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特開2023-108502受変電システムの機器リニューアル方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108502
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】受変電システムの機器リニューアル方法
(51)【国際特許分類】
   H02B 3/00 20060101AFI20230728BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
H02B3/00 D
H01F27/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009659
(22)【出願日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西岡 翔
【テーマコード(参考)】
5E059
【Fターム(参考)】
5E059BB18
5E059BB30
5E059KK15
(57)【要約】
【課題】受変電システムの品質低下を招くことなくスムーズにリニューアル作業を行うことできる受変電システムの機器リニューアル方法が提供する。
【解決手段】機器リニューアル方法の第1撤去ステップは、所定数を残して複数の既設オイル絶縁型変圧器を防油堤とともに撤去して第1スペースを形成する。第1設置ステップは、第1スペースに、少なくとも一つの新設スイッチギヤを設置する。第2撤去ステップは、新設スイッチギヤと同数の既設スイッチギヤを撤去して第2スペースを形成する。第2設置ステップは、第1更新スペースに、第2撤去ステップで撤去した既設スイッチギヤと同数の新設スイッチギヤを設置する。第3撤去ステップは、新設スイッチギヤと同数の既設スイッチギヤを撤去して第3スペースを形成する。第3設置ステップは、第2更新スペースに、第1撤去ステップで撤去した既設オイル絶縁型変圧器と同数の新設モールド絶縁型変圧器を設置する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気室内に配置された、防油堤により漏油対策が施された複数の既設オイル絶縁型変圧器と、複数の既設スイッチギヤと、を含む受変電システムの機器リニューアル方法であって、
所定数を残して前記複数の既設オイル絶縁型変圧器を前記防油堤とともに撤去して前記電気室内に第1スペースを形成する第1撤去ステップと、
前記第1スペースに、少なくとも一つの新設スイッチギヤを設置する第1設置ステップと、
前記第1設置ステップで設置した前記新設スイッチギヤと同数の前記既設スイッチギヤを撤去して前記電気室内に第2スペースを形成する第2撤去ステップと、
前記第1スペースと前記第2スペースの少なくとも一部を含む第1更新スペースに、前記第2撤去ステップで撤去した前記既設スイッチギヤと同数の新設スイッチギヤを設置する第2設置ステップと、
前記第2設置ステップで設置した前記新設スイッチギヤと同数の前記既設スイッチギヤを撤去して前記電気室内に第3スペースを形成する第3撤去ステップと、
前記第1更新スペースと前記第3スペースの少なくとも一部を含む第2更新スペースに、前記第1撤去ステップで撤去した前記既設オイル絶縁型変圧器と同数の新設モールド絶縁型変圧器を設置する第3設置ステップと、
を含む、受変電システムの機器リニューアル方法。
【請求項2】
前記第3設置ステップは、前記第3スペースに前記新設モールド絶縁型変圧器を設置する、請求項1に記載の受変電システムの機器リニューアル方法。
【請求項3】
前記第3設置ステップは、前記第2更新スペースにおいて、前記新設モールド絶縁型変圧器を前記電気室内の壁面に実質的に接触させる姿勢で設置する、請求項1に記載の受変電システムの機器リニューアル方法。
【請求項4】
