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特開2023-108429ジンを含有する低甘味度アルコール飲料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108429
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】ジンを含有する低甘味度アルコール飲料
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/04 20190101AFI20230728BHJP
【FI】
C12G3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009555
(22)【出願日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100163784
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 健志
(72)【発明者】
【氏名】土肥 真路
(72)【発明者】
【氏名】三浦 康資
【テーマコード(参考)】
4B115
【Fターム(参考)】
4B115LG02
4B115LH11
4B115LP01
4B115LP02
(57)【要約】
【課題】本発明は、ジンを含有し、甘味度が2以下であるアルコール飲料において、飲料の飲みづらさが改善され、ドリンカビリティーが向上したアルコール飲料を提供することを目的とする。
【解決手段】ジンを含有し、甘味度が2以下である容器詰め炭酸アルコール飲料において、pHを3.0以上5.0未満に調整し、クエン酸換算の酸度を0.05g/100ml以下に調整する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジンを含む容器詰めアルコール飲料であって、
甘味度が2以下であり、
pHが3.0以上5.0未満であり、
クエン酸換算の酸度が0.05g/100ml以下である、
前記アルコール飲料。
【請求項2】
アルコール含有量が1~16v/v%である、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
炭酸ガスを含有する、請求項1又は2に記載の飲料。
【請求項4】
多糖類を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の飲料。
【請求項5】
多糖類の含有量が2.5重量%以下である、請求項4に記載の飲料。
【請求項6】
多糖類が、デキストリン、ポリデキストロース、及び難消化性グルカンからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項4又は5に記載の飲料。
【請求項7】
多糖類がデキストリンである、請求項6に記載の飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は飲料に関し、より具体的には、ジンを含有し、且つ甘味度が2以下であるアルコール飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RTDに代表されるアルコール飲料の人気が高まっている。RTDとは、「Ready to Drink」の略語であり、それには、そのまますぐ飲用できる缶チューハイや缶カクテル、缶ハイボールなどのアルコール飲料が包含される。
【0003】
RTD用の製造品を含め、市場におけるアルコール飲料製品の中に、ジンを利用したアルコール飲料がある。ジンは蒸留酒の一種であり、市販品の多くはジュニパーベリーなどの特徴的な原料に由来する香りを有しており、その香りが多くの消費者に好まれている。ジンは、炭酸水などで割って飲用されることが見られるが、市場ではジントニックなどのカクテルとして飲用されることも多く、そのようなカクテルのRTD製品も存在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の通り、ジンを利用したアルコール飲料として、市場ではジントニックなどのカクテルがよく見られる。このようなカクテルは、多くの場合、甘味が強く付与されているため、ジン由来の雑味は大きく抑えられているものの、ジン特有の味わいや香りが十分に感じられないことがあった。また、ジンを含む甘味の強いカクテルは、特に食事中、食事と一緒では飲みにくいという消費者の声もあった。
