(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108512
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】X線コンピュータ断層撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20230728BHJP
G01T 7/00 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
A61B6/03 340A
A61B6/03 373
A61B6/03 350D
G01T7/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009670
(22)【出願日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】西島 輝
【テーマコード(参考)】
2G188
4C093
【Fターム(参考)】
2G188AA02
2G188BB02
2G188CC22
2G188CC28
2G188DD05
2G188DD16
2G188DD31
2G188FF19
4C093AA22
4C093CA06
4C093CA13
4C093CA31
4C093EA02
4C093EA07
4C093EB12
4C093EB17
4C093FA15
4C093FA32
4C093FA34
4C093FA46
4C093FA52
4C093FA59
4C093FC02
4C093FC13
4C093FC17
4C093FC19
(57)【要約】
【課題】データ収集に係るゲインを管電圧の切替に同期して切り替えること。
【解決手段】 実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、管電圧制御部、第1信号発生部、ビュー切替部、データ収集部、第2信号発生部及びゲイン切替部を有する。管電圧制御部は、X線管に印加される管電圧を、第1の管電圧と前記第1の管電圧よりも低い第2の管電圧とで切り替える。第1信号発生部は、第1の時間間隔で第1の切替信号を発生する。ビュー切替部は、第1の切替信号に基づいてビューを切り替える。データ収集部は、X線検出器を介してビュー単位でデータ収集を行う。第2信号発生部は、第1の時間間隔よりも短い第2の時間間隔で第2の切替信号を発生する。ゲイン切替部は、第2の切替信号に基づいてデータ収集部のゲインを切り替える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管に印加される管電圧を、第1の管電圧と前記第1の管電圧よりも低い第2の管電圧とで切り替える管電圧制御部と、
第1の時間間隔で第1の切替信号を発生する第1信号発生部と、
前記第1の切替信号に基づいてビューを切り替えるビュー切替部と、
X線検出器を介して前記ビュー単位でデータ収集を行うデータ収集部と、
前記第1の時間間隔よりも短い第2の時間間隔で第2の切替信号を発生する第2信号発生部と、
前記第2の切替信号に基づいて前記データ収集部のゲインを切り替えるゲイン切替部と、
を具備するX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項2】
前記ゲイン切替部は、前記第2の切替信号に基づいて、前記ゲインを、前記第1の管電圧に対応する第1のゲインと前記第2の管電圧に対応する第2のゲインとの間で切り替える、請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項3】
前記ゲイン切替部は、前記X線検出器を介して収集されたデータに対応する管電圧に合致するように前記第1のゲインと前記第2のゲインとの間で切り替える、請求項2記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項4】
前記データ収集部は、被検体に対するスキャン時内において、前記第1のゲインに対応する第1のドリフト補正データと前記第2のゲインに対応する第2のドリフト補正データとを収集する、請求項3記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項5】
前記X線検出器は、X線検出素子と前記X線検出素子の読出スイッチとを有し、
前記データ収集部は、前記読出スイッチを介して前記X線検出素子に接続され、電気信号をデジタルデータに変換するA/D変換器を有し、
前記データ収集部は、
前記第1の管電圧の印加時に対応する第1のビューにおいて、前記読出スイッチが閉じている時に前記A/D変換器から出力された前記デジタルデータを投影データとして収集し、前記投影データの収集後で前記読出スイッチが開いている時に前記A/D変換器から出力された前記デジタルデータを前記第1のドリフト補正データとして収集し、
前記第2の管電圧の印加時に対応する第2のビューにおいて、前記読出スイッチが閉じている時に前記A/D変換器から出力された前記デジタルデータを前記投影データとして収集し、前記投影データの収集後で前記読出スイッチが開いている時に前記A/D変換器から出力された前記デジタルデータを前記第2のドリフト補正データとして収集する、
請求項4記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項6】
前記データ収集部は、
前記第1のビューにおいて欠落した前記第2のドリフト補正データを、前記第1のビューにおいて収集された前記第1のドリフト補正データ及び/又は前記第2のビューにおいて収集された前記第2のドリフト補正データに基づいて生成し、
前記第2のビューにおいて欠落した前記第1のドリフト補正データを、前記第2のビューにおいて収集された前記第2のドリフト補正データ及び/又は前記第1のビューにおいて収集された前記第1のドリフト補正データに基づいて生成する、
請求項5記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項7】