前記第1設置ステップと前記第2設置ステップは、前記複数の既設スイッチギヤの第1配列方向と異なる第2配列方向に前記新設スイッチギヤを配列設置する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の受変電システムの機器リニューアル方法。
【請求項5】
前記第1設置ステップと前記第2設置ステップは、前記新設スイッチギヤとして、モールド絶縁型スイッチギヤを設置する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の受変電システムの機器リニューアル方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、受変電システムの機器リニューアル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力会社から送電される高圧の電気を商業施設やビル等の構内で利用可能にするために、高圧の電気を受け入れて変圧し、構内の各機器に配電する受変電システムが知られている。受変電システムは、主要機器として、スイッチギヤおよび変圧器を電気室内に配置して構成されている。従来のスイッチギヤは、例えば、SF6ガス(六フッ化硫黄ガス)を用いた絶縁構造が採用されている場合が多い。また、変圧器は、例えば、SF6ガスまたは油を用いた絶縁構造が採用されている場合が多い。SF6ガスは、不燃性の安定した気体であり、絶縁材料として極めて広く普及している。しかし、SF6ガスは地球温暖化係数が極めて高いため、ガスの管理や廃棄処理が煩雑であった。同様に、絶縁材料としての油も広く普及しているが、油は危険物として扱われるため、取り扱いや管理が煩雑であった。そこで、他の絶縁方式として、例えばエポキシ樹脂等でモールドすることにより絶縁を行う技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-239246号公報
【特許文献2】特開2017-93133号公報
【特許文献3】特開2015-89202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
受給電システムは、定期的に設備のリニューアルが行われ場合がある。したがって、上述したようなSF6ガスや油を絶縁材料として利用していたスイッチギヤや変圧器もリニューアルのタイミングで順次エポキシ樹脂等でモールドしたスイッチギヤや変圧器に変更されることがある。受変電システムは、一般に冗長化が施され、例えば、2系統の受給電回路を備えている。そのため、電気室内に設置された既設のスイッチギヤや変圧器のリニューアルを行う場合、系統ごとの入れ替えが行われることが一般的である。この場合、リニューアル中の一方の系統の設備は停止するものの、他方の設備による給電は可能であり、商業施設やビル等の構内への給電が可能になる。その一方で、系統ごとのリニューアルは大掛かりであり、片方の系統が停止している期間が長くなる傾向がある。この場合、他方の系統で給電は行わるものの、一系統しか確保されていない期間が生じて、冗長性が損なわれるため、受変電設備の一時的な品質低下を招くという問題があった。
【0005】
したがって、受変電システムの品質低下を招くことなくスムーズにリニューアル作業を行うことできる受変電システムの機器リニューアル方法が提供できれば、有意義である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態における受変電システムの機器リニューアル方法は、電気室内に配置された、防油堤により漏油対策が施された複数の既設オイル絶縁型変圧器と、複数の既設スイッチギヤと、を含む受変電システムをリニューアルの対象として、第1撤去ステップと、第1設置ステップと、第2撤去ステップと、第2設置ステップと、第3撤去ステップと、第3設置ステップと、を含む。第1撤去ステップは、所定数を残して複数の既設オイル絶縁型変圧器を防油堤とともに撤去して電気室内に第1スペースを形成する。第1設置ステップは、第1スペースに、少なくとも一つの新設スイッチギヤを設置する。