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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108478
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/16 20060101AFI20230728BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
H05K1/16 B
H05K3/46 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009624
(22)【出願日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】児玉 博明
(72)【発明者】
【氏名】西脇 千朗
【テーマコード(参考)】
4E351
5E316
【Fターム(参考)】
4E351AA02
4E351AA03
4E351BB11
4E351CC06
4E351CC07
4E351DD04
4E351DD19
4E351GG02
5E316AA32
5E316AA43
5E316BB13
5E316CC08
5E316CC09
5E316CC13
5E316CC32
5E316CC37
5E316DD23
5E316DD24
5E316EE01
5E316FF04
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG28
5E316JJ04
(57)【要約】
【課題】配線基板の品質向上。
【解決手段】実施形態の配線基板1は、第1面2a及び第1面2aと反対側の第2面2bを有していて第1貫通孔1aを備える第1絶縁層2と、第1貫通孔1aを充填する磁性体7と、磁性体7を貫く第2貫通孔1bの内部に形成されている第1スルーホール導体51と、第1面2a側及び第2面2b側に設けられていて第1スルーホール導体51と連結されている第1導体パッド4a1、4a2と、を含んでいる。配線基板1は、さらに、第1面2aの上に形成されていて磁性体7を覆っている第2絶縁層32及び第2面2bの上に形成されていて磁性体7を覆っている第3絶縁層33を含み、第2貫通孔1bは第2絶縁層32及び第3絶縁層33を貫通しており、第1導体パッド4a1、4a2は第2絶縁層32及び第3絶縁層33それぞれの表面32a、33aに形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び前記第1面と反対側の第2面を有していて第1貫通孔を備える第1絶縁層と、
前記第1貫通孔を充填する磁性体と、
前記磁性体を貫く第2貫通孔の内部に形成されている第1スルーホール導体と、
前記第1面側及び前記第2面側に設けられていて前記第1スルーホール導体と連結されている第1導体パッドと、
を含む配線基板であって、
前記配線基板は、さらに、前記第1面の上に形成されていて前記磁性体を覆っている第2絶縁層及び前記第2面の上に形成されていて前記磁性体を覆っている第3絶縁層を含み、
前記第2貫通孔は前記第2絶縁層及び前記第3絶縁層を貫通しており、
前記第1導体パッドは前記第2絶縁層及び前記第3絶縁層それぞれの表面に形成されている。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板であって、さらに、
前記第2絶縁層の前記表面に形成されている前記第1導体パッド及び前記第1導体パッド以外の導体パターンを含む第1導体層と、
前記第3絶縁層の前記表面に形成されている前記第1導体パッド及び前記第1導体パッド以外の導体パターンを含む第2導体層と、を含み、
前記第1導体層の全部が前記第2絶縁層の上に形成されており、
前記第2導体層の全部が前記第3絶縁層の上に形成されている。
【請求項3】
請求項1記載の配線基板であって、
前記配線基板は、さらに、前記第1スルーホール導体の内部を充填する樹脂体を含んでいる。
【請求項4】
請求項1記載の配線基板であって、前記第2絶縁層及び前記第3絶縁層それぞれの前記表面が粗化されている。
【請求項5】
請求項1記載の配線基板であって、前記第2貫通孔における前記磁性体を貫く部分の内壁面と前記第2絶縁層又は前記第3絶縁層を貫く部分の内壁面とは略面一である。
【請求項6】
請求項1記載の配線基板であって、
前記第1絶縁層は、補強材及び前記補強材に含侵されている樹脂を含み、
前記第2絶縁層及び前記第3絶縁層は、補強材に含侵されていない樹脂によって構成されている。
【請求項7】
請求項1記載の配線基板であって、
前記第2絶縁層及び前記第3絶縁層は、樹脂及び前記樹脂に添加されている無機フィラーを含み、
前記第2絶縁層及び前記第3絶縁層における前記無機フィラーの含有率は、前記第1絶縁層における無機フィラーの含有率よりも高い。
【請求項8】
請求項1記載の配線基板であって、さらに、前記第1絶縁層を貫く第3貫通孔の内部に形成されている第2スルーホール導体を含み、
前記第2スルーホール導体は前記第3貫通孔の内壁に露出する前記第1絶縁層の上に形成されている。
【請求項9】
請求項8記載の配線基板であって、さらに、
前記第1面側及び前記第2面側に設けられていて前記第2スルーホール導体と連結されている第2導体パッドを含み、
前記第3貫通孔は前記第2絶縁層及び前記第3絶縁層を貫通しており、
前記第2導体パッドは前記第2絶縁層及び前記第3絶縁層それぞれの前記表面に形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コア基板の開口に充填された磁性体樹脂を含むインダクタ内蔵基板が開示されている。磁性体樹脂に形成された貫通孔内にスルーホール導体が形成されている。スルーホール導体に繋がっているスルーホールランドは磁性体樹脂の上に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-178095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるインダクタ内蔵基板では、使用条件によってはスルーホールランドとコア基板との密着強度が十分でないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の配線基板は、第1面及び前記第1面と反対側の第2面を有していて第1貫通孔を備える第1絶縁層と、前記第1貫通孔を充填する磁性体と、前記磁性体を貫く第2貫通孔の内部に形成されている第1スルーホール導体と、前記第1面側及び前記第2面側に設けられていて前記第1スルーホール導体と連結されている第1導体パッドと、を含んでいる。前記配線基板は、さらに、前記第1面の上に形成されていて前記磁性体を覆っている第2絶縁層及び前記第2面の上に形成されていて前記磁性体を覆っている第3絶縁層を含んでいる。そして、前記第2貫通孔は前記第2絶縁層及び前記第3絶縁層を貫通しており、前記第1導体パッドは前記第2絶縁層及び前記第3絶縁層それぞれの表面に形成されている。
