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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108432
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】スプロケットユニット
(51)【国際特許分類】
   B66B 23/02 20060101AFI20230728BHJP
   F16D 1/08 20060101ALI20230728BHJP
   F16D 1/06 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
B66B23/02 B
F16D1/08 200
F16D1/06 200
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009560
(22)【出願日】2022-01-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅田 宣昭
【テーマコード(参考)】
3F321
【Fターム(参考)】
3F321CA11
(57)【要約】
【課題】標準化が容易で手配や管理を容易に行うことができる、スプロケットユニットを提供する。
【解決手段】スプロケットユニットは、例えば、スプロケット本体と、調整カラー部材と、ボス部材を備える。スプロケット本体は、乗客コンベアの駆動装置側の出力軸を挿入可能な第一の開口部を備える。調整カラー部材は、第一の開口部に嵌合可能な外周部と、当該外周部より内径側で外周部と同軸で出力軸を挿入可能で第一の開口部の口径より縮径された第二の開口部と、を有する。ボス部材は、スプロケット本体の軸方向の長さを延長する延長軸部と、延長軸部に形成されスプロケット本体と同軸で出力軸を挿入可能な第三の開口部と、を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアの駆動装置側の出力軸を挿入可能な第一の開口部を備えるスプロケット本体と、
前記第一の開口部に嵌合可能な外周部と、当該外周部より内径側で前記外周部と同軸で前記出力軸を挿入可能で前記第一の開口部の口径より縮径された第二の開口部と、を有する調整カラー部材と、
前記スプロケット本体の軸方向の長さを延長する延長軸部と、前記延長軸部に形成され前記スプロケット本体と同軸で前記出力軸を挿入可能な第三の開口部と、を有する、ボス部材と、
を備える、スプロケットユニット。
【請求項2】
前記調整カラー部材は、前記第二の開口部の内径側に嵌合可能で前記第二の開口部の口径より縮径された第四の開口部を有する少なくとも一つの予備調整カラー部材を備え、
前記ボス部材は、前記第四の開口部に対応して前記第三の開口部の内径側に嵌合して前記第三の開口部の口径より縮径された第五の開口部を有する少なくとも一つの予備調整ボス部材と、
を備える、請求項1に記載のスプロケットユニット。
【請求項3】
前記調整カラー部材は、前記外周部から外径方向に突出した第一のキー部と、当該第一のキー部に対応する位置で前記第二の開口部から内径方向に突出した第二のキー部と、
を備える、請求項1または請求項2に記載のスプロケットユニット。
【請求項4】
前記調整カラー部材は、前記第一のキー部と異なる位置で、前記外周部から外径方向に突出した少なくとも一つの補助キー部を備える、請求項3に記載のスプロケットユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、スプロケットユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗客コンベアであるエスカレータや移動歩道(所謂、動く歩道)等は、移動するステップの駆動機構として、モータを駆動源とする減速機を備えている。この減速機の出力軸にはスプロケットが固定されている。そして、スプロケットにかけ渡された駆動チェーンが循環走行することで、踏段チェーンを走行させ、当該走行チェーンに接続された複数の踏段(移動ステップ)を、連続的に所定方向に移動させている。このような駆動機構に利用できるスプロケットの固定構造が種々提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63-57856号公報
【特許文献2】特開昭9-79356号公報
