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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108461
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】原子炉の廃炉方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/30 20060101AFI20230728BHJP
   E02D 23/00 20060101ALI20230728BHJP
   E02D 3/08 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
G21F9/30 535A
E02D23/00 Z
E02D3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009596
(22)【出願日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 光男
(72)【発明者】
【氏名】岡野 利喜造
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043CA20
2D043EB06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】長期間にわたって放射線を確実に遮蔽でき、監視作業およびメンテナンス作業の負担の軽減化を図る上で有利な原子炉の廃炉方法を提供すること。
【解決手段】原子炉建屋22を収容するケーソン躯体10を構築する。ケーソンショベル20でケーソン躯体10の下方の地盤を掘削していくことにより、原子炉建屋22とケーソン躯体10の重量によりケーソン躯体10を沈下させていく。ケーソン躯体10を沈下させたならば、ケーソン躯体10の下方の空間28にコンクリートCを充填し、ケーソン躯体10の内部に充填材Fを充填し、原子炉建屋22と支持地盤とをケーソン躯体10と共に地中に埋設して廃炉作業を終了する。充填材Fとして、固化処理土または流動化処理土などの土の性状を改良した処理土、あるいは、低放射コンクリートまたは高流動コンクリートを用いる。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉建屋を収容するケーソン躯体を設け、
前記ケーソン躯体の下方の地盤を掘削していくことにより前記原子炉建屋を前記ケーソン躯体と共に地中に沈下させていき、
前記ケーソン躯体の内部に充填材を充填し、
ケーソン躯体を沈下させた後、前記掘削したケーソン躯体の下方の空間に前記充填材またはコンクリートを充填して前記原子炉建屋を前記ケーソン躯体と共に地中に埋設し、
前記充填材として、土の性状を改良した処理土を用いる、
ことを特徴とする原子炉の廃炉方法。
【請求項2】
前記処理土は、固化処理土または流動化処理土である、
ことを特徴とする請求項1記載の原子炉の廃炉方法。
【請求項3】
原子炉建屋を収容するケーソン躯体を設け、
前記ケーソン躯体の下方の地盤を掘削していくことにより前記原子炉建屋を前記ケーソン躯体と共に地中に沈下させていき、
前記ケーソン躯体の内部に充填材を充填し、
ケーソン躯体を沈下させた後、前記掘削したケーソン躯体の下方の空間に前記充填材またはコンクリートを充填して前記原子炉建屋を前記ケーソン躯体と共に地中に埋設し、
前記充填材として、低放射コンクリートまたは高流動コンクリートを用いる、
ことを特徴とする原子炉の廃炉方法。
【請求項4】
前記ケーソン躯体の内部への前記充填材の充填は、前記ケーソン躯体を沈下させた後に行なう、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項記載の原子炉の廃炉方法。
【請求項5】
前記ケーソン躯体の内部への前記充填材の充填は、前記ケーソン躯体を沈下させる前に行なう、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項記載の原子炉の廃炉方法。
【請求項6】
前記ケーソン躯体は、その下面周囲から刃口が突設された底壁と、前記底壁の周囲から起立する側壁と、前記側壁の上端を接続する天井壁とを含んで構成され、
前記底壁は、前記原子炉建屋と一体化されている、
ことを特徴とする請求項1~5の何れか1項記載の原子炉の廃炉方法。
【請求項7】
前記原子炉建屋の周囲の地盤に前記原子炉建屋を囲む凹部を掘削し、
前記ケーソン躯体の下方の地盤を掘削する掘削機を前記凹部に配置した後、前記底壁を前記凹部上に設ける、
ことを特徴とする請求項6記載の原子炉の廃炉方法。
【請求項8】
前記ケーソン躯体は、その下面周囲から刃口が突設された底壁と、前記底壁の周囲から起立する側壁と、前記側壁の上端を接続する天井壁とを含んで構成され、
前記底壁は、前記原子炉建屋を支える地盤の下方に設けられ、前記原子炉建屋と共に前記原子炉建屋を支える地盤を支持している、
ことを特徴とする請求項1~5の何れか1項記載の原子炉の廃炉方法。
【請求項9】
前記原子炉建屋の周囲の地盤に前記原子炉建屋と前記支持地盤を囲む枠状凹部を掘削し、
前記枠状凹部から前記底壁を構築すると共に、前記底壁の周囲から地表面までの高さで前記側壁の下部を構築する、
ことを特徴とする請求項8記載の原子炉の廃炉方法。
【請求項10】
前記底壁と前記側壁の下部を構築した後、前記刃口の内側の地盤を掘削して前記刃口の内側で前記ケーソン躯体の下方に空間を設け、
前記ケーソン躯体の下方の地盤の掘削は、前記枠状凹部から前記空間に搬入した掘削機により行なう、
ことを特徴とする請求項9記載の原子炉の廃炉方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉の廃炉方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所において、原子炉を停止させて危険がない程度に整理しその状態で放棄する原子炉の廃炉方法が開示されている(特許文献1参照)。
この廃炉方法は、原子炉格納容器を収容する原子炉建屋の全体を収容する水槽を構築し、水槽内に原子炉格納容器を水没させ、原子炉格納容器からの放射線を水で遮蔽した状態に維持するものである。
すなわち廃炉構造として水槽を用い、水槽は、原子炉建屋の直下の地盤および周囲の地盤の下方に構築された底部と、底部の周囲から起立し原子炉建屋およびその周囲を囲む冠水壁部と、原子炉建屋の上方で冠水壁部の上端を接続する天井部とを設けることで構成されている。
そして、水槽の内部に水を貯留し、原子炉建屋を水没させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-176939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、水槽のうち地上から露出した冠水壁部および天井部が長期間にわたって風雨、直射日光、温度変化といった過酷な環境の変化に曝露されることから経年劣化が促進され、ひびわれや破損が生じ、その結果、水槽内に溜められた水が漏れるおそれがある。
また、水槽内で原子炉建屋を支える地盤は、例えば、100年、200年以上といった極めて長い廃炉期間に水に浸漬されるため、水槽内で地盤が緩み、原子炉建屋が傾いて倒れ、冠水壁部を破壊するなどの不具合も考えられる。
廃炉に際して原子炉建屋および原子炉格納容器から使用済燃料などを完全に撤去したとしても、低レベルの放射性物質が原子炉建屋に残存していることから、極めて長い廃炉期間において、廃炉構造は、原子炉建屋からの放射線を遮蔽する機能を維持しなければならず、上記のような冠水壁部の破壊が生じると放射線を遮蔽する機能が損なわれるおそれがある。
そのため、長期間にわたって水槽の劣化度合いを監視し、必要に応じてその都度、ひびわれや破損した箇所の修繕を行なうことが必要となり、極めて長い廃炉期間にわたる監視作業およびメンテナンス作業の負担が過大なものとなることから、何らかの改善が求められている。
