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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108400
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】ローラ及びローラ製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 13/00 20060101AFI20230728BHJP
   B65G 39/00 20060101ALN20230728BHJP
【FI】
F16C13/00 Z
B65G39/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009504
(22)【出願日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】592026819
【氏名又は名称】伊東電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】内貴 英男
(72)【発明者】
【氏名】花尾 隆志
【テーマコード(参考)】
3F033
3J103
【Fターム(参考)】
3F033GA06
3F033GB01
3F033GB08
3F033GC01
3F033GE04
3J103AA02
3J103AA12
3J103AA41
3J103AA75
3J103AA90
3J103CA05
3J103CA17
3J103CA25
3J103CA36
3J103CA62
3J103CA78
3J103DA05
3J103EA08
3J103FA17
3J103GA02
3J103GA37
3J103HA06
3J103HA08
(57)【要約】
【課題】新たな構造のローラを提供するものであり、接着剤や締結要素を使用せずにホルダー部材を筒状部材に固定することができるローラを提供することを課題とする。
【解決手段】少なくとも一端側が開口した筒状部材2と、ホルダー部材10、11とを有し、前記筒状部材2の端部に前記ホルダー部材10、11が装着されたローラにおいて、前記ホルダー部材10、11には、前記筒状部材2内に挿入される挿入部50と、前記筒状部材2から露出する露出部51があり、前記挿入部50の周面に突起があり、前記挿入部50と前記露出部51の境界部に凹部60があり、前記筒状部材2の開口端には折り返し部65があり、前記折り返し部65の一部又は全部が前記凹部60と係合していることを特徴とするローラ。
【選択図】 図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一端に開口部がある筒状部材と、ホルダー部材とを有し、前記開口部に前記ホルダー部材が装着されたローラにおいて、
前記ホルダー部材には、前記筒状部材内に挿入される挿入部と、前記筒状部材から露出する露出部があり、前記挿入部の周面に突起があり、前記挿入部と前記露出部の境界部に凹部があり、
前記筒状部材の開口端には折り返し部があり、前記折り返し部の一部又は全部が前記凹部と係合していることを特徴とするローラ。
【請求項2】
前記折り返し部には折り返された角度が相違する部分があることを特徴とする請求項1に記載のローラ。
【請求項3】
前記突起は周方向において所定の角度領域にあり、前記折り返し部分は前記突起が存在する周方向の角度領域と突起が存在しない周方向の角度領域で折り返し角度が相違することを特徴とする請求項1又は2に記載のローラ。
【請求項4】
前記挿入部の周面に前記突起が複数設けられており、当該複数の突起には形状の異なるものが混在していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のローラ。
【請求項5】
前記筒状部材の端部近傍は一部が前記突起に沿った形状に変形しており、前記筒状部材が前記突起と係合していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のローラ。
【請求項6】
前記突起は軸方向に延びていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のローラ。
【請求項7】
前記凹部には深さが浅い領域と、深さが深い領域があることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のローラ。
【請求項8】
前記折り返し部は、折り返された先端から筒状部材の内壁部までの径方向の距離が長い立ち姿勢部と、当該距離が短い寝姿勢部があり、
