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特開2023-108367ボルト・ナット・ワッシャ・部材用マーキング用具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108367
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】ボルト・ナット・ワッシャ・部材用マーキング用具
(51)【国際特許分類】
   B25H 7/04 20060101AFI20230728BHJP
   B41K 1/02 20060101ALI20230728BHJP
   B41K 1/50 20060101ALI20230728BHJP
   B41K 1/36 20060101ALI20230728BHJP
   B23P 19/06 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
B25H7/04 D
B41K1/02 T
B41K1/50 J
B41K1/36 A
B23P19/06 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009451
(22)【出願日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】390017891
【氏名又は名称】シヤチハタ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安江 明哲
(72)【発明者】
【氏名】木田 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】今泉 元秀
(57)【要約】
【課題】
本発明は、マーキング部材として速乾性のインキを用いた場合でも捺印面が乾燥固化しない気密機構を有するボルト・ナット・ワッシャ・部材用マーキング用具を提供する。
【解決するための手段】
下端に開口部を有する外筒体と、前記外筒体に対し相対動可能であり、ボルト・ナット・ワッシャを覆う内筒体と、前記外筒体の移動に伴い下動し、ボルト・ナット・ワッシャ・部材へマーキングを施すマーキング部材と、を有するボルト・ナット・ワッシャ・部材用マーキング用具であって、前記開口部周縁の被篏合部に気密篏合するキャップと、前記キャップと前記外筒体とで仕切られた空間内に前記外筒体と前期内筒体の相対動をガイドする第1ガイド部、及び前記マーキング部材を配し、更に前記外筒体は前記被篏合部より上方には空気連通孔を有さないことを特徴とするボルト・ナット・ワッシャ・部材用マーキング用具。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端に開口部を有する外筒体と、
前記外筒体に対し相対動可能であり、ボルト・ナット・ワッシャを覆う内筒体と、
前記外筒体の移動に伴い下動し、ボルト・ナット・ワッシャ・部材へマーキングを施すマーキング部材と、を有するボルト・ナット・ワッシャ・部材用マーキング用具であって、
前記開口部周縁の被篏合部に気密篏合するキャップと、
前記キャップと前記外筒体とで仕切られた空間内に前記外筒体と前期内筒体の相対動をガイドする第1ガイド部、及び前記マーキング部材を配し、更に前記外筒体は前記被篏合部より上方には空気連通孔を有さないことを特徴とするボルト・ナット・ワッシャ・部材用マーキング用具。
【請求項2】
前記第1ガイド部は、前記外筒体、前記内筒体のいずれか一方に設けた第1ガイド面と、他方に設けた前記第1ガイド面と当接しながら摺動可能な第1当接部から構成されていることを特徴とする請求項1に記載のボルト・ナット・ワッシャ・部材用マーキング用具。
【請求項3】
前記第1ガイド面が、前記外筒体の軸線方向より斜めに傾斜している第1傾斜部を有しており、前記マーキング部材が前記外筒体内面に固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のボルト・ナット・ワッシャ・部材用マーキング用具。
【請求項4】
前記キャップと前記外筒体とで仕切られた空間内において、前記第1ガイド部とは離れた位置に、前記第1傾斜部と同じ傾斜角の第2傾斜部と、前記第2傾斜部と当接しながら摺動可能な第2当接部から構成される第2ガイド部を更に有していることを特徴とする請求項3に記載のボルト・ナット・ワッシャ・部材用マーキング用具。
【請求項5】
