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特開2023-108372電子装置の製造方法および粘着性フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108372
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】電子装置の製造方法および粘着性フィルム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20230728BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20230728BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230728BHJP
【FI】
H01L21/78 M
C09J7/29
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009463
(22)【出願日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】三井化学東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】林下 英司
【テーマコード(参考)】
4J004
5F063
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004AB07
4J004CA03
4J004CB03
4J004CC03
4J004FA08
5F063AA18
5F063AA48
5F063CA04
5F063EE08
5F063EE25
(57)【要約】
【課題】個片化された部品に高温で作動テストを行う場合であっても、チップの位置精度が良好な電子装置の製造方法および粘着性フィルムを提供する。
【解決手段】基材層、中間層および粘着性樹脂層をこの順番に備える粘着性フィルムと、前記粘着性樹脂層に貼り付けられた電子部品と、を備える構造体を準備する工程(A)と、前記粘着性フィルムに貼り付けられた状態で、ダイシングブレードにより前記電子部品をダイシングする工程(B)と、60℃以上200℃以下の温度環境下において、前記粘着性フィルムに貼り付けられた状態の前記電子部品について特性評価を行う工程(C)と、を含む電子装置の製造方法であって、当該粘着性フィルムについて、150℃の環境下における圧縮ひずみ率Sが3%以下である、電子装置の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、中間層および粘着性樹脂層をこの順番に備える粘着性フィルムと、前記粘着性樹脂層に貼り付けられた電子部品と、を備える構造体を準備する工程(A)と、
前記粘着性フィルムに貼り付けられた状態で、ダイシングブレードにより前記電子部品をダイシングする工程(B)と、
60℃以上200℃以下の温度環境下において、前記粘着性フィルムに貼り付けられた状態の前記電子部品について特性評価を行う工程(C)と、
を含む電子装置の製造方法であって、
当該粘着性フィルムについて、以下<方法>に従って測定した150℃の環境下における圧縮ひずみ率Sが3%以下である、電子装置の製造方法。
<方法>
粘着性フィルムを10mm×10mmの大きさに切り出し、元の厚みが5mmになるまで積層させ、測定サンプルを得る。
得られた測定サンプルを150℃の環境下において、試験速度5mm/分で圧縮し、10kg/cmの圧力が掛かった際の、元の厚み[mm]と圧縮中の厚み[mm]の差であるひずみ値[mm]を計測し、圧縮ひずみ率S[%]を以下の式から算出する。
圧縮ひずみ率S[%]={(ひずみ値[mm])/(元の厚み[mm])}×100
【請求項2】
基材層、中間層および粘着性樹脂層をこの順番に備える粘着性フィルムと、前記粘着性樹脂層に貼り付けられた電子部品と、を備える構造体を準備する工程(A)と、
前記粘着性フィルムに貼り付けられた状態で、ダイシングブレードにより前記電子部品をダイシングする工程(B)と、
60℃以上200℃以下の温度環境下において、前記粘着性フィルムに貼り付けられた状態の前記電子部品について特性評価を行う工程(C)と、
を含む電子装置の製造方法であって、
前記中間層は樹脂を含み、前記中間層のゲル分率が65%以上である、電子装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子装置の製造方法において、
前記基材層の厚みをXとし、前記中間層の厚みをXとしたとき、
>Xの関係を満たす、電子装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記基材層の厚み(X)が1μm以上100μm以下であり、
前記中間層の厚み(X)が10μm以上500μm以下である、電子装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記ダイシングブレードの外周部先端の断面形状が先細り形状であり、その先端径をRとしたとき、X>Rの関係を満たす、電子装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記基材層の85℃における貯蔵弾性率E'が50MPa以上10GPa以下であり、かつ、前記中間層の85℃における貯蔵弾性率E'が1MPa以上50MPa未満である、電子装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記中間層が熱可塑性樹脂を含む、電子装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の電子装置の製造方法において、
前記熱可塑性樹脂はエチレン・α-オレフィン共重合体およびエチレン・ビニルエステル共重合体からなる群から選択される一種または二種以上の樹脂を含む、電子装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の電子装置の製造方法において、
前記エチレン・ビニルエステル共重合体がエチレン・酢酸ビニル共重合体を含む、電子装置の製造方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記工程(B)の後に、前記粘着性フィルムから、ダイシングした前記電子部品をピックアップする工程(D)をさらに含む、電子装置の製造方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記工程(A)および前記工程(B)の少なくとも一方の後に、前記粘着性フィルムに貼り付けられた状態で、炉内温度が160℃以上260℃以下の条件で半田リフローに通す工程(F)をさらに含む、電子装置の製造方法。
【請求項12】
電子部品のダイシング工程に用いられる粘着性フィルムであって、
基材層、中間層および粘着性樹脂層をこの順番に備え、
当該粘着性フィルムについて、以下<方法>に従って測定した150℃の環境下における圧縮ひずみ率Sが3%以下である、粘着性フィルム。
<方法>
粘着性フィルムを10mm×10mmの大きさに切り出し、元の厚みが5mmになるまで積層させ、測定サンプルを得る。
得られた測定サンプルを150℃の環境下において、試験速度5mm/分で圧縮し、10kg/cmの圧力が掛かった際のひずみ値[mm](=(元の厚み[mm])-(圧縮中の厚み[mm]))を計測し、圧縮ひずみ率S[%]を以下の式から算出する。
圧縮ひずみ率S[%]=(ひずみ値[mm])/(元の厚み[mm])×100
【請求項13】
電子部品のダイシング工程に用いられる粘着性フィルムであって、
基材層、中間層および粘着性樹脂層をこの順番に備え、
前記中間層は樹脂を含み、前記中間層のゲル分率が65%以上である、粘着性フィルム。
【請求項14】
請求項12または13に記載の粘着性フィルムにおいて、
前記基材層の厚みをXとし、前記中間層の厚みをXとしたとき、X>Xの関係を満たす、粘着性フィルム。
【請求項15】
