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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108416
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】舗装構造物
(51)【国際特許分類】
   E01C 5/22 20060101AFI20230728BHJP
   H10N 15/00 20230101ALI20230728BHJP
【FI】
E01C5/22
H01L37/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009534
(22)【出願日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(71)【出願人】
【識別番号】390002185
【氏名又は名称】大成ロテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】守友 浩
(72)【発明者】
【氏名】島崎 勝
(72)【発明者】
【氏名】平川 一成
(72)【発明者】
【氏名】岡島 穂高
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AA05
2D051AB03
2D051DA02
2D051DA16
2D051DB01
(57)【要約】
【課題】施工性及び耐久性に優れ、設備インフラ等の環境から持続的に電力を取り出すことができる舗装構造物を提供する。
【解決手段】舗装構造物1は、路盤層2及び路盤層2に支持される路面層3が設置される舗装構造物であって、路盤層2は、空隙を有する単位構造体81を重ね合わせて形成される積層部80と、箱状の装置部10と、を備え、装置部10は、電極の温度変化によって発電する三次電池部30及び電極間の温度差によって発電する熱電変換セル部20の少なくとも何れかを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路盤層及び前記路盤層に支持される路面層が設置される舗装構造物であって、
前記路盤層は、
空隙を有する単位構造体を重ね合わせて形成される積層部と、
箱状の装置部と、を備え、
前記装置部は、電極の温度変化によって発電する三次電池部及び電極間の温度差によって発電する熱電変換セル部の少なくとも何れかを有する舗装構造物。
【請求項2】
前記装置部は、前記三次電池部を有し、
一つの先端部及び一つの基端部を有し、前記先端部及び前記基端部の間で熱の伝導路となる熱伝導部材を複数備え、
前記三次電池部に備わる電極に前記熱伝導部材の基端部を接続し、
前記三次電池部の電極に接続されている前記基端部に対応する前記先端部は、前記路面層に配置されている請求項1に記載の舗装構造物。
【請求項3】
前記装置部は、前記熱電変換セル部を有し、
一つの先端部及び一つの基端部を有し、前記先端部及び前記基端部の間で熱の伝導路となる熱伝導部材を複数備え、
前記熱電変換セル部に備わる電極に前記熱伝導部材の基端部を接続し、
一つの前記熱電変換セル部の異なる電極に接続されているそれぞれの前記基端部に対応する前記先端部は、前記路面層における異なる深さに配置されている請求項1又は請求項2に記載の舗装構造物。
【請求項4】
前記路面層は、光によって発電する光電変換部を有する請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の舗装構造物。
【請求項5】
前記路面層は、板状の強化プラスチックである請求項4に記載の舗装構造物。
【請求項6】
前記装置部は、発電した電気を蓄える蓄電部を有する請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の舗装構造物。
【請求項7】
前記装置部は、前記蓄電部の充放電を制御すると共に、電力を調整して供給する制御部を有する請求項6に記載の舗装構造物。
【請求項8】
