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特開2023-108406工具アタッチメント及びクーラント噴射システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108406
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】工具アタッチメント及びクーラント噴射システム
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/10 20060101AFI20230728BHJP
【FI】
B23Q11/10 D
B23Q11/10 E
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009518
(22)【出願日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】506377112
【氏名又は名称】有限会社 大野精機
(74)【代理人】
【識別番号】110003018
【氏名又は名称】弁理士法人プロテクトスタンス
(72)【発明者】
【氏名】大野 和明
(72)【発明者】
【氏名】大野 義栄
(72)【発明者】
【氏名】大野 真悟
【テーマコード(参考)】
3C011
【Fターム(参考)】
3C011EE02
3C011EE05
3C011EE06
3C011EE08
(57)【要約】
【課題】 汎用工作機械を用いた切削加工部分の発熱を抑制し、切粉を切削加工部分から除去することができる、工具アタッチメントを提供する。
【課題を解決するための手段】
被加工物WPを切削し且つクーラントが流れる第1クーラント穴部HOを有する切削工具CTを取り付ける工具アタッチメント10である。工具アタッチメント10は、汎用工作機械に取り付ける取り付け部12及び切削工具を保持する保持部11aを有する工具ホルダー11と、切削工具CTの第1クーラント穴部HOの端部にクーラントを連通するための工具密着管16と、工具ホルダー11に取り付けられ工具密着管16を保持する密着管ホルダー15と、を備える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を切削し且つクーラントが流れる第1クーラント穴部を有する切削工具を取り付ける工具アタッチメントであって、
汎用工作機械に取り付ける取り付け部及び前記切削工具を保持する保持部を有する工具ホルダーと、
前記切削工具の前記第1クーラント穴部の端部に前記クーラントを連通するための工具密着管と、
前記工具密着管を保持する密着管ホルダーと、
を備える工具アタッチメント。
【請求項2】
前記工具密着管は、前記第1クーラント穴部の端部に接する前記工具密着管の先端に、クーラントミストが流れる第2クーラント穴部を有する弾性部材を有し、
前記工具密着管は、クーラントミストが流れる第3クーラント穴部を有する請求項1に記載の工具アタッチメント。
【請求項3】
前記工具密着管は前記密着管ホルダーに対して移動可能である請求項1又は請求項2に記載の工具アタッチメント。
【請求項4】
前記工具密着管と前記密着管ホルダーとがネジ結合しており、前記密着管ホルダーに対する前記工具密着部の移動がネジの回転による移動、もしくは、
前記工具密着管と前記密着管ホルダーとの間にスプリングが配置されており、前記密着管ホルダーに対する前記工具密着部の移動が前記スプリングの弾性力による移動、である請求項3に記載の工具アタッチメント。
【請求項5】
汎用工作機械に取り付ける取り付け部及び第1穴部を有する切削工具を保持する保持部を有する工具ホルダーと、
前記切削工具の前記第1穴部の端部に前記クーラントを連通するための工具密着管と、
前記工具密着管を保持する密着管ホルダーと、
前記工具密着管に接続されるルブリケータと、
前記ルブリケータにクーラントを供給するクーラントタンクと、
前記ルブリケータ用の第1通路と前記クーラントタンク用の第2通路とに分岐して、それぞれに気体を供給する分岐ユニットと、
を備え、
前記第1穴部を有する切削工具にミストを噴出するクーラント噴射システム。
【請求項6】