【特許文献3】実開平3-65022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、可動装置である乗客コンベアの寿命は、当該乗客コンベアが設置される施設の寿命に比べて短く、例えば、数十年でリニューアルされる場合がある。また、乗客コンベアは、新機種の開発が継続的に行われているため、寿命の訪れを待たずにリニューアルされる場合もある。このようなリニューアル作業は、設置された施設の休止時(例えば、夜間や休館日等)に行われる場合が多い。そのため、作業工程を複数工程に分割して、複数日に渡って少しずつ行われる場合がある。この場合、一部が新構造で一部が旧構造となる場合があるが、日中時間帯は乗客コンベアの運行が必要になるため、一時的に例えば、旧構造の減速機を用いて新構造の踏段を稼働させる場合がある。この場合、新構造の駆動チェーンを旧構造の変速機で駆動させる必要があるため、外周側が新構造の駆動チェーンに適合し、内径側が旧構造の減速機の出力軸に適合するような作業用スプロケットを一時的に用いる場合があった。しかしながら、旧構造の減速機の仕様は設置時期や用途、必要パワー等に応じて様々であり、利用されているスプロケットの軸径違いや軸方向の厚み違い等様々な種類が存在していた。そのため、リニューアル時に一時的に用いる作業用スプロケットも様々な種類を準備する必要があり、手配や管理が煩雑であるという問題があった。したがって、標準化が容易で手配や管理を容易に行うことができる、スプロケットユニットが提供できれば有意義である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のスプロケットユニットは、スプロケット本体と、調整カラー部材と、ボス部材を備える。スプロケット本体は、乗客コンベアの駆動装置側の出力軸を挿入可能な第一の開口部を備える。調整カラー部材は、第一の開口部に嵌合可能な外周部と、当該外周部より内径側で外周部と同軸で出力軸を挿入可能で第一の開口部の口径より縮径された第二の開口部と、を有する。ボス部材は、スプロケット本体の軸方向の長さを延長する延長軸部と、延長軸部に形成されスプロケット本体と同軸で出力軸を挿入可能な第三の開口部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態のスプロケットユニットをリニューアル作業時に適用可能な乗客コンベアの一例としてのエスカレータの構造を示す例示的かつ模式的な側面図である。
図2図2は、実施形態のスプロケットユニットが適用可能な減速機(出力軸)とそれに装着された旧構造のスプロケットの構成を示す例示的かつ模式的な説明図である。
図3図3は、実施形態のスプロケットユニットが適用可能な他の減速機(出力軸)とそれに装着された旧構造のスプロケットの構成を示す例示的かつ模式的な説明図である。
図4図4は、実施形態のスプロケットユニットのスプロケット本体と調整カラー部材とを組み合わせた状態を示す例示的かつ模式的な説明図である。
図5図5は、実施形態のスプロケットユニットの調整カラー部材の詳細な形状を示す例示的かつ模式的な説明図である。
図6図6は、実施形態のスプロケットユニットのスプロケット本体とボス部材とを組み合わせた状態を示す例示的かつ模式的な説明図である。
図7図7は、実施形態のスプロケットユニットの調整カラー部材に予備調整カラー部材を装着して多重構造とする場合を示す例示的かつ模式的な断面図である。
図8図8は、実施形態のスプロケットユニットのボス部材に予備調整ボス部材を装着して多重構造とする場合を示す例示的かつ模式的な断面図である。
図9図9は、実施形態のスプロケットユニットの調整カラー部材の変形例を示す例示的かつ模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、実施形態に係るスプロケットユニットを図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれ、以下の実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0008】
図1は、実施形態のスプロケットユニット10を適用可能な乗客コンベアの一例としてのエスカレータ12の構造を示す例示的かつ模式的な側面図である。エスカレータ12は、無端状に連結された複数の踏段14を周回(循環)移動させて動作することで乗客や荷物を運搬する。図1において、建造物(建築物)の上階側階床UFと下階側階床DFの間にトラス16が設置されている。トラス16上にはデッキ18が設置され、当該デッキ18に欄干パネル20が支持されている。また、欄干パネル20の上端部には欄干デッキ22が取り付けられ、この欄干デッキ22の上部に手摺レール24が設けられている。そして、手摺レール24の下部に欄干照明装置が取り付けられている。