請求項12~14のいずれか一項に記載の粘着性フィルムにおいて、
前記基材層の厚み(X)が1μm以上100μm以下であり、
前記中間層の厚み(X)が10μm以上500μm以下である、粘着性フィルム。
【請求項16】
請求項12~15のいずれか一項に記載の粘着性フィルムにおいて、
前記基材層の85℃における貯蔵弾性率E'が50MPa以上10GPa以下であり、かつ、前記中間層の85℃における貯蔵弾性率E'が1MPa以上50MPa未満である、粘着性フィルム。
【請求項17】
請求項12~16のいずれか一項に記載の粘着性フィルムにおいて、
前記中間層が熱可塑性樹脂を含む、粘着性フィルム。
【請求項18】
請求項17に記載の粘着性フィルムにおいて、
前記熱可塑性樹脂はエチレン・α-オレフィン共重合体およびエチレン・ビニルエステル共重合体からなる群から選択される一種または二種以上を含む、粘着性フィルム。
【請求項19】
請求項18に記載の粘着性フィルムにおいて、
前記エチレン・ビニルエステル共重合体がエチレン・酢酸ビニル共重合体を含む、粘着性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置の製造方法および粘着性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品パッケージ集合体のダイシング(パッケージDC)においては、使用するブレードが厚く、ブレード先端形状がR形状になりやすいことから、切り込み深さを大きくすることにより、パッケージ切断面を垂直に切ることが可能である。そのため、切り込み深さに対応した基材厚みが要求されている。
一方で、近年電子部品の信頼性の向上を達成するため、個片化後の部品に対して高温環境下でのファイナルテストが課されることが増えている。従来、個片チップを1個ずつロボット移送してファイナルテストを行う方法が主流であったが、ダイシングテープ上に固定したままでファイナルテストを行う方法が知られている。
【0003】
高温ファイナルテストについては、PETなどの耐熱基材の粘着テープが適用できることが知られているが、前工程のダイシング工程において、深切りに必要な厚みの耐熱基材を用いた場合には基材剛性が高すぎるため、テープの取り扱い性が悪化するという問題があるが、耐熱樹脂層および柔軟樹脂層の積層基材を用いることにより取り扱い性を改善できる。(例えば特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/203287号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者の検討によれば、従来の電子装置の製造方法に関し、以下のような課題を見出した。
【0006】
従来のテープを用いた場合、ファイナルテスト環境においてはパッケージ電極とテスト電極とを接続して通電評価を行うが、特に100℃以上の高温ファイナルテストの際には、テスト電極との接触・押圧によりパッケージ位置が移動してしまうという問題があった。
すなわち、本発明者は、個片化された部品に高温で作動テストを行う場合において、チップの位置精度に改善の余地があることを見出した。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、個片化された部品に高温で作動テストを行う場合であっても、チップの位置精度が良好な電子装置の製造方法および粘着性フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、特定の粘着性フィルムを使用することにより、個片化された部品に高温で作動テストを行う場合であっても、チップの位置精度が良好になることを見出して、本発明を完成させた。
【0009】
本発明によれば、以下に示す電子装置の製造方法および粘着性フィルムが提供される。
【0010】
[1]
基材層、中間層および粘着性樹脂層をこの順番に備える粘着性フィルムと、上記粘着性樹脂層に貼り付けられた電子部品と、を備える構造体を準備する工程(A)と、
上記粘着性フィルムに貼り付けられた状態で、ダイシングブレードにより上記電子部品をダイシングする工程(B)と、
60℃以上200℃以下の温度環境下において、上記粘着性フィルムに貼り付けられた状態の上記電子部品について特性評価を行う工程(C)と、
を含む電子装置の製造方法であって、
当該粘着性フィルムについて、以下<方法>に従って測定した150℃の環境下における圧縮ひずみ率Sが3%以下である、電子装置の製造方法。
<方法>
粘着性フィルムを10mm×10mmの大きさに切り出し、元の厚みが5mmになるまで積層させ、測定サンプルを得る。
得られた測定サンプルを150℃の環境下において、試験速度5mm/分で圧縮し、10kg/cmの圧力が掛かった際の、元の厚み[mm]と圧縮中の厚み[mm]の差であるひずみ値[mm]を計測し、圧縮ひずみ率S[%]を以下の式から算出する。
圧縮ひずみ率S[%]={(ひずみ値[mm])/(元の厚み[mm])}×100
[2]
基材層、中間層および粘着性樹脂層をこの順番に備える粘着性フィルムと、上記粘着性樹脂層に貼り付けられた電子部品と、を備える構造体を準備する工程(A)と、
上記粘着性フィルムに貼り付けられた状態で、ダイシングブレードにより上記電子部品をダイシングする工程(B)と、
60℃以上200℃以下の温度環境下において、上記粘着性フィルムに貼り付けられた状態の上記電子部品について特性評価を行う工程(C)と、
を含む電子装置の製造方法であって、
上記中間層は樹脂を含み、上記中間層のゲル分率が65%以上である、電子装置の製造方法。
[3]
上記[1]または[2]に記載の電子装置の製造方法において、
上記基材層の厚みをXとし、上記中間層の厚みをXとしたとき、
>Xの関係を満たす、電子装置の製造方法。
[4]
上記[1]~[3]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記基材層の厚み(X)が1μm以上100μm以下であり、
上記中間層の厚み(X)が10μm以上500μm以下である、電子装置の製造方法。
[5]
上記[1]~[4]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記ダイシングブレードの外周部先端の断面形状が先細り形状であり、その先端径をRとしたとき、X>Rの関係を満たす、電子装置の製造方法。
[6]
上記[1]~[5]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記基材層の85℃における貯蔵弾性率E'が50MPa以上10GPa以下であり、かつ、上記中間層の85℃における貯蔵弾性率E'が1MPa以上50MPa未満である、電子装置の製造方法。
[7]
上記[1]~[6]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記中間層が熱可塑性樹脂を含む、電子装置の製造方法。
[8]
上記[7]に記載の電子装置の製造方法において、
上記熱可塑性樹脂はエチレン・α-オレフィン共重合体およびエチレン・ビニルエステル共重合体からなる群から選択される一種または二種以上の樹脂を含む、電子装置の製造方法。
[9]
上記[8]に記載の電子装置の製造方法において、
上記エチレン・ビニルエステル共重合体がエチレン・酢酸ビニル共重合体を含む、電子装置の製造方法。
[10]
上記[1]~[9]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記工程(B)の後に、上記粘着性フィルムから、ダイシングした上記電子部品をピックアップする工程(D)をさらに含む、電子装置の製造方法。
[11]
上記[1]~[10]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記工程(A)および上記工程(B)の少なくとも一方の後に、上記粘着性フィルムに貼り付けられた状態で、炉内温度が160℃以上260℃以下の条件で半田リフローに通す工程(F)をさらに含む、電子装置の製造方法。
[12]
電子部品のダイシング工程に用いられる粘着性フィルムであって、