この発明は以上の点を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、過酷な環境の変化の影響を回避しつつ長期間にわたって放射線を確実に遮蔽でき、監視作業およびメンテナンス作業の負担の軽減化を図る上で有利な原子炉の廃炉方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するために、本発明の一実施の形態は、原子炉建屋を収容するケーソン躯体を設け、前記ケーソン躯体の下方の地盤を掘削していくことにより前記原子炉建屋を前記ケーソン躯体と共に地中に沈下させていき、前記ケーソン躯体の内部に充填材を充填し、ケーソン躯体を沈下させた後、前記掘削したケーソン躯体の下方の空間に前記充填材またはコンクリートを充填して前記原子炉建屋を前記ケーソン躯体と共に地中に埋設し、前記充填材として、土の性状を改良した処理土を用いることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記処理土は、固化処理土または流動化処理土であることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、原子炉建屋を収容するケーソン躯体を設け、前記ケーソン躯体の下方の地盤を掘削していくことにより前記原子炉建屋を前記ケーソン躯体と共に地中に沈下させていき、前記ケーソン躯体の内部に充填材を充填し、ケーソン躯体を沈下させた後、前記掘削したケーソン躯体の下方の空間に前記充填材またはコンクリートを充填して前記原子炉建屋を前記ケーソン躯体と共に地中に埋設し、前記充填材として、低放射コンクリートまたは高流動コンクリートを用いることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記ケーソン躯体の内部への前記充填材の充填は、前記ケーソン躯体を沈下させた後に行なうことを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記ケーソン躯体の内部への前記充填材の充填は、前記ケーソン躯体を沈下させる前に行なうことを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記ケーソン躯体は、その下面周囲から刃口が突設された底壁と、前記底壁の周囲から起立する側壁と、前記側壁の上端を接続する天井壁とを含んで構成され、前記底壁は、前記原子炉建屋と一体化されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記原子炉建屋の周囲の地盤に前記原子炉建屋を囲む凹部を掘削し、前記ケーソン躯体の下方の地盤を掘削する掘削機を前記凹部に配置した後、前記底壁を前記凹部上に設けることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記ケーソン躯体は、その下面周囲から刃口が突設された底壁と、前記底壁の周囲から起立する側壁と、前記側壁の上端を接続する天井壁とを含んで構成され、前記底壁は、前記原子炉建屋を支える地盤の下方に設けられ、前記原子炉建屋と共に前記原子炉建屋を支える地盤を支持していることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記原子炉建屋の周囲の地盤に前記原子炉建屋と前記支持地盤を囲む枠状凹部を掘削し、前記枠状凹部から前記底壁を構築すると共に、前記底壁の周囲から地表面までの高さで前記側壁の下部を構築することを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記底壁と前記側壁の下部を構築した後、前記刃口の内側の地盤を掘削して前記刃口の内側で前記ケーソン躯体の下方に空間を設け、前記ケーソン躯体の下方の地盤の掘削は、前記枠状凹部から前記空間に搬入した掘削機により行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施の形態によれば、原子炉建屋を収容するケーソン躯体を設け、ケーソン躯体の下方の地盤を掘削していくことにより原子炉建屋と一体化されたケーソン躯体をその重量により地中に沈下させていき、ケーソン躯体の内部に充填材を充填し、掘削したケーソン躯体の下方の空間に充填材またはコンクリートを充填して原子炉建屋をケーソン躯体と共に地中に埋設する。
そのため、従来技術と異なって、地中に埋設されたケーソン躯体は、風雨、直射日光、温度変化といった過酷な環境の変化に曝露されることはない。
したがって、例えば、100年、200年以上といった極めて長い廃炉期間にわたり、ケーソン躯体と、ケーソン躯体の内部に充填された充填材と、ケーソン躯体の下方の空間に充填された充填材またはコンクリートによって、原子炉建屋および原子炉格納容器に残存する放射性物質からの放射線を遮蔽した状態を維持し続けることが可能となる。
また、極めて長い廃炉期間にわたり、原子炉建屋および原子炉格納容器に残存する放射性物質からの放射線を遮蔽した状態を維持し続けることが可能となるため、極めて長い廃炉期間における監視作業およびメンテナンス作業の負担の大幅な軽減を図る上で有利となる。
また、ケーソン躯体の下方の地盤を掘削していくことにより原子炉建屋と一体化されたケーソン躯体をその重量により地中に沈下させていくので、ケーソン躯体の沈下を確実に行なえ、廃炉作業を安全に確実に行なう上で有利となる。
また、原子炉内の燃料が原子炉建屋から適切に撤去された場合の原子炉の廃炉作業を行なう場合、ケーソン躯体の内部や掘削したケーソン躯体の下方の空間に充填する充填材として、土の性状を改良した処理土を用いると、ケーソン躯体を沈下させる際に生じた掘削土を利用できるため、充填材を新たに用意する必要がなくなり、また、掘削した土砂の廃棄作業を、利用した充填材の分だけ減少させることができるため、廃炉作業のコストダウンを図る上で有利となる。
この場合、処理土として、セメント系固化材を混入した固化処理土を用いると、ケーソン躯体を沈下させる際に生じた掘削土を簡単に利用できるため、廃炉作業のコストダウンを図る上で有利となる。
また、処理土として流動化処理土を用いると、流動性に優れるためケーソン躯体の内部の隙間を隅々まで閉塞することができ、ケーソン躯体により原子炉建屋および原子炉格納容器に残存する放射性物質からの放射線を遮蔽した状態を維持し続ける上で有利となる。
また、過酷事故を生じ原子炉内の燃料がそのまま残された状態の原子炉の廃炉作業を行なう場合、ケーソン躯体の内部や掘削したケーソン躯体の下方の空間に充填する充填材として低放射コンクリートを用いると、充填材とケーソン躯体の低放射化を図れ、メンテナンス時の作業者の被爆量を低減する上で有利となる。
また、過酷事故を生じ原子炉内の燃料がそのまま残された状態の原子炉の廃炉作業を行なう場合、ケーソン躯体の内部や掘削したケーソン躯体の下方の空間に充填する充填材として高流動コンクリートを用いると、ケーソン躯体の内部の隙間を充填材で隅々まで閉塞することができ、ケーソン躯体の低放射化を図れ、メンテナンス時の作業者の被爆量を低減する上で有利となる。
また、ケーソン躯体の内部への充填材の充填は、ケーソン躯体を沈下させた後に行なってもよく、ケーソン躯体を沈下させる前に行なってもよい。
ケーソン躯体の内部への充填材の充填を、ケーソン躯体を沈下させる前に行なうと、ケーソン躯体が地中に沈下していく際に、ケーソン躯体の重量に、ケーソン躯体の内部に充填された充填材の重量が加わるため、ケーソン躯体の地中への沈下をより確実に行なえ、廃炉作業をより安全に確実に行なう上で有利となる。
また、ケーソン躯体の底壁を原子炉建屋と一体化して設けると、ケーソン躯体の底壁を簡単に構築する上で有利となり、また、ケーソン躯体と原子炉建屋の沈下を確実に行なえ、廃炉作業を安全に確実に行なう上で有利となる。
また、ケーソン躯体の底壁を設ける前に、原子炉建屋の周囲の地盤に原子炉建屋を囲む凹部を掘削し、掘削機をこの凹部に搬入しておくと、ケーソン躯体の下方の地盤を掘削を、搬入した掘削機を用いて効率良く行なう上で有利となる。
また、ケーソン躯体の底壁で、原子炉建屋と共に原子炉建屋を支える地盤を支持すると、過酷事故を生じた状態の原子炉の廃炉作業を行なう場合、支持地盤も汚染されていることから、支持地盤と原子炉建屋とを共にケーソン躯体に収容して地中に埋設でき、過酷事故を生じ原子炉内の燃料がそのまま残された状態の原子炉の廃炉方法として好適となる。
また、ケーソン躯体を設ける前に、原子炉建屋の周囲の地盤に原子炉建屋と支持地盤とを囲む凹部を掘削しておくと、ケーソン躯体の底壁、刃口、側壁の下部を容易に構築する上で、また、ケーソン躯体の下方に空間を容易に設ける上で、また、ケーソン躯体の下方の空間に、ケーソン躯体の下方の地盤を掘削する掘削機や、照明器具、カメラなどを容易に搬入する上で有利となる。