前記路面層の上表面は、骨材及び前記骨材を保持する結合材で被覆されている請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載の舗装構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備インフラ等の環境における温度を利用する発電装置を備え、電力を供給することができる舗装構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、設備インフラ等には照明や信号といった電力を必要とする付帯施設がある。例えば道路では、昨今の高度道路交通システム(ITS)の取り組みにおいて、各種機器を相互に連携させる技術の開発が進められており、道路周辺に設けられる各種機器も電力を必要としている。特許文献1には、これらの付帯施設や各種機器に電力を供給するため、温度差によって発電する装置を備える舗装路が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-264558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の発電装置は、Bi-Te系等の熱電変換素子を使用している。薄い部材である熱電変換素子は路面と平行に設置され、熱電変換素子の上方及び下方に、多数の板状の熱伝導部材が設けられている。多数の板状の部材が突出する装置を埋設するためには、施工において特別な手順や工程が必要となり、広い範囲に施工する場合には、施工に要する時間及び費用が問題となることが予想される。また、板状の熱伝導部材は、交通荷重に対する耐久性において不利となることが予想される。そして、温度差を利用するだけでなく、他の発電手段を併用できれば、発電手段が相互に補い合って、電力供給の安定化を図ることができる。
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、施工性及び耐久性に優れ、設備インフラ等の環境から持続的に電力を取り出すことができる舗装構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決するために、本発明に係る舗装構造物は、路盤層及び前記路盤層に支持される路面層が設置される舗装構造物であって、前記路盤層は、空隙を有する単位構造体を重ね合わせて形成される積層部と、箱状の装置部と、を備え、前記装置部は、電極の温度変化によって発電する三次電池部及び電極間の温度差によって発電する熱電変換セル部の少なくとも何れかを有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、施工性及び耐久性に優れ、設備インフラ等の環境から持続的に電力を取り出すことができる舗装構造物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る舗装構造物の設置例を示す概略図である。
図2】本発明に係る舗装構造物の概略を例示する断面図である。
図3A】本発明に係る熱電変換セルの概略を例示する斜視図である。
図3B】熱電変換セルの電極の変形例を例示する斜視図である。
図4】本発明に係る三次電池セルの概略を例示する斜視図である。
図5】本発明に係る装置部の構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明に係る舗装構造物1は、歩道や車道等の設備インフラをはじめ、公園、商業施設、駅前広場、港湾施設等の舗装に広く使用することができる。
図1に一例を示すように、舗装構造物1は、路盤層2及び路面層3を備え、路面層3の上面が地面200の高さで地表に露出するように、地盤100の上方に設置されている。舗装構造物1と地盤100との間に基盤層4が設けられてもよい。
【0009】
(路盤層)
路盤層2は、路面層3を支持する構造体である。図2に一例を示すように、路盤層2は、装置部10及び積層部80を備え、積層部80によって路面層3を支持すると共に、装置部10を設置する空間を確保している。
【0010】
(装置部)
装置部10は、発電等に係る電気的装置を内部に有する箱状の部材である。装置部10は、内部への水等の浸入を防ぐ防水性能を有し、例えば大量の雨等で舗装構造物1が水没した場合でも、内部の電気的装置の故障を抑えることができる。また、装置部10は、外部からの衝撃等から内部の電気的装置を保護することができる。
装置部10は、熱電変換セル部20と、三次電池部30と、蓄電部40と、制御部50と、を有している。
【0011】
(熱電変換セル部)