基材層、中間層および粘着性樹脂層をこの順番に備え、
当該粘着性フィルムについて、以下<方法>に従って測定した150℃の環境下における圧縮ひずみ率Sが3%以下である、粘着性フィルム。
<方法>
粘着性フィルムを10mm×10mmの大きさに切り出し、元の厚みが5mmになるまで積層させ、測定サンプルを得る。
得られた測定サンプルを150℃の環境下において、試験速度5mm/分で圧縮し、10kg/cmの圧力が掛かった際のひずみ値[mm](=(元の厚み[mm])-(圧縮中の厚み[mm]))を計測し、圧縮ひずみ率S[%]を以下の式から算出する。
圧縮ひずみ率S[%]=(ひずみ値[mm])/(元の厚み[mm])×100
[13]
電子部品のダイシング工程に用いられる粘着性フィルムであって、
基材層、中間層および粘着性樹脂層をこの順番に備え、
上記中間層は樹脂を含み、上記中間層のゲル分率が65%以上である、粘着性フィルム。
[14]
上記[12]または[13]に記載の粘着性フィルムにおいて、
上記基材層の厚みをXとし、上記中間層の厚みをXとしたとき、X>Xの関係を満たす、粘着性フィルム。
[15]
上記[12]~[14]のいずれか一つに記載の粘着性フィルムにおいて、
上記基材層の厚み(X)が1μm以上100μm以下であり、
上記中間層の厚み(X)が10μm以上500μm以下である、粘着性フィルム。
[16]
上記[12]~[15]のいずれか一つに記載の粘着性フィルムにおいて、
上記基材層の85℃における貯蔵弾性率E'が50MPa以上10GPa以下であり、かつ、上記中間層の85℃における貯蔵弾性率E'が1MPa以上50MPa未満である、粘着性フィルム。
[17]
上記[12]~[16]のいずれか一つに記載の粘着性フィルムにおいて、
上記中間層が熱可塑性樹脂を含む、粘着性フィルム。
[18]
上記[17]に記載の粘着性フィルムにおいて、
上記熱可塑性樹脂はエチレン・α-オレフィン共重合体およびエチレン・ビニルエステル共重合体からなる群から選択される一種または二種以上を含む、粘着性フィルム。
[19]
上記[18]に記載の粘着性フィルムにおいて、
上記エチレン・ビニルエステル共重合体がエチレン・酢酸ビニル共重合体を含む、粘着性フィルム。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、個片化された部品に高温で作動テストを行う場合であっても、チップの位置精度が良好な電子装置の製造方法および粘着性フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る実施形態の粘着性フィルムの構造の一例を模式的に示した断面図である。
図2】本発明に係る実施形態の電子装置の製造方法の一例を模式的に示した断面図である。
図3】本発明に係る実施形態の電子装置の製造方法の一例を模式的に示した断面図である。
図4】ダイシングブレードを用いて電子部品を切り込んでいる状態の一例を模式的に示した断面図である。
図5】ダイシングブレードの先端径Rの一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。また、数値範囲の「A~B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。また、本実施形態において、「(メタ)アクリル」とはアクリル、メタクリル、またはアクリルおよびメタクリルの両方を意味する。
【0014】
1.粘着性フィルム
以下、本実施形態に係る粘着性フィルム50について説明する。
図1は、本発明に係る実施形態の粘着性フィルム50の構造の一例を模式的に示した断面図である。
【0015】
本実施形態に係る粘着性フィルム50の第1の実施形態としては、図1に示すように、本実施形態に係る粘着性フィルム50は、電子部品のダイシング工程において、電子部品を仮固定するために用いられる粘着性フィルムであって、基材層10、中間層20および粘着性樹脂層30をこの順番に備え、粘着性フィルム50について、以下<方法>に従って測定した150℃の環境下における圧縮ひずみ率Sが3%以下である。
【0016】
<方法>
粘着性フィルムを10mm×10mmの大きさに切り出し、元の厚みが5mmになるまで積層させ、測定サンプルを得る。
得られた測定サンプルを150℃の環境下において、試験速度5mm/分で圧縮し、10kg/cmの圧力が掛かった際のひずみ値[mm](=(元の厚み[mm])-(圧縮中の厚み[mm]))を計測し、圧縮ひずみ率S[%]を以下の式から算出する。
圧縮ひずみ率S[%]=(ひずみ値[mm])/(元の厚み[mm])×100
【0017】
本発明者は、個片化された部品に高温で作動テストを行う場合であっても、チップの位置精度が良好な粘着性フィルムを実現するために、鋭意検討を重ねた。その結果、基材層10と粘着性樹脂層30との間に中間層20を設け、粘着性フィルム50の150℃における圧縮ひずみ率Sを3%以下とすることにより、高温環境下における粘着性フィルム50の剛性を確保し、チップの位置精度を良好にすることが可能となることを初めて見出した。
よって、本実施形態に係る粘着性フィルム50によれば、取扱性に優れつつも、個片化された部品に高温で作動テストを行う場合であっても、チップの位置精度を良好にすることが可能となる。
【0018】
本実施形態の粘着性フィルム50において、150℃における圧縮ひずみ率Sの上限値は3%以下であるが、好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下である。圧縮ひずみ率Sを上記上限値以下とすることにより、高温環境下における粘着性フィルム50の剛性を確保し、チップの位置精度を良好にすることができる。
また、150℃における圧縮ひずみ率Sの下限値は特に限定されないが、例えば0%以上である。
【0019】
本実施形態における粘着性フィルム50の150℃における圧縮ひずみ率Sは、例えば、後述するような電子線による架橋を行うことで調整することが可能である。
【0020】
本実施形態に係る粘着性フィルム50の第2の実施形態としては、図1に示すように、本実施形態に係る粘着性フィルム50は、電子部品のダイシング工程において、電子部品を仮固定するために用いられる粘着性フィルムであって、基材層10、中間層20および粘着性樹脂層30をこの順番に備え、中間層20は樹脂を含み、中間層20のゲル分率が65%以上である。
【0021】
本発明者は、個片化された部品に高温で作動テストを行う場合であっても、チップの位置精度が良好な粘着性フィルムを実現するために、鋭意検討を重ねた。その結果、基材層10と粘着性樹脂層30との間に中間層20を設け、中間層20のゲル分率を65%以上とすることによっても、高温環境下における粘着性フィルム50の剛性を確保し、チップの位置精度を良好にすることが可能となることを初めて見出した。
この理由は定かではないが、ゲル分率が大きいということは、すなわち架橋が進んでいるということを表すため、本実施形態の粘着性フィルム50は高温安定性が高くなり、結果として高温環境下においても剛性を確保できているものと考えられる。
【0022】
本実施形態の粘着性フィルム50において、中間層20のゲル分率の下限値は60%以上であるが、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。ゲル分率を上記下限値以上とすることにより、高温環境下における粘着性フィルム50の剛性を確保し、チップの位置精度を良好にすることができる。
また、中間層20のゲル分率の上限値は特に限定されないが、例えば100%以下である。
【0023】
本実施形態における中間層20のゲル分率は、中間層20に用いられる中間層用樹脂のゲル分率を用いることができ、中間層用樹脂のゲル分率は例えば以下の方法で測定できる。
中間層用樹脂を、一定量のクロロホルムに撹拌しながら溶解させる。溶解後、溶け残りの中間層用樹脂をクロロホルム中から回収し、溶け残り重量を計測する。その後、溶け残り重量および溶解前重量より、ゲル分率を算出する。
【0024】
