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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108446
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 39/10 20060101AFI20230728BHJP
   D06F 39/08 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
D06F39/10 D
D06F39/08 321
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009577
(22)【出願日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】関谷 禎夫
(72)【発明者】
【氏名】上野 真司
(72)【発明者】
【氏名】松本 幸司
【テーマコード(参考)】
3B166
【Fターム(参考)】
3B166AA01
3B166AA15
3B166AE01
3B166AE02
3B166AE07
3B166BA26
3B166BA45
3B166BA82
3B166CA01
3B166CB01
3B166CB11
3B166DA04
3B166DB02
3B166DB03
3B166DB17
3B166DB18
3B166DD06
3B166DE01
3B166DE02
3B166DE04
(57)【要約】
【課題】マイクロプラスチックを捕集し、排水時間の遅延を防ぐことが可能な洗濯機を提供する。
【解決手段】外槽2から排水口9aへと流れる排水経路9と、外槽2から洗濯水を循環させる循環経路8と、前記排水経路マイクロプラスチックを捕集する捕集フィルタ10と、を備え、前記循環経路を流れる水の流れは、糸くず捕集部の面方向である。また、捕集フィルタ10は、循環経路8に対して略平行に設置されている。また、捕集フィルタ10の内壁面10aは、循環経路8の内壁面8a2と面一である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯槽から排水口へと流れる排水経路と、
前記洗濯槽から洗濯水を循環させる循環経路と、
前記排水経路にマイクロプラスチックを捕集する糸くず捕集部と、を備え、
前記循環経路を流れる水の流れは、糸くず捕集部の面方向であることを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
請求項1に記載の洗濯機において、
前記糸くず捕集部は、前記循環経路に対して略平行に設置されていることを特徴とする洗濯機。
【請求項3】
請求項1に記載の洗濯機において、
前記糸くず捕集部は、前記循環経路に対して傾斜があることを特徴とする洗濯機。
【請求項4】
請求項2に記載の洗濯機において、
前記糸くず捕集部の内壁面は、前記循環経路の内壁面と面一であることを特徴とする洗濯機。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の洗濯機において、
洗濯水を循環させる循環ポンプを備え、
前記糸くず捕集部は、前記循環ポンプの入口側に設置されていることを特徴とする洗濯機。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の洗濯機において、
前記循環経路には糸くずを捕捉する糸くず捕捉部が設けられていることを特徴とする洗濯機。
【請求項7】
請求項5に記載の洗濯機において、
前記循環ポンプの入口側に、異物を捕捉する異物捕捉部を備えることを特徴とする洗濯機。
【請求項8】
請求項6に記載の洗濯機において、
前記糸くず捕捉部の入口側に、異物を捕捉する異物捕捉部を備えることを特徴とする洗濯機。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の洗濯機において、
前記糸くず捕集部は、金属板に複数の孔を開けたものであることを特徴とする洗濯機。
【請求項10】
請求項6または8に記載の洗濯機において、
前記糸くず捕集部は、メッシュフィルタであって、
前記糸くず捕捉部は、第二のメッシュフィルタを備え、