第2撤去ステップは、第1設置ステップで設置した新設スイッチギヤと同数の既設スイッチギヤを撤去して電気室内に第2スペースを形成する。第2設置ステップは、第1スペースと第2スペースの少なくとも一部を含む第1更新スペースに、第2撤去ステップで撤去した既設スイッチギヤと同数の新設スイッチギヤを設置する。第3撤去ステップは、第2設置ステップで設置した新設スイッチギヤと同数の既設スイッチギヤを撤去して電気室内に第3スペースを形成する。第3設置ステップは、第1更新スペースと第3スペースの少なくとも一部を含む第2更新スペースに、第1撤去ステップで撤去した既設オイル絶縁型変圧器と同数の新設モールド絶縁型変圧器を設置する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態における受変電システムの機器リニューアル方法を適用可能な、リニューアル前の電気室の構成を示す例示的かつ模式的な平面図である。
図2図2は、実施形態における受変電システムの機器リニューアル方法でリニューアル対象となるモールド絶縁型スイッチギヤの構成を示す例示的かつ模式的な斜視図である。
図3図3は、実施形態における受変電システムの機器リニューアル方法でリニューアル対象となるモールド絶縁型変圧器の構成を示す例示的かつ模式的な斜視図である。
図4図4は、実施形態における受変電システムの機器リニューアル方法のリニューアルの手順を示す例示的かつ模式的な説明図である。
図5図5は、実施形態における受変電システムの機器リニューアル方法を適用し、リニューアルを完成した場合の他の機器レイアウトを示す例示的かつ模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。以下に記載する実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、あくまで一例であって、以下の記載内容に限られるものではない。
【0009】
図1は、実施形態における受変電システムMの機器リニューアル方法を適用可能な、リニューアル前の電気室10の構成を示す例示的かつ模式的な平面図である。なお、電気室10は、例えば、X方向およびY方向に広がる略矩形の屋根付きの部屋であり、外部と概ね隔離可能な空間を形成している。電気室10は、必要に応じて空調設備等を備えてもよい。なお、図1は、説明のため、電気室10において、受変電システムMの主構成であり、比較的大型の設備である、既設スイッチギヤ12と、防油堤14で囲まれた既設オイル絶縁型変圧器16とを示し、他の機器については図示を省略している。
【0010】
図1の場合、複数(例えば、6台)の既設スイッチギヤ12が電気室10の内部で、例えば、X方向に配列されている。また、既設スイッチギヤ12に対してY方向にずれた位置には、防油堤14によって漏油対策が施された既設オイル絶縁型変圧器16がX方向に複数(例えば、2台)配置されている。防油堤14は、例えば、電気室10の床面10aから所定高さまで立ち上がる隔離壁である。また、他の例では、防油堤14は、床面10aに設置された有底の器状の部材、いわゆる、オイルパンでもあってもよい。防油堤14は、既設オイル絶縁型変圧器16の周囲を囲み、既設オイル絶縁型変圧器16から絶縁用の油が漏れた場合でも周囲に広がらないようにしている。なお、防油堤14は、図1に示されるように既設オイル絶縁型変圧器16ごとに設けられてもよいし、既設スイッチギヤ12の配置領域と、既設オイル絶縁型変圧器16の配置領域を分離するように、床面10aから立ち上がる所定高さの隔壁で構成されてもよい。
【0011】
図1の受変電システムMは、冗長化が施され、例えば、第1受給電回路18A(例えば、本線回路)および第2受給電回路18B(例えば、予備線回路)からなる2系統の受給電回路を備えている。第1受給電回路18Aは、6台の既設スイッチギヤ12のうち3台の既設スイッチギヤ12Aおよび2箇所に設置された既設オイル絶縁型変圧器16のうち防油堤14Aで漏油対策が施された既設オイル絶縁型変圧器16Aで構成されている。同様に第2受給電回路18Bは、6台の既設スイッチギヤ12のうち残りの3台の既設スイッチギヤ12Bおよび2箇所に設置された既設オイル絶縁型変圧器16のうち残りの防油堤14Bで漏油対策が施された既設オイル絶縁型変圧器16Bで構成されている。電力会社からの高圧の電気を2系統の既設スイッチギヤ12で受けるように構成することで、受変電システムMの品質向上を行っている。
