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  • 特開-画像処理装置及びプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108433
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】画像処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 1/00 20060101AFI20230728BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20230728BHJP
【FI】
G06T1/00 280
G06T7/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009561
(22)【出願日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】514323028
【氏名又は名称】株式会社ミラボ
(74)【代理人】
【識別番号】100122275
【弁理士】
【氏名又は名称】竹居 信利
(72)【発明者】
【氏名】平光 昌寛
(72)【発明者】
【氏名】谷川 一也
【テーマコード(参考)】
5B057
5L096
【Fターム(参考)】
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057CE02
5B057DA06
5B057DB02
5B057DB09
5L096EA07
5L096FA81
(57)【要約】
【課題】撮像の対象物における反射像を軽減、除去できる画像処理装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】画像処理装置1が処理の対象となる画像データを受け入れ、当該受け入れた画像データから所定の対象物を検出する。そして検出した対象物の撮像範囲内において、三次元対象物の検出処理を実行し、当該検出した三次元対象物に係る情報を用いて、処理の対象となった画像データに対する所定処理を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理の対象となる画像データを受け入れる受入手段、
当該受け入れた画像データから所定の対象物を検出する一次検出手段、
前記検出した対象物の撮像範囲内において、三次元対象物の検出処理を実行する二次検出手段、
及び、
前記二次検出手段において検出した三次元対象物に係る情報を用いて、処理の対象となった画像データに対する所定処理を実行する画像処理手段、
を含む画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記一次検出手段は、前記受け入れた画像データから所定の三次元対象物を検出する三次元物体検出処理を行う画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像処理装置であって、
前記二次検出手段は、前記一次検出手段が検出した対象物の撮像範囲内において、所定の三次元対象物を検出する三次元物体検出処理を行う画像処理装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の画像処理装置であって、
前記画像処理手段は、前記所定処理として、前記二次検出手段が検出した三次元対象物の像を、前記処理の対象となる画像データから除去する除去処理を実行する画像処理装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の画像処理装置であって、
前記二次検出手段は、前記一次検出手段が検出した対象物の表面反射率を推定し、当該推定した表面反射率を用いて、前記対象物の撮像範囲内において、三次元対象物の検出処理を実行する画像処理装置。
【請求項6】
コンピュータを
処理の対象となる画像データを受け入れる受入手段、
当該受け入れた画像データから所定の対象物を検出する一次検出手段、
前記検出した対象物の撮像範囲内において、三次元対象物の検出処理を実行する二次検出手段、
及び、
前記二次検出手段において検出した三次元対象物に係る情報を用いて、処理の対象となった画像データに対する所定処理を実行する画像処理手段、
として機能させるプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