【0009】
エスカレータ12の駆動機構は、主として、駆動源としてのモータ26と、減速機28と、駆動チェーン30と、駆動スプロケット32と、従動スプロケット34と、踏段チェーン36とを備えている。モータ26と減速機28とは、駆動装置Mを構成する。モータ26は、例えば、上階側に設けられている。モータ26の出力軸には、減速機28が取り付けられている。
【0010】
減速機28は、モータ26の回転を減速させ、モータ26の回転トルクを増幅させる。減速スプロケット38は、減速機28の出力軸に設けられ、複数の歯を有する。駆動チェーン30は、無端状に形成され、減速スプロケット38と駆動スプロケット32とに亘って掛けられている。駆動チェーン30は、減速機28を介して伝達されたモータ26の駆動力によって、駆動スプロケット32と減速スプロケット38との周りを循環走行することで、駆動スプロケット32を回転させる。すなわち、駆動チェーン30は、減速機28を介して伝達されたモータ26の駆動力を駆動スプロケット32に伝達する。駆動スプロケット32は、踏段チェーン36に噛み合う複数の歯を有し、駆動装置Mからの駆動力により回転する。
【0011】
エスカレータ12は、駆動スプロケット32と従動スプロケット34との間に掛け渡された踏段チェーン36を駆動させることで、無端状に連結された複数の踏段14を周回移動させて動作する。これにより、踏段チェーン36は、無端状に連結された複数の踏段14を走行させる。
【0012】
エスカレータ12が下降方向に稼動する場合、上方の乗り口(上階側乗降口UE)において、複数の踏段14の中で進行方向に向けて隣接する踏段14同士が水平状でトラス16内から進出される。そして、上部遷移カーブにおいて、隣接する踏段14間の段差が拡大されて、複数の踏段14は、階段状に遷移される。中間傾倒部において、複数の踏段14は、階段状で下降される。続いて、下部遷移カーブにおいて、隣接する踏段14間の段差が縮小されて、複数の踏段14は、水平状に遷移される。下方の降り口(下階側乗降口DE)において、複数の踏段14は、再び水平状となってトラス16内に進入する。複数の踏段14は、トラス16内に進入された後に上方に反転され、帰路側を水平状で上昇される。複数の踏段14は再度反転されて、上階側乗降口UEにおいて、トラス16内から進出される。上昇方向に稼動するエスカレータ12では上述の動作の逆の動作となる。このように、上階側乗降口UEおよび下階側乗降口DEにおいて、踏段14は、利用者を乗せる上面の踏み面を水平状として、トラス16内から進出し、またはトラス16内へ進入する。
【0013】
エスカレータ12は、複数の踏段14の進行方向における両脇に一対の欄干Wを備える。欄干Wは、主として、スカートガードパネル(図示省略)と、内デッキ40と、欄干パネル20と、欄干デッキ22と、手摺レール24、および手摺レール24上に設けられた手摺ベルト42と、から構成されている。スカートガードパネルは、複数の踏段14の走行方向(エスカレータ12が稼働する下降方向および上昇方向)に対して直交する方向(幅方向)の両側において近接して、かつ、上階側乗降口UEと下階側乗降口DEとの間に亘って設けられている。スカートガードパネルの上側には、内デッキ40が取り付けられている。内デッキ40の上側には、例えば、ガラス板等の透明または半透明の部材で構成される欄干パネル20が取り付けられている。欄干パネル20の外周に取り付けられた手摺レール24には、手摺ベルト42が移動可能に嵌め込まれている。エスカレータ12は、複数の踏段14の進行に合わせて、その進行方向に欄干Wの手摺ベルト42が手摺ベルト駆動チェーン(図示省略)によって周回移動するよう構成されている。
【0014】
このようなエスカレータ12の動作は、トラス16内に設置される制御盤(制御装置)44によって、減速機28やモータ26を制御することで実現される。制御盤44は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)とROM(Read Only Memory)などを有するコンピュータで実現される。制御盤44において実行される機能は、ROMに保持されるアプリケーションプログラムをRAMにロードしてCPUで実行することによって、CPUの制御のもとでエスカレータ12内の各種装置を動作させるとともに、RAMやROMにおけるデータの読み出し、書き込みを行うことで実現される。
【0015】
