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  • 特開-魚の畜養方法および魚の畜養装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108439
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】魚の畜養方法および魚の畜養装置
(51)【国際特許分類】
   A01K 63/06 20060101AFI20230728BHJP
   A01K 63/00 20170101ALI20230728BHJP
【FI】
A01K63/06 Z
A01K63/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009569
(22)【出願日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】522034228
【氏名又は名称】株式会社リバーサー
(71)【出願人】
【識別番号】522045936
【氏名又は名称】株式会社ナイネンキ
(74)【代理人】
【識別番号】100126402
【弁理士】
【氏名又は名称】内島 裕
(72)【発明者】
【氏名】松田 英照
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104AA01
2B104BA01
2B104BA08
2B104CA01
2B104EA01
2B104EF09
(57)【要約】
【課題】魚の味のおいしさの向上を実現する魚の畜養方法およびその方法に用いられる魚の畜養装置を提供すること。
【解決手段】海から獲ってきた活魚を、塩分濃度2.0%の水中で3日程度畜養する工程と、塩分濃度1.5%の水中で2日又は3日程度畜養する工程と、塩分濃度0.8%乃至塩分濃度1.0%の水中で1週間程度畜養する工程と、塩分濃度3.2乃至3.4%の水中で24時間乃至36時間程度畜養する工程とを有する魚の畜養方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海から獲ってきた活魚を、
塩分濃度2.0%の水中で3日程度畜養する工程と、
塩分濃度1.5%の水中で2日又は3日程度畜養する工程と、
塩分濃度0.8%乃至塩分濃度1.0%の水中で1週間程度畜養する工程と、
塩分濃度3.2乃至3.4%の水中で24時間乃至36時間程度畜養する工程と、
を有する魚の畜養方法。
【請求項2】
請求項1記載の魚の畜養方法に用いられる畜養装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活魚の味のおいしさを向上する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
魚は、筋肉を動かす際、ATP(アデノシン三リン酸)をADP(アデノシン二リン酸)に分解することでエネルギーを生み出している。そして、その後、ADPからATPが再合成され蓄えられる。
魚のATPからは、うまみの源であるイノシン酸などが生成される。
しかしながら、海から獲った魚は獲られる際に抵抗して多大な運動を行うためATPを大量に消費している。
それでは、イノシン酸などのうまみ成分に変化するタイミングを揃えることができないため、従来は、うまみの源であるイノシン酸などの生成量が相対的に低減してしまい、魚の味も低下してしまうこととなっていた。
【0003】
ここで、塩分濃度が0.55%以上2.75%以下の低塩分海水で、10日間以上30日間以下飼育することで、海水魚を延命させ、外傷から回復させる技術が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
なお、伝統的な「いけ越し」という、獲った魚を一晩生け簀においてから出荷する技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6103452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の特許文献1に開示されている技術は、低塩分海水で海水魚を延命させ、外傷から回復させるものに過ぎなく、魚のうまみアップに寄与するものではない。
本発明は、魚の取り扱い専門会社ならではの高度な知識と豊富な経験と高い技術力に基づき、試行錯誤により到達できた高い水準にあり、個人のアイデアレベルでは実現できない、役務・製品としての現実性・完成度を誇るものである。
【0007】
本発明の目的は、魚の味のおいしさの向上を実現する魚の畜養方法およびその方法に用いられる魚の畜養装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の魚の畜養方法は、
海から獲ってきた活魚を、
塩分濃度2.0%の水中で3日程度畜養する工程と、
塩分濃度1.5%の水中で2日又は3日程度畜養する工程と、
塩分濃度0.8%乃至塩分濃度1.0%の水中で1週間程度畜養する工程と、
塩分濃度3.2乃至3.4%の水中で24時間乃至36時間程度畜養する工程と、
を有する。
このような構成により、徐々に低い塩分濃度に慣らさせながら、魚は省エネの活動となり、基礎代謝も小さくなり、獲られる際に抵抗等して多大な運動を行うため大量にATPを消費しているが、ADPから再合成することで再度ATPを蓄えることができる。そして、大部分のATPがイノシン酸などのうまみ成分に変化するタイミングを揃えることにより、うまみの源であるイノシン酸などの生成量を相対的に高めて、魚の味のおいしさの向上を図ることができる。
【0009】
本発明の魚の畜養装置は、
