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特開2023-108418半導体加工用シート、半導体装置の製造方法、および、半導体加工用シートの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108418
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】半導体加工用シート、半導体装置の製造方法、および、半導体加工用シートの使用
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20230728BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230728BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20230728BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20230728BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20230728BHJP
   C08L 75/16 20060101ALI20230728BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20230728BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
H01L21/78 L
H01L21/78 W
C09J7/38
C09J7/20
C09J133/00
C08L33/04
C08L75/16
C08L71/02
C08K5/053
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009540
(22)【出願日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100176407
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 理啓
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 周平
(72)【発明者】
【氏名】山口 征太郎
【テーマコード(参考)】
4J002
4J004
4J040
5F063
【Fターム(参考)】
4J002BG021
4J002CD004
4J002CD202
4J002CF272
4J002CF283
4J002CH023
4J002CK022
4J002EC046
4J002EC056
4J002EC077
4J002EH107
4J002EN007
4J002EQ027
4J002ER007
4J002EU187
4J002EU227
4J002FD144
4J002FD147
4J002GQ00
4J002GQ01
4J004AA10
4J004AB01
4J004CA03
4J004CA04
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC02
4J004FA05
4J040DF001
4J040HB14
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA13
4J040KA16
4J040LA01
4J040NA20
5F063AA05
5F063AA31
5F063AA33
5F063AA46
5F063BA50
5F063EE22
(57)【要約】
【課題】ダイシングを行わない場合であっても、半導体チップ同士を十分に離間させることができ、半導体チップの良好なピックアップが可能な半導体加工用シートを提供する。
【解決手段】基材と、前記基材における片面側に積層された粘着剤層とを備える半導体加工用シートであって、前記粘着剤層が、活性エネルギー線硬化性を有しないアクリル系共重合体と、二重結合を有する官能基を4個以下備えるとともに重量平均分子量が5000以上である活性エネルギー線硬化性成分と、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコールおよびそれらの誘導体の少なくとも1種であるアルキレングリコール系成分とを含有する粘着剤組成物から形成されたものである半導体加工用シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材における片面側に積層された粘着剤層とを備える半導体加工用シートであって、
前記粘着剤層が、
活性エネルギー線硬化性を有しないアクリル系共重合体と、
二重結合を有する官能基を4個以下備えるとともに重量平均分子量が5000以上である活性エネルギー線硬化性成分と、
アルキレングリコール、ポリアルキレングリコールおよびそれらの誘導体の少なくとも1種であるアルキレングリコール系成分と
を含有する粘着剤組成物から形成されたものである
ことを特徴とする半導体加工用シート。
【請求項2】
前記活性エネルギー線硬化性成分は、多官能アクリレートのオリゴマーまたは変性物であることを特徴とする請求項1に記載の半導体加工用シート。
【請求項3】
前記活性エネルギー線硬化性成分の重量平均分子量は、10万以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体加工用シート。
【請求項4】
前記半導体加工用シートは、
前記粘着剤層における前記基材と反対の面に複数の半導体チップを積層する積層工程と、
前記半導体チップが積層された前記半導体加工用シートを延伸させて、前記半導体チップ同士を離間させるエキスパンド工程と、
前記半導体チップ同士が離間した状態で、前記半導体チップを個々にピックアップするピックアップ工程と
を備える半導体加工方法に使用されることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体加工用シート。
【請求項5】
前記積層工程における前記半導体チップの積層は、ダイシングシート上にて半導体ウエハまたは半導体パッケージをダイシングすることで得られた複数の半導体チップを、当該ダイシングシートから前記半導体加工用シートに転写することで行われることを特徴とする請求項4に記載の半導体加工用シート。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の半導体加工用シートにおける前記粘着剤層側の面に複数の半導体チップを積層する積層工程と、
前記半導体チップが積層された前記半導体加工用シートを延伸させて、前記半導体チップ同士を離間させるエキスパンド工程と、
前記半導体チップ同士が離間した状態で、前記半導体チップを個々にピックアップするピックアップ工程と
を備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の半導体加工用シートの半導体加工方法のための使用であって、
前記半導体加工方法は、
前記粘着剤層における前記基材と反対の面に複数の半導体チップを積層する積層工程と、
前記半導体チップが積層された前記半導体加工用シートを延伸させて、前記半導体チップ同士を離間させるエキスパンド工程と、
前記半導体チップ同士が離間した状態で、前記半導体チップを個々にピックアップするピックアップ工程と
を備えることを特徴とする使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の加工に好適に使用することができる半導体加工用シート、半導体装置の製造方法、および、半導体加工用シートの使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコン、ガリウムヒ素などの半導体ウエハおよび各種パッケージ類は、大径の状態で製造され、これらは素子小片(半導体チップ)に切断分離(ダイシング)されるとともに個々に剥離(ピックアップ)された後に、次の工程であるマウント工程に移される。この際、半導体ウエハ等の被加工物は、基材および粘着剤層を備える半導体加工用シートに貼着された状態で、バックグラインド、ダイシング、洗浄、乾燥、エキスパンド、ピックアップ、マウンティング等の加工が行われる。特許文献1および2には、このような半導体加工用シートの例が開示されている。
【0003】
上記ピックアップを行う工程では、ピックアップしようとする半導体チップが、それと隣接した半導体チップと衝突することを抑制するため、一般的に、半導体加工用シートを延伸(エキスパンド)させて、半導体チップ同士を離間させることが行われる。ピックアップ時における半導体チップ同士の衝突が生じると、ピックアップに失敗するだけでなく、半導体チップの破損が生じる可能性もあるため、このような衝突の発生を十分に抑制することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5027321号
【特許文献2】特開2014-120624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した、特許文献1に開示される半導体加工用シートは、ダイシングの際におけるチップ飛びを抑制することを課題の1つとするものである。すなわち、特許文献1に開示される半導体加工用シートは、ダイシングに使用されることが前提となっている。また、特許文献2に開示される半導体加工用シートは、ダイシングに使用されるダイシングシートである。
【0006】
上述のようなダイシングに使用される半導体加工用シートでは、通常、ダイシングの際に、半導体ウエハとともに粘着剤層や基材の一部も切断される。これらの半導体加工用シートでは、ダイシング後にエキスパンドさせた場合、粘着剤層が分断され、基材にも切れ込みが入っていることに起因し、十分にエキスパンドすることができる。