上述したように、エスカレータ12のリニューアル工事は、エスカレータ12が設置された施設の休止時(夜間や休業日)等に実施されることが多く、リニューアル作業を複数の作業日程に分割して実施する場合がある。例えば、3日間の夜間作業でリニューアル工事を実施する場合は以下のようになる。例えば、作業初日夜間に、踏段14等の移動部分の交換を行う。作業2日目昼間は、リニューアルした踏段14等の移動部分をリニューアル前の旧構造の減速機28で稼働させる。そして、作業2日目夜間は、モータ26の交換を行う。作業3日目昼間は、リニューアルしたモータ26で旧構造の減速機28を駆動し、リニューアルした踏段14等の移動部分を稼働させる。作業3日目夜間(最終日)は、減速機の交換を行う。この時、スプロケットユニット10は、新構造の専用の減速スプロケットに交換される。以上でリニューアル工事が完了する。
【0016】
上述のように、2日目、3日目の昼間は、リニューアル後の新設備を旧設備の減速機28で運行させるため、その間は、新設備と旧設備の両方に適合する仮減速スプロケットを一時的に装着して利用することになる。ただし、旧設備は、設置時期により減速機の種類が異なることがあり、リニューア前の減速機に適した仮減速スプロケットを準備する必要がある。そのため、複数種類の仮減速スプロケットを在庫しておく必要があり、リニューアル工事のたびに仮減速スプロケットを選択して手配する必要があるため、作業効率が悪かった。また、在庫管理や形状ごとの設計が必要となり、コスト上昇の原因になっていた。
【0017】
そこで、本実施形態では、組み合わせにより様々な旧設備に対応することが可能な、スプロケットユニット10を用いることで、部品の共通化による部品管理の効率化、煩雑性の抑制、作業効率の改善コスト軽減等を実現する。以下、旧設備の減速機の減速スプロケットの構成と比較しながら、スプロケットユニット10の詳細を説明する。
【0018】
図2は、実施形態のスプロケットユニット10が適用可能な減速機28(出力軸28a)とそれに装着された旧構造の減速スプロケット38の構成を示す例示的かつ模式的な説明図である。
【0019】
減速機28は、例えば、細径、短軸の出力軸28a(例えば、ΦA)を備える。したがって、減速スプロケット38に形成される出力軸28aが挿入される開口部38aの直径もΦAとなっている。なお、図2では図示を省略しているが、減速スプロケット38は、出力軸28aに挿入後、不図示のキー部材を用いることで、出力軸28aと減速スプロケット38とを回転不能に固定している。減速スプロケット38の外周面には、駆動チェーン30が巻回される歯部と踏段チェーン36が巻回される歯部が併設されている。
【0020】
図3は、実施形態のスプロケットユニット10が適用可能な他の減速機28A(出力軸28Aa)とそれに装着された旧構造の減速スプロケット52の構成を示す例示的かつ模式的な説明図である。
【0021】
減速機28Aは、例えば、減速機28の出力軸28aに比べて太径の長軸の出力軸28Aa(例えば、ΦB)を備える。したがって、減速スプロケット52に形成される出力軸28Aaが挿入される開口部52aの直径もΦBとなっている。なお、図3では図示を省略しているが、減速スプロケット52は、出力軸28Aaに挿入後、不図示のキー部材を用いることで、出力軸28Aaと減速スプロケット52とを回転不能に固定している。減速スプロケット52の外周面には、駆動チェーン30が巻回される歯部と踏段チェーン36が巻回される歯部が併設されている。
【0022】
図2図3で示されるように、エスカレータ12の設置時期や用途、要求されるパワー等により出力軸28a,28Aaの形状が異なる。そこで、本実施形態のスプロケットユニット10
は、部材の組み合わせにより、出力軸を挿入する開口部の口径やスプロケットの軸方向の軸長(厚み)を調整する機能を備え、種々の減速機の仕様に対応できるようにしている。スプロケットユニット10は、図4図6に示すように、スプロケット本体10a、調整カラー部材10b、ボス部材10cで構成され、調整カラー部材10bとボス部材10cは選択的に利用される。
【0023】
ここで、スプロケット本体10aは、乗客コンベアの駆動装置側の出力軸を挿入可能な第一の開口部を備える部材である。また、調整カラー部材10bは、第一の開口部に嵌合可能な外周部と、当該外周部より内径側で外周部と同軸で前記出力軸を挿入可能で第一の開口部の口径より縮径された第二の開口部と、を有する部材である。また、ボス部材10cは、スプロケット本体の軸方向の長さを延長する延長軸部と、延長軸部に形成されスプロケット本体と同軸で出力軸を挿入可能な第三の開口部と、を有する部材である。
