(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108477
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】発泡体ならびにその製造方法および用途
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20230728BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CES
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009623
(22)【出願日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000214788
【氏名又は名称】DMノバフォーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】三宅 祐治
(72)【発明者】
【氏名】湯本 正弘
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA20
4F074AA21
4F074AA22
4F074AD11
4F074AD13
4F074BA38
4F074BC12
4F074CA22
4F074DA02
4F074DA08
4F074DA12
4F074DA13
4F074DA17
4F074DA33
(57)【要約】
【課題】柔軟性および復元性に優れた発泡体を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂および/またはその架橋体からなる樹脂成分(A)と中心粒径10μm以上の無機粒子(B)とを組み合わせた発泡体を形成する。前記無機粒子(B)の割合は、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して5質量部以上であってもよい。前記無機粒子(B)は金属ケイ酸塩粒子であってもよい。前記無機粒子(B)の中心粒径は11~50μmであってもよい。前記無機粒子(B)の割合は、前記樹脂成分(A)100質量部に対して5~50質量部であってもよい。前記熱可塑性樹脂はオレフィン系樹脂であってもよい前記発泡体の発泡倍率は20倍以上であってもよい。前記発泡体の連続気泡率は10体積%以上であってもよい。前記発泡体のゴム硬度が90以下であってもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成分(A)および無機粒子(B)を含む発泡体であって、前記樹脂成分(A)が熱可塑性樹脂および/またはその架橋体であり、かつ前記無機粒子(B)の中心粒径が10μm以上である発泡体。
【請求項2】
前記無機粒子(B)の割合が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して5質量部以上である請求項1記載の発泡体。
【請求項3】
前記無機粒子(B)が金属ケイ酸塩粒子である請求項1または2記載の発泡体。
【請求項4】
前記無機粒子(B)の中心粒径が11~50μmであり、かつ前記無機粒子(B)の割合が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して5~50質量部である請求項1~3のいずれか一項に記載の発泡体。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂が、オレフィン系樹脂である請求項1~4のいずれか一項に記載の発泡体。
【請求項6】
前記オレフィン系樹脂が、ポリエチレン系樹脂である請求項5記載の発泡体。
【請求項7】
前記樹脂成分(A)が、シリル変性オレフィン系樹脂の水架橋体である請求項1~6のいずれか一項に記載の発泡体。
【請求項8】
前記樹脂成分(A)が、ポリプロピレン系樹脂を含まない請求項1~7のいずれか一項に記載の発泡体。
【請求項9】
発泡倍率が20倍以上である請求項1~8のいずれか一項に記載の発泡体。
【請求項10】
連続気泡率が10体積%以上である請求項1~9のいずれか一項に記載の発泡体。
【請求項11】
ゴム硬度が90以下である請求項1~10のいずれか一項に記載の発泡体。
【請求項12】
前記樹脂成分(A)の前駆体および前記無機粒子(B)を含む組成物を発泡成形する請求項1~11のいずれか一項に記載の発泡体の製造方法。
【請求項13】
熱可塑性樹脂および/またはその架橋体からなる樹脂成分(A)と、中心粒径10μm以上の無機粒子(B)とを組み合わせることにより、発泡体の発泡倍率および連続気泡率を向上させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、目地材などに利用できる発泡体ならびにその製造方法および用途に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂発泡体は、弾力性、柔軟性、断熱性などの性質を利用して各種の用途で使用されているが、目地材などの用途においては、柔軟性、復元性、耐熱性なども要求される。
【0003】
特開2002-12689号公報(特許文献1)には、微生物を利用して汚水を処理する汚水処理装置に使用する流動床用微生物固定化担体や合併浄化槽用担体などとして好適な発泡成形体として、ポリオレフィン系樹脂と、吸湿性物質および/またはグリセリン誘導体と、無機充填剤とから主としてなる樹脂組成物を発泡成形させてなる発泡成形体であって、内部に連続気泡を有し、該連続気泡が、連続気泡内面の2ヶ所以上が発泡成形体表面に連通する貫通気泡と、連続気泡内面の1ヶ所のみが発泡成形体表面に連通する半貫通気泡とからなり、かつ発泡成形体の全容積中における前記連続気泡の容積の占有割合が15~80%である発泡成形体が開示されている。
【0004】
特許第4836583号公報(特許文献2)には、包装材、緩衝材、充填材などに有用な発泡体として、マトリックスを構成可能な第一のオレフィン系樹脂と、第一のオレフィン系樹脂のマトリックスに分散可能である第二のオレフィン系樹脂とで構成された発泡体用樹脂組成物で形成された発泡体であって、前記第二のオレフィン系樹脂の融点または軟化点が、前記第一のオレフィン系樹脂の融点または軟化点より高く、前記第一のオレフィン系樹脂が、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンおよびエチレン-酢酸ビニル共重合体から選択された少なくとも一種であり、前記第二のオレフィン系樹脂が結晶性ポリプロピレンであり、前記第二のオレフィン系樹脂の割合が、前記第一のオレフィン系樹脂100重量部に対して、1~30重量部であり、かつ連続気泡率が20~80%である発泡体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-12689号公報