また、底壁の周囲から地表面までの高さで側壁の下部を構築しておくと、以後のマテリアルシャフト、マンシャフト、圧縮空気送給管の立設作業や、側壁や天井壁を設けるための型枠の組み付け作業を容易に行なう上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施の形態の説明図で、(A)は原子炉建屋の周囲に枠状凹部を掘削した状態の平面図、(B)は同断面正面図である。
図2】(A)は原子炉建屋の周囲に底壁が形成された状態の平面図、(B)は同断面正面図である。
図3】(A)は底壁からマテリアルシャフト、マンシャフト、圧縮空気送給管が立設された状態の平面図、(B)は同断面正面図である。
図4】(A)はケーソン躯体を構築し、マテリアルシャフトにマテリアルブロックを設け、マンシャフトにマンブロックを設けた状態の平面図、(B)は同断面正面図である。
図5】原子炉建屋の下方の地盤をケーソンショベルで掘削した状態の断面正面図である。
図6】ケーソンショベルでケーソン躯体の下方の地盤を掘削していくことによりケーソン躯体を沈下させていく状態の断面正面図である。
図7】ケーソンショベルでケーソン躯体の下方の地盤を掘削し、天井壁の上面と地表面とが同一の高さとなるまでケーソン躯体を地中に沈下させた状態の断面正面図である。
図8】ケーソン躯体の下方の空間に充填材またはコンクリートを充填した状態の同断面正面図である。
図9】(A)はケーソン躯体の内部に充填材を充填し、天井壁から突出する各種のシャフト、パイプを取り除き天井壁を閉塞した状態の平面図、(B)は同断面正面図である。
図10】第2の実施の形態の説明図で、(A)は原子炉建屋と一体化したケーソン躯体を構築したのち、ケーソン躯体の内部に充填材を充填した状態の平面図、(B)は同断面正面図である。
図11】第3の実施の形態の説明図で、(A)は原子炉建屋と一体化したケーソン躯体を構築し、底壁からマテリアルシャフト、マンシャフト、圧縮空気送給管を立設すると共にマテリアルシャフトにマテリアルブロックを設け、マンシャフトにマンブロックを設けた状態の平面図、(B)は同断面正面図である。
図12】原子炉建屋の下方の地盤をケーソンショベルで掘削した状態の断面正面図である。
図13】ケーソンショベルでケーソン躯体の下方の地盤を掘削していくことによりケーソン躯体を地中へ沈下させていく状態の断面正面図である。
図14】ケーソンショベルでケーソン躯体の下方の地盤を掘削し、側壁の上端が天井壁の厚さ分、地表面から下方に位置する高さまでケーソン躯体を沈下させた状態の断面正面図である。
図15】ケーソン躯体の下方の空間に充填材またはコンクリートを充填した状態の断面正面図である。
図16】(A)は側壁に天井壁を設けた状態の平面図、(B)は同断面正面図である。
図17】第4の実施の形態の説明図で、(A)は原子炉建屋の周囲に枠状凹部を掘削した状態の平面図、(B)は同断面正面図である。
図18】原子炉建屋を支える地盤にケーソン躯体の底壁を構築した状態の断面正面図である。
図19】ケーソン躯体の底壁に、刃先を有する刃口と、側壁の下部とを一体に構築した状態の断面正面図である。
図20】(A)は刃先が接地するように枠状凹部の底部に掘削した土砂を埋め戻し、ケーソン躯体の下方に空間を設け、枠状凹部内で刃口の外側に土砂を埋め戻し、底壁上でかつ側壁の下部の内側に支持地盤と原子炉建屋が支持された状態の平面図、(B)は同断面正面図である。
図21】(A)は底壁から支持地盤を通ってマテリアルシャフト、マンシャフト、圧縮空気送給管が立設された状態の平面図、(B)は同断面正面図である。
図22】(A)はケーソン躯体を構築し、マテリアルシャフトにマテリアルブロックを設け、マンシャフトにマンブロックを設けた状態の平面図、(B)は同断面正面図である。
図23】刃先の内側の地盤を掘削していくことにより、原子炉建屋の重量と支持地盤の重量とケーソン躯体の重量によりケーソン躯体が地中に沈下していく状態の断面正面図である。
図24】天井壁の上面と地表面とが同一の高さとなるまでケーソン躯体を地中に沈下させた状態の断面正面図である。
図25】ケーソン躯体の下方の空間に充填材またはコンクリートを充填した状態の同断面正面図である。
図26】(A)はケーソン躯体の内部に充填材を充填し、天井壁から突出する各種のシャフト、パイプを取り除き天井壁を閉塞した状態の平面図、(B)は同断面正面図である。
図27】第5の実施の形態の説明図で、(A)は原子炉建屋と支持地盤とを収容したケーソン躯体を構築したのち、ケーソン躯体の内部に充填材を充填した状態の平面図、(B)は同断面正面図である。
図28】第6の実施の形態の説明図で、(A)は原子炉建屋と支持地盤とを収容したケーソン躯体を構築し、底壁からマテリアルシャフト、マンシャフト、圧縮空気送給管を立設すると共にマテリアルシャフトにマテリアルブロックを設け、マンシャフトにマンブロックを設けた状態の平面図、(B)は同断面正面図である。
図29】刃先の内側の地盤を掘削していくことにより、原子炉建屋の重量と支持地盤の重量とケーソン躯体の重量によりケーソン躯体が地中に沈下していく状態の断面正面図である。
図30】側壁の上端が天井壁の厚さ分、地表面から下方に位置する高さまでケーソン躯体を沈下させた状態の断面正面図である。
図31】ケーソン躯体の下方の空間に充填材または充填材またはコンクリートを充填した状態の断面正面図である。
図32】側壁に天井壁を設けた状態の断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
まず、図1から図9を参照して第1の実施の形態から説明する。
なお、第1~第3の実施の形態では、原子炉内の燃料が原子炉建屋から適切に撤去された場合の原子炉の廃炉作業について説明する。
図4に示すように、ケーソン躯体10は鉄筋コンクリート製で直方体状を呈している。
ケーソン躯体10は、原子炉建屋22の周囲の地盤上を延在し原子炉建屋22と一体化された平面視が正方形の枠状の底壁12と、底壁12の4辺から起立し原子炉建屋22の周囲を囲む側壁14と、側壁14の上端を接続する正方形の天井壁16とを備え、ケーソン躯体10は原子炉建屋22を収容している。
底壁12の下面の4辺から、下端が刃先1204Aとなった刃口1204が矩形枠状に突設され、原子炉建屋22と一体化されたケーソン躯体10は、刃先1204Aの内側の地盤を掘削していくことにより、原子炉建屋22の重量とケーソン躯体10の重量により地中に沈下していく。
本実施の形態では、例えば、ケーソン躯体10の底壁12は一辺が約50mの正方形であり、ケーソン躯体10の高さは約50mであり、原子炉建屋22の底壁24は一辺が約40mの正方形であり、原子炉建屋22の高さは約40mである。
なお、原子炉建屋22が円筒状の場合には、ケーソン躯体10は直方体状としてもよく、あるいは円筒体状としてもよく、あるいは、直方体や円筒体状以外の形状としてもよく、ケーソン躯体10の形状には従来公知の様々な構造が採用可能である。
【0009】
詳細に説明すると、図1に示すように、ケーソン躯体10を構築する前に、バックホーなどの掘削機により、原子炉建屋22の周囲に沿って延在する正方形の枠状に延在する枠状凹部28Aを掘削する。
この枠状凹部28Aは、ケーソン躯体10の下方の地盤の掘削作業を円滑に行なうためのスペースである。
枠状凹部28Aが掘削されたならば、ケーソン躯体10の下方の地盤を掘削する掘削機や、後述する照明器具、カメラなどを枠状凹部28Aに搬入する。
その後、ケーソン躯体10の周囲で枠状凹部28A上に型枠を組み、図2に示すように、型枠内にコンクリートを打設して底壁12および、刃先1204Aを有する刃口1204を構築する。
その際に、原子炉建屋22の底壁23とケーソン躯体10の底壁12とを複数のアンカボルト23Aにより一体化する。
【0010】
また、底壁12の対向する一対の隅部に、マテリアルシャフト挿通孔1210を設け、残りの対向する一対の隅部に、マンシャフト挿通孔1212を設け、さらにそれらの内側に圧縮空気送給管挿通孔1214や、照明器具に電源を供給する電源ケーブルや信号ケーブルを挿通させる不図示のケーブル挿通孔を設ける。
刃先1204A、刃口1204を備える底壁12を構築したならば、型枠を解体し、刃口1204の内側に位置する型枠は、マテリアルシャフト挿通孔1210やマンシャフト挿通孔1212からケーソン躯体10の外部に搬出する。
また、刃口1204の外側に位置する型枠は、枠状凹部28A外に搬出し、刃口1204の外側に、掘削した土砂を埋め戻す。
【0011】
本実施の形態では、ケーソン躯体10の下方の地盤を掘削する掘削機はケーソンショベル20であるため、底壁12および刃口1204を構築したならば、図3に示すように、底壁12の下面の周囲に複数のレール32を取り付け、ケーソンショベル20をそれらレール32に走行可能に設ける。