前記凹部は環状の溝であって深さが浅い領域と深さが深い領域があり、前記立ち姿勢部は前記深さが深い領域と係合し、前記寝姿勢部は前記深さが浅い領域と係合していることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のローラ。
【請求項9】
前記凹部は溝であり、当該溝には周方向に仕切る仕切又は段部があり、前記折り返し部が前記仕切られた領域に係合していることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のローラ。
【請求項10】
前記突起が設けられた軸方向の領域は、前記凹部から離れていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のローラ。
【請求項11】
筒状部材の端部を一定の角度に折り返す折り返し工程と、ホルダー部材を前記筒状部材の端部に圧入する圧入工程と、前記筒状部材の端部を挿入部側に湾曲させる湾曲工程を有することを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のローラを製造するローラ製造方法。
【請求項12】
前記圧入工程によって、前記突起と接触する部分の折り返し部の折り返し角度を深めて折り返された角度が相違する部分を形成し、前記湾曲工程によって、前記折り返し部の一部又は全部を前記凹部に係合させることを特徴とする請求項11に記載のローラ製造方法。
【請求項13】
少なくとも一端に開口部がある筒状部材と、ホルダー部材とを有し、前記開口部に前記ホルダー部材を圧入する圧入工程を経て前記ホルダー部材を筒状部材に装着するローラ製造方法において、
前記ホルダー部材の周面に突起があり、前記圧入工程の際に筒状部材の一部を前記突起に当接させて前記筒状部材の一部を変形させることを特徴とするローラ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤ装置の搬送ローラや、プーリ等に使用されるローラに関するものである。また本発明は、ローラの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばローラコンベヤには、多数の搬送用ローラが使用される。一般的な搬送用ローラは、筒状部材とホルダー部材によって構成されている。
筒状部材は、両端が解放された筒である。ホルダー部材は、軸芯を支持するものであり、筒状部材の開口端に装着されている。
従来技術においては、ホルダー部材を筒状部材の端部の開口部に圧入することによってホルダー部材が筒状部材に固定されていた。
またネジやピン等の締結要素を使用して筒状部材に一体的に固定される場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2002-356269
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧入によってホルダー部材を筒状部材に固定する方法は、工程が簡単であるが、ローラを長期に渡って使用すると、ホルダー部材が外れてしまう場合がある。
ネジやピン等の締結要素によってホルダー部材を筒状部材に固定する方策は、工程が複雑になるという問題がある。
【0005】
本発明は、新たな構造のローラを提供するものであり、接着剤や締結要素を使用せずにホルダー部材を筒状部材に固定することができるローラを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するための態様は、少なくとも一端に開口部がある筒状部材と、ホルダー部材とを有し、前記開口部に前記ホルダー部材が装着されたローラにおいて、前記ホルダー部材には、前記筒状部材内に挿入される挿入部と、前記筒状部材から露出する露出部があり、前記挿入部の周面に突起があり、前記挿入部と前記露出部の境界部に凹部があり、前記筒状部材の開口端には折り返し部があり、前記折り返し部の一部又は全部が前記凹部と係合していることを特徴とするローラである。
【0007】
本態様のローラでは、筒状部材の端部に折り返し部があり、ホルダー部材には凹部がある。そして本態様のローラでは、筒状部材の折り返し部の一部又は全部が凹部と係合している。そのためホルダー部材は、物理的に筒状部材に係合して固定され、抜けにくい。
【0008】
上記した態様において、前記折り返し部には折り返された角度が相違する部分があることが望ましい。
【0009】
上記した態様において、前記突起は周方向において所定の角度領域にあり、前記折り返し部分は前記突起が存在する周方向の角度領域と突起が存在しない周方向の角度領域で折り返し角度が相違することが望ましい。
【0010】
上記した態様において、前記挿入部の周面に前記突起が複数設けられており、当該複数の突起には形状の異なるものが混在していることが望ましい。
【0011】