前記外筒体内において前記内筒体を突出方向に常時付勢する弾性部材を有することを特徴とする請求項1~4に記載のボルト・ナット・ワッシャ・部材用マーキング用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨工事において鋼材をボルト、ナット及びワッシャで接合する際に、ボルトの一次締めの後にボルト、ナット・ワッシャ及び部材等にマークを施すために使用するボルト・ナット・ワッシャ・部材用マーキング用具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄骨工事において鋼材をボルト、ナット及びワッシャで接合した場合に締め付けが適正に行なわれたかの確認は、先ず一次締めの際にボルト、ナット、ワッシャ及び部材等に一連の線状のマークを施して一次締め工程を終了したことを確認する。続いての工程である本締め後に一次締めの際にボルト、ナット、ワッシャ及び部材等に施した線状のマークの位置ずれ角度によりボルト、ナットの供回りや軸回りの有無を判定して行っていた。
【0003】
このように一次締めの際のマーキングはボルト締め工程において重要なものである。このマーキングを作業者がマーキングペンにより手作業で行なうこともできるが、鉄骨工事の現場は高所等の危険箇所や無理な姿勢で行なう箇所においては的確なマーキングができないばかりでなく、作業者の安全も確保できないという問題もある。
【0004】
また、マーキングをワンタッチ式で施すものとして、線状に形成した捺印面よりなるマーク形成部を固定した第1の筒(内筒体)を第2の筒(外筒体)に対して相対動させることでマーク形成部を斜め下方向に移動させ、マーキングを行なうもの(例えば、特許文献1を参照)や、本体ケース部(内筒体)に対して操作部(外筒体)を押下することで可動マーカー部が斜め下方向へ移動し、ボルト等にマーキングするマーキング装置等が従来から知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【0005】
ところで、ボルト等の非吸収面にマーキングを施す場合、速乾性のインキを用いるのが好ましく、その場合、マーキング部材の印字面が乾燥固化しないように気密機構が要求される。
特許文献1に記載のマーキング用具は、第2の筒(外筒体)が半円筒体で構成されていることに加えて、筒表面に穴と連結部からなる移動部を形成している為、第2の筒にキャップを篏合させたとしても前記半円筒の隙間と前記穴からインキ溶剤が揮発し、捺印面の乾燥固化を防ぐことができない。
また、特許文献2に記載のマーキング装置は操作部(外筒体)に、前記操作部と可動マーカー部を連動させる為のリンク腕部が挿入されるリンク開口が形成してあると共に、リンク腕部の他端部を枢支する枢支部としての枢支孔が穿孔されている。更に、これらリンク開口、枢支孔は可動マーカー部の動作上、操作部の上方部に設ける必要がある為、気密を確保するには操作部の略全体を覆うキャップが必要となり、操作性の低下、製品サイズの大型化等を招き、現実的とは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許5194097号公報
【特許文献2】特開2002-355777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであって、マーキング部材として速乾性のインキを用いた場合でも捺印面が乾燥固化しない気密機構を有するボルト・ナット・ワッシャ・部材用マーキング用具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために完成された第1の発明は、下端に開口部を有する外筒体と、前記外筒体に対し相対動可能であり、ボルト・ナット・ワッシャを覆う内筒体と、前記外筒体の移動に伴い下動し、ボルト・ナット・ワッシャ・部材へマーキングを施すマーキング部材と、を有するボルト・ナット・ワッシャ・部材用マーキング用具であって、前記開口部周縁の被篏合部に気密篏合するキャップと、前記キャップと前記外筒体とで仕切られた空間内に前記外筒体と前期内筒体の相対動をガイドする第1ガイド部、及び前記マーキング部材を配し、更に前記外筒体は前記被篏合部より上方には空気連通孔を有さないことを特徴とするボルト・ナット・ワッシャ・部材用マーキング用具である。
【0009】
上記の課題を解決するために完成された第2の発明は、前記第1ガイド部は、前記外筒体、前記内筒体のいずれか一方に設けた第1ガイド面と、他方に設けた前記第1ガイド面と当接しながら摺動可能な第1当接部から構成されていることを特徴とする第1の発明に記載のボルト・ナット・ワッシャ・部材用マーキング用具である。
【0010】
上記の課題を解決するために完成された第3の発明は、前記第1ガイド面が、前記外筒体の軸線方向より斜めに傾斜している第1傾斜部を有しており、前記マーキング部材が前記外筒体内面に固定されていることを特徴とする第1または第2の発明に記載のボルト・ナット・ワッシャ・部材用マーキング用具である。
