(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108444
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】伝達機構および弾性部材
(51)【国際特許分類】
F16C 1/08 20060101AFI20230728BHJP
F16D 3/58 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
F16C1/08
F16D3/58 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009575
(22)【出願日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149009
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 稔久
(72)【発明者】
【氏名】今川 拓磨
【テーマコード(参考)】
3J032
【Fターム(参考)】
3J032AB09
3J032AB10
3J032AB22
3J032AB28
3J032AB32
3J032BA01
3J032BC06
(57)【要約】
【課題】ガタを抑制する効果を保持するとともに回転力のロスを低減可能な伝達機構を提供すること。
【解決手段】伝達機構15は、回転力を伝達する伝達機構であって、第1回転対象体42と、第1トルクケーブル41と、弾性部材43と、を備える。第1回転対象体42は、嵌合孔56を有する。第1トルクケーブル41は、嵌合孔56に挿入されて嵌合する嵌合部55を有し、第1回転対象体42に回転力を伝達する。弾性部材43は、嵌合部55と第1回転対象体42の間に配置され、嵌合孔56の内周面56aおよび嵌合部55の外周面55aに沿って密着するように変形する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転力を伝達する伝達機構であって、
嵌合孔を有する回転対象体と、
前記嵌合孔に挿入されて嵌合する嵌合部を有し、前記回転対象体に回転力を伝達するケーブルと、
前記嵌合部と前記回転対象体の間に配置され、前記嵌合孔の内面および前記嵌合部の外面に沿って密着するように変形する弾性部材と、を備えた、
伝達機構。
【請求項2】
前記弾性部材は、ゴム又はエラストマーで形成されている、
請求項1記載の伝達機構。
【請求項3】
前記弾性部材の硬度は、70°以下である、
請求項1または2に記載の伝達機構。
【請求項4】
回転対象体に回転力を伝達するケーブルのうち前記回転対象体の嵌合孔に挿入されて嵌合する嵌合部の外面と前記嵌合孔の内面との間に密着して配置される弾性部材であって、
前記嵌合部が圧入される圧入孔を含み、
前記圧入孔への圧入方向に対して垂直な前記嵌合部の断面積は、前記圧入方向に対して垂直な前記圧入孔の断面積よりも大きい、
弾性部材。
【請求項5】
前記圧入孔を含み、前記嵌合部の外面上に配置される本体部と、
前記本体部の外面に形成され、前記圧入孔に前記ケーブルの前記嵌合部を圧入する際に把持される把持部と、を備えた、
請求項4に記載の弾性部材。
【請求項6】
前記把持部は、前記本体部の前記ケーブルが挿入される側の端に形成されている、
請求項5に記載の弾性部材。
【請求項7】
前記ケーブルが挿入される側の端に形成され、前記圧入孔の断面積よりも大きい断面積を有する入口孔と、
前記圧入孔と前記入口孔を接続し、前記入口孔から前記圧入孔に向かって徐々に断面積が小さくなるように内面がテーパー状に形成された接続孔と、を更に含む、
請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の弾性部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝達機構および弾性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用の座席を移動させるシートスライド装置や、サンルーフの開閉を行う開閉装置などの対象物を操作する装置には、回転駆動の対象となる対象物との軸心のズレを吸収したり、湾曲した配索経路に追随できるようにするために可撓性を有するトルクケーブルを備えた駆動装置が採用されている。トルクケーブルは、回転対象体に嵌合して回転力を回転対象体に伝達するが、トルクケーブルと回転対象体の間にガタがあると、トルクケーブルが回転する際に回転対象体との間で異音が生じる。
