から分離領域、トランジスタ素子領域へのリーク電流を抑制することができるものとなる。
【発明の効果】
【0035】
以上のように、本発明の半導体装置によれば、高圧回路領域の第1半導体領域の電位がトランジスタ素子領域の第2半導体領域の電位と異電圧となった場合、分離領域の電位変動を低減することができる。また、高圧回路領域から分離領域、トランジスタ素子領域へのリーク電流を抑制することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の平面視である。
【
図2】
図1で示す半導体装置10のA-A断面図である。
【
図3】
図1で示す半導体装置10のB-B断面図である。
【
図4】
図1で示す半導体装置10のC-C断面図である。
【
図5】
図1で示す半導体装置10のD-D断面図である。
【
図6】
図1で示す半導体装置10のE-E断面図である。
【
図7】
図2で示す半導体装置10においてフィールドプレート20Aの各導電体に符号を附した断面図である。
【
図8】
図5で示す半導体装置10においてフィールドプレート20Bの各導電体に符号を附した断面図である。
【
図9】本発明に係る半導体装置10のフィールドプレートの分断部6と分離領域4との位置関係の一例を示す概略図(平面視における分離領域近傍の拡大図)である。
【
図10】本発明に係る半導体装置10のフィールドプレートの分断部6と分離領域4との位置関係の変形例1を示す概略図(平面視における分離領域近傍の拡大図)である。
【
図11】本発明に係る半導体装置10のフィールドプレートの分断部6と分離領域4との位置関係の変形例2を示す概略図(平面視における分離領域近傍の拡大図)である。
【
図12】本発明に係る半導体装置10のフィールドプレートの分断部6と分離領域4との位置関係の変形例3を示す概略図(平面視における分離領域近傍の拡大図)である。
【
図13】本発明に係る半導体装置10のフィールドプレートの分断部6と分離領域4との位置関係の変形例4を示す概略図(平面視における分離領域近傍の拡大図)である。
【
図14】本発明に係る半導体装置10のフィールドプレートの分断部6と分離領域4との位置関係の変形例5を示す概略図(平面視における分離領域近傍の拡大図)である。
【
図15】本発明に係る半導体装置10のフィールドプレートの分断部6と分離領域4との位置関係の変形例6を示す概略図(平面視における分離領域近傍の拡大図)である。
【
図16】本発明に係る半導体装置10のフィールドプレートの分断部6と分離領域4との位置関係の変形例7を示す概略図(平面視における分離領域近傍の拡大図)である。
【
図17】
図16の本発明の変形例7に係る半導体装置10のフィールドプレートの分断部6における断面図を示す。
【
図18】レベルシフト素子を内蔵した一般的なHVICの回路構成を示す。
【
図19】レベルシフト素子の一般的なHVICの平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
本発明に係る半導体装置10は、上述のように、半導体装置10の平面視において、高圧回路領域2Aの一部に凹部を設け、トランジスタ素子領域(LDMOS)2Bの一部は高圧回路領域(HVDi)2Aの凹部内に設けられている(
図1参照)。
図2,5,7,8で示すように、高圧回路領域2Aの外周側及びトランジスタ素子領域(LDMOS)2Bの高圧側主電極27と制御電極26間には、それぞれ複数列の導電体を含む容量結合型フィールドプレート20A,20Bが設けられており、容量結合型フィールドプレート20A,20Bの各導電体が容量結合する。
図1,2,3,7に示すように、高圧回路領域2Aの外周側にはリサーフ領域11が設けられている。フィールドプレートの各導電体がその直下のリサーフ領域11の表面電位に影響し、リサーフ領域11内で空乏層が半導体装置の平面視においてより外側へと延伸する。その結果、半導体装置の耐圧が確保される。なお、