【0007】
一方、ダイシングを行うことなく、半導体加工用シートのエキスパンドを行おうとすると、粘着剤層および基材が当初のまま一体となっているため、十分なエキスパンドを行うことができず、半導体チップ同士を十分に離間させることができず、結果として、ピックアップ不良となるという問題があった。
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、ダイシングを行わない場合であっても、半導体チップ同士を十分に離間させることができ、半導体チップの良好なピックアップが可能な半導体加工用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、基材と、前記基材における片面側に積層された粘着剤層とを備える半導体加工用シートであって、前記粘着剤層が、活性エネルギー線硬化性を有しないアクリル系共重合体と、二重結合を有する官能基を4個以下備えるとともに重量平均分子量が5000以上である活性エネルギー線硬化性成分と、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコールおよびそれらの誘導体の少なくとも1種であるアルキレングリコール系成分とを含有する粘着剤組成物から形成されたものであることを特徴とする半導体加工用シートを提供する(発明1)。
【0010】
上記発明(発明1)に係る半導体加工用シートは、粘着剤層が上述した粘着剤組成物から形成されていることにより、十分なエキスパンドが可能となり、半導体チップを良好にピックアップすることが可能となる。特に、粘着剤組成物が上記アクリル系共重合体と上記活性エネルギー線硬化性成分とを含有したものであることで、活性エネルギー線硬化後の粘着剤層内において、硬化した領域と硬化していない領域とが適度に分布した状態となり、それにより、粘着剤層が良好にエキスパンドし易いものとなる。さらに、上記アルキレングリコール系成分が、活性エネルギー線硬化による半導体チップに対する粘着剤層の粘着力の低下を促すとともに、エキスパンド性の向上にも寄与する。これらの結果、上記半導体加工用シートによれば、良好なピックアップが可能となる。
【0011】
上記発明(発明1)において、前記活性エネルギー線硬化性成分は、多官能アクリレートのオリゴマーまたは変性物であることが好ましい(発明2)。
【0012】
上記発明(発明1,2)において、前記活性エネルギー線硬化性成分の重量平均分子量は、10万以下であることが好ましい(発明3)。
【0013】
上記発明(発明1~3)において、前記半導体加工用シートは、前記粘着剤層における前記基材と反対の面に複数の半導体チップを積層する積層工程と、前記半導体チップが積層された前記半導体加工用シートを延伸させて、前記半導体チップ同士を離間させるエキスパンド工程と、前記半導体チップ同士が離間した状態で、前記半導体チップを個々にピックアップするピックアップ工程とを備える半導体加工方法に使用されることが好ましい(発明4)。
【0014】
上記発明(発明4)において、前記積層工程における前記半導体チップの積層は、ダイシングシート上にて半導体ウエハまたは半導体パッケージをダイシングすることで得られた複数の半導体チップを、当該ダイシングシートから前記半導体加工用シートに転写することで行われることが好ましい(発明5)。
【0015】
第2に本発明は、前記半導体加工用シート(発明1~5)における前記粘着剤層側の面に複数の半導体チップを積層する積層工程と、前記半導体チップが積層された前記半導体加工用シートを延伸させて、前記半導体チップ同士を離間させるエキスパンド工程と、前記半導体チップ同士が離間した状態で、前記半導体チップを個々にピックアップするピックアップ工程とを備えることを特徴とする半導体装置の製造方法を提供する(発明6)。
【0016】
第3に本発明は、前記半導体加工用シート(発明1~5)の半導体加工方法のための使用であって、前記半導体加工方法は、前記粘着剤層における前記基材と反対の面に複数の半導体チップを積層する積層工程と、前記半導体チップが積層された前記半導体加工用シートを延伸させて、前記半導体チップ同士を離間させるエキスパンド工程と、前記半導体チップ同士が離間した状態で、前記半導体チップを個々にピックアップするピックアップ工程とを備えることを特徴とする使用を提供する(発明7)。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る半導体加工用シートは、ダイシングを行わない場合であっても、半導体チップ同士を十分に離間させることができ、半導体チップの良好なピックアップが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係る半導体加工用シートは、基材と、当該基材における片面側に積層された粘着剤層とを備える。
【0019】
1.半導体加工用シートの構成部材
(1)基材
本実施形態に係る半導体加工用シートにおいて、基材は、半導体加工用シートの使用の際に所望の機能を発揮するものである限り、特に限定されない。なお、本実施形態における粘着剤層は、後述する通り活性エネルギー線硬化性を有するものであるため、粘着剤層に対して良好に活性エネルギー線を到達させ易くなる観点から、基材は、活性エネルギー線に対して良好な透過性を有することが好ましい。
【0020】
本実施形態における基材は、樹脂系の材料を主材とする樹脂フィルムであることが好ましく、その具体例としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系フィルム;エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム;エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体フィルム、その他のエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム等のエチレン系共重合フィルム;ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、エチレン-ノルボルネン共重合体フィルム、ノルボルネン樹脂フィルム等のポリオレフィン系フィルム;ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム等のポリ塩化ビニル系フィルム;(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム;ポリウレタンフィルム;ポリイミドフィルム;ポリスチレンフィルム;ポリカーボネートフィルム;フッ素樹脂フィルムなどが挙げられる。ポリエチレンフィルムの例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム等が挙げられる。また、これらの架橋フィルム、アイオノマーフィルムといった変性フィルムも用いられる。また、基材は、上述したフィルムが複数積層されてなる積層フィルムであってもよい。この積層フィルムにおいて、各層を構成する材料は同種であってもよく、異種であってもよい。なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語についても同様である。さらに、「共重合体」には、単一のモノマーから成る「重合体」の概念も含まれるものとする。
【0021】
また、本実施形態における基材としては、表面層、中間層および裏面層という3層を少なくとも備えるものであることも好ましい。この場合、各層の材料としては、それらの層を形成することができるものである限り特に限定されず、例えば樹脂を使用することが好ましい。当該樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂および熱可塑性エラストマーの少なくとも一種を使用することが好ましい。なお、表面層と裏面層とは、異なる組成であってもよく、全く同一の組成であってもよい。
【0022】
本明細書において、ポリオレフィン系樹脂とは、オレフィンを単量体とするホモポリマーもしくはコポリマー、またはオレフィンとオレフィン以外の分子とを単量体とするコポリマーであって重合後の樹脂におけるオレフィン単位に基づく部分の質量比率が1.0質量%以上である樹脂をいう。当該ポリオレフィン系樹脂の例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。上記ポリプリピレンの例としては、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン等が挙げられる。上記ポリエチレンの例としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0023】
熱可塑性エラストマーとしては、上記ポリオレフィン系樹脂以外のものであって、基材の形成を可能とするものである限り、特に限定されない。熱可塑性エラストマーの例としては、例えば、オレフィン系エラストマー、ゴムエラストマー、ウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー等が挙げられる。
【0024】
上記オレフィン系エラストマーの例としては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体、ブテン・α-オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・α-オレフィン共重合体、エチレン・ブテン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・ブテン・α-オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・ブテン・α-オレフィン共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