【特許文献2】特許第4836583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1では、汚泥の吸着能力を上げるため、発泡体に吸湿性物質を含有させているが、吸湿性物質として用いられているセルロース系化合物を含むことにより、樹脂の伸びが小さくなるため、高発泡化は困難である。そのため、特許文献1の発泡体は、低発泡であり、柔軟性および復元性に欠ける。一方、特許文献2の発泡体は、高発泡体であるが、復元性が十分でない。さらに、2種の異なる融点または軟化点を有する特定のポリオレフィンを必要とするため、適用範囲に制限があった。
【0007】
従って、本開示の目的は、柔軟性および復元性に優れた発泡体ならびにその製造方法および用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、熱可塑性樹脂および/またはその架橋体からなる樹脂成分(A)と中心粒径10μm以上の無機粒子(B)とを組み合わせることにより、発泡体の柔軟性および復元性を向上できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本開示の発泡体は、樹脂成分(A)および無機粒子(B)を含む発泡体であって、前記樹脂成分(A)が熱可塑性樹脂および/またはその架橋体であり、かつ前記無機粒子(B)の中心粒径が10μm以上である。前記無機粒子(B)の割合は、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して5質量部以上であってもよい。前記無機粒子(B)は金属ケイ酸塩粒子であってもよい。前記無機粒子(B)の中心粒径は11~50μmであってもよい。前記無機粒子(B)の割合は、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して5~50質量部であってもよい。前記熱可塑性樹脂は、オレフィン系樹脂(特に、ポリエチレン系樹脂)であってもよい。前記樹脂成分(A)は、シリル変性オレフィン系樹脂の水架橋体であってもよい。前記樹脂成分(A)はポリプロピレン系樹脂を含まない樹脂成分であってもよい。前記発泡体の発泡倍率は20倍以上であってもよい。前記発泡体の連続気泡率は10体積%以上であってもよい。前記発泡体のゴム硬度が90以下であってもよい。
【0010】
本開示には、前記樹脂成分(A)の前駆体および前記無機粒子(B)を含む組成物を発泡成形する前記発泡体の製造方法も含まれる。
【0011】
本開示には、熱可塑性樹脂および/またはその架橋体からなる樹脂成分(A)と、中心粒径10μm以上の無機粒子(B)とを組み合わせることにより、発泡体の発泡倍率および連続気泡率を向上させる方法も含まれる。
【発明の効果】
【0012】
本開示では、熱可塑性樹脂および/またはその架橋体からなる樹脂成分(A)と中心粒径10μm以上の無機粒子(B)とを組み合わせているため、発泡体の発泡倍率および連続気泡率を向上でき、発泡体の柔軟性および復元性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、比較例3で得られた発泡体断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図2】
図2は、実施例3で得られた発泡体断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図3】
図3は、実施例6で得られた発泡体断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図4】
図4は、比較例5、実施例4および実施例7の解放60秒後の復元性を示すグラフである。
【
図5】
図5は、比較例5、実施例4および実施例7の復元性の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[樹脂成分(A)]
本開示の発泡体は、樹脂成分(A)を含む。前記樹脂成分(A)は、熱可塑性樹脂および/またはその架橋体である。
【0015】
熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド系樹脂、これらの樹脂の構成成分を含む熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これら熱可塑性樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの熱可塑性樹脂のうち、オレフィン系樹脂を含む熱可塑性樹脂が好ましい。
【0016】
オレフィン系樹脂は、オレフィン単位を主成分とする重合体であればよく、オレフィン系樹脂にはオレフィンの単独または共重合体が含まれる。
【0017】
オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-プロピレン、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどのα-C2-20直鎖状オレフィン;3-メチル-1-ブテン、2-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセンなどのα-C2-20分岐鎖状オレフィン;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのC4-12シクロオレフィン;2-ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、5,5-ジメチル-2-ノルボルネンなどの多環式オレフィンなどが挙げられる。
【0018】
これらのオレフィンは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、α-C2-8オレフィンが好ましく、α-C2-4オレフィンがさらに好ましく、エチレンが最も好ましい。
【0019】
オレフィン系樹脂は、前記オレフィンと共重合性単量体との共重合体であってもよい。共重合性単量体としては、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸類、(メタ)アクリル酸エステル、カルボン酸ビニルエステル、重合性ニトリル化合物、芳香族ビニル、共役ジエン類、非共役ジエン類などが挙げられる。