図1のトランジスタ素子領域(LDMOS)2Bは左右2つの領域に分かれて設けられているが、1つのトランジスタ素子領域としてもよい。高圧回路領域2Aの方がトランジスタ素子領域(LDMOS)2Bよりも高く(例えば+15V)なるように高圧回路領域2Aとトランジスタ素子領域(LDMOS)2Bとを異電位とした場合、フィールドプレートには高圧回路領域2Aと接続した導電体とトランジスタ素子領域(LDMOS)2Bと電気的に接続した導電体があるため、異電圧の影響を受けてそれ以外の容量結合型フィールドプレートの導電体の電位も、容量結合によりある電位まで上昇し、その電位に応じてフィールドプレートの導電体の下部の分離領域4のP型半導体層の表面(P型の半導体基板1又はP型の半導体基板1上に電気的に接続した同じ導電型の半導体層(第1導電型の半導体領域)等がある場合は、それらを含む半導体層の表面)も電位が上昇する。そうすると、高圧回路領域2Aから分離領域4、トランジスタ素子領域2Bへのリークの原因となるという問題が発生する。
【0039】
このように、高圧回路領域から分離領域、トランジスタ素子領域へのリーク電流を抑制することができる半導体装置が求められていた。
【0040】
本発明者は、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、半導体基板上に設けられた、高圧回路領域と、トランジスタ素子領域と、前記トランジスタ素子領域と前記高圧回路領域とを素子分離する分離領域と、複数列の導電体を含む容量結合型フィールドプレートを備えた半導体装置であって、前記半導体装置の平面視において、前記容量結合型フィールドプレートは、前記トランジスタ素子領域を横断するとともに、前記高圧回路領域を囲むように配置されており、前記容量結合型フィールドプレートの前記複数列の導電体のうちの少なくとも1つの列は、前記導電体を分断して不連続とする分断部を備えたものである半導体装置により、高圧回路領域から分離領域、トランジスタ素子領域へのリーク電流を抑制することができるものとなることを見出し、本発明を完成した。
【0041】
以下、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、「~上に」配置される、設けられる等の表現には、互いに接触するように配置等した場合と、他の層などを挟んで配置等した場合とを含む。
【0042】
[半導体装置]
半導体装置10の平面視である
図1に示されるように、第1の実施形態に係る半導体装置は、第1導電型(ここではP型とする)の半導体基板上に設けられた、高圧回路領域(HVDi)2Aと、トランジスタ素子領域(LDMOS)2Bと、トランジスタ素子領域(LDMOS)2Bと高圧回路領域(HVDi)2Aとを素子分離する分離領域4とを備え、さらに、
図2,4-8に示すように、複数列の導電体を含む容量結合型フィールドプレート20A、20Bを備えたものである。
図2,4-8の例では、容量結合型フィールドプレート20A、20Bは、高さの異なる2層の導電体群から構成されるものであるが、高さがほぼ同じ導電体群から構成されてもよく、1層以上の導電体群から構成されるものであればよい。
図1に示す例では、高圧回路領域(HVDi)2Aとトランジスタ素子領域(LDMOS)2Bの周囲には、低圧回路領域5が形成されている。
【0043】
なお、
図2は
図1のA-A断面図であり、高圧回路領域(HVDi)2A、リサーフ領域11、低圧回路領域5にかけての断面図である。
図3は
図1のB-B断面図であり、容量結合型フィールドプレート20A、20Bの導電体を分断して不連続とする分断部6を通る断面図(
図9のB-B断面に対応)である。
図4は
図1のC-C断面図であり高圧回路領域2Aと、トランジスタ素子領域(LDMOS)2Bとを素子分離する分離領域4を通る断面図である。
図5は
図1のD-D断面図であり、高圧回路領域2Aと、トランジスタ素子領域(LDMOS)2Bと、トランジスタ素子領域(LDMOS)2Bとを素子分離する分離領域4を通る断面図である。
図6は
図1のE-E断面図であり、高圧回路領域2Aと、トランジスタ素子領域(LDMOS)2Bと、トランジスタ素子領域(LDMOS)2Bとを素子分離する分離領域4を通る断面図である。
図7は