金属など、反射率が比較的高い物体を含むシーンを写真撮影するとき、当該物体での反射像により意図した画像が得られない場合がある。例えば、鏡面を含むシーンでは撮影者自身の像が撮像されてしまう場合があり、撮像者が意図した画像とならないことがある。
【0003】
また、工業的目的で撮像される画像においても、反射が写り込むと、目的が達成できない場合がある。一例として車両に発生したデント(へこみ)などを撮像するとき、車両表面に周辺の像が写り込むと、デントが目立たなくなってしまったり、デントと間違えられる画像が写り込んでしまう場合がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Jie Yang, et al., Seeing Deeply and Bidirectionally: A Deep Learning Approach for Single Image Reflection Removal, Proceedings of the European Conference on Computer Vision (ECCV), 2018, pp. 654-669
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に開示の技術では、機械深層学習により撮像の対象となった物体と、撮像者との間に半透明なガラス等がある場合を考慮して、当該ガラス面での反射を推定して除去することが考えられている。
【0006】
しかしながら、この非特許文献1の技術では、対象物における反射の除去までは考慮されていない。上述のように、対象物における反射を除去する技術は、一般的な撮影の目的だけでなく、車両のデントの分析など、工業的用途に供される画像の撮影の際にも有用であり、そのような技術が要望されている。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、撮像の対象物における反射像を軽減、除去できる画像処理装置、及びプログラムを提供することを、その目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来例の問題点を解決する本発明の一態様は、画像処理装置であって、処理の対象となる画像データを受け入れる受入手段、当該受け入れた画像データから所定の対象物を検出する一次検出手段、前記検出した対象物の撮像範囲内において、三次元対象物の検出処理を実行する二次検出手段、及び、前記二次検出手段において検出した三次元対象物に係る情報を用いて、処理の対象となった画像データに対する所定処理を実行する画像処理手段、を含むこととしたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、撮像の対象物における反射像を軽減、除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る画像処理装置の構成例を表すブロック図である。
図2】本発明の実施の形態に係る画像処理装置の例を表す機能ブロック図である。
図3】本発明の実施の形態に係る画像処理装置の動作例を表す説明図である。
図4】本発明の実施の形態に係る画像処理装置の動作例を表すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施の形態に係る画像処理装置1は、図1に例示するように、制御部11と、記憶部12と、操作部13と、表示部14と、入出力部15とを含んで構成されている。
【0012】
ここで制御部11は、CPU等のプログラム制御デバイスであり、記憶部12に格納されたプログラムに従って動作する。本実施の形態では、この制御部11は、処理の対象となる画像データを受け入れ、当該受け入れた画像データから所定の対象物を検出する。また制御部11は、当該検出した対象物が撮像されている範囲の内部において、さらに三次元対象物の検出処理を実行し、この検出処理で検出した三次元対象物に係る情報を用いて、処理の対象となった画像データに対する所定処理を実行する。この制御部11の詳しい動作については後に述べる。
【0013】
記憶部12は、メモリデバイスやディスクデバイス等であり、制御部11によって実行されるプログラムを保持する。この記憶部12はまた、制御部11のワークメモリとしても動作する。
【0014】