【0006】
本発明の実施形態によれば、磁性体を貫くスルーホール導体と連結される導体パッドのその下地からの剥離を防止し、それにより配線基板の品質を向上させ得ることがある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態の配線基板の一例を示す断面図。
図2図1のII部の拡大図。
図3図1のIII部の拡大図。
図4】本発明の他の実施形態の配線基板の一例を示す断面図。
図5A】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図5B】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図5C】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図5D】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図5E】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図5F】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図5G】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図5H】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図5I】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図5J】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図5K】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態の配線基板が図面を参照しながら説明される。図1には、一実施形態の配線基板の一例である配線基板1を示す断面図が示されている。なお、実施形態の配線基板は、後に参照される図4に示されるように、図1の例の配線基板1の両面それぞれに形成される任意の層数の絶縁層及び導体層をさらに含み得る。
【0009】
図1に示されるように、本実施形態の配線基板1は、絶縁層2(第1絶縁層)と、絶縁層2を通るスルーホール導体51(第1スルーホール導体)と、スルーホール導体51と連結されている第1導体パッド(導体パッド4a1及び導体パッド4a2)と、を含んでいる。図1の例の配線基板1は複数のスルーホール導体51を含んでいる。絶縁層2は、絶縁層2の厚さ方向と直交する2つの主面の一方である第1面2aと、2つの主面の他方であって第1面2aと反対側の第2面2bとを有している。絶縁層2は、第1面2aと第2面2bとの間で絶縁層2を貫く貫通孔1a(第1貫通孔)を備えている。スルーホール導体51は、貫通孔1aの中を通っている。第1導体パッド(導体パッド4a1及び導体パッド4a2)は、絶縁層2の厚さ方向における両側に、すなわち第1面2a側及び第2面2b側それぞれに設けられている。導体パッド4a1は第1面2a側に設けられており、導体パッド4a2は第2面2b側に設けられている。
【0010】
絶縁層2を貫く貫通孔1aの内部は磁性体7で充填されている。すなわち、配線基板1は、さらに、貫通孔1aを充填する磁性体7を含んでいる。磁性体7には、磁性体7を、絶縁層2の厚さ方向、すなわち配線基板1の厚さ方向に貫く貫通孔1b(第2貫通孔)が形成されている。スルーホール導体51は貫通孔1bの内部に形成されている。スルーホール導体51及び貫通孔1bは、磁性体7を介して絶縁層2を貫いている。
【0011】
図1に例示の絶縁層2には、さらに貫通孔1c(第3貫通孔)が形成されている。貫通孔1cは、絶縁層2を絶縁層2の厚さ方向に貫いている。配線基板1は、さらに、スルーホール導体52(第2スルーホール導体)と、スルーホール導体52と連結されている第2導体パッド(導体パッド4b1及び導体パッド4b2)と、を含んでいる。図1の配線基板1は複数のスルーホール導体52を含んでいる。スルーホール導体52は貫通孔1cの内部に形成されている。第2導体パッド(導体パッド4b1及び導体パッド4b2)は、絶縁層2の厚さ方向における両側に、すなわち第1面2a側及び第2面2b側それぞれに設けられている。導体パッド4b1は第1面2a側に設けられており、導体パッド4b2は第2面2b側に設けられている。
【0012】
導体パッド4a1及び導体パッド4a2は、スルーホール導体51の所謂スルーホールランドであってもよく、スルーホールランドと一体的に形成された、スルーホールランドを含む導体パッドであってもよい。同様に、導体パッド4b1及び導体パッド4b2は、スルーホール導体52の所謂スルーホールランドであってもよく、スルーホールランドと一体的に形成された、スルーホールランドを含む導体パッドであってもよい。スルーホール導体のスルーホールランド(スルーホールパッドと称されることもある)は、スルーホール導体に貫かれる絶縁層の表面において座切れが生じないように設けられる導体パターンである。スルーホールランドは、設計上、平面視でスルーホール導体の外周よりも外側に外縁を有するように、すなわち、平面視でスルーホール導体を内包するように設けられる導体パターンである。
【0013】
配線基板1は、さらに、絶縁層2の第1面2aの上に形成されている絶縁層32(第2絶縁層)、及び絶縁層2の第2面2bの上に形成されている絶縁層33(第3絶縁層)を含んでいる。絶縁層32は、絶縁層2の第1面2aに露出する磁性体7の端面7aを覆っている。絶縁層33は、絶縁層2の第2面2bに露出する磁性体7の端面7bを覆っている。
【0014】