図2で示す半導体装置10において、容量結合型フィールドプレート20Aの各導電体に符号を附した断面図である。
図8は
図5で示す半導体装置10において、容量結合型フィールドプレート20Bの各導電体に符号を附した断面図である。
図2~
図17は例えば
図1の半導体装置の平面図において高圧回路領域(HVDi)2Aの左側の凹部周辺からその凹部内に一部が設けられたトランジスタ素子領域(LDMOS)2Bの左側周辺にかけての範囲に注目して説明するものであるが、高圧回路領域(HVDi)2Aの左側の凹部周辺からその凹部内に一部が設けられたトランジスタ素子領域(LDMOS)2Bの右側周辺にかけての構造についても
図2~
図17のいずれかと同様の分断部の構造としてもよい。また、高圧回路領域(HVDi)2Aの右側の凹部周辺からその凹部内に一部が設けられたトランジスタ素子領域(LDMOS)2Bの左側周辺または/かつ右側周辺にかけての構造についても
図2~
図17のいずれかと同様の分断部の構造としてもよい。つまり、分離領域4の上方またはその近傍となる4か所に、容量結合型フィールドプレートの導電体を分断する分断部を設けてもよい。
【0044】
(半導体基板)
本発明に係る半導体装置において、以下に説明する半導体装置を構成する各素子領域等は、半導体基板1上に形成、配置される。半導体基板1としては公知の基板を用いることができ、その種類は特に限定されない。以下の説明では、半導体基板1は第1導電型を有するものとする。ここでは、第1導電型がP型として説明するが、これに限定されない。
【0045】
(高圧回路領域)
高圧回路領域2A内の各素子は、半導体基板1上の第2導電型(N型)の第1半導体領域2内に配置される。具体的には、P型の半導体基板1に深いN型拡散層を拡散により形成し、このN型拡散層上に高圧回路領域2A内の各素子を配置する。各素子として、PMOSFET(PMOS)やNMOSFET(NMOS)などが形成されている。高圧回路領域の外周側(後述の低圧回路領域の側)には、例えば、浅いN型拡散層のリサーフ領域11が設けられる。リサーフ領域11は第1半導体領域2よりも不純物濃度が低い。このような、いわゆるリサーフ技術により低圧回路領域5側から広がる空乏層がリサーフ領域11内でより広がりやすくなり、高耐圧を実現している。リサーフ領域11上に絶縁膜21を介して容量結合型フィールドプレート20Aが設けられている。
【0046】
(トランジスタ素子領域)
トランジスタ素子領域(LDMOS)2Bの高圧側主電極27は、半導体基板1上において、第1半導体領域2と離間する第2導電型(N型)の第2半導体領域7上に設けられる。チャネル領域を形成する第1導電型(P型)の第3半導体領域24上に第2導電型(N型)の第4半導体領域28が設けられている。チャネル領域となる第3半導体領域24上に制御電極26が設けられており、第4半導体領域28と電気的に接続した低圧側主電極29と、第2半導体領域7と電気的に接続した高圧側主電極27とを備えるものである。半導体領域25は高圧側主電極27と良好な電気的接続を得るための第2導電型(N型)の高圧側コンタクト領域であり、半導体領域25は設けなくてもよい。制御電極26は半導体基板1上に形成された第1導電型(P型)の第3半導体領域24上に絶縁膜を介して形成されている。第2半導体領域7と第3半導体領域24との間に例えば、N型拡散層のリサーフ領域12が形成されている。リサーフ領域12上に絶縁膜21を介して容量結合型フィールドプレート20Bが設けられている。
【0047】
(分離領域)
分離領域4は、トランジスタ素子領域(LDMOS)2Bと高圧回路領域2Aとを素子分離する領域である。以下の説明では、分離領域4は、第1半導体領域2と第2半導体領域7との間の第1導電型(P型)の半導体領域である。