操作部13は、マウスやキーボード等を含み、ユーザの操作を受け入れて、当該受け入れた操作の内容を制御部11に出力する。表示部14は、ディスプレイ等であり、制御部11から入力される指示に従って情報を表示出力する。入出力部15は、USBインタフェースや、ネットワークインタフェース等であり、外部のデバイスや、サーバ装置等との間で通信を行う。本実施の形態の一例では、この入出力部15は、カメラCに接続され、カメラCが被写体に対して視線方向を変化させつつ撮像した複数の画像データ(例えば連続して撮像された一連の画像データを含む動画像)の入力を受けて、当該画像データを、処理の対象として制御部11に出力する。
【0015】
次に、制御部11の動作例について説明する。本実施の形態の例では、制御部11は、記憶部12に格納されたプログラムを実行することで、図2に例示するように、機能的に、受入部21と、一次検出部22と、二次検出部23と、処理実行部24とを含む構成を実現する。
【0016】
受入部21は、処理の対象となる複数の画像データを入出力部15を介して受け入れる。本実施の形態の一例では、この画像データはそれぞれ、スマートフォン等において、一つのカメラで撮像された、深度の情報(距離情報)を伴わない単眼画像データであるものとする。
【0017】
一次検出部22は、受入部21が受け入れた画像データのそれぞれから、所定の対象物が撮像されている範囲(撮像範囲)を検出する。ここでは一次検出部22は、一般的な、画像データからの物体検出処理を実行する。これにより検出される対象物は、例えば処理の対象となる画像データが車両の画像であれば、車両全体のような対象物(以下、全体対象物と呼ぶ)のほか、そのボディ、タイヤ、ホイール、ガラス面、ミラー部分などの各部(以下、構成対象物と呼ぶ)がいずれも対象物となる。また、処理の対象となる画像データが風景の画像データであれば、撮像されている建物のような全体対象物のほか、その壁面、ガラス面などの構成対象物が、検出される対象物となる。
【0018】
一例としてこの物体検出処理を、機械学習されたYolo(https://github.com/AlexeyAB/darknet)などのモデルを用いて行う場合には、当該モデルを機械学習する際に、車両などの全体的な像のほか、当該車両の構成要素であるドアパネルなど、反射率が実質的に均一と見なせる範囲のパーツの像を機械学習の対象としておく。これにより一時検出部22は、車両全体のような全体対象物のほか、その構成要素であって、反射率が実質的に均一であるパーツ(タイヤ、ホイール、ガラス面…など)の撮像部分を、構成対象物の撮像部分として検出できる。
【0019】
一次検出部22は、検出した対象物(全体対象物及び構成対象物のそれぞれ)の撮像範囲を表す領域の情報(領域に含まれる画素の群を特定するマスク画像など)を生成し、生成した領域の情報のそれぞれに検出した対象物を特定する情報(「車両全体」、「タイヤ」など)を関連付けて記憶部12に格納する。
【0020】
またこの一次検出部22は、処理の対象となる画像データを撮像した位置(カメラ位置)から、上記検出した全体対象物上の各部分までの距離の情報を取得する。一例として一次検出部22は、処理の対象となった画像データに撮像された対象物上の点のうち、比較的反射率が比較的低い部分として予め定められた部分(以下、一次検出部分と呼ぶ)までの距離を求める。
【0021】
例えば一次検出部22は、検出され得る構成対象物ごとの反射率の情報を格納した反射率データベースを参照して、処理対象となった画像から検出した構成対象物のうち、反射率が所定のしきい値を下回る構成対象物を見出す。そして一次検出部22は、ここで見出した、反射率が所定のしきい値を下回る構成対象物が撮像されている範囲を一次検出部分として、当該一次検出部分までの距離を求める。もっとも、これは一例であり、ここで一次検出部分とする部分は、反射率が比較的低く、他の対象物が写り込みにくい部分として予め設定された部分であれば、構成対象物の内部でなくても例えば反射が少ないと考えられる構成対象物の境界線部分など予め定めた部分が含まれてもよい。さらにユーザの操作により、一次検出部分が設定、あるいは修正されてもよい。
【0022】
この距離の演算は、例えばSLAM(Simultanious Localization and Mapping)等の技術で用いられている方法など、広く知られた方法を採用できる。一例として一次検出部22は、上記一次検出部分にある所定の特徴点を抽出する。そして一次検出部22は、当該抽出した特徴点について、入力された複数の画像データ間での当該特徴点の位置変化を検出する方法など、広く知られた方法を用いて画像データを撮像したカメラ位置から各特徴点までの距離の情報(点群情報)を得る。