上記した態様において、前記筒状部材の端部近傍は一部が前記突起に沿った形状に変形しており、前記筒状部材が前記突起と係合していることが望ましい。
【0012】
上記した態様において、前記突起は軸方向に延びていることが望ましい。
【0013】
上記した態様において、前記凹部には深さが浅い領域と、深さが深い領域があることが望ましい。
【0014】
上記した態様において、前記折り返し部は、折り返された先端から筒状部材の内壁部までの径方向の距離が長い立ち姿勢部と、当該距離が短い寝姿勢部があり、前記凹部は環状の溝であって深さが浅い領域と深さが深い領域があり、前記立ち姿勢部は前記深さが深い領域と係合し、前記寝姿勢部は前記深さが浅い領域と係合していることが望ましい。
【0015】
立ち姿勢部及び寝姿勢部は相対的なものであり、立ち姿勢部は寝姿勢部に比べて縦姿勢であると言う意味である。
【0016】
上記した態様において、前記凹部は溝であり、当該溝には周方向に仕切る仕切又は段部があり、前記折り返し部が前記仕切られた領域に係合していることが望ましい。
【0017】
上記した態様において、前記突起が設けられた軸方向の領域は、前記凹部から離れていることが望ましい。
【0018】
上記したローラを製造する製造方法は、筒状部材の端部を一定の角度に折り返す折り返し工程と、ホルダー部材を前記筒状部材の端部に圧入する圧入工程と、前記筒状部材の端部を挿入部側に湾曲させる湾曲工程を有することを特徴とする。
【0019】
上記したローラ製造方法において、前記圧入工程によって、前記突起と接触する部分の折り返し部の折り返し角度を深めて折り返された角度が相違する部分を形成し、前記湾曲工程によって、前記折り返し部の一部又は全部を前記凹部に係合させることが望ましい。
【0020】
同様の課題を解決するためのもう一つの態様は、少なくとも一端に開口部がある筒状部材と、ホルダー部材とを有し、前記開口部に前記ホルダー部材を圧入する圧入工程を経て前記ホルダー部材を筒状部材に装着するローラ製造方法において、前記ホルダー部材の周面に突起があり、前記圧入工程の際に筒状部材の一部を前記突起に当接させて前記筒状部材の一部を変形させることを特徴とするローラ製造方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明のローラの構造によると、接着剤や締結要素を使用しなくても、ホルダー部材が筒状部材に強固に固定される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態のモータ内蔵ローラの断面図である。
図2図1のモータ内蔵ローラの分解斜視図である。
図3図1のモータ内蔵ローラのホルダー部材の斜視図である。
図4図1のモータ内蔵ローラのホルダー部材の正面図である。
図5】(a)は、図4のA-A断面図であり、(b)は、図4のA-A断面の端面図であり、(c)は、図4のB-B断面図である。
図6】ホルダー部材の挿入部の表面における突起が形成された領域及び谷間の領域と、凹部における深溝領域及び浅溝領域の関係を示す説明図である。
図7】(a)は、図4のホルダー部材の突起が存在する領域たるC-C断面図であり、(b)は、図4のホルダー部材の突起が存在しない領域たるD-D断面図である。
図8図1のモータ内蔵ローラの製造工程を説明するものであり、(a)は、筒状部材の開口端の斜視図であり、(b)は、その時の筒状部材の開口端の断面図である。
図9図1のモータ内蔵ローラの製造工程を説明するものであり、(a)は、筒状部材とホルダー部材の関係を示す断面図であり、(b)は、その時の筒状部材の開口端の斜視図であり、(c)は、その時の筒状部材の開口端の断面図である。
図10図1のモータ内蔵ローラの製造工程を説明するものであり、(a)は、筒状部材とホルダー部材の関係を示す断面図であり、(b)は、その時の筒状部材の開口端の斜視図であり、(c)は、その時の筒状部材の開口端の断面図及びホルダー部材の一部を示す断面図である。
図11図1のモータ内蔵ローラの製造工程を説明するものであり、(a)は、筒状部材とホルダー部材の関係を示す断面図であり、(b)は、ホルダー部材の突起が存在する領域たるE-E断面図であり、(c)は、ホルダー部材の突起が存在しない領域たるF-F断面図である。
図12図1のモータ内蔵ローラの製造工程を説明するものであり、(a)は、筒状部材とホルダー部材の関係を示す断面図であり、(b)は、ホルダー部材の突起が存在する領域たるG-G断面図であり、(c)は、ホルダー部材の突起が存在しない領域たるH-H断面図である。