【0005】
本発明者らは、ジン特有の味わいや香りが十分に感じられる嗜好性の高いアルコール飲料を開発する過程において、飲料の甘味度を低下させることでジン特有の味わいや香りが感じられやすくなる一方で、甘味度が2以下になるとドリンカビリティーが好ましくない程度に低下してしまうという問題点が生じることを見出した。
【0006】
そこで、本発明は、ジンを含有し、甘味度が2以下であるアルコール飲料において、飲料の飲みづらさが改善され、ドリンカビリティーが向上したアルコール飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決する手段を見出すために検討したところ、飲料のpHと酸度を特定範囲に調整することが有効であることを見出した。また、所定量の多糖類を配合することで更に好ましい効果が得られることを見出した。すなわち、本発明は、これらに限定されないが、以下のものに関する。
【0008】
(1)ジンを含む容器詰めアルコール飲料であって、
甘味度が2以下であり、
pHが3.0以上5.0未満であり、
クエン酸換算の酸度が0.05g/100ml以下である、
前記アルコール飲料。
(2)アルコール含有量が1~16v/v%である、(1)に記載の飲料。
(3)炭酸ガスを含有する、(1)又は(2)に記載の飲料。
(4)多糖類を含有する、(1)~(3)のいずれか1に記載の飲料。
(5)多糖類の含有量が2.5重量%以下である、(4)に記載の飲料。
(6)多糖類が、デキストリン、ポリデキストロース、及び難消化性グルカンからなる群より選択される少なくとも一種である、(4)又は(5)に記載の飲料。
(7)多糖類がデキストリンである、(6)に記載の飲料。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ジンを含有し、甘味度が2以下であるアルコール飲料において、飲料の飲みづらさが改善され、ドリンカビリティーが向上したアルコール飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のアルコール飲料について、以下に説明する。なお、特に断りがない限り、本明細書において用いられる「ppm」、「ppb」、及び「重量%」は、重量/容量(w/v)のppm、ppb、及び重量%をそれぞれ意味する。
【0011】
本発明の一態様は、ジンを含む容器詰めアルコール飲料であって、甘味度が2以下であり、pHが3.0以上5.0未満であり、クエン酸換算の酸度が0.05g/100ml以下である、前記アルコール飲料である。かかる構成を採用することにより、ジンを含有し、甘味度が2以下であるアルコール飲料において、飲料の飲みづらさが改善され、ドリンカビリティーを向上させることができる。ここで、本明細書における「飲みづらさの改善」とは、ドライでソリッドな後口を、まろやかな味わいで丸みを帯びた後口に改善することを意味する。また、本明細書における「ドリンカビリティー」とは、飲料が有する、飲みやすく、何杯でも飲みたくなる性質を意味する。
【0012】
(ジン)
本発明の飲料は、ジンを含有する。ジンは蒸留酒の一種であり、大麦、ライ麦、ジャガイモ等の穀類の発酵液にジュニパーベリー(セイヨウネズの実)の香りを付けた蒸留酒である。本発明において、ジンは自体公知の方法を用いて自ら作製したものを用いてもよく、或いは、酒類の原料として市場で入手可能な製造品を用いてもよい。本発明では、市場で入手可能な製造品が好適に用いられる。本発明においてジンは一種のみを用いてもよく、二種以上のジンを組み合わせて用いてもよい。
【0013】
