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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108410
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】ロボット制御装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20230728BHJP
【FI】
B25J13/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009527
(22)【出願日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 祥
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS11
3C707BS09
3C707KS06
3C707KS36
3C707KT01
3C707KT06
3C707KV11
3C707KW01
3C707KX06
3C707LT06
3C707LT12
3C707MT02
(57)【要約】
【課題】コストを抑えつつタクトタイムを短縮することができるロボット制御装置を提供する。
【解決手段】マニピュレータ2が作業するワークWを含む三次元の画像データから、ワークWに対応する座標データをワーク点群データとして検出する点群データ検出部と、検出されたワーク点群データと予め記憶された基準となる基準点群データとを比較して誤差を算出する誤差算出部と、算出された誤差に対応するセンシング開始位置からワークWに近づく方向にレーザセンサ3によるセンシングを開始させるセンサ制御部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業用ロボットが作業する対象物を含む三次元の画像データから、前記対象物に対応する三次元の座標データを対象物点群データとして検出する点群データ検出部と、
検出された前記対象物点群データと予め記憶された基準となる基準点群データとを比較して誤差を算出する誤差算出部と、
算出された前記誤差に対応するセンシング開始位置から前記対象物に近づく方向にセンサにセンシングを開始させるセンサ制御部と、
を備えるロボット制御装置。
【請求項2】
前記誤差算出部は、前記対象物点群データと前記基準点群データとの間の距離に基づいて、前記誤差を算出する、
請求項1記載のロボット制御装置。
【請求項3】
前記誤差算出部は、前記対象物点群データに含まれる各点と前記基準点群データに対応する近似平面との間の距離をそれぞれ算出し、当該算出した距離の平均値を、前記誤差として算出する、
請求項2記載のロボット制御装置。
【請求項4】
前記誤差算出部は、前記対象物点群データと前記基準点群データとにおいて対応する位置関係にある点同士の距離を算出し、当該算出した距離の平均値を、前記誤差として算出する、
請求項2記載のロボット制御装置。
【請求項5】
前記センシング開始位置は、前記センシング開始位置から前記対象物に向かって前記センサが前記誤差に対応する距離を移動した場合であっても、前記センサを含む前記産業用ロボットが前記対象物に干渉しないことを基準にして設定される、
請求項1から4のいずれか一項に記載のロボット制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットにより作業を行う場合、対象物の設置誤差やロボットの加工誤差により生ずる狙いずれを防止するために、対象物の位置を測定して正しい位置に補正することが行われている。対象物の位置を測定する方法には、例えば、2Dカメラとレーザセンサを用いて測定する方法や、3Dカメラを用いて測定する方法がある。下記特許文献1には、2次元のCCDカメラとレーザセンサを用いて対象物の位置や姿勢を測定する方法が開示され、下記特許文献2には、3次元測定器で測定した3次元データを用いて対象物の位置を測定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3556589号公報
【特許文献2】特開2009-222568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、2Dカメラとレーザセンサを用いる方法には、2Dカメラでは対象物までの距離が正確に測定できないという問題と、レーザセンサでは対象物を検出できる範囲が狭いという問題がある。そして、3Dカメラを用いる方法には、検出精度が高い3Dカメラは高価であり、コストが嵩むという問題がある。これらの問題を回避するために、2Dカメラとレーザセンサを用いる場合に、レーザセンサが対象物に干渉しないように離れた位置から手探りでセンシングしていくこともできるが、タクトタイムが長くなってしまう。また、3Dカメラを用いる場合に、コストを抑えるために安価な三次元カメラを用いることもできるが、検出精度が低くなり、レーザセンサが対象物に干渉する可能性が高くなる。