また、上記スチレン系エラストマーの例としては、スチレン-共役ジエン共重合体およびスチレン-オレフィン共重合体などが挙げられ、中でもスチレン-共役ジエン共重合体が好ましい。スチレン-共役ジエン共重合体の例としては、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、スチレン-エチレン-イソプレン-スチレン共重合体等の未水添スチレン-共役ジエン共重合体;スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン共重合体(SEPS:スチレン-イソプレン-スチレン共重合体の水素添加物)、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン共重合体(SEBS:スチレン-ブタジエン共重合体の水素添加物)等の水添スチレン-共役ジエン共重合体等が挙げられる。
【0026】
基材は、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、酸化防止剤、着色剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、イオン捕捉剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤の含有量としては、特に限定されないものの、基材が所望の機能を発揮する範囲とすることが好ましい。
【0027】
基材の粘着剤層が積層される面には、粘着剤層との密着性を高めるために、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理が施されてもよい。
【0028】
基材の厚さは、半導体加工用シートが使用される方法に応じて適宜設定できるものの、通常、20μm以上であることが好ましく、特に25μm以上であることが好ましい。また、当該厚さは、通常、450μm以下であることが好ましく、特に300μm以下であることが好ましい。
【0029】
(2)粘着剤層
本実施形態における粘着剤層は、活性エネルギー線硬化性を有しないアクリル系共重合体と、二重結合を有する官能基を4個以下備えるとともに重量平均分子量が5000以上である活性エネルギー線硬化性成分と、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコールおよびそれらの誘導体の少なくとも1種であるアルキレングリコール系成分とを含有する粘着剤組成物から形成されたものである。
【0030】
本実施形態に係る半導体加工用シートは、粘着剤層が上述した粘着剤組成物から形成されていることにより、十分にエキスパンドすることが可能となり、半導体チップのピックアップを良好に行うことが可能となる。特に、本実施形態に半導体加工用シートは、当該半導体加工用シート上にて半導体部材のダイシングを行わない場合であっても、十分にエキスパンドすることができ、それにより良好なピックアップを行うことができる。
【0031】
通常、半導体加工用シート上にてダイシングを行うと、半導体部材とともに粘着剤層も切断されたり、基材にも切り込みが入ることになる。そのため、ダイシングが行われた半導体加工用シートは、粘着剤層が細かく分断され、基材にも切り込みが入っていることにより、エキスパンド工程において延伸し易くなる。これに対して、ダイシングを行わない場合には、このような延伸し易くなる作用が生じない。しかしながら、本実施形態に係る半導体加工用シートは、このような作用が得られないにもかかわらず、十分にエキスパンドすることができ、それにより良好なピックアップを行うことができる。
【0032】
特に、本実施形態における粘着剤組成物が上記アクリル系共重合体および上記活性エネルギー線硬化性成分の二成分を含むものであることで、アクリル系共重合体自体が活性エネルギー線硬化性基を有するものを使用する場合に比べて、良好にエキスパンドし易いものとなる。この理由としては、限定されないものの、アクリル系共重合体および活性エネルギー線硬化性成分という独立した二成分を含む粘着剤層を活性エネルギー線照射により硬化させた場合、粘着剤層内に、硬化した領域とともに、硬化していない領域が適度な頻度で生じ、粘着剤層が柔軟性を適度に維持できるためであると考えられる。
【0033】
さらに、本実施形態における粘着剤組成物が、上記アルキレングリコール系成分を含有することによっても、良好なエキスパンド性を実現することができる。この理由は明らかではないものの、アルキレングリコール系成分が有するヒドロキシ基が、活性エネルギー線照射によるアクリル系共重合体と活性エネルギー線硬化性成分との間の反応や、アクリル系共重合体間の架橋形成を適度に阻害し、その結果、粘着剤層が適度な柔軟性を有するものとなる可能性が考えられる。
【0034】
また、上記アルキレングリコール系成分は、活性エネルギー線照射により粘着剤層を硬化させた際における、半導体チップに対する粘着力の低下も促進させることができる。一般的に、アクリル系共重合体および活性エネルギー線硬化性成分の二成分から構成される活性エネルギー線硬化性粘着剤は、活性エネルギー線硬化性基を有するアクリル系共重合体一成分から構成される活性エネルギー線硬化性粘着剤に比べて、硬化時の粘着力低下が生じ難い傾向がある。しかしながら、本実施形態における粘着剤組成物に含有される上記アルキレングリコール系成分は、上述した粘着力低下を効果的に促す。そのため、本実施形態に係る半導体加工用シートは、上述したような、十分にエキスパンドできる効果も相まって、良好なピックアップが可能となる。
【0035】
なお、上述した活性エネルギー線硬化性成分の重量平均分子量を含め、本明細書における重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0036】
(2-1)アクリル系共重合体
本実施形態におけるアクリル系共重合体は、活性エネルギー線硬化性を有しないものである限り、特に限定されない。
【0037】
アクリル系共重合体は、重合体を構成するモノマー単位としてアクリル系モノマーを含有するものである限り特に限定されず、特に、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを共重合したものであることが好ましい。当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、アルキル基の炭素数が1以上のものであることが好ましく、特に2以上のものであることが好ましい。また、当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、アルキル基の炭素数が18以下であるものが好ましく、特に8以下であるものが好ましい。
【0038】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの中でも、本実施形態に係る半導体加工用シートの粘着力を所望の範囲に調整し易くなるという観点から、アクリル酸n-ブチルおよびアクリル酸メチルの少なくとも1種を使用することが好ましい。上述した(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
上述したアクリル系共重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを、50質量%以上含有することが好ましく、特に60質量%以上含有することが好ましい。また、アクリル系共重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを、98質量%以下で含有することが好ましく、特に95質量%以下で含有することが好ましい。
【0040】
また、上述したアクリル系共重合体は、粘着剤組成物が後述する架橋剤を含有する場合に、アクリル系共重合体が良好に架橋し易いものとなるとともに、粘着力を所望の範囲に調整し易くなるという観点から、重合体を構成するモノマー単位として、官能基含有モノマーを含有することが好ましい。官能基含有モノマーが有する官能基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等が挙げられ、中でもヒドロキシ基およびカルボキシ基が好ましく、特にカルボキシ基が好ましい。なお、異なる種類の官能基含有モノマーを組み合わせて用いてもよい。
【0041】
官能基含有モノマーとしてカルボキシ基を有するモノマー(カルボキシ基含有モノマー)を使用する場合、その例としてはエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられ、その具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられる。これらの中でも、カルボキシ基の反応性および共重合性の点から、アクリル酸が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
官能基含有モノマーとしてヒドロキシ基を有するモノマー(ヒドロキシ基含有モノマー)を使用する場合、その例としては(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが挙げられ、その具体例としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシ基の反応性および共重合性の点から、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