前記分岐ユニットの前記第1通路の断面積は前記第2通路の断面積よりも小さい、請求項5に記載のクーラント噴射システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汎用工作機械に取り付けられる工具アタッチメント及びクーラント噴射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
切削加工では回転する切削工具が被加工物と接触するため熱が発生し、この熱による切削工具の刃の損傷、被加工物における切削加工部分の熱変形等の不具合を生じることがある。また、切削加工では、切削によって発生する切粉が切削工具の刃と被加工物との間に挟まることがある。
【0003】
切削加工で生じる熱を抑制するため及び切粉を外部に流し出すため、特許文献1で開示されるように、切削工具の刃にクーラントを外から塗布もしくは噴霧する技術が提案されている。また、特許文献2で開示されるように、マシニングセンターの主軸装置にクーラントを通すことにより、クーラントホールを有する切削工具からクーラントを噴霧する技術が提案されている。
【0004】
しかし、旋盤などの汎用工作機械ではクーラントホールを有する切削工具を用いて、切削加工(特に、雌ネジ加工などの内径加工もしくは穴加工)をすることが提案されていなかった。汎用工作機械では穴あけ加工や雌ネジ加工等で、切削加工部分(内部)にクーラントを供給することができず、及び切粉を流出させることできず、被加工物に切削不良や精度不良が生じることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3186496号公報
【特許文献2】特開第2008-12619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような事情に鑑みて、本発明は、汎用工作機械を用いた切削加工部分の発熱を抑制し、切粉を切削加工部分から除去することができる、工具アタッチメント及びクーラント噴射システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態は、被加工物を切削し且つクーラントが流れる第1クーラント穴部を有する切削工具を取り付ける工具アタッチメントである。工具アタッチメントは、汎用工作機械に取り付ける取り付け部及び切削工具を保持する保持部を有する工具ホルダーと、切削工具の第1クーラント穴部の端部にクーラントを連通するための工具密着管と、工具密着管を保持する密着管ホルダーと、を備える。
【0008】
そして工具密着管は、第1クーラント穴部の端部に接する工具密着管の先端に、クーラントミストが流れる第2クーラント穴部を有する弾性部材を有し、工具密着管は、クーラントミストが流れる第3クーラント穴部を有することが好ましい。
また、工具密着管は密着管ホルダーに対して移動可能であることが好ましい。
その移動可能は、工具密着管と密着管ホルダーとがネジ結合しており、密着管ホルダーに対する工具密着部の移動がネジの回転による移動であってもよい。もしくは、工具密着管と密着管ホルダーとの間にスプリングが配置されており、密着管ホルダーに対する工具密着部の移動がスプリングの弾性力による移動であってもよい。
【0009】
本実施形態は第1穴部を有する切削工具にミストを噴出するクーラント噴射システムである。クーラント噴射システムは、汎用工作機械に取り付ける取り付け部及び第1穴部を有する切削工具を保持する保持部を有する工具ホルダーと、切削工具の第1穴部の端部にクーラントを連通するための工具密着管と、工具密着管を保持する密着管ホルダーと、工具密着管に接続されるルブリケータと、ルブリケータにクーラントを供給するクーラントタンクと、ルブリケータ用の第1通路とクーラントタンク用の第2通路とに分岐して、それぞれに気体を供給する分岐ユニットと、を備える。
そして分岐ユニットの第1通路の断面積は第2通路の断面積よりも小さいことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本実施形態にかかる工具アタッチメント及びクーラント噴射システムは、効果的に切削工具及び切削加工部分の発熱を抑制できると共に、切粉を切削加工部分から除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】汎用工作機械に、本実施形態であるクーラント噴射システムを取り付けた斜視図である。