【0024】
まず、図4図5を用いて、減速機の出力軸の軸径違いに対応可能な構成を説明する。
【0025】
図4は、実施形態のスプロケットユニット10のスプロケット本体10aと調整カラー部材10bとを組み合わせた状態を示す例示的かつ模式的な説明図である。図4では、リニューアル後の新構造の減速機の出力軸の直径が図3の減速スプロケット52と同様な直径ΦBであり、リニューアル前の旧構造の減速機の直径が減速スプロケット38と同様な直径ΦAの場合を一例として説明する。
【0026】
スプロケット本体10aの外周面には、従来の減速スプロケット38と同様に、駆動チェーン30が巻回される歯部と踏段チェーン36が巻回される歯部が併設されている。また、内周側は、エスカレータ12の減速機28(駆動装置側)の出力軸28aを挿入可能な第一の開口部10aaが形成されている。この第一の開口部10aaは、リニューアル後の新構造における減速機の出力軸の直径に対応して形成され、例えば、減速スプロケット52と同様なΦBである。スプロケット本体10aは、常用利用される減速スプロケット38等と同様に、例えば、機械構造用炭素鋼(S45C)等の形成されている。
【0027】
調整カラー部材10bは、スプロケット本体10aの第一の開口部10aaに嵌合可能に形成された、略円筒状の部材であり、外周部10baを有する。また、調整カラー部材10bは、外周部10baより内径側で外周部10baと同軸で出力軸28aを挿入可能で第二の開口部10bbを有している。つまり、第二の開口部10bbは、第一の開口部10aaの口径より縮径されている。第二の開口部10bbの直径はΦAである。調整カラー部材10bは、スプロケット本体10aと同様に、例えば、機械構造用炭素鋼(S45C)等の形成されている。
【0028】
図5は、実施形態のスプロケットユニット10の調整カラー部材10bの詳細な形状を示す例示的かつ模式的な説明図である。
【0029】
上述したように、調整カラー部材10bは、スプロケット本体10aの第一の開口部10aaに嵌合可能な略円筒形状の部品である。調整カラー部材10bの外周部10baの一部には、スプロケット本体10aの第一の開口部10aaの一部に形成されて軸方向に延びるキー溝10abと嵌合可能な第一のキー部10bc(幅K1)が外形方向に突出形成されている。キー溝10abと第一のキー部10bcが嵌合することにより、スプロケット本体10aと調整カラー部材10bとが回転不能に一体化される。
【0030】
また、調整カラー部材10bは、第一のキー部10bcに径方向に対応する位置で第二の開口部10bbから内径方向に突出した第二のキー部10bd(幅K2)が形成されている。第二のキー部10bdは、スプロケットユニット10が接続される旧構造の減速機28の出力軸28aに形成された、キー溝に嵌合し、スプロケット本体10aと調整カラー部材10bが一体化されたスプロケットユニット10を出力軸28aに対して回転不能に嵌合させることができる。
【0031】
このように、スプロケット本体10aに対して調整カラー部材10bの装着の有無をリニューアル作業時に選択することにより、リニューアル前の旧構造の変速機が、ΦAの細径タイプであった場合でも、ΦBの太径タイプであった場合でも容易に対応することができる。その結果、リニューアルのために準備する仮減速スプロケットの種類の軽減が可能になり、部品の手配や管理の煩雑さを軽減することができる。また、スプロケットユニット10で、複数の仮減速スプロケットの統一化(標準化)が可能で、在庫管理や形状ごとの設計が必要となり、コスト上昇の抑制に寄与することができる。
【0032】
なお、調整カラー部材10bにおいて、第一のキー部10bcと第二のキー部10bdを円筒状の調整カラー部材10bの径方向の同じ位置に配置することにより、厚みK3を確保可能となり、大きな回転負荷がかかるキー部分の強度を向上することができる。
【0033】
続いて、図6を用いて、減速機の出力軸の軸長違いに対応可能な構成を説明する。
【0034】
図6に示しように、旧構造の減速機28Aの出力軸28Aaが例えば減速機28の出力軸28aに比べて、太径で長軸の場合、図5で説明したスプロケット本体10a(調整カラー部材10bの装着なし)だけでは、スプロケット本体10aにおける出力軸28Aaの軸方向の長さが不足し、安定した軸装着ができない。そこで、スプロケットユニット10は、スプロケット本体10aとボス部材10cとの組み合わせにより、軸長調整を行う。
【0035】
