(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108479
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/42 20060101AFI20230728BHJP
H05K 3/40 20060101ALI20230728BHJP
H05K 1/16 20060101ALI20230728BHJP
H05K 1/11 20060101ALI20230728BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
H05K3/42 610C
H05K3/40 E
H05K3/42 620A
H05K1/16 B
H05K1/11 H
H05K3/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009625
(22)【出願日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】児玉 博明
(72)【発明者】
【氏名】西脇 千朗
【テーマコード(参考)】
4E351
5E317
【Fターム(参考)】
4E351AA03
4E351BB11
4E351BB26
4E351BB33
4E351BB35
4E351BB49
4E351CC03
4E351CC06
4E351DD04
4E351DD19
4E351DD31
4E351EE16
4E351FF18
4E351GG09
5E317AA11
5E317AA21
5E317AA24
5E317BB02
5E317BB12
5E317BB15
5E317CC32
5E317CC53
5E317GG03
(57)【要約】
【課題】良好な品質の配線基板の製造。
【解決手段】実施形態の配線基板の製造方法は、第1絶縁層2を用意することと、第1絶縁層2に第1貫通孔1aを形成することと、第1貫通孔1aを磁性体7で充填することと、磁性体7を貫く第2貫通孔1bを形成することと、第2貫通孔1b内に第1スルーホール導体51を形成することと、第1絶縁層2の第1面2a側及び第2面2b側それぞれに、第1スルーホール導体51に連続する第1導体パッド4a1、4a2を形成することと、を含み、さらに、磁性体7を覆う第2絶縁層32及び第3絶縁層33を、それぞれ、第1面2a及び第2面2bに形成することを含んでいる。第1スルーホール導体51は第2及び第3の絶縁層32、33を貫通するように形成され、第1導体パッド4a1、4a2は第2及び第3の絶縁層32、33それぞれを介して磁性体7の上に形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び前記第1面と反対側の第2面を有する第1絶縁層を用意することと、
前記第1絶縁層を貫く第1貫通孔を形成することと、
前記第1貫通孔を磁性体で充填することと、
前記磁性体を貫く第2貫通孔を形成することと、
前記第2貫通孔の内部に第1スルーホール導体を形成することと、
前記第1絶縁層の第1面側及び第2面側それぞれに、前記第1スルーホール導体に連続する第1導体パッドを形成することと、
を含む配線基板の製造方法であって、
前記製造方法は、さらに、前記第2貫通孔の形成の前に、
前記磁性体を覆う第2絶縁層を前記第1面に形成することと、
前記磁性体を覆う第3絶縁層を前記第2面に形成することと、
を含み、
前記第1スルーホール導体は、前記第2絶縁層及び前記第3絶縁層を貫通するように形成され、
前記第1導体パッドは、前記第2絶縁層及び前記第3絶縁層それぞれを介して前記磁性体の上に形成される。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板の製造方法であって、さらに、
前記第1絶縁層、前記第2絶縁層、及び前記第3絶縁層を貫く第3貫通孔を形成することと、
前記第3貫通孔の内部に第2スルーホール導体を形成することと、
を含み、
前記第2貫通孔及び前記第3貫通孔は、同一の位置基準に基づいて特定されるそれぞれの位置に形成される。
【請求項3】
請求項2記載の配線基板の製造方法であって、前記第2貫通孔及び前記第3貫通孔は、一つの穿孔工程で連続的に形成される。
【請求項4】
請求項2記載の配線基板の製造方法であって、さらに、前記第2貫通孔及び前記第3貫通孔両方の形成の後に、前記第2貫通孔内及び前記第3貫通孔内の樹脂残渣を除去するデスミア処理を行うことを含んでいる。
【請求項5】
請求項2記載の配線基板の製造方法であって、さらに、
前記第2スルーホール導体に連続する第2導体パッドを前記第1導体パッドと共に形成することを含み、
前記第1導体パッド及び前記第2導体パッドを形成することは、所定の開口を有するマスクを、前記位置基準を用いて前記第2絶縁層又は前記第3絶縁層の上に位置合わせすることを含んでいる。
【請求項6】
請求項2記載の配線基板の製造方法であって、さらに、前記位置基準として用いられる識別要素を、前記第1貫通孔に基づく位置、又は前記第1貫通孔に対する所定の相対的な位置に形成される基準孔に基づく位置に形成することを含んでいる。
【請求項7】