図1の配線基板1は、さらに、絶縁層32の上に形成されている導体層41(第1導体層)及び絶縁層33の上に形成されている導体層42(第2導体層)を含んでいる。導体層41は、絶縁層32における絶縁層2と反対側の表面32a上に形成されている。導体層42は、絶縁層33における絶縁層2と反対側の表面33a上に形成されている。
【0015】
導体層41は、絶縁層32の表面32aに形成されている導体パッド4a1及び導体パッド4b1、並びに、導体パッド4a1以外の導体パターンである導体パターン4c及び配線パターン4eを含んでいる。配線パターン4eは、図1において右側に配置されている導体パッド4a1と導体パッド4b1とを接続している。
【0016】
一方、導体層42は、絶縁層33の表面33aに形成されている導体パッド4a2及び導体パッド4b2、並びに、導体パッド4a2以外の導体パターンである導体パターン4dを含んでいる。
【0017】
実施形態の説明では、配線基板1の厚さ方向において絶縁層2から遠い側は、「外側」、「上側」もしくは「上方」、又は単に「上」とも称され、絶縁層2に近い側は、「内側」、「下側」もしくは「下方」、又は単に「下」とも称される。さらに、各導体層、各導体パッド、各導体パターン、及び各絶縁層において、絶縁層2と反対側を向く表面は「上面」とも称され、絶縁層2側を向く表面は「下面」とも称される。また、絶縁層2の厚さ方向、すなわち配線基板1の厚さ方向は「Z方向」とも称される。
【0018】
スルーホール導体51は、貫通孔1bの内壁上に形成されていて貫通孔1bの内壁を覆っている。図1の例においてスルーホール導体51は、貫通孔1bの内壁を略全面的に覆う膜状の導電体からなる。スルーホール導体51は、中空部を備えた筒状の形体を有している。スルーホール導体51は、Z方向に沿っていて磁性体7に覆われている外周側面を有している。スルーホール導体51の外周側面は貫通孔1bの内壁すなわち磁性体7に接している。
【0019】
スルーホール導体51の内部は樹脂体6で充填されており、スルーホール導体52の内部は樹脂体61で充填されている。すなわち、図1の配線基板1は、さらに、貫通孔1bのうちのスルーホール導体51に占められていない領域を充填する樹脂体6、及び、貫通孔1cのうちのスルーホール導体52に占められていない領域を充填する樹脂体61を含んでいる。
【0020】
スルーホール導体52は、貫通孔1cの内壁上に形成されていて貫通孔1cの内壁を覆っている。スルーホール導体52は貫通孔1cの内壁に露出する絶縁層2の上に形成されている。図1の例においてスルーホール導体52は、貫通孔1cの内壁を略全面的に覆う膜状の導電体からなる。スルーホール導体52も、中空部を備えた筒状の形体を有している。スルーホール導体52は、Z方向に沿っていて絶縁層2に覆われている外周側面を有しており、その外周側面は貫通孔1cの内壁すなわち絶縁層2に接している。
【0021】
スルーホール導体51、52、樹脂体6、並びに磁性体7は、それぞれ、Z方向と直交する断面において、例えば略円環形、又は略円形などの任意の断面形状を有し得る。従って、スルーホール導体51、52、樹脂体6、並びに磁性体7は、円柱状又は円筒状の形状を有し得る。しかし、本実施形態において、各スルーホール導体、樹脂体6、並びに磁性体7は、任意の断面形状を有する柱状体又は筒状体であり得る。
【0022】
絶縁層2、絶縁層32、及び絶縁層33は、それぞれ、任意の絶縁性樹脂によって形成されている。絶縁性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)、又はフェノール樹脂などが例示される。これら絶縁性樹脂を用いて形成される各絶縁層は、シリカなどの無機フィラーを含んでいてもよい。
【0023】
図1の例では、絶縁層2は補強材(芯材)21を含んでいる。従って、絶縁層2は、補強材21及び補強材21に含侵されている上述のエポキシ樹脂、BT樹脂、又はフェノール樹脂のような樹脂を含んでいる。補強材21としては、例えばガラス繊維、アラミド繊維、アラミド不織布などが例示されるが、補強材21はこれらに限定されない。一方、図1の例では、絶縁層32及び絶縁層33は補強材を含んでいない。すなわち、絶縁層32及び絶縁層33は、補強材に含侵されていない樹脂によって構成されている。しかし、実施形態の配線基板1において、絶縁層2が補強材21を含んでいなくてもよく、絶縁層32及び絶縁層33が上述したガラス繊維などからなる補強材を含んでいてもよい。
【0024】
導体パッド4a1及び導体パッド4b1を含む導体層41、導体パッド4a2及び導体パッド4b2を含む導体層42、スルーホール導体51、並びにスルーホール導体52は、適切な導電性を有する任意の金属で形成されている。これら各導体層及び各スルーホール導体を形成する金属としては、銅やニッケルなどが例示される。しかし、各導体層及び各スルーホール導体を形成する金属は、これらに限定されない。
【0025】
導体層41及び導体層42、スルーホール導体51、並びにスルーホール導体52は、無電解めっき膜又はスパッタリング膜、及び、電解めっき膜などで構成される多層構造を有し得る。図1の例では、導体層41は金属膜40(下層膜)及び金属膜41a(上層膜)を含んでいる。導体層42は金属膜40(下層膜)及び金属膜42a(上層膜)を含んでいる。スルーホール導体51は、導体パッド4a1を構成する金属膜40及び導体パッド4a2を構成する金属膜40と一体的に形成されている。スルーホール導体52は、導体パッド4b1を構成する金属膜40及び導体パッド4b2を構成する金属膜40と一体的に形成されている。金属膜40、スルーホール導体51、52、並びに、金属膜41a、42aそれぞれは、後述されるように、さらに多層構造を有し得る。
【0026】
スルーホール導体51又はスルーホール導体52の内部を充填する樹脂体6、61は、スルーホール導体51、52それぞれの内部を満たし得る任意の材料で形成され得る。樹脂体6、61は、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、及びフェノール樹脂などの絶縁性樹脂を含み得るが、樹脂体6、61の材料はこれらに限定されない。また、樹脂体6、61は、銀粒子などの導電性粒子とエポキシ樹脂などとを含む導電性樹脂を含んでいてもよい。
【0027】