図13図1のモータ内蔵ローラの製造工程を説明するものであり、(a)は、ホルダー部材を筒状部材に圧入する圧入工程後におけるモータ内蔵ローラの断面図であり、(b)は、筒状部材の端部を挿入部側に湾曲させる湾曲工程後におけるモータ内蔵ローラの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態のローラ1は、モータ内蔵ローラである。本実施形態のローラ1は公知のモータ内蔵ローラと同様に、円筒形の筒状部材2を持ち、当該筒状部材2の内部にモータ3と減速機5が内蔵されたものである。本実施形態では、モータ3と減速機5がユニット化されている。即ち本実施形態のローラ1は、筒状部材2内にモータユニット15が内蔵され、筒状部材2の両端にホルダー部材10、11が装着されたものである。
【0024】
モータユニット15は、ケース16内にモータ3等が内蔵されたものである。
ケース16の一端部には駆動側軸18が露出しており、他端部には固定側短軸20が露出している。
【0025】
筒状部材2は、両端が開口した円筒である。即ち筒状部材2は、両端に開口部6がある。
図2の様に、筒状部材2の内部には動力伝動部材21が一体的に取り付けられている。動力伝動部材21の中心には、六角形の開口22が設けられている。
【0026】
一方のホルダー部材10は、図1の右端に示す様な、略円筒状のホルダー本体30と、2連の軸受け31及び本体側短軸部材32が一体化されたものである。また他の一つのホルダー部材11は、図1の左端に示す様な構造であり、ホルダー本体35と、軸受け36が一体化されたものである。
【0027】
本実施形態のローラ1では、モータユニット15が筒状部材2内に挿入されており、モータユニット15の駆動側軸18が動力伝動部材21の開口22と係合している。
本実施形態のローラ1では、筒状部材2の両端の開口部6にホルダー部材10、11が取り付けられている。
前記した様にホルダー部材11は、ホルダー本体35と、軸受け36が一体化されたものであり、軸受け36の開口にモータユニット15の固定側短軸20が挿通されている。固定側短軸20は、ホルダー部材11によって支持された状態で先端側が筒状部材2から突出し、ローラ1自身の一方の固定軸を構成している。
【0028】
一方、筒状部材2の他端側の開口部6に、ホルダー本体30と、軸受け31及び本体側短軸部材32が一体化されたホルダー部材10が取り付けられている。
本実施形態では、ホルダー部材10の本体側短軸部材32がローラ1自身の他方の固定軸を構成している。
【0029】
次に、筒状部材2とホルダー部材10、11の取り付け構造及び両者の組み立て工程について説明する。
左右のホルダー部材10、11は、ホルダー本体30、35の構造及び筒状部材2への組み立て手順は略同じである。そのため、ホルダー部材11の構造及び筒状部材2への組み立て工程について説明する。
【0030】
本実施形態のローラ1は。筒状部材2の端部を環状に削って肉薄化する薄化工程と、筒状部材2の端部を一定の角度に折り返す折り返し工程と、ホルダー部材を筒状部材2の端部の開口部6に圧入する圧入工程と、前記筒状部材2の端部を挿入部側に湾曲させる湾曲工程を経て完成する。
【0031】
ホルダー本体35は、硬質の樹脂で作られたものであり、図3の様に、筒状部材2内に挿入される挿入部50と、筒状部材2から露出する露出部51がある。
挿入部50は、外形形状が略円筒形である。挿入部50は、軸方向にある程度の長さがある。露出部51は、フランジ状であり外径は挿入部50よりも大きく、軸方向には短い。
【0032】
挿入部50の外周部には、突起52が複数個設けられている。突起52は、畝状であり、円周方向に一定の間隔を空けて形成されている。本実施形態では突起52が8個、円周方向に等間隔に設けられている。突起52の数は任意である。
図6の様に挿入部50を側面から観察したとき、一定の角度領域Mの範囲に突起52が存在し、一定の角度領域Nの範囲には無い。即ち一定の角度領域Nは、突起の谷間となっている。
突起52は、軸方向に長く、且つ挿入部50の軸線と平行にのびている。
【0033】
本実施形態では、図3乃至図6の様に、二種類の突起52a、52bが、交互に形成されている。突起52aは、断面形状が台形であり、頂部に繋がる裾部分が傾斜面となっている。これに対して突起52bは、断面形状が長方形であり、側面が急峻である。
【0034】
突起52は、軸方向(長手方向)には、挿入部50の中央部たる中間領域55にあり、突起52の端部と露出部51との間には距離がある。即ち突起52の端部と露出部51との間の空隙領域56には突起52は無い、また突起52の他端と、挿入部50の末端との間にも距離がある。即ち突起52の他端と、挿入部50の末端との間の末端領域57にも突起52は無い。
図4図7の様に、挿入部50の突起52の端部と露出部51との間の空隙領域56は、露出部51側に向かって縮径する緩やかなテーパ形状となっている。
突起52の他端と、挿入部50の末端との間の末端領域57についても同様であり、図4図7の様に、末端側に向かって縮径する緩やかなテーパ形状となっている。