請求項1記載の配線基板の製造方法であって、さらに、前記第2絶縁層における前記第1絶縁層と反対側の表面及び前記第3絶縁層における前記第1絶縁層と反対側の表面を粗化することを含んでいる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コア基板の開口に充填された磁性体樹脂を含むインダクタ内蔵基板の製造方法が開示されている。磁性体樹脂に形成された貫通孔内にスルーホール導体が形成される。スルーホール導体に繋がっているスルーホールランドは磁性体樹脂の上に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の方法で製造されるインダクタ内蔵基板では、使用条件によってはスルーホールランドとコア基板との密着強度が十分でないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の配線基板の製造方法は、第1面及び前記第1面と反対側の第2面を有する第1絶縁層を用意することと、前記第1絶縁層を貫く第1貫通孔を形成することと、前記第1貫通孔を磁性体で充填することと、前記磁性体を貫く第2貫通孔を形成することと、前記第2貫通孔の内部に第1スルーホール導体を形成することと、前記第1絶縁層の第1面側及び第2面側それぞれに、前記第1スルーホール導体に連続する第1導体パッドを形成することと、を含んでいる。本発明の配線基板の製造方法は、さらに、前記第2貫通孔の形成の前に、前記磁性体を覆う第2絶縁層を前記第1面に形成することと、前記磁性体を覆う第3絶縁層を前記第2面に形成することと、を含んでいる。そして。前記第1スルーホール導体は、前記第2絶縁層及び前記第3絶縁層を貫通するように形成され、前記第1導体パッドは、前記第2絶縁層及び前記第3絶縁層それぞれを介して前記磁性体の上に形成される。
【0006】
本発明の実施形態によれば、磁性体を貫くスルーホール導体と連続する導体パッドのその下地からの剥離が防止される、良好な品質の配線基板を製造することができると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法によって製造される配線基板の一例を示す断面図。
【
図2】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法のステップの一例を示すフローチャート。
【
図5A】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図5B】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図5C】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図5D】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図5E】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図5F】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図5G】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図5H】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図5I】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図5J】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図5K】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図6】本発明の他の実施形態の配線基板の製造方法によって製造される配線基板の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態の配線基板の製造方法が、図面を参照しながら説明される。
図1には、一実施形態の配線基板の製造方法によって製造される配線基板の一例である配線基板1が断面図にて示されている。
図2には、一実施形態の配線基板の製造方法による製造工程の一例がフローチャートで示されている。なお、実施形態の配線基板の製造方法を用いて、後に参照される
図6に示されるように、
図1の例の配線基板1の両面それぞれに任意の層数の絶縁層及び導体層を含む配線基板も製造され得る。先ず、
図1及び
図2を参照して、実施形態の配線基板の製造方法の概要が説明される。
【0009】
図1及び
図2に示されるように、本実施形態の配線基板の製造方法は、第1面2a及び第1面2aと反対側の第2面2bを有する第1絶縁層2を用意することと(
図2のステップST1)、絶縁層2を貫く第1貫通孔1aを形成することと(
図2のステップST2)、貫通孔1aを磁性体7で充填することと(
図2のステップST3)、を含んでいる。以下、本実施形態の配線基板の製造方法は単に「本方法」とも称される。本方法は、さらに、磁性体7を覆う第2絶縁層32を第1絶縁層2の第1面2aに形成することと(
図2のステップST4)、磁性体7を覆う第3絶縁層33を第1絶縁層2の第2面2bに形成することと(
図2のステップST5)、を含んでいる。本方法は、さらに、磁性体7を貫く第2貫通孔1bを形成することと(
図2のステップST6)、第2貫通孔1bの内部に第1スルーホール導体51を形成することと(
図2のステップST7)、第1スルーホール導体51に連続する第1導体パッド4a1、4a2を形成することと(
図2のステップST8)、を含んでいる。
【0010】
図1に示されるように、第1導体パッド4a1、4a2は、第1絶縁層2の第1面2a側及び第2面2b側それぞれに形成される。また、
図2に示されるように、第2絶縁層32及び第3絶縁層33は、第2貫通孔1bの形成の前に形成される。
図1及び
図2に示されるように、第1スルーホール導体51は、第2絶縁層32及び第3絶縁層33を貫通するように形成される。そして、本方法では、
図1及び
図2に示されるように、第1導体パッド4a1、4a2は、第2絶縁層32及び第3絶縁層33それぞれを介して磁性体7の上に形成される。なお、