上述したアクリル系共重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、官能基含有モノマーを、0.1質量%以上含有することが好ましく、特に0.5質量%以上含有することが好ましく、さらには1質量%以上含有することが好ましい。また、アクリル系共重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、官能基含有モノマーを、30質量%以下で含有することが好ましく、特に20質量%以下で含有することが好ましく、さらには15質量%以下で含有することが好ましい。
【0044】
アクリル系共重合体は、重合体を構成するモノマー単位として、上述した(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーおよび官能基含有モノマー以外のその他のモノマーを含んでもよい。
【0045】
当該その他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等のアルコキシアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステル;アクリルアミド、メタクリルアミド等の非架橋性のアクリルアミド;(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノプロピル等の非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル;スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
アクリル系共重合体の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。また、重合法に関しては特に限定されず、一般的な重合法により重合することができる。
【0047】
本実施形態におけるアクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、1万以上であることが好ましく、特に10万以上であることが好ましく、さらには20万以上であることが好ましい。重量平均分子量(Mw)が1万以上であることで、粘着剤層の凝集力を所望の範囲に調整し易くなる。また、上記重量平均分子量(Mw)は、200万以下であることが好ましく、特に150万以下であることが好ましく、さらには100万以下であることが好ましい。重量平均分子量(Mw)が200万以下であることで、所望の粘着力を達成し易くなるとともに、粘着剤層形成時のハンドリング性が良好となる。
【0048】
(2-2)活性エネルギー線硬化性成分
本実施形態における活性エネルギー線硬化性成分は、二重結合を有する官能基を4個以下備えるとともに重量平均分子量が5000以上である限り、特に限定されない。当該活性エネルギー線硬化性成分は、比較的大きい重量平均分子量を有する一方で、官能基の数が比較的少ないものであり、このような活性エネルギー線硬化性成分を使用することで、半導体加工用シートが良好なエキスパンド性を有するものとなる。
【0049】
活性エネルギー線硬化性成分が有する上記官能基の例としては、アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。活性エネルギー線硬化性成分中における上記官能基の数は、よりエキスパンドし易くなるという観点から、2個以上、3個以下であることが好ましい。
【0050】
また、活性エネルギー線硬化性成分の重量平均分子量は、よりエキスパンドし易くなるという観点から、7000以上であることが好ましく、特に8000上であることが好ましい。また、所望の粘着力を達成し易いという観点から、活性エネルギー線硬化性成分の重量平均分子量は、10万以下であることが好ましく、特に6万以下であることが好ましく、さらには4万以下であることが好ましい。
【0051】
上記活性エネルギー線硬化性成分の好ましい例としては、多官能アクリレートのオリゴマーまたは変性物が挙げられる。上記多官能アクリレートのオリゴマーの好ましい例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4-ブチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート等の多官能アクリレートが挙げられる。
【0052】
また、上記変性物の例としては、ウレタン変性物、エポキシ変性物、エステル変性物等が挙げられる。これらの中でも、重量平均分子量および官能基の数を上述した範囲に調整し易いという観点から、ウレタン変性物が好ましい。
【0053】
上記ウレタン変性物は、上述した多官能アクリレートと、ポリイソシアネート化合物とを反応させてなるものであることが好ましい。当該ポリイソシアネート化合物の例としては、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。これらの中でも、脂環式ポリイソシアネートが好ましく、特にイソホロンジイソシアネートが好ましい。
【0054】
本実施形態における粘着剤組成物中における活性エネルギー線硬化性成分の含有量は、上述したアクリル系共重合体100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましく、特に20質量部以上であることが好ましく、さらには30質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、300質量部以下であることが好ましく、特に200質量部以下であることが好ましく、さらには150質量部以下であることが好ましい。活性エネルギー線硬化性成分の含有量が上記範囲であることで、活性エネルギー線の照射後における粘着剤層において、硬化した領域と硬化していない領域とがより良好に分布するものとなり、半導体加工用シートがエキスパンドし易いものとなる。
【0055】
(2-3)アルキレングリコール系成分
本実施形態におけるアルキレングリコール系成分は、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコールおよびそれらの誘導体の少なくとも1種である。当該アルキレングリコール系成分を使用することで、活性エネルギー線照射後における半導体加工用シートの被着体に対する粘着力を効果的に低下させることができるとともに、半導体加工用シートが良好にエキスパンドし易いものとなる。
【0056】
上記アルキレングリコールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
【0057】
また、上記ポリアルキレングリコールの例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリ(エチレンープロピレン)グリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレンポリグリセリン等があげられる。これらの中でも、上述した粘着力を低下させる効果および良好なエキスパンドを達成する効果を得易いという観点から、ポリエチレングリコールを使用することが好ましい。
【0058】
上記ポリアルキレングリコールの重量平均分子量は、30000以下であることが好ましく、特に20000以下であることが好ましく、さらには10000以下であることが好ましい。上記重量平均分子量がこれらの範囲であることで、活性エネルギー線照射後において粘着力を十分低下させ易くなるとともに、半導体加工用シートが良好にエキスパンドし易いものとなる。なお、上記重量平均分子量の下限値については、例えば200以下であってもよく、特に150以下であってもよく、100以下であってもよい。
【0059】
上記誘導体とは、一般式X-(O-Ar)n-OYで表されるものであり、当該式中、XおよびYは、例えば水素原子、変性ロジンエステル、安息香酸エステル、ステアリン酸等であり、Arは、例えば、CH(メチレン)、C(エチレン)、C(プロピレン)等の炭化水素であり、nは、1~200の整数である。当該誘導体の好ましい例としては、アルキレングリコール変性ロジンエステルを使用することが好ましい。
【0060】
上記アルキレングリコール変性ロジンエステルとしては特に限定はないものの、例えば、ロジン類、ポリアルキルレングリコールモノアルキルエーテル、多価アルコールおよびα,β-不飽和カルボン酸をエステル化反応させることにより得られるものであることが好ましい。
【0061】
上記アルキレングリコール変性ロジンエステルの重量平均分子量は、1000以上であることが好ましく、特に2000以上であることが好ましく、さらには3000以上であることが好ましい。また、当該重量平均分子量は、100万以下であることが好ましく、10万であることがより好ましく、特に5万以下であることが好ましく、さらには1万以下であることが好ましい。上記重量平均分子量がこれらの範囲であることで、活性エネルギー線照射後において粘着力を十分低下させ易くなるとともに、半導体加工用シートが良好にエキスパンドし易いものとなる。
【0062】
本実施形態における粘着剤組成物中におけるアルキレングリコール系成分の含有量は、上述したアクリル系共重合体100質量部に対して、0.005質量部以上であることが好ましく、特に0.01質量部以上であることが好ましく、さらには0.05質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、30質量部以下であることが好ましく、特に25質量部以下であることが好ましく、さらには20質量部以下であることが好ましい。アルキレングリコール系成分の含有量が上記範囲であることで、活性エネルギー線照射後において粘着力を十分低下させ易くなるとともに、半導体加工用シートが良好にエキスパンドし易いものとなる。
【0063】
(2-4)架橋剤