前記第二のメッシュフィルタのメッシュサイズは、前記メッシュフィルタのメッシュサイズと同じもしくは粗いものであることを特徴とする洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯乾燥機には、内槽の回転軸を設置面に対して略垂直としたタテ型と、水平もしくは若干傾斜させたドラム式がある。例えば、ドラム式洗濯機では、洗濯液を汲み上げて洗濯物にかけることで、洗剤等が溶けた洗濯水を洗濯物に満遍なく浸透させる。このように、ドラム式洗濯機は、タンブリング動作や循環ポンプによる洗濯水の循環等により洗濯を行っている。洗濯行程では布が擦れることにより、糸くずが発生する。発生する糸くずには、マイクロプラスチックやマイクロファイバー等の微小なプラスチックが含まれるが、これらは微小なサイズのため、従来のフィルタでは、メッシュサイズが大きく、これらを捕集することは困難であった。
【0003】
そこで、特許文献1では、マイクロプラスチックやマイクロファイバー等の微小な糸くずを捕集するためのフィルタを、循環経路の一部である洗剤ケースの後方に設置し、マイクロプラスチックを捕集する洗濯機が提案されている。
また、特許文献2では、循環経路と排水経路の分岐点にマイクロプラスチック捕集用のフィルタを設置し、第一のフィルタ領域が目詰まりした際は、第二のフィルタ領域に水が流れるようフィルタ装置を制御することで、フィルタが詰まるまでの時間を延ばす洗濯機が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2020/251513号公報
【特許文献2】EP3663457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の洗濯機では、発生したマイクロプラスチックの捕集率を向上させるため、メッシュサイズを小さくした場合、容易にフィルタが目詰まりしてしまう恐れがある。
また、特許文献2に記載の洗濯機では、発生したマイクロプラスチックの捕集率を向上させるため、メッシュサイズを小さくした場合、第一のフィルタ領域が目詰りしても第二のフィルタ領域の水が流れるため、特許文献1の洗濯機に比べ、目詰まりするまでの時間は長くなるが、最終的には目詰りを起こし、排水時間が延びる恐れがあった。
【0006】
本発明は、前記した従来の課題を解決するものであり、マイクロプラスチックを捕集し、排水時間の遅延を防ぐことが可能な洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、洗濯槽から排水口へと流れる排水経路と、前記洗濯槽から洗濯水を循環させる循環経路と、前記排水経路にマイクロプラスチックを捕集する糸くず捕集部と、を備え、前記循環経路を流れる水の流れは、糸くず捕集部の面方向であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、マイクロプラスチックを捕集し、排水時間の遅延を防ぐことが可能な洗濯機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の洗濯機の概略構成図である。
図2】第1実施形態の糸くず捕集装置を示す模式図のである。
図3図2のIII-III線断面図である。
図4A】第1実施形態の糸くず捕集装置を示し、排水口側に水が流れた場合の模式図である。
図4B】第1実施形態の糸くず捕集装置を示し、循環経路に水が流れた場合の模式図である。
図4C】第1実施形態の糸くず捕集装置において、捕集フィルタが傾斜を有する場合の模式図である。
図5A】第2実施形態の糸くず捕集装置を示し、排水口側に水が流れた場合の模式図である。
図5B】第2実施形態の糸くず捕集装置を示し、循環経路に水が流れた場合の模式図である。
図6】第3実施形態の洗濯機の概略構成図である。
図7A】第3実施形態の糸くず捕集装置を示し、排水口側に水が流れた場合の模式図である。
図7B】第3実施形態の糸くず捕集装置を示し、循環経路に水が流れた場合の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態例について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例もその範囲に含むものである。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に関わるもので、ドラム式洗濯機に適用した場合の概略構成図である。