ケーソンショベル20は、レール32に沿って走行する走行部と、走行部に旋回可能に設けられ先端にバケットを備える屈曲可能なアームを含んで構成されている。
また、底壁12の下面に不図示の複数の照明器具が取り付け、不図示のカメラを水平旋回可能かつ上下に揺動可能に取り付ける。
また、図3に示すように、底壁12および刃口1204を構築したならば、一対のマテリアルシャフト挿通孔1210にそれぞれ貫通させてマテリアルシャフト34Aを立設し、一対のマンシャフト挿通孔1212にそれぞれ貫通させてマンシャフト36Aを立設し、各圧縮空気送給管挿通孔1214に貫通させて圧縮空気送給管38を立設する。
【0012】
なお、ケーソンショベル20やカメラなどの遠隔操作を行なうために不図示の地上遠隔操作室が原子炉建屋22から離れた地上に設けられている。
地上遠隔操作室には、ケーソンショベル20を遠隔操作するための不図示のショベル操作装置、不図示のカメラから供給される画像データに基づいてケーソンショベル20の周辺の画像を表示する不図示の表示装置などが設置されている。
ショベル操作装置は、操作信号を供給するための信号ケーブルを介してケーソンショベル20に接続されている。
表示装置は、画像データを伝送するための信号ケーブルを介してカメラに接続されている。以下では、これらの信号ケーブルをまとめて信号ケーブルという。
【0013】
このように原子炉建屋22と一体化されたケーソン躯体10の底壁12が構築されたならば、底壁12の周囲と上方に、側壁14と天井壁16を構築するための型枠を設け、この型枠内にコンクリートを打設し、図4に示すように側壁14と天井壁16を構築する。
側壁14は、底壁12の4辺から起立し原子炉建屋22の周囲を囲んでおり、天井壁16は、原子炉建屋22の上方で側壁14の上端を接続している。
これにより底壁12、側壁14、天井壁16が一体化され原子炉建屋22が収容されたケーソン躯体10が構築される。
天井壁16を構築する場合、マテリアルシャフト34A、マンシャフト36A、圧縮空気送給管38を天井壁16から上方に突出させ、天井壁16の構築後、マテリアルシャフト34Aの上端にマテリアルロック34Bを設け、マンシャフト36Aの上端にマンロック36Bを設ける。
【0014】
このようにして原子炉建屋22を収容し原子炉建屋22と一体化されたケーソン躯体10が構築されたならば、照明器具で枠状凹部28Aの内部を照明し、掘削箇所をカメラで撮影しつつ、地上遠隔操作室において、表示装置に表示されたケーソンショベル20の周辺の画像を監視しつつ、ショベル操作装置によりケーソンショベル20を遠隔操作することにより、まず、図4に示すように、原子炉建屋22を支える原子炉建屋22の直下の地盤24を掘削する。
マテリアルロック34B、マテリアルシャフト34Aから枠状凹部28A内に不図示のバケットがワイヤで吊り下げられ、掘削した土砂は、遠隔操作によりケーソンショベル20でバケット内に投入され、バケットに投入された土砂はバケットと共にマテリアルシャフト34内を上昇しマテリアルロック34Bからケーソン躯体10の外部に効率良く搬出される。
【0015】
図4図5に示すように、原子炉建屋22の直下の地盤24を掘削することで、ケーソン躯体10の下方に、原子炉建屋22の下方の空間と枠状凹部28Aとが連通した空間28が設けられる。
以後、図5図6に示すように、ケーソン躯体10の下方で刃先1204Aの内側の地盤をケーソンショベル20で掘削していくことにより、原子炉建屋22の重量とケーソン躯体10の重量により、原子炉建屋22と一体化されたケーソン躯体10を地中に沈下させていく。
なお、ケーソンショベル20に代えバックホーなどの掘削機によりケーソン躯体10のか下方の地盤を掘削してもよく、あるいは、ケーソンショベル20とバックホーなどの掘削機を併用するなど任意である。
この場合、ケーソンショベル20やバックホーによる地盤の掘削は、遠隔操作に限定されず、作業員が空間28内で操作するなど任意である。
なお、ケーソンショベル20の下方の地盤の掘削は、ケーソン躯体10が水平状態を保って地中に沈下していくように、ケーソン躯体10の傾きを監視しつつ行なわれる。
【0016】
ケーソン躯体10の地中への沈下時、ケーソン躯体10の下方の空間28に地下水が湧き出るような場合には、本実施の形態では、圧縮空気送給管38を設けているので、圧縮空気送給管38からケーソン躯体10の下方の空間28に、地下水圧に見合った圧縮空気を送給する。
すなわち、本実施の形態は、ケーソン躯体10の下方の空間28に圧縮空気を送給し地下水の流入を防止しつつ掘削を行ない、ケーソン躯体10を沈下させるニューマチックケーソン工法を採用しているが、地下水の少ない地盤の場合には、オープンケーソン方法を採用してもよいことは無論のことである。
これにより地下水の空間28内への侵出を防止でき、ケーソン躯体10の下方の地盤の掘削を円滑に行なう上で有利となる。
本実施の形態では、マテリアルロック34B、マテリアルシャフト34Aを設けているので、ケーソン躯体10の下方の空間28に地下水圧に見合った圧縮空気を送給している場合であっても、掘削土砂のケーソン躯体10の外部への搬出が支障なく行なう上で有利となる。
また、マンシャフト36A、マンロック36Bを設けているので、ケーソン躯体10の下方の空間28に地下水圧に見合った圧縮空気を送給している場合であっても、空間28への作業員の出入りを円滑に行なう上で有利となる。
なお、マテリアルロック34Bやマンロック36Bには従来公知の様々な構造が採用可能である。
また、ケーソン躯体10の側壁14に開閉可能な作業員用の出入口を設けてもよく、この場合、ケーソン躯体10と原子炉建屋22の地中への沈下時、ケーソン躯体10の側壁14に地下水が湧き出るような場合には、ケーソン躯体10の天井壁16を貫通する不図示のパイプを設けておき、地下水圧に見合った圧縮空気を不図示のパイプからケーソン躯体10の内部に送給し、ケーソン躯体10の内部の圧力を高め、地下水のケーソン躯体10の内部への侵入を防止すればよい。
【0017】
図7に示すように、ケーソン躯体10の天井壁16の上面が地表面Gとほぼ同一の高さまで、ケーソン躯体10を地中に沈下させたならば、図8に示すように、ケーソンショベル20が位置するケーソン躯体10の下方の空間28にマテリアルロック34B、マテリアルシャフト34Aから後述する充填材Fまたは流動性のよいコンクリートCを打設して充填し、ケーソン躯体10を安定させる。
次に、マテリアルロック34Bをマテリアルシャフト34Aから取り外すと共に、天井壁16から突出するマテリアルシャフト34Aの部分を取り外す。
また、マンロック36Bをマンシャフト36Aから取り外すと共に、天井壁16から突出するマンシャフト36Aの部分を取り外し、天井壁16から突出する圧縮空気送給管38の部分を取り外す。
そして、例えば、天井壁16部分に位置するマテリアルシャフト34の部分を欠除し、この欠除した箇所から、図9(B)に示すように、ケーソン躯体10の内部に充填材Fを充填し、あるいは、天井壁16に予め充填材充填用孔を設けておき、この充填材充填用孔からケーソン躯体10の内部に充填材Fを充填する。無論、マテリアルシャフト34A、マンシャフト36A、圧縮空気送給管38の内部にも充填材Fを充填する。
この場合、充填材Fとして土の性状を改良した処理土を用いることができる。
処理土として、セメント系固化材を混入した固化処理土を用いると、ケーソン躯体10を沈下させる際に生じた掘削土を簡単に利用できるため、充填材Fを新たに用意する必要がなくなり、また、掘削した土砂の廃棄作業を、利用した充填材Fの分だけ減少させることができため、廃炉作業のコストダウンを図る上で有利となる。
また、処理土として流動化処理土を用いると、上述の効果に加え、流動性に優れるためケーソン躯体10の内部の隙間を隅々まで閉塞することができ、ケーソン躯体10により、原子炉建屋22および原子炉格納容器に残存する放射性物質からの放射線を遮蔽した状態を維持し続ける上で有利となる。
ケーソン躯体10の内部に充填材Fを充填したならば、図9(A)に示すように、マテリアルシャフト34A、マンシャフト36A、圧縮空気送給管38が挿通されていた天井壁孔16の孔を充填材FまたはコンクリートCで閉塞する。
このようにして原子炉建屋22をケーソン躯体10と共に地中に埋設して廃炉作業を終了する。
なお、地表面Gと天井壁16の上面に所定の厚さでコンクリートを打設するなど任意である。