【0020】
エチレン性不飽和カルボン酸類としては、エチレン系不飽和カルボン酸およびその酸無水物を利用でき、例えば、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、メサコン酸、アンゲリカ酸などが挙げられる。
【0021】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸C1-6アルキルエステル、グリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0022】
カルボン酸ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの飽和カルボン酸ビニルエステルなどが挙げられる。
【0023】
重合性ニトリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0024】
芳香族ビニル類としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。
【0025】
共役ジエン類としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエンなどが挙げられる。
【0026】
非共役ジエン類としては、例えば、1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネンなどが挙げられる。
【0027】
これらの共重合性単量体は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。共重合性単量体の割合は、全単量体中0~50モル%、好ましくは0.1~30モル%、さらに好ましくは1~10モル%である。
【0028】
前記共重合体(オレフィン同士の共重合体およびオレフィンと共重合性単量体との共重合体)には、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体が含まれるが、グラフト共重合体が好ましい。
【0029】
これらのオレフィン系樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのオレフィン系樹脂のうち、発泡性などの点から、ポリエチレン系樹脂などのポリC2-3オレフィン系樹脂が好ましく、ポリエチレン系樹脂が特に好ましい。ポリエチレン系樹脂の割合は、オレフィン系樹脂中50質量%以上が好ましく、さらに好ましくは80質量%以上(特に90質量%以上)であり、100質量%(オレフィン系樹脂のみ)であってもよい。特に、本開示の発泡体では、樹脂成分を構成するオレフィン系樹脂をポリエチレン系樹脂単独で構成すると、高い発泡倍率と、高い連続気泡率とを両立できる。
【0030】
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)などのエチレンの単独重合体;エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン-1共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン-1共重合体、エチレン-(4-メチルペンテン-1)共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA樹脂)、エチレン-メチルメタクリレート共重合体などのエチレンを主成分とする共重合体などが挙げられる。これらのポリエチレン系樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのポリエチレン系樹脂のうち、発泡性などの点から、LDPE、LLDPE、EVA樹脂などが好ましい。
【0031】
ポリエチレン系樹脂の数平均分子量は、例えば1万~30万、好ましくは1.5万~20万、さらに好ましくは2万~10万である。なお、分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)において、測定温度140℃で、溶媒としてオルトジクロロベンゼン、およびカラム(Shodex GPC AD-806MS)を用いて、ポリスチレンを基準とするユニバーサルキャリブレーションにより測定できる。
【0032】
ポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210に準じた方法(190℃、荷重21.2N)で、0.1g/10分以上であってもよく、例えば0.1~60g/10分、好ましくは0.2~25g/10分、さらに好ましくは0.25~8g/10分、最も好ましくは0.3~5g/10分である。MFRが大きすぎると、発泡性や強度などが低下する虞があり、逆に小さすぎても、発泡性が低下する虞がある。一般的にMFRが大きくなると、溶融張力の低下により破泡し易くなることが知られているが、MFRの下限も前記範囲に調整することにより、発泡性を向上できる。
【0033】
ポリエチレン系樹脂の融点(DSC法)は、例えば80~150℃、好ましくは90~140℃、さらに好ましくは100~130℃である。ポリエチレン系樹脂のビカット軟化点は、例えば70~140℃、好ましくは80~130℃、さらに好ましくは90~120℃である。
【0034】
熱可塑性樹脂がオレフィン系樹脂を含む場合、熱可塑性樹脂は、オレフィン系樹脂単独であってもよく、オレフィン系樹脂とオレフィン系樹脂以外の熱可塑性樹脂(他の熱可塑性樹脂)との組み合わせであってもよい。オレフィン系樹脂と組み合わせる他の熱可塑性樹脂としては、発泡体の剛性を向上できる点から、スチレン系樹脂が好ましく、発泡体の柔軟性を向上できる点から、熱可塑性エラストマー(例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマーなど)が好ましい。
【0035】
オレフィン系樹脂と他の熱可塑性樹脂との質量割合は、オレフィン系樹脂/他の熱可塑性樹脂=100/0~10/90(例えば100/0~50/50)程度の範囲から選択でき、他の熱可塑性樹脂と組み合わせる場合、オレフィン系樹脂/他の熱可塑性樹脂=99/1~30/70、好ましくは98/2~50/50、さらに好ましくは95/5~70/30、最も好ましくは93/7~80/20である。オレフィン系樹脂の割合は、熱可塑性樹脂中50質量%以上が好ましく、さらに好ましくは80質量%以上(特に90質量%以上)であり、100質量%(オレフィン系樹脂のみ)であってもよい。オレフィン系樹脂の割合が少なすぎると、発泡性が低下する虞がある。前述のように、熱可塑性樹脂としても、ポリエチレン系樹脂単独で構成するのが最も好ましい。