熱電変換セル部20は、溶液を用いる熱電変換セル21を有し、熱電変換セル21の電極間の温度差によって発電することができる装置である。溶液は、所定の電解質溶液である。電解質溶液は、水や有機化合物を溶媒としている。
熱電変換セル21は、例えば酸化還元反応における平衡電位の違いを利用して発電することができる。図3Aに一例を示すように、熱電変換セル21は、電解質溶液25が充填された筐体26の中に、電極22が互いに離隔して配置されている。ここでは、熱電変換セル21の両端に2枚の電極22A、22Bが離隔して配置されている。電極22A、22Bの表面には所定の材料からなる膜231、232が形成されている。膜231、232は、同じ材料とすることができる。電極22A、22Bには、電線75及び後記する熱伝導部材70が接続されている。
熱電変換セル21は、電極間の温度差によって起電力を生じる。熱電変換セル21の起電力は、電極22A、22B間の温度差が、例えば40℃程度であれば、60mV程度とすることができる。熱電変換セル部20は、直列接続される複数の熱電変換セル21を有することができる。直列する個数は特に制限されず、例えば20個から30個の熱電変換セル21を直列接続することで、1.5V程度の起電力とすることができる。なお、熱電変換セル21は並列接続してもよく、並列接続と直列接続とを組み合わせてもよい。
【0012】
熱電変換セル部20は、電極22A、22B間の温度差が大きいほど発電量を大きくすることができる。電極間に設けられる材料の熱伝導率が大きいと、温度差は生じにくい。例えば、半導体材料を用いる熱電変換素子では、半導体材料の熱伝導率が例えば数百W/m・Kと大きいため、電極間に温度差が生じにくい。これに対し、熱電変換セル部20に用いる溶液の材料となる水は0.6W/m・K、有機溶媒は0.2~0.3W/m・Kであり、熱伝導率は一般的な道路の材料であるアスファルトやコンクリートの1~2W/m・Kよりも小さい。舗装構造物1は、溶液を用いる熱電変換セル部20を有することで、熱電変換セル21における熱伝導率を小さくすることができ、舗装構造物1が設置される環境等に起因する温度差の効果的な利用を図ることができる。
【0013】
(熱伝導部材)
熱伝導部材70は、一端を基端部71、他端を先端部72とし、基端部71と先端部72との間で熱の伝導路となる部材である。熱伝導部材70は、例えば銅やアルミニウム等の熱伝導率の大きい金属で断面積の大きい線材を形成し、グラスウール等の断熱材で覆ったものとすることができる。また、熱伝導部材70は、粉体状や繊維状に加工した熱伝導率の大きい物質を分散させた樹脂等で形成することができる。
熱電変換セル21に接続される熱伝導部材70では、基端部71は、電極22A、22Bに接続されている。先端部72は、後記する路面層3に配置されている。電極22Aに基端部71を接続する熱伝導部材70の先端部72と、電極22Bに基端部71を接続する熱伝導部材70の先端部72とは、温度差が大きくなる位置に配置するのが好ましい。
基端部71は、例えば、電極22A及び電極22Bに隣接するように、熱伝導率の大きい材料で形成される壁を設け、その壁に接続してもよい。
【0014】
(三次電池部)
三次電池部30は、溶液を用いる三次電池セル31を有し、三次電池セル31の電極における温度変化によって発電することができる装置である。
三次電池セル31は、例えば電極における電極電位の温度係数の違いを利用して発電することができる。図4に一例を示すように、三次電池セル31は、電解質溶液35が充填された筐体36の中に、電極32と、電極32同士を離隔させるセパレータ34とを配置して構成されている。ここでは、三次電池セル31の両端に2枚の電極32A、32Bが離隔して配置されている。電極32A、32Bの表面には所定の材料からなる膜331、332が形成されている。膜331と膜332とは、異なる材料で形成されている。
【0015】
三次電池セル31は、電極32の温度が同じであっても、温度変化があることで起電力を生じる。三次電池セル31の起電力は、電極32間に温度差がない状態で、例えば30℃の温度変化をした場合、40mV程度とすることができる。