樹脂体6又は樹脂体61によって、貫通孔1b及び貫通孔1cのうちのスルーホール導体51又はスルーホール導体52に占められていない空き領域が埋められる。そのため、絶縁層2が多層配線基板の一部(例えばコア基板)として用いられる場合に、各スルーホール導体の真上にビア導体(図示せず)を形成することができる。また、樹脂体6、61によって、スルーホール導体51、52と絶縁層2との間に生じがちな熱応力が軽減されることがある。
【0028】
磁性体7は、少なくとも、絶縁層2よりも磁性を帯び易い材料を含んでいる。磁性体7は、例えば、鉄、酸化鉄、コバルト、又はニッケルなどの強磁性を示す材料を含んでいる。磁性体7は、これらの強磁性を示す材料の他に、エポキシ樹脂又はウレタン樹脂などの樹脂材料を含み得る。例えば磁性体7は、磁性粒子(磁性フィラー)とエポキシ樹脂とを含み得る。磁性粒子としては、前述した酸化鉄、コバルト又はニッケルなどの強磁性を示す金属の粒子が例示される。
【0029】
貫通孔1aを充填する磁性体7は、磁性体7を貫く貫通孔1b内に形成されているスルーホール導体51の側面を覆っている。強磁性を示す材料を含む磁性体7でスルーホール導体51の側面が覆われるので、スルーホール導体51に電流が流れると、その周囲には高い密度で磁束が生じ得る。従ってスルーホール導体51を用いて、高いインダクタンスを有するインダクタを配線基板1に形成することができる。
【0030】
図1に示されるように、本実施形態では、貫通孔1bは絶縁層32及び絶縁層33を貫通している。さらに、貫通孔1bの内部に形成されているスルーホール導体51も、絶縁層32及び絶縁層33を貫通している。そして、スルーホール導体51と連結されている導体パッド4a1及び導体パッド4a2は、絶縁層32及び絶縁層33それぞれの表面に形成されている。すなわち、導体パッド4a1は、スルーホール導体51の側面を覆っている磁性体7の端面7a上には直接形成されておらず、及び導体パッド4a2も磁性体7の端面7b上には直接形成されていない。導体パッド4a1は、絶縁層32を介して磁性体7の端面7aの上に形成されている。導体パッド4a2は、絶縁層33を介して磁性体7の端面7bの上に形成されている。本実施形態では、このように導体パッド4a1及び導体パッド4a2が磁性体7の上に直接形成されていない。そのため、スルーホール導体51に連結されている第1導体パッド(導体パッド4a1及び導体パッド4a2)のその下地からの剥がれが防止されると考えられる。その理由が以下に説明される。
【0031】
導体パッド4a1及び導体パッド4a2は、絶縁層2や絶縁層32及び絶縁層33などの絶縁層に対する密着性と同様の密着性を、磁性体7に対して有し得ないことがある。例えば、導体パッド4a1及び導体パッド4a2のうち、その下地と接する部分(後に参照する図2の例では最下層である下層金属膜501)が無電解めっきで形成される場合、無電解めっきの前には、被めっき表面へのパラジウムなどの触媒の吸着性を向上させるために、被めっき表面の電荷を調整する活性化処理が行われる。磁性体7のような強磁性材料を含む磁性体の表面及び絶縁層2のような樹脂体の表面の上に無電解めっき膜が形成される場合、磁性体の表面が適切に活性化されず、触媒が十分な密着強度で磁性体の表面に付着しないことがある。その結果、十分でない密着強度で磁性体の表面に付着した触媒の周囲に析出する無電解めっき膜と磁性体との間に十分な密着強度が得られないことがある。そのため、無電解めっき膜と、その下地(磁性体)との間で、外力や熱応力などによって剥離が生じることがある。
【0032】
これに対して本実施形態では、前述したように、磁性体7を貫くスルーホール導体51に連結されている第1導体パッド(導体パッド4a1及び導体パッド4a2)は、磁性体7及び絶縁層2を覆う絶縁層32又は絶縁層33の上に形成されている。導体パッド4a1及び導体パッド4a2を構成する金属膜40は、適切に活性化処理された絶縁層32の表面32a及び絶縁層33の表面33aの上に十分な強度で付着した触媒の周囲に形成される。従って、導体パッド4a1及び導体パッド4a2が、絶縁層32又は絶縁層33を介して、磁性体7との間に十分な密着強度を有し得る。従って、本実施形態では、導体パッド4a1及び導体パッド4a2における下地(絶縁層32及び絶縁層33並びにそれらの下側の磁性体7)からの剥離は生じ難い。そのため、本実施形態では、導体パッド4a1及び導体パッド4a2の剥がれが抑制され、配線基板1の品質が向上すると考えられる。
【0033】
なお、貫通孔1b内では、スルーホール導体51が磁性体7の側面上に形成されている。しかし、貫通孔1b内に、剥離の起点となるようなスルーホール導体51の縁部は存在しない。しかもスルーホール導体51は、絶縁層32又は絶縁層33と良好に密着する絶縁層32上又は絶縁層33上の金属膜40と連結されている。そのため、熱などによるスルーホール導体51のZ方向の伸縮が制限される。また、スルーホール導体51における、Z方向と直交し且つ側面に沿う方向(周方向)の伸縮は、筒状の形体のために自ずと制限される。さらに、磁性体7から離間する方向へのスルーホール導体51の挙動は、図1の例では、樹脂体6によって制限されることがある。そのため、配線基板1において、磁性体7からのスルーホール導体51の剥離は生じ難いと考えられる。
【0034】
図1に例示の配線基板1では、貫通孔1cも絶縁層32及び絶縁層33を貫通しており、さらに、貫通孔1cの内部に形成されているスルーホール導体52も、絶縁層32及び絶縁層33を貫通している。そして、スルーホール導体52と連結されている導体パッド4b1及び導体パッド4b2は絶縁層32及び絶縁層33それぞれの表面に形成されている。すなわち、スルーホール導体52は磁性体7のような磁性体を貫かずに絶縁層2を直接貫いているが、スルーホール導体52と連結されている第2導体パッド(導体パッド4b1及び導体パッド4b2)は、絶縁層32の表面32aの上、又は絶縁層33の表面33aの上に形成されている。そのため、導体パッド4a1又は導体パッド4a2と導体パッド4b1又は導体パッド4b2とを接続する例えば配線パターン4eのような導体パターンが、絶縁層32又は絶縁層33の有無による段差を跨がずに形成され得る。従って、配線パターン4eのような導体パターンにクラックなどが生じ難いと考えられる。
【0035】