【0036】
樹脂成分(A)は、耐熱性を向上できる点から、熱可塑性樹脂の架橋体であってもよい。架橋体は、熱可塑性樹脂の種類に応じて慣用の架橋体を利用できる。熱可塑性樹脂がオレフィン系樹脂である場合、架橋体は、慣用のオレフィン樹脂架橋体、例えば、水架橋体、化学架橋体、放射線架橋体、電子線架橋体であってもよい。これらのうち、架橋性や生産性などの点から、水架橋体が好ましい。
【0037】
水架橋体は、水架橋可能な加水分解縮合性のシリル基(水架橋性シリル基)を有するオレフィン系樹脂の水架橋体であればよく、主鎖を構成する単量体として、加水分解縮合性のシリル基を有する単量体を用いて得られた重合体の架橋体であってもよく、オレフィン系樹脂の主鎖に加水分解縮合性のシリル基を有する単量体をグラフト重合させた重合体(シリル変性オレフィン系樹脂)であってもよい。
【0038】
シリル変性オレフィン系樹脂は、水架橋可能な加水分解縮合性のシリル基(水架橋性シリル基)を有するオレフィン系樹脂であればよく、主鎖を構成する単量体として、加水分解縮合性のシリル基を有する単量体を用いて得られた重合体であってもよく、オレフィン系樹脂の主鎖に加水分解縮合性のシリル基を有する単量体をグラフト重合させた重合体であってもよい。これらのうち、架橋性や生産性などの点から、オレフィン系樹脂に、加水分解縮合性基およびエチレン性不飽和結合を有するシリル化合物をグラフト重合させた重合体が好ましい。
【0039】
加水分解縮合性のシリル基としては、例えば、モノないしトリヒドロキシシリル基;トリクロロシリルなどのトリハロシリル基;メチルジクロロシリルなどのC1-4アルキルジハロシリル基;フェニルジクロロシリルなどのアリールジハロシリル基;ジメチルクロロシリルなどのジC1-4アルキルハロシリル基;トリメトキシシリル、トリエトキシシリルなどのトリC1-4アルコキシシリル基;メチルジメトキシシリル、ジエトキシメチルシリルなどのジC1-4アルコキシC1-4アルキルシリル基;フェニルジメトキシシリル、フェニルジエトキシシリルなどのアリールジC1-4アルコキシシリル基;メトキシジメチルシリル、エトキシジメチルシリルなどのC1-4アルコキシジC1-4アルキルシリル基;ジフェニルメトキシシリル、ジフェニルエトキシシリルなどのジアリールC1-4アルコキシシリル基;フェニルメトキシメチルシリル、フェニルエトキシメチルシリルなどのアリールC1-4アルコキシC1-4アルキルシリル基などが挙げられる。これらのシリル基は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのシリル基のうち、トリメトキシシリル、トリエトキシシリルなどのトリC1-4アルコキシシリル基が好ましい。
【0040】
このような加水分解縮合性基(加水分解縮合性シリル基)およびエチレン性不飽和結合を有するシリル化合物としては、例えば、トリメトキシシリルエテン、トリエトキシシリルエテン、メチルジメトキシシリルエテンなどのC1-4アルコキシシリルエテン;トリメトキシシリルプロペン、トリエトキシシリルプロペンなどのC1-4アルコキシシリルプロペン;トリメトキシシリルブテンなどのC1-4アルコキシシリルブテン;トリメトキシシリルシクロヘキセンなどのC1-4アルコキシシリルシクロヘキセン;トリメトキシシリルシクロペンタジエンなどのC1-4アルコキシシリルシクロペンタジエン;(メタ)アクリロイル基を有するシリル化合物としては、例えば、トリメトキシシリル-2-エチルメタクリレート、トリメトキシシリル-3-プロピルメタクリレートなどのC1-4アルコキシシリルC2-4アルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのシリル化合物は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのシリル化合物のうち、トリメトキシシリルエテンなどのC1-4アルコキシシリルエテンが好ましい。
【0041】
[無機粒子(B)]
本開示の発泡体は、無機粒子(B)を含む。タルクなどの無機粒子は、従来の発泡体では、発泡核剤や気泡調整剤として利用されているが、発泡核剤や気泡調整剤として利用されている無機粒子は、数μmという小粒径の無機粒子を、樹脂成分に対して少量配合している。発泡体において、無機粒子がこのような態様で配合されている理由としては、無機粒子は樹脂成分に対して異物であるため、入れ過ぎて発泡を阻害しない範囲で、発泡の核となって発泡を調整することを想定しているためであると推定できる。例えば、特許文献1でも、気泡調整剤としてタルクが配合されているが、粒径について記載されておらず、実施例では、樹脂成分100質量部に対して1.3質量部のタルクが配合されている。これに対して、本発明者等は、中心粒径が10μm以上の無機粒子を樹脂成分に配合すると、意外なことに、樹脂成分にとって大きな異物であるにも拘わらず、発泡倍率を高めるともに、連続気泡率も向上でき、さらに意外なことに、復元性(永久圧縮歪み)も向上できることを見出した。さらに、本発明者等は、このような無機粒子を従来の配合量よりも多くしても、発泡性は低下することなく、むしろ向上させることができ、発泡性と復元性(永久圧縮歪み)とを同時に充足できることを見出した。
【0042】
無機粒子(B)の形状としては、例えば、球状、楕円体状、扁平状(鱗片状または平板状)、繊維状、無定形状などが挙げられる。これらのうち、扁平状、無定形状が好ましく、扁平状(例えば、面形状が無定形状である扁平状)が特に好ましい。
【0043】
無機粒子(B)の中心粒径または平均粒径(D50)は、10μm以上(例えば10~100μm)であればよく、例えば11~50μm、好ましくは12~40μm、さらに好ましくは13~35μm、より好ましくは14~30μm、最も好ましくは15~25μmである。中心粒径(体積基準の累積50%粒子径)が10μm未満になると、連続気泡率が低下し、柔軟性および復元性が低下する。
【0044】
無機粒子(B)の体積基準の累積10%粒子径(D10)は、例えば4μm以上(例えば4~30μm)、好ましくは5μm以上(例えば5~20μm)、さらに好ましくは6μm以上(例えば6~15μm)、より好ましくは9μm以上(例えば9~12μm)である。
【0045】