本発明において、飲料中のジンの含有量は特に限定されず、種々の目的に応じて適宜設定することができる。本発明の飲料におけるジンの含有量は、飲料中におけるジン由来のアルコールの量(v/v%)で示される。例えば、アルコール含有量(アルコール度数)が40v/v%のジンを10v/v%の量で飲料に含有させた場合、当該飲料におけるジンの含有量は、飲料中のジン由来のアルコールの量である4v/v%として表される。本発明の飲料におけるジンの含有量については特に限定されないが、例えば0.01v/v%以上であり、好ましくは0.1v/v%以上、より好ましくは0.5v/v%以上である。ジンの含有量の上限値も特に限定されず、本発明の飲料におけるジンの含有量は、例えば15v/v%以下、好ましくは10v/v%以下、より好ましくは7v/v%以下である。本発明の飲料におけるジンの含有量は、特に限定されないが、例えば0.01~15v/v%、好ましくは0.1~10v/v%、より好ましくは0.5~7v/v%である。本発明の飲料が二種以上のジンを含む場合、上記の含有量はジンの合計含有量を意味する。
【0014】
(甘味度)
本発明の飲料は、甘味度が2以下である。飲料の甘味度が2以下であることにより、飲料におけるジン特有の味わいや香りが十分に感じられやすくなる傾向にある。本発明の飲料の甘味度は、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.1以下で、最も好ましくは0(すなわち甘味料不使用)である。
【0015】
本明細書における甘味度とは、飲料100g中にショ糖1g含有する飲料の甘さを「1」とした、飲料の甘味を表す指標である。当該飲料の甘味度は、各甘味成分の含有量を、ショ糖の甘味1に対する当該甘味成分の甘味の相対比に基づいて、ショ糖の相当量に換算して、次いで当該飲料に含まれる全ての甘味成分のショ糖甘味換算量(果汁やエキス等由来の甘味成分も含む)を総計することによって求められる。ショ糖の甘味1に対する各種代表的な甘味成分の甘味の相対比は、下表に示す。下表に記載のない甘味成分については、当該甘味成分を製造あるいは販売しているメーカーが提示する甘味度を用いたり、官能評価より甘味度を求めたりすることができる。
【0016】
【表1】
【0017】
飲料の甘味度は、甘味成分を用いて調整することができる。飲料中に上記甘味成分を直接配合してもよいし、甘味成分を含有する原料、例えば果汁やエキス等を配合してもよい。また、甘味成分は1種のみならず2種以上を配合してもよい。好ましい甘味成分は、果糖、異性化糖、ブドウ糖、ショ糖、乳糖、オリゴ糖(マルトオリゴ糖など)、及び糖アルコール(エリスリトール、キシリトールなど)であり、特に好ましい甘味成分は、果糖とショ糖である。本発明の飲料は、甘味度を低く抑える観点から、高甘味度甘味料(アセスルファムカリウム、スクラロースなど)を含有しないことが好ましい。
【0018】
(pH)
本発明の飲料は、pHが3.0以上5.0未満である。飲料のpHを前記範囲に調整することにより、ジンを含有する飲料の飲みづらさを効果的に改善し、ドリンカビリティーを向上させることができる。pHが3.0未満の場合、飲料の飲みづらさとドリンカビリティーは改善されたとしても、酸味等の観点でジンを含有する飲料として好ましくない香味になる傾向がある。本発明の飲料のpHは、上記範囲であれば特に限定されないが、pHの下限としては、好ましくは3.2以上、より好ましくは3.4以上であり、pHの上限としては、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.8以下、さらに好ましくは3.6以下である。
【0019】
本発明において、飲料のpHは、炭酸ガス抜きの状態で測定されたpHを意味する。したがって、例えば、飲料のガス抜きと振とうの工程を実施したのちにpHを測定することができる。
【0020】
pHの調整のためには、クエン酸、リンゴ酸、リン酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、グルコン酸、フィチン酸、酢酸、フマル酸、重曹、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、炭酸カリウムなどのpH調整剤を用いることができる。これらのpH調整剤は、一種又は二種以上を組み合わせ使用することができる。
【0021】
(酸度)