【0012】
定常時、電力会社から送電される高圧の電気は、例えば、第1受給電回路18Aの既設スイッチギヤ12Aおよび第2受給電回路18Bの既設スイッチギヤ12Bに供給される。既設スイッチギヤ12Aに供給された高圧の電気は既設オイル絶縁型変圧器16Aで電圧の変更が行われ各商業施設やビル等の構内に提供される。同様に、既設スイッチギヤ12Bに供給された高圧の電気は既設オイル絶縁型変圧器16Bで電圧の変更が行われ各商業施設やビル等の構内に提供される。
【0013】
また、別の例では、電力会社から送電される高圧の電気は、第1受給電回路18Aおよび第2受給電回路18Bの既設スイッチギヤ12Bに供給可能に構成された上で、既設スイッチギヤ12Aにのみ供給され、既設スイッチギヤ12Aから既設オイル絶縁型変圧器16Aおよび既設オイル絶縁型変圧器16Bに供給され、既設オイル絶縁型変圧器16Aおよび既設オイル絶縁型変圧器16Bから各商業施設やビル等の構内に提供される。同様に、電力会社から高圧の電気が既設スイッチギヤ12Bにのみ供給され、既設スイッチギヤ12Bから既設オイル絶縁型変圧器16Aおよび既設オイル絶縁型変圧器16Bに供給され、既設オイル絶縁型変圧器16Aおよび既設オイル絶縁型変圧器16Bから各商業施設やビル等の構内に提供されるようにしてもよい。なお、既設オイル絶縁型変圧器16Aから全ての商業施設やビル等の構内に電気を供給することもできるし、既設オイル絶縁型変圧器16Bから全ての商業施設やビル等の構内に電気を供給することもできる。既設スイッチギヤ12A、既設スイッチギヤ12B、既設オイル絶縁型変圧器16A、既設オイル絶縁型変圧器16Bが同時に不具合を起こす可能性は低いので、第1受給電回路18Aと第2受給電回路18Bからなる2系統の受変電回路を備えることにより、いずれかの機器に不具合が生じた場合でも、正常な機器から各商業施設やビル等の構内に電気の提供が可能になる。このように常に複数の系統からの電気供給を可能とするように構成しておくことにより、受変電システムMの品質を向上するための冗長性の確保を行っている。
【0014】
図1においては、既設スイッチギヤ12は模式的に示されているが、周知の構成のスイッチギヤで、例えば、矩形の筐体の内部に遮断器、母線、計器用変流器、外線ケーブル等の電気機器が収納されている。既設スイッチギヤ12の筐体の内部は実質的な密閉空間であり、上述したように、例えばSF6ガス等が充填され、絶縁性が維持されている。
【0015】
図2は、本実施形態の受変電システムの機器リニューアル方法を実施する場合に、既設スイッチギヤ12に代えて設置されるリニューアル対象となる新設スイッチギヤであるモールド絶縁型スイッチギヤ22の構成を示す例示的かつ模式的な斜視図である。モールド絶縁型スイッチギヤ22は既設スイッチギヤ12と同様に、例えば、矩形の筐体K1の内部に遮断器、母線、計器用変流器、外線ケーブル等の電気機器が収納されている。モールド絶縁型スイッチギヤ22において既設スイッチギヤ12と異なる点は、遮断器、母線、外線ケーブル等の電気機器が、例えば、エポキシ樹脂等の絶縁性の樹脂材料(モールド材料)で覆われて個々に密封されているモールド部品22aで構成されている点である。各電気機器が、個別にモールド部品22aとされているため、筐体K1の内部にはSF6ガス等は充填されていない。そのため、モールド絶縁型スイッチギヤ22は、既設スイッチギヤ12においてSF6ガス等の管理を行うために必要であったガス圧計等のガス監視装置等が不要になり、設備のシンプル化、小型化、メンテナンス性の向上等に寄与する構造になっている。なお、図2は、内部を図示するため、筐体K1の壁面の一部を取り外した状態が示されている。
【0016】