【0011】
上記の課題を解決するために完成された第4の発明は、前記キャップと前記外筒体とで仕切られた空間内において、前記第1ガイド部とは離れた位置に、前記第1傾斜部と同じ傾斜角の第2傾斜部と、前記第2傾斜部と当接しながら摺動可能な第2当接部から構成される第2ガイド部を更に有することを特徴とする第3の発明に記載のボルト・ナット・ワッシャ・部材用マーキング用具である。
【0012】
上記の課題を解決するために完成された第5の発明は、前記外筒体内において前記内筒体を突出方向に常時付勢する弾性部材を有することを特徴とする第1~4の発明に記載のボルト・ナット・ワッシャ・部材用マーキング用具である。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明では、下端に開口部を有する外筒体と、前記外筒体に対し相対動可能であり、ボルト・ナット・ワッシャを覆う内筒体と、前記外筒体の移動に伴い下動し、ボルト・ナット・ワッシャ・部材へマーキングを施すマーキング部材と、を有するボルト・ナット・ワッシャ・部材用マーキング用具であって、前記開口部周縁の被篏合部に気密篏合するキャップと、前記キャップと前記外筒体とで仕切られた空間内に前記外筒体と前期内筒体の相対動をガイドする第1ガイド部、及び前記マーキング部材を配し、更に前記外筒体は前記被篏合部より上方には空気連通孔を有さない為、マーキング部材の印字面からの溶剤揮発を確実に防止することができ、長期的使用においても印字面が乾燥固化することなく鮮明なマーキングを施すことができる。
【0014】
第2の発明では、前記第1ガイド部は、前記外筒体、前記内筒体のいずれか一方に設けた第1ガイド面と、他方に設けた前記第1ガイド面と当接しながら摺動可能な第1当接部から構成されている為、内筒体に対する外筒体の相対動を適切にガイドすることができ、ボルト等の正確な位置にマーキングを施すことが可能である。
【0015】
第3の発明では、前記第1ガイド面が、前記外筒体の軸線方向より斜めに傾斜している第1傾斜部を有しており、前記マーキング部材が前記外筒体内面に固定されている為、前記外筒体の下動操作により外筒体とマーキング部材が一体となって斜め下方向へ移動することによりボルト等へのマーキングが完了する。即ち、外筒体とは独立したマーキング部材の動作機構を別途設ける必要が無い為、構成を簡素化することができる。また、マーキング部材が斜め下方向に移動することにより、当接面同士が面方向に擦れてマーキング部材の当接面が摩耗するのを抑えることができる。
【0016】
第4の発明では、前記キャップと前記外筒体とで仕切られた空間内において、前記第1ガイド部とは離れた位置に、前記第1傾斜部と同じ傾斜角の第2傾斜部と、前記第2傾斜部と当接しながら摺動可能な第2当接部から構成される第2ガイド部を更に有する為、内筒体に対する外筒体の斜め下方向への移動がスムーズになることでマーキング速度が向上する。更に、ガイド部における部材への負荷を低減することができ、製品寿命の向上にも繋がる。
【0017】
第5の発明では、前記外筒体内において前記内筒体を突出方向に常時付勢する弾性部材を有する為、マーキング完了と同時に弾性部材により外筒体が元の状態に自動復帰する為、マーキング速度の向上、作業効率化に繋がる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態によるボルト・ナット・ワッシャ・部材用マーキング用具の斜視図である。
図2】本発明の実施形態によるボルト・ナット・ワッシャ・部材用マーキング用具の断面図である。
図3】外筒体の断面図である。
図4】外筒体の底面図である。
図5】内筒体の斜視図である。
図6】内筒体の断面図である。
図7】本発明の実施形態によるボルト・ナット・ワッシャ・部材用マーキング用具のマーキング動作を説明するための図(ボルト等なし)である。
図8】本発明の実施形態によるボルト・ナット・ワッシャ・部材用マーキング用具のマーキング動作を説明するための図(ボルト等あり)である。
図9】一次締めされたボルト・ナット・ワッシャ及び部材に対してマーキングがなされた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に図面を参照して、本発明の実施形態によるボルト・ナット・ワッシャ・部材用マーキング用具を図1図8に基づいて説明する。尚、本発明において「下端」「下方」とは、内筒体に対して外筒体を押圧する側を指し、「上端」「上方」とは、その反対側を指す。
【0020】
実施形態のマーキング用具1は、ボルト10、ナット11及びワッシャ12等の締結部材と、これら締結部材によって締結された鋼板等の板状の部材13とに対して、その表面に直線状のマークMを付すために用いられるマーキング用具である。