本発明の飲料は、クエン酸換算の酸度が0.05g/100ml以下である。飲料の酸度を前記範囲に調整することにより、ジンを含有する飲料の飲みづらさを効果的に改善し、ドリンカビリティーを向上させることができる。本発明の飲料の酸度(クエン酸換算)は、上記範囲であれば特に限定されないが、酸度の下限としては、例えば0.0005g/100ml以上であり、好ましくは0.001g/100ml以上、より好ましくは0.002g/100ml以上である。本発明の飲料の酸度(クエン酸換算)は、好適には0.002~0.05g/100mlである。
【0022】
本明細書において用いる「酸度」とは、炭酸ガス抜きの状態における酸の含有量の指標となる値であり、炭酸ガス抜きの状態で、一定量の飲料(試料)に水酸化ナトリウムなどのアルカリを加えて中和する際の、中和に要した(pH7.0)アルカリの量から計算により求めることができる。酸度の測定には、自動滴定装置(Mettler toledo DL50など)を用いることができる。本発明において、酸度は、クエン酸量に換算した値(中和量から、飲料に含まれている酸が全てクエン酸であると仮定して計算して求める)を用いる。
【0023】
酸度の調整には、クエン酸、リンゴ酸、リン酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、グルコン酸、フィチン酸、酢酸、フマル酸などの有機又は無機酸を用いることができる
【0024】
(アルコール含有量)
本発明の飲料は、アルコールを含有する。本明細書に記載の「アルコール」との用語は、特に断らない限りエタノールを意味する。
【0025】
本発明の飲料のアルコール含有量は、特に限定されないが、例えば1~16v/v%であり、好ましくは3~16v/v%、より好ましくは3~12v/v%、さらに好ましくは3~10v/v%である。
【0026】
本発明の飲料におけるアルコール含有量は、上述したジンを用いて調整してもよく、或いは、ジンとそれ以外の酒類を用いて調整してもよい。すなわち、本発明の飲料は、ジン以外の酒類を含んでいてもよい。ジン以外の酒類としては、例えばジン以外の蒸留酒を用いることができ、当該蒸留酒はその原料や製造方法によって限定されない。ジン以外の蒸留酒としては、例えば、スピリッツ(例えば、ウオッカ、ラム、テキーラ、ジン、アクアビット)、ニュートラルスピリッツ、リキュール類、焼酎、原料用アルコール等が挙げられる。本発明で用いられるジン以外の蒸留酒は、好ましくはニュートラルスピリッツである。
【0027】
本明細書においては、飲料のアルコール含有量は、公知のいずれの方法によっても測定することができるが、例えば、振動式密度計によって測定することができる。具体的には、飲料から濾過又は超音波によって必要に応じて炭酸ガスを抜いた試料を調製し、そして、その試料を直火蒸留し、得られた留液の15℃における密度を測定し、国税庁所定分析法(平19国税庁訓令第6号、平成19年6月22日改訂)の付表である「第2表 アルコール分と密度(15℃)及び比重(15/15℃)換算表」を用いて換算して求めることができる。本発明においてアルコール含有量はアルコール度数(v/v%)と同義である。
【0028】
(炭酸ガス)
本発明の飲料は、炭酸ガスを含んでもよい。炭酸ガスは、当業者に通常知られる方法を用いて飲料に付与することができ、例えば、これらに限定されないが、二酸化炭素を加圧下で飲料に溶解させてもよいし、ツーヘンハーゲン社のカーボネーター等のミキサーを用いて配管中で二酸化炭素と飲料とを混合してもよいし、また、二酸化炭素が充満したタンク中に飲料を噴霧することにより二酸化炭素を飲料に吸収させてもよいし、飲料と炭酸水とを混合してもよい。これらの手段を適宜用いて炭酸ガス圧を調節する。
【0029】
本発明の飲料が炭酸ガスを含有する場合、その炭酸ガス圧は、特に限定されないが、好ましくは0.7~4.5kgf/cm、より好ましくは0.8~2.8kgf/cmである。本発明において、炭酸ガス圧は、京都電子工業製ガスボリューム測定装置GVA-500Aを用いて測定することができる。例えば、試料温度を20℃にし、前記ガスボリューム測定装置において容器内空気中のガス抜き(スニフト)、振とう後、炭酸ガス圧を測定する。本明細書においては、特に断りがない限り、炭酸ガス圧は、20℃における炭酸ガス圧を意味する。