ケーソン躯体10を、天井壁16の上面が地表面Gとほぼ同一の高さまで地中に沈下させると、原子炉建屋22および原子炉格納容器に残存する放射性物質からの放射線を遮蔽した状態を維持し続ける上で有利となるが、ケーソン躯体10の地中への沈下は、天井壁16の上面が地表面Gより低位置になるまで地中に沈下させてもよく、また、地表面Gと天井壁16の上面に所定の厚さでコンクリートを打設する場合などには、天井壁16の上面が地表面Gよりも高い箇所でケーソン躯体10の地中への沈下を停止させてもよい。
【0018】
本実施の形態によれば、原子炉建屋22と一体化され原子炉建屋22を収容するケーソン躯体10を設け、ケーソン躯体10の下方の地盤を掘削していくことにより原子炉建屋22と一体化されたケーソン躯体をその重量により地中に沈下させていき、地中への沈下後、掘削したケーソン躯体10の下方の空間28に充填材FまたはコンクリートCを充填し、ケーソン躯体10の内部に充填材Fを充填してケーソン躯体10の底壁12や側壁14を原子炉建屋22と共に地中に埋設するようにした。
そのため、ケーソン躯体10の底壁12や側壁14、掘削したケーソン躯体10の下方の空間28に充填した充填材FまたはコンクリートC、ケーソン躯体10の内部に充填された充填材Fは、風雨、直射日光、温度変化といった過酷な環境の変化に曝露されることはなく、例えば、100年、200年以上といった極めて長い廃炉期間にわたり、ケーソン躯体10と、ケーソン躯体10の下方の空間28に充填された充填材FまたはコンクリートCと、ケーソン躯体10の内部に充填された充填材Fとによって、原子炉建屋22および原子炉格納容器に残存する放射性物質からの放射線を遮蔽した状態を維持し続けることが可能となる。
また、極めて長い廃炉期間にわたり、原子炉建屋22および原子炉格納容器に残存する放射性物質からの放射線を遮蔽した状態を維持し続けることが可能となるため、極めて長い廃炉期間における監視作業およびメンテナンス作業の負担の大幅な軽減を図る上で有利となる。
また、ケーソン躯体10の下方の地盤を掘削していくことにより原子炉建屋22と一体化されたケーソン躯体をその重量により地中に沈下させていくので、ケーソン躯体10と原子炉建屋22の沈下を確実に行なえ、廃炉作業を安全に確実に行なう上で有利となる。
【0019】
(第2の実施の形態)
次に、図10を参照して第2の実施の形態について説明する。
なお、以下の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同様な箇所、部材に同一の符号を付してその説明を省略し、異なった箇所を重点的に説明する。
第2の実施の形態では、図10(A)に示すように、天井壁16に、充填材充填用孔1620が設けられている。
そして、図10(B)に示すように、ケーソン躯体10と原子炉建屋22とが一体に結合されたケーソン躯体10が構築されたならば、第1の実施の形態と異なって、充填材充填用孔1620からケーソン躯体10の内部に充填材Fを充填し、また、充填材FまたはコンクリートCにより充填材充填用孔1620を閉塞する。
【0020】
ケーソン躯体10の内部に充填材Fを充填した以降は、第1の実施の形態と同様に、図4図7に示すように掘削箇所を照明器具で照明し、掘削箇所をカメラで撮影しつつ、原子炉建屋22の下方の地盤をケーソンショベル20により掘削し、掘削した土砂を、マテリアルシャフト34内を昇降するバケットによりケーソン躯体10の外部に搬出してケーソン躯体10を地中に沈下させていく作業がなされる。
ケーソン躯体10の地中への沈下後は、図8図9に示すように、マテリアルシャフト34からケーソン躯体10の下方の空間28に充填材FまたはコンクリートCを充填し、また、マテリアルシャフト34A、マンシャフト36A、圧縮空気送給管38が挿通されていた天井壁孔16の孔を充填材FやコンクリートCで閉塞し、廃炉作業を終了する。
【0021】
第2の実施の形態は、ケーソン躯体10の内部に充填材Fを充填する作業が、ケーソン躯体10を沈下させる前に行なう点が第1の実施の形態と異なっている。
第2の実施の形態によれば、ケーソン躯体10が地中に沈下していく際に、ケーソン躯体10の重量に、ケーソン躯体10の内部に充填された充填材Fの重量が加わるため、ケーソン躯体10の地中への沈下をより確実に行なえ、廃炉作業をより安全に確実に行なう上で有利となる。
【0022】
(第3の実施の形態)
次に、図11図16を参照して第3の実施の形態について説明する。
第3の実施の形態は、ケーソン躯体10を沈下させる前はケーソン躯体10が天井壁16を有しておらず、ケーソン躯体10の沈下後に天井壁16を設ける点が、第1、第2の実施の形態と異なっている。
図11に示すように、ケーソン躯体10は、正方形の底壁12と、底壁12の4辺から立設された側壁14とを備え、天井壁16を有していないため、側壁14の内側において底壁12の上方と原子炉建屋22の上方は共に開放されている。
詳細に説明すると、図1図2に示すように、第1の実施の形態と同様に、ケーソン躯体10を構築する前に、原子炉建屋22の周囲に沿って延在する正方形の枠状に延在する枠状凹部28Aを掘削し、掘削機や照明器具、カメラなどを枠状凹部28Aに搬入し、それらの搬入後、枠状凹部28A上に型枠を組み、図2に示すように、コンクリートを打設して底壁12および刃口1204、刃先1204Aを構築し、原子炉建屋22の底壁24とケーソン躯体10の底壁12とを複数のアンカボルト24Aにより一体化する。
原子炉建屋22の底壁24と一体化されたケーソン躯体10が構築されたならば、底壁12の下面に、レール32、ケーソンショベル20、不図示の複数の照明器具、カメラを取り付ける。
【0023】
また、図2(A)、図11に示すように、底壁12のマテリアルシャフト挿通孔1210、マンシャフト挿通孔1212、圧縮空気送給管挿通孔1214からマテリアルシャフト34A、マンシャフト36A、圧縮空気送給管38を上方に突出させ、マテリアルシャフト34A、マンシャフト36Aの上端にマテリアルロック34B、マンロック36Bを設け、不図示のケーブル挿通孔にケーブルを挿通させる。
そして、底壁12の周囲に型枠を設け、この型枠内にコンクリートを打設し、底壁12の4辺から起立し原子炉建屋22の周囲を囲む側壁14を構築し、原子炉建屋22が収容され原子炉建屋22と一体化されたケーソン躯体10を構築する。
【0024】
原子炉建屋22と一体化されたケーソン躯体10が構築されたならば、図11図12に示すように、掘削箇所を照明器具で照明すると共に掘削箇所をカメラで撮影し、地上遠隔操作室において、表示装置に表示されたケーソンショベル20の周辺の画像を監視しつつ、ショベル操作装置によりケーソンショベル20を遠隔操作することにより原子炉建屋22を支える原子炉建屋22の下方の地盤24を掘削する。
マテリアルロック34B、マテリアルシャフト34Aから枠状凹部28A内に不図示のバケットがワイヤで吊り下げられ、掘削した土砂は、遠隔操作によりケーソンショベル20でバケット内に投入され、バケットに投入された土砂はバケットと共にマテリアルシャフト34内を上昇しマテリアルロック34Bからケーソン躯体10の外部に効率良く搬出される。
【0025】
図12に示すように、原子炉建屋22の直下の地盤42を掘削することで、ケーソン躯体10の下方に、原子炉建屋22の下方の空間と枠状凹部28とが連通した空間28が設けられる。
以後、図12図13に示すように、ケーソン躯体10の下方で刃先1204Aの内側の地盤をケーソンショベル20で掘削していくことにより、原子炉建屋22の重量とケーソン躯体10の重量により地中に沈下させていく。
第1の実施の形態と同様に、ケーソン躯体10の地中への沈下時、ケーソン躯体10の下方の空間28に地下水が湧き出るような場合には、圧縮空気送給管38を設けておくと、圧縮空気送給管38からケーソン躯体10の下方の空間28に、地下水圧に見合った圧縮空気を送給し、ケーソン躯体10の下方の地盤の掘削を円滑に行なう上で有利となる。
また、第1の実施の形態と同様に、マテリアルロック34B、マテリアルシャフト34Aを設けておくと、ケーソン躯体10の下方の空間28に圧縮空気を送給している場合であっても、掘削土砂のケーソン躯体10の外部への搬出が支障なく行なう上で有利となる。
また、第1の実施の形態と同様に、マンシャフト36A、マンロック36Bを設けておくと、ケーソン躯体10の下方の空間28に圧縮空気を送給している場合であっても、空間28への作業員の出入りを円滑に行なう上で有利となる。
【0026】
図14に示すように、側壁14の上端を地表面Gより天井壁16の厚さ分、地中に沈下させたならば、図15に示すように、ケーソン躯体10の下方の空間28にマテリアルロック34B、マテリアルシャフト34Aから充填材FまたはコンクリートCを打設して充填し、ケーソン躯体10を安定させる。