【0021】
図9は、部材13を直接ボルト10、ナット11及びワッシャ12で締付けて接続された状態を示す。部材13表面(上面)からは、上方に向けてボルト10先端部を突出させてある。ボルト10は、部材13に穿孔された貫通孔(図示せず)に部材裏側(下面側)より挿通され、部材表面側でナット11にて締付けられるが、ナット11にてボルト10を締付ける際、まずボルト10先端部にワッシャ12を挿通し、その上からナット11を締付ける。本実施形態では、ボルト10としては高力ボルトを、ナット11としては六角ナットを、ワッシャ12としては平ワッシャを用いるが、特にこれに限定されないものである。
【0022】
本実施形態のマーキング用具1は、図1図8に示すように、上記のように部材に締付けたボルト10、ナット11及びワッシャ12を内部に収納する内筒体3と、前記締結部材及び部材13にマークMを施すマーキング部材4と、マーキング部材4と一体的に連動し、マーキング時の持ち手として機能する外筒体2とで構成される。
【0023】
外筒体2は、図1から図4に示すように下端に開口部2aを有する中空の有頂円筒体であるとともに、マーキングする際の持ち手部分としても機能する部材である。また外筒体2の下方部は、前記持ち手部2bよりも一回り径の大きな拡径部2cを有しており、該拡径部2cは後述する内筒体3の締結部材の収容部3bを覆う為に形成されている。また、拡径部2cの外側面には、マーキングする際のマーキング部材4の位置を確認できる目印として凸部2fを形成している。図3図4に示すように、拡径部2c内側面には長軸方向に沿ってレール部2gを形成しており、該レール部2gには後述するマーキング部材4が挿入固定して設けられる。外筒体2外面の開口部2a周縁にはキャップ5と気密篏合する為の被篏合部2hを有し、該被篏合部2hより上方には空気連通孔を有さない。
【0024】
内筒体3は、図2に示すように外筒体2内で連結部6を介して連結されており、弾性部材であるコイルバネ7を介して相対動可能に設けられる。内筒体3は図5図6に示すように、外筒体2同様、下端に開放部3aを有し、下方部には締結部材を覆う為に内径を拡張した収容部3bを有する中空の円筒体である。該収容部3bは、ナット11の外接円及びワッシャ12の直径と略同じになるように、内径が段階的に異なる2つの領域を有しており、マーキング時に収容部3bの内壁と、ナット11及びワッシャ12が接触することでマーキング用具1がブレないように位置合わせとして機能するものである。尚、ブレ防止効果を更に高める為に収容部3bの内面形状をナット11の形状と合わせた六角形状としても良い。
また内筒体3は、図2図5図6に示すように、外筒体2の内部に収納した状態で、外側面の前記マーキング部材4と対向する位置に軸線方向に伸びるスリット3cを有しており、外筒体2を押下した際、前記スリット3cにマーキング部材4が移動することによりマーキングが完了する。
【0025】
尚、本実施形態において、マーキング時に外筒体2が内筒体3に対して斜め下方向に移動することでマーキングする構成である為、外筒体2が内筒体3に対して径方向に相対動できる程度に両筒体の内径差が必要である。この内径差により外筒体2内で内筒体3が揺動し、マーキング時のガタつきが発生する可能性がある為、後述する連結部6によりガタつきを抑制している。
【0026】
前記マーキング部材4は、図2に示すように締結部材及び部材13にマークMを形成する為のマーキング体4aと、該マーキング体4aを支持するとともに外筒体2の内面に固定するための基部4bから構成される。マーキング体4aは揮発性インキを含侵している連続気泡を有する多孔質ゴムで構成され、締結部材の側面形状に適合する線状で成形されている。
基部4bはマーキング体4aを支持する為の細長く成形した短手断面がT字状の部材である(図示せず)。基部のT字天面が、マーキング体を接着支持する支持部として機能し、側面の一対の突起部が前記レール部2gに挿入することでマーキング部材4を外筒体2に固定する固定部として機能する。
【0027】