同様に、図1においては、既設オイル絶縁型変圧器16は模式的に示されているが、周知の構成の変圧器で、例えば、一次側および二次側の鉄心と巻線が容器に収められ、容器には油(絶縁油)が充填され絶縁性が維持されている。また、既設オイル絶縁型変圧器16を構成する筐体の内部にSF6ガス等を充填する場合もある。既設オイル絶縁型変圧器16において、巻線は電気回路を構成し、鉄心は磁気回路を構成している。また、放熱のための放熱フィン側壁等に設けられている。
【0017】
図3は、本実施形態の受変電システムの機器リニューアル方法を実施する場合に、既設オイル絶縁型変圧器16に代えて設置されるリニューアル対象となる新設モールド絶縁型変圧器30の構成を示す例示的かつ模式的な斜視図である。新設モールド絶縁型変圧器30は既設オイル絶縁型変圧器16と同様に、例えば、筐体K2の内部に一次側および二次側の鉄心と巻線が複数収容されている。また、側壁に放熱フィンK3が設けられている。新設モールド絶縁型変圧器30において既設オイル絶縁型変圧器16と異なる点は、一次側および二次側の鉄心と巻線が、例えば、エポキシ樹脂等の絶縁性の樹脂材料(モールド材料)で覆われて密封されているモールド部品30aで構成されている点である。鉄心に巻回された巻線を一体的にエポキシ樹脂でモールドしてモールド部品30aとされているため、既設オイル絶縁型変圧器16のような容器および絶縁のために充填する油が不要になる。そのため、新設モールド絶縁型変圧器30は、既設オイル絶縁型変圧器16において油等の漏油を防止する構造や管理を行うために必要であった監視装置等が不要になるとともに、周囲に設置していた防油堤14が不要になる。その結果、新設モールド絶縁型変圧器30は、既設オイル絶縁型変圧器16に比べて、構造のシンプル化、小型化、メンテナンス性の向上等に加え、新設モールド絶縁型変圧器30を設置するためのスペースを大幅に削減することができる。その結果、限られたスペースである電気室10における機器の設置位置の自由度が格段に向上する。なお、新設モールド絶縁型変圧器30の筐体K2の内部には、管理を特に必要としない気体、例えばドライエアを充填してもよい。なお、図3は、内部を図示するため、筐体K2の壁面の一部を取り外した状態が示されている。
【0018】
図4は、実施形態における受変電システムMの機器リニューアル方法のリニューアルの手順を示す例示的かつ模式的な説明図である。本実施形態の機器リニューアル方法における工程(ステップS)は、例えば、9ステップ(S0~S8)で構成される例を説明する。
【0019】
ステップ0(S0)に示される受変電システムMは、例えば、図1と同じ構成であり、前述したように、冗長化が施されている。ステップS0の状態では、例えば、既設スイッチギヤ12Aおよび既設スイッチギヤ12Bにより6台の既設スイッチギヤ12が利用可能であり、防油堤14(14a,14B)により漏油対策が施された既設オイル絶縁型変圧器16Aおよび既設オイル絶縁型変圧器16Bにより2台の既設オイル絶縁型変圧器16が利用可能である。つまり、受変電システムMは、2系統の受給電回路で構成され、冗長性の確保が行われている。この状態からリニューアル工事が開始される。
【0020】
ステップ1(S1)において、まず、既設スイッチギヤ12からの給電を既設オイル絶縁型変圧器16Bのみに切り替え、既設オイル絶縁型変圧器16Bより全ての商業施設やビル等の構内に電気の提供行う。つまり、電気会社からの高圧の電気を6台の既設スイッチギヤ12で受ける従来の冗長性の確保を維持したまま、リニューア準備を行う。そして、電気の供給が停止されている既設オイル絶縁型変圧器16Aおよび既設オイル絶縁型変圧器16A用に設置されていた防油堤14Aの撤去を行う(第1撤去ステップ)。つまり、第1撤去ステップにおいて、所定数を残して複数の既設オイル絶縁型変圧器16を防油堤14とともに撤去して電気室内に第1スペース20を形成する。この場合、第1スペース20は、防油堤14Aの設置領域およびその周辺が含まれ、フリーとなる大きなスペースの確保が可能になる。