次に、図16に示すように、原子炉建屋22の上方に型枠を組み、この型枠にコンクリートを打設し、側壁14の上端を接続する天井壁16を設ける。
次に、第1の実施の形態と同様に、図9に示すように、マテリアルロック34B、天井壁16から突出するマテリアルシャフト34Aの部分、マンロック36B、天井壁16から突出するマンシャフト36Aの部分などを取り外し、天井壁16から突出する圧縮空気送給管38の部分を取り外し、第1、第2の実施の形態と同様に、ケーソン躯体10の内部に充填材Fを充填し、マテリアルシャフト挿通孔1210、マンシャフト挿通孔1212、圧縮空気送給管挿通孔1214を充填材FまたはコンクリートCで閉塞し、廃炉作業を終了する。
【0027】
第3の実施の形態によれば、ケーソン構造体26の沈下時、常時、側壁14の内側の空間が上方に開放されていることから、作業員がケーソン躯体10の内部に出入りでき、各種の作業を行なう上で有利となる。
【0028】
なお、本実施の形態では、原子炉内の燃料が原子炉建屋から適切に撤去された場合の原子炉の廃炉方法について説明したが、本発明は、過酷事故を生じ原子炉内の燃料がそのまま残された状態の原子炉の廃炉方法にも無論適用可能である。
【0029】
(第4の実施の形態)
次に、図17から図26を参照して第4の実施の形態について説明する。
なお、以下の第4~第6の実施の形態では、原子力発電所に過酷事故が生じ、原子炉建屋内に設置されている原子炉が炉心溶融状態となり、溶融した燃料が原子炉建屋の底壁を突き破って底壁の下方の地盤に至り、地盤が放射性物質により汚染されている状態である場合の原子炉の廃炉方法について説明する。
図17に示すように、原子炉建屋22は、放射性物質により汚染された支持地盤24で支持されている。
図22に示すように、ケーソン躯体10は直方体状を呈している。
ケーソン躯体10は、原子炉建屋22の支持地盤24と共に原子炉建屋22を支持する平面視が正方形の底壁12と、底壁12の4辺から起立し支持地盤24と原子炉建屋22の周囲を囲む側壁14と、原子炉建屋22の上方で側壁14の上端を接続する正方形の天井壁16とを備え、ケーソン躯体10は支持地盤24と原子炉建屋22を収容している。
第1~第3の実施の形態と同様に底壁12の下面の4辺から、下端が刃先1204Aとなった刃口1204が矩形枠状に突設され、原子炉建屋22と支持地盤24を収容するケーソン躯体10は、刃先1204Aの内側の地盤を掘削していくことにより、原子炉建屋22の重量と支持地盤24の重量とケーソン躯体10の重量により地中に沈下していく。
【0030】
本実施の形態では、例えば、第1~第3の実施の形態と同様に、ケーソン躯体10の底壁12は一辺が約50mの正方形であり、ケーソン躯体10の高さは約50mであり、原子炉建屋22の底壁24は一辺が約40mの正方形であり、原子炉建屋22の高さは約40mである。
なお、原子炉建屋22が円筒状の場合には、ケーソン躯体10は直方体状としてもよく、あるいは円筒体状としてもよく、あるいは、直方体や円筒体状以外の形状としてもよく、ケーソン躯体10の形状には従来公知の様々な構造が採用可能である。
また、ケーソン躯体10に収容される支持地盤24の深さやは、ケーソン躯体10の底壁12の一辺の長さは、放射性物質による支持地盤24の汚染度合に基づいて適宜決定される。
【0031】
詳細に説明すると、図17に示すように、ケーソン躯体10を構築する前に、バックホーなどの掘削機により、原子炉建屋22の周囲に沿って延在する正方形の枠状に延在する枠状凹部28Aを掘削する。
掘削する枠状凹部28Aの深さは、刃先1204Aを有する刃口1204の構築用の型枠を設置するため、放射性物質の汚染度合に基づいて決定されたケーソン躯体10に収容される支持地盤24の厚さに、底壁12の厚さと、底壁12の下面から刃先1204Aまでの刃口1204の寸法を加えた値よりも大きな寸法で掘削される。
枠状凹部28Aを掘削すると、枠状凹部28Aの底面から原子炉建屋22の下面まで、支持地盤24を含む断面がほぼ正方形の角柱状の地盤が設けられるが、この角柱状の地盤に固化材を注入し、原子炉建屋22を支える角柱状の地盤を固化して角柱状の地盤の強度を高める。
このような地盤改良は省略してもよいが、地盤改良を行なうと、図17(B)の状態で、万が一、大地震が生じた場合であっても、原子炉建屋22を、原子炉建屋22の下方の角柱状の地盤でしっかりと支える上で有利となる。
なお、図示しないが、アンダーピング工法により、枠状凹部の外側の地盤に枠状凹部を囲むように複数の杭を強固な地盤まで打設し、枠状凹部の外側の地盤の不同沈下による枠状凹部の外側の壁面の崩れを抑制するようにしてもよい。
【0032】
次に、図18に示すように、汚染された支持地盤24よりも下方に位置する角柱状の地盤に、ケーソン躯体10の底壁12を構築する。
ケーソン躯体10の底壁12の構築には、パイプルーフ工法やシールド工法など従来公知の様々な工法が採用可能である。
例えば、パイプルーフ工法では、汚染された地盤よりも下方に位置する地盤に、枠状凹部28Aから複数の鋼管を等間隔をおいて柱列状に水平に打設する。
打設された隣接する鋼管同士を継手を介して一体的に連結し、鋼管内部にコンクリートを打設し、これにより、枠状凹部28Aで囲まれた地盤の全域にわたってケーソン躯体10の底壁12が構築される。
また、シールド工法では、汚染された地盤よりも下方に位置する地盤に、枠状凹部28Aからシールドマシンによって複数のトンネルを平行させて水平に構築する。
次いで、隣接するトンネル同士を連結したのち、各トンネル内にコンクリートを打設することで、枠状凹部28Aで囲まれた地盤の全域にわたってケーソン躯体10の鉄筋コンクリート製の底盤12が構築される。
【0033】
ケーソン躯体10の底壁12を構築したならば、図19に示すように、刃先1204Aを有する刃口1204と、底壁12の周囲から地表面Gまでの高さで側壁14の下部を、底壁12と一体に構築する。
それらの構築は、枠状凹部28A内で型枠を組み込み、鉄筋を配置して型枠内にコンクリートを打設して刃先1204Aを有し底壁12に一体化された鉄筋コンクリート製の刃口1204と、底壁12と刃口1204に一体化された地表面Gまでの高さの鉄筋コンクリート製の側壁14の下部を構築し、構築後、型枠を撤去する。
そして、刃先1204が接地するように、枠状凹部28Aの底部に掘削した土砂を埋め戻す。
【0034】
次に、図20に示すように、ケーソン躯体10の底壁12の下方で刃口1204の内側に空間28を設け、すなわち、ケーソン躯体10の下方に空間28を設ける。
この空間28は、例えば、刃口1204を構築する際に、刃口1204の一部を残して構築し、枠状凹部28から、刃口1204が構築されていない箇所を通って、底壁12の下方で刃口1204の内側の地盤をバックホーなどの掘削機により掘削して空間28を設け、あるいは、枠状凹部28から、矩形枠状に延在する刃先1204の一部の下方を掘削機で掘削していくことにより掘削するなど、従来公知の様々な方法が採用可能である。
そして、空間28に、ケーソン躯体10の下方の地盤を掘削する掘削機や、照明器具、カメラなどを搬入する。
本実施の形態では、ケーソン躯体10の下方の地盤を掘削する掘削機としてケーソンショベル20を用いるため、空間28にケーソンショベル20と、ケーソンショベル20の走行用のレール32を搬入する。
なお、ケーソン躯体10の下方の地盤を掘削する掘削機として、空間28を設ける際に使用した掘削機を用いる場合には、空間28にその掘削機を残存させればよく、あるいは、ケーソンショベル20と掘削機とを併用する場合には、掘削機を残存させると共にケーソンショベル20とレール32を空間28に搬入すればよい。
空間28に、掘削機や照明器具、カメラなどを搬入した後、図20に示すように、枠状凹部28内において、刃口120の外側と、側壁14の下部の外側に、掘削した土砂を埋め戻す。
【0035】
つぎに、図21に示すように、側壁14の内側かつ原子炉建屋22の周囲で底壁12の対向する一対の隅部に、マテリアルシャフト34Aを立設し、残りの対向する一対の隅部に、マンシャフト36Aを立設し、さらに、それらの内側に圧縮空気送給管38を立設し、また、照明器具に電源を供給する電源ケーブルや信号ケーブルを挿通させる不図示のケーブル挿通管を立設する。