【0003】
そのため、例えば、トルクケーブルの表面にモールを植毛した構成(例えば、特許文献1参照)や、トルクケーブルと回転対象体の間に板バネを配置した構成(例えば、特許文献2参照)等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-72485号公報
【特許文献2】特開2005-30448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示すようなモールを用いる構成では、使用し続けると摩耗によってモールが抜け落ちてガタを抑制する効果が減少する場合があった。また、特許文献2に示すような板バネを用いる構成では、回転対象体に伝達する回転力がロスするといった課題があった。
【0006】
本開示は、ガタを抑制する効果を保持するとともに回転力のロスを低減可能な伝達機構および弾性部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の伝達機構は、回転力を伝達する伝達機構であって、嵌合孔を有する回転対象体と、前記嵌合孔に挿入されて嵌合する嵌合部を有し、前記回転対象体に回転力を伝達するケーブルと、前記嵌合部と前記回転対象体の間に配置され、前記嵌合孔の内面および前記嵌合部の外面に沿って密着するように変形する弾性部材と、を備える。
【0008】
また、本発明の弾性部材は、回転対象体に回転を伝達するケーブルのうち前記回転対象体の嵌合孔に挿入されて嵌合する嵌合部の外面と前記嵌合孔の内面との間に密着して配置される弾性部材であって、前記嵌合部が圧入される圧入孔を含み、前記圧入孔への圧入方向に対して垂直な前記嵌合部の断面積は、前記圧入方向に対して垂直な前記圧入孔の断面積よりも大きい。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、ガタを抑制する効果を保持するとともに回転力のロスを低減可能な伝達機構および弾性部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示にかかる実施の形態における駆動装置を示す平面図。
【
図2】本開示にかかる実施の形態における駆動装置の第1回転対象体およびスライド機構の一例を示す側面図。
【
図3】本開示にかかる実施の形態における第1トルクケーブルを示す図。
【
図4】本開示にかかる実施の形態における第1トルクケーブルの第1端部が第1回転対象体に接続された状態を示す斜視図。
【
図5】
図4に示す第1トルクケーブルの第1端部を第1回転対象体から離間した状態を示す斜視図。
【
図6】
図5に示す第1トルクケーブルの第1端部から弾性部材を取り外した状態を示す斜視図。
【
図8】(a)本開示にかかる実施の形態における弾性部材の側面図、(b)本開示にかかる実施の形態における弾性部材の正面図。
【
図9】(a)本開示にかかる実施の形態における第1トルクケーブルの第1端部を弾性部材の貫通孔に圧入することを説明する図、(b)本開示にかかる実施の形態における第1トルクケーブルの第1端部を弾性部材の貫通孔に圧入された状態を示す図。
【
図10】(a)
図9(b)に示す状態から弾性部材の把持部を切除することを説明する図、 (b)本開示にかかる実施の形態における弾性部材によって嵌合部が被覆された第1端部を第1回転対象体に挿入することを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示にかかる実施の形態の伝達機構について図面を参照しながら説明する。本実施の形態の伝達機構は、例えば駆動装置に用いられる。
【0012】
(駆動装置1の概要)
図1は、本実施の形態の駆動装置1の構成を示す上面図である。本実施の形態の駆動装置1は、例えばシートをスライド操作するシートスライド装置である。駆動装置1は、回転駆動部11と、支持部材12と、一対のスライド機構13、14と、第1伝達機構15(伝達機構の一例)と、第2伝達機構16(伝達機構の一例)と、を有する。回転駆動部11による駆動力が、第1伝達機構15を介してスライド機構13に伝達される。回転駆動部11による駆動力が、第2伝達機構16を介してスライド機構14に伝達される。回転駆動部11からの駆動力が伝達されるとスライド機構13、14は作動し、スライド機構13、14に取り付けられたシート(図示せず)が前後移動する。