図6で示すように、トランジスタ素子領域(LDMOS)2Bと高圧回路領域2AはN型半導体からなり、分離領域4はP型半導体で構成されており、PN接合分離されている。すなわち、本実施形態において分離領域4は、高圧回路領域2A内の第1半導体領域2と、トランジスタ素子領域(LDMOS)2Bの第2半導体領域7とを、PN接合分離によりするものである。このような分離領域4により、所望の耐圧(例えば、30V)を確保している。なお、分離領域4のドーパントの濃度は、高圧印加時に、高圧回路領域2A側の第1半導体領域2とトランジスタ素子領域(LDMOS)2B側の第2半導体領域7の間が完全に空乏化し、かつ、所望の耐圧が確保されるように選択される。
図2等において、P型の半導体基板1上に半導体基板1よりも不純物濃度が高い第1導電型(P型)の半導体領域14を設けているが、第1導電型の半導体領域14は設けなくてもよい。
【0048】
なお、分離領域4は、トランジスタ素子領域(LDMOS)2Bと高圧回路領域2Aとを素子分離することができれば特に限定はされず、PN接合分離が最適であるが、絶縁体(又は誘電体)を埋め込んだ分離、トレンチによる分離などが挙げられる。
【0049】
(容量結合型フィールドプレート)
図2,4-8等に示すように、容量結合型フィールドプレート20A、20Bは、半導体装置の平面視において、高圧回路領域2Aの外縁の一部と重なり、複数列の導電体が容量性結合するように互いに離間した第1の導電体群と、トランジスタ素子領域(LDMOS)2Bの高圧側主電極27と制御電極26間に配置され、複数列の導電体が容量性結合するように互いに離間した第2の導電体群を備えている。つまり、上下方向に配置された2つの導電体群を備えた、2層フローティングプレートによる技術のものである。なお、
図1のA-A断面を
図2に示している。
図7に示すように、第1の導電体群の一端である導電体a6は第1半導体領域2と電気的に接続し、第1の導電体群の他端である導電体a1は半導体基板1と電気的に接続したものである。また、第2の導電体群の一端である導電体c6は、高圧側主電極27と電気的に接続し、第2の導電体群の他端である導電体c1は制御電極26又は低圧側主電極29と電気的に接続した例を示している。
【0050】
また、複数の導電体の列で高圧回路領域2Aを囲むように設ける場合、高電位側の容量(
図7の導電体a6とb5との間の容量)は、低電位側の容量(
図7の導電体a1とb1との間の容量)に比べて小さくなる。導電体間の電圧(キャパシタ電圧)は容量に反比例する。そこで、低電位側の容量を高めるため、高電位側の導電体間の対向面積(例えば導電体a6とb5との対向面積)を低電位側の導電体間の対向面積(例えば導電体a1とb1との対向面積)よりも増加させてもよい。また、逆に、高電位側の導電体間の対向面積を低電位側の導電体間の対向面積よりも小さくして、高圧回路領域2A側で電位を負担する構造としてもよい。
【0051】
このような2層フローティングプレートによる技術を採用した半導体装置は、容量結合型フィールドプレート20A、20Bによるリサーフ領域11,12の表面の電位を安定させる効果がより高い半導体装置であるとともに、本発明に係る特徴点である分断部6を備えることにより、高圧回路領域2Aとトランジスタ素子領域2Bとの間のリーク電流を抑制可能な、より信頼性の高い半導体装置である。
【0052】
容量結合型フィールドプレート20A、20Bは、トランジスタ素子領域(LDMOS)2Bを横断する(
図5)とともに、高圧回路領域2Aの外周側に配置された(
図2)、複数列の導電体を含むものである。分断部6(後述)よりも高圧回路領域2A側で切断した
図7の断面図において、容量結合型フィールドプレート20Aの内、高圧回路領域2A側の導電体a6は高圧回路領域2Aの第1半導体領域2と電気的に接続した高電位側主電極23と電気的に接続している。なお、
図2等において、第1半導体領域2に設けられた第2導電型(N型)の半導体領域(高圧回路領域内に設けられた半導体領域15)は高電位側主電極23と電気的に接続している。分断部6よりも高圧回路領域2A側の容量結合型フィールドプレート20Aの中で外側の導電体a1はリサーフ領域11の外側の基準電位(半導体基板1又は例えば半導体基板1とほぼ同電位となる第1導電型の半導体領域14)と電気的に接続した低電位側主電極22と電気的に接続している(例えば
図7を参照)。また、分断部6よりもトランジスタ素子領域(LDMOS)2B側で切断した