図1に示すように、ドラム式の洗濯機100A(以下、洗濯機と略記する)は、筐体3の内側に外槽2が備えられ、外槽2の内側に洗濯物7が投入される内槽1(ドラム)が備えられて構成されている。内槽1の回転軸は、前側が後側よりも高くなるように傾斜し、または略水平となるように構成されている。また、本実施形態では、外槽2と内槽1によって洗濯槽が構成されている。なお、図1に示す洗濯機100Aは、第1実施形態において最低限必要な主要部のみを示した概略図である。
【0011】
また、外槽2と内槽1との間には空間が設けられ、その間を水が通り抜けられるようになっている。また、外槽2の下部には洗濯水が供給され、循環ポンプ4を用いて、循環経路8を通って内槽1に戻ることで循環するようになっている。
【0012】
また、洗濯機100Aは、糸くず捕集装置110Aを備えている。この糸くず捕集装置110Aは、循環経路8と、排水経路9と、捕集フィルタ10(糸くず捕集部)と、を備えて構成されている。
【0013】
循環経路8は、外槽2の底部と循環ポンプ4の吸引側(入口)とを接続する配管8aと、循環ポンプ4の吐出側(出口)とを接続する配管8bと、を備えて構成されている。
【0014】
排水経路9は、洗濯槽から排水口9aへ洗濯水が流れる流路であり、外槽2の底部と排水口9aとを接続する配管9bを備えている。また、排水経路9には、ON・OFF式(全開と全閉のみ)の電磁式の排水弁6が設けられている。
【0015】
また、循環経路8の配管8aと排水経路9の配管9bとは、外槽2の底部から捕集フィルタ10までの経路が共有され、1本の配管によって構成されている。
【0016】
このように構成することで、外槽2の底部からの水(洗濯水)の流れは、循環ポンプ4に入る経路と、排水弁6を通して排水口9aへ流れる経路とになる。捕集フィルタ10は、循環ポンプ4の入口側(吸込側)に設置されている。
【0017】
また、外槽2から排水口9aへの排水経路9の途中には、捕集フィルタ10が設けられている。この捕集フィルタ10は、洗濯物7から発生した糸くず(マイクロプラスチックやマイクロファイバー含む)を捕集し、排水口9aに糸くずが流れることを防止する機能を有する。捕集フィルタ10のメッシュサイズは例えば、1μm~3mm、望ましくは、所定量のマイプラを捕集することと排水時間の遅延を防止するためには50μm~700μm程度とする。なお、糸くずは、洗濯や乾燥時に衣類が擦れることにより発生する。
【0018】
また、捕集フィルタ10と循環ポンプ4との間の配管8aに、糸くずを捕捉する糸くず捕捉部11が設けられている。この糸くず捕捉部11は、筐体3に対して着脱することができるフィルタ部を備える。すなわち、フィルタ部を筐体3から取り外して、フィルタ部から糸くずを取り除いて清掃し、再び筐体3に取り付けられるようになっている。
【0019】
図2は、第1実施形態の糸くず捕集装置を示す模式図である。
図2に示すように、捕集フィルタ10は、洗濯物(図1参照)から発生した糸くず40を捕集し、排水口9a(図1参照)に糸くず40が流れることを防止する機能を有する。なお、糸くず40は、洗濯や乾燥時に衣類が擦れることにより発生する。
【0020】
また、捕集フィルタ10は、循環経路8と排水経路9との分岐点S1(分岐部)に設けられている。また、排水経路9の配管9bは、循環経路8の配管8aに対して直交または略直交する方向に延びて構成されている。また、捕集フィルタ10は、循環経路8(配管8a)を流れる水の流れFに対して略平行に設置されている。つまり、捕集フィルタ10は、糸くず40などの異物を除いた洗濯水が通過できる複数の孔が形成された面(表面)が水の流れFに対して平行または略平行になるように構成されている。換言すると、循環経路8を流れる水の流れは、捕集フィルタ10の面方向である。
【0021】
また、循環経路8には、循環ポンプ4と分岐点S1(捕集フィルタ10)との間に、糸くず捕捉部11が設けられている。この糸くず捕捉部11に糸くず40が至ると、糸くず40が糸くず捕捉部11のフィルタ部に捕捉され(からめ取られ)、内槽1(図1参照)内に糸くず40が戻るのが抑えられる。なお、糸くず捕捉部11のフィルタ(第二のメッシュフィルタ)のメッシュサイズは、捕集フィルタ10(メッシュフィルタ)のメッシュサイズと同じもしくは粗いものである。
【0022】
図3は、図2のIII-III線断面図である。