本実施形態における粘着性フィルム50の中間層20のゲル分率は、例えば、後述するような電子線による架橋を行うことで調整することが可能である。
【0025】
本実施形態の粘着性フィルム50において、基材層10の厚みをXとし、中間層20の厚みをXとしたとき、X>Xの関係を満たすことが好ましい。上記関係を満たすことにより、良好な直線状の側面を有しつつ、ダイシングした電子部品のピックアップ性を好適にすることができる。
【0026】
本実施形態に係る粘着性フィルム50全体の厚さは、機械的特性と取扱い性のバランスから、好ましくは25μm以上500μm以下であり、より好ましくは30μm以上400μm以下であり、さらに好ましくは30μm以上300μm以下である。
【0027】
本実施形態に係る粘着性フィルム50は、電子装置の製造工程において電子部品をダイシングする際に上記電子部品を仮固定するために用いることができる。すなわち、本実施形態に係る粘着性フィルム50は、電子部品のダイシング工程において、ダイシングテープとして好適に用いることができる。
【0028】
本実施形態に係る粘着性フィルム50の全光線透過率は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上である。こうすることで、粘着性フィルム50に透明性を付与することができる。そして、粘着性フィルム50の全光線透過率を上記下限値以上とすることにより、粘着性樹脂層30へより効果的に放射線を照射することができ、放射線照射効率を向上させることができる。なお、粘着性フィルム50の全光線透過率は、JIS K7361-1(1997)に準じて測定することが可能である。
【0029】
次に、本実施形態に係る粘着性フィルム50を構成する各層について説明する。
【0030】
<基材層>
基材層10は、粘着性フィルム50の取り扱い性や機械的特性、耐熱性等の特性をより良好にすることを目的として設けられる層である。ここで、本実施形態において、耐熱性とは高温または低温におけるフィルムや樹脂層の寸法安定性を意味する。すなわち、耐熱性に優れるフィルムや樹脂層ほど、高温または低温における膨張や収縮、軟化等の変形や溶融等が起き難いことを意味する。
【0031】
基材層10は、電子部品をダイシングする際に加わる外力に耐えうる機械的強度があれば特に限定されないが、例えば、樹脂フィルムが挙げられる。
また、基材層10は、高温または低温で電子部品70の特性評価をおこなう際に、電子部品70の位置ズレが起きるほどの変形や溶融が起きない程度の耐熱性があるものが好ましい。
上記樹脂フィルムを構成する樹脂としては、耐熱性に優れる点から、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン-6、ナイロン-66、ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリアミドイミド;ポリカーボネート;変性ポリフェニレンエーテル;ポリアセタール;ポリアリレート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;フッ素系樹脂;液晶ポリマー;塩化ビニリデン樹脂;ポリベンゾイミダゾール;ポリベンゾオキサゾール;ポリメチルペンテン等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
【0032】
これらの中でも、耐熱性や機械的強度、透明性、価格等のバランスに優れる観点から、ポリイミド、ポリアミド、およびポリエステルから選択される一種または二種以上が好ましく、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートから選択される少なくとも一種がより好ましく、ポリエチレンナフタレートがさらに好ましい。
【0033】
基材層10の融点は200℃以上であることが好ましく、220℃以上であることがより好ましい。あるいは、基材層10は融点を示さないものであることが好ましく、分解温度が200℃以上であることがより好ましく、分解温度が220℃以上であることがさらに好ましい。
このような基材層10を用いると、高温または低温で電子部品70の特性評価をおこなう際の粘着性フィルム50の変形をより一層抑制することができる。
【0034】
基材層10は、単層であっても、二種以上の層であってもよい。
また、基材層10を形成するために使用する樹脂フィルムの形態としては、延伸フィルムであってもよいし、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであってもよい。
【0035】
本実施形態に係る粘着性フィルム50において、粘着性フィルム50の取り扱い性や機械的特性、耐熱性等の特性をより一層良好にする観点から、基材層10の85℃における貯蔵弾性率E'は好ましくは50MPa以上、より好ましくは100MPa以上、さらに好ましくは200MPa以上、そして、好ましくは10GPa以下、より好ましくは5GPa以下である。
基材層10の85℃における貯蔵弾性率E'は、例えば、基材層10を構成する各成分の種類や配合割合を制御することにより上記範囲内に制御することができる。
【0036】
基材層10の厚み(X)は、粘着性フィルム50の取り扱い性や機械的特性、耐熱性等の特性をより一層良好にする観点から、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、3μm以上であることがさらに好ましく、5μm以上であることがさらにより好ましく、10m以上であることが特に好ましい。
また、基材層10の厚み(X)は、粘着性フィルム貼り付け時のハンドリング性を容易にする観点から、100μm以下であることが好ましく、75μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましく、40μm以下であることがさらにより好ましく、30μm以下であることが特に好ましい。
基材層10は他の層との接着性を改良するために、表面処理を行ってもよい。具体的には、コロナ処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理等を行ってもよい。
【0037】
<中間層>
中間層20は、粘着性フィルム50の粘着性樹脂層30側の可撓性を良好に保ちつつ、ダイシングブレードの先端を切り込むことができるような範囲に粘着性フィルム50の厚さを調整するために設けられる層である。
すなわち、中間層20を設けることにより、直線状の良好な側面を有する電子部品を得ることと、ダイシングした電子部品のピックアップ性とを両立させることができる。
【0038】
中間層20を構成する樹脂は、中間層20の厚みを厚くしても粘着性フィルム50の粘着性樹脂層30側の可撓性を良好に維持できるものであれば特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂が好ましい。
本実施形態に係る熱可塑性樹脂としては中間層20を形成できる樹脂であれば特に限定されないが、例えば、エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィンとを含むエチレン・α-オレフィン共重合体、高密度エチレン系樹脂、低密度エチレン系樹脂、中密度エチレン系樹脂、超低密度エチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)系樹脂、プロピレン(共)重合体、1-ブテン(共)重合体、4-メチルペンテン-1(共)重合体、エチレン・環状オレフィン共重合体、エチレン・α-オレフィン・環状オレフィン共重合体、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体、エチレン・α-オレフィン・共役ポリエン共重合体、エチレン・芳香族ビニル共重合体、エチレン・α-オレフィン・芳香族ビニル共重合体等のオレフィン系樹脂;エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸プロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸ヘキシル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体等のエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン・酪酸ビニル共重合体、エチレン・ステアリン酸ビニル共重合体等のエチレン・ビニルエステル共重合体;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー;ポリスチレン系熱可塑性エラストマー;ポリウレタン系熱可塑性エラストマー;1,2-ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー;トランスポリイソプレン系熱可塑性エラストマー;塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー;ポリエステル系エラストマー等から選択される一種または二種以上を用いることができる。