さらに、図1の配線基板1では、導体層41に含まれる導体パターンの全部が、絶縁層2の第1面2a又は磁性体7の端面7aの上ではなく、絶縁層32の上に形成されている。同様に、導体層42に含まれる導体パターンの全部が、絶縁層2の第2面2b又は磁性体7の端面7bの上ではなく、絶縁層33の上に形成されている。導体層41及び導体層42が含む導体パターンのいずれもが、絶縁層32又は絶縁層33の有無による段差を跨いで形成されていないので、導体パターンのクラックなどが生じ難いと考えられる。
【0036】
前述したように、図1の例では、絶縁層2は補強材21を含み、絶縁層32、33は補強材を含んでいない。配線基板1が多層配線基板のコア基板として用いられる場合に、補強材21を含む絶縁層2によって適切な剛性が提供されると考えられる。一方、補強材を含まない絶縁層32及び絶縁層33それぞれの表面32a、33aには、金属箔を介することなく良好な密着性を有する無電解めっき膜が形成され得る。従って、金属箔を用いないセミアディティブ法によって、微細な配線パターンを有する導体層41及び導体層42が形成されると考えられる。
【0037】
図2及び図3を参照して、スルーホール導体51及びスルーホール導体52がさらに説明される。図2及び図3には、図1のII部及びIII部の拡大図が示されている。
【0038】
図2及び図3に示されるように、スルーホール導体51及びスルーホール導体52は、それぞれ、下層金属膜501と、下層金属膜501上に形成された上層金属膜502とを含んでいる。上層金属膜502は、例えば電解めっきで形成されためっき膜である。下層金属膜501は、上層金属膜502が電解めっきによって形成される際に給電層として機能する。下層金属膜501は、例えば、無電解めっき又はスパッタリングなどで形成される。しかし、スルーホール導体51、52は、無電解めっきによって形成された金属膜だけを含んでいてもよい。
【0039】
スルーホール導体51及びスルーホール導体52は、それぞれ、絶縁層32上の金属膜40及び絶縁層33上の金属膜40と一体的に形成されている。そのため、金属膜40も、下層金属膜501及び上層金属膜502を含む2層構造を有している。絶縁層32の上の上層金属膜502上に金属膜41aが形成されている。一方、絶縁層33の上の上層金属膜502上に金属膜42aが形成されている。樹脂体6における絶縁層32側の端面が金属膜41aに覆われており、絶縁層33側の端面が金属膜42aに覆われている。金属膜41a及び金属膜42aは、スルーホール導体51、52それぞれに対する所謂蓋めっき膜である。金属膜41a及び金属膜42aが形成されているので、後述されるように絶縁層2が多層配線基板の一部として用いられる場合に、各スルーホール導体と、その真上に形成されるビア導体(図示せず)とが電気的に接続され得る。
【0040】
金属膜41a及び金属膜42aは、それぞれ、下層金属膜431と、下層金属膜431上に形成された上層金属膜432とを含んでいる。上層金属膜432は、例えば電解めっきで形成されためっき膜である。下層金属膜431は、上層金属膜432が電解めっきによって形成される際に給電層として機能する。下層金属膜432は、例えば、無電解めっき又はスパッタリングなどで形成される。しかし、金属膜41a及び金属膜42aは、それぞれ、無電解めっきによって形成された金属膜だけを含んでいてもよい。
【0041】
図2及び図3の例では、導体層41及び導体層42は、それぞれ、4層構造を有し得る。すなわち、各導体層は、下層金属膜501、上層金属膜502、下層金属膜431、そして上層金属膜432によって構成されている。
【0042】
絶縁層32は、導体層41と、磁性体7及び絶縁層2との間に介在し、絶縁層33は、導体層42と、磁性体7及び絶縁層2との間に介在している。絶縁層32及び絶縁層33それぞれの厚さTは、例えば、15μm以上、50μm以下である。
【0043】
図2の例では、絶縁層32及び絶縁層33は、前述したエポキシ樹脂などの樹脂3a及び樹脂3aに添加されている無機フィラー3bを含んでいる。無機フィラー3bは、例えばシリカ、アルミナ、又はムライトなどである。一方、図2及び図3には図示されていないが、絶縁層2も、無機フィラー3bのようなフィラーを含み得る。本実施形態の配線基板1では、絶縁層32及び絶縁層33における無機フィラー3bの含有率は、絶縁層2における無機フィラーの含有率よりも高くてもよい。
【0044】
無機フィラー3bが多く含まれていると、樹脂3aだけが含まれるよりも、絶縁層32、33が導体層41、42と近い熱膨張率を有し得ることがある。従って、絶縁層32、33が比較的多くの無機フィラー3bを含んでいると、熱応力による絶縁層32、33と導体層41、42との剥離が生じ難いことがある。なお、「絶縁層32及び絶縁層33における無機フィラー3bの含有率は、絶縁層2における無機フィラーの含有率よりも高(い)」は、絶縁層2が意図的に添加された無機フィラーを含まない場合に、絶縁層32、33が無機フィラー3bを含むことを含んでいる。このように本実施形態では、無機フィラーの含有率が異なる絶縁層同士(絶縁層2と、絶縁層32及び絶縁層33と)が直接積層されていてもよい。
【0045】
図2の例では、絶縁層32の表面32a及び絶縁層33の表面33aは、それぞれ、粗化された粗化面である。例えば表面32a及び表面33aは、配線基板1の製造過程で粗化されていてもよく、絶縁層2の第1面2a及び第2面2bよりも高い面粗度を有していてもよい。一方、絶縁層2の第1面2a及び第2面2bは、配線基板1の製造過程で研磨された研磨面であってもよい。
【0046】
主に樹脂を含む絶縁層32、33の表面32a及び表面33aそれぞれの上には、金属からなる導体層41又は導体層42が形成される。高い面粗度がもたらすアンカー効果によって、異種材料同士である導体層41、42と絶縁層32、33との密着性が向上すると考えられる。従って、導体層41、42と絶縁層32、33との間の剥離が一層生じ難いと考えられる。なお、絶縁層2の第1面2a及び第2面2bの上には、絶縁層2と同様に樹脂を主に含む絶縁層32又は絶縁層33が積層されるので、アンカー効果が大きく作用しなくても、絶縁層2と、絶縁層32及び絶縁層33との間の剥離は生じ難いと考えられる。
【0047】
図2に示されるように、貫通孔1bにおける磁性体7を貫く部分の内壁面1baと、貫通孔1bにおける絶縁層32又は絶縁層33を貫く部分の内壁面1bbとは略面一である。従って、スルーホール導体51のクラック、特に下層金属膜501のクラックや破断などが生じ難いと考えられる。同様に、図3に示されるように、貫通孔1cにおける絶縁層2を貫く部分の内壁面1caと、貫通孔1cにおける絶縁層32又は絶縁層33を貫く部分の内壁面1cbとは略面一である。従って、スルーホール導体52のクラック、特に下層金属膜501のクラックや破断などが生じ難いと考えられる。