【0030】
(多糖類)
本発明の飲料は、多糖類を含有してもよい。多糖類を含有させることによって、ジンを含むアルコール飲料の飲みづらさの改善効果が高まり、飲料のドリンカビリティーをさらに向上させることができる。本明細書における「多糖類」とは、10個以上の単糖がグリコシド結合によって結合した糖類を意味する。すなわち、「多糖類」は、糖鎖を構成する単糖の数が10個以上の糖類である。好ましい多糖類の例は、鎖状多糖類、すなわち、構成糖が直鎖状及び/又は分岐鎖状に結合した多糖類である。構成糖は特に限定されないが、糖と糖アルコールが含まれ、糖酸は含まれない。構成糖の例は、グルコース、ソルビトール、フルクトース、キシロース、ガラクトース、マンノースが挙げられ、中でも、グルコース、ソルビトールが好ましい。好ましい多糖類の構成糖の数の大部分、例えば90%以上は前記の構成糖の例から選択されうるが、残りの微量構成糖は、他の構成糖であってもよい。構成糖の結合方式は、典型的には、α-1,2結合、α-1,3結合、α-1,4結合、α-1,6結合、β-1,2結合、β-1,3結合、β-1,4結合、及びβ-1,6結合からなる群から選択される。
【0031】
本発明において用いられる好ましい多糖類の例は、デンプン、β-グルカン、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、デキストリン、難消化性グルカン、イソマルトデキストリンであり、好ましくは、多糖類は、デキストリン、ポリデキストロース、及び難消化性グルカンからなる群より選択される。本発明において多糖類は、一種のみを用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。多糖類を二種以上用いた場合、本発明の飲料における多糖類の含有量は、各種多糖類の合計含有量を意味する。
【0032】
本明細書における「デキストリン」は、デンプン、例えばコーンスターチや馬鈴薯デンプンを化学的あるいは酵素的な方法により低分子化して得られた炭水化物及びその同等物を意味する。その市販品の例は、「サンデック#150」(三和澱粉工業株式会社)である。
【0033】
本明細書における「ポリデキストロース」は、グルコース(ブドウ糖)とソルビトールを、クエン酸の存在下で重合させて得られた水溶性食物繊維を意味する。その市販品の例は「ライテス」(ダニスコジャパン株式会社)である。
【0034】
本明細書における「難消化性グルカン」は、難消化性のグルカン(グルコースポリマー)を意味し、その糖鎖には、グルコース以外の単糖又はこれらの単糖を含むオリゴ糖等が含まれていてもよい。難消化性グルカンは、近年、酸触媒の代わりに活性炭を反応触媒として用いて糖を加熱重合させて得られた、新たな水溶性食物繊維である。その例として、「フィットファイバー#80」(登録商標、日本食品化工株式会社製)等が挙げられる。
【0035】
他の多糖類の意味及び定義は当業者に周知であり、そしてそれらの多糖類は、公知の方法で製造することができるか、又は市場で入手可能である。
【0036】
一態様において、本発明のアルコール飲料は、デキストリンを含有する。当該態様の飲料におけるデキストリンの含有量の例は0.01~2.5重量%であるが、特にこれに限定されない。本発明の飲料におけるデキストリンの含有量は、好ましくは0.05~2.0重量%、より好ましくは0.1~2.0重量%、さらにより好ましくは0.1~0.5重量%である。
【0037】
一態様において、本発明の飲料は、ポリデキストロースを含有する。当該態様の飲料におけるポリデキストロースの含有量の例は0.01~2.5重量%であるが、特にこれに限定されない。本発明の飲料におけるポリデキストロースの含有量は、好ましくは0.05~2.0重量%、より好ましくは0.1~1.5重量%、さらにより好ましくは0.1~0.5重量%である。
【0038】