【0039】
これらの中でも、エチレン・α-オレフィン共重合体およびエチレン・ビニルエステル共重合体から選択される少なくとも一種が好ましく、エチレン・α-オレフィン共重合体およびエチレン・酢酸ビニル共重合体から選択される少なくとも一種がより好ましく、エチレン・酢酸ビニル共重合体がさらに好ましい。なお本実施形態においては上述した樹脂は、単独で用いてもよいし、ブレンドして用いてもよい。
上記エチレン・酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル単位の含有量は、好ましくは10質量%以上35質量%以下、より好ましくは12質量%以上30質量%以下、さらに好ましくは15質量%以上25質量%以下である。酢酸ビニル単位の含有量がこの範囲にあると、架橋性、柔軟性、耐候性、透明性のバランスにより一層優れる。
酢酸ビニル含有量は、JIS K6730に準拠して測定可能である。
【0040】
本実施形態における熱可塑性樹脂として用いられる、エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィンからなるエチレン・α-オレフィン共重合体のα-オレフィンとしては、通常、炭素数3~20のα-オレフィンを1種類単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができる。中でも好ましいのは、炭素数が10以下であるα-オレフィンであり、とくに好ましいのは炭素数が3~8のα-オレフィンである。このようなα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン等を挙げることができる。これらの中でも、入手の容易さからプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンおよび1-オクテンが好ましい。なお、エチレン・α-オレフィン共重合体はランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよいが、柔軟性の観点からランダム共重合体が好ましい。
【0041】
中間層20の厚み(X)は、ダイシングブレードの先端を十分に切り込むことができるような範囲に粘着性フィルム50の厚さを調整できる厚さであれば、特に制限されないが、例えば、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましく、50μm以上であることがさらにより好ましく、60μm以上が特に好ましい。
また、中間層20の厚み(X)は、粘着性フィルム50の粘着性樹脂層30側の可撓性をより一層良好にする観点から、500μm以下であることが好ましく、400μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることがさらに好ましく、200μm以下であることがさらにより好ましく、150μm以下であることがさらにより好ましく、130μm以下であることが特に好ましい。
【0042】
ここで、ダイシングブレードとしては公知のダイシングブレードが使用可能である。ダイシングブレードは、例えば、円盤状であり、円盤の外周部先端に刃を有し、回転しながら被切断物に接触することにより被切断物を切りつけるものなどが挙げられる。
本実施形態においては、ダイシングブレードの外周部先端の断面形状が先細り形状であり、ダイシングブレードの先端径をRとしたとき、X>Rの関係を満たことが好ましい。こうすることで、ダイシングブレードの先端を粘着性フィルム50に十分に切り込むことができ、その結果、ダイシング後の電子部品の側面をより一層良好な直線状にすることができる。本実施形態において、ダイシングブレードの先端径Rは、図5に示すように、ダイシングブレードの側面が直線でなくなる部分Y1からダイシングブレードの先端Y2までの距離をいう。
【0043】
本実施形態に係る粘着性フィルム50において、粘着性フィルム50の取り扱い性や機械的特性、耐熱性等の特性をより一層良好にする観点から、中間層20の85℃における貯蔵弾性率E'は好ましくは1MPa以上、より好ましくは10MPa以上、そして、粘着性フィルム50の粘着性樹脂層30側の可撓性をより一層良好にする観点から、好ましくは50MPa未満である。
中間層20の85℃における貯蔵弾性率E'は、例えば、中間層20を構成する各成分の種類や配合割合を制御することにより上記範囲内に制御することができる。
【0044】
中間層20は、粘着性フィルム50の耐熱性を向上させる観点から、架橋できるものであってもよく、上記熱可塑性樹脂の架橋物を含むことが好ましい。
中間層20の架橋方法としては中間層20を構成する樹脂を架橋できる方法であれば特に限定されないが、ラジカル重合開始剤による架橋;硫黄や硫黄系化合物による架橋;紫外線や電子線、γ線等の放射線による架橋等の架橋方法が挙げられる。これらの中でも電子線による架橋が好ましい。
【0045】
このとき、中間層20を構成する樹脂のゲル分率は、電子線による架橋を行うことで調整することが可能である。本実施形態に係る粘着性フィルム50の中間層20を構成する樹脂について、電子線による架橋を行う場合、電子線の照射条件を例えば加速電圧50~300kV、照射線量100~400kGyの範囲とすることにより、本実施形態に係る粘着性フィルム50の中間層20を構成する樹脂のゲル分率を所定の範囲にすることができる。
【0046】
ラジカル重合開始剤による架橋は、中間層20を構成する樹脂の架橋に用いられているラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、公知の熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤およびこれらを併用することができる。
硫黄や硫黄系化合物を用いて中間層20を架橋する場合には、中間層20に加硫促進剤、加硫促進助剤等を配合して架橋をおこなってもよい。
また、いずれの架橋方法においても中間層20に架橋助剤を配合して中間層20の架橋をおこなってもよい。
【0047】
<粘着性樹脂層>
粘着性樹脂層30は粘着性フィルム50を電子部品70に貼り付ける際に、電子部品70の表面に接触して粘着する層である。
【0048】
粘着性樹脂層30を構成する粘着剤は、(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、オレフィン系粘着剤、スチレン系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、接着力の調整を容易にできる点等から、(メタ)アクリル系重合体をベースポリマーとする(メタ)アクリル系粘着剤が好ましい。
【0049】
粘着性樹脂層30を構成する粘着剤としては、放射線により粘着力を低下させる放射線架橋型粘着剤を用いることができる。放射線架橋型粘着剤により構成された粘着性樹脂層30は、放射線の照射により架橋して粘着力が著しく減少するため、電子部品70のピックアップ工程において、粘着性樹脂層30から電子部品70をピックアップし易くなる。放射線としては、紫外線、電子線、赤外線等が挙げられる。
