(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108396
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】車両用灯具、及び発光装置
(51)【国際特許分類】
F21S 41/125 20180101AFI20230728BHJP
F21S 41/148 20180101ALI20230728BHJP
F21S 41/176 20180101ALI20230728BHJP
F21S 41/32 20180101ALI20230728BHJP
F21S 41/24 20180101ALI20230728BHJP
F21S 41/40 20180101ALI20230728BHJP
F21S 41/663 20180101ALI20230728BHJP
F21S 41/675 20180101ALI20230728BHJP
F21V 7/00 20060101ALI20230728BHJP
F21W 102/135 20180101ALN20230728BHJP
F21W 103/00 20180101ALN20230728BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20230728BHJP
【FI】
F21S41/125
F21S41/148
F21S41/176
F21S41/32
F21S41/24
F21S41/40
F21S41/663
F21S41/675
F21V7/00 590
F21W102:135
F21W103:00
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009498
(22)【出願日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】比企 聖
(57)【要約】
【課題】半導体発光素子と波長変換部材とを含むパッケージ化された光源の発光色をシームレスに変更することができる車両用灯具等を提供する。
【解決手段】車両用灯具1であって、第1の光を発光する少なくとも1つの半導体発光素子と、前記第1の光のうち他の一部の光により励起され、前記第1の光と異なる波長の第2の光を発光する波長変換部材と、を含むパッケージ化された光源であって、前記波長変換部材を透過する前記第1の光と前記波長変換部材が発光する前記第2の光とが混合された混合光を発光する第1光源10と、前記第1光源が発光する前記混合光を制御して車両用灯具用の配光パターンを形成する第1光学系60、61と、前記波長変換部材を照射し当該波長変換部材を励起する第3の光を発光する少なくとも1つの第2光源20と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光を発光する少なくとも1つの半導体発光素子と、前記半導体発光素子を覆った状態で設けられ、前記第1の光のうち一部の光が透過すると共に、前記第1の光のうち他の一部の光により励起され、前記第1の光と異なる波長の第2の光を発光する波長変換部材と、を含むパッケージ化された光源であって、前記波長変換部材を透過する前記第1の光と前記波長変換部材が発光する前記第2の光とが混合された混合光を発光する第1光源と、
前記第1光源が発光する前記混合光を制御して車両用灯具用の配光パターンを形成する第1光学系と、
前記波長変換部材を照射し当該波長変換部材を励起する第3の光を発光する少なくとも1つの第2光源と、を備える車両用灯具。
【請求項2】
前記第3の光が前記波長変換部材の少なくとも一部を照射するように前記第3の光を制御する第2光学系をさらに備える請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記第2光学系は、ガスクロミックミラー、エレクトロクロミックミラー又はDMD(Digital Micromirror Device)を含む請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記第2光源を駆動する制御手段をさらに備える請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記第1の光は、青色域の光であり、
前記第2の光は、黄色域の光である請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記波長変換部材は、YAG系蛍光体であり、