ボス部材10cは、前述したように、スプロケット本体10aの軸方向の長さを延長する延長軸部10caと、この延長軸部10caに形成され、スプロケット本体10aと同軸で出力軸28Aaを挿入可能な第三の開口部10cbと、を有するリング状の部材である。ボス部材10cもまた、スプロケット本体10aと同様に、例えば、機械構造用炭素鋼(S45C)等の形成されている。
【0036】
ボス部材10cは、軸方向の厚みが、例えば、5mm等の単位厚みの部材で、旧構造の減速機28Aの出力軸28Aaにスプロケット本体10aを装着した時の出力軸28Aaの端面までの隙間を埋める部材である。すなわち、ボス部材10cは、スプロケット本体10aの軸方向の端面と出力軸28Aaの端面との差分を補う部材である。したがって、隙間長に応じて、複数のボス部材10cを軸方向に重ねて装着して配置して、スプロケットユニット10の軸長を調整することができる。なお、ボス部材10cは、軸方向の長さ調整が主目的で、出力軸28Aaに装着した際に、回転不能に固定する必要はない。したがって、第三の開口部10cbに出力軸28Aaのキー溝と係合するキー部は必須ではなく、設けても設けなくてもよい。キー部を設ける場合、ボス部材10cを出力軸28Aaに安定的かつ強固に装着することができる。一方、キー部を設けない場合、ボス部材10cは、シンプルなリング形状とすることが可能で、製造コストの軽減に寄与することができる。
【0037】
このように、スプロケット本体10aに対してボス部材10cの装着の有無をリニューアル作業時に選択することにより、リニューアル前の旧構造の変速機の出力軸の軸長が、スプロケット本体10aの軸長より長い場合でも、スプロケット本体10aの安定的な装着の実現に容易に対応することができる。その結果、リニューアルのために準備する仮減速スプロケットの種類の軽減が可能になり、部品の手配や管理の煩雑さを軽減することができる。また、スプロケットユニット10で、複数の仮減速スプロケットの統一化(標準化)が可能で、在庫管理や形状ごとの設計が必要となり、コスト上昇の抑制に寄与することができる。
【0038】
なお、スプロケットユニット10の対応バリエーションとして、図5では、スプロケット本体10aと調整カラー部材10bの組み合わせ、図6では、スプロケット本体10aとボス部材10cの組み合わせについて説明した。他の対応バリエーションでは、例えば、スプロケット本体10aと調整カラー部材10bとボス部材10cを組み合わせることにより、旧構造の減速機の出力軸が細径で長軸の場合でも対応可能であり、上述と同様の効果を得ることができる。また、出力軸の形状によっては、スプロケット本体10a単体で対応することも可能である。
【0039】
図7は、スプロケットユニット10の調整カラー部材10bの変形例を示す例示的かつ模式的な断面図であり、旧構造の減速機の出力軸の軸径がさらに細いタイプの場合に対応可能な構造である。すなわち、調整カラー部材10bの第二の開口部10bbの内径側に予備調整カラー部材54を装着して多重構造としている場合である。
【0040】
予備調整カラー部材54は、調整カラー部材10bの第二の開口部10bbの内径側に嵌合可能で第二の開口部10bbの口径より縮径された第四の開口部54aを有する。予備調整カラー部材54は、調整カラー部材10bと同様に例えば、機械構造用炭素鋼(S45C)等の形成された円筒状の部材である。予備調整カラー部材54は、第四の開口部54aの一部、例えば、調整カラー部材10bの第二のキー部10bdと径方向に並ぶ位置に第三のキー部54bを備える。第三のキー部54bは、スプロケットユニット10が装着される変速機の出力軸に形成されたキー溝に係合する。また、予備調整カラー部材54の外周面には、調整カラー部材10bの第二のキー部10bdと嵌合可能なキー溝54cが形成されている。したがって、予備調整カラー部材54は、調整カラー部材10bに対して回転不能に一体化される。前述したように、調整カラー部材10bは、スプロケット本体10aと回転不能の状態で一体化可能である。したがって、スプロケット本体10a、調整カラー部材10bおよび予備調整カラー部材54を組み合わせることにより、軸径がさらに細い変速機の出力軸にスプロケットユニット10(仮減速スプロケット)を安定的かつ強固に固定することができる。なお、さらいに細径の予備調整カラー部材を用いて、多重構造とすることにより、異なる軸径の出力軸に対応可能となる。
【0041】
なお、予備調整カラー部材54を用いる場合で、さらに軸長調整(延長対応)を行うために、ボス部材10cを装着する必要がある場合、ボス部材10cの第三の開口部10cbの口径を、第四の開口部54aに応じて、調整することが望ましい。