【0035】
ホルダー本体35の挿入部50であって、露出部51との境界部には、溝状の凹部60がある。凹部60は、挿入部50の全周を環状に取り巻いている。
凹部60の深さは一様ではなく、深溝領域61と、浅溝領域62がある。深溝領域61と浅溝領域62が交互に存在し、両者の間に段部75がある。
図6の様に、浅溝領域62は、前記した突起52が設けられた角度領域Mと一致する。深溝領域61は、前記した突起52の谷間に相当する角度領域Nと一致する。
【0036】
筒状部材2は、筒状部材2は、金属の中空筒であり、両端が開口していて開口部6となっている。
薄化工程により、筒状部材2の開口端近傍は図8の様に外周部が環状に切削されて切除され、肉薄化されている。
組み立て前に折り返し工程が実施され、筒状部材2の開口端は、図9の様に、予め折り返されている。
折り返し部65の折り返し角度は、全周に渡って同一である。
また組み立て前においては、図9の様に筒状部材2の開口端がやや広げられている。
【0037】
次に組み立て前における各部の寸法の関係について説明する。
図9(c)の様に組み立て前における、筒状部材2の中間部の内径をD1とし、筒状部材2の折り返し部65の突端の内径をD2とする。前記した様に、組み立て前においては、図9の様に筒状部材2の開口端がやや広げられているから、中間部の内径D1は、筒状部材2の本来の内径である。
またホルダー本体35の挿入部50の突起52の外接円直径をd1とし、挿入部50の外径(谷間の径)をd2とする。
【0038】
挿入部50の突起52の外接円直径d1は、筒状部材2の本来の内径D1よりも大きく、突起52の外接円直径d1は、当然、折り返し部65の内径D2よりも大きい。
挿入部50の外径(谷間の径)d2は、筒状部材2の本来の内径D1よりも相当に小さく、大きく折り返し部65の内径D2よりもわずかに小さい。
従って、各径は次の関係にある。
d2≦D2<D1<d1
【0039】
本実施形態のローラの製造方法では、ホルダー部材10、11の挿入部50を、筒状部材2に圧入する。
本実施形態では、ホルダー部材11の挿入部50の末端は、テーパ状に縮径している。さらに筒状部材2の開口端は折り曲げられており、末端に比べて奥側がロート状に縮径している。そのためホルダー部材11の挿入部50の末端が、筒状部材2の開口端のロート形状に案内され、ホルダー部材11の挿入部50の筒状部材2の折り返し部65への導入が円滑に行われる。
【0040】
圧入過程で、図10の様に、筒状部材2の開口端が、突起52の領域に差し掛かり、筒状部材2の折り返し部65が、突起52と接する。さらに圧入が進むと、筒状部材2の折り返し部65が、突起52に押されて折り返し角度が強くなる。即ち、ホルダー部材10の周面に突起52があり、圧入工程の際に筒状部材2の一部を突起52に当接させて筒状部材2の一部を変形させる
ここで、突起52は畝状であって一定間隔を空けて設けられているから、谷間の部分は筒状部材2の折り返し部と接触しない。そのため、突起52と接触する領域が強く押し曲げられ、谷間の領域は折り返し角度が進まない。
そのため、図10の様に、折り返し部65は、位置によって、折り返された角度が相違することとなる。
突起52と接触し、折り返し角度が進んだ領域は、端部が筒状部材2の内壁側に寄った寝姿勢部70となる。一方、谷間に対応する領域は、折り返し角度が進まず、縦姿勢を維持した立ち姿勢部71となる。
【0041】
さらに圧入が進むと、図11の様に、ホルダー部材11の露出部51が、筒状部材2の開口端に到達する。その結果、折り返し部65が溝状の凹部60の位置に至る。
圧入は、ホルダー部材11を軸線に沿って真っすぐに押し込むので、筒状部材2の折り返し部65が寝姿勢の領域(寝姿勢部70)も、縦姿勢の領域(立ち姿勢部71)もホルダー部材11に対して相対的に真っすぐに移動する。
そのため、突起52と接触して寝姿勢となった領域(寝姿勢部70)は、突起52の延長線上の領域に至り、谷間の領域であって縦姿勢の領域(立ち姿勢部71)は、谷間の延長線状の領域に至る。
即ち、寝姿勢部70は、凹部60の浅溝領域62を覆う位置に至り、立ち姿勢部71は、凹部60の深溝領域61を覆う位置に至る。
【0042】
続いて、図12の様に、筒状部材2の端部をかしめて縮径させる(湾曲工程)。
その結果、開口端の折り返し部65がやや内側に曲がり、溝状の凹部60の中に入って係合する。
ここで、高さが高い立ち姿勢部71は、凹部60の深溝領域61に入り、高さが低い寝姿勢部70は、凹部60の浅溝領域62に入る、
また環状の凹部60内には、深溝領域61と浅溝領域62が交互に存在し、両者の間に段部75があるから、縦姿勢の領域と寝姿勢の境界が段部75と係合し、ホルダー部材11は筒状部材2の端部の開口部6に回転方向にも固定される。