無機粒子(B)の体積基準の累積90%粒子径(D90)は、例えば14μm以上(例えば14~100μm)、好ましくは30μm以上(例えば30~80μm)、さらに好ましくは33μm以上(例えば33~60μm)、より好ましくは35μm以上(例えば35~50μm)である。
【0046】
粒径分布の標準偏差は、例えば20μm以下、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。
【0047】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、無機粒子(B)の中心粒径(D50)、累積10%粒子径(D10)、累積90%粒子径(D90)および標準偏差は、慣用の方法で測定でき、例えば、レーザー回折法に基づいて、体積基準で測定できる。
【0048】
無機粒子(B)を構成する無機材料としては、例えば、グラファイト、カーボンブラックなどの炭素材;ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、アルミノケイ酸マグネシウム、タルク、クレー、マイカ、ケイ藻土、ゼオライト、カオリン、ベントナイト、スメクタイト、ワラストナイトなどの金属ケイ酸塩;炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウムなどの金属炭酸塩;水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物;シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛などの金属酸化物などが挙げられる。これらの無機材料で形成された無機粒子は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0049】
前記無機粒子のうち、高い発泡倍率および連続気泡率を有する発泡体を形成し易い点から、金属ケイ酸塩粒子が好ましく、金属ケイ酸塩粒子の中でも、タルクなどの粘土質鉱物粒子が特に好ましい。
【0050】
無機粒子(B)の割合は、熱可塑性樹脂100質量部[樹脂成分(A)が架橋体である場合、架橋促進剤を除く熱可塑性樹脂100質量部]に対して3質量部以上であってもよく、好ましくは5質量部以上であり、例えば5~50質量部、好ましくは7~40質量部、さらに好ましくは8~35質量部、より好ましくは10~30質量部である。無機粒子(B)の割合が少なすぎると、気泡径が大きくなる虞がある上に、連続気泡率も低下する虞がある。
【0051】
なお、前述のように、本明細書および特許請求の範囲において、他の成分[無機粒子(B)、収縮防止(C)、架橋促進剤(D)、発泡剤など]の割合の基準となる熱可塑性樹脂が架橋体である場合、熱可塑性樹脂の割合は、架橋体に含まれる架橋促進剤を含まない熱可塑性樹脂の割合を意味する。
【0052】
[収縮防止剤(C)]
本開示の発泡体は、収縮防止剤(C)をさらに含んでいてもよい。収縮防止剤(C)は、脂肪酸アミドおよび/または脂肪酸エステルであってもよい。
【0053】
前記脂肪酸アミドは、一価または二価の長鎖脂肪酸(C10-30飽和または不飽和脂肪酸など)とアミン類、アンモニアとの酸アミドであってもよい。このような脂肪酸アミドとしては、例えば、カプリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミドなどのC12-24飽和脂肪酸の酸アミド;オレイン酸アミドなどのC12-24不飽和脂肪酸の酸アミド;C1-6アルカンジアミン(特に、C1-4アルカンジアミン)とC12-24脂肪酸とのビスアミド(例えば、エチレンビスステアリルアミド、ヘキサメチレンジアミン-ジステアリン酸アミドなどのC12-24飽和脂肪酸ビスアミド、エチレンビスオレイン酸アミドなどのC12-24不飽和脂肪酸ビスアミドなど)などが挙げられる。これらの脂肪酸アミドは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0054】
前記脂肪酸エステルは、一価または二価の長鎖脂肪酸(C10-30飽和または不飽和脂肪酸など)と、一価アルコールや多価アルコール(エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどのジないしテトラオールなど)などのアルコール類とのエステルであってもよい。このような脂肪酸エステルとしては、例えば、ブチルステアレート、2-エチルヘキシルベヘネートなどのC12-24飽和脂肪酸のC1-10アルキルエステル;ブチルオレエートなどのC12-24不飽和脂肪酸のC1-10アルキルエステル;エチレングリコールモノまたはジステアリン酸エステル、グリセリンモノないしトリステアリン酸エステルなどのC12-24飽和脂肪酸と多価アルコールとのエステル;エチレングリコールモノまたはジオレイン酸エステル、グリセリンモノないしトリオレイン酸エステルなどのC12-24不飽和脂肪酸と多価アルコールとのエステルなどが挙げられる。これらの脂肪酸エステルは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0055】
前記収縮防止剤のうち、ステアリン酸アミドなどのC16-24飽和脂肪酸の酸アミド、ステアリン酸モノグリセライドなどのC16-24飽和脂肪酸モノグリセライドが好ましい。
【0056】
収縮防止剤(C)の割合は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば0.01~30質量部、好ましくは0.05~20質量部、さらに好ましくは0.1~10質量部、最も好ましくは1~5質量部である。
【0057】
[架橋促進剤(D)]
樹脂成分(A)が熱可塑性樹脂の架橋体である場合、本開示の発泡体は、架橋促進剤(D)をさらに含んでいてもよい。特に、架橋体が水架橋体である場合、本開示の発泡体は、水架橋を促進するための架橋促進剤(シラノール縮合触媒)をさらに含んでいてもよい。
【0058】
前記架橋促進剤としては、慣用のシラノール縮合触媒、例えば、有機酸、無機酸、アミン類、有機金属化合物などを利用できる。
【0059】
有機酸としては、例えば、酢酸、カプリル酸、ステアリン酸などの脂肪族モノカルボン酸;マレイン酸などの脂肪族ジカルボン酸;ナフテン酸などの脂環族カルボン酸;トルエンスルホン酸などのアレーンステアリン酸などが挙げられる。有機酸は、酢酸第一錫、カプリル酸第一錫、カプリル酸亜鉛などの脂肪族モノカルボン酸金属塩、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸鉛などの脂環族カルボン酸金属塩などであってもよい。