【0013】
(回転駆動部11)
回転駆動部11は、駆動対象を回転駆動させる。回転駆動部11は、正転および逆転可能である。回転駆動部11は、第1伝達機構15の第1トルクケーブル41(ケーブルの一例)に接続される出力部11aと、第2伝達機構16の第2トルクケーブル44(ケーブルの一例)に接続される出力部11bと、を有する。回転駆動部11は、第1トルクケーブル41および第2トルクケーブル44をそれぞれ軸回りに一方の方向および他方の方向に回転駆動させる。
なお、第1トルクケーブル41と第2トルクケーブル44は、回転駆動部11に略直線状に接続されているが、湾曲した状態で接続されていてもよい。
【0014】
これにより、第1トルクケーブル41に接続された第1伝達機構15が有する第1回転対象体42(回転対象体の一例)および第2トルクケーブル44に接続された第2伝達機構16が有する第2回転対象体45(回転対象体の一例)が一方の方向および他方の方向に回転する。回転駆動部11は、例えばモータとすることができるが、対象物を回転駆動させるものであれば特に限定されない。
【0015】
(支持部材12)
支持部材12は、回転駆動部11を支持する。支持部材12の構造は特に限定されるものではない。支持部材12は、例えば回転駆動部11を支持可能な支持ブラケットやハウジングとすることができる。本実施の形態では、支持部材12は、一対のスライド機構13、14をつなぐように配置されている。支持部材12は、一対のスライド機構13、14の各々のスライド部材22と接続されている。支持部材12は、スライド部材22とともに移動するように構成されているが、スライド部材22とともに移動しないように構成されていてもよい。
【0016】
(スライド機構13、14)
スライド機構13は、第1伝達機構15の第1回転対象体42と接続されている。スライド機構14は、第2伝達機構16の第2回転対象体45と接続されている。
図2は、スライド機構13の側面図である。スライド機構13とスライド機構14は同様の構成であるためスライド機構13を例に挙げて説明する。
【0017】
スライド機構13およびスライド機構14の各々は、ガイドレール21と、スライド部材22と、変換部23と、を有する。第1伝達機構15の第1回転対象体42の回転運動が変換部23を介して直線運動に変換されてスライド部材22がガイドレール21に対して移動する。
【0018】
ガイドレール21は、車体等の設置対象に取り付けられている。スライド部材22は、ガイドレール21に対して移動可能に配置されている。スライド部材22にはシートが取り付けられている。スライド部材22がガイドレール21に対して移動することによって、シートが移動する。
【0019】
スライド機構13の変換部23は、第1回転対象体42の回転駆動をスライド機構13のスライド部材22に伝達する。変換部23は、ウォームホイール31と、ロッド部材32と、ナット部材33と、を有する。変換部23は、スライド部材22に支持されている。
【0020】
ウォームホイール31は、ウォームギアとして示される第1回転対象体42と噛み合う。ロッド部材32は、例えばスピンドルであり、外周にネジ部を有する。ロッド部材32は、各々のスライド部材22のスライド方向に沿って延びている。ロッド部材32は、スライド部材22に回転可能に支持されている。ロッド部材32にウォームホイール31が固定されている。ロッド部材32とウォームホイール31は同軸上に配置されている。ナット部材33は、ロッド部材32の外周に螺合して配置されている。ナット部材33は、ガイドレール21に固定されている。
【0021】
スライド機構14の変換部23は、スライド機構13の変換部と同様に、第2回転対象体45の回転駆動をスライド部材22に伝達する。
【0022】
第1回転対象体42および第2回転対象体45が回転することにより、スライド機構13,14の各々のウォームホイール31に接続されたロッド部材32が軸周りに回転する。ロッド部材32が回転すると、ナット部材33はガイドレール21に固定されているためロッド部材32が軸方向に移動する。ナット部材33に対してロッド部材32が軸方向に移動することによりロッド部材32を支持するスライド部材22が移動する。これにより、スライド部材22に固定されたシートが移動する。
【0023】