【0005】
そこで、本発明は、コストを抑えつつタクトタイムを短縮することができるロボット制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るロボット制御装置は、産業用ロボットが作業する対象物を含む三次元の画像データから、対象物に対応する三次元の座標データを対象物点群データとして検出する点群データ検出部と、検出された対象物点群データと予め記憶された基準となる基準点群データとを比較して誤差を算出する誤差算出部と、算出された誤差に対応するセンシング開始位置から対象物に近づく方向にセンサにセンシングを開始させるセンサ制御部と、を備える。
【0007】
この態様によれば、対象物を含む三次元の画像データから検出された対象物に対応する三次元の対象物点群データと、基準点群データとを比較して、基準位置からのずれを表す誤差を算出し、その誤差に対応するセンシング開始位置からセンサにセンシングを開始させることができる。これにより、対象物が基準位置から誤差の分だけずれていても、センサのセンシング開始位置もその誤差に合わせてずらすことが可能となるため、センシング作業の効率を高めることができる。また、三次元の画像データを撮影できればよいため、高価な3Dカメラを用いる必要もない。
【0008】
上記態様において、誤差算出部は、対象物点群データと基準点群データとの間の距離に基づいて、誤差を算出してもよい。
【0009】
この態様によれば、対象物点群データが基準点群データから離れている距離を誤差としてセンサの開始位置を制御することが可能となる。
【0010】
上記態様において、誤差算出部は、対象物点群データに含まれる各点と基準点群データに対応する近似平面との間の距離をそれぞれ算出し、当該算出した距離の平均値を、誤差として算出してもよい。
【0011】
この態様によれば、誤差を算出する際の計算量を低減させることが可能になる。
【0012】
上記態様において、誤差算出部は、対象物点群データと基準点群データとにおいて対応する位置関係にある点同士の距離を算出し、当該算出した距離の平均値を、誤差として算出してもよい。
【0013】
この態様によれば、誤差の算出精度を高めることが可能になる。
【0014】
上記態様において、センシング開始位置は、センシング開始位置から対象物に向かってセンサが誤差に対応する距離を移動した場合であっても、センサを含む産業用ロボットが対象物に干渉しないことを基準にして設定されてもよい。
【0015】
この態様によれば、対象物が基準位置から誤差の分だけずれていても、センシング開始位置をその誤差に合わせてずらすことができるため、センサが誤差に対応する距離を移動したとしても、対象物に干渉することなく移動することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コストを抑えつつタクトタイムを短縮することができるロボット制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係るロボット制御装置を含むロボットシステムの構成を例示する図である。
図2】ロボット制御装置の機能的な構成を例示する図である。
図3】レーザセンサの視野範囲を説明するための模式図である。
図4】誤差とセンシング開始位置との対応関係の一例を説明するための図である。
図5】誤差に基づいて設定するセンシング開始位置を説明するための模式図である。
図6】誤差に基づいて設定するセンシング開始位置を説明するための模式図である。
図7】誤差に基づいて設定するセンシング開始位置を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。また、図面は模式的なものであるため、各構成要素の寸法や比率は実際のものとは相違する。
【0019】
図1は、実施形態に係るロボット制御装置1を含むロボットシステム100の構成を例示する図である。ロボットシステム100は、例えば、ロボット制御装置1と、マニピュレータ2と、レーザセンサ3と、撮影端末4と、を備える。各装置は、例えば、通信ケーブル等の有線や無線を含むネットワークを介して接続可能である。なお、ロボットシステム100に、ティーチングペンダントを含めてもよい。ティーチングペンダントは、作業者がマニピュレータ2の動作を教示する操作端末である。
【0020】