上記の魚の畜養方法に用いられる畜養装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、魚の味のおいしさの向上を実現する魚の畜養方法およびその方法に用いられる魚の畜養装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態における魚の畜養方法のフローを説明する図である。
図2】本発明の実施の形態における魚の畜養方法で用いられる畜養装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係る魚の畜養方法について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1のフローチャートを参照すると、
まず、ステップS1として、2個の水槽1に、それぞれ塩分濃度2.0%の水を例えば500リットル入れておき、そこに海から獲ってきた魚を複数匹、投入する。
海水を薄めたものでもよい。好ましくは人工海水である。
塩分濃度2%とするのは、最終的にはもっと低い塩分濃度とするのであるが、浸透圧の関係でいきなり低濃度だと魚の身に水が入って硬直してしまうので、慣らしの意味合いがある。
また、餌抜き(餌を水中に吐き出す)を実施するため、水を取り替える際の退避場所が必要となるため、水槽1を2個用いることであってもよい。なお、以降、餌は与えないため、吐くことで水が汚れないメリットもあり、さらに魚は省エネ(リラックス)の活動となる。すなわち、あまり動かなくなり、基礎代謝も小さくなる。例えば、海水の塩分濃度は濃すぎてエラでろ過しているためその活動が減少する。
そして、獲られる際に抵抗等して多大な運動を行うため大量に消費したATPを、ADPからATPに再合成することで再度ATPを蓄えることができる。
ポンプによる酸素の補給も通常より少なくすることでき、経済的なメリットがある。
魚は、水槽1において3日前後程度、畜養され、魚の状態を観察して塩分濃度2%の水に馴染んでいるか判断して、OKの場合は、次のスッテプに移行する。
【0014】
次に、ステップS2として、1個の水槽2に、塩分濃度1.5%の水を例えば500リットル入れておき、そこに水槽1から魚を移して投入する。
塩分濃度1.5%とするのは、最終的にはもっと低い塩分濃度とするのであるが、浸透圧の関係でいきなり低濃度だと魚の身に水が入って硬直してしまうので、慣らしの意味合いがある。
魚は省エネの活動となり、基礎代謝も小さくなる。そして、ADPからATPに再合成することで再度ATPを蓄える。
魚は、水槽2において2日又は3日前後程度、畜養され、魚の状態を観察して塩分濃度1.5%の水に馴染んでいるか判断して、OKの場合は、次のスッテプに移行する。
【0015】
次に、ステップS3として、1個の水槽3に、夏季は塩分濃度0.8%(水が蒸発しない冬季は塩分濃度1.0%)の水を例えば500リットル入れておき、そこに水槽2から魚を移して投入する。
塩分濃度は、0.8%乃至1.0%が狙いとなり、夏季は水が多少蒸発しても1.0%に収まるようにしている。なお、ヒトも含めて多くの生き物は塩分濃度0.9%が最適とも言われている。
魚は省エネの活動となり、基礎代謝も小さくなる。そして、ADPからATPに再合成することで再度ATPを蓄える。
魚は、水槽3において1週間前後程度、畜養され、次のスッテプに移行する。魚がおいしくなるベストは1週間であることが多いが、最短5日でも、うまみはアップする。
なお、上記のステップ1乃至ステップ3をまとめて「低活性活かし込み処理」という。
【0016】
次に、ステップS4として、1個の水槽4に、海水と同等の塩分濃度3.2乃至3.4%の水を例えば500リットル入れておき、そこに水槽3から魚を移して投入する。
海水でもよい。好ましくは人工海水である。
魚は、水槽4において24時間乃至36時間程度、畜養され。魚がおいしくなるベストは36時間であることが多いが、最短24時間でも、うまみはアップする。
「味上げ処理」であり、浸透圧で水が抜けて身が締まり、魚に元気が出て活動的となる。
【0017】
その後、必要に応じて、魚に対して、血抜きや胃洗浄を実施して出荷される。
【0018】
上記の魚の低活性活かし込み処理+味上げ処理により、メリット1:魚のおいしさアップ(魚の体力を全回復させ、大量消費されたATPを再度蓄えさせ、イノシン酸などのうまみ成分に変化するタイミングを揃え、イノシン酸などの生成量をアップし、魚の本来の味を引き出しておいしさを向上する。)、メリット2:身痩せさせずに最長1か月乃至2か月の活魚の在庫を保持できる(受注の管理だけで済む、想定外の魚種であってもある程度の期間があれば売り先を見つけることが可能となり無駄防止。)、メリット3:アニキサスも吐き出す(経験上、アニキサスは水に弱いので浸透圧で魚の身が緩み水に近いものが入ってくると体内に残っても死滅すると考えられる。)。
【0019】
なお、上記の塩分濃度は、魚種ごとに設定を変更することであってもよい。
【0020】
図2に、魚の畜養装置としての上記の水槽1乃至水槽4の一例を示す。必ずしも、水槽1を2個、水槽2を1個、水槽3を1個、水槽4を1個、それぞれ別体の水槽として用意しなければならない訳ではなく、図2に示すように、2個の水槽のみで適宜、塩分濃度を変更した水をいれることで、水槽1乃至水槽4を実現して、運用可能である。
水槽は、室温10度乃至15度の施設内に設置されてもよい。また、水温は5度乃至10度が好ましい。また、簡易な金魚用ポンプ3個程度でも運用可能である。
【0021】
上記の本実施の形態によれば、魚の味のおいしさの向上を図るための魚の畜養方法およびその方法に用いられる魚の畜養装置を実現することができる。
【0022】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されてよい。例えば、各工程は順序が入れ替えられたり、同時並行的に実施されることであってもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 水槽
図1
図2