本実施形態における粘着剤組成物は、架橋剤を含有することが好ましい。粘着剤組成物が架橋剤を含有することにより、粘着剤層において、アクリル系共重合体が架橋し、良好な三次元網目構造を形成することが可能となる。これにより、得られる粘着剤の凝集力がより向上し、活性エネルギー線の照射後に半導体加工用シートから分離された被着体において、糊残りの発生を効果的に抑制することができる。なお、粘着剤組成物が架橋剤を含有する場合には、アクリル系共重合体は、重合体を構成するモノマー単位として、上述した官能基含有モノマーを含有することが好ましく、特に、使用する架橋剤との反応性の高い官能基を有する官能基含有モノマーを含有することが好ましい。
【0064】
上記架橋剤の例としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が挙げられる。これらの架橋剤は、アクリル系共重合体が有する、官能基含有モノマー由来の官能基に応じて選択することができる。なお、これらの架橋剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0065】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。これらの中でも、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートが好ましい。
【0066】
本実施形態における粘着剤組成物が架橋剤を含有する場合、粘着剤組成物中における架橋剤の含有量は、上述したアクリル系共重合体100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、特に5質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、20質量部以下であることが好ましく、特に15質量部以下であることが好ましい。架橋剤の含有量が1質量部以上であることで、活性エネルギー線の照射後における粘着剤層の凝集力を向上させ易くなり、それによって、糊残りを効果的に抑制することが可能となる。また、架橋剤の含有量が20質量部以下であることで、架橋の程度が適度なものとなり、粘着剤層が所望の粘着力を発揮し易くなる。
【0067】
(2-5)光重合開始剤
本実施形態における粘着剤組成物は、光重合開始剤を含有することが好ましい。粘着剤組成物が光重合開始剤を含有することにより、活性エネルギー線を照射して粘着剤層を硬化させる際の重合硬化時間および光線照射量を少なくすることができる。
【0068】
光重合開始剤の例としては、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4-ジエチルチオキサンソン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、β-クロールアンスラキノン、(2,4,6-トリメチルベンジルジフェニル)フォスフィンオキサイド、2-ベンゾチアゾール-N,N-ジエチルジチオカルバメート、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-プロペニル)フェニル]プロパノン}、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンなどが挙げられる。これらの中でも、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを使用することが好ましい。上述した光重合開始剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0069】
本実施形態における粘着剤組成物が光重合開始剤を含有する場合、粘着剤組成物中における光重合開始剤の含有量は、上述したアクリル系共重合体100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、特に1質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、10質量部以下であることが好ましく、特に5質量部以下であることが好ましい。光重合開始剤の含有量が上記範囲であることで、活性エネルギー線の照射によって、粘着剤層を効率良く硬化させることができ、それにより、被着体に対する半導体加工用シートの粘着力を良好に低下させ易くなる。
【0070】
(2-6)その他の成分
本実施形態における粘着剤組成物は、本実施形態に係る半導体加工用シートによる前述した効果を損なわない限り、所望の添加剤、例えばシランカップリング剤、帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、屈折率調整剤などを添加することができる。なお、後述の重合溶媒や希釈溶媒は、粘着剤組成物を構成する添加剤に含まれないものとする。
【0071】
(2-7)粘着剤組成物の調製方法
本実施形態における粘着剤組成物は、アクリル系共重合体を製造し、得られたアクリル系共重合体と、活性エネルギー線硬化性成分と、アルキレングリコール系成分と、所望により、架橋剤と、光重合開始剤と、添加剤とを混合することで製造することができる。
【0072】
アクリル系共重合体は、重合体を構成するモノマーの混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。当該重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法により行うことが好ましい。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
【0073】
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられる。
【0074】
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0075】
なお、上記重合工程において、2-メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
【0076】
アクリル系共重合体が得られたら、アクリル系共重合体の溶液に、活性エネルギー線硬化性成分、アルキレングリコール系成分と、所望により、架橋剤、光重合開始剤、その他の添加剤、および希釈溶剤を添加し、十分に混合することにより、粘着剤組成物の塗布液を得ることができる。なお、上記各成分のいずれかにおいて、固体状のものを用いる場合、あるいは、希釈されていない状態で他の成分と混合した際に析出を生じる場合には、その成分を単独で予め希釈溶媒に溶解もしくは希釈してから、その他の成分と混合してもよい。
【0077】
上記希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
【0078】
このようにして調製された塗布液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着剤組成物の濃度が10質量%以上、60質量%以下となるように希釈する。なお、塗布液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着剤組成物がコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着剤組成物は、アクリル系共重合体の重合溶媒をそのまま希釈溶剤とする塗布液となる。
【0079】
(2-8)粘着剤層の物性等
本実施形態に係る半導体加工用シートでは、活性エネルギー線照射後における粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率が、70%以上であることが好ましく、特に80%以上であることが好ましく、さらに90%以上であることが好ましい。また、上記ゲル分率は、99%以下であることが好ましく、特に98%以下であることが好ましく、さらに97%以下であることが好ましい。ゲル分率がこれらの範囲である場合、活性エネルギー線照射後における粘着剤層が、その内部に硬化していない領域を適度に含むものとなる。それにより、活性エネルギー線照射後においても、粘着剤層が所望の柔軟性を有し易いものとなり、十分にエキスパンドし易いものとなる。なお、上記ゲル分率の測定方法の詳細は、後述する試験例に示す通りである。
【0080】
本実施形態における粘着剤層の厚さは、1μm以上であることが好ましく、特に3μm以上であることが好ましく、さらには5μm以上であることが好ましい。粘着剤層の厚さが1μm以上であることで、半導体加工用シートが良好な粘着力を発揮し易くなり、被着体を良好に保持し易くなる。また、当該厚さは、50μm以下であることが好ましく、特に30μm以下であることが好ましく、さらには20μm以下であることが好ましい。粘着剤層の厚さが20μm以下であることで、十分にエキスパンドし易いものとなる。
【0081】
(3)剥離シート
本実施形態に係る半導体加工用シートでは、粘着剤層における粘着面を半導体部材に貼付するまでの間、当該粘着面を保護する目的で、当該粘着面に剥離シートが積層されていてもよい。剥離シートの構成は任意であり、プラスチックフィルムを剥離剤等により剥離処理したものが例示される。プラスチックフィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、およびポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。剥離剤としては、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系の剥離剤等を用いることができ、これらの中で、安価で安定した性能が得られるシリコーン系剥離剤が好ましい。剥離シートの厚さについては特に制限はないが、通常20μm以上、250μm以下である。
【0082】
2.半導体加工用シートの物性
(1)粘着力