前記第3の光は、紫外域又は近紫外域の波長の光を含む請求項1から5のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記第1光源は、前記半導体発光素子の側面及び前記波長変換部材の側面を覆った状態で設けられた白樹脂と、前記第3の光が前記白樹脂に照射されないように当該白樹脂の表面を覆う遮光部材と、をさらに含む請求項1から6のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項8】
前記第1光源は、前記半導体発光素子の出光面と前記波長変換部材の入光面とを接着する接着層をさらに含み、
前記接着層は、樹脂媒質と当該樹脂媒質に分散された樹脂粒子とを含み、
前記半導体発光素子の出光面と前記波長変換部材の入光面とは、前記樹脂粒子が前記波長変換部材の前記入光面の凹部に収まりつつ圧縮変形された状態で前記接着層を介して密着している請求項1から7のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項9】
第1の光を発光する少なくとも1つの半導体発光素子と、前記半導体発光素子を覆った状態で設けられ、前記第1の光のうち一部の光が透過すると共に、前記第1の光のうち他の一部の光により励起され、前記第1の光と異なる波長の第2の光を発光する波長変換部材と、を含み、前記波長変換部材を透過する前記第1の光と前記波長変換部材が発光する前記第2の光とが混合された混合光を発光するパッケージ化された第1光源と、
前記波長変換部材の少なくとも一部を照射し当該波長変換部材を励起する第3の光を発光する少なくとも1つの第2光源と、を備える発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具、及び発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の半導体発光素子(LD)が発光し、複数の半導体発光素子に対応して設けられた複数の光偏向器により二次元的に走査される光を、枠体に固定された波長変換部材(板状又は層状の蛍光体)に照射することにより、当該波長変換部材を発光させる車両用灯具が記載されている。特許文献1に記載の車両用灯具においては、各々の半導体発光素子及び各々の光偏向器を制御することにより、波長変換部材の表面の全域又は一部領域の発光色をシームレスに変更することができる。
【0003】
これに対して、本発明者は、半導体発光素子(例えば、LEDチップ)と波長変換部材(例えば、蛍光体)とを含むパッケージ化された光源(例えば、LEDパッケージ)の発光色をシームレスに変更することを検討した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1においては、半導体発光素子(例えば、LEDチップ)と波長変換部材(例えば、蛍光体)とを含むパッケージ化された光源(例えば、LEDパッケージ)の発光色をシームレスに変更することについては一切検討されていない。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、半導体発光素子(例えば、LEDチップ)と波長変換部材(例えば、蛍光体)とを含むパッケージ化された光源(例えば、LEDパッケージ)の発光色をシームレスに変更することができる車両用灯具、及び発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる車両用灯具は、第1の光を発光する少なくとも1つの半導体発光素子と、前記半導体発光素子を覆った状態で設けられ、前記第1の光のうち一部の光が透過すると共に、前記第1の光のうち他の一部の光により励起され、前記第1の光と異なる波長の第2の光を発光する波長変換部材と、を含むパッケージ化された光源であって、前記波長変換部材を透過する前記第1の光と前記波長変換部材が発光する前記第2の光とが混合された混合光を発光する第1光源と、前記第1光源が発光する前記混合光を制御して車両用灯具用の配光パターンを形成する第1光学系と、前記波長変換部材を照射し当該波長変換部材を励起する第3の光を発光する少なくとも1つの第2光源と、を備える。
【0008】
このような構成により、半導体発光素子(例えば、LEDチップ)と波長変換部材(例えば、蛍光体)とを含むパッケージ化された光源(例えば、LEDパッケージ)の発光色をシームレスに変更することができる。
【0009】
これは、波長変換部材を照射し当該波長変換部材を励起する第3の光を発光する少なくとも1つの第2光源を備えることによるものである。
【0010】
上記車両用灯具において、前記第3の光が前記波長変換部材の少なくとも一部を照射するように前記第3の光を制御する第2光学系をさらに備えていてもよい。
【0011】
また、上記車両用灯具において、前記第2光学系は、ガスクロミックミラー、エレクトロクロミックミラー又はDMD(Digital Micromirror Device)を含んでいてもよい。
【0012】