前記揮発性インキに用いる揮発性溶剤としては、例えば、揮発性エステル系溶剤、揮発性ケトン系溶剤、揮発性芳香族系溶剤、揮発性アルコール系溶剤の単独又は混合してなる揮発性有機溶剤を用いることができる。揮発性エステル系溶剤としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n-アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸n-アミル、プロピオン酸イソアミル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n-ブチル、酪酸イソブチル、酪酸n-アミル、酪酸イソアミル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-プロピル、乳酸イソプロピル、乳酸n-ブチル、乳酸イソブチル、乳酸n-アミル、乳酸イソアミルなどを用いることができる。揮発性ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルn-プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルn-ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn-アミルケトン、メチルイソアミルケトン、4-メトキシ-4-メチルペンタノン-2などを用いることができる。揮発性芳香族系溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを用いることができる。揮発性アルコール系溶剤としては、n-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどを用いることができる。特に、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点:120℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点:188℃)、3-メトキシ-1-ブタノール(沸点:161℃)、ベンジルアルコール(沸点:205℃)等が乾燥性の観点から好ましい。
また、前記揮発性インキに用いる着色剤として、染料は油溶性染料であればよく、ニグロシン系、アジン系、モノアゾ系、ジスアゾ系、金属錯塩型モノアゾ系、アントラキノン系、フタロシアニン系、トリアリルメタン系等の油溶性染料、油溶性造塩染料、油溶性含金染料を用いることができ、顔料は、縮合アゾ、イソインドリノン、キナクリドン、ジケトピロロピロール、アントラキノン、ジオキサジン、フタロシアニン、チオインジコ等の有機顔料、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄等の無機顔料、マイカやガラスを酸化チタンや酸化鉄で被覆した光輝性顔料、アルミ粉や真鍮粉等の金属顔料などを用いることができる。また、既存の紫外線硬化インキ等も用いることができる。
【0028】
ガイド部は、外筒体2及びマーキング部材4を内筒体3に対して斜め下方向に移動させる為のものであり、本実施形態ではマーキング動作を安定化させる為に、互いに離れた位置に2つのガイド部(第1ガイド部及び第2ガイド部)を有する。
第1ガイド部は、図2図6に示すように、内筒体3の収容部3b側面に設けた、軸線方向より斜めに傾斜した1対の第1ガイド面としてのガイド孔3d(第1傾斜部)と、該ガイド孔3dに挿通され、ガイド孔3dと当接しながら摺動可能であり、外筒体2の拡径部2c内面に内側に向けて突設した1対の円形の突起2d(第1当接部)と、から構成されている。
第2ガイド部は、図2図6に示すように、内筒体3の天面を前記ガイド孔3dと同じ傾斜角に形成した傾斜部3e(第2傾斜部)と、外筒体2の天面から垂直下方向に突設した、前記傾斜部3eと同じ傾斜角を有し、前記傾斜部3eと当接しながら摺動可能な当接部2e(第2当接部)から構成される。前記当接部2eは内部に空洞を有する筒状で形成されており、後述する連結部6の一部が空洞に挿入することで圧入篏合可能となっている。
【0029】
連結部6は、図2に示すように外筒体2と内筒体3を連結するとともに、両筒体のガタつきを抑制することで内筒体3に対する外筒体2のマーキング動作を安定化させるためのものである。連結部6は図2に示すように、径が比較的小さい小筒部6aが、径が比較的大きく、天面に前記ガイド孔3dと同じ傾斜角のテーパ面6cを有する大筒部6bの天面上に一体成形されている。一方、内筒体3の天面には、小筒部6aの外径より大きく大筒部6bの外径よりは小さい挿通孔3fを形成している。該挿通孔3fから小筒部6aを突出した状態で大筒部6bを内筒体3内部に収納したとき、前記大筒部6aは内筒体3天面の傾斜部3eと大筒部6bのテーパ面6cとが面接触する為、連結部6が内筒体3天面によって抜け止めされた状態になる。一方、挿通孔3fから突出した小筒部6aは、外筒体2の前記当接部2eの空洞に挿入され、圧入篏合することで連結部6は内筒体3、外筒体2を互いに連結している。
【0030】