放射線架橋型粘着剤としては、紫外線架橋型粘着剤が好ましい。
【0050】
(メタ)アクリル系粘着剤に含まれる(メタ)アクリル系重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル化合物の単独重合体、(メタ)アクリル酸エステル化合物とコモノマーとの共重合体等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステル化合物は一種単独で用いてもよく、二種以上を併用して用いてもよい。
また、(メタ)アクリル系共重合体を構成するコモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、(メタ)アクリルニトリル、(メタ)アクリルアマイド、スチレン、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、(メタ)アクリルアマイド、メチロール(メタ)アクリルアマイド、無水マレイン酸等が挙げられる。これらのコモノマーは一種単独で用いてもよく、二種以上を併用して用いてもよい。
【0051】
放射線架橋型粘着剤は、例えば、上記(メタ)アクリル系粘着剤等の粘着剤と、架橋性化合物(炭素-炭素二重結合を有する成分)と、光重合開始剤または熱重合開始剤と、を含む。
【0052】
架橋性化合物としては、例えば、分子中に炭素-炭素二重結合を有し、ラジカル重合により架橋可能なモノマー、オリゴマーまたはポリマー等が挙げられる。このような架橋性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル;エステル(メタ)アクリレートオリゴマー;2-プロペニルジ-3-ブテニルシアヌレート、2-ヒドロキシエチルビス(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2-メタクリロキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌレートまたはイソシアヌレート化合物等が挙げられる。
なお、粘着剤が、ポリマーの側鎖に炭素-炭素二重結合を有する放射線架橋型ポリマーである場合は、架橋性化合物を加えなくてもよい。
【0053】
架橋性化合物の含有量は、粘着剤100質量部に対して5~100質量部が好ましく、10~50質量部がより好ましい。架橋性化合物の含有量が上記範囲であることにより、上記範囲よりも少ない場合に比べて粘着力の調整がし易くなり、上記範囲よりも多い場合に比べて、熱や光に対する感度が高すぎることによる保存安定性の低下が起こりにくい。
【0054】
光重合開始剤としては、放射線を照射することにより開裂しラジカルを生成する化合物であればよく、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等の芳香族ケトン類;ベンジルジメチルケタール等の芳香族ケタール類;ポリビニルベンゾフェノン;クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン等のチオキサントン類等が挙げられる。
【0055】
熱重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物誘導体やアゾ系重合開始剤等が挙げられる。加熱時に窒素が発生しない点から、好ましくは有機過酸化物誘導体である。熱重合開始剤としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステルおよびパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0056】
粘着剤には架橋剤を添加してもよい。架橋剤としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリストールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N'-ジフェニルメタン-4,4'-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N'-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)等のアジリジン系化合物;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリイソシアネート等のイソシアネート系化合物等が挙げられる。架橋剤の含有量は、粘着性樹脂層30の耐熱性や密着力とのバランスを向上させる観点から、(メタ)アクリル系粘着性樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
【0057】
粘着性樹脂層30の厚みは特に制限されないが、例えば、1μm以上100μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましく、5μm以上40μm以下であることがさらに好ましい。
【0058】
粘着性樹脂層30は、例えば、中間層20上に粘着剤塗布液を塗布することにより形成することができる。
粘着剤塗布液を塗布する方法としては、従来公知の塗布方法、例えば、ロールコーター法、リバースロールコーター法、グラビアロール法、バーコート法、コンマコーター法、ダイコーター法等が採用できる。塗布された粘着剤の乾燥条件には特に制限はないが、一般的には、80~200℃の温度範囲において、10秒~10分間乾燥することが好ましい。更に好ましくは、80~170℃において、15秒~5分間乾燥する。架橋剤と粘着剤との架橋反応を十分に促進させるために、粘着剤塗布液の乾燥が終了した後、40~80℃において5~300時間程度加熱してもよい。
【0059】
<その他の層>
本実施形態に係る粘着性フィルム50は、粘着性樹脂層30上に離型フィルムをさらに積層させてもよい。離型フィルムとしては、例えば、離型処理が施されたポリエステルフィルム等が挙げられる。
【0060】
本実施形態に係る粘着性フィルム50の具体的な構成としては、例えば、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム25μm/エチレン・酢酸ビニル共重合体フィルム(酢酸ビニル単位の含有量19質量%)120μm/紫外線架橋型粘着性樹脂層30μmの層構成を有する粘着性フィルムや、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム50μm/エチレン・酢酸ビニル共重合体フィルム(酢酸ビニル単位の含有量19質量%)70μm/紫外線架橋型粘着性樹脂層30μmの層構成を有する粘着性フィルム等が挙げられる。
【0061】
<粘着性フィルムの製造方法>
次に、本実施形態に係る粘着性フィルム50の製造方法の一例について説明する。
本実施形態に係る粘着性フィルム50は、例えば、基材層10の一方の面に中間層20を押出しラミネート法によって形成し、電子線による架橋を行った中間層20上に粘着剤塗布液を塗布した後に乾燥させることによって、粘着性樹脂層30を形成することにより得ることができる。
また、基材層10と中間層20とは共押出成形によって形成してもよいし、フィルム状の基材層10とフィルム状の中間層20とをラミネート(積層)して形成してもよい。
【0062】
このとき、粘着性フィルム50の150℃における圧縮ひずみ率Sは、中間層20に対して電子線による架橋を行うことで調整することが可能である。本実施形態に係る粘着性フィルム50の中間層20を構成する樹脂について、電子線による架橋を行う場合、電子線の照射条件を例えば加速電圧50~300kV、照射線量100~400kGyの範囲とすることにより、本実施形態に係る粘着性フィルム50の150℃における圧縮ひずみ率Sを所定の範囲にすることができる。
【0063】
また、中間層20を構成する樹脂のゲル分率も、電子線による架橋を行うことで調整することが可能である。本実施形態に係る粘着性フィルム50の中間層20を構成する樹脂について、電子線による架橋を行う場合、電子線の照射条件を例えば加速電圧50~300kV、照射線量100~400kGyの範囲とすることにより、本実施形態に係る粘着性フィルム50の中間層20を構成する樹脂のゲル分率を所定の範囲にすることができる。