また、上記車両用灯具において、前記第2光源を駆動する制御手段をさらに備えていてもよい。
【0013】
また、上記車両用灯具において、前記第1の光は、青色域の光であり、前記第2の光は、黄色域の光であってもよい。
【0014】
また、上記車両用灯具において、前記波長変換部材は、YAG系蛍光体であり、前記第3の光は、紫外域又は近紫外域の波長の光を含んでいてもよい。
【0015】
また、上記車両用灯具において、前記第1光源は、前記半導体発光素子の側面及び前記波長変換部材の側面を覆った状態で設けられた白樹脂と、前記第3の光が前記白樹脂に照射されないように当該白樹脂の表面を覆う遮光部材と、をさらに含んでいてもよい。
【0016】
また、上記車両用灯具において、前記第1光源は、前記半導体発光素子の出光面と前記波長変換部材の入光面とを接着する接着層をさらに含み、前記接着層は、樹脂媒質と当該樹脂媒質に分散された樹脂粒子とを含み、前記半導体発光素子の出光面と前記波長変換部材の入光面とは、前記樹脂粒子が前記波長変換部材の前記入光面の凹部に収まりつつ圧縮変形された状態で前記接着層を介して密着していてもよい。
【0017】
本発明にかかる発光装置は、第1の光を発光する少なくとも1つの半導体発光素子と、前記半導体発光素子を覆った状態で設けられ、前記第1の光のうち一部の光が透過すると共に、前記第1の光のうち他の一部の光により励起され、前記第1の光と異なる波長の第2の光を発光する波長変換部材と、を含み、前記波長変換部材を透過する前記第1の光と前記波長変換部材が発光する前記第2の光とが混合された混合光を発光するパッケージ化された第1光源と、前記波長変換部材の少なくとも一部を照射し当該波長変換部材を励起する第3の光を発光する少なくとも1つの第2光源と、を備える。
【0018】
このような構成により、半導体発光素子(例えば、LEDチップ)と波長変換部材(例えば、蛍光体)とを含むパッケージ化された光源(例えば、LEDパッケージ)の発光色をシームレスに変更することができる。
【0019】
これは、波長変換部材を照射し当該波長変換部材を励起する第3の光を発光する少なくとも1つの第2光源を備えることによるものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、半導体発光素子(例えば、LEDチップ)と波長変換部材(例えば、蛍光体)とを含むパッケージ化された光源(例えば、LEDパッケージ)の発光色をシームレスに変更することができる車両用灯具、及び発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図3】(a)車両用灯具用の配光パターンを形成する光学系の一例、(b)車両用灯具用の配光パターンを形成する光学系の他の一例である。
【
図4】発光装置1を車両用灯具(車両用灯具ユニット)の光源として用いた場合に形成される車両用灯具用の配光パターンP1の一例である。
【
図7】(a)シェード63の一例、(b)シェード63(貫通穴63a)を通過した第3の光が照射する波長変換部材13の表面の一部領域(ハッチング領域HT1参照)を表す図、(c)発光装置1を車両用灯具(車両用灯具ユニット)の光源として用いた場合に形成される車両用灯具用の配光パターンP2の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<実施形態1>
以下、実施形態1として発光装置1について添付図面を参照しながら説明する。各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
【0023】
【0024】
図1に示すように、実施形態1の発光装置1は、第1光源10、第2光源20、第2光源20の前方に配置された導光レンズ30、第1光源10及び第2光源20が実装された基板40、第1光源10及び第2光源20を駆動する制御手段50(駆動手段)を備えている。
【0025】
まず、第1光源10の構成例について説明する。
【0026】
【0027】
図2に示すように、第1光源10は、基板11、基板11に実装され第1の光(例えば、青色域の波長の光)を発光する半導体発光素子12、半導体発光素子12(発光面)を覆った状態で設けられ、第1の光(例えば、青色域の波長の光)のうち一部の光が透過すると共に、第1の光のうち他の一部の光により励起され、第1の光と異なる波長の第2の光(例えば、黄色域の波長の光)を発光する波長変換部材13、波長変換部材13を覆った状態で設けられた光透過部材14、基板11に設けられた枠体15、白樹脂16を含むパッケージ化された光源(例えば、LEDパッケージ)である。半導体発光素子12、波長変換部材13及び光透過部材14は、この順に積層された積層構造物17を構成している。
【0028】