図8の断面図において、容量結合型フィールドプレート20Bの内の高電位側の導電体c6は高圧側主電極27と電気的に接続している。分断部6よりもトランジスタ素子領域(LDMOS)2B側で切断した
図8の断面図において、容量結合型フィールドプレート20Bの内の低電位側の導電体c1は制御電極26と電気的に接続している。
【0053】
ここで、複数列とは、
図7や
図8に示される、第1の導電体群P1を構成する導電体a1~a6のそれぞれの列や、第2の導電体群P2を構成する導電体b1~b5のそれぞれの列、第1の導電体群P1を構成する導電体c1~c6のそれぞれの列、第2の導電体群P2を構成する導電体d1~d5のそれぞれの列を指す。容量結合型フィールドプレート20A、20Bは、
図7,8に示す例では、複数列の導電体が容量性結合するように互いに離間した第1及び第2の導電体群P1,P2を半導体装置の上下方向に積層して(導電体群を)2つの層として備えたものである。容量結合型フィールドプレート20A、20B、すなわち導電体群の層は、1層であっても良く、複数の層であっても良い。導電体としては、公知の材料が使用でき、代表的には多結晶シリコン(ポリシリコン)が挙げられる。
【0054】
高圧回路領域2Aの外周側を囲むように設けられる容量結合型フィールドプレート20Aの導電体は、内側の例えば導電体a6の列と外側の例えば導電体a1の列とで周方向の長さが異なる。導電体の列同士の対向面積(それぞれの導電体の厚み)を、内側の例えば導電体a6と外側の例えば導電体a1で異なる厚みとしてもよい。また、2層の導電体群を用いる場合、各導電体群の中の対向する導電体の重なりの面積を、内側と外側で変更してもよい。例えば内側の導電体a6と導電体b5との重なりから外側の導電体a1と導電体b1との重なりに向かって、重なりを小さくしてもよい。これにより、導電体群の中で内側の導電体の重なりで生じる容量と外側の導電体の重なりで生じる容量との差を低減することができる。
【0055】
(分断部)
次に、容量結合型フィールドプレート20A、20Bにおいて、導電体を分断して不連続とする分断部6について説明する。分断部6の形態は、2層の導電体群を有しており、分断部6は、第1の導電体群の導電体の少なくとも1列、及び、第1の導電体群の導電体のいずれかと隣り合う第2の導電体群P2の導電体のそれぞれを分断して不連続とするものである。本発明に係る半導体装置は、容量結合型フィールドプレート20A、20Bの複数列の導電体のうちの少なくとも1つの列が、導電体を分断して不連続とする分断部を備える点に特徴を有している。
図3は
図1におけるB-B断面を示す図であり、容量結合型フィールドプレート20A、20Bにおける分断部6を通る線の断面図を示す。分断部6は、容量結合型フィールドプレート20A、20Bの複数列の導電体のうちの少なくとも1つの列が分断され不連続とされた領域であり、導電体が存在しない部分である。
【0056】
ここで、「第1の導電体群の導電体と隣り合う第2の導電体群の導電体」とは、
図7に示すように、半導体装置の上下方向に配置された、第1の導電体群P1の各導電体a1~a6及び第2の導電体群P2の各導電体b1~b5のうちの、導電体a1と導電体b1、導電体a3と導電体b2又は導電体b3の関係を指す。言い換えれば、例えば導電体a1と導電体b3~b6のいずれかは「隣り合う」ものではない。
【0057】
このような分断部6を備えることにより、分離領域4の表面側の導電型の反転を抑制し、高圧回路領域2Aからトランジスタ素子領域(LDMOS)2Bへのリーク電流を抑制することができるものとなる。
【0058】
第1の導電体群の導電体の1列以上、または第2の導電体群の導電体の1列以上が分断部6を備えていればよく、分断部6を設ける位置は特に限定されない。分断部6を設ける位置の例としては、第1~第4の例が適用できる。
【0059】
図9から
図11に示すように、高圧回路領域2A側に分断部6を設けてもよい。
図12に示すように、トランジスタ素子領域(LDMOS)2B側に分断部を設けてもよい。