【0064】
2.電子装置の製造方法
次に、本実施形態に係る電子装置の製造方法について説明する。
図2および図3は、本発明に係る実施形態の電子装置の製造方法の一例を模式的に示した断面図である。
本実施形態に係る電子装置の製造方法は、以下の3つの工程を少なくとも備え、好ましくは以下の3つの工程を少なくともこの順番で備えている。
(A)基材層10、中間層20および粘着性樹脂層30をこの順番に備える粘着性フィルム50と、上記粘着性樹脂層30に貼り付けられた電子部品70と、を備える構造体100を準備する工程
(B)粘着性フィルム50に貼り付けられた状態で、ダイシングブレードにより電子部品70をダイシングする工程
(C)60℃以上200℃以下の温度環境下において、粘着性フィルム50に貼り付けられた状態の上記電子部品について特性評価を行う工程
そして、本実施形態に係る電子装置の製造方法では、粘着性フィルム50として、前述した、基材層10、中間層20および粘着性樹脂層30をこの順番に備え、150℃における圧縮ひずみ率Sが3%以下である粘着性フィルムまたは上記中間層20のゲル分率が65%以上である粘着性フィルムを使用する。
【0065】
以下、本実施形態に係る電子装置の製造方法の各工程について説明する。
【0066】
(工程(A))
はじめに、基材層10、中間層20および粘着性樹脂層30をこの順番に備える粘着性フィルム50と、上記粘着性樹脂層30に貼り付けられた電子部品70と、を備える構造体100を準備する。
【0067】
このような構造体は、例えば、粘着性フィルム50の粘着性樹脂層30上に電子部品70を貼り付けることにより得ることができる。
粘着性フィルム50に貼り付ける電子部品70としては、例えば、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム-ヒ素、ガリウム-リン、ガリウム-ヒ素-アルミニウム等の半導体基板(例えば、ウェハ);モールドアレイパッケージ基板、ファンアウトパッケージ基板、ウエハレベルパッケージ基板等の複数の半導体チップを封止樹脂にて一括封止された状態のパッケージ基板等が挙げられる。
また、半導体基板としては、表面に回路が形成された半導体基板を用いることが好ましい。
【0068】
粘着性フィルム50の貼り付けは、人の手で行なってもよいが、通常、ロール状の表面保護フィルムを取り付けた自動貼り機によって行なう。
貼り付け時の粘着性フィルム50および電子部品70の温度には特に制限はないが、25℃~80℃が好ましい。
また、貼り付け時の粘着性フィルム50と電子部品70との圧力については特に制限はないが、0.3MPa~0.5MPaが好ましい。
【0069】
(工程(B))
次に、粘着性フィルム50に貼り付けられた状態で、ダイシングブレードにより電子部品70をダイシングして複数の電子部品70を得る。
ここでいう「ダイシング」は、電子部品70を分断し、複数の分断された電子部品70を得る操作をいう。
上記ダイシングは、例えば、外周部先端の断面形状が先細り形状であるダイシングブレードを用いて行うことができる。
【0070】
なお、工程(B)における電子部品70には、ダイシングにより得られる分断された複数の電子部品70を含む。
【0071】
(工程(C))
その後、60℃以上200℃以下の温度環境下において、電子部品70の表面温度が温度環境と同じ温度になるまで加熱した後に、粘着性フィルム50に貼り付けられた状態の電子部品70について特性評価を行う。
電子部品70の特性評価は、例えば、電子部品70の動作確認テストであり、図3(c)に示すように、プローブ端子95を有するプローブカード92を用いておこなうことができる。
例えば、電子部品70の端子75に対して、プローブカード92を介してテスタに接続されたプローブ端子95を接触させる。これにより、電子部品70とテスタとの間で、動作電力や動作試験信号等の授受を行い、電子部品70の動作特性の良否等を判別することができる。
【0072】
工程(C)における温度環境は60℃以上200℃以下であるが、下限値は好ましくは80℃以上、より好ましくは85℃以上、そして上限値は好ましくは180℃以下、より好ましくは160℃以下である。こうすることで、不良発生の要因が内在している電子部品70の劣化を加速でき、電子部品70の初期不良を早期に発生させ、その不良品を除去することができる。これにより、信頼性に優れた電子部品70を歩留りよく得ることができる。
例えば、構造体100を恒温槽やオーブンに入れるか、または試料台90に設けられたヒーターで加熱することによって、上記の温度環境下とすることができる。
【0073】
(工程(D))
本実施形態に係る電子装置の製造方法において、工程(B)あるいは工程(C)の後に、粘着性フィルム50から、ダイシングした電子部品70をピックアップする工程(D)をさらにおこなってもよい。
このピックアップにより、粘着性フィルム50から電子部品70を剥離することができる。電子部品70のピックアップは、公知の方法で行うことができる。
【0074】
(工程(E))
本実施形態に係る電子装置の製造方法において、工程(D)の前に粘着性フィルム50に対して放射線を照射し、粘着性樹脂層30を架橋させることで、電子部品70に対する粘着性樹脂層30の粘着力を低下させる工程(E)をさらにおこなってもよい。
工程(E)をおこなうことで、粘着性樹脂層30から電子部品70を容易にピックアップすることができる。また、粘着性樹脂層30を構成する粘着成分により電子部品70の表面が汚染されることを抑制することができる。
放射線は、例えば、粘着性フィルム50の粘着性樹脂層30側の面とは反対側の面から照射される。
【0075】
放射線として紫外線を用いる場合、粘着性フィルム50に対して照射する紫外線の線量は、100mJ/cm以上が好ましく、350mJ/cm以上がより好ましい。
紫外線の線量が上記下限値以上であると、粘着性樹脂層30の粘着力を十分に低下させることができ、その結果、電子部品70表面に糊残りが発生することをより抑制することができる。
また、粘着性フィルム50に対して照射する紫外線の線量の上限は特に限定されないが、生産性の観点から、例えば、1500mJ/cm以下であり、好ましくは1200mJ/cm以下である。
紫外線照射は、例えば、高圧水銀ランプやLEDを用いておこなうことができる。
【0076】
(工程(F))
本実施形態に係る電子装置の製造方法において、上記工程(A)および上記工程(B)の少なくとも一方の後に、粘着性フィルムに貼り付けられた状態で炉内温度が160℃以上260℃以下の条件で半田リフローに通すことで、半田材料を溶融させて整形および表面に密着させる工程(F)を行うことが好ましい。
工程(F)をおこなうことで、電子部品70の端子75の整形および密着性が向上し、工程(C)におけるプローブ端子95による端子75への接触の際に生じる端子75の変形や破損および脱落を抑制することができる。
この際、工程(F)の前に上記工程(E)を行ってもよいし、工程(F)の後に上記工程(E)を行ってもよい。
【0077】
工程(F)は前述のように、上記工程(A)および上記工程(B)の少なくとも一方の後に行うことが好ましい。すなわち、本実施形態に係る電子部品の製造方法において、ダイシング前の上記構造体100の状態で工程(F)を行ってもよいし、構造体100をダイシングし、上記粘着性フィルム50に貼り付けられた状態の上記電子部品70の状態で工程(F)を行ってもよいし、構造体100のダイシング前後の両方で工程(F)を行ってもよい。
また、工程(F)は、上記工程(A)および上記工程(B)の少なくとも一方の後に行うことに加えて、さらに工程(C)の後に行ってもよい。このようにすることにより、以後の電子装置の製造工程における端子75の変形や破損および脱落をより抑制することができ、信頼性に優れた電子部品70を効率的に得ることができる。
【0078】