第1光源10は、半導体発光素子12が発光し波長変換部材13を透過する第1の光(例えば、青色域の波長の光)と波長変換部材13が発光する第2の光(例えば、黄色域の波長の光)とが混合された混合光(例えば、疑似白色光)を発光する。この混合光は、光透過部材14を透過することにより、第1光源10外部に取り出される。その際、半導体発光素子12、波長変換部材13及び光透過部材14それぞれの側面が白樹脂16により覆われているため、半導体発光素子12、波長変換部材13及び光透過部材14それぞれの側面から出射する光は、白樹脂16により反射されて積層構造物17内に戻される。これにより、光透過部材14を透過することにより第1光源10外部に取り出される光、すなわち、第1光源10が発光する光が増加する。その結果、第1光源10の正面輝度が増加する。
【0029】
また、第1光源10は、白樹脂16の上面S1(表面)を覆う遮光部材18を含む。遮光部材18は、例えば、白樹脂16の上面S1に対してレーザー光を照射し当該白樹脂16の上面S1を黒色に変色させることにより形成される。また、遮光部材18は、白樹脂16の上面S1に当該上面S1を覆った状態で設けられる遮光プレートであってもよい。これにより、後述のように第2光源20が発光し波長変換部材13を照射する第3の光Ray20が、波長変換部材13からはみ出て白樹脂16の上面S1を照射したとしても、当該第3の光Ray20が白樹脂16で反射されるのを防止することができる。これにより、発光装置1を車両用灯具(車両用灯具ユニット)の光源として用いた場合、グレアの発生を低減することができる。また、第2光源20が発光した第3の光Ray20が白樹脂16を直接照射することが防止されるため、第3の光Ray20が白樹脂16を直接照射することに起因する白樹脂16の劣化を防止することができる。
【0030】
半導体発光素子12は、例えば、第1の光(例えば、青色域の波長の光)を発光する半導体発光素子(例えば、LEDチップ)で、図示しないが、n型半導体層、発光層、p型半導体層、n側電極パッド、p側電極パッド等を含む。半導体発光素子12の外形は、例えば、正方形(例えば、300μm角程度)である。なお、半導体発光素子12の外形は、正方形以外の矩形、その他の形状であってもよい。なお、半導体発光素子12は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0031】
波長変換部材13は、1又は複数の半導体発光素子12(発光面)を覆った状態で設けられ、半導体発光素子12が発光する第1の光(例えば、青色域の波長の光)のうち一部の光が透過すると共に、第1の光のうち他の一部の光により励起され、第1の光と異なる波長の第2の光(例えば、黄色域の波長の光)を発光する波長変換部材である。波長変換部材13としては、例えば、透明シリコーン樹脂や低融点ガラス等に蛍光体を含有させたものや蛍光体を焼結させた焼結体を用いることができる。蛍光体としては、例えば、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット蛍光体(YAG:Ce)を用いることができる。波長変換部材13の外形は、例えば、半導体発光素子12の外形と同様である。
【0032】
光透過部材14は、波長変換部材13の上面に設けられている。第1光源10が発光する光、すなわち、波長変換部材13を透過する第1の光(例えば、青色域の波長の光)と波長変換部材13が発光する第2の光(例えば、黄色域の波長の光)とが混合された混合光(例えば、疑似白色光)は、光透過部材14を透過することにより、第1光源10外部に取り出される。光透過部材14としては、例えば、ガラスプレート、サファイアプレート、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)を用いることができる。光透過部材14は、例えば、半導体発光素子12上に適量ポッティングされた、接着材となる波長変換部材13(例えば、透明シリコーン樹脂+蛍光体)の上に載置されることにより、当該波長変換部材13を挟んで半導体発光素子12に接着されている。光透過部材14の外形は、例えば、波長変換部材13の外形と同様である。
【0033】
枠体15は、積層構造物17との間にスペースを保った状態で基板11に設けられている。
【0034】
白樹脂16は、基板11、枠体15及び積層構造物17により取り囲まれたスペースに、上面S1が露出し、かつ、半導体発光素子12、波長変換部材13及び光透過部材14それぞれの側面を覆った状態(密着して覆った状態)で充填されている。白樹脂16は、半導体発光素子12、波長変換部材13及び光透過部材14それぞれの側面から出射する光を当該白樹脂16により反射し積層構造物17内に戻すために設けられる。白樹脂16としては、例えば、可視光よりバンドギャップが広い酸化チタン粒子が分散された透明シリコーン樹脂、例えば、特開2019-220569号公報、特許第5224173号公報に記載のものを用いることができる。