(第1伝達機構15、第2伝達機構16)
第1伝達機構15は、
図1に示すように、第1トルクケーブル41と、第1回転対象体42と、弾性部材43(後述する
図5参照)と、を有する。第2伝達機構16は、第2トルクケーブル44と、第2回転対象体45と、弾性部材43と、を有する。
【0024】
第1トルクケーブル41は、第1回転対象体42に回転力を伝達するケーブルであり、可撓性を有する長尺部材である。
図3は、第1トルクケーブル41を示す側面図である。第1トルクケーブル41は、回転駆動部11の回転力を第1回転対象体42に伝達できるように構成されている。
【0025】
第1トルクケーブル41が可撓性を有するため、回転駆動部11および第1回転対象体42の寸法公差や設置時の位置ズレ等がある場合でも、第1トルクケーブル41が撓むことによって寸法公差や位置ズレ等を吸収することができる。また、第1トルクケーブル41は、湾曲した配索経路に沿って配索が可能であり、湾曲した状態で回転駆動部11の回転を第1回転対象体42に伝達することができる。
【0026】
第1トルクケーブル41は、
図3に示すように、第1端部51と、第2端部52と、中央部53と、を有する。第1端部51と第2端部52は、第1トルクケーブル41の両端部である。中央部53は、第1端部51と第2端部52の間に配置されている。第1端部51は、第1回転対象体42に弾性部材43(後述する
図3)を介して接続される。第2端部52は、弾性部材43を介して回転駆動部11の出力部11a(
図1参照)に接続される。
【0027】
第1トルクケーブル41の第1端部51および第2端部52の各々は、先端部54と、嵌合部55と、を有する。先端部54は、第1トルクケーブル41の先端部分である。
【0028】
第1端部51の嵌合部55は、嵌合孔を有する第1回転対象体42に接続される部分である。嵌合部55は、先端部54と中央部53の間に配置されている。嵌合部55は、先端部54の根元側に配置されている。先端部54は、略円柱形状である。先端部54の中心となる軸Aに沿った方向に対して垂直な断面積は、嵌合部55の断面積よりも若干小さい。軸Aに沿って視た場合、先端部54は、嵌合部55の若干内側に位置する。
【0029】
図4は、第1トルクケーブル41の第1端部51が第1回転対象体42と接続された状態を示す斜視図である。
図5は、第1トルクケーブル41の第1端部51が第1回転対象体42から離間した状態を示す斜視図である。
図6は、
図5において第1端部51から弾性部材43を取り外した状態を示す図である。
図7は、
図4において軸を含む断面図である。
図4には、第1回転対象体42の回転中心となる軸Aが示されている。軸Aは、第1トルクケーブル41の第1端部51の中心となる軸と一致している。
【0030】
図5に示すように、第1回転対象体42には、第1端部51が挿入される嵌合孔56が形成されている。第1端部51の嵌合部55の外周面55a(外面の一例)の形状は、第1回転対象体42の嵌合孔56の内周面56a(内面の一例)の形状に軸回り方向で係合するように形成されている。第2端部52の嵌合部55は、回転駆動部11の出力部11aに接続される部分である。図示しないが、出力部11aには嵌合孔が形成されており、第2端部52は、出力部11aの嵌合孔に挿入される。第2端部52の嵌合部55の外周面形状は、出力部11aの嵌合孔の内周面形状に軸回り方向で係合するように形成されている。
【0031】
例えば、
図4および
図5に示すように、嵌合部55は、正四角柱形状に形成されている。嵌合部55の軸Aに対して垂直な断面形状は正方形に形成されている。
【0032】
嵌合孔56は、嵌合部55に対応する形状に形成されている。嵌合孔56の内側空間は、正四角柱形状に形成されている。軸Aに対して垂直な断面における嵌合孔56の形状は正方形に形成されている。このように、嵌合孔56の内周面56aの形状が嵌合部55の外周面55aの形状に対応しているため、嵌合部55は軸回り方向において第1回転対象体42に係合する。
【0033】
第2端部52も第1端部51と同様の形状に形成されており、図示しないが出力部11aの嵌合孔も第1回転対象体42の嵌合孔56と同様の形状に形成されている。なお、第1端部51の嵌合部55と第2端部52の嵌合部55の形状が異なっていてもよく、その場合、第1回転対象体42の嵌合孔56の内周面形状は第1端部51の嵌合部55の外周面形状が軸A周り方向に嵌合可能な形状であればよく、出力部11aの嵌合孔の内周面形状は第2端部52の嵌合部55の外周面形状が軸A周り方向に嵌合可能な形状であればよい。