一態様において、本発明のアルコール飲料は、難消化性グルカンを含有する。当該態様の飲料における難消化性グルカンの含有量の例は0.01~2.5重量%であるが、特にこれに限定されない。本発明の飲料における難消化性グルカンの含有量は、好ましくは0.05~2.0重量%、より好ましくは0.1~2.0重量%、さらにより好ましくは0.1~0.5重量%である。
【0039】
別の態様において、本発明のアルコール飲料は、ポリデキストロース及びデキストリン、ポリデキストロース及び難消化性グルカン、デキストリン及び難消化性グルカン、又はポリデキストロース、デキストリン、及び難消化性グルカンを含有する。
【0040】
飲料中のデキストリン、ポリデキストロース、難消化性グルカンの含有量はHPLCやLC-MSなどの当業者に公知のいずれの方法を用いて測定してもよいが、例えば以下の条件のHPLCで測定することができる。
<多糖類の分析条件>
測定機器:島津製作所 LC-20AD
カラム:ULTRON PS-80N φ8.0 mm×300 mm
カラム温度:80 ℃
検出器:示差屈折計 島津製作所 RID-20A
移動相:水
注入量:20 μL
【0041】
(果汁)
本発明の飲料は、果汁を含有してもよい。果汁は、果実を搾汁して得られる果汁をそのまま使用するストレート果汁、濃縮した濃縮果汁などのいずれの形態であってもよい。また、透明果汁、混濁果汁を使用することもでき、果実の外皮を含む全果を破砕し種子など特に粗剛な固形物のみを除いた全果果汁、果実を裏ごしした果実ピューレ、或いは、乾燥果実の果肉を破砕もしくは抽出した果汁を用いることもできる。
【0042】
果汁の種類は、特に限定されないが、例えば、柑橘類果汁(オレンジ果汁、うんしゅうみかん果汁、グレープフルーツ果汁、レモン果汁、ライム果汁、柚子果汁、いよかん果汁、なつみかん果汁、はっさく果汁、ポンカン果汁、シイクワシャー果汁、かぼす果汁等)、リンゴ果汁、ブドウ果汁、モモ果汁、熱帯果実果汁(パイナップル果汁、グァバ果汁、バナナ果汁、マンゴー果汁、アセロラ果汁、ライチ果汁、パパイヤ果汁、パッションフルーツ果汁等)、その他果実の果汁(ウメ果汁、ナシ果汁、アンズ果汁、スモモ果汁、ベリー果汁、キウイフルーツ果汁等)、イチゴ果汁、メロン果汁などが挙げられる。これらの果汁は、1種類を単独使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0043】
本発明の飲料における果汁の含有量は、特に限定されないが、果汁に含まれる糖と他の原料に由来する合計の甘味度が2を超えない範囲で含有させることができる。
飲料中の「果汁率」については、飲料100g中に配合される果汁配合量(g)を用いて下記換算式によって計算することとする。また濃縮倍率を算出する際はJAS規格に準ずるものとし、果汁に加えられた糖質、はちみつ等の糖用屈折計示度を除くものとする。
果汁率(w/w%)=<果汁配合量(g)>×<濃縮倍率>/100mL/<飲料の比重>×100
【0044】
(他の成分)
本発明の飲料には、他にも、本発明の効果を損なわない限り、飲料に通常配合する添加剤、例えば、香料、ビタミン、色素類、酸化防止剤、保存料、調味料、エキス類、品質安定剤等を配合することができる。
【0045】
(飲料)
本発明のアルコール飲料の種類は特に限定されず、例えば、ハイボール、チューハイ(酎ハイ)、カクテル、サワー等とすることができる。「ハイボール」、「チューハイ」との用語は、本発明の飲料との関連で用いられる場合、水と蒸留酒と炭酸とを含有する飲料を意味する。ハイボール、チューハイは、さらに果汁を含有してもよい。また、「サワー」との用語は、本発明の飲料との関連で用いられる場合、スピリッツと、柑橘類等の酸味のある果汁と、甘味成分と、炭酸とを含有する飲料を意味する。「カクテル」との用語は、本発明の飲料との関連で用いられる場合、ベースとなる酒類に果汁等を混ぜて作られたアルコール飲料を意味する。
【0046】
本発明の飲料は、容器詰めの形態で提供される。容器の形態には、缶等の金属容器、ペットボトル、紙パック、瓶、パウチなどが含まれるが、これらに限定されない。例えば、本発明の飲料を容器に充填した後にレトルト殺菌等の加熱殺菌を行う方法や、飲料を殺菌して容器に充填する方法を通じて、殺菌された容器詰め製品を製造することができる。