【0035】
次に、第2光源20の構成例について説明する。
【0036】
第2光源20は、第1光源10の波長変換部材13を照射し当該波長変換部材13を励起する第3の光Ray20(例えば、紫外域又は近紫外域の波長の光)を発光する半導体発光素子(例えば、LEDチップ)である。なお、第3の光Ray20は、波長変換部材13(蛍光体)の励起に最適な波長の光、例えば、紫外域又は近紫外域の波長の光であることが望ましいが、最適な波長の光以外の光(例えば、可視光域の波長の光)を含んでいてもよい。
【0037】
導光レンズ30は、第2光源20が発光する第3の光Ray20が第1光源10の波長変換部材13(例えば、表面全域)を照射するように第3の光Ray20を制御する光学系(本発明の第2光学系の一例)である。
【0038】
図1に示すように、導光レンズ30は、入光面31、全反射面32及び出光面33を含むレンズ体である。
【0039】
入光面31は、第2光源20の光軸AX20に対して回転対称で、第2光源20に向かって凸のレンズ面である。入光面31の焦点F31は、第2光源20近傍に配置されている。そのため、入光面31から入光する第2光源20が発光した第3の光Ray20は、第2光源20の光軸AX20に対して平行な光に変換される(コリメートされる)。
【0040】
全反射面32は、入光面31から入光し当該全反射面32に入射する第3の光Ray20を出光面33に向けて全反射する平面形状の面である。
【0041】
出光面33は、全反射面32で全反射された第3の光Ray20が出光する面である。出光面33から出光した第3の光Ray20は、第1光源10の光軸AX10に対して所定角度θ傾斜した方向に進行し光透過部材14を透過して波長変換部材13の表面の全域を照射する。出光面33の形状及びサイズは、波長変換部材13の表面の全域を照射するように調整されている。なお、出光面33の形状及びサイズは、波長変換部材13の表面の一部領域を照射するように調整されていてもよい。
【0042】
制御手段50は、第1光源10及び第2光源20を駆動する手段で、第1光源10及び第2光源20に電気的に接続されている。制御手段50としては、例えば、第1光源10及び第2光源20に駆動電流(可変)を印加する公知の駆動回路(DC駆動方式)、PWM信号に基づいて第1光源10及び第2光源20を点消灯制御する公知の駆動回路(パルス駆動方式)を用いることができる。
【0043】
上記構成の発光装置1においては、第1光源10が発光した光の比率が、例えば、第1の光(例えば、青色域の波長の光):第2の光(例えば、黄色域の波長の光)=7:3の場合、第2光源20を点灯すると、当該第2光源20が発光する第3の光Ray20が波長変換部材13の表面の全域に照射され波長変換部材13(蛍光体)が活性化されるため、波長変換部材13の発光量が変化する。これにより、第1光源10が発光する光の比率が、例えば、第1の光(例えば、青色域の波長の光):第2の光(例えば、黄色域の波長の光)=5:5のように変化する。この第1光源10が発光する光の比率は、制御手段50により波長変換部材13の表面の全域に照射される第3の光の明るさ(強度)を調整することにより、シームレスに変化させることができる。これにより、波長変換部材13の発光色(色味)及び第1光源10の発光色(色味)をシームレスに変化させることができる。
【0044】
上記構成の発光装置1は、例えば、車両用灯具(車両用灯具ユニット)の光源として用いることができる。車両用灯具(車両用灯具ユニット)は、発光装置1(第1光源10)が発光する光(混合光)を制御して車両用灯具用の配光パターンを形成する光学系(本発明の第1光学系の一例)を備えている。
【0045】
図3(a)は車両用灯具用の配光パターンを形成する光学系の一例、
図3(b)は車両用灯具用の配光パターンを形成する光学系の他の一例である。
【0046】
図3(a)に示すように、車両用灯具用の配光パターンを形成する光学系は、発光装置1が発光する光(混合光)を反射する反射面60を含むリフレクタ型の光学系であってもよい。また、
図3(b)に示すように、車両用灯具用の配光パターンを形成する光学系は、発光装置1が発光する光(混合光)を投影する投影レンズ61を含むダイレクトプロジェクション型(いわゆる直射型)の光学系であってもよい。これに限らず、図示しないが、車両用灯具用の配光パターンを形成する光学系は、プロジェクタ型の光学系、導光体(例えば、導光棒、導光板)を用いた光学系、その他の光学系であってもよい。
【0047】