図3に示すように、循環経路8の配管8aは、例えば円筒状に形成され、配管8aの下面に排水経路9の配管9bが接続されている。また、配管8aには、配管9bの内径と同程度の孔8a1が配管8aを貫通するように形成されている。この孔8a1には、捕集フィルタ10が嵌め込まれている。また、捕集フィルタ10は、板状に形成され、捕集フィルタ10の内壁面10aと、配管8aの内壁面8a2とが面一になるように構成されている。換言すると、捕集フィルタ10と内壁面8a2には段差がなく、フラットな状態であり、具体的には、捕集フィルタ10は、内壁面8a2から径方向内側に突出しないように配置され、外槽2からの洗濯水の流れを阻害しないようになっている。捕集フィルタ10の内壁面10aと、配管8aの内壁面8a2とは、面一であることが望ましいが、面一でなく、段差があってもよい。
【0023】
また、捕集フィルタ10の材質は、ポリエステルやナイロンのような繊維でできているものを用いてもよいが、金属(例えば、銅、ステンレス鋼)でできているものを用いると、微生物の繁殖がしずらく衛生的である。また、金属の捕集フィルタ10を用いる場合は、網状のものよりも、金属板にエッチングなどで孔を開けたものを用いるとよい。これは捕集フィルタ10の表面に凹凸(バリのようなもの)が形成されなくなるので、糸が捕集フィルタ10の目に絡まりにくく、糸くずを移動させ易くなるからである。また、捕集フィルタ10の表面は、酸素プラズマやコーティング剤等による親水性向上処理を施してもよい。このように親水性向上処理を行うことにより、水が流れ易くなり、排水時間の遅延を防ぐことができる。
【0024】
次に、糸くず捕集装置110Aを備えた洗濯機100Aの動作について図4Aおよび図4Bを参照して説明する。図4Aは、第1実施形態の糸くず捕集装置を示し、排水口側に水が流れた場合の模式図である。図4Bは、第1実施形態の糸くず捕集装置を示し、循環経路に水が流れた場合の模式図である。
洗濯機100Aでは、洗い行程が終了すると、洗い水(洗濯水)を機外に排出する排水処理を行い、その後脱水行程に実行する。脱水行程が終了すると、すすぎ行程に移行する。すすぎ行程では、水を洗濯槽(外槽2)に溜めて、循環ポンプ4を駆動して洗濯水を循環させた後、排水処理を行い、脱水行程を実行する。
【0025】
洗濯機100Aの洗い工程について説明すると、内槽1にユーザが洗濯物7を入れて洗濯をスタートさせることで、排水弁6を閉じて必要に応じて布量(洗濯物7の量)の検知を行い、外槽2に給水が行われる。外槽2に所定量の水を溜めて、循環ポンプ4を使って洗濯水を内槽1に循環させる。洗濯水を循環させながら、内槽1を回転させて、洗濯物7を上から下へ移動させるタンブリング動作を行うことで、洗濯物7の汚れを落とす。このとき洗濯物7が擦れることにより糸くずが発生する。循環ポンプ4が駆動している場合、糸くずは循環経路8の色々な場所に存在している。洗い行程が終了した後は、排水弁6を開けて、洗濯水を排水口9aに排水する。
【0026】
このとき、図4Aに示すように、外槽2の底部からの洗濯水は、分岐点S1において排水経路9の配管9bに流れ込む。また、洗濯で発生した糸くず40は、捕集フィルタ10を通ることができないので、洗濯水のみが捕集フィルタ10を通過し、糸くずが捕集フィルタ10に捉えられる。
【0027】
洗い行程の後にすすぎ行程に移行する。すすぎ行程では、再度、排水弁6を閉めて外槽2の下部に水を溜める。そして、循環ポンプ4を駆動して、循環経路8に水を循環させて洗濯物7のすすぎを行う。このとき、図4Bに示すように、循環ポンプ4を駆動して水を循環させることにより、捕集フィルタ10の表面に捉えられていた糸くず40が、循環時の水流で下流側(循環ポンプ4側)に移動するので、捕集フィルタ10の表面に糸くず40がいなくなる(捕集フィルタ10の表面から糸くず40が取り除かれる)。このように、糸くず40が捕集フィルタ10から移動するのは、捕集フィルタ10が循環経路8を流れる洗濯水の流れに対して略平行に配置されているからである。
【0028】
すすぎ行程の終了後に、排水弁6を開けて外槽2の内部の洗濯水を排水する。このとき、捕集フィルタ10の表面に糸くず40がいないので、捉えた糸くず40が圧力損失となって排水時間が延びるのを(排水時間が遅延するのを)防ぐことができる。
【0029】
また、捕集フィルタ10が設けられていることにより、糸くず40が排水経路9(配管9b)を通って排水口9aに流れるのを防いでいるので、排水口9aが詰まるのを防止することができる。
【0030】