図13に示すように、高圧回路領域2A側とトランジスタ素子領域(LDMOS)2B側に分断部6を設けてもよい。
図14、
図15に示すように、分離領域4上に分断部6を設けてもよい。以下、より詳細に説明する。
【0060】
分断部6を設ける位置は、第1の例として、
図9から
図11に示すように、半導体装置の平面視において、分離領域4を基準として高圧回路領域2A側(紙面の左側)に配置されたものとすることができる。この場合、分離領域4上の容量結合型フィールドプレートは容量結合型フィールドプレート20Bとなり、分離領域4の表面の電位分布は高圧回路領域2A側ではなく、トランジスタ素子領域(LDMOS)2B側の容量結合型フィールドプレート20Bの電位分布に基づいた分布となる。その結果、異電圧となった場合の電位変動の影響をより効果的に低減できる。高圧回路領域2Aからトランジスタ素子領域2Bや分離領域4へのリーク電流を、より効果的に抑制することが可能となる。
【0061】
図9において、容量結合型フィールドプレートを平面的に見て、分離領域4を基準として高圧回路領域2A側に配置された分断部6により、容量結合型フィールドプレート20Aの導電体a1~a6と容量結合型フィールドプレート20Bの導電体c1~c6に分かれ、容量結合型フィールドプレート20Aの導電体b1~b5と容量結合型フィールドプレート20Bの導電体d1~d5に分かれる。
【0062】
図10で示す半導体装置の平面図は、容量結合型フィールドプレート20Aの高電位側の導電体である導電体a5~a6と容量結合型フィールドプレート20Bの導電体c5~c6に分かれ、容量結合型フィールドプレート20Aの導電体b4~b5と容量結合型フィールドプレート20Bの導電体d4~d5に分かれるように、高電位側のみ分断部6Aを設けた例(変形例1)である。ここで低電位側の導電体a1~a4と低電位側の導電体c1~c4は分かれておらず、高圧回路領域2A側の導電体の列と隣り合うトランジスタ素子領域2Bの導電体の列とが互いに接続している。同様に低電位側の導電体b1~b3と低電位側の導電体d1~d3は分かれておらず、高圧回路領域2A側の導電体の列と隣り合うトランジスタ素子領域2Bの導電体の列とが互いに接続している。
【0063】
図11で示す半導体装置の平面図は、容量結合型フィールドプレート20Aの低電位側の導電体である導電体a1~a3と容量結合型フィールドプレート20Bの導電体c1~c3に分かれ、容量結合型フィールドプレート20Aの導電体b1~b2と容量結合型フィールドプレート20Bの導電体d1~d1に分かれるように、低電位側のみ分断部6Bを設けた例(変形例2)である。ここで高電位側の導電体a4~a6と導電体c4~c6は分かれておらず、高圧回路領域2A側の導電体の列と隣り合うトランジスタ素子領域2Bの導電体の列とが互いに接続している。同様に高電位側の導電体b3~b5と低電位側の導電体d3~d5は分かれておらず、高圧回路領域2A側の導電体の列と隣り合うトランジスタ素子領域2Bの導電体の列とが互いに接続している。
【0064】
分断部6を設ける位置の第2の例として、
図12に示すように、半導体装置の平面視において、分離領域4を基準としてトランジスタ素子(LDMOS)2B側に分断部6Cが配置されたものとすることができる(変形例3)。容量結合型フィールドプレートを平面的に見て、分離領域4を基準としてトランジスタ素子(LDMOS)2B側に配置された分断部6により、容量結合型フィールドプレート20Aの導電体a1~a6と容量結合型フィールドプレート20Bの導電体c1~c6に分かれ、容量結合型フィールドプレート20Aの導電体b1~b5と容量結合型フィールドプレート20Bの導電体d1~d5に分かれる。この場合、分離領域4の表面はその上方に設けられた高圧回路領域2A側の容量結合型フィールドプレート20Aの電位分布の影響をより強く受けるようになる。
【0065】
図4や
図6で示したように、分離領域4には第2半導体領域7と隣接するリサーフ領域11が形成されないため、分離領域4には空乏層が延び難くなり、分離領域4及びその近傍の電界が強くなる。特に分離領域4の低電位側(