図2】(a)は実施形態である工具アタッチメントを示す平面図であり、(b)は工具ホルダーの正面図と側面図である。
図3】(a)及び(b)は、工具密着管と工具密着管を保持する密着管ホルダーとの第1例である。また(c)及び(d)は、工具密着管と工具密着管を保持する密着管ホルダーとの第2例である。
図4】クーラント噴射装置30及びルブリケータ40の外観斜視図である。
図5】クーラント噴射装置30及びルブリケータ40の概念的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、説明に用いる各図はこれら発明を理解できる程度に概略的に示してあり、大きさ、角度又は厚み等は誇張して描いている場合がある。また説明に用いる各図において、同様な構成成分については同一の番号を付して示し、その説明を省略する場合もある。また、以下の実施形態中で述べる形状、寸法、材質等は好適例に過ぎない。
【0013】
[汎用工作機械]
図1は、汎用工作機械に、本実施形態である工具アタッチメント及びクーラント噴射装置を取り付けた斜視図である。汎用工作機械MTを使って、作業者は、チャックCHで被加工物WPをチャッキングし、刃物台THで工具アタッチメント10をクランプして、切削工具CTで被加工物WPを加工する。チャックCHは、図示されない駆動部によって回転され、固定された切削工具CTが往復台CAで移動することで、切削工具CTが被加工物WPに接して被加工物WPを切削加工する。また工具アタッチメント10にはホースがつながりクーラント噴射装置30につながっている。クーラント噴射装置30はクーラントを貯蔵しさらにルブリケータ40を有しており、コンプレッサ(不図示)からクーラント噴射装置30に供給される空気等の気体によって、クーラントを噴霧する。本実施形態では、工具アタッチメント10及びクーラント噴射装置30を備えたものをクーラント噴射システムと総称する。
【0014】
本実施形態では、切削工具CTは、特にクーラントが流れる第1穴部を有している場合に、クーラントが切削工具CTから噴霧されることで、被加工物WPの切削加工部分の発熱を抑制し、切粉を切削加工部分から除去する。本実施形態は、被加工物WPの内径及び外径の加工部分を切削できるが、本実施形態の工具アタッチメント10は、特に切粉が切削加工部分から排出し難い、被加工物WPの穴開けもしくは内径加工に向いている。
【0015】
<工具アタッチメント及び切削工具>
図2(a)は工具アタッチメント10を示す平面図であり、切削工具CTが取り付けられている状態である。図2(a)では、切削工具CTを見やすくするため、被加工物WPが断面図で描かれている。工具アタッチメント10は、工具ホルダー11と、工具密着管16と、工具密着管を保持する密着管ホルダー15とからなる。工具ホルダー11には密着管ホルダー15がボルト等の締結手段で締結されている。
【0016】
〔切削工具〕
切削工具CTは、その基端側が工具アタッチメント10の工具ホルダー11に装着される。切削工具CTの先端側(-X軸側)にツールバイトTBが取り付けられており、被加工物WPを切削する。切削工具CTは、ツールバイトTBと、胴部であるシャンク部と、工具ホルダー11が保持する基部と、シャンク部の中心を貫通する第1クーラント穴部HOとを有する。切削工具CTは、第1クーラント穴部HOを有していれば、例えば、タップ、ドリル、エンドミル等にも適用できる。
【0017】
第1クーラント穴部HOは、後端側(+X軸側)の基部の端面からツールバイトTBが取り付けられる先端側に向けて形成されている。本実施形態では、シャンク部において第1クーラント穴部HOの径が一定であり、先端側で第1クーラント穴部HOの径が小さくなっている。しかし、これに限定されず、第1クーラント穴部HOの径が基部から先端側に向けて漸減するテーパであってもよいし、基部から先端側(-X軸側)まで第1クーラント穴部HOの径が一定であってもよい。先端側の径が小さくなることで、先端から噴出されるミストを効果的に昇圧することができ、上記ミストを比較的高圧力、広範囲に噴霧することができる。切削工具CTの基部の端面には、後述する工具密着管16と密着する。