【0060】
無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸などが挙げられる。無機酸は、硫酸錫などの無機酸金属塩であってもよい。
【0061】
アミン類としては、例えば、エチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミンなどの脂肪族アミン、ピリジンなどの環状アミンなどが挙げられる。
【0062】
有機金属化合物としては、例えば、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジカプリレート(オクトエート)、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオレエート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジオレエートなどのジアルキル錫ジ脂肪酸エステル;チタン酸テトラブチルエステル、チタン酸テトラノニエルエステルなどのチタン酸アルキルエステルなどが挙げられる。
【0063】
これらの架橋促進剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、架橋促進能が高い点から、錫を含む架橋促進剤が好ましく、ジオクチル錫ジラウレートなどのジC4-12アルキル錫C2-18脂肪酸エステルが特に好ましい。
【0064】
架橋促進剤(D)の割合は、熱可塑性樹脂(特に、シリル変性オレフィン系樹脂)100質量部に対して、例えば0.01~10質量部、好ましくは0.1~5質量部、さらに好ましくは1~4質量部、より好ましくは2~3質量部である。
【0065】
[他の成分]
本開示の発泡体は、他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、発泡核剤、気泡調整剤、着色剤(染料や顔料など)、表面平滑剤、安定剤(酸化防止剤、熱安定化剤、紫外線吸収剤など)、粘度調節剤、相溶化剤、分散剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、滑剤、離型剤、潤滑剤、衝撃改良剤、可塑剤、難燃剤、バイオサイド(殺菌剤、静菌剤、抗かび剤、防腐剤、防虫剤など)、抗アレルギー剤、消臭剤などの添加剤が挙げられる。これら慣用の添加剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0066】
他の成分の合計割合は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば0.01~30質量部、好ましくは0.05~20質量部、さらに好ましくは0.1~10質量部、最も好ましくは1~5質量部である。
【0067】
[発泡体の特性]
本開示の発泡体は、高い発泡倍率を有している。具体的な発泡倍率は20倍以上であってもよく、例えば20~80倍、好ましくは23~50倍、さらに好ましくは25~45倍、より好ましくは28~40倍、最も好ましくは30~35倍である。発泡倍率が低すぎると、柔軟性および復元性が低下する虞がある。
【0068】
本開示の発泡体は、少なくとも連続気泡構造を有しており、気泡全体(連続気泡と独立気泡との合計)に対する連続気泡の割合である連続気泡率が高い。具体的な連続気泡率は10体積%以上であってもよく、例えば10~90体積%、好ましくは15~80体積%、さらに好ましくは20~70体積%、より好ましくは30~60体積%、最も好ましくは35~55体積%である。連続気泡率が低すぎると、柔軟性が低下する虞がある。
【0069】
本開示の発泡体の平均気泡径は、例えば0.05~3.0mm、好ましくは0.08~2.5mm、さらに好ましくは0.1~2.0mm、より好ましくは0.15~1.5mmである。平均気泡径が小さすぎると、発泡倍率を高くするのが困難となる虞があり、大きすぎると、復元性が低下する虞がある。
【0070】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、発泡倍率、連続気泡率および平均気泡径は、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
【0071】
本開示の発泡体のゴム硬度は90以下(例えば70~90)であってもよく、好ましくは89以下、さらに好ましくは88以下、より好ましくは87以下である。ゴム硬度が大きすぎると、柔軟性が低下する虞がある。
【0072】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、ゴム硬度は、慣用の方法で測定でき、例えば、タイプFOのデュロメーターを用いて測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0073】
本開示の発泡体の圧縮硬さ(50%圧縮)は5N/cm2以下(例えば1~5N/cm2)であってもよく、好ましくは4.8N/cm2以下、さらに好ましくは4.5N/cm2以下、より好ましくは4N/cm2以下、最も好ましくは3.5N/cm2以下である。圧縮硬さが大きすぎると、柔軟性および復元性が低下する虞がある。
【0074】
[発泡体の製造方法]
本開示の発泡体の製造方法は、原料樹脂成分(未発泡の熱可塑性樹脂)である樹脂成分(A)の前駆体および前記無機粒子(B)を含む発泡性樹脂組成物を発泡成形する方法であればよく、慣用の発泡成形法を利用できるが、通常、前記樹脂組成物を溶融混練し、発泡成形する方法である。
【0075】
溶融混練は、慣用の溶融混練機、例えば、一軸またはベント式二軸押出機などを用いて溶融混錬してもよい。また、溶融混練に先だって、慣用の方法、例えば、混合機(タンブラー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサー、リボンミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機など)を用いて、前記前駆体、無機粒子(B)および他の成分(発泡剤および必要に応じて収縮防止剤(C)、架橋促進剤(D)など)を予備混合してもよい。
【0076】
発泡成形法としては、慣用の方法、例えば、押出成形法(例えば、Tダイ法、インフレーション法など)、射出成形法などが使用できる。これらのうち、高い発泡性を有する発泡体を高い生産性で製造できる点から、押出成形法が好ましい。