【0048】
なお、図1などに例示の配線基板1は、スルーホール導体51及びスルーホール導体52を備えているが、実施形態の配線基板は、磁性体7を貫くスルーホール導体51だけを備えていてもよい。
【0049】
つぎに、図4を参照して、図1に例示の実施形態と異なる他の実施形態が説明される。図4には、他の実施形態の一例である配線基板10が示されている。図4に示されるように、配線基板10は、コア基板11と、ビルドアップ層12と、ビルドアップ層13とを備える多層配線基板である。コア基板11は、図1に例示される一実施形態の配線基板1の絶縁層2、32、33、及び導体層41、42によって構成されている。絶縁層32及び導体層41の上にビルドアップ層12が形成され、絶縁層33及び導体層42の上にビルドアップ層13が形成されている。ビルドアップ層12及びビルドアップ層13は、それぞれ、コア基板11上に積層されている1組以上の絶縁層及び導体層を含んでいる。
【0050】
図4の例においてビルドアップ層12は、絶縁層32の表面32a上に積層されている絶縁層14、絶縁層14上に形成されている導体層16、並びに、絶縁層14及び導体層16の上に交互に積層されている2つの絶縁層15及び2つの導体層17を含んでいる。ビルドアップ層13は、絶縁層33の表面33a上に積層されている絶縁層14、絶縁層14上に形成されている導体層16、並びに、絶縁層14及び導体層16の上に交互に積層されている2つの絶縁層15及び2つの導体層17を含んでいる。
【0051】
配線基板10では、さらに、ビルドアップ層12及びビルドアップ層13それぞれの上に、ソルダーレジスト19が形成されている。ソルダーレジスト19には、ビルドアップ層12、13それぞれの最表層の導体層17の一部を露出させる開口19aが設けられている。開口19a内には、例えばはんだなどの導電性の材料を用いてバンプ17bが形成されている。
【0052】
また、ビルドアップ層12、13それぞれの絶縁層14には、絶縁層14を貫通するビア導体18aが形成されている。ビア導体18aは、絶縁層14を挟む導体層41又は導体層42と、導体層16とを接続している。さらに、ビルドアップ層12、13それぞれの絶縁層15には、絶縁層15を貫通するビア導体18bが形成されている。ビア導体18bは、絶縁層15を挟む導体層17同士、又は絶縁層15を挟む導体層16と導体層17とを接続している。
【0053】
絶縁層14及び絶縁層15は、絶縁層2、32、33と同様に、任意の絶縁性樹脂によって形成される。絶縁性樹脂としては、エポキシ樹脂、BT樹脂、又はフェノール樹脂などが例示される。絶縁層14、15は、シリカなどの無機フィラーを含んでいてもよく、ガラス繊維やアラミド繊維などによる織布状又は不織布状の補強材を含んでいてもよい。
【0054】
導体層16、17は、銅又はニッケルなどの任意の金属によって形成される。導体層16、17それぞれは、金属箔、無電解めっき膜若しくはスパッタリング膜、及び/又は電解めっき膜などを含む多層構造を有し得る。また、導体層16、17は、それぞれ、任意の導体パターンを含み得る。ビルドアップ層12、13それぞれの最表層の導体層17は、外部の電子部品や配線基板などが接続される接続パッド17aを含んでいる。接続パッド17aを露出させるようにソルダーレジスト層19に開口19aが設けられており、接続パッド17a上にバンプ17bが形成されている。
【0055】
ビア導体18a、18bは、それぞれの上側の導体層16又は導体層17と一体的に形成されており、例えば無電解めっき膜及び電解めっき膜によって形成されている。図4の例では、一部のビア導体18aは、コア基板11のスルーホール導体(スルーホール導体51又はスルーホール導体52)の上に積層されている。
【0056】
図4の例のように、磁性体7に側面を覆われたスルーホール導体51を含む、絶縁層2と絶縁層32と絶縁層33との積層体は、多層配線基板のコア基板を構成していてもよい。絶縁層3、32、33、及び導体層41、42によって構成されるコア基板11の両面それぞれには、3組よりも少ない、又は3組よりも多い、絶縁層及び導体層が積層されていてもよい。
【0057】
つぎに、図1の配線基板1の製造方法の一例が、図5A図5Kを参照して説明される。
【0058】
図5Aに示されるように、配線基板1の絶縁層2を含む製品領域Pと、製品領域Pの周囲に設けられて配線基板1の製造工程で用いられる非製品領域NPとを含む出発基板100が用意される。例えば、エポキシ樹脂、BT樹脂、又はフェノール樹脂などの樹脂と、ガラス繊維又はアラミド繊維などの補強材21とを含む絶縁基板とその両面に積層された銅箔とを含む両面銅張積層板が用意される。そして、その銅箔が例えばエッチングで除去されることによって、出発基板100が用意される。或いは、銅箔などを備えない樹脂基板が出発基板100として用意されてもよい。上述の樹脂を含む出発基板100は、例えばシリカ、アルミナ、又はムライトなどからなる無機フィラー(図示せず)を含んでいてもよい。
【0059】
そして、図5Aの例では、非製品領域NPに1又は複数の第1基準孔D1が形成される。第1基準孔D1は、任意の位置基準(例えば出発基板100の外形)を参照して、例えば、炭酸ガスレーザー光が照射されるレーザー加工、又はドリル加工などによって形成される。第1基準孔D1は、後工程における各種の処理や加工時の位置基準として用いられ得る。
【0060】
図5Bに示されるように、出発基板100の製品領域Pを構成する絶縁層2を貫通する貫通孔1a(第1貫通孔)が形成される。貫通孔1aは、例えば非製品領域NP内の第1基準孔D1を参照して、スルーホール導体51及び磁性体7(図1参照)が設けられるべき所定の位置に形成される。貫通孔1aは、第1基準孔D1と同様に、例えば、炭酸ガスレーザー光が照射されるレーザー加工、又はドリル加工などによって形成される。
【0061】