図4の紙面左側である低圧回路領域5側)は空乏化し難いため、分離領域4の表面と分離領域4の上方に設けられる容量結合型フィールドプレート20A、20Bとの電位差が生じやすくなる。
図9で示すように、分離領域4を基準として分断部6を高圧回路領域2A側に配置すると、トランジスタ素子(LDMOS)2B側の制御電極(例えばゲート電極)又は低圧側主電極(例えばソース電極)と、容量結合型フィールドプレート20Bの1列目の導電体(低電位側から1列目である導電体c1)の電位差も大きくなり、制御電極又は低圧側電極と1列目の導電体c1との間の絶縁膜にリーク電流が流れ、1列目の導電体c1に電子がチャージされることがある。そうすると、容量結合型フィールドプレート20A、20Bの下地のトランジスタ素子領域(LDMOS)2Bの半導体の表面濃度が低下し、トランジスタ素子領域(LDMOS)2Bのオン抵抗が上昇するという問題がある。
【0066】
そこで、
図12、
図13(後述の変形例4)で示すように、分断部6の少なくとも一部をトランジスタ素子領域(LDMOS)2B側、特に容量結合型フィールドプレートの低電位側に配置することで、分断部6の低電位側の上のフィールドプレートは高圧回路領域2A側から延びる容量結合型フィールドプレート20Aとなる。よって、上記問題が容量結合型フィールドプレート20Bへ生じにくい。つまり、高圧回路領域(HVDi)からのリーク電流の抑制に加え、トランジスタ素子領域(LDMOS)2BのON抵抗の上昇を抑制することも可能となる。
【0067】
分断部6を設ける位置の第3の例として、容量結合型フィールドプレート20A、20Bは、
図13の変形例4に示すように、平面視において、分離領域4を基準として高圧回路領域2A側に配置された分断部6Bを備えた少なくとも1つの列の導電体と、分離領域4を基準としてトランジスタ素子領域2B側に配置された分断部6Cを備えた少なくとも1つの列の導電体とを含むものとすることができる。
図13において、容量結合型フィールドプレートを平面的に見て、分離領域4を基準として高圧回路領域2A側に配置された分断部6Bにより、導電体a5、a6と導電体c5、c6に分かれ、導電体b4、b5、b6と導電体d4、d5、d6に分かれる。そして、分離領域4を基準として高圧回路領域2B側に配置された分断部6Cにより、導電体a1、a2、a3と導電体c1、c2、c3に分かれ、導電体b1、b2と導電体d1、d2に分かれる。つまり、分離領域4を基準として高電位側の分断部6Bを高圧回路領域2A側、低電位側の分断部6Cをトランジスタ素子領域(LDMOS)2B側に設けている。この場合、分離領域4上の容量結合型フィールドプレートは、高電位側で容量結合型フィールドプレート20B、低電位側で容量結合型フィールドプレート20Aとなる。ここで、分断部の長さ(
図13の紙面の縦方向の長さ)は分断部6Bの方が分断部6Cよりも長いことが望ましい。このような半導体装置においても、高圧回路領域(HVDi)からのリーク電流の抑制に加え、トランジスタ素子領域(LDMOS)2BのON抵抗の上昇を抑制することが可能となる。また、
図13とは逆に、分離領域4を基準として容量結合型フィールドプレートの高電位側の分断部6Bをトランジスタ素子領域(LDMOS)2B側、容量結合型フィールドプレートの低電位側の分断部6Cを高圧回路領域2A側に設けてもよい。このような半導体装置においても、高圧回路領域(HVDi)からのリーク電流の抑制することができる。
【0068】
さらに、容量結合型フィールドプレートの分断部6Dを設ける位置の第4の例として、
図14の変形例5に示すように、半導体装置の平面視において、分離領域4と重なるように分離領域4の上方に配置されたものとしても良い。この場合も、高圧回路領域2Aからトランジスタ素子領域(LDMOS)2Bや分離領域4へのリーク電流をより効果的に抑制することが可能となる。
【0069】