以上説明したように、第1実施形態の洗濯機100Aは、外槽2から排水口9aへと流れる排水経路9と、外槽2から洗濯水を循環させる循環経路8と、排水経路9と循環経路8との分岐点S1に糸くず40を捕集する捕集フィルタ10と、を備える。捕集フィルタ10は、循環経路8を流れる水の流れに対して略平行に設置されている(図4A図4B参照)。ここで、略平行の略とは、設計誤差や製造誤差による多少の傾き、例えば±1°程度の傾きを含むことを意味している。これによれば、すすぎ行程の排水時に捕集フィルタ10から糸くず40が移動しているので、排水時間が延びるのを防ぐことができる。図4Cは、第1実施形態の糸くず捕集装置において、捕集フィルタ10が傾斜を有する場合の模式図である。このように、捕集フィルタ10は、循環経路に対して、つまり、循環経路8を流れる水の流れに対して、上述の設計誤差や製造誤差による傾きを超える傾斜をもって設置しても、排水時間が延びるのを防ぐことができる。傾斜は、循環経路8を流れる水の上流側から下流側にかけて、左下りでもよいし、左上がりでもよい。
【0031】
また、第1実施形態において、洗濯水を循環させる循環ポンプ4を備え、捕集フィルタ10は、循環ポンプ4の入口側に設置されている(図2参照)。これによれば、捕集フィルタ10に堆積した糸くず40を捕集フィルタ10の表面から移動させる推力を発生させ易くなる。また、循環ポンプがない場合も、ドラムの回転力により、循環経路を流れる水流は発生し、捕集フィルタ10に堆積した糸くず40を捕集フィルタ10の表面から移動させる推力は発生する。
【0032】
また、第1実施形態において、循環経路8には糸くず40を捕捉する糸くず捕捉部11が設けられている(図2参照)。これによれば、循環経路8を通って内槽1に戻る糸くず40を削減できる。
【0033】
また、第1実施形態において、捕集フィルタ10は、金属板にエッチング処理によって孔を開けたものである。これによれば、特に捕集フィルタ10に形成された孔の縁に凹凸が形成されなくなるので、糸くず40の糸が捕集フィルタ10の目に絡まりにくくなり、すすぎ行程における循環ポンプ4の駆動時に糸くずを移動させ易くなる。
【0034】
また、糸くず捕集装置110Aを洗濯機100Aに適用することで、マイクロプラスチックを捕集し、排水時間の遅延を防止することができ、洗濯時間の延長を防ぐことが可能になる。
【0035】
(第2実施形態)
図5Aは、第2実施形態の糸くず捕集装置を示し、排水口側に水が流れた場合の模式図である。図5Bは、第2実施形態の糸くず捕集装置を示し、循環経路に水が流れた場合の模式図である。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
図5Aに示すように、第2実施形態の糸くず捕集装置110Bは、第1実施形態の糸くず捕集装置110Aに異物トラップ12を追加した構成である。また、糸くず捕集装置110Bは、第1実施形態と同様に、ドラム式洗濯機に適用される。
【0036】
異物トラップ(異物捕捉部)12は、循環ポンプ4の入口側の配管8aに設けられ、糸くずとは異なる異物を捕捉するものである。また、異物トラップ12は、糸くず捕捉部11よりも上流側に設けられている。このような異物トラップ12は、洗濯時に洗濯物7から外れたボタンや、洗濯物7のポケットの中から出し忘れたコイン等の異物が循環ポンプ4に入ることを防ぐものである。これにより、循環ポンプ4の故障を防ぐことができる。また、異物トラップ12で大きな異物を捕捉し、糸くず捕捉部11で小さな糸くずを捕捉する二段階構成とすることで、糸くず捕捉部11の目詰り発生を遅延させることが可能である。
【0037】
また、異物トラップ12は、ボタン等の糸くず40よりも大きいものが循環ポンプ4に入るのを防ぐために設置しているので、異物トラップ12としてフィルタを用いる場合は、捕集フィルタ10よりもフィルタの目開きが大きくてもよい。また、フィルタの目開きを大きくすることにより、圧力損失を小さくできる。
【0038】
なお、異物トラップ12は、フィルタである必要はなく、格子状や棒状の構造物等、異物が通り過ぎることができない大きさの目であればよい。
【0039】
(第3実施形態)
図6は、第3実施形態の洗濯機の概略構成図である。図7Aは、第3実施形態の糸くず捕集装置を示し、排水口側に水が流れた場合の模式図である。図7Bは、第3実施形態の糸くず捕集装置を示し、循環経路に水が流れた場合の模式図である。