三次電池部30は、直列接続される複数の三次電池セル31を有することができる。三次電池セル31の接続は、電線75によって行うことができる。直列接続は、例えば、膜332を有する電極32Bが、次の三次電池セル31の膜331を有する電極32Aに接続されるようにする。直列する個数は特に制限されず、例えば20個から30個の三次電池セル31を直列接続することで、1V程度の起電力とすることができる。なお、三次電池セル31は並列接続してもよく、並列接続と直列接続とを組み合わせてもよい。
【0016】
三次電池セル31の両端に位置する電極32A、32Bには、電線75及び熱伝導部材70が接続されている。
三次電池セル31に接続される熱伝導部材70では、基端部71は、電極32A、32Bに接続されている。先端部72は、路面層3に配置されている。電極32Aに基端部71を接続する熱伝導部材70の先端部72と、電極32Bに基端部71を接続する熱伝導部材70の先端部72とは、絶縁されていれば、同じ温度の位置に配置することができる。
基端部71は、例えば、筐体36全体を熱伝導率の大きい材料で覆う被覆体を設け、その被覆体に接続してもよい。
【0017】
熱電変換セル21及び三次電池セル31は、筐体26、36と電解質溶液25、35と電極22、32とで構成することができるため、例えば太陽光パネル等と比較して低コストで製造することができ、簡単な構造のため故障が少ない。また、筐体26、36の強度を高めることによって耐荷重性能の要求に応えることができる。
熱電変換セル21及び三次電池セル31は、例えば、コンクリートやプラスチックの筐体26、36を施工現場に設置して、施工現場で電解質溶液25、35及び電極22、32を筐体26、36に入れるという方法で施工することができ、容易に舗装体に埋設することができる。
【0018】
(蓄電部)
蓄電部40は、充電及び放電が可能な蓄電池を有する装置である。蓄電池は、例えばリチウムイオン電池等とすることができる。蓄電部40は、熱電変換セル部20、三次電池部30、後記する光電変換部60が発電する電気を蓄えることができる。蓄電部40の充放電は、制御部50によって制御されている。
【0019】
(制御部)
制御部50は、熱電変換セル部20、三次電池部30、後記する光電変換部60が発電する電気を受け取り、蓄電部40の充放電を制御する装置である。また、制御部50は、電力を調整して装置部10の外部に出力することができる。図5に一例を示すように、制御部50は、熱電変換セル部20、三次電池部30、光電変換部60及び蓄電部40と接続されており、電力出力端子POUTを有している。
制御部50は、熱電変換セル部20、三次電池部30及び光電変換部60のそれぞれに対し、発電した電気を受け取るかどうかを選択することができ、また、受け取る量を調整することができる。
また、制御部50は、蓄電部40の充放電を制御する。余剰の電力は、過充電とならないように調整しながら蓄電部40に送って充電し、出力する電力が不足する場合には、蓄電部40に放電させて補うことができる。
【0020】
(積層部)
積層部80は、路面層3を支持する部材である。積層部80は、空隙を有する単位構造体81を重ね合わせて形成されている。単位構造体81は、各層を90度ずつ回転させて重ね合わせている。また、単位構造体81は、例えば上面に有する凸部を下面に有する凹部と噛み合うように設置することで、層間の滑りを抑えている。積層部80は、単位構造体81の層数を調整することで、路盤層2の厚さに合わせて形成することができる。単位構造体81の材料は、例えばプラスチックとすることができる。
積層部80は、単位構造体81が空隙を有することで、浸透した雨水を路盤層2に貯留することができる。また、積層部80は、舗装構造物1上を通行する人や車等の交通荷重に耐える十分な強度を有しており、路盤層2に装置部10を設置するための空間を確保することができる。
【0021】
(路面層)
路面層3は、舗装構造物1における路面となる層である。路面層3は、板状の部材である温度差発現板65を並べて形成され、温度差発現板65の内部に、光によって発電する光電変換部60を有している。
【0022】
(光電変換部)
光電変換部60は、直列及び並列に接続されている太陽電池セルを有し、光によって発電することができる装置である。太陽電池セルは、例えば単結晶又は多結晶のシリコンとすることができる。単結晶又は多結晶のシリコンでは、可視光に近い赤外線領域である約1.1μmよりも短い波長の光を発電に利用することができる。
【0023】