図4は、発光装置1を車両用灯具(車両用灯具ユニット)の光源として用いた場合に形成される車両用灯具用の配光パターンP1の一例である。
【0048】
発光装置1を車両用灯具(車両用灯具ユニット)の光源として用いた場合、
図4に示すように、色(色味)をシームレスに変化させることができる車両用灯具用の配光パターンP1を形成することができる。なお、車両用灯具用の配光パターンP1は、車両用前照灯用の配光パターン(ロービーム用配光パターン、ハイビーム用配光パターン)であってもよいし、車両用信号灯具用の配光パターンであってもよい。
【0049】
以上説明したように、実施形態1によれば、半導体発光素子12(例えば、LEDチップ)と波長変換部材13(例えば、蛍光体)とを含むパッケージ化された第1光源10(例えば、LEDパッケージ)の発光色をシームレスに変更することができる。
【0050】
これは、波長変換部材13を照射し当該波長変換部材13を励起する第3の光を発光する少なくとも1つの第2光源20を備えることによるものである。
【0051】
また、実施形態1によれば、発光装置1を車両用灯具(車両用灯具ユニット)の光源として用いた場合、色(色味)をシームレスに変化させることができる車両用灯具用の配光パターンP1を形成することができる。
【0052】
また、実施形態1によれば、第2光源20が発光する第3の光が波長変換部材13を照射することにより、波長変換部材13の発光色(色味)及び第1光源10の発光色(色味)をシームレスに変化させるため、配光ズレが発生することがないという利点もある。
【0053】
次に、第1光源10の変形例について説明する。
【0054】
【0055】
本変形例では、波長変換部材13として、粒子径の揃った蛍光体粒子及びバインダ粒子を焼結して板状にした多結晶の焼結体を用いている。
【0056】
図5に示すように、半導体発光素子12と波長変換部材13とは、接着層62を介して接着されている。接着層62は、未硬化の液状樹脂である樹脂媒質62aに、硬化済みの低弾性率の粒状樹脂である樹脂粒子62bを分散させた接着樹脂を硬化させた樹脂体である。樹脂粒子62bは、波長変換部材13の入光面13aの凹部13bと、半導体発光素子12の出光面12aと、で画定された多面体空間に、樹脂粒子62bが圧縮変形して嵌まっている。また、樹脂媒質62aは、それ以外の空間を樹脂媒質62aが満たしている。
【0057】
このように、樹脂粒子62bを波長変換部材13の複数の粒子面からなるドーム状の凹部13bによって圧縮変形することで、樹脂粒子62bの密度を高くでき、また屈折率を高くできる。これにより、波長変換部材13で発生した熱を半導体発光素子12へ放熱する放熱効率を向上できる。また、半導体発光素子12と波長変換部材13との屈折率差を小さくでき、光結合効率を向上できる。さらに、波長変換部材13の凹部13bをファセットとすることで、波長変換部材13と樹脂粒子62bとの接触面積を大きくすることができ、放熱効率又は/及び光結合効率を向上できる。
【0058】
<実施形態2>
次に、実施形態2の発光装置2について説明する。
【0059】
【0060】
図6に示すように、実施形態2の発光装置2は、実施形態1の発光装置1に対してシェード63を追加したものに相当する。それ以外、実施形態1と同様の構成である。以下、実施形態1と相違する点を中心に説明し、同様の構成については同一の符号を付し適宜説明を省略する。
【0061】
シェード63は、第1光源10と導光レンズ30(出光面33)との間に配置されている。
【0062】
【0063】
図7(a)に示すように、シェード63は、導光レンズ30(出光面33)から出光した第3の光Ray
20が通過する貫通穴63aが形成された板状部材である。
図7(a)中、貫通穴63aとして、L字形の貫通穴を形成した例を示しているが、これに限らず、他の様々な形状の貫通穴を形成してもよい。
【0064】
図7(b)は、シェード63(貫通穴63a)を通過した第3の光が照射する波長変換部材13の表面の一部領域(ハッチング領域HT1参照)を表す。
【0065】
図7(b)に示すように、シェード63(貫通穴63a)を通過した第3の光は、波長変換部材13の表面の一部領域(ハッチング領域HT1参照)を照射する。これにより、波長変換部材13の発光色(色味)を部分的に変化させることができる。
【0066】
上記構成の発光装置2は、例えば、車両用灯具(例えば、
図3(b)に示すダイレクトプロジェクション型(いわゆる直射型)の車両用灯具ユニット)の光源として用いることができる。
【0067】
図7(c)は、発光装置1を車両用灯具(車両用灯具ユニット)の光源として用いた場合に形成される車両用灯具用の配光パターンP2の一例である。
【0068】
図7(c)に示すように、発光装置2を車両用灯具(例えば、