マニピュレータ2は、ロボット制御装置1において設定される施工条件に従ってアーク溶接を行う溶接ロボットである。マニピュレータ2は、例えば、工場の床面等に固定されるベース部材上に設けられる多関節アーム21と、多関節アーム21の先端に連結される溶接トーチ22とを有する。
【0021】
ロボット制御装置1は、マニピュレータ2の動作を制御する制御ユニットであり、例えば、制御部11、記憶部12、通信部13及び溶接電源部14を含む。
【0022】
制御部11は、例えば、記憶部12に記憶されている作業プログラムをプロセッサが実行することで、マニピュレータ2及び溶接電源部14を制御する。通信部13は、ネットワークを介して接続される各装置との通信を制御する。
【0023】
溶接電源部14は、例えば、溶接ワイヤの先端とワーク(対象物)Wとの間にアークを発生させるために、予め定められた溶接の施工条件に従って、溶接電流及び溶接電圧等をマニピュレータ2に供給する。溶接の施工条件には、例えば、溶接条件、溶接開始位置、溶接終了位置、溶接距離、溶接トーチの姿勢及び等のデータ項目が含まれる。溶接条件には、例えば、溶接電流、溶接電圧、溶接速度、ワイヤ送給速度及びワークの厚さ等のデータ項目が含まれる。溶接電源部14は、ロボット制御装置1と別個に備えることとしてもよい。
【0024】
レーザセンサ3は、マニピュレータ2の多関節アーム21の先端部に取り付けられ、ワークWまでの距離を測定する。レーザセンサ3は、例えば、走査型のレーザセンサであり、レーザをワークWに向けて発光する発光部と、ワークWで反射したレーザを受光する受光部とを備える。発光部により発光されたレーザは、ワークWで乱反射され、受光部で受光される。受光部は、例えば、CCDセンサにより構成され、視野範囲におけるレーザセンサ3からワークWまでの距離を測定する。
【0025】
センサ制御部31は、レーザセンサ3を制御するとともに、レーザセンサ3の測定値を含む情報をロボット制御装置1に送信するコントローラである。センサ制御部31は、例えば、溶接トーチ22の目標位置(目標座標)を求める過程で測定される測距データ(距離情報)に基づいて、ワークWの断面形状等を含む開先情報を算出する。センサ制御部31は、目標位置及び開先情報をロボット制御装置1に送信する。なお、センサ制御部31の機能は、ロボット制御装置1の制御部11の機能に含めることとしてもよい。
【0026】
撮影端末4は、例えば、3Dレーザスキャナ機能を有する3Dカメラであるが、3Dカメラ付きの可搬型端末であってもよい。可搬型端末には、例えば、タブレット端末、スマートフォン、携帯情報端末(PDA)、ノートPC(パーソナルコンピュータ)等の持ち運び可能な端末が含まれる。撮影端末4は、撮影対象となるワークWとの位置関係を固定するために、所定の位置、向き及び姿勢に固定して配置することが好ましい。
【0027】
3Dレーザスキャナ機能を実現するために、例えば、LiDAR(Light Detection and Ranging)センサ、ミリ波センサ、超音波センサ等を装備することができる。
【0028】
撮影端末制御部41は、撮影端末4を制御するとともに、撮影端末4の撮影画像データを含む情報をロボット制御装置1に送信するコントローラである。撮影端末制御部41は、例えば、撮影端末4により撮影されたワークWを含む三次元の画像データをロボット制御装置1に送信する。なお、撮影端末制御部41の機能は、ロボット制御装置1の制御部11の機能に含めることとしてもよい。
【0029】
図2は、本発明に係るロボット制御装置1の機能的な構成を例示する図である。ロボット制御装置1は、機能的な構成として、例えば、点群データ検出部111と、誤差算出部112と、センサ制御部113とを有する。
【0030】
点群データ検出部111は、撮影端末4により撮影されたワークWを含む三次元の画像データから、ワークWに対応する点群データを検出する。具体的に、点群データ検出部111は、三次元のカメラ座標系に基づいて、画像データに含まれるワークWに対応する三次元の座標データを検出し、この座標データをワーク点群データとする。三次元のカメラ座標系は、例えば、撮影端末4のレンズの中心を原点にして設定することができる。
【0031】
誤差算出部112は、点群データ検出部111により検出されたワーク点群データと、基準点群データとを比較して誤差を算出する。基準点群データは、基準となる位置、向き及び姿勢により配置された基準となるワークWに対応する点群データである。基準点群データは、基準となるワークWを用いて予め検出させ、記憶部12に記憶させておくことが好ましい。誤差の算出方法について、その一例を、以下(a)及び(b)に記載する。
【0032】