【0047】
(製造方法)
本発明の飲料は、上述した成分を適宜配合することにより製造することができる。本発明の飲料の製造において、各種成分の配合順序は特に限定されるものではない。また、本発明の飲料の製造においては、上記に示した成分及び材料を配合する工程やそれらの含有量を調整する工程も含むことができる。本発明の飲料の製造における飲料中の成分の種類やその含有量等の各種要素については、本発明の飲料に関して上記した通りであるか、それらから自明である。
【0048】
また、本発明の飲料の製造においては、必要に応じて飲料を加熱殺菌する工程が含まれ、また、飲料の容器詰めを行う工程も含むことができ、これらの工程を経て、容器詰め飲料とすることができる。加熱殺菌を行う場合、その方法は特に限定されず、例えばUHT殺菌及びレトルト殺菌等の通常の手法を用いて行うことができる。加熱殺菌処理の温度は特に限定されないが、例えば65~130℃、好ましくは85~120℃である。加熱殺菌処理の時間は特に限定されないが、例えば10~40分である。ただし、上記の条件と同等の殺菌価が得られれば適当な温度で数秒、例えば5~30秒での加熱殺菌処理でもよい。
【0049】
(関連する方法)
本発明は、別の側面では、ジン含有し、且つ甘味度が2以下である容器詰めアルコール飲料において、当該アルコール飲料のドリンカビリティーを向上させる方法である。当該方法は、以下の工程を含む:
当該飲料のpHを3.0以上5.0未満に調整する工程、及び
当該飲料の酸度(クエン酸換算)を0.05g/100ml以下に調整する工程。
【0050】
当該方法は、当該飲料中の多糖類の含有量が2.5重量%以下となるように原料を配合する工程を更に含んでもよい。
【0051】
飲料中の成分の種類、その含有量、酸度、pH、炭酸ガス圧、及びそれらの好ましい範囲、並びにその調整方法については、本発明の飲料に関して上記した通りであるか、それらから自明である。そのタイミングも限定されない。例えば、上記工程をすべて同時に行ってもよいし、別々に行ってもよいし、それらの工程の順番を入れ替えてもよい。最終的に得られた飲料が、上記の条件を満たせばよい。
【0052】
(数値範囲)
明確化のために記載すると、本明細書における数値範囲は、その端点、即ち下限値及び上限値を含む。
【実施例0053】
以下、実験例を示して本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0054】
<参考例>
ジンを含有するアルコール飲料について、各種成分の最終濃度が下表に示した濃度となるように飲料サンプルを調製した。具体的には、炭酸水にジンを混合して飲料サンプルを調製した。飲料サンプルに関しては、必要に応じて原料用アルコールを添加して飲料のアルコール含有量を調整し、果糖ブドウ糖液糖を添加して甘味度を調整した。参考例1、2、5及び6においては、原料に用いたジンはジン製品A(サントリージン 翠(SUI):アルコール度数40v/v%)とし、参考例3ではジン製品B(ビーフィータージン:アルコール度数40v/v%)とし、参考例4ではジン製品C(ゴードンロンドン ドライジン:アルコール度数43v/v%)とした。飲料サンプルについては、いずれもアルミ缶に封入して容器詰め飲料とした。ジンの含有量は、飲料中のジン由来のアルコールの量で表し、以下も同様とした。
【0055】
得られた飲料サンプルについて、2名の専門パネルにて官能評価を行った。官能評価の項目及び基準は以下の通りとした。
【0056】
(味わいのまろやかさ)
1:味わいがまろやかでない
2:味わいがあまりまろやかでない
3:味わいがややまろやかである
4:味わいがまろやかである
5:味わいがとてもまろやかである
【0057】
(ドリンカビリティー)
1:ドリンカビリティーが低い
2:ドリンカビリティーがやや低い
3:ドリンカビリティーがやや高い
4:ドリンカビリティーが高い
5:ドリンカビリティーがとても高い
【0058】
評価結果については、各専門パネルが付けた評価点数の平均値とした。また、アルコール飲料としての好ましさを総合的に表す評価として、専門パネル全員での合議により以下の基準で総合評価を行った。