【0021】
続いて、ステップ2(S2)において、形成された第1スペース20に、少なくとも一つのモールド絶縁型スイッチギヤ22を設置する(第1設置ステップ)。第1設置ステップにおいて、例えば、第1スペース20のいずれかの場所に、第1受給電回路18A(図1参照)の既設スイッチギヤ12Aと同数のモールド絶縁型スイッチギヤ22を設置する。図4の場合、防油堤14(既設オイル絶縁型変圧器16)の設置位置と同等の位置にモールド絶縁型スイッチギヤ22を3台設置しているが、例えば、電気室10の壁面10bにより接近または接触した状態で配置してもよい。
【0022】
続いて、ステップ3(S3)において、第1設置ステップで設置したモールド絶縁型スイッチギヤ22と同数の既設スイッチギヤ12Aを撤去して電気室10内に第2スペース24を形成する(第2撤去ステップ)。この場合、第2スペース24は、既設スイッチギヤ12Aの設置領域および第1スペース20の一部を含む周辺領域が含まれ、フリーとなる大きなスペースの確保が可能になる。
【0023】
ステップ4(S4)では、第1スペース20と第2スペース24の少なくとも一部を含む第1更新スペース24Aに、第2撤去ステップ(S3)で撤去した既設スイッチギヤ12Aと同数の新設のモールド絶縁型スイッチギヤ26を設置する(第2設置ステップ)。図4の場合、既にリニューアル設置したモールド絶縁型スイッチギヤ22とY方向に並ぶように、モールド絶縁型スイッチギヤ26を設置している。その結果、モールド絶縁型スイッチギヤ22,26は、ステップ1において、X方向に配列されていた、既設機器群(既設スイッチギヤ12A,12B)の配列方向(第1配列方向)と異なるY方向に配列された状態(第2配列方向)に変更されている。このように、モールド絶縁型スイッチギヤ22,26の配列方向を容易に、例えば90°変化させたレイアウトを実現することができる。
【0024】
続いて、ステップ5では、第2設置ステップ(S4)で設置したモールド絶縁型スイッチギヤ26と同数の既設スイッチギヤ12Bを撤去して電気室10内に第3スペース28を形成する(第3撤去ステップ)。図4の場合、ステップ5で既設の既設スイッチギヤ12の全ての撤去が完了したことになる。この場合も、第3スペース28は、既設スイッチギヤ12Bの設置領域とその周辺領域が含まれ、フリーとなる大きなスペースの確保が可能になる。
【0025】
そして、ステップ6(S6)において、第1更新スペース24Aと第3スペース28の少なくとも一部を含む第2更新スペース28Aに、第1撤去ステップ(S1)で撤去した既設オイル絶縁型変圧器16と同数の新設モールド絶縁型変圧器30を設置する(第3設置ステップ)。図4の場合、1台の新設モールド絶縁型変圧器30が第3スペース28、つまり、既設スイッチギヤ12Bが設置されていた位置で、既設オイル絶縁型変圧器16Bの-Y方向で既設オイル絶縁型変圧器16Bの図中上方位置に設置される。
【0026】
このように、ステップ0からステップ6のリニューアル作業中、一つの既設オイル絶縁型変圧器16または新設モールド絶縁型変圧器30に対して、常に6台のスイッチギヤ(既設スイッチギヤ12とモールド絶縁型スイッチギヤ22またはモールド絶縁型スイッチギヤ22とモールド絶縁型スイッチギヤ26)が利用可能であり、冗長性の確保を維持することができる。また、ステップ2(S2)において、モールド絶縁型スイッチギヤ22を新設する際には、従来稼働していた6台の既設スイッチギヤ12が利用可能な状態である。つまり、6台が正常に稼働可能な状態で、新設したモールド絶縁型スイッチギヤ22の動作確認試験等を任意のタイミングで実施することが可能になる。その結果、モールド絶縁型スイッチギヤ22の動作確認試験中でも十分な冗長性の確保を行うことができる。同様に、ステップ4(S4)において、モールド絶縁型スイッチギヤ26を新設する際には、動作確認が完了した新設したモールド絶縁型スイッチギヤ22と従来稼働していた3台の既設スイッチギヤ12が利用可能な状態である。