図3(b)に示すダイレクトプロジェクション型(いわゆる直射型)の車両用灯具ユニット)の光源として用いた場合、色(色味)を部分的に変化させることができる車両用灯具用の配光パターンP2を形成することができる。
【0069】
以上説明したように、実施形態2によれば、半導体発光素子12(例えば、LEDチップ)と波長変換部材13(例えば、蛍光体)とを含むパッケージ化された第1光源10(例えば、LEDパッケージ)の発光色をシームレスに変更することができる。
【0070】
また、実施形態2によれば、発光装置2を車両用灯具(例えば、
図3(b)に示すダイレクトプロジェクション型(いわゆる直射型)の車両用灯具ユニット)の光源として用いた場合、色(色味)を部分的に変化させることができる車両用灯具用の配光パターンP2を形成することができる。
【0071】
<実施形態3>
次に、実施形態3の発光装置3について説明する。
【0072】
【0073】
図8に示すように、実施形態3の発光装置3は、実施形態1の発光装置1の導光レンズ30を、反射面64(本発明の第2光学系の他の一例)に置き換えたものに相当する。それ以外、実施形態1と同様の構成である。以下、実施形態1と相違する点を中心に説明し、同様の構成については同一の符号を付し適宜説明を省略する。
【0074】
反射面64は、例えば、基材に対してアルミ蒸着等を施すことにより形成される。反射面64の面形状は、当該反射面64で反射された第3の光Ray20が波長変換部材13の表面の全域を照射するように設計されている。なお、反射面64の面形状は、当該反射面64で反射された第3の光Ray20が波長変換部材13の表面の一部領域を照射するように設計されていてもよい。これにより、実施形態1と同様、波長変換部材13の発光色(色味)及び第1光源10の発光色(色味)をシームレスに変化させることができる。
【0075】
上記構成の発光装置3は、例えば、車両用灯具(車両用灯具ユニット)の光源として用いることができる。車両用灯具(車両用灯具ユニット)は、発光装置3(第1光源10)が発光する光(混合光)を制御して車両用灯具用の配光パターンを形成する光学系(本発明の第1光学系の一例)を備えている。
【0076】
図3(a)に示すのと同様に、車両用灯具用の配光パターンを形成する光学系は、発光装置3が発光する光(混合光)を反射する反射面60を含むリフレクタ型の光学系であってもよい。また、
図3(b)に示すのと同様に、車両用灯具用の配光パターンを形成する光学系は、発光装置3が発光する光(混合光)を投影する投影レンズ61を含むダイレクトプロジェクション型(いわゆる直射型)の光学系であってもよい。これに限らず、図示しないが、車両用灯具用の配光パターンを形成する光学系は、プロジェクタ型の光学系、導光体(例えば、導光棒、導光板)を用いた光学系、その他の光学系であってもよい。
【0077】
発光装置3を車両用灯具(車両用灯具ユニット)の光源として用いた場合、
図4に示すように、色(色味)をシームレスに変化させることができる車両用灯具用の配光パターンP1を形成することができる。なお、車両用灯具用の配光パターンP1は、車両用前照灯用の配光パターン(ロービーム用配光パターン、ハイビーム用配光パターン)であってもよいし、車両用信号灯具用の配光パターンであってもよい。
【0078】
以上説明したように、実施形態3によれば、半導体発光素子12(例えば、LEDチップ)と波長変換部材13(例えば、蛍光体)とを含むパッケージ化された第1光源10(例えば、LEDパッケージ)の発光色をシームレスに変更することができる。
【0079】
また、実施形態3によれば、発光装置3を車両用灯具(車両用灯具ユニット)の光源として用いた場合、色(色味)をシームレスに変化させることができる車両用灯具用の配光パターンP1を形成することができる。
【0080】
次に、変形例について説明する。
【0081】
上記実施形態3では、第2光学系として反射面64を用いた例について説明したが、これに限らない。
【0082】
例えば、反射面64に代えて、制御手段からの制御に従って部分的に反射率を調整可能な反射面、例えば、ガスクロミックミラー、エレクトロクロミックミラー、液晶シャッターを備えたミラー等を用いてもよい。また、反射面64に代えて、DMD(Digital Micromirror Device)を用いてもよい。
【0083】
本変形例によれば、本変形例の発光装置3を車両用灯具(例えば、
図3(b)に示すダイレクトプロジェクション型(いわゆる直射型)の車両用灯具ユニット)の光源として用いた場合、色(色味)を部分的に変化させることができる車両用灯具用の配光パターンP2を形成することができる。
【0084】