【0077】
押出成形法において、押出機としては、例えば、単軸押出機(例えば、ベント式押出機など)、二軸押出機(例えば、同方向二軸押出機、異方向二軸押出機など)などが利用でき、発泡条件を調整し易く、高発泡率を実現できる点から、タンデム押出機などの多段押出機が好ましい。
【0078】
押出成形法において、発泡剤を導入する方法は特に限定されず、分解性発泡剤(化学発泡剤)を予め発泡性樹脂組成物に配合してもよいが、簡便な方法で、発泡倍率を向上できる点から、押出機において揮発性発泡剤(物理発泡剤)を導入するのが好ましい。
【0079】
口金の吐出口(ダイのリップ)の形状は、特に制限されず目的の形態に応じて選択でき、例えば、棒状、紐状などの一次元的形状、シート状、フィルム状、二次元網目(ネット)状などの二次元的形状、ブロック状、板状、柱状、スリット状、L字状、コ型状、パイプ状またはリング状などの三次元的形状であってもよい。
【0080】
発泡成形温度は、熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜選択でき、例えば、熱可塑性樹脂が融点を有する場合、融点(Tm)よりも低い温度で成形され、例えば(Tm+20)℃~(Tm-20)℃、好ましくは(Tm+10)℃~(Tm-10)℃、さらに好ましくは(Tm+5)℃~(Tm-5)℃である。
【0081】
発泡に際しては、慣用の発泡剤を用いてもよい。発泡剤としては、分解性発泡剤(化学発泡剤)または揮発性発泡剤(物理発泡剤)などの慣用の発泡剤が挙げられる。発泡剤は、分解性発泡剤であってもよいが、発泡倍率を簡便に向上できる観点から、揮発性発泡剤が好ましい。
【0082】
揮発性発泡剤としては、例えば、窒素、二酸化炭素、酸素、空気、水など無機系発泡剤;脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素、塩化炭化水素、フッ化炭化水素、アルコール類、エーテル類、アルデヒド類、ケトン類などの有機系発泡剤などが挙げられる。これらの揮発性発泡剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0083】
これらの発泡剤のうち、毒性が低く、かつ安価であることから、ブタン(n-ブタン、又は、イソブタン)、ペンタン(n-ペンタン、イソペンタンなど)などの低級脂肪族炭化水素が好ましい。
【0084】
発泡剤の割合は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば0.01~30質量部、好ましくは0.1~25質量部、さらに好ましくは1~20質量部、特に好ましくは5~15質量部である。
【0085】
押出発泡された発泡体は、慣用の方法、例えば、冷却器を用いた冷却方法で冷却してもよい。冷却器を用いた冷却方法において、冷却媒体としては、圧縮エアー、水(冷却水)、空気(ブロア)などの冷却媒体が挙げられる。冷却方法としては、圧縮エアーを噴射する方法、ブロアで冷却する方法、水を噴霧して冷却する方法、冷却ジャケットを用いて冷却する方法などが挙げられる。冷却媒体の温度は、例えば0~60℃、好ましくは5~55℃、さらに好ましくは10~50℃である。
【0086】
圧縮エアーを噴射する方法において、エアーの圧力は、例えば0.1~10MPa、好ましくは0.2~5MPa、さらに好ましくは0.3~1MPaである。圧縮エアーの噴射量は、例えば100~1000リットル/分、好ましくは200~500リットル/分、さらに好ましくは250~400リットル/分である。
【0087】
なお、樹脂成分が熱可塑性樹脂の架橋体である場合、得られた押出発泡体は架橋工程に供してもよい。水架橋体における架橋工程では、空気中の水分によりシリル変性ポリオレフィンを水架橋してもよい。架橋処理は、非加熱状態(15~25℃程度の室温)で架橋させてもよいが、生産性を向上させるために、加熱して架橋してもよい。加熱温度は、例えば40~100℃、好ましくは50~80℃、さらに好ましくは55~70℃である。
【0088】
また、必要により、得られた発泡体(特に、シート状発泡体)を二次加工[例えば、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、マッチモールド成形などの熱成形(例えば、金型を用いる熱成形)]してもよい。
【0089】
なお、二次加工または成形温度は、例えば70~300℃、好ましくは80~280℃、さらに好ましくは85~260℃程度であってもよい。
【0090】
発泡体の形状は、用途に応じて任意の形状に適宜選択でき、例えば、棒状、シート状、三次元形状などであってもよい。
【0091】
なお、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【実施例0092】
以下に、実施例に基づいて本開示をより詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例および比較例で用いた原料は以下の通りであり、得られた発泡体を以下の方法で評価した。
【0093】
[原料]
LDPE:日本ポリエチレン(株)製「ノバテックLF443」
g-LDPE:三菱ケミカル(株)製「リンクロンXCF710N」
LLDPE:宇部丸善ポリエチレン(株)製「ユメリット 1520F」
EVA:東ソー(株)製「ウルトラセン630」
タルク小:日本タルク(株)製「ミクロエースK-1」、中心粒径(D50)8μm
タルク中:日本タルク(株)製「ローズタルク」、中心粒径(D50)16μm
タルク大:日本タルク(株)製「タルクMS-KY」、中心粒径(D50)25μm
ステアリン酸アミド(収縮防止剤):花王(株)製「脂肪酸アマイドT」
ステアリン酸モノグリセライド(収縮防止剤):理研ビタミン(株)製「リケマールH-100」
架橋促進剤:三菱ケミカル(株)製「リンクロンLZ113」。
【0094】
[見掛密度]
水中置換法により、見掛密度を測定した。すなわち、発泡体の空気中の重さ(g)と水中での重さ(g)とに基づいて、以下の式により見掛密度を算出した。
【0095】
見掛密度ρf(g/cm3)=A/(A-B)×(ρw-d)+d
[式中、Aは試料の空気中の重さ(g)、Bは試料の水中の重さ(g)、ρwは水の密度(g/cm3)、dは空気の密度(g/cm3)を示す]。
【0096】
[発泡倍率]
発泡倍率は、発泡体の前記見掛密度ρf(g/cm3)を測定して、以下の式により算出した。
【0097】
発泡倍率(倍)=ρ/ρf