図6に示すように、第3実施形態の糸くず捕集装置110Cは、縦型の洗濯機(縦型の洗濯乾燥機)100Bに搭載されるものである。
【0040】
洗濯機100Bは、筐体23(外枠)内に、内槽21(洗濯槽)を内包した合成樹脂製の外槽22を備えている。内槽21は、鉛直方向に回転軸を有し、外槽22内に回転自在に支持されている。なお、図6に示す洗濯機100Bは、あくまでも主要部のみを示した概略図である。
【0041】
内槽21は、周壁に洗濯物7に含まれている洗濯水を遠心力にて洗濯物7と分離し排出するための脱水孔21a(一部のみ図示)を複数個有している。
【0042】
内槽21の底部には、回転自在な攪拌翼24が設けられている。この攪拌翼24は、周縁部が迫り上がるように上向きに湾曲して皿状に形成されて、洗濯物7を受け支える状態で回転するようになっている。また、攪拌翼24には、表面と裏面を連通する孔(不図示)が複数個所に形成されている。これにより、洗濯水は、攪拌翼24の裏側に流れ込むようになっている。
【0043】
また、攪拌翼24の裏面(下面)には、回転中心から放射状に延びる裏羽根24a(羽根部)が形成されている。この裏羽根24aは、周方向に等角度(例えば、30度毎)に配置されている。また、攪拌翼24の裏面には、複数の補強板が回転軸を中心として同心円状または略同心円状に設けられている。このように裏羽根24aを設けることにより、内槽21の底面の洗濯水を径方向の外側に押し出すようになっている。
【0044】
外槽22の底部外側には、内槽21および攪拌翼24を回転させる駆動装置25が設けられている。この駆動装置25は、内槽21を静止させた状態で攪拌翼24を左右に回転させること(攪拌モード)と、内槽21と攪拌翼24を一体的に同一方向に回転させること(脱水モード)を選択できる機能を有している。また、攪拌翼24は、制御装置(不図示)の指令により正転/逆転を繰り返し、内槽21に投入された洗濯物7を上下動に攪拌することにより、洗濯、すすぎ等を行う。
【0045】
また、内槽21の内周面には、循環流路部材21bが設けられている。循環流路部材21bは、内槽21の内壁面に、内槽21の軸方向に沿って配置されている。なお、循環流路部材21bの数は、2ヶ所に限定されるものではなく、3ヶ所以上であってもよい。
【0046】
循環流路部材21bは、所定の幅で上下方向に延びる略板状の部材で構成され、その上部に開口部(不図示)が形成されている。また、循環流路部材21bには、糸くずなどを捕捉するための糸くず捕捉部31が設けられている。
【0047】
糸くず捕捉部31は、循環流路部材21bに対して着脱自在に構成されている。すなわち、フィルタ部を筐体3(内槽21)から取り外して、フィルタ部から糸くずを取り除いて清掃し、再び筐体3(内槽21)に取り付けられるようになっている。
【0048】
循環流路部材21bは、合成樹脂で形成され、内槽21との間に独立した循環水路21cを形成している。また、循環流路部材21bの下部には、洗濯水を循環水路21cに流入させるための流入口21dが設けられている。
【0049】
このような循環流路部材21bを設けた洗濯機100Bでは、内槽21の底板の内周側(内底部)と、攪拌翼24の裏面に設けられた裏羽根24aの外周側とで形成されたポンプ室に、循環水路21cが連通して設けられている。そして、洗濯水が攪拌翼24の裏側に設けた裏羽根24aの回転により発生する遠心力で外側に押し出されることによって、循環水路21cを経由して洗濯水が上昇し、循環流路部材21bの上部に設けた開口部から洗濯水が間欠的に注がれる。
【0050】
糸くず捕集装置110Cは、循環経路28と、排水経路29と、捕集フィルタ30(糸くず捕集部)と、を備えて構成されている。
【0051】
循環経路28は、洗濯水を再度、内槽21内に戻して流す流路であり、裏羽根24aの外周、流入口21d、循環水路21cによって構成されている。
【0052】
排水経路29は、洗濯槽から排水口9aへ洗濯水が流れる流路であり、外槽22の底部に形成された孔29cと排水口29aとを接続する配管29bを備えている。また、排水経路29には、開・閉の電磁式の排水弁26が設けられている。
【0053】
捕集フィルタ30は、循環経路28と排水経路92との分岐点S2(図7A参照)に設けられている。また、捕集フィルタ30は、内槽21の底面に位置する循環経路28を流れる水の流れF(図7A参照)に対して略平行に設置されている。つまり、捕集フィルタ30は、糸くず40などの異物を除いた洗濯水が通過できる複数の孔が形成されている面が水の流れFに対して平行または略平行になるように構成されている。