【0034】
(弾性部材43)
弾性部材43は、
図5に示すように嵌合部55の周囲に配置されている。弾性部材43は、
図7に示すように、嵌合部55と第1回転対象体42の間に配置されている。弾性部材43は、嵌合部55と第1回転対象体42との間のガタを詰めるために配置されている。弾性部材43は、
図7に示すように変形して嵌合部55の外周面55aおよび嵌合孔56の内周面56aに沿って密着する。
【0035】
弾性部材43を形成する材料は、弾性を有していれば特に限定されるものではなく、例えば、エラストマーまたはゴムを用いることができる。弾性部材43のゴム硬度は70°以下が好ましく、35°がより好ましい。嵌合部55に弾性部材43を圧入する際に、ゴム硬度が小さい方が取り付けやすい。
【0036】
弾性部材43は、第1端部51の嵌合部55の周囲に取り付けられ、第1端部51は嵌合部55が弾性部材43で被覆された状態で第1回転対象体42の嵌合孔56に挿入される。
【0037】
第1端部51に取り付けられる前の弾性部材43の形状について説明する。
図8(a)は、弾性部材43の側面図である。
図8(b)は、弾性部材43の正面図である。
【0038】
弾性部材43は、本体部61と、把持部62と、を有する。本体部61の外周面形状は、嵌合部55の外周面形状および嵌合孔56の内周面形状と同様の形状である。本体部61は、嵌合部55に密着して被覆可能な構成であれば特に限定されるものではないが、嵌合部55の外周面55aと嵌合孔56の内周面56aに密着するためには嵌合部55の外周面形状および嵌合孔56の内周面形状と同様の形状が好ましい。本実施形態では、本体部61の外周面形状は、略正四角柱に形成されている。本体部61には、貫通孔63が形成されている。貫通孔63は、本体部61の中心となる軸Aに沿って形成されている。
【0039】
貫通孔63の内周面形状は、嵌合部55の外周面形状に対応する形状である。軸Aに対して垂直な本体部61の断面の外形形状は正方形である。軸Aに対して垂直な貫通孔63(本体部61の内側ともいえる)の形状は正方形である。本体部61の外形の正方形と貫通孔63の正方形は、
図8(b)に示すように各々の辺同士が平行になるように配置されている。貫通孔63には、後述する
図9(a)および
図9(b)に示すように、第1端部51が圧入される。貫通孔63の中心軸に沿って第1端部51が圧入される。
【0040】
貫通孔63は、
図8(a)に示すように、圧入孔71と、入口孔72と、接続孔73と、を含む。圧入孔71と入口孔72と接続孔73は、同様の断面形状であるが、断面積は異なる。圧入孔71と入口孔72と接続孔73の中心軸は一致する。
【0041】
圧入孔71の軸Aに対して垂直な断面積は、嵌合部55の軸Aに対して垂直な断面積よりも小さく形成されている。これにより、第1端部51が圧入孔71に圧入されると、弾性部材43が引き伸ばされる。入口孔72は、本体部61の第1端部51が挿入される側の端に形成されている。入口孔72は、第1端部51の嵌合部55または先端部54と概ね同じ断面積になるよう形成されている。入口孔72の断面積は、圧入孔71の断面積よりも大きく形成されている。接続孔73は、入口孔72と圧入孔71の間に配置され、入口孔72と圧入孔71を接続する。接続孔73は、入口孔72から圧入孔71に向かって断面積が徐々に小さくなる。接続孔73の内周面は、入口孔72から圧入孔71に向かってテーパー形状に形成されている。
【0042】
本体部61の外周面から内周面までの厚みは、
図8(a)に示すように、軸Aに沿った方向において略一定に形成されている。本体部61は、圧入孔71を形成する第1部分81と、入口孔72を形成する第2部分82と、接続孔73を形成する第3部分83と、を有する。入口孔72の断面積が圧入孔71の断面積よりも大きく形成されているため、第2部分82は、第1部分81よりも外形において大きく形成されている。第3部分83は、第1部分81から第2部分82に向かって外形が徐々に大きくなるように形成されている。
【0043】