それらマテリアルシャフト34A、マンシャフト36A、圧縮空気送給管38、不図示のケーブル挿通管の下部は、支持地盤24を通過し底壁12を貫通して空間28内に至っており、それらマテリアルシャフト34A、マンシャフト36A、圧縮空気送給管38、不図示のケーブル挿通管の上端は天井壁16の上方に位置している。
【0036】
本実施の形態では、ケーソン躯体10の下方の地盤を掘削する掘削機はケーソンショベル20であるため、作業員はマンシャフト36Aから空間28に入り、底壁12の下面の周囲に複数のレール32を取り付け、ケーソンショベル20をそれらレール32に走行可能に設ける。
ケーソンショベル20は、レール32に沿って走行する走行部と、走行部に旋回可能に設けられ先端にバケットを備える屈曲可能なアームを含んで構成されている。
また、底壁12の下面に不図示の複数の照明器具が取り付け、不図示のカメラを水平旋回可能かつ上下に揺動可能に取り付ける。
【0037】
なお、ケーソンショベル20やカメラなどの遠隔操作を行なうために不図示の地上遠隔操作室が原子炉建屋22から離れた地上に設けられている。
地上遠隔操作室には、ケーソンショベル20を遠隔操作するための不図示のショベル操作装置、不図示のカメラから供給される画像データに基づいてケーソンショベル20の周辺の画像を表示する不図示の表示装置などが設置されている。
ショベル操作装置は、操作信号を供給するための信号ケーブルを介してケーソンショベル20に接続されている。
表示装置は、画像データを伝送するための信号ケーブルを介してカメラに接続されている。以下では、これらの信号ケーブルをまとめて信号ケーブルという。
【0038】
次に、原子炉建屋22と支持地盤24との周囲に側壁14と天井壁16を構築するための型枠を設け、この型枠内にコンクリートを打設し、図22に示すように既に構築された側壁14の下部に一体化された鉄筋コンクリート製の側壁14と天井壁16を構築する。
側壁14は、原子炉建屋22と支持地盤24との周囲を囲んでおり、天井壁16は、原子炉建屋22と支持地盤24の上方で側壁14の上端を接続している。
これにより底壁12、側壁14、天井壁16が一体化され原子炉建屋22と支持地盤24とが収容されたケーソン躯体10が構築される。
天井壁16を構築する場合、マテリアルシャフト34A、マンシャフト36A、圧縮空気送給管38を天井壁16から上方に突出させ、天井壁16の構築後、マテリアルシャフト34Aの上端にマテリアルロック34Bを設け、マンシャフト36Aの上端にマンロック36Bを設ける。
【0039】
このようにして原子炉建屋22と支持地盤24とを収容したケーソン躯体10が構築されたならば、照明器具で空間28の内部を照明し、掘削箇所をカメラで撮影しつつ、地上遠隔操作室において、表示装置に表示されたケーソンショベル20の周辺の画像を監視しつつ、ショベル操作装置によりケーソンショベル20を遠隔操作することにより、ケーソン躯体10の直下の地盤で刃先1204Aの内側の地盤を掘削していく。
刃先1204Aの内側の地盤を掘削していくことにより、原子炉建屋22の重量と支持地盤24の重量とケーソン躯体10の重量により、図23に示すように、ケーソン躯体10は地中に沈下していく。
マテリアルロック34B、マテリアルシャフト34Aから枠状凹部28A内に不図示のバケットがワイヤで吊り下げられ、掘削した土砂は、遠隔操作によりケーソンショベル20でバケット内に投入され、バケットに投入された土砂はバケットと共にマテリアルシャフト34内を上昇しマテリアルロック34Bからケーソン躯体10の外部に効率良く搬出される。
【0040】
なお、ケーソンショベル20に代えバックホーなどの掘削機によりケーソン躯体10のか下方の地盤を掘削してもよく、あるいは、ケーソンショベル20とバックホーなどの掘削機を併用するなど任意である。
この場合、ケーソンショベル20やバックホーによる地盤の掘削は、遠隔操作に限定されず、作業員が空間28内で操作するなど任意である。
なお、ケーソンショベル20の下方の地盤の掘削は、ケーソン躯体10が水平状態を保って地中に沈下していくように、ケーソン躯体10の傾きを監視しつつ行なわれる。
【0041】
ケーソン躯体10の地中への沈下時、ケーソン躯体10の下方の空間28に地下水が湧き出るような場合には、本実施の形態では、圧縮空気送給管38を設けているので、圧縮空気送給管38からケーソン躯体10の下方の空間28に、地下水圧に見合った圧縮空気を送給する。
すなわち、本実施の形態は、ケーソン躯体10の下方の空間28に圧縮空気を送給し地下水の流入を防止しつつ掘削を行ない、ケーソン躯体10を沈下させるニューマチックケーソン工法を採用しているが、地下水の少ない地盤の場合には、オープンケーソン方法を採用してもよいことは無論のことである。
これにより地下水の空間28内への侵出を防止でき、ケーソン躯体10の下方の地盤の掘削を円滑に行なう上で有利となる。
本実施の形態では、マテリアルロック34B、マテリアルシャフト34Aを設けているので、ケーソン躯体10の下方の空間28に地下水圧に見合った圧縮空気を送給している場合であっても、掘削土砂のケーソン躯体10の外部への搬出が支障なく行なう上で有利となる。
【0042】
また、マンシャフト36A、マンロック36Bを設けているので、ケーソン躯体10の下方の空間28に地下水圧に見合った圧縮空気を送給している場合であっても、空間28への作業員の出入りを円滑に行なう上で有利となる。
なお、マテリアルロック34Bやマンロック36Bには従来公知の様々な構造が採用可能である。
また、ケーソン躯体10の側壁14に開閉可能な作業員の出入口を設けてもよく、この場合、ケーソン躯体10と原子炉建屋22の地中への沈下時、ケーソン躯体10の側壁14に地下水が湧き出るような場合には、ケーソン躯体10の天井壁16を貫通する不図示のパイプを設けておき、地下水圧に見合った圧縮空気を不図示のパイプからケーソン躯体10の内部に送給し、ケーソン躯体10の内部の圧力を高め、地下水のケーソン躯体10の内部への侵入を防止すればよい。
【0043】
図24に示すように、ケーソン躯体10の天井壁16の上面が地表面Gとほぼ同一の高さまで、ケーソン躯体10を地中に沈下させたならば、図25に示すように、ケーソンショベル20が位置するケーソン躯体10の下方の空間28にマテリアルロック34B、マテリアルシャフト34Aから後述する充填材Fまたは流動性のよいコンクリートCを打設して充填し、ケーソン躯体10を安定させる。
次に、マテリアルロック34Bをマテリアルシャフト34Aから取り外すと共に、天井壁16から突出するマテリアルシャフト34Aの部分を取り外す。
また、マンロック36Bをマンシャフト36Aから取り外すと共に、天井壁16から突出するマンシャフト36Aの部分を取り外し、天井壁16から突出する圧縮空気送給管38の部分を取り外す。
【0044】
そして、例えば、天井壁16部分に位置するマテリアルシャフト34の部分を欠除し、この欠除した箇所から、図26(B)に示すように、ケーソン躯体10の内部に充填材Fを充填し、あるいは、天井壁16に予め充填材充填用孔を設けておき、この充填材充填用孔からケーソン躯体10の内部に充填材Fを充填する。無論、マテリアルシャフト34A、マンシャフト36A、圧縮空気送給管38の内部にも充填材Fを充填する。
この場合、充填材Fとして低放射コンクリートを用いると、充填材Fとケーソン躯体10の低放射化を図れ、メンテナンス時の作業者の被爆量を低減する上で有利となる。
また、充填材Fとして高流動コンクリートを用いると、ケーソン躯体10の内部の隙間を充填材Fで隅々まで閉塞することができ、ケーソン躯体10の低放射化を図れ、メンテナンス時の作業者の被爆量を低減する上で有利となる。
ケーソン躯体10の内部に充填材Fを充填したならば、図26(A)に示すように、マテリアルシャフト34A、マンシャフト36A、圧縮空気送給管38が挿通されていた天井壁16の孔も充填材Fで閉塞する。
このようにして原子炉建屋22と支持地盤24とをケーソン躯体10と共に地中に埋設して廃炉作業を終了する。
なお、地表面Gと天井壁16の上面に所定の厚さでコンクリートを打設するなど任意である。
ケーソン躯体10を、天井壁16の上面が地表面Gとほぼ同一の高さまで地中に沈下させると、原子炉建屋22および原子炉格納容器に残存する放射性物質からの放射線を遮蔽した状態を維持し続ける上で有利となるが、ケーソン躯体10の地中への沈下は、天井壁16の上面が地表面Gより低位置になるまで地中に沈下させてもよく、また、地表面Gと天井壁16の上面に所定の厚さでコンクリートを打設する場合などには、天井壁16の上面が地表面Gよりも高い箇所でケーソン躯体10の地中への沈下を停止させてもよい。
【0045】