キャップ5は、図2に示すように前記外筒体2の被篏合部2hに圧入篏合する上端が開口した有底筒体である。外筒体2とキャップ5で仕切られた空間内に第1ガイド部、第2ガイド部、前記マーキング部材4及び、連結部6を配し、更に前記外筒体2は前記被篏合部2hより上方には空気連通孔を有さない為、マーキング部材4のマーキング体4aからの溶剤揮発を確実に防止することができ、長期的使用においてもマーキング体4aが乾燥固化することなく鮮明なマーキングを施すことができる。尚、キャップ5と被篏合部2hとの篏合方法は圧入篏合に限定されず、螺合篏合、凹凸篏合等、気密を確保することが可能な種々の篏合方法が適用できる。
【0031】
次に、上述した実施形態に係るボルト・ナット・ワッシャ・部材用マーキング用具による動作及び効果について図7図8を参照して説明する。
図7(a)に示すように、外筒体2が押圧されていないマーキング前において、外筒体2と内筒体3とがコイルバネ7により最も離れた伸長した状態にある。この状態で、内筒体3の収容部3bに締結部材を収容するように上からマーキング用具1を被せる(図8(a))。この際、収容部3bの内壁と、ナット11及びワッシャ12が接触しており、マーキング用具1がブレないように位置合わせとして機能している。尚、図8(a)においては、六角ナットの外接円と収容部の内壁が接触している。
【0032】
マーキング用具1は、図8(b)に示すように部材13に対して内筒体3の下端を接触させてマーキングが行われる。図7(b)、図8(b)に示すように、外筒体2を把持しながらコイルバネ7の反発力に抗して押し下げると、第1ガイド部及び第2ガイド部の作用により、内筒体3に対して外筒体2が斜め下方向に移動する。即ち、前記作用は、外筒体2の突起2d及び当接部2eが内筒体3のガイド孔3d及び傾斜部3eの斜面にそれぞれ当接しながら摺動することにより行われる。ガイド部を互いに離れた場所に2箇所設けることで、内筒体3に対する外筒体2の斜め下方向への移動がスムーズになり、マーキング速度が向上するとともに、ガイド部における各部材への負荷を低減することができ、製品寿命の向上にも繋がる。
【0033】
一方、マーキング部材4は外筒体2に固定されている為、外筒体2と連動して斜め下に移動し、内筒体3のスリット3cを通過して締結部材及び部材13にマークMが施される(図8(b))。この際、外筒体2と内筒体3は連結部6により連結されている為、ガタつくことなくスムーズにマーキングが可能となる。
【0034】
外筒体2内にマーキング部材4を固定設置したことにより、外筒体2とは独立したマーキング部材4の動作機構を別途設ける必要が無い為、構成を簡素化することができる。また、マーキング部材4がガイド部により斜め下方向に移動することにより、マーキング時に当接面同士が面方向に擦れてマーキング体4aの当接面が摩耗するのを抑えることができる。
【0035】
マーキングが完了した後、外筒体2の押圧を開放すると、圧縮されたコイルバネ7の反発力、第1ガイド部、第2ガイド部の作用により、外筒体2及びマーキング部材4が初期の位置に戻る。
使用後は外筒体2の被篏合部2hにキャップ5を圧入篏合する。外筒体2の被篏合部2hより上方には空気連通孔を有さない為、マーキング体4aからの溶剤揮発を確実に防止することができ、長期的使用においてもマーキング体4aが乾燥固化することなく鮮明なマークMを施すことができる。
【0036】
尚、本実施形態において、外筒体2を内筒体3に対して斜め下方向に摺動させる為に、前記ガイド孔3d及び前記傾斜部3eを傾斜面として形成しているが、傾斜させずに垂直方向に形成することも可能である。この場合、第1ガイド部、第2ガイド部は、外筒体2を内筒体3に対して左右に揺動することなくマーキング体を垂直下方向に移動させる為のガイドとして機能する。
【0037】
以上、本発明に係るボルト・ナット・ワッシャ・部材用マーキング用具の好ましい実施形態を説明したが、本発明の技術的思想は、ここで説明された実施形態に限定して解釈されるべきではない。当業者は、本発明の要旨又は技術思想から逸脱しない範囲で、この実施形態を適宜、変更又は改良を加えることができる。そのような変更又は改良を伴うボルト・ナット・ワッシャ・部材用マーキング用具及び関連する周辺技術は、本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【符号の説明】
【0038】
1 マーキング用具
2 外筒体
2a 開口部
2b 持ち手部
2c 拡径部
2d 突起
2e 当接部
2f 凸部
2g レール部
2h 被篏合部
3 内筒体
3a 開放部
3b 収容部
3c スリット
3d ガイド孔
3e 傾斜部
3f 挿通孔
4 マーキング部材
4a マーキング体
4b 基部
5 キャップ
6 連結部
6a 小筒部
6b 大筒部
6c テーパ面
7 コイルバネ
10 ボルト
11 ナット
12 ワッシャ
13 部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9