把持部62は、貫通孔63に第1端部51を圧入する際に作業者によって把持される部分である。把持部62は、本体部61に接続されている。本体部61における把持部62の位置は特に限定されるものではないが、本体部61の第1端部51が圧入される側の端に配置される方が圧入しやすいため好ましい。把持部62の形状は、作業者が把持可能であればよい。
【0044】
本実施の形態では、把持部62は、貫通孔63を挟んで2つ形成されている。各々の把持部62は、略板形状である。一対の把持部62は、第3部分83の端83aから中心軸の外側に向かって延びている。一対の把持部62は、端83aから第1部分81とは反対側に向かって延びている。一対の把持部62は、第3部分83の端83aにおける入口孔72を挟んで対向する部分に配置されている。
【0045】
(接続作業)
次に、弾性部材43を介して第1トルクケーブル41を第1回転対象体42に接続する作業について説明する。
図9(a)、
図9(b)、
図10(a)および
図10(b)は、弾性部材43を介して第1トルクケーブル41を第1回転対象体42に接続する作業を説明するための図である。
【0046】
図9(a)に示すように、第1トルクケーブル41の第1端部51が、弾性部材43の貫通孔63に圧入される。把持部62を把持して、第1端部51の先端部54を弾性部材43の入口孔72に挿入し、更に先端部54を貫通孔63内に押し込むことで、
図9(b)に示すように、嵌合部55が圧入孔71に圧入される。圧入方向(矢印参照)は、貫通孔63の軸Aに沿った方向と一致し、第1端部51の軸Aに沿った方向と一致する。ここで、弾性部材43が第1トルクケーブル41の中央部53に乗り上げるまで、第1トルクケーブル41は弾性部材43の貫通孔63に圧入される。なお、
図9(b)に示すように、第1端部51の先端部54は貫通孔63を通って弾性部材43から露出されることで、第1トルクケーブル41が弾性部材43に最後まで正しく挿入されたかを目視で確認することができる。圧入によって、弾性部材43は第1トルクケーブル41が圧入された範囲において薄く引き伸ばされて変形し、第1トルクケーブル41の嵌合部55の外周を覆うように圧着される。これにより、弾性部材43によって嵌合部55は均一に覆われる。
【0047】
次に、
図10(a)に示すように、一対の把持部62が本体部61から切除される。
【0048】
次に、
図10(b)に示すように、嵌合部55が弾性部材43で覆われた第1トルクケーブル41の第1端部51が第1回転対象体42の嵌合孔56に挿入される(矢印参照)。
【0049】
これにより、
図4および
図7に示すように、弾性部材43を介して第1回転対象体42と第1トルクケーブル41を接続することができる。
【0050】
なお、上記実施の形態では、第1トルクケーブル41の第1端部51と第1回転対象体42の間に弾性部材43を配置する構成について説明したが、第1トルクケーブル41の第2端部52と回転駆動部11の出力部11aとの間の構成も同様であり、第2端部52の嵌合部55と出力部11aの挿入孔の間に弾性部材43が配置されている。また、第2トルクケーブル44の両端部も第1トルクケーブル41の第1端部51と第1端部51と同様の形状であってもよい。すなわち、上記実施の形態と同様に、第2トルクケーブル44の一方の端部の嵌合部と第2回転対象体45の間に弾性部材43が配置されていてもよく、第2トルクケーブル44の他方の端部の嵌合部と回転駆動部11の出力部11bとの間に弾性部材43が配置されていてもよい。
【0051】
(特徴・作用効果等)
本実施の形態の第1伝達機構15では、弾性部材43が嵌合孔56の内周面56aおよび嵌合部55の外周面55aに沿って密着するように変形するため、第1トルクケーブル41および第1回転対象体42の摩耗等が発生し難くガタを抑制する効果を保持することができる。また、第1トルクケーブル41と第1回転対象体42の間が密着しているため、回転力のロスが生じ難く、ロスを低減することができる。
【0052】
弾性部材43は、その材料としてゴムまたはエラストマーを用いることにより第1回転対象体42の嵌合孔56および第1トルクケーブル41の嵌合部55に密着することができる。
【0053】
弾性部材43の硬度を70°以下の硬度に設定することにより、製造の際に第1トルクケーブル41を弾性部材43の貫通孔63に挿入しやすくなり、弾性部材43を嵌合部55と第1回転対象体42の間に容易に配置することができる。また、弾性部材43を第1回転対象体42の嵌合孔56および第1トルクケーブル41の嵌合部55に密着することができる。