(温度差発現板)
温度差発現板65は、深さ方向に温度差を発現させることができる板状の部材である。温度差発現板65の上表面側には、板状の面方向に広がるように光電変換部60が配置されている。
熱電変換セル21の2種類の電極からの熱伝導部材70の先端部72は、例えば一方を温度差発現板65の下面に、他方を温度差発現板65における厚さ方向の中心付近に配置することで、熱電変換セル21の2種類の電極の温度差を大きくすることができる。
三次電池セル31の熱電変換セル21の2種類の電極からの熱伝導部材70の先端部72は、例えば温度差発現板65の下面に配置することで、熱伝導部材70の長さを短くして、三次電池セル31の電極の温度変化を効果的に大きくすることができる。また、温度差発現板65の上面に配置することで、路面付近の温度変化を利用することができる。
温度差発現板65の光電変換部60よりも上表面側は、光電変換部60が発電に利用できる波長帯の光を透過する材料で形成されている。温度差発現板65の材料は、板状の強化プラスチックとするのが好ましい。温度差発現板65の厚さは、例えば5cm程度とすることができる。
路面層3の上表面となる温度差発現板65の上表面は、歩行者や車等の滑りを抑える加工がされている。滑りを抑える加工は、例えば、上表面に骨材を散布して凹凸を形成し、骨材を保持する結合材で上表面を覆ってもよく、摩擦係数の大きい樹脂で上表面をコーティングしてもよい。
【0024】
本発明に係る舗装構造物1は、装置部10が、電極の温度変化によって発電する三次電池部30及び電極間の温度差によって発電する熱電変換セル部20の少なくとも何れかを有する。三次電池部30は、温度が上昇していく日中及び温度が低下していく夜間において、舗装構造物1に生じる温度変化を利用して発電することができ、熱電変換セル部20は、例えば舗装構造物1の深さ方向に生じる温度差を利用して発電することができる。このため、舗装構造物1は、設備インフラ等の環境から持続的に電力を取り出すことができる。また、例えば太陽光発電の日射量や日照時間が確保できない場合でも、設備インフラ等の環境における温度変化や温度差を有効に利用して発電することができる。
舗装構造物1は、積層部80が単位構造体81を重ね合わせて形成されることで、交通荷重に対する十分な強度を有しながら、舗装作業の効率を高め、施工性の向上を図ることができる。舗装構造物1は、積層部80が空隙を有することで、雨水を路盤層2に貯留して、路面における水溜りを減らすことができる。また、箱状の装置部10は、内部に発電等に係る電気的装置を設置することができ、雨水や衝撃等から電気的装置を保護することができる。
【0025】
舗装構造物1は、熱の伝導路となる熱伝導部材70の基端部71が、三次電池部30に備わる電極に接続され、先端部72が路面層3に配置されることで、三次電池部30の電極が受け取る温度変化を大きくすることができ、発電量を大きくすることができる。
舗装構造物1は、熱の伝導路となる熱伝導部材70の基端部71が、熱電変換セル部20の2種類の電極にそれぞれ接続され、それぞれの基端部71に対応する先端部72が路面層3における異なる深さに配置されることで、熱電変換セル部20の電極が受け取る温度差を大きくすることができ、発電量を大きくすることができる。
【0026】
舗装構造物1は、路面層3が光によって発電する光電変換部60を有することで、例えば道路等の広い面積を有効に活用することができる。
舗装構造物1は、路面層3が板状の強化プラスチックであることで、例えば工場等で製造することができ、光電変換部60を路面層3内に予め設けることができる。また、板状の強化プラスチックを並べることで路面層3とすることができ、路面層3の強度を確保しながら、施工現場における作業の効率化を図ることができる。
舗装構造物1は、装置部10が蓄電部40を有することで、熱電変換セル部20、三次電池部30及び光電変換部60の発電量が大きい時間帯に蓄電部40に充電し、発電量が小さい時間帯に蓄電部40を放電させて電力を供給することができ、24時間安定した自然エネルギーとして電力を供給することができる。
【0027】
舗装構造物1は、装置部10の制御部50が蓄電部40の充放電を制御することで、過充電を抑え、安定した電力の供給を図ることができる。また、制御部50が電力を調整して供給することで、照明や信号、監視カメラ等の道路付帯設備や、電子機器、重電機、温度センサ等の機器に合わせて電力を供給することができ、環境から収穫した電力を汎用的に活用することができる。