【0018】
〔工具ホルダー〕
図2(b)は工具ホルダー11の正面図と側面図である。工具ホルダー11は、取り付け部12及び切削工具CTを保持する保持部11aを有する。工具ホルダー11は、耐摩耗性と減衰性が高い鋳鉄等を使用することが好ましい。取り付け部12は、汎用工作機械MTの刃物台THにクランプするための突起部である。取り付け部12は、刃物台THにクランプしやすい形状であれば、図2(b)に示される形状でなくてもよい。
【0019】
図2(b)に示される保持部11aは、断面が円形状でX軸方向に伸びる形状である。保持部11aの径は、切削工具CTのシャンクの径に合わせて適宜変更することができる。また切削工具CTの断面が六角形や四角形である場合には、保持部11aの断面形状も六角形や四角形であってもよい。保持部11aの上側には、ネジ・ボルト等の締結手段(不図示)が入るネジ穴11bが複数形成されている。保持部11aで保持された切削工具CTは、締結手段で締結される。
【0020】
〔工具密着管及び密着管ホルダー〕
図3(a)は、第1例の工具密着管16と密着管ホルダー15との正面図であり、図3(b)は、そのb-b断面図である。図3(c)は、第2例の工具密着管16と工具密着管ホルダー15との正面図であり、図3(d)はそのd-d断面図である。工具密着管16と密着管ホルダー15は、耐摩耗性と減衰性が高い鋳鉄等を使用することが好ましい。
【0021】
まず第1例について説明する。密着管ホルダー15は、工具密着管16を保持するともに、締結穴15dに入るボルト等によって工具ホルダー11に締結される。工具ホルダー11に接する先端面15aには、弾性部材であるOリングorが嵌め込まれるOリング溝15bが形成されている。後述するクーラントミストが漏れることを防ぐためであり、クーラントミストの漏れが無いもしくは少ない場合には、Oリング溝15bは必ずしも設けなくても良い。
【0022】
密着管ホルダー15は、工具密着管16を移動可能に保持する円筒形溝15cを有する。この円筒形溝15cの直径は、工具密着管16の最大直径より若干大きい。また円筒形溝15cの後端面には、ネジ溝15dが貫通するように形成されている。
【0023】
工具密着管16の頭部16aには、ゴム等の弾性部材からなるシールパッキン17が接着剤で接着されている。シールパッキン17は接着剤ではなくネジ締め等で固定されても良い。シールパッキン17の直径は円筒形溝15cの直径より若干小さい。シールパッキン17にはクーラントミストが流れる第2クーラント穴部17cが形成されている。
【0024】
工具密着管16の頭部16aの直径は円筒形溝15cの直径より若干小さく、また頭部16aの外周にはOリングorが嵌め込まれるOリング溝16fが形成されている。クーラントミストの漏れが無いもしくは少ない場合には、Oリング溝16fは必ずしも設けなくても良い。また頭部16aから胴部16bにわたって工具密着管16の胴部16bには、クーラントミストが流れる第3クーラント穴部16cが形成されている。第3クーラント穴部16cの後端(+X軸側)は、ホースカプラが取り付けられるネジ溝16eが形成されている。工具密着管16の胴部16bの外周には、ネジ溝15dと螺合するネジ溝16dが形成されている。作業者が胴部16bを回転させることで、工具密着管16及びシールパッキン17が前後方向(X軸方向)に移動する。
【0025】
シールパッキン17の面は、工具密着管16が先端側(-X軸側)に移動して、切削工具CTの基部の端面と密接する。また切削工具CTの第1クーラント穴部HOとシールパッキン17の第2クーラント穴部17cとは位置が合致している。また弾性部材であるシールパッキン17は所定の圧力で圧縮されているため、シールパッキン17の面と切削工具CTの基部の端面との間に隙間がほとんどない。したがって、第2クーラント穴部17cから第1クーラント穴部HOへクーラントミストがスムーズに流れ、シールパッキン17の面と切削工具CTの基部の端面との間からクーラントミストが漏れ出ることがほとんどない。
【0026】