【0054】
圧入孔71の断面積を嵌合部55の断面積よりも小さくすることによって、第1トルクケーブル41を弾性部材43に圧入することになり、弾性部材43は薄く引き伸ばされ、第1トルクケーブル41の嵌合部55を覆うように圧着される。これにより、弾性部材43が嵌合部55の外周面55aおよび嵌合孔56の内周面56aに密着するため、摩耗等が発生し難くガタを抑制する効果を保持することができる。また、第1トルクケーブル41と第1回転対象体42の間が弾性部材43で密着しているため、回転力のロスが生じ難く、ロスを低減することができる。
【0055】
弾性部材43に把持部62を設けることにより、貫通孔63に第1トルクケーブル41の嵌合部55を圧入する際に、作業者が把持部62を把持することができるため、第1トルクケーブル41の嵌合部55を貫通孔63に圧入しやすくなる。
【0056】
弾性部材43において本体部61の第1トルクケーブル41が挿入される側の端83aに把持部62を形成することによって、より嵌合部55を貫通孔63に圧入しやすくなる。
【0057】
本実施の形態の弾性部材43では、入口孔72と圧入孔71を接続する接続孔73が、入口孔72から圧入孔71に向かって徐々に断面積が小さくなるように内面がテーパー状に形成されているため、貫通孔63に第1トルクケーブル41の嵌合部55を圧入しやすくなる。
【0058】
上述した本実施の形態の特徴および作用効果は、第1トルクケーブル41の第2端部52と出力部11aに対しても適用できる。また、本実施の形態の特徴および作用効果は、第2トルクケーブル44の一方の端部と第2回転対象体45に対しても適用でき、更に第2トルクケーブル44の他方の端部と出力部11bに対しても適用できる。
【0059】
なお、例えば、以下のような態様も本開示の技術的範囲に属するものと了解される。これら態様は、必要に応じて任意に組み合わせることができる。
【0060】
第1の態様にかかる伝達機構は、回転力を伝達する伝達機構であって、回転対象体と、ケーブルと、弾性部材と、を備える。回転対象体は、嵌合孔を有する。ケーブルは、嵌合孔に挿入されて嵌合する嵌合部を有し、回転対象体に回転力を伝達する。弾性部材は、嵌合部と回転対象体の間に配置され、嵌合孔の内面および嵌合部の外面に沿って密着するように変形する。
【0061】
このように嵌合孔の内面および嵌合部の外面に沿って密着するように変形するため、摩耗等が発生し難くガタを抑制する効果を保持することができる。また、ケーブルと回転対象体の間が密着しているため、回転力のロスが生じ難く、ロスを低減することができる。
【0062】
第2の態様にかかる伝達機構は、第1の態様にかかる伝達機構であって、弾性部材は、ゴム又はエラストマーで形成されている。
【0063】
このようにゴムまたはエラストマーを用いることによって、弾性部材が回転対象体の嵌合孔およびケーブルの嵌合部に密着することができる。
【0064】
第3の態様にかかる伝達機構は、第1の態様にかかる伝達機構であって、弾性部材の硬度は、70°以下である。
【0065】
これにより、製造の際にケーブルを弾性部材の貫通孔に挿入しやすくなり、弾性部材を嵌合部と回転対象体の間に容易に配置することができる。また、回転対象体の嵌合孔およびケーブルの嵌合部に密着することができる。
【0066】
第4の態様にかかる弾性部材は、回転対象体に回転力を伝達するケーブルのうち回転対象体の嵌合孔に挿入されて嵌合する嵌合部の外面と嵌合孔の内面との間に密着して配置される弾性部材であって、嵌合部が圧入される圧入孔を含む。圧入孔への圧入方向に対して垂直な嵌合部の断面積は、圧入方向に対して垂直な圧入孔の断面積よりも大きい。
【0067】
このように圧入孔の断面積が嵌合部の断面積よりも小さいことによって、ケーブルを弾性部材に圧入することになり、弾性部材は薄く引き伸ばされ、トルクケーブルの嵌合部を覆うように圧着される。これにより、弾性部材が嵌合部の外面および嵌合孔の内面に密着するため、摩耗等が発生し難くガタを抑制する効果を保持することができる。また、ケーブルと回転対象体の間が密着しているため、回転力のロスが生じ難く、ロスを低減することができる。
【0068】
第5の態様にかかる弾性部材は、第4の態様にかかる弾性部材であって、本体部と、把持部と、を備える。本体部は、圧入孔を含み、嵌合部の外面上に配置される。把持部は、本体部の外面に形成され、圧入孔にケーブルの嵌合部を圧入する際に把持される。