本実施の形態によれば、原子炉建屋22と支持地盤24とを収容したケーソン躯体10を設け、ケーソン躯体10の下方の地盤を掘削していくことにより原子炉建屋22と支持地盤24とを収容したケーソン躯体を、原子炉建屋22の重量と支持地盤24の重量とケーソン躯体10の重量により地中に沈下させていき、地中への沈下後、掘削したケーソン躯体10の下方の空間28に充填材FまたはコンクリートCを充填し、ケーソン躯体10の内部に充填材Fを充填してケーソン躯体10の底壁12や側壁14を原子炉建屋22、支持地盤24と共に地中に埋設するようにした。
そのため、ケーソン躯体10の底壁12や側壁14、掘削したケーソン躯体10の下方の空間28に充填した充填材FまたはコンクリートC、ケーソン躯体10の内部に充填された充填材Fは、風雨、直射日光、温度変化といった過酷な環境の変化に曝露されることはなく、例えば、100年、200年以上といった極めて長い廃炉期間にわたり、ケーソン躯体10、ケーソン躯体10の下方の空間28に充填した充填材FまたはコンクリートC、ケーソン躯体10の内部に充填された充填材Fによって、原子炉建屋22や原子炉格納容器、支持地盤24に残存する放射性物質からの放射線を遮蔽した状態を維持し続けることが可能となる。
また、極めて長い廃炉期間にわたり、原子炉建屋22や原子炉格納容器、支持地盤24に残存する放射性物質からの放射線を遮蔽した状態を維持し続けることが可能となるため、極めて長い廃炉期間における監視作業およびメンテナンス作業の負担の大幅な軽減を図る上で有利となる。
【0046】
また、ケーソン躯体10の下方の地盤を掘削していくことにより原子炉建屋22と支持地盤24とを収容したケーソン躯体10を、原子炉建屋22の重量と支持地盤24の重量とケーソン躯体10の重量により地中に沈下させていくので、ケーソン躯体10の沈下を確実に行なえ、廃炉作業を安全に確実に行なう上で有利となる。
なお、本実施の形態では、原子炉内の燃料が原子炉建屋22から適切に撤去された場合の原子炉の廃炉方法にも無論適用されるが、本発明では、放射性物質で汚染された支持地盤24を、原子炉建屋22と共にケーソン躯体10に収容して地中に埋設するので過酷事故を生じ原子炉内の燃料がそのまま残された状態の原子炉の廃炉方法として好適である。
【0047】
(第5の実施の形態)
次に、図27を参照して第5の実施の形態について説明する。
なお、以下の実施の形態の説明では、第4の実施の形態と同様な箇所、部材に同一の符号を付してその説明を省略し、異なった箇所を重点的に説明する。
第5の実施の形態では、図27(A)に示すように、天井壁16に、充填材充填用孔1620が設けられている。
そして、図27(B)に示すように、原子炉建屋22と支持地盤24とを収容したケーソン躯体10が構築されたならば、第4の実施の形態と異なって、充填材充填用孔1620からケーソン躯体10の内部に充填材Fを充填し、また、充填材Fにより充填材充填用孔1620を閉塞する。
充填材Fは第4の実施の形態と同様であり、低放射コンクリートまたは高流動コンクリートである。
【0048】
ケーソン躯体10の内部に充填材Fを充填した以降は、第4の実施の形態と同様に、図23図24に示すように掘削箇所を照明器具で照明し、掘削箇所をカメラで撮影しつつ、原子炉建屋22の下方の地盤をケーソンショベル20により掘削し、掘削した土砂を、マテリアルシャフト34内を昇降するバケットによりケーソン躯体10の外部に搬出してケーソン躯体10を地中に沈下させていく作業がなされる。
ケーソン躯体10の地中への沈下後は、図25に示すように、マテリアルシャフト34からケーソン躯体10の下方の空間28に充填材FまたはコンクリートCを充填し、また、図26に示すように、マテリアルシャフト34A、マンシャフト36A、圧縮空気送給管38が挿通されていた天井壁16の孔を充填材FまたはコンクリートCで閉塞し、廃炉作業を終了する。
【0049】
第5の実施の形態は、ケーソン躯体10の内部に充填材Fを充填する作業が、ケーソン躯体10を沈下させる前に行なう点が第4の実施の形態と異なっている。
第5の実施の形態によれば、ケーソン躯体10が地中に沈下していく際に、原子炉建屋22の重量と支持地盤24の重量とケーソン躯体10の重量に、ケーソン躯体10の内部に充填された充填材Fの重量が加わるため、ケーソン躯体10の地中への沈下をより確実に行なえ、廃炉作業をより安全に確実に行なう上で有利となる。
【0050】
(第6の実施の形態)
次に、図28図32を参照して第6の実施の形態について説明する。
第6の実施の形態は、ケーソン躯体10を沈下させる前はケーソン躯体10が天井壁16を有しておらず、ケーソン躯体10の沈下後に天井壁16を設ける点が、第1、第5の実施の形態と異なっている。
図28に示すように、ケーソン躯体10は、正方形の底壁12と、底壁12の4辺から立設された側壁14とを備え、図22に示す第4の実施の形態のケーソン躯体10と比較して天井壁16を有していないため、側壁14の内側において原子炉建屋22と支持地盤24の上方は開放されている。
【0051】
原子炉建屋22と支持地盤24とを収容したケーソン躯体10が構築されたならば、掘削箇所を照明器具で照明すると共に掘削箇所をカメラで撮影し、地上遠隔操作室において、表示装置に表示されたケーソンショベル20の周辺の画像を監視しつつ、ショベル操作装置によりケーソンショベル20を遠隔操作することにより、ケーソン躯体10の直下の地盤で刃先1204Aの内側の地盤を掘削していく。
刃先1204Aの内側の地盤を掘削していくことにより、原子炉建屋22の重量と支持地盤24の重量とケーソン躯体10の重量により、図29に示すように、ケーソン躯体10は地中に沈下していく。
マテリアルロック34B、マテリアルシャフト34Aから枠状凹部28A内に不図示のバケットがワイヤで吊り下げられ、掘削した土砂は、遠隔操作によりケーソンショベル20でバケット内に投入され、バケットに投入された土砂はバケットと共にマテリアルシャフト34内を上昇しマテリアルロック34Bからケーソン躯体10の外部に効率良く搬出される。
第6の実施の形態でも第4の実施の形態と同様に、ケーソン躯体10の下方の空間28に圧縮空気を送給し地下水の流入を防止しつつ掘削を行ない、ケーソン躯体10を沈下させるニューマチックケーソン工法を採用しているが、地下水の少ない地盤の場合には、オープンケーソン方法を採用してもよいことは無論のことである。
【0052】
図30に示すように、側壁14の上端を地表面Gより天井壁16の厚さ分、地中に沈下させたならば、図31に示すように、ケーソン躯体10の下方の空間28にマテリアルロック34B、マテリアルシャフト34Aから充填材FまたはコンクリートCを打設して充填し、ケーソン躯体10を安定させる。
次に、図32に示すように、原子炉建屋22の上方に型枠を組み、この型枠にコンクリートを打設し、側壁14の上端を接続する天井壁16を設ける。
次に、第4の実施の形態と同様に、図26に示すように、マテリアルロック34B、天井壁16から突出するマテリアルシャフト34Aの部分、マンロック36B、天井壁16から突出するマンシャフト36Aの部分などを取り外し、天井壁16から突出する圧縮空気送給管38の部分を取り外し、ケーソン躯体10の内部に充填材Fを充填し、マテリアルシャフト挿通孔1210、マンシャフト挿通孔1212、圧縮空気送給管挿通孔1214を充填材Fで閉塞し、廃炉作業を終了する。
【0053】
第6の実施の形態によれば、ケーソン構造体26の沈下時、常時、側壁14の内側の空間が上方に開放されていることから、作業員がケーソン躯体10の内部に出入りでき、各種の作業を行なう上で有利となる。
【符号の説明】
【0054】
10 ケーソン躯体
12 底壁
1204 刃口
1204A 刃先
1210 マテリアルシャフト挿通孔
1212 マンシャフト挿通孔
1214 圧縮空気送給管挿通孔
14 側壁
16 天井壁
1620 充填材充填用孔
20 ケーソンショベル
22 原子炉建屋
23 底壁
23A アンカボルト
24 支持地盤
28A 枠状凹部
32 レール
34A マテリアルシャフト
34B マテリアルロック
36A マンシャフト
36B マンロック
38 圧縮空気送給管
F 充填材
G 地表面
C コンクリート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
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図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32