つぎに第2例について説明するが、第1例と重複する部品及び構造については説明を割愛する。第1例の工具密着管16のネジ溝16dは、密着管ホルダー15のネジ溝15dに対して回転することで、密着管ホルダー15に対して工具密着管16が前後方向(X軸方向)に移動した。第2例では、密着管ホルダー15にネジ溝15dが無く、工具密着管16にネジ溝16dが無い。その代わりに第2例では、密着管ホルダー15の内周面15gは鏡面仕上げし、工具密着管16の胴部16bの外周面16gは鏡面仕上げして形成されている。内周面15g及び外周面16の金属自体の鏡面仕上げに代えて、シリコン系、ポリエチレン系もしくはフッ素系の処理が施されたテープで内周面15g及び外周面16を仕上げても良い。またネジ溝が無いため、工具密着管16の頭部16aが切削工具CTの基部の端面と密接するために、スプリング18が工具密着管16の胴部16bの周囲に配置されている。
【0027】
第1例の工具密着管16にはシールパッキン17が配置されていたが、第2例の工具密着管16にはシールパッキン17が無く、Oリングが嵌め込まれるOリング溝16hが先端面に形成されている。さらに工具密着管16の頭部16aには、第3クーラント穴部16cが先端側に伸びるように突起16iが形成されている。突起16iは第1クーラント穴部HOに入り込むような径で形成されている。
【0028】
工具密着管16が先端側(-X軸側)に移動して、Oリング溝16hのOリングが切削工具CTの基部の端面と密接するとともに、突起16iが第1クーラント穴部HOに入り込む。突起16iが第1クーラント穴部HOに入り込んでいるので、第2クーラント穴部17cから第1クーラント穴部HOへクーラントミストがスムーズに流れる。仮に突起16iと第1クーラント穴部HOとの隙間からクーラントミストが漏れ出たとしてもOリング溝16hのOリングが所定の圧力で圧縮されているため、クーラントミストが漏れ出る可能性がほとんどない。
【0029】
第3例として詳細に説明しないが、第1例のシールパッキン17と第2例のスプリング18との組み合わせで、密着管ホルダー15と工具密着管16とを配置しても良い。
【0030】
〔クーラント噴射装置〕
図4は、ルブリケータ40を有するクーラント噴射装置30の外観斜視図である。クーラント噴射装置30は、クーラントを貯蔵するクーラントタンク31と、タンク蓋32と、圧縮気体を分岐する分岐ユニット33と、ルブリケータ40とを有している。クーラントタンク31は、圧縮気体の圧力に耐える強度があることが好ましい。また貯蔵しているクーラント量を目視できるように、流量メータ(不図示)を有していることが好ましい。
【0031】
タンク蓋32は、クーラントタンク31にクーラントを入れる際に開封しクーラントを噴射している際に密閉するネジ蓋である。分岐ユニット33は、圧縮気体をルブリケータ40側に分岐する第1通路36とクーラントタンク31側に分岐する第2通路35とを有している。ルブリケータ40は、圧縮気体を使ってクーラントタンク31内のクーラントからクーラントミストを生成する。クーラントミストはホースカプラ38及びホース39を介して、工具密着管16に供給される。
【0032】
図5に、クーラント噴射装置30及びルブリケータ40内で圧縮気体とクーラントとクーラントミストの概念的な流れを示し、またクーラント噴射装置30及びルブリケータ40の概念断面図を示す。
【0033】
クーラントタンク31は、金属製もしくはプラスチック製の数リットルから数十リットルのクーラントCLを貯蔵するタンクである。クーラントCLは、一般に、水溶性切削油と不水溶性(油性)切削油とに大別されるが、本実施形態では、そのいずれでも使用できる。またクーラントCLとは、加工において切削加工部分の冷却・潤滑・切粉の除去に用いられるものを意味する。クーラントタンク31には、分岐ユニット33及びルブリケータ40がタンクの上側に装着される。
【0034】
分岐ユニット33は、コンプレッサ(不図示)等から供給される圧縮気体(空気等)を直径ΦBの第1通路36と直径ΦAの第2通路35とに分岐する。第1通路36はルブリケータ40側に圧縮空気を分流し、第1通路36はルブリケータ40側に圧縮気体を分流し、第2通路35はクーラントタンク31内に圧縮気体を分流する。第1通路36の断面積は、第2通路35の断面積よりも小さいことが好ましく、例えば断面積比で4/5~1/10であることが好ましく、さらに断面積比で1/2から1/8であることが好ましい。つまりベルヌーイの法則にしたがい、ルブリケータ40側の圧力が低くなり、クーラントタンク31側の圧力が高くなる。