【0069】
これにより、圧入孔にケーブルの嵌合部を圧入する際に、作業者が把持部を把持することができるため、ケーブルの嵌合部を圧入孔に圧入しやすくなる。
【0070】
第6の態様にかかる弾性部材は、第5の態様にかかる弾性部材であって、把持部は、本体部のケーブルが挿入される側の端に形成されている。
【0071】
このように本体部のケーブルが挿入される側の端に把持部を形成することによって、より嵌合部を圧入孔に圧入しやすくなる。
【0072】
第7の態様にかかる弾性部材は、第4~6のいずれかの態様にかかる弾性部材であって、入口孔と、接続孔と、を更に含む。入口孔は、ケーブルが挿入される側の端に形成され、圧入孔の断面積よりも大きい断面積を有する。接続孔は、圧入孔と入口孔を接続し、入口孔から圧入孔に向かって断面積が小さくなるように内面がテーパー状に形成されている。
【0073】
このように圧入孔と入口孔を接続する接続孔が、入口孔から圧入孔に向かって徐々に断面積が小さくなるように内面がテーパー状に形成されているため、圧入孔にケーブルの嵌合部を圧入しやすくなる。
【0074】
(他の実施の形態)
以上、本開示の一実施の形態について説明したが、本開示は上記実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0075】
(A)
上記実施の形態の駆動装置1は、シートを移動させるために用いられているが、これに限定されるものではない。駆動装置1は、例えばパワーリフトゲートの操作装置や、サンルーフの開閉を行う開閉装置などに用いてもよい。
【0076】
(B)
上記実施の形態の変換部23は、ウォームギアおよびウォームホイール等の機構を有しているが、例えばラックアンドピニオン機構や、他の歯車機構など、他の構造によって第1回転対象体42および第2回転対象体45の回転運動を所望の動作に変換してもよい。また、駆動装置1は、第1回転対象体42および第2回転対象体45の回転運動が他の部材の回転運動等、直線運動以外の運動に変換されて操作対象を操作する機構であってもよい。
【0077】
(C)
上記実施の形態では、嵌合部55の外形状および嵌合孔56の内形状は、正四角柱形状であるが、これに限られるものではなく、正多角柱形状であってもよく、円柱に突起を設けた形状であってもよい。要するに、嵌合部55の外周面形状および嵌合孔56の内周面形状は、軸A回り方向に嵌合可能な形状であればよい。また、弾性部材43の本体部61の外周面形状および圧入孔71の内周面形状も正四角柱であるが、これに限られるものではなく、正多角柱であってもよい。ただし、弾性部材43の厚みを均一にする方が好ましいため、弾性部材43の本体部61の外周面形状および圧入孔71の内周面形状は、嵌合部55の外周面形状および嵌合孔56の内周面形状に合わせる方が好ましい。
【0078】
(D)
上記実施の形態の弾性部材43の表面は平らに形成されているが、凹凸構造や凸部を形成してもよい。
【0079】
(E)
上記実施の形態の弾性部材43には、入口孔72および接続孔73が形成されているが、これらが形成されず、圧入孔71のみが形成されていなくてもよい。この場合、貫通孔63が圧入孔71と一致することになる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本開示の伝達機構および弾性部材は、ガタを抑制する効果を保持するとともに回転力のロスを低減可能な効果を有し、シート移動装置等として有用である。
【符号の説明】
【0081】
1 :駆動装置
11 :回転駆動部
11a :出力部
11b :出力部
12 :支持部材
13 :スライド機構
14 :スライド機構
15 :第1伝達機構
16 :第2伝達機構
21 :ガイドレール
22 :スライド部材
23 :変換部
31 :ウォームホイール
32 :ロッド部材
33 :ナット部材
41 :第1トルクケーブル
42 :第1回転対象体
43 :弾性部材
44 :第2トルクケーブル
45 :第2回転対象体
51 :第1端部
52 :第2端部
53 :中央部
54 :先端部
55 :嵌合部
55a :外周面
56 :嵌合孔
56a :内周面
61 :本体部
62 :把持部
63 :貫通孔
71 :圧入孔
72 :入口孔
73 :接続孔
81 :第1部分
82 :第2部分
83 :第3部分
83a :端
A :軸