つまり、6台が正常に稼働可能な状態で、新設したモールド絶縁型スイッチギヤ26の動作確認試験等を任意のタイミングで行うことができる。したがって、モールド絶縁型スイッチギヤ26の動作確認試験中でも十分な冗長性の確保を行うことができる。その結果、電力会社からの送電を常に2系統のスイッチギヤで受けることが可能となり、受変電システムMの品質維持を行うことができる。換言すれば、リニューアル作業以前の状態と同じ状態で給電することが可能であり、スイッチギヤが1系統のみで電力会社からの送電を受けるという受変電システムMとして低品質となる状況が生じること回避することができる。なお、新設モールド絶縁型変圧器30に関しても、従来稼働していた既設オイル絶縁型変圧器16Bの利用が可能な状態で、動作確認試験等を任意のタイミングで実施することが可能になり、同様に冗長性の確保と、受変電システムMの品質維持を行うことができる。
【0027】
最終段階として、ステップ6でリニューアルした新設モールド絶縁型変圧器30に対してモールド絶縁型スイッチギヤ22および/またはモールド絶縁型スイッチギヤ26から給電を切り替え、残った既設オイル絶縁型変圧器16Bを停止する。この状態でステップ7(S7)として、既設オイル絶縁型変圧器16Bおよび防油堤14Bを撤去する(第4撤去ステップ)。つまり、第1撤去ステップと同様に、電気室10内に第4スペース32を形成する。この場合、第4スペース32は、防油堤14Bの設置領域およびその周辺が含まれ、フリーとなる大きなスペースの確保が可能になる。
【0028】
最後に、ステップ8(S8)において、形成された第4スペース32に、新設モールド絶縁型変圧器34を設置する(第4設置ステップ)。図4の場合、防油堤14B(既設オイル絶縁型変圧器16B)の設置位置と同等の位置に新設モールド絶縁型変圧器34を設置している。
【0029】
以上の工程(ステップ)でリニューアル作業を行うことで、既設機器を新設機器に入れ替えることができる。このリニューアル作業中は、上述したように、冗長性の確保のために設置された正常稼働が確認できる6台のスイッチギヤを、常に利用可能な状態に維持することができる。また、従来では、リニューアル作業を夜間や商業施設やビル等の休業日等の限られた短時間でしか実施することができず、作業日程が長期化する傾向があった。一方、本実施形態の機器リニューアル方法に基づく、リニューアル作業は、冗長性の確保を行いながら、商業施設やビル等の利用期間中、例えば、平日昼間の時間帯でも実施可能になる。その結果、全体のリニューアル作業を冗長性を確保した状態で効率的に短時間で実施することができる。つまり、受変電システムMの品質低下を招くことなくスムーズにリニューアル作業を行うことができる。
【0030】
また、このように順次設置位置を変更することで、例えば、ステップ0で示される既設スイッチギヤ12及び既設オイル絶縁型変圧器16のレイアウトに対して、ステップ8で示されるように、90°回転した新レイアウトを容易に実現することができる。なお、レイアウトの変更角度は90°に限られず、任意の角度に容易に変更することが可能で、電気室10の仕様変更を容易に行うことができる。また、図4では、モールド絶縁型スイッチギヤ22とモールド絶縁型スイッチギヤ26とをY方向に沿って直線配列する例を示しが、この配列に限られない。例えば、Y方向に配列されるモールド絶縁型スイッチギヤ22に対してモールド絶縁型スイッチギヤ26をX方向に配列して、略L字形状の配列等にしてもよい。この場合も電気室10の仕様変更を容易に行うことができる。
【0031】