本実施形態に係る半導体加工用シートでは、活性エネルギー線照射前におけるシリコンウエハ(鏡面加工してなるシリコンウエハの当該鏡面,以下同じ)に対する粘着力が、500mN/25mm以上であることが好ましく、1000mN/25mm以上であることがより好ましく、特に1500mN/25mm以上であることが好ましく、さらには2000mN/25mm以上であることが好ましい。本実施形態に係る半導体加工用シートでは、粘着剤層が活性エネルギー線硬化性成分を含有する粘着剤組成物から形成されていることにより、活性エネルギー線照射前において上述のような粘着力を達成し易いものとなる。そして、活性エネルギー線照射前におけるシリコンウエハに対する粘着力が500mN/25mm以上であることで、半導体チップを半導体加工用シート上に良好に固定し易くなり、意図しない半導体チップの脱落を良好に防止し易くなる。なお、上記粘着力の上限値については特に限定されないものの、例えば、20000mN/25mm以下であることが好ましく、特に15000mN/25mm以下であることが好ましく、さらには10000mN/25mm以下であることが好ましい。また、上記粘着力の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載する通りである。
【0083】
また、本実施形態に係る半導体加工用シートでは、活性エネルギー線照射後におけるシリコンウエハに対する粘着力が、1500mN/25mm以下であることが好ましく、特に600mN/25mm以下であることが好ましく、さらには300mN/25mm以下であることが好ましい。本実施形態に係る半導体加工用シートでは、粘着剤層が活性エネルギー線硬化性成分を含有する粘着剤組成物から形成されていることにより、活性エネルギー線照射後において上述のような粘着力を達成し易いものとなる。そして、活性エネルギー線照射後におけるシリコンウエハに対する粘着力が1500mN/25mm以下であることで、半導体チップを半導体加工用シートから剥離し易くなるとともに、糊残りの発生も効果的に抑制することができる。また、活性エネルギー線照射後におけるシリコンウエハに対する粘着力は、1mN/25mm以上であることが好ましく、特に10mN/25mm以上であることが好ましく、さらには30mN/25mm以上であることが好ましい。これにより、活性エネルギー線照射後における意図しない段階での半導体チップの分離・脱落を抑制し易いものとなる。なお、上記粘着力の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載する通りである。
【0084】
(2)表面抵抗率
本実施形態に係る半導体加工用シートでは、紫外線照射前における粘着剤層の表面抵抗率が、1.0×1013Ω/□以下であることが好ましく、特に5.0×1012Ω/□以下であることが好ましく、さらに1.0×1012Ω/□以下であることが好ましい。表面抵抗率が当該範囲であることで、本実施形態に係る半導体加工用シートを被着体から剥離したときに、被着体が剥離帯電により破壊されるのを防止することができる。なお、紫外線照射前における粘着剤層の表面抵抗率の下限値は特に限定されず、例えば1.0×10Ω/□以上であってよい。上記表面抵抗率の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
【0085】
また、本実施形態に係る半導体加工用シートでは、紫外線照射後における粘着剤層の表面抵抗率が、1.0×1013Ω/□以下であることが好ましく、特に5.0×1012Ω/□以下であることが好ましく、さらに1.0×1012Ω/□以下であることが好ましい。表面抵抗率が当該範囲であることで、本実施形態に係る半導体加工用シートを被着体から剥離したときに、被着体が剥離帯電により破壊されるのを防止することができる。なお、紫外線照射後における粘着剤層の表面抵抗率の下限値は特に限定されず、例えば1.0×10Ω/□以上であってよい。上記表面抵抗率の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
【0086】
さらに、本実施形態に係る半導体加工用シートでは、上述した紫外線照射後における粘着剤層の表面抵抗率に対する、上述した紫外線照射前における粘着剤層の表面抵抗率の比(紫外線照射前の表面抵抗率/紫外線照射後の表面抵抗率)が、0.5以上であることが好ましく、特に0.6以上であることが好ましく、さらに0.7以上であることが好ましい。また、上記比は、0.95以下であることが好ましく、特に0.9以下であることが好ましく、さらに0.8以下であることが好ましい。上記比がこれらの範囲であることで、活性エネルギー線照射後においても良好なエキスパンド性を達成し易いものとなる。この理由としては、限定されないものの、次のことが考えられる。紫外線照射前後の表面抵抗率の上記範囲である場合、粘着剤層は、活性エネルギー線照射による硬化の前後において、表面抵抗率が大幅に変化しないものであるといえる。ここで、表面抵抗率は粘着剤層の柔軟性との相関があることが経験的に確認されており、上記比を満たす場合、粘着剤層の柔軟性も活性エネルギー線の照射前後で大幅に変化しないものといえる。その結果、活性エネルギー線照射により粘着剤層が硬化した後においても、一定の柔軟性が保持されており、良好なエキスパンド性が維持されることになる。
【0087】
3.半導体加工用シートの製造方法
本実施形態に係る半導体加工用シートの製造方法は特に限定されず、好ましくは、基材の片面側に粘着剤層を積層することにより製造される。
【0088】
基材の片面側への粘着剤層の積層は、公知の方法により行うことができる。例えば、剥離シート上において形成した粘着剤層を、基材の片面側に転写することが好ましい。この場合、粘着剤層を構成する粘着剤組成物、および所望によりさらに溶媒または分散媒を含有する塗工液を調製し、剥離シートの剥離処理された面(以下「剥離面」という場合がある。)上に、ダイコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、スリットコーター、ナイフコーター、アプリケータ等によりその塗工液を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥させることにより、粘着剤層を形成することができる。塗工液は、塗布を行うことが可能であればその性状は特に限定されず、粘着剤層を形成するための成分を溶質として含有する場合もあれば、分散質として含有する場合もある。この積層体における剥離シートは工程材料として剥離してもよいし、半導体加工用シートを被着体に貼付するまでの間、粘着剤層の粘着面を保護するために用いてもよい。
【0089】
粘着剤層を形成するための塗工液が架橋剤を含有する場合には、上記の乾燥の条件(温度、時間など)を変えることにより、または加熱処理を別途設けることにより、塗膜内のアクリル系共重合体と架橋剤との架橋反応を進行させ、粘着剤層内に所望の存在密度で架橋構造を形成させればよい。この架橋反応を十分に進行させるために、上記の方法などによって基材に粘着剤層を積層させた後、得られたワーク加工用シートを、例えば23℃、相対湿度50%の環境に数日間静置するといった養生を行ってもよい。
【0090】
上述のように剥離シート上で形成した粘着剤層を基材の片面側に転写する代わりに、基材上で直接粘着剤層を形成してもよい。この場合、前述した粘着剤層を形成するための塗工液を基材の片面側に塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥させることにより、粘着剤層を形成する。
【0091】
4.半導体加工用シートの使用方法
本実施形態に係る半導体加工用シートは、半導体部材の加工や半導体装置の製造方法のために使用することができる。すなわち、本実施形態に係る半導体加工用シートの粘着面を半導体部材に貼付した後、半導体加工用シート上にて当該半導体部材の加工を行うことができる。半導体部材の例としては、半導体ウエハ、半導体パッケージ等が挙げられる。
【0092】
本実施形態に係る半導体加工用シートは、前述の通り、ダイシングを行わない場合(すなわち、粘着剤層が半導体部材とともに切断されない場合)であっても、エキスパンド工程により半導体チップ同士を十分に離間させることができ、その結果、半導体チップの良好なピックアップが可能となる。そのため、本実施形態に係る半導体加工用シートは、当該半導体加工用シート上にてダイシング工程を行うことなく、エキスパンド工程およびピックアップ工程を行う半導体加工方法または半導体装置の製造方法に使用されることが好適である。
【0093】
より具体的には、本実施形態に係る半導体加工用シートは、粘着剤層における基材と反対の面に半導体チップを積層する積層工程と、当該半導体チップが積層された半導体加工用シートを延伸させて、当該半導体チップ同士を離間させるエキスパンド工程と、当該半導体チップ同士が離間した状態で、当該半導体チップ同士を個々にピックアップするピックアップ工程とを備える半導体加工方法または半導体装置の製造方法に使用されることが好適である。
【0094】
上記積層工程において、本実施形態に係る半導体加工用シートに積層される複数の半導体チップは、予めダイシングシート上にて半導体ウエハまたは半導体パッケージをダイシングすることで得られたものであってよい。このようにして得られた複数の半導体チップを、例えば、上記ダイシングシートから転写することで、本実施形態に係る半導体加工用シート上に半導体チップを積層することができる。これらダイシングや転写の具体的な手法は、従来と同様に行うことができる。また、上記エキスパンド工程および上記ピックアップ工程も、従来の手法を用いて行うことができる。
【0095】