【0043】
またホルダー部材10、11の挿入部50を筒状部材2に圧入する際、図13(a)の様に、筒状部材2が挿入部50の形状に沿ってわずかに変形する。なお図13は、作図の関係上、軸受け36を省略している。
そして筒状部材2の端部をかしめて縮径させると、図13(b)の様に、筒状部材2の変形が進み、筒状部材2の内部が、筒状部材2の突起52a、52bに沿った形状となる。その結果、筒状部材2の内部が突起52a、52bと係合する。
【0044】
ここで突起52aは、断面形状が台形であり、頂部に繋がる裾部分が傾斜面となっているので、表面積が大きい。そのため突起52bは、筒状部材2との接触面積が大きい。
突起52bは軸方向に長く、且つ筒状部材2との接触面積が大きいのでホルダー部材10、11の抜け方向に対する抗力をより強く発現し、ホルダー部材10、11の抜け止めに対する寄与が顕著である。
一方、突起52bは、断面形状が長方形であり、角張っている。そのため、突起52bの角が筒状部材2の内面に食い込み、回り方向に対する抗力をより強く発現し、ホルダー部材10、11の回り止めに対する寄与が顕著である。
【0045】
完成したローラ1は、両端が開口した筒状部材2と、ホルダー部材10、11とを有し、筒状部材2の両端にホルダー部材10、11が装着され、内部にモータ3と減速機5が内蔵されていて、モータ3によって筒状部材2が回転するモータ内蔵ローラである。
ホルダー部材10、11には、筒状部材2内に挿入される挿入部50と、筒状部材2から露出する露出部51があり、挿入部50の周面に突起52がある。
また挿入部50と露出部51の境界部に溝状の凹部60がある。
筒状部材2の開口端には折り返し部65があり、折り返し部65には折り返された角度が相違する部分があり、折り返し部65が凹部60と係合している。
【0046】
ホルダー部材10、11の挿入部50に設けられた突起52は周方向において所定の角度領域にあり、折り返し部65は突起52が存在する周方向の角度領域と突起52が存在しない周方向の角度領域で折り返し角度が相違する。
【0047】
完成したローラ1は、ホルダー部材10、11の挿入部50の周面に突起52が複数設けられており、当該複数の突起には形状の異なる突起52a、52bが混在している。
【0048】
完成したローラ1では、筒状部材2の端部近傍は一部が突起52a、52bに沿った形状に変形しており、筒状部材2が突起52a、52bと係合している。
【0049】
完成したローラ1では 突起52a、52bは軸方向に延びている。
【0050】
溝状の凹部60には深さが浅い領域と、深さが深い領域がある。一方、折り返し部65は、折り返された先端から筒状部材2の内壁部までの径方向の距離が長い立ち姿勢部と、当該距離が短い寝姿勢部があり、立ち姿勢部は前記深さが深い領域と係合し、前記寝姿勢部は前記深さが浅い領域と係合している。
【0051】
さらに溝状の凹部60内には周方向に仕切る仕切又は段部75があり、折り返された角度が相違する部分が仕切られた領域に係合している。即ち、溝60は周方向に仕切る仕切又は段部75があり、折り返し部65が仕切られた領域に係合している。
【0052】
突起52が設けられた軸方向の領域は、凹部60から離れている。
【0053】
上記した実施形態のローラ製造方法は、少なくとも一端に開口部がある筒状部材2と、ホルダー部材10、11とを有し、開口部にホルダー部材10、11を圧入する圧入工程を経てホルダー部材10、11を筒状部材2に装着するローラ製造方法であり、ホルダー部材10、11の周面に突起52があり、圧入工程の際に筒状部材2の一部を突起52に当接させて筒状部材2の一部を変形させるものである。
【0054】
以上説明した実施形態のローラ1は、筒状部材2の両端にホルダー部材10、11が装着されているが、片側だけにホルダー部材があってもよい。
以上説明した実施形態では、折り返し部65と係合する凹部60は、挿入部50の全周を環状に取り囲む連続的な溝であるが、断片的な溝であってもよい。即ち、凹部60は、不連続な溝であってもよい。さらに凹部は、溝形状ではなく、円形や四角形の穴であってもよい。
【0055】
以上説明した実施形態は、筒状部材2の中にモータ等が内蔵されたモータ内蔵ローラであるが、モータ等を有せずに筒状部材2が自由回転する空転ローラに本発明を採用することもできる。
【符号の説明】
【0056】
1 ローラ
2 筒状部材
3 モータ
6 開口部
10、11 ホルダー部材
30、35 ホルダー本体
50 挿入部
51 露出部
52 突起
60 凹部
61 深溝領域
62 浅溝領域
65 折り返し部
70 寝姿勢部
71 立ち姿勢部
75 段部
図1
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