図2のステップST4とステップST5の順序は逆でもよく、同時でもよい。また、ステップST7とステップST8は、同時、又は部分的に同時に行われてもよい。
【0011】
実施形態の説明では、配線基板1の厚さ方向において第1絶縁層2から遠い側は、「外側」、「上側」もしくは「上方」、又は単に「上」とも称され、第1絶縁層2に近い側は、「内側」、「下側」もしくは「下方」、又は単に「下」とも称される。さらに、各導体層、各導体パッド、及び各絶縁層において、第1絶縁層2と反対側を向く表面は「上面」とも称され、第1絶縁層2側を向く表面は「下面」とも称される。また、第1絶縁層2の厚さ方向、すなわち配線基板1の厚さ方向は「Z方向」とも称される。なお、以下の説明において、図面に符号が付されている構成要素については、特に必要とされる場合を除いて、「第1」、「第2」、及び「第3」の表記は省略されることがある。
【0012】
実施形態の配線基板の製造方法が容易に理解されるように、
図1に例示の配線基板1の構造が説明される。
図1の配線基板1は、第1面2a及び第2面2bを有する絶縁層2(第1絶縁層)と、スルーホール導体51(第1スルーホール導体)と、スルーホール導体51と連結されている導体パッド4a1、4a2(第1導体パッド)と、を含んでいる。絶縁層2は貫通孔1a(第1貫通孔)を備えており、スルーホール導体51は貫通孔1aの中を通っている。配線基板1は、さらに、貫通孔1aを充填する磁性体7を含んでいる。磁性体7には、磁性体7を貫く貫通孔1b(第2貫通孔)が形成されている。スルーホール導体51は貫通孔1bの内部に形成されていて磁性体7を貫通している。
【0013】
配線基板1は、さらに、絶縁層2の第1面2aの上に形成されていて磁性体7の端面7aを覆う絶縁層32(第2絶縁層)、及び絶縁層2の第2面2bの上に形成されていて磁性体7の端面7bを覆う絶縁層33(第3絶縁層)を含んでいる。貫通孔1b及びスルーホール導体51は絶縁層32及び絶縁層33を貫通している。導体パッド4a1及び導体パッド4a2は、絶縁層32及び絶縁層33それぞれの表面に形成されている。
【0014】
図1の絶縁層2には、さらに、絶縁層2を貫く貫通孔1c(第3貫通孔)が備えられており、貫通孔1cの内部には、スルーホール導体52(第2スルーホール導体)が形成されている。貫通孔1c及びスルーホール導体52は絶縁層32及び絶縁層33を貫通している。スルーホール導体52と連結されている導体パッド4b1及び導体パッド4b2(第2導体パッド)が、絶縁層32の表面32a及び絶縁層33の表面33aに、それぞれ形成されている。
【0015】
図1の配線基板1は、絶縁層32の表面32aの上に形成されている導体層41(第1導体層)、及び絶縁層33の表面33aの上に形成されている導体層42(第2導体層)を含んでいる。導体層41は導体パッド4a1及び導体パッド4b1を含んでいる。導体層42は導体パッド4a2及び導体パッド4b2を含んでいる。
【0016】
導体パッド4a1及び導体パッド4a2は、スルーホール導体51の所謂スルーホールランドであってもよく、スルーホールランドと一体的に形成された、スルーホールランドを含む導体パッドであってもよい。同様に、導体パッド4b1及び導体パッド4b2は、スルーホール導体52の所謂スルーホールランドであってもよく、スルーホールランドと一体的に形成された、スルーホールランドを含む導体パッドであってもよい。スルーホール導体のスルーホールランド(スルーホールパッドと称されることもある)は、スルーホール導体に貫かれる絶縁層の表面において座切れが生じないように設けられる導体パターンである。スルーホールランドは、設計上、平面視でスルーホール導体の外周よりも外側に外縁を有するように、すなわち、平面視でスルーホール導体を内包するように設けられる導体パターンである。「平面視」は、配線基板1を、その厚さ方向に沿う視線で見ることを意味している。
【0017】
スルーホール導体51は貫通孔1bの内壁を覆う膜状の導電体からなり、その外周側面は磁性体7に接している。スルーホール導体52は貫通孔1cの内壁を覆う膜状の導電体からなる。スルーホール導体52は貫通孔1cの内壁に露出する絶縁層2の上に形成されており、その外周側面は絶縁層2に接している。スルーホール導体51、52は、中空部を備えた筒状の形体を有している。スルーホール導体51の内部は樹脂体6で充填されており、スルーホール導体52の内部は樹脂体61で充填されている。
【0018】
絶縁層2、絶縁層32、及び絶縁層33は、それぞれ、任意の絶縁性樹脂によって形成されている。絶縁性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)、又はフェノール樹脂などが例示される。これら絶縁性樹脂を用いて形成される各絶縁層は、シリカなどの無機フィラーを含んでいてもよい。
図1の例の絶縁層2は補強材(芯材)21を含んでいる。補強材21としては、例えばガラス繊維、アラミド繊維、アラミド不織布などが例示されるが、補強材21はこれらに限定されない。図示されていないが、絶縁層32及び絶縁層33が上述したガラス繊維などからなる補強材を含んでいてもよい。
【0019】
導体パッド4a1及び導体パッド4b1を含む導体層41、導体パッド4a2及び導体パッド4b2を含む導体層42、スルーホール導体51、並びにスルーホール導体52は、適切な導電性を有する任意の金属で形成されている。これら各導体層及び各スルーホール導体を形成する金属としては、銅やニッケルなどが例示される。しかし、各導体層及び各スルーホール導体を形成する金属は、これらに限定されない。
【0020】