また、例えば、第3設置ステップ(S6)で、第3スペース28において、新設モールド絶縁型変圧器30を設置する場合、図5に示されるように、電気室10内の壁面10bに実質的に接触させる姿勢で設置してもよい。同様に、第4設置ステップ(S8)で、第4スペース32において、新設モールド絶縁型変圧器34を設置する場合、電気室10内の壁面10bに実質的に接触させる姿勢で設置してもよい。前述したように、新設モールド絶縁型変圧器30や新設モールド絶縁型変圧器34の場合、従来の防油堤14が不要であるとともに、油の漏油を防止するための構造や管理を行うための計測機器等を省略して小型化が可能である。その結果、容易に壁面10b等に接近させた配置が容易である。その結果、図5に示すように、モールド絶縁型スイッチギヤ22やモールド絶縁型スイッチギヤ、新設モールド絶縁型変圧器30や新設モールド絶縁型変圧器34が配置されない大きなフリースペースである第5スペース36を形成することができる。第5スペース36には、例えば、モールド絶縁型スイッチギヤ22や新設モールド絶縁型変圧器30等の追加配置や他の機器を設置することが可能で、電気室10内のスペースをリニューアル作業によって、より有効活用することができる。
【0032】
また、図5に示すように、次回のリニューアル作業時に第5スペース36を大きな作業スペースとして利用可能になる。例えば、次回のリニューアル作業時に今回設置されたモールド絶縁型スイッチギヤ22やモールド絶縁型スイッチギヤ26の撤去前に、新設のスイッチギヤを既設のスイッチギヤ(この場合、モールド絶縁型スイッチギヤ22やモールド絶縁型スイッチギヤ)と同数配置し、接続確認試験等を行うことができる。その結果、冗長性の確保を行いつつ、全てのスイッチギヤ(モールド絶縁型スイッチギヤ22およびモールド絶縁型スイッチギヤ)の一括入れ替えが可能になり、より効率的で短時間のリニューアル作業を実現することが可能になる。また、第5スペース36を用いて、冗長性の確保を行いつつ、他のレイアウトに変更することも容易に行うことが可能になる。なお、今回のリニューアル作業時にモールド絶縁型スイッチギヤ22やモールド絶縁型スイッチギヤ26を電気室10の壁面10bに接触するように配置することも可能である。この場合、第5スペース36をさらに拡大することが可能であり、よりレイアウトの選択自由度やリニューアル作業の作業性を向上することができる。
【0033】
なお、上述した実施形態では、リニューアル後のスイッチギヤをモールド絶縁型スイッチギヤ22やモールド絶縁型スイッチギヤ26とする例を示した。この場合、モールド絶縁型スイッチギヤ22やモールド絶縁型スイッチギヤ26は、既設スイッチギヤ12に比べて小型化や構成のシンプル化が可能であり、管理やメンテナンス性の向上、交換部品の削減やランニングコストの軽減に寄与する、信頼性の高いスイッチギヤにリニューアルすることができる。なお、冗長性の確保を行いつつ、短時間でのレイアウト変更を伴うリニューアルを行うという目的においては、既設スイッチギヤ12をモールド絶縁型のスイッチギヤに入れ替えることは必須ではなく、従来と同様なスイッチギヤを新レイアウトの配置するようにしてもよく、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0034】
また、本実施形態においては、スイッチギヤを6台、変圧器を2台とした受変電システムMについて説明したが、スイッチギヤや変圧器の台数は、これに限定されず、適宜変更可能であり、本実施形態と同様の効果を得ることができる。また、リニューアル作業時における1回のスイッチギヤの交換台数は適宜変更可能である。また、変圧器が3台以上ある場合には、リニューアル作業時の1回の変圧器の交換台数は、複数であってもよく、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0035】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0036】
10 電気室
10b 壁面
12,12A,12B 既設スイッチギヤ
14,14A,14B 防油堤
16,16A,16B 既設オイル絶縁型変圧器
18A 第1受給電回路
18B 第2受給電回路
20 第1スペース
22,26 モールド絶縁型スイッチギヤ
22a,30a モールド部品
24 第2スペース
24A 第1更新スペース
28 第3スペース
28A 第2更新スペース
30,34 新設モールド絶縁型変圧器
32 第4スペース
36 第5スペース
M 受変電システム
図1
図2
図3
図4
図5