工程(F)では、炉内温度が、好ましくは160℃以上260℃以下、より好ましくは165℃以上255℃以下、さらに好ましくは170℃以上250℃以下で電子装置を半田リフローに通すことができる。
炉内温度を上記範囲内とすることにより、半田材料の溶融・成形および電子装置表面への密着を効率的に行えるようになり、信頼性に優れた電子部品70を効率的に得ることができる。
半田リフローの処理方法は特に限定されないが、例えば、公知のリフロー炉を用いておこなうことができる。
【0079】
(その他の工程)
本実施形態に係る電子装置の製造方法は、上記以外のその他の工程を有していてもよい。その他の工程としては、電子装置の製造方法において公知の工程を用いることができる。
【0080】
例えば、工程(D)を行った後、得られた電子部品70を回路基板に実装する工程や、ワイヤボンディング工程、封止工程等の電子装置の製造工程において一般的におこなわれている任意の工程をさらに行ってもよい。
【0081】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0082】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例0083】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
【0084】
粘着性フィルムの作製に用いた材料の詳細は以下の通りである。
【0085】
<中間層用樹脂>
エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA、三井ダウケミカル社製、製品名:EV450、酢酸ビニル含有率:19質量%)を用いた。
EVAに対して、窒素雰囲気において以下の条件で電子線を照射することにより架橋をし、EVA1~EVA3を作製した。ゲル分率は電子線照射条件により調整した。
・EVA1条件:加速電圧145kV、照射線量200kGyに対してゲル分率82%
・EVA2条件:加速電圧135kV、照射線量220kGyに対してゲル分率71%
・EVA3条件:加速電圧105kV、照射線量200kGyに対してゲル分率63%
・電子線架橋をしない場合は、ゲル分率0%であった。
【0086】
各中間層用樹脂のゲル分率は、以下の方法で測定した。
各中間層用樹脂40gを、クロロホルム10mLに50℃で60分撹拌しながら溶解させた。溶解後、溶け残りの中間層用樹脂をクロロホルム中から回収し、溶け残り重量を計測した。その後、溶け残り重量および溶解前重量より、以下の式からゲル分率を算出した。
ゲル分率[%]=(溶け残り重量[g])/(溶解前重量[g])×100
【0087】
<粘着剤A>
アクリル酸ブチル30重量部、アクリル酸5重量部、アクリル酸メチル70重量部を、酢酸エチル中で共重合させて反応させてアクリル酸エステル共重合体溶液を得た。
この溶液に、共重合体(固形分)100重量部に対して光開始剤(オムニラッド651:IGM Resins B.V.)7重量部、イソシアネート系架橋剤(三井化学(株)製、商品名:オレスターP49-75S)0.3重量部、1分子内に光重合性炭素-炭素二重結合を2個以上有する低分子量化合物としてペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学製、商品名:NKエステルA-TMM-3)50重量部を添加し、UV硬化型粘着剤Aを得た。
【0088】
<粘着剤B>
アクリル酸エチル50重量部、アクリル酸-2-エチルヘキシル30重量部、アクリル酸メチル20重量部を、酢酸エチル中で共重合させて反応させた。反応終了後、この溶液を冷却し、これにキシレン25重量部、アクリル酸2.5重量部、およびテトラデシルベンジルアンモニウムクロライド1.5重量部を加え、空気を吹き込みながら80℃で10時間反応させ、光重合性炭素-炭素二重結合が導入されたアクリル酸エステル共重合体溶液を得た。
この溶液に、共重合体(固形分)100重量部に対して光開始剤としてベンゾイン7重量部、イソシアネート系架橋剤(三井化学(株)製、商品名:オレスターP49-75S)2重量部、1分子内に光重合性炭素-炭素二重結合を2個以上有する低分子量化合物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成(株)製、商品名:アロニックスM-400)15重量部を添加し、UV硬化型粘着剤Bを得た。
【0089】
[実施例1]
基材層であるポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム(厚さ25μm)上に中間層としてEVAを120μmで押し出し成型した。次いで、中間層表面にEVA1条件の電子線を照射し、EVA1を中間層とした。さらにその表面に粘着剤Aを塗布し、乾燥させて、厚さ30μmの粘着性樹脂層を形成した。これにより、基材層、中間層および粘着性樹脂層をこの順番に備える粘着性フィルムを得た。
【0090】
[実施例2]
基材層であるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ50μm)上に中間層としてEVAを70μmで押し出し成型した。次いで、中間層表面にEVA2条件の電子線を照射し、EVA2を中間層とした。さらにその表面に粘着剤Aを塗布し、乾燥させて、厚さ30μmの粘着性樹脂層を形成した。これにより、基材層、中間層および粘着性樹脂層をこの順番に備える粘着性フィルムを得た。
【0091】
[実施例3]
EVA2条件の電子線の代わりにEVA3条件を用いて、EVA3を中間層とした以外は実施例2と同様にして粘着性フィルムを得た。
【0092】
[比較例1]
中間層としてEVAを120μmに成膜した後、中間層表面に電子線を照射せずに、中間層表面に粘着剤Bを塗布した。その後、乾燥させて厚さ10μmの粘着性樹脂層を形成した。これにより、中間層および粘着性樹脂層をこの順番に備える粘着性フィルムを得た。
比較例1の粘着性フィルムの150℃における圧縮ひずみ率Sは62.9%だった。
【0093】
(圧縮ひずみ率S)
実施例および比較例で得られた粘着性フィルムの圧縮ひずみ率Sは、以下の方法で測定した。
実施例および比較例で得られた粘着性フィルムを10mm×10mmの大きさに切り出したのち、元の厚みが5mmになるまで積層させ、測定サンプルを得た。
得られた測定サンプルを150℃の環境下において、AG-100kNX(島津製作所社製)を用いて、試験速度5mm/分で圧縮した。その後、10kg/cmの圧力が掛かった際のひずみ値[mm](=(元の厚み[mm])-(圧縮中の厚み[mm]))を計測し、圧縮ひずみ率S[%]を以下の式から算出した。結果を表1に示す。
圧縮ひずみ率S[%]=(ひずみ値[mm])/(元の厚み[mm])×100
【0094】
<評価>
得られた粘着性フィルムについて以下の評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0095】
(1)チップ位置精度
各実施例および比較例の粘着フィルムの粘着面上にシリコンウエハを貼り合わせて、シリコンウエハとシリコンウエハに貼られた粘着フィルムを合わせて10mm×10mmにダイシングした。この際のチップ間の距離(加熱前)を顕微鏡で観察し測定した。
その後、150℃に加熱した真空チャックテーブルに、シリコンウエハに貼られた粘着フィルムの基材層側を吸着固定し、10分後に取り外した。粘着フィルムを室温に冷却した後に、チップ間の距離(加熱後)を顕微鏡で観察し測定した。チップ位置のずれを(加熱前)と(加熱後)の差により算出した。
次いで、下記の基準でチップ位置精度を評価した。
〇(良い):チップ位置のずれが10μm未満
×(悪い):チップ位置のずれが10μm以上
【0096】
【表1】
【0097】
実施例1~3の粘着性フィルムはチップの位置精度が良好であった。
【符号の説明】
【0098】
10 基材層
20 中間層
30 粘着性樹脂層
50 粘着性フィルム
50A 粘着性フィルム
60 ダイシングブレード
70 電子部品
70A 電子部品
75 端子
90 試料台
92 プローブカード
95 プローブ端子
100 構造体
図1
図2
図3
図4
図5