図1の例では、導体層41は金属膜40(下層膜)及び金属膜41a(上層膜)を含んでいる。導体層42は金属膜40(下層膜)及び金属膜42a(上層膜)を含んでいる。スルーホール導体51は、導体パッド4a1を構成する金属膜40及び導体パッド4a2を構成する金属膜40と一体的に形成されている。スルーホール導体52は、導体パッド4b1を構成する金属膜40及び導体パッド4b2を構成する金属膜40と一体的に形成されている。
【0021】
磁性体7は、少なくとも、絶縁層2よりも磁性を帯び易い材料を含んでいる。磁性体7は、例えば、鉄、酸化鉄、コバルト、又はニッケルなどの強磁性を示す材料を含んでいる。磁性体7は、これらの強磁性を示す材料の他に、エポキシ樹脂又はウレタン樹脂などの樹脂材料を含み得る。例えば磁性体7は、上述した、鉄、酸化鉄、コバルト、又はニッケルなどからなる磁性粒子(磁性フィラー)とエポキシ樹脂とを含み得る。磁性体7でスルーホール導体51の側面が覆われるので、スルーホール導体51を用いて、高いインダクタンスを有するインダクタを配線基板1に形成することができる。
【0022】
図3及び
図4には、
図1のIII部及びIV部の拡大図が示されている。
図3及び
図4に示されるように、スルーホール導体51及びスルーホール導体52は、それぞれ、下層金属膜501と、下層金属膜501上に形成された上層金属膜502とを含んでいる。スルーホール導体51及びスルーホール導体52は、それぞれ、絶縁層32上の金属膜40及び絶縁層33上の金属膜40と一体的に形成されている。そのため、金属膜40も、下層金属膜501及び上層金属膜502を含む2層構造を有している。
【0023】
絶縁層32の上の上層金属膜502上に金属膜41aが形成されている。一方、絶縁層33の上の上層金属膜502上に金属膜42aが形成されている。金属膜41a及び金属膜42aは、スルーホール導体51、52それぞれに対する所謂蓋めっき膜である。金属膜41a及び金属膜42aは、それぞれ、下層金属膜431と、下層金属膜431上に形成された上層金属膜432とを含んでいる。導体層41及び導体層42は、それぞれ、下層金属膜501、上層金属膜502、下層金属膜431、及び上層金属膜432からなる4層構造を有している。
【0024】
図3の例では、絶縁層32及び絶縁層33は、前述したエポキシ樹脂などの樹脂3a及び樹脂3aに添加されている無機フィラー3bを含んでいる。無機フィラー3bは、例えばシリカ、アルミナ、又はムライトなどである。無機フィラー3bが含まれていると、樹脂3aだけが含まれるよりも、絶縁層32、33が導体層41、42と近い熱膨張率を有し得る。なお、
図3及び
図4には図示されていないが、絶縁層2も、絶縁層32、33と同様の含有率で、又は絶縁層32、33よりも少ない含有率で無機フィラー3bのようなフィラーを含んでいてもよい。本実施形態の配線基板の製造方法では、無機フィラーの含有率が異なる絶縁層同士(絶縁層2と、絶縁層32及び絶縁層33と)が直接積層されてもよい。
【0025】
図3の例では、絶縁層32の表面32a及び絶縁層33の表面33aは、それぞれ、粗化された粗化面である。例えば表面32a及び表面33aは、絶縁層2の第1面2a及び第2面2bよりも高い面粗度を有し得る。主に樹脂を含む絶縁層32、33の表面32a及び表面33aそれぞれの上には、金属からなる導体層41又は導体層42が形成される。高い面粗度がもたらすアンカー効果によって、異種材料同士である導体層41、42と絶縁層32、33との密着性が向上すると考えられる。なお、絶縁層2の第1面2a及び第2面2bの上には、絶縁層2と同様に樹脂を主に含む絶縁層32又は絶縁層33が積層されるので、アンカー効果が大きく作用しなくても、絶縁層2と、絶縁層32及び絶縁層33との間では十分な密着性が得られると考えられる。
【0026】
つぎに、
図1の配線基板1を例に、本実施形態の配線基板の製造方法の詳細が、
図5A~
図5Kを参照して説明される。
【0027】
図5Aに示されるように、第1面2a及び第2面2bを有する絶縁層2が用意される。
図5Aの例では、絶縁層2を含む製品領域Pと、製品領域Pの周囲に設けられて配線基板1の製造工程で用いられる非製品領域NPとを含む出発基板100が用意されている。例えば、エポキシ樹脂、BT樹脂、又はフェノール樹脂などの樹脂と、ガラス繊維又はアラミド繊維などの補強材21とを含む絶縁基板とその両面に積層された銅箔とを含む両面銅張積層板(図示せず)が用意される。そして、その銅箔がエッチングなどで除去されることによって、絶縁層2、又は絶縁層2を含む出発基板100が用意される。或いは、銅箔などを備えない樹脂基板が、絶縁層2、又は絶縁層2を含む出発基板100として用意されてもよい。上述の樹脂を含む絶縁層2は、例えばシリカ、アルミナ、又はムライトなどからなる無機フィラー(図示せず)を含んでいてもよい。
【0028】
そして、
図5Aの例では、非製品領域NPに1又は複数の第1基準孔D1が形成される。第1基準孔D1は、任意の位置基準(例えば出発基板100の外形)を参照して、例えば、炭酸ガスレーザー光やYAGレーザー光が照射されるレーザー加工、又はドリル加工などによって形成される。第1基準孔D1は、後工程における各種の処理や加工時の位置基準として用いられ得る。
【0029】
図5Bに示されるように、絶縁層2を貫く貫通孔1a(第1貫通孔)が形成される。貫通孔1aは、例えば非製品領域NP内の第1基準孔D1を参照して、スルーホール導体51及び磁性体7(
図1参照)が設けられるべき所定の位置に形成される。第1基準孔D1を参照して形成される貫通孔1aは、第1基準孔D1に対して所定の相対的な位置に形成される。換言すると、第1基準孔D1は、貫通孔1aに対して所定の相対的な位置に形成されている。貫通孔1aは、第1基準孔D1と同様に、例えば、炭酸ガスレーザー光やYAGレーザー光が照射されるレーザー加工、又はドリル加工などによって形成される。
【0030】