図5Cに示されるように、貫通孔1aの内部が磁性体7で充填される。貫通孔1aの内壁面が磁性体7によって覆われる。例えば、鉄、酸化鉄、又はコバルト、又はニッケルなどの強磁性を示す材料からなる粒子を含むエポキシ樹脂又はウレタン樹脂などが、絶縁層2の第1面2a側、及び第1面2a側と反対側の第2面2b側のいずれか又は両方から注入される。必要に応じて、第1面2a側及び第2面2b側のうちの一方から供給されたエポキシ樹脂などが、貫通孔1aを通じて他方から吸引されてもよい。貫通孔1a内に注入された強磁性材を含む樹脂は、必要に応じて加熱などによって固化される。その結果、貫通孔1a内を充填する磁性体7が形成される。
【0062】
なお、図5Cの例では、第1基準孔D1は磁性体7で充填されていない。例えばマスキングなどによって、磁性体7による第1基準孔D1の充填を防ぐことができる。なお、第1基準孔D1は貫通孔1aと共に磁性体7で充填されてもよい。
【0063】
磁性体7における絶縁層2の第1面2a側及び第2面2b側それぞれの端面は、必要に応じて化学機械研磨などの任意の方法で研磨される。磁性体7の端面の研磨の進行に伴って、絶縁層2の第1面2a及び第2面2bも、磁性体7の端面と共に研磨されてもよい。磁性体7の両端面が平坦化されると共に、磁性体7の両端面それぞれと、第1面2a及び第2面2bとが、好ましくは略面一にされる。この研磨によって、磁性体7の両端面及び絶縁層2の第1面2a及び第2面2bが研磨面となり得る。
【0064】
図5Dに示されるように、絶縁層2の第1面2a上に絶縁層32が形成され、絶縁層2の第2面2b上に絶縁層33が形成される。磁性体7の端面7aが絶縁層32で覆われ、端面7bが絶縁層33で覆われる。例えば、フィルム状に成形されたエポキシ樹脂が、絶縁層2の第1面2a及び第2面2bに積層されて熱圧着される。その結果、絶縁層2の第1面2a上に絶縁層32が形成され、第2面2b上に絶縁層33が形成される。例えば、ガラス繊維やアラミド繊維などからなる補強材を含まない絶縁層32、33が形成される。また、絶縁層32、33は、上述のエポキシ樹脂又はBT樹脂などに添加された、シリカ、アルミナ、又はムライトなどからなる無機フィラーを含んでいてもよい。絶縁層32及び絶縁層33は、BT樹脂又はフェノール樹脂を絶縁層2の両面に供給することによって形成されてもよい。図5Dの例では、第1基準孔D1が、絶縁層32及び/又は絶縁層33を構成する樹脂によって充填されている。
【0065】
図5Eに示されるように、非製品領域NPに、1又は複数の第2基準孔D2が形成される。第2基準孔D2は、貫通孔1aを参照して位置決めが行われるレーザー加工又はドリル加工などによって形成される。貫通孔1aは絶縁層32及び絶縁層33に覆われているので、例えばX線を用いて貫通孔1aが認識されてもよい。貫通孔1aは、前述したように絶縁層2と異なる鉄などを含む材料からなる磁性体7で充填されているので、貫通孔1aを容易に認識することができる。貫通孔1aを参照して位置決めを行うことによって、貫通孔1aに対して正確な相対位置に第2基準孔D2が形成され得る。第2基準孔D2は、後工程、例えば、以下に説明される貫通孔1b及び貫通孔1cの形成工程で位置決めの基準として用いられ得る。
【0066】
図5Fに示されるように、貫通孔1b及び貫通孔1cが形成される。貫通孔1bはスルーホール導体51(図1参照)が形成されるべき所定の位置、すなわち、貫通孔1a内の磁性体7を貫通する位置に形成される。貫通孔1cは、スルーホール導体52(図1参照)が形成されるべき所定の位置に形成される。
【0067】
貫通孔1b、1cは、貫通孔1aと同様に、例えば、炭酸ガスレーザー光によるレーザー加工、又はドリル加工などによって形成される。貫通孔1b及び貫通孔1cいずれの形成においても、第2基準孔D2が認識され、第2基準孔D2の位置に基づいて、貫通孔1b及び貫通孔1cそれぞれを穿孔する位置が決定される。そのため、互いに対して正確な相対位置に貫通孔1b及び貫通孔1cが形成され得る。また、第2基準孔D2に基づいて形成される貫通孔1b及び貫通孔1cは、それぞれ、貫通孔1aに対しても、正確な相対位置に形成され得る。
【0068】
貫通孔1b、1cの形成後、好ましくは、貫通孔1b、1c内の樹脂残渣(スミア)が、例えばアルカリ性過マンガン酸塩を含む溶液を用いるデスミア処理によって除去される。さらに、例えばデスミア処理と同様の化学処理によって、絶縁層32の表面32a及び絶縁層33の表面33aが粗化される。その結果、絶縁層32の表面32a及び絶縁層33の表面33aが、絶縁層2の第1面2a及び第2面2bよりも高い面粗度を有し得る。絶縁層32及び絶縁層33と、導体層41及び導体層42(図1参照)との良好な密着性が得られると考えられる。
【0069】
図5Gに示されるように、スルーホール導体51及びスルーホール導体52が、貫通孔1b内及び貫通孔1c内にそれぞれ形成される。具体的には、下層金属膜501及び上層金属膜502が、貫通孔1b、1cそれぞれの内壁面に形成される。その結果、それぞれ2層の金属膜からなるスルーホール導体51及びスルーホール導体52が形成される。なお、図5Gには、図5Fに示されるVG部に相当する部分におけるスルーホール導体51、52の形成後の状態が示されている。後に参照される図5H及び図5Iにも、図5Gに示される部分の各工程における状態が示されている。
【0070】
下層金属膜501及び上層金属膜502は、それぞれ、絶縁層32の表面32aの上、及び絶縁層33の表面33aの上にも形成されている。絶縁層32上の下層金属膜501及び上層金属膜502は導体層41(図1参照)の一部を構成する。絶縁層33上の下層金属膜501及び上層金属膜502は導体層42(図1参照)の一部を構成する。下層金属膜501は、例えばスパッタリングや無電解めっきによって形成される。上層金属膜502は、例えば下層金属膜501を給電層として用いる電解めっきによって形成される。下層金属膜501及び上層金属膜502は、銅やニッケルなどの適切な導電性を有する金属で形成され得る。
【0071】
図5Hに示されるように、スルーホール導体51の内部が樹脂体6で充填され、スルーホール導体52の内部が樹脂体61で充填される。例えば、エポキシ、アクリル又はフェノールなどの樹脂が、絶縁層32側及び絶縁層33側のいずれか又は両方から、スルーホール導体51、52それぞれの内部に注入される。必要に応じて、絶縁層32側及び絶縁層33側のうちの一方から供給されたエポキシ樹脂などが他方から吸引されてもよい。各スルーホール導体の内部に注入された樹脂は、必要に応じて加熱などによって固化される。その結果、樹脂体6、61が形成される。図示されていないが、樹脂体6、61の形成時には、第2基準孔D2(図5F参照)が充填されないように第2基準孔D2がマスキングされてもよい。