【0023】
この一次検出部22の処理によって得られる点群情報は、対象物(当該対象物に写り込んだものではなく、対象物自体)上の各点(例えば上記の各特徴点)と、上記入力される複数の画像データのうち一つの画像データ(距離を演算する画像データ、以下区別の必要がある場合は距離演算対象画像と呼ぶ)を撮像したカメラ位置との距離を表すものとなる。
【0024】
一次検出部22は、得られた点群情報に基づき全体対象物が占める三次元座標上の領域(以下、三次元領域と呼ぶ)を推定する。この推定は例えば、土江庄一,「測定ノイズを許容した点群面張り」,Unisys Technology Review, Vol 87, Nov. 2005, p.88などに紹介された方法等、広く知られた方法を採用できる。またここでの三次元座標系は、処理対象となった画像データを撮像するカメラ位置を原点とし、カメラの視線方向をZ軸、このZ軸を法線とする面内で、処理対象となった画像データの幅方向をX軸(例えば右向きを正の向きと定めておく)、高さ方向をY軸(例えば上方を正の向きと定めておく)としたカメラ座標系などとしてよい。
【0025】
一例として図3(a)に例示する車両の画像データを処理対象とする場合、一次検出部22は、図3(a)に示される車両の全体を全体対象物Tとし、当該車両を構成するタイヤ部分(Y)、ドアパネル(D)、ミラー(M)、ガラス面(G)、…などを構成対象物として検出する。
【0026】
そして一次検出部22は、予め反射率が比較的低い部分として定められたタイヤ部分(Y)や、一対のドアパネル(D)間の部分など、ドアパネルの外縁部(B)などから検出される特徴点を用い、連続して撮像された各画像データにおける当該特徴点の撮像された位置を用いて、当該画像データのうちの一つである距離演算対象画像を撮像したカメラ位置と当該特徴点との距離を表す点群情報を求める。
【0027】
一次検出部22は、さらに、求められた点群情報を用いて、車両全体の三次元形状(カメラから見える部分のみでよい)を推定する。
【0028】
これにより、カメラ位置から全体対象物の各部までの距離が推定されることとなり、距離演算対象画像を構成する各画素のうち、少なくとも対象物が撮像されている部分について、当該画素に撮像されている対象物(対象物に写り込んだ他の対象物ではなく、対象物自身)までの距離(一次距離)が推定される。
【0029】
二次検出部23は、一次検出部22が検出した各構成対象物の領域の内部、つまり、全体対象物のうち、上記一次検出部分以外の部分にある特徴点について、入力された複数の画像データ間での当該特徴点の位置変化を検出する方法など、SLAM技術等で広く知られた方法を用いて、上記距離演算対象画像を撮像したカメラ位置から、当該特徴点までの距離の情報を得る。
【0030】
この二次検出部23が検出する特徴点は、対象物自体の上にある特徴点、または、対象物に写り込んだ他の対象物上の特徴点であり得る。以下区別が必要なときには、処理の対象となる画像データにその実体が撮像されている対象物を一次対象物と呼び、一次対象物の面に反射像として写り込んでいる、上記他の対象物を二次対象物と呼ぶ。
【0031】
図3(a)に例示した車両の例であれば、車両のドアパネルの領域内部(一次検出部分を除く部分)や、ミラー(M)、ガラス面(G)などは反射率が比較的高いため、二次対象物が写り込んでいる可能性がある。そこで二次検出部23は、これらの部分から見出された特徴点について、距離演算対象画像を撮像したカメラ位置から、当該特徴点までの距離の情報を得る。
【0032】
ここである特徴点P1が、一次対象物Tから見出されたものであれば、当該特徴点P1と距離演算対象画像を撮像したカメラ位置との距離は、一次対象物Tまでの距離r1となる。一方、特徴点P2がミラーMの面に写り込んだ二次対象物の像上にあれば、この特徴点P2は、一次対象物までの距離r2に、ミラーMの面の法線を対称軸として撮像された別の対象物(二次対象物)T2までの距離dを加算した距離となる(図3(b))。
【0033】