【0054】
なお、捕集フィルタ30は、循環流路部材21bの周方向の位置と重ならない位置に形成されている。これにより、裏羽根24aの外周から循環流路部材21bに向かって循環する洗濯水が捕集フィルタ30を通って外槽22側に排出され循環流量が低下するのを抑制できる。
【0055】
また、外槽22から排水口29aへの排水経路9の途中には、捕集フィルタ30が設けられている。この捕集フィルタ30は、洗濯物7から発生した糸くずを捕集し、排水口29aに糸くずが流れることを防止する機能を有する。なお、糸くずは、洗濯や乾燥時に衣類が擦れることにより発生する。
【0056】
次に、糸くず捕集装置110Cを備えた洗濯機100Bの動作について図7Aおよび図7Bを参照して説明する。図7Aは、第3実施形態の糸くず捕集装置を示し、排水口側に水が流れた場合の模式図である。図7Bは、第3実施形態の糸くず捕集装置を示し、循環経路に水が流れた場合の模式図である。
【0057】
洗濯機100Bの洗い工程では、内槽1にユーザが洗濯物7を入れて洗濯をスタートさせると、排水弁26を閉じて必要に応じて布量(洗濯物7の量)の検知を行い、外槽2に給水する。外槽2に水が所定量溜められると、攪拌翼24を正逆方向に回転させながら洗濯水を内槽21に循環させる。このとき洗濯物7が擦れることにより糸くずが発生する。洗い行程が終了した後は、排水弁26を開けて、洗濯水を排水口29aに排水する。
【0058】
このとき、図7Aに示すように、内槽21の底部からの洗濯水は、分岐点S2において排水経路29の配管29bに流れ込む。また、洗濯で発生した糸くず40は、捕集フィルタ30を通ることができないので、洗濯水のみが捕集フィルタ30を通過し、糸くず40が捕集フィルタ30に捉えられる。
【0059】
洗い行程の後にすすぎ行程に移行する。すすぎ行程では、再度、排水弁26を閉めて外槽22の下部に水を溜める。そして、攪拌翼24を正逆方向に回転させて、循環経路28に水を循環させて洗濯物7のすすぎを行う。このとき、図7Bに示すように、攪拌翼24の裏羽根24aの回転力によって洗濯水(すすぎ水)を循環させることにより、捕集フィルタ30の表面に捉えられていた糸くず40が、循環時の水流で下流側に移動するので、捕集フィルタ30の表面に糸くず40がいなくなる(捕集フィルタ30の表面から糸くず40が取り除かれる)。
【0060】
すすぎ行程の終了後に、排水弁26を開けて外槽22の内部の洗濯水を排水する。このとき、捕集フィルタ30の表面に糸くず40がいないので、捉えた糸くず40が圧力損失となって排水時間が延びるのを(排水時間が遅延するのを)防ぐことができる。
【0061】
また、捕集フィルタ30が設けられていることにより、糸くず40が排水経路29(配管29b)を通って排水口29aに流れるのを防いでいるので、排水口29aが詰まるのを防止することができる。
【0062】
以上説明したように、第3実施形態の糸くず捕集装置110Cは、内槽21から排水口29aへと流れる排水経路29と、内槽21から洗濯水を循環させる循環経路28と、排水経路29と循環経路28との分岐点S2に糸くず40を捕集する捕集フィルタ30と、を備える。捕集フィルタ30は、循環経路28を流れる水の流れに対して略平行に設置されている(図7A図7B参照)。これによれば、すすぎ行程の排水時に捕集フィルタ30から糸くず40が移動しているので、排水時間が延びるのを防ぐことができる。
【0063】
また、糸くず捕集装置110Cを洗濯機100Bに適用することで、マイクロプラスチックを捕集し、排水時間の遅延を防止することができ、洗濯時間の短縮を図ることが可能になる。
【符号の説明】
【0064】
1,21 内槽(洗濯槽)
2,22 外槽(洗濯槽)
3,23 筐体
4 循環ポンプ
6,26 排水弁
7 洗濯物
8,28 循環経路
9,29 排水経路
9a,29a 排水口
10,30 捕集フィルタ(糸くず捕集部)
11,31 糸くず捕捉部
12 異物トラップ
21a 脱水孔
21b 循環流路部材
21c 循環水路
24 攪拌翼
24a 裏羽根
40 糸くず
100A,100B 洗濯機
110A,110B,110C 糸くず捕集装置
S1,S2 分岐点
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6
図7A
図7B