【0059】
(総合評価)
×:好ましくない
△:あまり好ましくない
〇:やや好ましい
◎:好ましい
【0060】
【表2】
【0061】
結果は上記の通りであり、ジンを含むアルコール飲料において甘味度が2以下のサンプルはいずれも、味わいのまろやかさが感じられにくいために飲みづらく、ドリンカビリティーも低く感じられた。
【0062】
<実験例1>
ジン、クエン酸(無水)、炭酸水、及び原料用アルコールを用いて、各種成分の最終濃度が下表に示した濃度となるように飲料サンプルを調製した。具体的には、炭酸水に上記ジン製品Aを混合し、クエン酸(無水)及びデキストリン(サンデック#150、三和澱粉工業株式会社)を添加して飲料サンプルを調製し、必要に応じて原料用アルコールを添加して飲料のアルコール含有量を調整した。飲料サンプルは、いずれもアルミ缶に封入して容器詰め飲料とした。飲料サンプルの甘味度はいずれも0であった。表中の酸度は飲料中のクエン酸の含有量を表しており、以下も同様である。
【0063】
得られた飲料サンプルについて、2名の専門パネルにて官能評価を行った。官能評価では、参考例と同様の基準を用いて「味わいのまろやかさ」及び「ドリンカビリティー」について調べた。また、本実験例では評価項目として「酸味」と「後口のキレ」をさらに加え、それぞれ以下の基準で評価を行った。
【0064】
(酸味)
1:酸味が強い
2:酸味がやや強い
3:酸味がやや弱い
4:酸味が弱い
5:酸味がとても弱い
【0065】
(後口のキレ)
1:後口のキレが悪い
2:後口のキレがやや悪い
3:後口のキレがやや良い
4:後口のキレが良い
5:後口のキレがとても良い
【0066】
評価結果については、各専門パネルが付けた評価点数の平均値とした。また、参考例と同様の基準及び方法を用いて、アルコール飲料としての好ましさを表す総合評価を行った。
【0067】
【表3-1】
【0068】
【表3-2】
【0069】
結果は上記の通りであり、ジンを含むアルコール飲料の甘味度が低い場合、当該アルコール飲料のpHと酸度(クエン酸換算)を所定の範囲に調整することによって、味わいがまろやかに感じられて飲料の飲みづらさが改善されるとともに、ドリンカビリティーも改善されることが示された。また、多糖類を添加すると、味わいのまろやかさとドリンカビリティーの両方ともがさらに改善されることが示された。
【0070】
<実験例2>
原料として用いるジンの種類を変更して、各種成分の最終濃度が下表に示した濃度となるように飲料サンプルを調製した。飲料サンプルの調製は実験例1と同様にして行った。原料に用いたジンは、参考例で使用したジン製品B及びジン製品Cとした。飲料サンプルはいずれも缶への封入を行い、容器詰め飲料とした。飲料サンプルの甘味度はいずれも0であった。
【0071】
得られた飲料サンプルについて、2名の専門パネルにて官能評価を行った。官能評価は実験例1と同様の基準及び方法を用いて、「味わいのまろやかさ」、「ドリンカビリティー」、「酸味」、「後口のキレ」、及び総合評価について調べた。
【0072】
【表4】
【0073】
結果は上記の通りであり、原料となるジンの種類を変更しても、pH及び酸度(クエン酸換算)の調整、並びに多糖類の配合により味わいのまろやかさとドリンカビリティーが改善されるという効果が得られた。
【0074】
<実験例3>
炭酸ガス圧、アルコール含有量、及び多糖類含有量を変更した飲料に関して、各種成分の最終濃度が下表に示した濃度となるように飲料サンプルを調製した。飲料サンプルは実験例1と同様にして調製し、いずれも缶への封入を行って容器詰め飲料とした。飲料サンプルの甘味度はいずれも0であった。
【0075】
得られた飲料サンプルについて、2名の専門パネルにて官能評価を行った。官能評価は実験例1と同様の基準及び方法を用いて、「味わいのまろやかさ」、「ドリンカビリティー」、「酸味」、「後口のキレ」、及び総合評価について調べた。
【0076】
【表5】
【0077】
結果は上記の通りであり、炭酸ガス圧、アルコール含有量、及び多糖類含有量を変更した飲料においても、味わいのまろやかさとドリンカビリティーが改善されるという効果が得られた。