また、本変形例によれば、ガスクロミックミラー、エレクトロクロミックミラー、液晶シャッターを備えたミラー、DMD(複数の微少ミラー)で反射される第3の光により、波長変換部材13の表面の任意の領域を照射することができる。これは、制御手段(図示せず)が、ガスクロミックミラー、エレクトロクロミックミラー、液晶シャッターを備えたミラー、DMD(複数の微少ミラー)を制御することにより実現される。これにより、任意の領域の色(色味)を部分的に変化させることができる車両用灯具用の配光パターンを形成することができる。
【0085】
<実施形態4>
次に、実施形態4の発光装置4について説明する。
【0086】
【0087】
図9に示すように、実施形態4の発光装置4は、実施形態1の発光装置1の導光レンズ30の全反射面32に相当する箇所に、ガスクロミックミラー65又はエレクトロクロミックミラー66を設けたものに相当する。それ以外、実施形態1と同様の構成である。以下、実施形態1と相違する点を中心に説明し、同様の構成については同一の符号を付し適宜説明を省略する。
【0088】
ガスクロミックミラー65又はエレクトロクロミックミラー66は制御手段(図示せず)からの制御に従って部分的に反射率を調整可能な反射面で、導光レンズ30の全反射面32に相当する箇所に設けられている。全反射面32の一部に光吸収部材が設けられてもよい。
【0089】
上記構成の発光装置4は、例えば、車両用灯具(例えば、
図3(b)に示すダイレクトプロジェクション型(いわゆる直射型)の車両用灯具ユニット)の光源として用いることができる。
【0090】
発光装置2を車両用灯具(例えば、
図3(b)に示すダイレクトプロジェクション型(いわゆる直射型)の車両用灯具ユニット)の光源として用いた場合、
図7(c)に示すように、色(色味)を部分的に変化させることができる車両用灯具用の配光パターンP2を形成することができる。
【0091】
以上説明したように、実施形態4によれば、半導体発光素子12(例えば、LEDチップ)と波長変換部材13(例えば、蛍光体)とを含むパッケージ化された第1光源10(例えば、LEDパッケージ)の発光色をシームレスに変更することができる。
【0092】
また、実施形態4によれば、発光装置2を車両用灯具(例えば、
図3(b)に示すダイレクトプロジェクション型(いわゆる直射型)の車両用灯具ユニット)の光源として用いた場合、色(色味)を部分的に変化させることができる車両用灯具用の配光パターンP2を形成することができる。
【0093】
また、実施形態4によれば、ガスクロミックミラー、エレクトロクロミックミラーで反射される第3の光により、波長変換部材13の表面の任意の領域を照射することができる。これは、制御手段(図示せず)が、ガスクロミックミラー、エレクトロクロミックミラーを制御することにより実現される。これにより、任意の領域の色(色味)を部分的に変化させることができる車両用灯具用の配光パターンを形成することができる。
【0094】
次に、上記各実施形態の変形例について説明する。
【0095】
【0096】
上記実施形態1では、第2光源20と導光レンズ30の組み合わせを1組用いる例について説明したが、これに限らない。例えば、
図10に示すように、第2光源20と導光レンズ30の組み合わせを複数組用いてもよい。その際、各組ごとに、波長変換部材13の表面の異なる領域を照射するようにしてもよい。実施形態2、4についても同様である。
【0097】
また、上記各実施形態では、発光装置を車両用灯具に適用した例について説明したが、これに限らない。例えば、発光装置を、自動車等の車両の室内灯、屋外照明又は屋内照明、プロジェクターその他の照明装置に適用してもよい。
【0098】
上記各実施形態で示した各数値は全て例示であり、これと異なる適宜の数値を用いることができるのは無論である。
【0099】
上記各実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。上記各実施形態の記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0100】
1~4…発光装置
10…第1光源
11…基板
12…半導体発光素子
12a…出光面
13…波長変換部材
13a…入光面
13b…凹部
14…光透過部材
15…枠体
16…白樹脂
17…積層構造物
18…遮光部材
20…第2光源
30…導光レンズ
31…入光面
32…全反射面
33…出光面
40…基板
50…制御手段
60…反射面
61…投影レンズ
62…接着層
62a…樹脂媒質
62b…樹脂粒子
63…シェード
63a…貫通穴
64…反射面
65…ガスクロミックミラー
66…エレクトロクロミックミラー
AX10、AX20…光軸
F31…焦点
HT1…ハッチング領域
P1、P2…配光パターン
Ray20…第3の光
S1…上面
θ…所定角度