図5Cに示されるように、貫通孔1aの内部が磁性体7で充填される。貫通孔1aの内壁面が磁性体7によって覆われる。例えば、鉄、酸化鉄、又はコバルト、又はニッケルなどの強磁性を示す材料からなる粒子を含むエポキシ樹脂又はウレタン樹脂などが、絶縁層2の第1面2a側及び第2面2b側のいずれか又は両方から注入される。必要に応じて、第1面2a側及び第2面2b側のうちの一方から供給されたエポキシ樹脂などが、貫通孔1aを通じて他方から吸引されてもよい。貫通孔1a内に注入された強磁性材を含む樹脂は、必要に応じて加熱などによって固化される。その結果、貫通孔1a内を充填する磁性体7が形成される。
【0031】
なお、
図5Cの例では、第1基準孔D1は磁性体7で充填されていない。例えばマスキングなどによって、磁性体7による第1基準孔D1の充填を防ぐことができる。なお、第1基準孔D1は貫通孔1aと共に磁性体7で充填されてもよい。
【0032】
磁性体7における絶縁層2の第1面2a側及び第2面2b側それぞれの端面は、必要に応じて化学機械研磨などの任意の方法で研磨される。磁性体7の端面の研磨の進行に伴って、絶縁層2の第1面2a及び第2面2bも、磁性体7の端面と共に研磨されてもよい。磁性体7の両端面が平坦化されると共に、磁性体7の両端面それぞれと、第1面2a及び第2面2bとが、好ましくは略面一にされる。この研磨によって、磁性体7の両端面及び絶縁層2の第1面2a及び第2面2bが研磨面となり得る。
【0033】
図5Dに示されるように、絶縁層2の第1面2a上に磁性体7の端面7aを覆う絶縁層32が形成される。絶縁層2の第2面2b上には、磁性体7の端面7bを覆う絶縁層33が形成される。例えば、フィルム状に成形されたエポキシ樹脂が、絶縁層2の第1面2a及び第2面2bに積層されて熱圧着される。その結果、絶縁層2の第1面2a上に絶縁層32が形成され、第2面2b上に絶縁層33が形成される。絶縁層32及び絶縁層33は、BT樹脂又はフェノール樹脂を絶縁層2の両面に供給することによって形成されてもよい。絶縁層32及び絶縁層33は、それぞれ、例えば15μm以上、50μm以下の厚さを有するように形成される。例えば、ガラス繊維やアラミド繊維などからなる補強材を含まない絶縁層32、33が形成される。絶縁層32、33は、シリカ、アルミナ、又はムライトなどからなる無機フィラーを含んでいてもよい。
図5Dの例では、第1基準孔D1が、絶縁層32及び/又は絶縁層33を構成する樹脂によって充填されている。
【0034】
図5Eに示されるように、非製品領域NPに、1又は複数の第2基準孔D2が形成される。第2基準孔D2は、貫通孔1aを参照して位置決めが行われるレーザー加工又はドリル加工などによって形成される。すなわち、第2基準孔D2は、貫通孔1aに基づく位置に形成される。貫通孔1aは絶縁層32及び絶縁層33に覆われているので、例えばX線を用いて貫通孔1aが認識されてもよい。貫通孔1aは、前述したように絶縁層2と異なる鉄などを含む材料からなる磁性体7で充填されているので、貫通孔1aを容易に認識することができる。貫通孔1aを参照して位置決めを行うことによって、貫通孔1aに対して正確な相対位置に第2基準孔D2が形成され得る。
【0035】
第2基準孔D2は、貫通孔1aに基づく位置に形成されるので、後工程、例えば、以下に説明される貫通孔1b及び貫通孔1c(
図5F参照)の形成工程で位置決めの基準(位置基準)として機能し得る。第2基準孔D2のような位置基準となり得る、周囲から識別可能な要素(識別要素)は、第2基準孔D2のような貫通孔でなくてもよい。例えば、貫通孔1aに基づく位置に、凹部が形成されたり周囲と異なる色彩のマークが付されたりしてもよい。また、第2基準孔D2のような識別要素は、
図5Eの例のような非製品領域NPではなく、製品領域Pの中に形成されてもよい。さらに、第2基準孔D2のような識別要素は、貫通孔1aに対する所定の相対的な位置に形成されている基準孔(例えば第1基準孔D1)を参照して、その基準孔に基づく位置に形成されてもよい。このように本方法は、例えば貫通孔1b及び貫通孔1cの形成工程のような後工程で位置基準として用いられる識別要素を、貫通孔1aに基づく位置、又は貫通孔1aに対する所定の相対的な位置に形成される基準孔に基づく位置に形成することを含み得る。
【0036】
図5Fに示されるように、磁性体7、絶縁層32、及び絶縁層33を貫く貫通孔1b(第2貫通孔)が形成される。貫通孔1bは、スルーホール導体51(
図5G参照)が形成されるべき貫通孔1a内の所定の位置に形成される。また、本実施形態の配線基板の製造方法は、
図5Fに示されるように、絶縁層2、絶縁層32、及び絶縁層33を貫く貫通孔1c(第3貫通孔)を形成することを含み得る。貫通孔1cは、スルーホール導体52(
図5G参照)が形成されるべき所定の位置に形成される。貫通孔1b、1cは、貫通孔1aと同様に、例えば、炭酸ガスレーザー光やYAGレーザー光によるレーザー加工、又はドリル加工などによって形成される。
【0037】
貫通孔1b及び貫通孔1cいずれの形成においても、第2基準孔D2のような識別要素が認識され、その識別要素の位置に基づいて、貫通孔1b及び貫通孔1cそれぞれを形成する位置が特定され得る。すなわち、貫通孔1b及び貫通孔1cそれぞれを形成する位置は、第2基準孔D2のような識別要素からなる同一の位置基準に基づいて特定されてもよい。そしてその特定されたそれぞれの位置に、貫通孔1b及び貫通孔1cが形成されてもよい。互いに対して正確な相対位置に貫通孔1b及び貫通孔1cが形成されると考えられる。また、第2基準孔D2のような識別要素に基づいて形成される貫通孔1b及び貫通孔1cは、それぞれ、貫通孔1aに対しても正確な相対位置に形成され得る。
【0038】