【0042】
図8は、スプロケットユニット10のボス部材10cの変形例を示す例示的かつ模式的な断面図であり、ボス部材10cに予備調整ボス56を装着して多重構成とすることで、スプロケットユニット10を安定的に出力軸に装着することができる例である。つまり、予備調整ボス56は、予備調整カラー部材54の第四の開口部54aに対応してボス部材10cの第三の開口部10cbの内径側に嵌合して第三の開口部10cbの口径より縮径された第五の開口部56aを有する。予備調整ボス56は、ボス部材10cと同様に例えば、機械構造用炭素鋼(S45C)等の形成された、リング形状の部材である。ボス部材10cの内径側に予備調整ボス56を装着することで、ボス部材10cを装着する出力軸の軸径がさらに細い場合でもボス部材10cを安定的に出力軸に装着可能となる。つまり、予備調整カラー部材54を装着したスプロケットユニット10(スプロケット本体10a+調整カラー部材10b)をより安定的に出力軸に固定することができる。
【0043】
なお、予備調整ボス56に関しても、ボス部材10cと同様に軸方向の長さ調整が主目的で、出力軸に装着した際に、回転不能に固定する必要はない。したがって、キー部材等を用いたボス部材10cと予備調整ボス56との固定は必須ではなく、キー構造との回転防止構造は設けても設けなくてもよい。回転防止構造を設ける場合、ボス部材10cに予備調整ボス56を安定的かつ強固に装着することができる。一方、回転防止構造を設けない場合、予備調整ボス56は、シンプルなリング形状とすることが可能で、製造コストの軽減に寄与することができる。なお、予備調整ボス56も、さらいに細径の予備調整ボスを用いて、多重構造とすることにより、異なる軸径の出力軸に対応可能となる。
【0044】
図9は、実施形態のスプロケットユニット10の調整カラー部材の変形例を示す例示的かつ模式的な断面図である。図9に示されるように、調整カラー部材58は、図5に示す調整カラー部材10bと同様に、外周部58aの内周側に第二の開口部58bを有する。また、外周部58aの一部に第一のキー部58cを備え、第一のキー部58cに対応する径方向の位置に第二の開口部58bから内径側に突出した第二のキー部58dを備える。調整カラー部材58は、さらに、第一のキー部58cとは異なる位置に、外周部58aから外径方向に突出した少なくとも一つの補助キー58eを備える。図9の場合、3つの補助キー58eが形成されている。つまり、調整カラー部材58は、第一のキー部58cおよび補助キー58eによる複数のキー部材によりスプロケット本体10aに対して回転防止構造を形成している。その結果、複数の部品を組み合わせて一体化したスプロケットユニット10を構成する場合の、剛性を向上することができる。つまり、軸径の変化に対応するために複数の部品で構成されたスプロケットユニット10をあたかも、装着する出力軸専用のスプロケットのように高剛性の部品として構成することができる。なお、図9の場合、補助キー58eは、第一のキー部58cを含めて90°間隔で配置する例を示したが、補助キー58eの数や配置位置は適宜選択可能であり、補助キー58eの数に応じた剛性を備え、調整カラー部材10bと同様の機能を有する調整カラー部材を得ることができる。なお、調整カラー部材58にも、予備調整カラー部材54が装着可能であり、軸径の変化に対応することができる。
【0045】
なお、上述したスプロケットユニット10は、エスカレータ12のリニューア時に適用する場合を説明した。他の実施形態としては、乗客コンベアの他の例として例えば移動歩道(所謂、動く歩道)に、上述したスプロケットユニット10を適用することも可能で、同様の効果を得ることができる。
【0046】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0047】
10…スプロケットユニット、10a…スプロケット本体、10aa…第一の開口部、10b,58…調整カラー部材、10ba…外周部、10bb…第二の開口部、10bc…第一のキー部、10bd…第二のキー部、10c…ボス部材、10ca…延長軸部、10cb…第三の開口部、12…エスカレータ、28,28A…減速機、28a,28Aa…出力軸、38,52…減速スプロケット、54…予備調整カラー部材、54a…第四の開口部、54b…第三のキー部、56…予備調整ボス、58e…補助キー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9