二次検出部23は、各特徴点を、距離演算対象画像において当該特徴点が撮像されている画素について一次検出部22が求めた一次距離rと、二次検出部23が求めた当該特徴点までの距離Lとの差の絶対値が所定のしきい値を下回る特徴点(一次特徴点と呼ぶ)と、L>rであり、かつ、上記差の絶対値が上記しきい値を上回る特徴点(二次特徴点と呼ぶ)と、それ以外の特徴点(L<rであり、かつ、上記差の絶対値が上記しきい値を上回る特徴点、以下、前景特徴点と呼ぶ)とに分類する。ここでしきい値は、例えば対応する一次距離rを用いて、当該一次距離rの0.8倍などとして画素ごとに定めてもよいし、一次距離rの平均値の0.8倍などとして画素に共通の値としてもよい。さらに一次距離によらず、予め定めた値としてもよい。
【0034】
処理実行部24は、一次検出部22と二次検出部23との動作により得られた、距離演算対象画像の画素ごとの領域情報及び距離情報に基づく所定の処理を実行する。一例としてこの処理実行部24は、処理対象の画像データのうち、距離演算対象画像の各画素のうち、二次検出部23が二次特徴点として分類した特徴点が撮像されている画素の値を、その周辺の画素であって、一次特徴点として分類した特徴点が撮像されている画素の値に置き換える。なお、近傍に一次特徴点として分類した特徴点が存在しないときには、二次検出部23が二次特徴点として分類した特徴点が撮像されている画素の値を、予め定めた画素値(例えば背景画素値)に置き換えることとしてもよい。
【0035】
このように本実施の形態の一例では、処理実行部24は、二次検出部23が検出した二次特徴点によって表される三次元対象物である二次対象物の像を、処理対象となった画像データから除去する除去処理を実行する。これにより一次対象物の表面に写り込んだ二次対象物の像が消去された状態となる。
【0036】
[動作]
本実施の形態の一例は、以上の構成を備えており、次のように動作する。本実施の形態のある例では、画像処理装置1は、スマートフォン等であり、ユーザがカメラアプリケーションを起動することで画像データ(深度の情報を伴わない画像データ)を撮像する。画像処理装置1は、ユーザがシャッター操作を行う前後でカメラが撮像した画像データを処理の対象として保持する。また、画像処理装置1は、ユーザがシャッター操作を行った時点の画像データを、距離演算対象画像とする。
【0037】
この例では画像処理装置1は、図4に例示する動作を行い、距離演算対象画像を含む、処理の対象となった画像データを受け入れて(S1)、当該受け入れた画像データのそれぞれから、物体検出処理を実行する(S2)。以下の例では、ユーザが画像処理装置1を利用して、屋外で自動車の写真を撮像したものとして画像処理装置1の動作を説明する。
【0038】
この例では既に述べたように、画像処理装置1は、全体対象物となる車両の全体像のほか、図3(a)に例示したように、当該車両の構成要素であるタイヤ部分(Y)、ドアパネル(D)、ミラー(M)、ガラス面(G)、…などの各部を、構成対象物として検出する。
【0039】
画像処理装置1は、処理対象となった画像データのうち、ステップS2で検出した対象物(全体対象物と構成対象物とを含む)のそれぞれが撮像されている撮像範囲を表す領域の情報を生成する(S3)。そして画像処理装置1は、生成した領域の情報のそれぞれに検出した対象物を特定する特定情報(「車両全体」、「タイヤ」などの名称でよい)を関連付けて記憶部12に格納する(S4)。画像処理装置1は、ここで、各対象物の領域情報の包含関係から、全体対象物と当該全体対象物を構成する構成対象物とを識別する。
【0040】
例えば図3(a)の例であれば、タイヤ部分(Y)、ドアパネル(D)、ミラー(M)、ガラス面(G)などの構成対象物の撮像範囲は、車両(T)の撮像範囲に含まれている。そこで、画像処理装置1は、車両(T)を全体対象物とし、タイヤ部分(Y)、ドアパネル(D)、ミラー(M)、ガラス面(G)をその構成対象物として関連付けて記録する。
【0041】
画像処理装置1は、また、検出され得る構成対象物ごとの反射率の情報を格納した反射率データベースを参照して、ステップS4で記憶部12に格納した特定情報に対応する反射率を取得し、ステップS2で検出した構成対象物のうち、当該構成対象物を特定する特定情報に対応する反射率が所定のしきい値を下回る構成対象物を見出す(S5:比較的反射率の低い構成対象物を特定)。
【0042】
画像処理装置1は、処理対象とした画像データのうち、このステップS5で見出した構成対象物が撮像されている領域を一次検出部分として、当該一次検出部分までの距離を求める(S6)。
【0043】