貫通孔1b及び貫通孔1cは、好ましくは、一つの穿孔工程で連続的に形成される。「一つの穿孔工程」は、穿孔及び穿孔位置の特定以外の処理や加工を挟まずに、穿孔位置の特定及び穿孔が連続的に行われる工程を意味している。
【0039】
貫通孔1b、1cの形成後、好ましくは、貫通孔1b、1c内の樹脂残渣(スミア)が、例えばアルカリ性過マンガン酸塩を含む溶液を用いるデスミア処理によって除去される。本実施形態の配線基板の製造方法は、このように、貫通孔1b及び貫通孔1c両方の形成の後に、貫通孔1b内及び貫通孔1c内の樹脂残渣を除去するデスミア処理を行うことを含み得る。
【0040】
さらに、本実施形態の配線基板の製造方法は、絶縁層32における絶縁層2と反対側の表面32a及び絶縁層33における絶縁層2と反対側の表面33aを粗化することを含み得る。表面32a及び表面33aは、例えば、絶縁層2の第1面2a及び第2面2bよりも高い面粗度を有するように粗化されてもよい。例えばデスミア処理と同様の化学処理によって、絶縁層32の表面32a及び絶縁層33の表面33aが粗化される。その結果、絶縁層32の表面32a及び絶縁層33の表面33aが、絶縁層2の第1面2a及び第2面2bよりも高い面粗度を有してもよい。絶縁層32及び絶縁層33と、導体層41及び導体層42(
図5I参照)との良好な密着性が得られると考えられる。
【0041】
図5Gに示されるように、スルーホール導体51が貫通孔1b内に形成される。なお、
図5Gには、
図5Fに示されるVG部に相当する部分におけるスルーホール導体51の形成後の状態が示されている。後に参照される
図5H及び
図5Iにも、
図5Gに示される部分の各工程における状態が示されている。本実施形態の配線基板の製造方法は、
図5Gに示されるように、貫通孔1cの内部にスルーホール導体52(第2スルーホール導体)を形成することを含み得る。スルーホール導体51、52の形成では、具体的には下層金属膜501及び上層金属膜502が、貫通孔1b、1cそれぞれの内壁面に形成される。その結果、それぞれ2層の金属膜からなるスルーホール導体51及びスルーホール導体52が形成される。
【0042】
下層金属膜501及び上層金属膜502は、それぞれ、絶縁層32の表面32aの上、及び絶縁層33の表面33aの上にも形成される。絶縁層32上の下層金属膜501及び上層金属膜502は導体層41(
図5I参照)の一部を構成する。絶縁層33上の下層金属膜501及び上層金属膜502は導体層42(
図5I参照)の一部を構成する。下層金属膜501は、例えばスパッタリングや無電解めっきによって形成される。上層金属膜502は、例えば下層金属膜501を給電層として用いる電解めっきによって形成される。下層金属膜501及び上層金属膜502は、銅やニッケルなどの適切な導電性を有する金属で形成され得る。
【0043】
図5Hに示されるように、スルーホール導体51の内部が樹脂体6で充填され、スルーホール導体52の内部が樹脂体61で充填される。例えば、エポキシ、アクリル又はフェノールなどの樹脂が、絶縁層32側及び絶縁層33側のいずれか又は両方から、スルーホール導体51、52それぞれの内部に注入される。必要に応じて、絶縁層32側及び絶縁層33側のうちの一方から供給されたエポキシ樹脂などが他方から吸引されてもよい。各スルーホール導体の内部に注入された樹脂は、必要に応じて加熱などによって固化される。その結果、樹脂体6、61が形成される。樹脂体6、61は、上述のエポキシ樹脂などに限らず、スルーホール導体51、52それぞれの内部を満たし得る任意の材料で形成され得る。樹脂体6、61は、銀粒子などの導電性粒子とエポキシ樹脂などとを含む導電性樹脂を含んでいてもよい。図示されていないが、樹脂体6、61の形成時には、第2基準孔D2(
図5F参照)が充填されないように第2基準孔D2がマスキングされてもよい。
【0044】
必要に応じて、樹脂体6、61における絶縁層32側及び絶縁層33側それぞれの端面が、化学機械研磨などの任意の方法で研磨される。樹脂体6、61の両端面それぞれと、絶縁層32及び絶縁層33それぞれの上の上層金属膜502の表面とが、好ましくは略面一にされる。
【0045】
図5Iに示されるように、絶縁層32の表面32a上に導体層41が形成され、絶縁層33の表面33a上に導体層42が形成される。具体的には、スルーホール導体51及び/又はスルーホール導体52と一体的に形成されている、絶縁層32又は絶縁層33の上の上層金属膜502の上に、下層金属膜431が形成される。さらに下層金属膜431上に上層金属膜432が形成される。下層金属膜431及び上層金属膜432は、絶縁層32側及び絶縁層33側それぞれにおいて、樹脂体6、61の端面上にも形成される。樹脂体6、61の両端面が、下層金属膜431及び上層金属膜432に覆われる。下層金属膜431及び上層金属膜432によって、スルーホール導体51、52それぞれに対する、所謂蓋めっきが形成される。
【0046】
下層金属膜431は、例えばスパッタリングや無電解めっきによって形成される。上層金属膜432は、例えば下層金属膜431を給電層として用いる電解めっきによって形成される。下層金属膜431及び上層金属膜432は、銅やニッケルなどの適切な導電性を有する金属で形成され得る。絶縁層32の表面32a上に導体層41が形成され、絶縁層33の表面33a上に導体層42が形成される。それぞれが、下層金属膜501、上層金属膜502、下層金属膜431、及び上層金属膜432からなる4層構造を有する導体層41及び導体層42が形成される。
【0047】
図5Jに示されるように、導体層41及び導体層42それぞれの上に、導体層41又は導体層42が有するべき導体パターンに応じた開口M1を有するエッチングマスクMが形成される。なお、
図5Jでは、