また、上記半導体加工方法および半導体加工方法では、粘着剤層に対して活性エネルギー線を照射する照射工程を行うこともできる。当該照射工程は、積層工程とエキスパンド工程との間、または、エキスパンド工程とピックアップ工程との間に行うことが好ましい。照射工程において、粘着剤層に対して活性エネルギー線を照射し、当該粘着剤層を硬化せることにより、半導体チップに対する粘着力を低下させることができる。それにより、ピックアップ工程において、粘着剤層から半導体チップを分離させることがより容易となり、良好なピックアップを行い易くなる。上記活性エネルギー線としては、通常、紫外線、電子線等が用いられ、特に取扱いが容易な紫外線が好ましい。活性エネルギー線の照射条件としては、従来と同様の条件を採用することができる。
【0096】
なお、本実施形態に係る半導体加工用シートは、上述した半導体加工方法および半導体加工方法に限らず、バックグラインドや、ダイシングに使用してもよい。
【0097】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0098】
例えば、基材と粘着剤層との間、または基材における粘着剤層とは反対側の面には、その他の層が設けられてもよい。
【実施例0099】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0100】
〔実施例1〕
(1)基材の作製
ランダムポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製,製品名「ノバテック FX3B」)30質量部、オレフィン系熱可塑性エラストマー(日本ポリプロ社製,製品名「ウェルネクス RFX4V」)45質量部、および帯電防止剤(三洋化成社製,製品名「ペレクトロンPVH」,メルトフローレート:9.8g/10min)25質量部を、各々乾燥させた後、二軸混錬機にて混錬することで、表面層用のペレットを得た。
【0101】
また、ランダムポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製,製品名「ノバテック FX3B」)28質量部、オレフィン系熱可塑性エラストマー(日本ポリプロ社製,製品名「ウェルネクス RFX4V」)39質量部およびスチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成社製,製品名「タフテックH1041」,スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン共重合体,スチレン比率:30wt%)33質量を、各々乾燥させた後、二軸混錬機にて混錬することで、中間層用ペレットを得た。
【0102】
さらに、オレフィン系熱可塑性エラストマー(日本ポリプロ社製,製品名「ウェルネクス RFX4V」)70質量部、および帯電防止剤(三洋化成社製,製品名「ペレクトロンPVH」,メルトフローレート:9.8g/10min)30質量部を、各々乾燥させた後、二軸混錬機にて混錬することで、裏面層用のペレットを得た。
【0103】
上記の通り得られた3種のペレットを用いて、小型Tダイ押出機(東洋精機製作所社製,製品名「ラボプラストミル」)によって共押出成形し、単軸押出機(東芝機械社製,スクリュー径:50mm,スクリュー有効長L/D:32)のホッパーに投入し、押出機温度をC1:210℃、C2:230℃、C3:230℃、C4:230℃、C5:230℃と設定し、550mm幅Tダイ(温度設定:230℃,リップ開度:0.3mm)から押出した。押出された溶融樹脂を、冷却ロールを備えた巻き取り機(冷却ロール:700mm幅×φ350mm,ロール温度:30℃)にて冷却固化し、厚さ2μmの表面層と、厚さ64μmの中間層と、厚さ14μmの裏面層とが順に積層されてなる3種3層構造の基材を得た。
【0104】
(2)アルキレングリコール系成分の作製
ガムロジン711g、グリセリン107g、フマル酸189g、重量平均分子量が1000であるポリプロピレングリコール2100gおよびキシレン150gをフラスコに仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら280℃で13時間加熱した。その後、200℃で20分間かけてキシレンを減圧除去した。続いて、フラスコから内容物を取り出して、室温まで冷却して固化させることで、アルキレングリコール系成分としてのアルキレングリコール変性ロジンエステルを得た。
【0105】
(3)粘着剤組成物の調製
アクリル酸n-ブチル75質量部と、アクリル酸メチル20質量部と、アクリル酸5質量部とを、溶液重合法により重合させて、アクリル系共重合体としての(メタ)アクリル酸エステル共重合体を得た。当該(メタ)アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量(Mw)を後述する方法で測定したところ、60万であった。
【0106】
得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体100質量部(固形分換算,以下同じ)と、活性エネルギー線硬化性成分としての官能基数が2~3であるとともに重量平均分子量が10,000であるウレタンアクリレート(ダイセル・オルネクス社製,製品名「KRM8961」)48質量部と、上記工程(2)で作製したアルキレングリコール系成分としてのアルキレングリコール変性ロジンエステル2質量部と、光重合開始剤としての1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(BASF社製,製品名「オムニラッド184」)3質量部と、架橋剤としてのポリイソシアナート系架橋剤(東ソー社製,製品名「コロネートL」)4.5質量部とを、溶媒としての酢酸エチル中で混合し、粘着剤組成物の塗布液(固形分濃度:25質量%)を得た。
【0107】
(4)粘着剤層の形成
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET381031」)の剥離面に対して、上記粘着剤組成物の塗布液を塗布し、加熱により乾燥させることで、剥離シート上に、厚さ5μmの粘着剤層を形成した。
【0108】
(5)半導体加工用シートの作製
上記工程(4)で形成した粘着剤層の露出面と、上記工程(1)で作製した基材における表面層側の面とを貼り合わせることで、剥離シート付の半導体加工用シートを得た。
【0109】
(6)(メタ)アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量(Mw)の測定
(メタ)アクリル酸エステル共重合体の上述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC-8020
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK guard column HXL-H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0110】
〔実施例2~15および比較例1~11〕
活性エネルギー線硬化性成分の種類および含有量、アルキレングリコール系成分の種類および含有量、ならびに、架橋剤の含有量を、表1に示されるように変更する以外、実施例1と同様にして半導体加工用シートを製造した。
【0111】
なお、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
[活性エネルギー線硬化性成分]
KRM8961:官能基数が2~3であるとともに重量平均分子量が10,000であるウレタンアクリレート(ダイセル・オルネクス社製,製品名「KRM8961」)
EBECRYL230:官能基数が2であるとともに重量平均分子量が5,000であるウレタンアクリレート(ダイセル・オルネクス社製,製品名「EBECRYL230」)
PN-3660:官能基数が4であるとともに重量平均分子量が7,000であるウレタンアクリレート(POLYNETRON社製,製品名「POLYGOMER PN-3660」)
UA-306H:官能基数が5~7であるとともに重量平均分子量が1,000であるウレタンアクリレート(共栄社化学社製,製品名「UA-306H」)
PN-3630:官能基数が6であるとともに重量平均分子量が2,500であるウレタンアクリレート(POLYNETRON社製,製品名「POLYGOMER PN-3630」)
[アルキレングリコール系成分]
PEG3000:ポリエチレングリコール(Sigma-Aldrich社製,製品名「PEG3000」,重量平均分子量:2700~3300)
PTMG3000:ポリテトラメチレンエーテルグリコール(三菱ケミカル社製,製品名「PTMG3000」,重量平均分子量:2900)
【0112】
〔試験例1〕(粘着力の測定)
実施例および比較例で製造した半導体加工用シートを、温度23℃、湿度50%の環境下に1週間静置した後、幅25mm、長さ300mmのサイズに裁断した。
【0113】
そして、剥離シートを剥離して露出した粘着剤層の露出面を6インチシリコンウエハのミラー面に重ね合わせ、2kgのローラーを1往復させることにより荷重をかけて貼合し、20分放置した。これを粘着力測定用積層体とした。
【0114】
得られた粘着力測定用積層体について、JIS Z0237:2009に準じた180°引き剥がし法により、シリコンウエハから、剥離速度300mm/min、剥離角度180°にて半導体加工用シートを剥離し、粘着力(mN/25mm)を測定した。この測定値をUV照射前の粘着力として、表1に示す。
【0115】
また、上記と同様に得られた粘着力測定用積層体における半導体加工用テープの基材側の面に対し、紫外線照射装置(リンテック社製,製品名「RAD-2000」)を用いて、窒素下にて紫外線(UV)照射(照度:200mW/cm,光量:180mJ/cm)を行い、粘着剤層を硬化させた。その後、上記と同様に粘着力(mN/25mm)を測定した。この測定値をUV照射後の粘着力として、表1に示す。
【0116】
〔試験例2〕(エキスパンド量の測定)