【0072】
必要に応じて、樹脂体6、61における絶縁層32側及び絶縁層33側それぞれの端面が、化学機械研磨などの任意の方法で研磨される。樹脂体6、61の両端面それぞれと、絶縁層32及び絶縁層33それぞれの上の上層金属膜502の表面とが、好ましくは略面一にされる。
【0073】
図5Iに示されるように、絶縁層32の表面32a上に導体層41が形成され、絶縁層33の表面33a上に導体層42が形成される。具体的には、スルーホール導体51及び/又はスルーホール導体52と一体的に形成されている、絶縁層32又は絶縁層33の上の上層金属膜502の上に、下層金属膜431が形成される。さらに下層金属膜431上に上層金属膜432が形成される。下層金属膜431及び上層金属膜432は、絶縁層32側及び絶縁層33側それぞれにおいて、樹脂体6、61の端面上にも形成される。樹脂体6、61の両端面が、下層金属膜431及び上層金属膜432に覆われる。下層金属膜431及び上層金属膜432によって、スルーホール導体51、52それぞれに対する、所謂蓋めっきが形成される。
【0074】
下層金属膜431は、例えばスパッタリングや無電解めっきによって形成される。上層金属膜432は、例えば下層金属膜431を給電層として用いる電解めっきによって形成される。下層金属膜431及び上層金属膜432は、銅やニッケルなどの適切な導電性を有する金属で形成され得る。絶縁層32の表面32a上に導体層41が形成され、絶縁層33の表面33a上に導体層42が形成される。導体層41、42は、それぞれ、絶縁層32、33上において、下層金属膜501、上層金属膜502、下層金属膜431、及び上層金属膜432からなる4層構造を有している。
【0075】
図5Jに示されるように、導体層41及び導体層42それぞれの上に、導体層41又は導体層42が有するべき導体パターンに応じた開口M1を有するエッチングマスクMが形成される。なお、図5J及び以下で参照される図5Kでは、図5Iに示される、絶縁層32又は絶縁層33の上の下層金属膜501及び上層金属膜502は、金属膜40として1層で示されている。同様に、絶縁層32の上の下層金属膜431及び上層金属膜432は金属膜41aとして、絶縁層33の上の下層金属膜431及び上層金属膜432は金属膜42aとして、それぞれ1層で示されている。
【0076】
開口M1は、開口M1に応じた開口を有する露光マスク(図示せず)を用いる露光及び現像によって設けられる。図示されない露光マスクの位置合わせは、好ましくは、第2基準孔D2を用いて行われる。すなわち、第2基準孔D2が認識され、第2基準孔D2の位置に基づいて、エッチングマスクMとなるレジスト膜を介して、導体層41、42の上に露光マスクが位置づけられる。そのため、スルーホール導体51、52に対して正確な位置に開口M1が設けられ得る。導体層41において導体パッド4a1及び導体パッド4b1(図5K参照)などの導体パターンを構成する部分はエッチングマスクMで覆われる。同様に、導体層42において導体パッド4a2及び導体パッド4b2(図5K参照)などの導体パターンを構成する領域は、エッチングマスクMで覆われる。
【0077】
図5Kに示されるように、導体層41及び導体層42がパターニングされる。導体層41及び導体層42の不要部分、すなわちエッチングマスクMの開口M1(図5J参照)に露出する部分が、例えばウェットエッチングやドライエッチングによって除去される。その結果、導体層41に、導体パッド4a1、4b1、配線パターン4e、及び導体パターン4c、などの所定の導体パターンが形成される。導体層42に、導体パッド4a2、4b2、及び導体パターン4dなどの所定の導体パターンが形成される。
【0078】
導体層41及び導体層42のパターニング後、ルーターなどによって、非製品領域NPが切除される。例えば以上の工程を経ることによって、図1の配線基板1が完成する。
【0079】
なお、先に参照した図4に例示の配線基板10は、図5Kの状態の配線基板1の一面にビルドアップ層12を形成すると共に、他面にビルドアップ層13を形成することによって形成される。ビルドアップ層12、13それぞれは、例えば、フィルム状のエポキシ樹脂若しくはプリプレグなどの積層による絶縁層の形成と、アディティブ法又はサブトラクティブ法などの任意の方法による導体層及びビア導体の形成とを繰り返すことによって形成され得る。
【0080】
実施形態の配線基板は、各図面に例示される構造、並びに、本明細書において例示される構造、形状、及び材料を備えるものに限定されない。前述したように、実施形態の配線基板は、任意の数の導体層及び絶縁層を含み得る。各スルーホール導体の内部は中空でなくてもよく、各スルーホール導体の内部が樹脂体で充填されていなくてもよい。すなわち、各スルーホール導体はめっき金属などからなる柱状体であってもよい。導体層41、42は、金属膜40だけで構成されていてもよい。すなわち、各スルーホール導体が所謂蓋めっきで覆われていなくてもよい。また、絶縁層32、33は、絶縁層2の第1面2a及び第2面2bそれぞれの全面に形成されずに磁性体7の端面上だけに形成されていてもよい。すなわち、磁性体を貫くスルーホール導体に連結されている導体パッドと磁性体との間だけに絶縁層32、33のような絶縁層が介在していてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1、10 配線基板
1a 貫通孔(第1貫通孔)
1b 貫通孔(第2貫通孔)
1ba 磁性体を貫く部分の内壁面
1bb 第2又は第3絶縁層を貫く部分の内壁面
1c 貫通孔(第3貫通孔)
2 絶縁層(第1絶縁層)
2a 第1面
2b 第2面
21 補強材
32 絶縁層(第2絶縁層)
32a 表面
33 絶縁層(第3絶縁層)
33a 表面
3a 樹脂
3b 無機フィラー
41 導体層(第1導体層)
4a1、4a2 導体パッド(第1導体パッド)
4b1、4b2 導体パッド(第2導体パッド)
42 導体層(第2導体層)
4c、4d 第1導体パッド以外の導体パターン
51 スルーホール導体(第1スルーホール導体)
52 スルーホール導体(第2スルーホール導体)
6、61 樹脂体
7 磁性体
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図5I
図5J
図5K