[式中、ρは発泡前の樹脂密度(g/cm3)を示す]。
【0098】
測定した発泡倍率について、以下の基準で発泡性を評価した。
【0099】
(発泡性基準)
〇:発泡倍率が20倍以上
×:発泡倍率が20倍未満。
【0100】
[連続気泡率]
得られた発泡体を、予め重量を測定し、水中に静置した後、-400mmHgの減圧下に1分間放置して、連続気泡構造の中に水を浸透させた。減圧状態から大気圧力に戻し、発泡体の表面に付着した水を除去して重量を測定した後、以下の式により算出した。
【0101】
連続気泡率(%)={(w2-w1)/ρw}/(w1/ρf-w1/ρr)
(式中、w2は吸水後の発泡体重量、w1は吸水前の発泡体重量、ρfは発泡体の見掛密度、ρrは発泡体に使用されている樹脂組成物の密度、ρwは測定時の水の密度を示す)。
【0102】
測定した連続気泡率について、以下の基準で連続気泡性を評価した。
【0103】
◎:30体積%以上(連続気泡率が高い)
〇:10体積%以上30体積%未満
△:4体積%以上10体積%未満
×:4体積%未満。
【0104】
[ゴム硬度]
タイプFOのデュロメータ((株)テクロック製、「GS-744G TYPE FO」)を用いて、発泡体のゴム硬度を測定し、以下の基準で柔軟性を評価した。
【0105】
〇:ゴム硬度が90以下(柔軟性が高い)
×:ゴム硬度が90を超える(柔軟性が低い)。
【0106】
[圧縮硬さ]
引張試験機((株)島津製作所製)を用いて、JIS K 6767-1999に準拠して測定した。試験条件は荷重:5kgf(500N)、圧子:100mmφ、速度:50mm/min、温度:23℃である。測定方法は、以下の通りである。
【0107】
(1)サンプルをカットして試験機にセットし(試験片:10mm角、高さが4mmになるように重ねる)、
(2)サンプル接触面までアッパー(UPPER)を下げ、試験力を0にしてから0.5N荷重をかけ、高さ(厚み)を測定し、
(3)試験速度50mm/minで(2)で測定した高さの50%まで圧縮して1秒間維持し(この時のピーク値を最大荷重とする)、
(4)圧縮硬さ(N/cm2)を求める。
【0108】
得られた圧縮硬さについて、以下の基準で評価した。
【0109】
〇:5以下(柔軟性および復元性が極めて良好)
×:5を超える(柔軟性および復元性が不良)。
【0110】
[柔軟性の官能評価]
柔軟性の官能評価は、以下の基準で評価した。
【0111】
◎:柔軟性および復元性が極めて良好
〇:柔軟性および復元性が良好
△:柔軟性および復元性が不良
×:柔軟性および復元性が極めて不良。
【0112】
[総合評価]
総合評価は、以下の基準で評価した。
【0113】
〇:全ての評価が〇または◎である(柔軟で高発泡倍率である)
×:△または×の評価がある。
【0114】
[気泡の状態観察]
走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテク製「型式:SU5000」)を用いて、加速電圧:3.0kV、スポット強度:30、導電処理:Ptの条件で、カミソリで加工した発泡体の断面を観察した。
【0115】
[復元性(永久圧縮歪み)]
発泡体を厚み方向に初期厚みから変形率25%まで圧縮(初期厚みの75%の厚みまで圧縮)して22時間放置する。圧縮終了(圧縮の解放)60秒後の厚みを測定し、下記式で復元性を算出した。さらに、圧縮終了10分後、20分後、30分後の厚みも同様に測定し、復元性を算出した。
【0116】
復元性(%)=(T1/T0)×100
[式中、T1:圧縮終了所定時間後の厚み(mm)、T0:初期厚み(mm)を示す]。
【0117】
比較例1~2および実施例1~3
表1に示す割合で、オレフィン系樹脂、タルクおよび収縮防止剤をタンデム押出機(ジーエムエンジニアリング(株)製、スクリュー径36mm、L/D=23)に供給し、温度60~110℃(押出機出口直後のヘッド内の温度)、圧力4~18MPaの条件で、溶融混練し、この押出機の途中からイソブタンガス22質量部を注入した後、発泡適正温度まで冷却し、先端に取り付けた金型(リングダイ)の口金から押出発泡し、発泡体を得た。
【0118】
比較例3~5および実施例4~8
表1に示す割合で、オレフィン系樹脂、タルク、収縮防止剤および架橋促進剤を前記押出機に供給し、温度190℃・圧力17MPaで溶融混練し、前記押出機の先端近くに設けた発泡剤を樹脂組成物に圧入混練して口径36mmの第2段タンデム押出機で樹脂温度が110℃程度になるまで冷却しダイスより大気中に押出して丸形状に押出成形し、発泡体を得た。さらに、室温で10日間放置して空気中の水分により水架橋させた。
【0119】
比較例および実施例で得られた発泡体の評価結果を表1に示す。
【0120】
【0121】
表1の結果から明らかなように、実施例の発泡体は、高発泡倍率であり、柔軟性および復元性に優れている。
【0122】
比較例3(タルク小径、配合量小)、実施例3(タルク中径、配合量大)および実施例6(タルク大径、配合量中)で得られた発泡体の断面について、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果をそれぞれ
図1~3に示す。タルクの配合量は、比較例3、実施例6、実施例3の順に多くなるが、
図1~3のSEM写真の結果から明らかなように、実施例3の気泡のサイズと実施例6の気泡サイズとが同等であるのに対して、比較例3の気泡サイズは実施例3および6よりも小さかった。また、
図2および3から明らかなように、実施例3および6では気泡の奥で破れが観察できたのに対して、
図1から明らかなように、比較例3では破れは観察できなかった。これらの結果から、タルクの配合量を増加させると、気泡サイズが小さくなり、タルクの径を小径から中径や大径に大きくすると、気泡膜に破れが発生することが確認できた。
【0123】
比較例5、実施例4および実施例7で得られた発泡体について、復元性を評価した結果を表2に示し、圧縮終了60秒後の復元性を比較したグラフを
図4に示し、復元性の時間変化を示すグラフを
図5に示す。
【0124】
【0125】
表2および
図4~5の結果から、実施例4および実施例7の発泡体は、比較例5の発泡体に比べて、復元性に優れていた。
本開示の発泡体は、弾力性、柔軟性、断熱性などの性質を利用して各種の用途、例えば、軽量物用緩衝材、果実用緩衝材、隙間または目地部に充填するための充填材、合併浄化槽用の充填材、キャップなどに利用できる。なかでも、柔軟性、復元性に優れるため、隙間または目地部に充填するための目地材として特に有用である。