図5Iに示される、絶縁層32又は絶縁層33の上の下層金属膜501及び上層金属膜502は、金属膜40として1層で示されている。同様に、絶縁層32の上の下層金属膜431及び上層金属膜432は金属膜41aとして1層で示されており、絶縁層33の上の下層金属膜431及び上層金属膜432は金属膜42aとして1層で示されている。
【0048】
開口M1は、開口M1に応じた所定の開口EM1を有する露光マスクEMを用いる露光及び現像によって設けられる。露光マスクEMは、好ましくは、第2基準孔D2を位置基準として用いて、開口M1の形成前のエッチングマスクMを介して絶縁層32又は絶縁層33の上に位置合わせされる。すなわち、第2基準孔D2が認識され、第2基準孔D2の位置に基づいて、導体層41又は導体層42の上に積層されたエッチングマスクMとなるレジスト膜の上に、露光マスクEMが位置づけられる。
【0049】
そして露光マスクEMを介した露光、及び現像によって、エッチングマスクMの開口M1が形成される。そのため、スルーホール導体51、52に対して正確な位置に開口M1が設けられ得る。
図5Jの例では、導体層41において導体パッド4a1及び導体パッド4b1(
図5K参照)などの導体パターンを構成する部分はエッチングマスクMで覆われる。同様に、導体層42において導体パッド4a2及び導体パッド4b2(
図5K参照)などの導体パターンを構成する領域はエッチングマスクMで覆われる。
【0050】
図5Kに示されるように、絶縁層2の第1面2a側及び第2面2b側それぞれに、スルーホール導体51に連続する導体パッド4a1、4a2(第1導体パッド)が形成される。すなわち、導体層41及び導体層42がパターニングされる。
図5Kの例では、スルーホール導体52に連続する導体パッド4b1、4b2(第2導体パッド)も形成される。このように本実施形態の配線基板の製造方法は、スルーホール導体52に連続する導体パッド4b1、4b2を導体パッド4a1、4a2と共に形成することを含み得る。具体的には、導体層41及び導体層42の不要部分、すなわちエッチングマスクMの開口M1(
図5J参照)に露出する部分が、例えばウェットエッチングやドライエッチングによって除去される。その結果、導体層41に、導体パッド4a1、4b1などの所定の導体パターンが形成される。導体層42に、導体パッド4a2、4b2などの所定の導体パターンが形成される。
【0051】
なお、導体層41、42は、
図5J及び
図5Kを参照して説明されたサブトラクティブ法ではなく、セミアディティブ法で形成されてもよい。例えば、本実施形態の製造方法によって製造される配線基板において導体層41、42は、金属膜40(下層金属膜501及び上層金属膜502(
図5I参照))だけで構成されてもよい。そしてそのような場合に、セミアディティブ法で導体層41、42が形成されてもよい。すなわち、上層金属膜502は、めっきレジスト(図示せず)を用いるパターンめっきによって、導体層41、42それぞれの所定の導体パターンが形成されるべき領域だけに形成されてもよい。
【0052】
その図示されないめっきレジストには、導体層41、42に含まれるべき、導体パッド4a1、4a2、4b1、4b2などの導体パターンに対応する領域に開口(図示せず)が設けられる。この図示されないめっきレジストの開口が、
図5Jに示されるような露光マスクEMを用いて形成されてもよい。この場合も、露光マスクEMは、好ましくは、第2基準孔D2を位置基準として用いて、図示されないめっきレジストとなるレジスト膜を介して絶縁層32又は絶縁層33の上に位置合わせされる。
【0053】
このようにして開口が形成されためっきレジストを用いるパターンめっきにおいても、導体パッド4a1、4a2、4b1、4b2などの導体パターンを、スルーホール導体51、52に対して正確な位置に形成することができると考えられる。このように本実施形態の配線基板の製造方法において導体パッド4a1、4a2及び導体パッド4b1、4b2を形成することは、所定の開口を有する露光マスクEMのようなマスクを、第2基準孔D2のような位置基準を用いて絶縁層32又は絶縁層33の上に位置合わせすることを含み得る。
【0054】
導体パッド4a1、4a2、4b1、4b2などの導体パターンの形成後、ルーターなどによって、非製品領域NPが切除される。例えば以上の工程を経ることによって、
図1の配線基板1が完成する。
【0055】
実施形態の配線基板の製造方法では、導体パッド4a1及び導体パッド4a2は、それぞれ、絶縁層32又は絶縁層33を介して磁性体7の上に形成される。そのため、以下に説明されるように、導体パッド4a1及び導体パッド4a2のその下地からの剥がれが防止されると考えられる。
【0056】
導体パッド4a1及び導体パッド4a2の下側の層を構成する金属膜40は、絶縁層2や絶縁層32及び絶縁層33に対する密着性と同様の密着性を、磁性体7に対して有し得ないことがある。例えば、金属膜40の下層金属膜501(
図5I参照)が無電解めっきで形成される場合、無電解めっきの前には、被めっき表面へのパラジウムなどの触媒の吸着性を向上させるために、被めっき表面の電荷を調整する活性化処理が行われる。絶縁層2のような樹脂体の表面上と共に磁性体7のような強磁性材料を含む磁性体の表面上に無電解めっき膜が形成される場合、磁性体の表面が適切に活性化されず、触媒が十分な密着強度で磁性体の表面に付着しないことがある。その結果、十分でない密着強度で磁性体の表面に付着した触媒の周囲に析出する無電解めっき膜と磁性体との間に十分な密着強度が得られないことがある。そのため、無電解めっき膜と、その下地(磁性体)との間で、外力や熱応力などによって剥離が生じることがある。
【0057】