(a)基準点群データに基づいて近似平面を作成し、その近似平面とワーク点群データに含まれる各点との間の距離をそれぞれ算出し、その算出した距離の平均値を、誤差として算出する。近似平面とワーク点群データの各点との間の距離は、各点から近似平面に下した垂線の長さとして求めることができ、近似平面の方程式とワーク点群データの各点の座標とを用いて算出することができる。この方法は、下記(b)の方法に比べ、誤差を算出する際の計算量を減らすことができる。
【0033】
(b)ワーク点群データと基準点群データとにおいて対応する位置関係にある点同士の距離をそれぞれ算出し、その算出した距離の平均値を、誤差として算出する。この方法は、上記(a)の方法に比べて、計算量が増えるが、誤差の算出精度を高めることができる。
【0034】
上記(a)及び(b)で距離の平均値を算出する際に、距離の絶対値を用いることが好ましい。これにより、点群データの各点にばらつきが生じていても、そのばらつきを相殺することが可能となるため、誤差の算出精度を高めることが可能となる。
【0035】
なお、誤差の算出方法は、上記(a)及び(b)の方法に限られず、例えば、基準内の距離のうち、最大の距離を誤差として抽出してもよい。
【0036】
センサ制御部113は、ワークWに対するセンシングをレーザセンサ3に開始させるときに、誤差算出部112により算出された誤差に対応するセンシング開始位置から開始させる。
【0037】
センシング開始位置は、その開始位置からワークWに向かってレーザセンサ3が誤差に対応する距離を移動した場合であっても、レーザセンサ3を含むマニピュレータ2がワークWに干渉(接触)しないことを基準にして設定することが好ましい。これにより、ワークWが基準位置から誤差の分だけずれていても、センシング開始位置をその誤差に合わせてずらすことができるため、レーザセンサ3が誤差に対応する距離を移動したとしても、ワークWに干渉することなく移動することが可能となる。
【0038】
誤差とセンシング開始位置との対応関係は、レーザセンサ3の視野範囲に応じて設定することになる。例えば、図3に示すように、レーザセンサ3の視野範囲Vが、40~60[mm]である場合について説明する。この場合、レーザセンサ3とワークWとの間の距離が、視野範囲Vである40~60[mm]の範囲におさまっているときに、レーザセンサ3がワークWを検出できるようになる。
【0039】
図4を参照して、レーザセンサ3の視野範囲Vが、40~60[mm]である場合に、設定可能な誤差とセンシング開始位置との対応関係について説明する。同図に示すように、例えば、(1)誤差算出部112により算出された誤差が、0~5[mm]である場合には、センシング開始位置を、ワークWから50[mm]離れた位置に設定し、(2)誤差が、5~10[mm]である場合には、センシング開始位置を、ワークWから60[mm]離れた位置に設定し、(3)誤差が、10~20[mm]である場合には、センシング開始位置を、ワークWから70[mm]離れた位置に設定することができる。(1)から(3)について、図5から図7を参照して説明する。
【0040】
(1)誤差算出部112により算出された誤差が、0~5[mm]である場合
図5に示すように、レーザセンサ3のセンシング開始位置Sを、ワークWから50[mm]離れた位置に設定する。この場合、センシング開始位置Sに設定した50[mm]に対し、最大の誤差である5[mm]のずれが生じたとしても、実際のセンシング開始位置は、ワークWから45~55[mm]離れた位置におさまることになる。したがって、50[mm]に設定したセンシング開始位置Sからセンシングを開始すれば、最大の誤差である5[mm]のずれが生じても、レーザセンサ3の視野範囲Vである40~60[mm]の範囲内でワークWを検出することが可能となる。これにより、ワークWを検出できずに、レーザセンサ3を含むマニピュレータ2がワークWに干渉してしまうことを防止することが可能となる。
【0041】
(2)誤差算出部112により算出された誤差が、5~10[mm]である場合
図6に示すように、レーザセンサ3のセンシング開始位置を、ワークWから60[mm]離れた位置に設定する。この場合、センシング開始位置Sに設定した60[mm]に対し、最大の誤差である10[mm]のずれが生じたとしても、実際のセンシング開始位置は、ワークWから50~70[mm]離れた位置におさまることになる。したがって、60[mm]に設定したセンシング開始位置Sからセンシングを開始させ、ワークWに近づく方向に移動させながらセンシングを繰り返すことで、レーザセンサ3の視野範囲Vである40~60[mm]の範囲内でワークWを検出することが可能となる。
【0042】
(3)誤差算出部112により算出された誤差が、10~20[mm]である場合