【0035】
ルブリケータ40は、本体41とチェックバルブ42とクーラント調整バルブ43とクーラント滴下室44とクーラントパイプ45とを有している。本体41の一次側は第1通路36と連通し、本体41の二次側41aはホースカプラ38(図4)に連通する。チェックバルブ42はルブリケータ40側に供給された圧縮気体の一部をクーラントタンク31内に分流する。チェックバルブ42は市販のルブリケータ40に一般的に含まれるものであるが、本実施形態ではチェックバルブ42が無くても良い。クーラント調整バルブ43はクーラントパイプ45から供給されるクーラントCLの量を調整するバルブである。クーラント滴下室44は、クーラント調整バルブ43を介して供給されたクーラントCLを滴下して、ルブリケータ40内に流れる圧縮気体で、滴下されたクーラントCLをミスト状(霧状)にする。
【0036】
切削加工においては、数リットルから数十リットルのクーラントCLを使用するため、クーラントタンク31の容量も、同等のクーラントCLを貯蔵できることが求められる。ルブリケータ40のみ(分岐ユニット33を含まない)では、数リットル以上の容量に対してクーラントCLを吸い上げる能力が追い付かず、クーラントミストの生成量が不安定となる。また、ルブリケータ40のみでは、切削加工を開始したり切削工具を変更したりする際に、数分間クーラントミストが生成されない。
【0037】
本実施形態では、断面積が大きな第2通路35でクーラントタンク31内に圧力の高い圧縮気体が供給されるので、圧縮気体が貯蔵されたクーラントCLをクーラントパイプ45に押し出すようになる。そのため本実施形態では、切削加工の開始直後もしくは切削工具を変更した直後からクーラントミストが生成される。
【0038】
クーラントミストは、切削工具CTの第1クーラント穴部HOを通過しつつ切削工具CTを冷却する。また、クーラントミストは、切削工具CTの先端から噴出されて切削加工部分の切粉を除去する。特に内径加工(穴あけ、穴くり、溝、雌ネジ)において、加工部分に留まる切粉を除去する際に好適である。
【0039】
[その他の実施形態]
上述した分岐ユニット33は、直径ΦBの第1通路36と直径ΦAの第2通路35とを有しており、第1通路36の断面積が第2通路35の断面積よりも小さくなっていた。これに限定されず、分岐ユニット33は、同一径の第1通路36と第2通路35とを有し、第1通路36に絞りバルブを配置してもよい。作業者が絞りバルブを絞めることで、第1通路36の断面積が第2通路35の断面積よりも小さくなるように可変することができる。クーラントCLの粘度、被加工物の種類もしくは大きさ、又は切削工具の種類などに応じて、作業者が絞りバルブを絞めることで、クーラントミストの量とクーラントと圧縮気体との割合等することができる。
【0040】
上記実施形態では、工具ホルダー11と密着管ホルダー15とは別部材で形成され、それぞれが締結手段で締結されていたが、工具ホルダー11と密着管ホルダー15とが一体化され1つの部品で形成されていてもよい。また工具アタッチメント10とクーラント噴射装置30とがホースでつながっていたが、第3クーラント穴部16cの後端とルブリケータ本体41の二次側41aとがホースを介さずにつながっていても良い。
【符号の説明】
【0041】
10…工具アタッチメント、 11…工具ホルダー、 11a…保持部
15…密着管ホルダー、 16…工具密着管、 16a…頭部、 16b…胴部
16c…第3クーラント穴部、 16i…突起
17…シールパッキン、 17c…第2クーラント穴部、 18…スプリング
30…クーラント噴射装置、 31…クーラントタンク、 33…分岐ユニット
32…タンク蓋、 35…第2通路、 36…第1通路、 38…ホースカプラ
39…ホース
40…ルブリケータ、 41…本体、 42…チェックバルブ、
43…クーラント調整バルブ、 44…クーラント滴下室、 45…クーラントパイプ
CT…切削工具、 TB…ツールバイト、 HO…第1クーラント穴部
図1
図2
図3
図4
図5