図9,12,14に記載されるように、容量結合型フィールドプレートに含まれる複数列の導電体の全てが分断部6を備えることが好ましいが、複数列の導電体のうちの少なくとも1つの列が導電体を分断して不連続とする分断部を備えていればよい。また、上記第1~第4の例のいずれかを組み合わせた形態であってもよい。複数列の導電体の全てを分断する場合と一部のみを分断する場合とにかかわらず、分断部は、容量結合型フィールドプレートの高電位側、容量結合型フィールドプレートの低電位側のどちらに設けてもよい。容量結合型フィールドプレートの高電位側と容量結合型フィールドプレートの低電位側で分断部を分けて設けてもよい。
【0070】
半導体装置の平面視において、分断部6Dによる容量結合型フィールドプレートの分断幅(
図14のL1)は、分離領域4の幅(
図14のL2)以下のものとすることができる。このような分断部6Dであっても、安定してフィールドプレートの効果とリーク電流の抑制効果を得ることができる。なお、
図15の変形例6で示すように、分断部6Eによる容量結合型フィールドプレートの分断幅(
図14のL1)は、分離領域4の幅(
図14のL2)よりも大きくしてもよい。このような分断部6Eであっても、安定してフィールドプレートの効果とリーク電流の抑制効果を得ることができる。
【0071】
また、
図16、
図17の変形例7に示すように、分断部6上にシールド電極30(フローティングメタル)を備えたものであることが好ましい。
図16は、
図9の平面図で示すものにシールド電極30も追加したものである。また、
図17は、
図16における分断部6での断面図を示しており、高さ方向の位置関係を説明のために容量結合型フィールドプレート20Aを点線で囲むように記載している。分断部6の上方にシールド電極30を設けることにより、分断部6によって半導体表面が露出することを抑制し、半導体装置の外から侵入してくる外部イオンの影響を抑制できる。
【0072】
(低圧回路領域)
本発明に係る半導体装置は、さらに、低圧回路領域5が配置されているものであっても良い(
図1等を参照)。本発明はこのような半導体装置において特に有効なものである。
【0073】
(リサーフ領域)
本発明に係る半導体装置においては、半導体装置の平面視で、高圧回路領域2Aの外周側にリサーフ領域11を配置してもよい。また、半導体装置の平面視で、トランジスタ素子領域(LDMOS)2Bの高圧側電極27と制御電極26間にリサーフ領域12を配置してもよい。
【0074】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0075】
1…半導体基板、 2…第1半導体領域、
2A…高圧回路領域、 2B…トランジスタ素子領域(LDMOS)、
4…分離領域、 5…低圧回路領域、
6、6A、6B、6C、6D、6E…分断部、 7…第2半導体領域、
10…半導体装置、 11、12…リサーフ領域、 14…第1導電型の半導体領域、
15…高圧回路領域内に設けられた半導体領域、
20A、20B…容量結合型フィールドプレート、 21…絶縁膜、
22…低電位側主電極、 23…高電位側主電極、 24…第3半導体領域、
25…半導体領域(高圧側コンタクト領域)、
26…制御電極、 27…高圧側主電極、 28…第4半導体領域、
29…低圧側主電極、 30…シールド電極、
32b…高耐圧分離領域、 42b…N拡散領域、
100…HVIC、 101,102…HVNMOS、
103,104…負荷抵抗(抵抗体)、 105,106…定電圧ダイオード、
107,108…NOT回路、 109…RSフリップフロップ(RS-FF)、
110…高電位側回路部、 111,112…抵抗体、 120…ブリッジ回路、
121,122…IGBT、 131…オン信号、 132…オフ信号、
200…レベルシフト素子。
P1…第1の導電体群、 P2…第2の導電体群
a1、a2、a3、a4、a5、a6…導電体、
b1、b2、b3、b4、b5…導電体、
c1、c2、c3、c4、c5、c6…導電体、
d1、d2、d3、d4、d5…導電体、
L1…容量結合型フィールドプレートの分断幅、 L2…分離領域4の幅、
COM…共通電位、 E1…補助直流電源、 E2…補助直流電源、
Vdc…電位(電源電位)、
Vcc1…高電位側の補助直流電源E1の正極ラインの電位、
Vcc2…正極ラインの電位。