図7に示すように、センシング開始位置を、ワークWから70[mm]離れた位置に設定する。この場合、センシング開始位置Sに設定した70[mm]に対し、最大の誤差である20[mm]のずれが生じたとしても、実際のセンシング開始位置は、ワークWから50~90[mm]離れた位置におさまることになる。したがって、70[mm]に設定したセンシング開始位置Sからセンシングを開始させ、ワークWに近づく方向に移動させながらセンシングを繰り返すことで、レーザセンサ3の視野範囲Vである40~60[mm]の範囲内でワークWを検出することが可能となる。
【0043】
誤差算出部112により算出された誤差が20[mm]を超える範囲でも、上記(1)から(3)と同様に、最大誤差のずれが生じたときであっても、実際のセンシング開始位置の最小値が、視野範囲Vにおさまるように、センシング開始位置Sを設定すればよい。これにより、ワークWを検出できずに、レーザセンサ3を含むマニピュレータ2がワークWに干渉してしまうことを防止することが可能となる。
【0044】
図2の説明に戻る。センサ制御部113は、ワークWに近づく方向にレーザセンサ3を移動させながらセンシングさせ、ワークWが検出された場合に、レーザセンサ3の移動を停止させる。これにより、センシングの目的が達成した場合に、レーザセンサ3を止めることができるため、ワークWへの干渉を確実に回避させることが可能になる。
【0045】
センサ制御部113は、レーザセンサ3がセンシング開始位置からワークWに向かって所定の距離を移動した場合に、レーザセンサ3の移動を停止させ、ワークWが検出できなかったことを示すエラーメッセージを出力する。エラーメッセージの出力先は、例えば、ディスプレイ等の表示装置であってもよいし、スピーカ等の拡声装置であってもよい。
【0046】
所定の距離は、例えば、誤差、センシング開始位置S及び視野範囲Vを勘案し、レーザセンサ3が視野範囲V内を移動することができ、かつ、レーザセンサ3を含むマニピュレータ2がワークWに干渉することがない範囲に設定することが好ましい。これにより、仮にセンシングを正常に行えない状況になったとしても、レーザセンサ3が所定の距離を移動したときに、レーザセンサ3を止めることができるため、ワークWへの干渉を確実に回避させることが可能になる。
【0047】
上述したように、実施形態に係るロボット制御装置1によれば、ワークWを含む三次元の画像データから検出されたワークWに対応する三次元のワーク点群データと、基準点群データとを比較して、基準位置からのずれを表す誤差を算出し、その誤差に対応するセンシング開始位置Sからレーザセンサ3にセンシングを開始させることができる。これにより、ワークWが基準位置から誤差の分だけずれていても、レーザセンサ3のセンシング開始位置Sもその誤差に合わせてずらすことが可能となるため、センシング作業の効率を高めることができる。また、撮影端末4は、三次元の画像データを撮影できるカメラであればよいため、高価な3Dカメラを用いる必要もない。
【0048】
それゆえ、実施形態に係るロボット制御装置1によれば、コストを抑えつつタクトタイムを短縮することが可能となる。
【0049】
[変形例]
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、他の様々な形で実施することができる。このため、上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。
【0050】
例えば、上述した実施形態では、撮影端末4を所定の位置、向き及び姿勢に固定して配置しているが、作業者が撮影端末4を所持し、任意の位置からワークWを撮影してもよい。この場合、撮影する位置に対応付けて基準点群データを予め記憶させておくことが好ましい。
【0051】
また、上述した実施形態では、本発明を溶接ロボットに適用する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、ピッキング等を行うハンドリングロボットを含む産業用ロボットに本発明を適用することができる。
【0052】
さらに、上述した実施形態では、レーザセンサを用いて説明しているが、レーザセンサ以外のセンサにも、本発明を適用することができる。例えば、タッチセンサを用いてもよい。タッチセンサを用いた場合でも、誤差に応じてタッチセンサのセンシング開始位置を変更させることができる。
【符号の説明】
【0053】
1…ロボット制御装置、2…マニピュレータ、3…レーザセンサ、4…撮影端末、11…制御部、12…記憶部、13…通信部、14…溶接電源部、21…多関節アーム、22…溶接トーチ、31…センサ制御部、41…撮影端末制御部、100…ロボットシステム、111…点群データ検出部、112…誤差算出部、113…センサ制御部、S…センシング開始位置、V…視野範囲、W…ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7