舗装構造物1は、路面層3の上表面が、骨材及び骨材を保持する結合材で被覆されていることで、歩行者や車等の滑りを抑え、例えば歩行者が通行する場所であっても、歩行者の安全及び円滑な利用を図ることができる。
【0028】
(変形例)
次に、熱電変換セルの変形例21Sについて説明する。図3Bに一例を示すように、変形例21Sは、電極22Aの外側の面に突起28Aが形成され、突起28Aの先端部が筐体26から突出している点が熱電変換セル21と異なる。その他の構成は、熱電変換セル21と共通する。なお、電極22Bの外側の面には、突起28Aと同様に突起28Bが形成され、突起28Bの先端部は筐体26から突出している。
突起28A、28Bの材料は、金属でもよく、粉体状や繊維状に加工した熱伝導率の大きい物質を分散させた樹脂等でもよい。
変形例21Sは、電極22A、22Bの突起28A、28Bによって、周囲との熱接触を向上させて電極22A、22B間の温度差を大きくし、発電量の増加を図ることができる。
【0029】
なお、装置部10は、熱電変換セル部20及び三次電池部30の何れか一方のみを有してもよく、両方を有してもよい。装置部10を複数設け、複数の装置部10ごとに電気的装置の組み合わせが異なっていてもよい。複数設けた装置部10の熱電変換セル部20、三次電池部30及び蓄電部40は、1つの制御部50によって、又は複数の制御部50を連携させて制御することができる。
制御部50は、例えば蓄電部40に外部から充電することができる電力入力端子を備えていてもよい。
制御部50は、例えば外部から制御信号や温度情報等を入力することができる信号入力端子を備えていてもよい。例えば、熱電変換セル部20、三次電池部30及び光電変換部60の発電量等をモニタすることができる信号出力端子を備えていてもよい。例えば、舗装構造物1が備える温度センサから入力される温度情報から発電量をシミュレートし、シミュレート結果が受け取る発電量と大きく異なる場合には、信号出力端子からアラーム信号を発するようにしてもよい。
【0030】
熱電変換セル21、21Sは、電極22A、22Bが舗装構造物1における深さ方向に離隔する向きに設置してもよい。これにより、舗装構造物1の深さ方向の温度差を効率よく熱電変換セル21、21Sの電極に伝えることができる。さらに、熱電変換セル21、21Sの上下に熱伝導率の大きい材料を配置するのも好ましい。これにより、熱電変換セル21、21Sの位置に温度差を集中させることができる。
熱電変換セル部20は、路面層3に温度差発現板65を配置しない領域を設けて設置してもよい。熱電変換セル21、21Sは、熱伝導率の小さいデバイスであるため、路面層3の位置に生じている温度差を活かすことができる。また、筐体26の強度は、必要に応じて高めることができ、路面層3に設置された場合でも、交通荷重等に対する十分な耐久性を実現することができる。
装置部10の形状は、各種の柱体状や球体状であってもよく、電気的装置を設置できる空間を内部に有していればよい。
装置部10は、舗装構造物1上を通行する人や車等の交通荷重に耐える強度を有するようにすることができる。箱状の装置部10の強度を向上させて、積層部80と共に路面層3を支持するようにしてもよい。これにより、舗装構造物1は、装置部10を設置する場所の自由度を高めることができ、例えば路盤層2に埋設管が併設される等、路盤層2の空間に余裕がない場合であっても、装置部10を設置する空間の確保を容易にすることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 舗装構造物
2 路盤層
3 路面層
4 基盤層
10 装置部
20 熱電変換セル部
21 熱電変換セル
22 電極
231 膜
232 膜
25 電解質溶液
26 筐体
30 三次電池部
31 三次電池セル
32 電極
35 電解質溶液
40 蓄電部
50 制御部
60 光電変換部
65 温度差発現板
70 熱伝導部材
71 基端部(熱伝導部材)
72 先端部(熱伝導部材)
80 積層部
100 地盤
200 地面
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5