ここでの例では、画像処理装置1は、一次検出部分にある所定の特徴点を抽出し、当該抽出した特徴点について、処理対象となっている複数の画像データ間での当該特徴点の位置変化を検出することで、画像データを撮像したカメラ位置から各特徴点までの距離の情報(点群情報)を得ることとする。
【0044】
そして画像処理装置1は、得られた点群情報からステップS2で検出した全体対象物が占める三次元座標上の領域(以下、三次元領域と呼ぶ)を推定する(S7)。画像処理装置1は、ステップS7で推定した全体対象物の三次元領域の情報を用いて、カメラ位置から全体対象物の各部までの距離を推定し、距離演算対象画像を構成する各画素のうち、少なくとも対象物が撮像されている部分について、当該画素に撮像されている対象物(対象物に写り込んだ他の対象物ではなく、対象物自身)までの一次距離を求める(S8)。
【0045】
画像処理装置1は、また、全体対象物の撮像範囲のうち、上記一次検出部分以外の部分から検出される特徴点を用いて、距離演算対象画像を撮像したカメラ位置から、当該特徴点までの距離の情報を得る(S9)。
【0046】
既に図3(b)に例示した通り、ある特徴点P1が、一次対象物から見出されたものであれば、当該特徴点P1と距離演算対象画像を撮像したカメラ位置との距離は、一次対象物までの距離rとなる。一方、特徴点P2がミラーMの面に写り込んだ対象物である二次対象物の像上にあれば、この特徴点P2は、一次対象物までの距離rに、ミラーMの面の法線を対称軸として撮像された別の対象物(二次対象物)Tまでの距離dを加算した距離となる。
【0047】
画像処理装置1は、ステップS9で検出した特徴点のそれぞれを、距離演算対象画像において当該特徴点が撮像されている画素についてステップS8で求めた一次距離rと、ステップS9で求めた当該特徴点までの距離Lとの差の絶対値が所定のしきい値を下回る一次特徴点と、L>rであり、かつ、上記差の絶対値が上記しきい値を上回る二次特徴点と、それ以外の前景特徴点(L<rであり、かつ、上記差の絶対値が上記しきい値を上回る特徴点)とに分類する(S10)。なお、ここではしきい値は、予め定めた値としておく。
【0048】
これにより全体対象物の撮像範囲のうち、上記一次検出部分以外の部分に対応する画素のうち、特徴点となった画素について、当該画素に撮像されている像が一次対象物の色に基づく像であるか、二次対象物が反射して写っている状態の像であるか(または一次対象物よりもカメラ位置側にある前景の像であるか)を画像処理装置1が判断可能となる。
【0049】
画像処理装置1は、距離演算対象画像の画素を順次注目画素として選択し、注目画素が、特徴点の撮像された画素であるか否かを判断する(S11)。ステップS11において、注目画素が、特徴点の撮像された画素であれば(S11:Yes)、画像処理装置1は、注目画素に撮像されている特徴点(注目特徴点と呼ぶ)が、ステップS10での分類において、二次特徴点として分類されたか否かを調べる(S12)。画像処理装置1は、ステップS12の判断において、注目特徴点が二次特徴点として分類された特徴点であれば(S12:Yes)、当該注目特徴点が撮像されている注目画素の値を、その周辺の画素であって、一次特徴点として分類した特徴点が撮像されている画素の値に置き換えて画素値を補正する(S13)。なお、近傍に一次特徴点として分類した特徴点が存在しないときには、画像処理装置1は、注目画素の画素値を、予め背景画素値として定めた画素値に置き換えることとしてもよい。
【0050】
また画像処理装置1は、ステップS11において注目画素が、特徴点の撮像された画素でないと判断したとき(S11:No)、及びステップS12において注目特徴点が二次特徴点として分類されていないと判断したとき(S12:No)には、当該注目画素の画素値をそのままとする。
【0051】
画像処理装置1は、距離演算対象画像の各画素についてステップS11からS13の処理を繰り返して実行する。
【0052】
これにより、画像処理装置1は、距離演算対象画像に撮像された一次対象物に写り込んだ二次対象物の像を除去する。そして画像処理装置1は、当該二次対象物の像を除去した後の距離演算対象画像を、撮像した画像データとして記憶部12に格納する。
【0053】
このように本実施の形態の画像処理装置1によると、撮像の対象物における反射像を軽減、除去できる。
【符号の説明】
【0054】
1 画像処理装置、11 制御部、12 記憶部、13 操作部、14 表示部、15 入出力部、21 受入部、22 一次検出部、23 二次検出部、24 処理実行部。

図1
図2
図3
図4