実施例1で製造した半導体加工用シート(以下、「ダイシングシート」という場合がある。)から剥離シートを剥離して露出した粘着剤層の露出面を、6インチシリコンウエハ(厚さ:350μm,♯2000で研磨済み)の研磨面にテープマウンター(リンテック社製,製品名「RAD-2500m/12」)を用いて貼付した。続いて、上記ダイシングシートの上述した露出面の外周部(6インチシリコンウエハが存在していない領域)をリングフレームに固定し、以下の条件で、6インチシリコンウエハをダイシングした。
<ダイシング条件>
・ダイシング装置:DISCO社製,製品名「DFD-6362」
・ブレード:DISCO社製,製品名「NBC-ZH2050-27HECC」
・ブレード回転数:30000rpm
・切削速度:50mm/分
・切り込み深さ:基材に対する切り込み量:20μm
・ダイシングサイズ:1mm×1mm
【0117】
ダイシング終了後、ダイシングシートの基材側から紫外線照射装置(リンテック社製,製品名「RAD-2000」)を用いて窒素下にて紫外線(UV)照射(照度:200mW/cm,光量:180mJ/cm)を行い、粘着剤層を硬化させた。
【0118】
その後、上記ダイシングによって得られたチップを、ラミネーターを用いて、ダイシングシートから、実施例および比較例にて製造した半導体加工用シートにおける剥離シートを剥離して露出した粘着剤層の露出面に転写した。さらに、当該半導体加工用シートにおける露出面の外周部(チップが存在していない領域)をリングフレームに固定した。
【0119】
そして、半導体加工用シートの基材側から、窒素下において紫外線照射装置(リンテック社製,製品名「RAD-2000」)を用いて紫外線(UV)照射(照度:200mW/cm,光量:180mJ/cm)を行い、粘着剤層を硬化させた。
【0120】
続いて、チップが積層された半導体加工用シートをエキスパンド装置(JCM社製,製品名「ME-300B」,半自動エキスパンダー)に設置した。そして、半導体加工用シート上に積層されたチップから、2つの隣接するチップを5組選択した。この5組のチップは、半導体加工用シートを平面視した場合に、当該半導体加工用シートの中央部に位置する1組と、半導体加工用シートの周縁部であって上記中央部に対して上下左右に位置する4組とした。これら5組のチップの間の距離(μm)を測定し、その平均値をエキスパンド前のチップ間隔とした。その後、1mm/secの速度、引き落とし量10mmの条件にて、半導体加工用シートをエキスパンドし、エキスパンドした状態で、上記の通り選択した5組のチップの間の距離(μm)を再度測定し、その平均値をエキスパンド後のチップ間隔とした。
【0121】
以上のように得られたエキスパンド後のチップ間隔からエキスパンド前のチップ間隔を差し引くことで、エキスパンド前後におけるチップ間隔の差を算出し、これをエキスパンド量(μm)とした。測定を表1に示す。
【0122】
〔試験例3〕(層間密着性の測定)
実施例および比較例で製造した半導体加工用シートに対し、剥離シートを付けたまま、基材側の面から紫外線照射装置(リンテック社製,製品名「RAD-2000」)を用いて、空気下にて、紫外線(UV)照射(照度:200mW/cm,光量:180mJ/cm)を行い、粘着剤層を硬化させた。
【0123】
その後、半導体加工用シートから剥離シートを除去し、硬化した粘着剤層を露出させた。当該粘着剤層に対して、5mm間隔で縦11×横11ラインの切れ込みを入れ、碁盤目(マス目の数:100)の切れ込みを入れた。なお、切れ込みの深さは、粘着剤層(5μm)を完全に切り込む深さであるが、基材(80μm)には深く切り込まない程度(具体的には5μm以上、50μm未満)となるように調整した。
【0124】
そして、当該粘着剤層の面上に、セロハン粘着テープ(ニチバン社製,製品名「セロテープ(登録商標)」)を貼付し、23℃、50%RH(相対湿度)で20分間静置後、一方の手で半導体加工用シートを押さえながら、他方の手で、上記セロハン粘着テープの端を持ち、半導体加工用シートに対して直角の方向に当該セロハン粘着テープを引っ張り、粘着剤層の面上から瞬間的に剥離した。
【0125】
セロハン粘着テープを剥離後、半導体加工用シートの粘着剤層上の碁盤目の切れ込みを目視で確認し、粘着剤層と基材との剥離が生じているマス目の数を数えた。結果を表1に示す。
【0126】
なお、上述した、剥離したマス目の数は、紫外線照射後における半導体加工用シートにおける、粘着剤層と基材との層間密着性の指標となる。すなわち、剥離したマス目の数が少ないほど、粘着剤層と基材との層間密着性が優れているといえる。
【0127】
〔試験例4〕(表面抵抗率の測定)
実施例および比較例にて製造した半導体加工用シートを100mm×100mmのサイズに裁断し、これを表面抵抗率測定用サンプル(UV照射前)とした。
【0128】
また、同様に裁断した半導体加工用シートに対し、剥離シートを付けたまま、紫外線照射装置(リンテック社製,製品名「RAD-2000」)を用いて、空気下にて、紫外線(UV)照射(照度:200mW/cm,光量:180mJ/cm)を行って粘着剤層を硬化させ、これを表面抵抗率測定用サンプル(UV照射後)とした。
【0129】
上述の通り取得した2種の表面抵抗率測定用サンプルを、23℃、50%相対湿度下で24時間調湿したのち、剥離シートを剥離して露出した粘着剤層の露出面について、DIGITAL ELECTROMETER(ADVANTEST社製)を用いて印加電圧100Vで、表面抵抗率(Ω/□)を測定した。それぞれの結果を表1に示す。
【0130】
〔試験例5〕(チップ付き引張測定)
実施例および比較例で作製した半導体加工用シートを10mm×140mmのサイズに裁断した。この裁断後の半導体加工用シートから剥離シートを剥離して露出した粘着剤層の露出面に対し、試験例2と同様にして、ダイシング済みのチップ(1mm×1mmのサイズのチップが、10×100個)を、ラミネーターを用いて転写した。
【0131】
続いて、チップが積層された半導体加工用シートにおける基材側の面に対し、紫外線照射装置(リンテック社製,製品名「RAD-2000」)を用いて、窒素下にて、紫外線(UV)照射(照度:200mW/cm,光量:180mJ/cm)を行い、粘着剤層を硬化させた。
【0132】
続いて、粘着剤層を硬化した後のチップ付き半導体加工用シートを、引張試験機(オリエンテック社製,製品名「テンシロンRTA-T-2M」)に設置した。そして、半導体加工用シート中央部における2つのチップの間の距離(μm)を測定し、引張試験前のチップ間隔とした。
【0133】
その後、JIS K7161:2014に準拠して、温度23℃および相対湿度50%において、上記引張試験機を用いて、チャック間距離100mm、引張速度200mm/minにて引張試験を行い、チャック間距離が110mmになるまで引張を実施し、そのまま4分間保持した。そして、上記の通りチップ間隔を測定した2つのチップの間の距離(μm)を測定し、引張試験後のチップ間隔とした。
【0134】
以上のように得られた引張試験後のチップ間隔から引張試験前のチップ間隔を差し引くことで、引張試験前後におけるチップ間隔の差(μm)を得た。さらに、同様の測定を、異なる2つのチップについても行い、これにより得られた2つのチップ間隔の差の平均値を算出し、これをチップ付き引張測定に係るチップ間隔(μm)として表1に示す。
【0135】
なお、以上の測定のために選択した2組のチップ(計4個のチップ)は、それらが、半導体加工用シートの基材の成形時の押出方向(MD方向)に対して平行な直線に並ぶように選択した。
【0136】
〔試験例6〕(ゲル分率の測定)
〔実施例1〕の工程(4)の欄に記載した方法と同様にして、剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET381031」)上に、厚さ5μmの粘着剤層が形成されてなる積層体を得た。さらに、当該積層体における粘着剤層側の面に、剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET382150」)の剥離面を貼り合わせることで、ゲル分率測定用シートを得た。
【0137】
得られたゲル分率測定用シートを80mm×80mmのサイズに裁断し、その片面に対して、紫外線照射装置(リンテック社製,製品名「RAD-2000」)を用いて、空気下にて、紫外線(UV)照射(照度:200mW/cm,光量:180mJ/cm)を行うことで、粘着剤層を硬化させた。
【0138】
次いで、両面の剥離シートを除去して得られる硬化済みの粘着剤層(粘着剤)を、ポリエステル製メッシュ(メッシュ数:200メッシュ/インチ)に包み、粘着剤のみの質量を精密天秤にて秤量した。このときの質量をM1とした。
【0139】
次に、酢酸エチル溶剤に、上述したメッシュで包んだ粘着剤を室温(23℃)で24時間浸漬させた。その後、粘着剤を含むメッシュを酢酸エチル溶剤から取り出し、粘着剤を、温度23℃、50%RHの環境下で24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。そして、乾燥後の粘着剤のみの質量を精密天秤にて秤量した。このときの質量をM2とした。
【0140】
そして、(M2/M1)×100の計算を行うことで、UV照射後の粘着剤のゲル分率(%)を算出した。結果を表1に示す。
【0141】
【表1】
【0142】
表1から分かるように、実施例で得られた半導体加工用シートは、比較例に比べて、エキスパンド量が大きく、且つ、チップ付き引張測定におけるチップ間隔の値が大きかった。そのため、実施例で得られた半導体加工用シートは、ダイシングを行わない場合であっても良好にエキスパンドできることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明の半導体加工用シートは、半導体部材の加工のために好適に使用することができる。