これに対して実施形態の配線基板の製造方法では、前述したように、導体パッド4a1及び導体パッド4a2は、磁性体7及び絶縁層2を覆う絶縁層32又は絶縁層33の上に形成される。導体パッド4a1及び導体パッド4a2を構成する金属膜40の無電解めっき膜(例えば下層金属膜501)は、適切に活性化処理された絶縁層32及び絶縁層33の上に十分な強度で付着した触媒の周囲に形成される。従って、導体パッド4a1及び導体パッド4a2が、絶縁層32又は絶縁層33を介して、磁性体7との間に十分な密着強度を有し得る。従って、実施形態の製造方法で製造された配線基板1では、導体パッド4a1及び導体パッド4a2における下地(絶縁層32及び絶縁層33並びにそれらの下側の磁性体7)からの剥離は生じ難い。すなわち、本実施形態によれば、導体パッド4a1及び導体パッド4a2の剥がれが抑制される良好な品質の配線基板を製造することができると考えられる。
【0058】
なお、スルーホール導体51は磁性体7の側面上に形成されるが、剥離の起点となるようなスルーホール導体51の縁部は、磁性体7の上には存在しない。しかもスルーホール導体51は、絶縁層32又は絶縁層33と良好に密着する絶縁層32上又は絶縁層33上の金属膜40と連結されている。そのため、熱などによるスルーホール導体51のZ方向の伸縮が制限される。また、スルーホール導体51における、Z方向と直交し且つ側面に沿う方向(周方向)の伸縮は、筒状の形体のために自ずと制限される。さらに、磁性体7から離間する方向へのスルーホール導体51の挙動は、樹脂体6によって制限されることがある。そのため、実施形態の配線基板の製造方法で製造される配線基板において、磁性体7からのスルーホール導体51の剥離は生じ難いと考えられる。
【0059】
実施形態の配線基板の製造方法は、
図5Kの状態の配線基板1の一面又は両面に、さらに、1組又は2組以上の絶縁層及び導体層を含むビルドアップ層を形成することを含んでいてもよい。
図6には、そのようにビルドアップ層を形成することを含む他の実施形態の配線基板の製造方法によって製造される配線基板の一例である配線基板10が示されている。配線基板10は、コア基板11と、ビルドアップ層12と、ビルドアップ層13とを備える多層配線基板である。コア基板11は、
図5Kの状態の配線基板1によって、すなわち、絶縁層2、32、33、及び導体層41、42によって構成されている。絶縁層32及び導体層41の上にビルドアップ層12が形成され、絶縁層33及び導体層42の上にビルドアップ層13が形成されている。ビルドアップ層12及びビルドアップ層13は、それぞれ、コア基板11上に積層されている1組以上の絶縁層及び導体層を含んでいる。
【0060】
図6の例の配線基板10が製造される場合、本実施形態の配線基板の製造方法は、
図5A~
図5Kを参照して説明された工程に加えて、絶縁層14を絶縁層32及び導体層41の上、並びに絶縁層33及び導体層42の上に形成することを含み得る。絶縁層14は、例えば、前述した絶縁層32、33の形成方法と同様の方法で形成される。さらに、本方法は、絶縁層14内にビア導体18aを形成すると共に絶縁層14の上に導体層16を形成することを含み得る。ビア導体18a及び導体層16は、レーザー加工などによる絶縁層14への貫通孔の形成と、例えばセミアディティブ法などによるめっき膜の形成とによって形成され得る。
【0061】
さらに、本方法は、絶縁層14、ビア導体18a、及び導体層16の形成方法と同様の方法で、絶縁層14及び導体層16の上への絶縁層15、ビア導体18b、及び導体層17の形成を適宜繰り返すことを含み得る。そして、本方法では、ビルドアップ層12、13それぞれの上に、開口19aを備えるソルダーレジスト19が形成されてもよく、開口19aに露出する接続パッド17aにバンプ17bが形成されてもよい。ソルダーレジスト19は、例えば、感光性のエポキシ樹脂やポリイミド樹脂を塗布したり、積層したりすることによって形成され得る。開口19aは、例えばフォトリソグラフィ技術やレーザー光を用いて形成され、その形成により接続パッド17aが露出される。バンプ17bは、例えば、すずめっき又ははんだボールの載置とリフロー処理とによって形成され得る。
【0062】
このように本実施形態の配線基板の製造方法によって、多層配線基板である配線基板10が製造されてもよい。
【0063】
実施形態の配線基板の製造方法は、各図面を参照して説明された方法に限定されない。例えば、樹脂体6、61は形成されなくてもよい。すなわち、中空部の無い柱状体の形体のスルーホール導体が形成されてもよい。前述したように金属膜40のみからなる導体層41、42が形成されてもよく、従って、金属膜41a、42aは形成されなくてもよい。すなわち、スルーホール導体51、52の蓋めっきは形成されなくてもよい。第1及び第2の基準孔D1、D2は形成されなくてもよい。貫通孔1b、1cの形成位置は任意の方法で特定され得る。また、露光マスクEMの位置決めは任意の方法で実施され得る。実施形態の配線基板の製造方法には、前述された各工程以外に任意の工程が追加されてもよく、前述された工程のうちの一部が省略されてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1、10 配線基板
1a 貫通孔(第1貫通孔)
1b 貫通孔(第2貫通孔)
1c 貫通孔(第3貫通孔)
2 絶縁層(第1絶縁層)
2a 第1面
2b 第2面
32 絶縁層(第2絶縁層)
32a 表面
33 絶縁層(第3絶縁層)
33a 表面
4a1、4a2 導体パッド(第1導体パッド)
4b1、4b2 導体パッド(第2導体パッド)
51 スルーホール導体(第1スルーホール導体)
52 スルーホール導体(第2スルーホール導体)
7 磁性体
D1 第1基準孔
D2 第2基準孔
EM 露光マスク
EM1 開口
M エッチングマスク
M1 開口