前記データ収集部は、前記第1のビューにおいて欠落した前記第2のドリフト補正データを、前記第1のビューにおいて計測された前記データ収集部の温度データで前記第1のビューにおいて収集された前記第1のドリフト補正データ及び/又は前記第2のビューにおいて収集された前記第2のドリフト補正データを補正して生成する、請求項5記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項8】
前記データ収集部は、被検体に対するスキャン時外において、前記第1のゲインに対応する第1のオフセット補正データと前記第2のゲインに対応する第2のオフセット補正データとを収集する、請求項3記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項9】
前記X線検出器は、X線検出素子と前記X線検出素子の読出スイッチとを有し、
前記データ収集部は、前記読出スイッチを介して前記X線検出素子に接続され、電気信号をデジタルデータに変換するA/D変換器を有し、
前記データ収集部は、前記第1の管電圧の印加時において、前記読出スイッチが閉じている時に前記A/D変換器から出力された前記デジタルデータを前記第1のオフセット補正データとして収集し、前記第2の管電圧の印加時において、前記読出スイッチが閉じている時に前記A/D変換器から出力された前記デジタルデータを前記第2のオフセット補正データとして収集する、
請求項8記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項10】
前記データ収集部は、
スキャン前に前記第1のオフセット補正データと前記第2のオフセット補正データとを収集する、
スキャン前に前記第1のオフセット補正データを収集し、スキャン後に前記第2のオフセット補正データを収集する、
スキャン前に前記第2のオフセット補正データを収集し、スキャン後に前記第1のオフセット補正データを収集する、又は、
スキャン前及びスキャン後各々において前記第1のゲインでの前記デジタルデータと前記第2のゲインでの前記デジタルデータとを収集し、前記スキャン前及び前記スキャン後の前記第1のゲインでの前記デジタルデータに基づいて前記第1のオフセット補正データを生成し、前記スキャン前及び前記スキャン後の前記第2のゲインでの前記デジタルデータに基づいて前記第2のオフセット補正データを生成する、
請求項9記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項11】
前記第2信号発生部は、前記第1の切替信号をアップサンプリングして、前記第1の切替信号に同期した前記第2の切替信号を発生する、請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項12】
前記第2信号発生部は、前記第2の切替信号として、前記第1の時間間隔において第1パルスと前記第1パルスに後行する第2パルスとを発生し、
前記ゲイン切替部は、前記第1パルスに同期して前記データ収集部に切替指示を供給し、
前記データ収集部は、前記第2パルスに同期して前記切替指示に対応するゲインに切り替える、
請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項13】
前記ゲイン切替部は、前記第2の切替信号と前記X線検出器の全ての検出素子列からの電荷読出が終了したタイミングで発生する第3の切替信号とに基づいて、前記データ収集部の前記ゲインを切り替える、請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、X線コンピュータ断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線コンピュータ断層撮影装置による撮影手法の一つに、2種類の管電圧を切り替えながら撮影を行い2種類のエネルギーに対応する2種類の投影データを収集するデュアルエナジースキャンがあり、管電圧を交互に切り替える技術はkVスイッチングと呼ばれている。kVスイッチング中にはデータ収集回路のゲインは切り替えておらず、同一のゲイン(増幅率)でデータ収集が行われている。同一のゲインでkVスイッチングを行った場合、低管電圧側ではゲインが小さいためSN比(signal to noise ratio)が悪化し、高管電圧側ではゲインが大きいためオーバーフローを起こしてアーチファクトやCT値ずれが発生するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、データ収集に係るゲインを管電圧の切替に同期して切り替えることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、管電圧制御部、第1信号発生部、ビュー切替部、データ収集部、第2信号発生部及びゲイン切替部を有する。管電圧制御部は、X線管に印加される管電圧を、第1の管電圧と前記第1の管電圧よりも低い第2の管電圧とで切り替える。第1信号発生部は、第1の時間間隔で第1の切替信号を発生する。ビュー切替部は、前記第1の切替信号に基づいてビューを切り替える。データ収集部は、X線検出器を介して前記ビュー単位でデータ収集を行う。第2信号発生部は、前記第1の時間間隔よりも短い第2の時間間隔で第2の切替信号を発生する。ゲイン切替部は、前記第2の切替信号に基づいて前記データ収集部のゲインを切り替える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係るkVスイッチングに関する主要構成の構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、X線検出素子の配列を示す平面図である。
【
図4】
図4は、各X線検出素子列の電気信号の読出完了時刻を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る高管電圧ゲインと低管電圧ゲインとの切替に関するタイミングチャートの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、比較例における高管電圧ゲインと低管電圧ゲインとの切替に関するタイミングチャートの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、ドリフト補正データの収集に関するタイミングチャートである。
【
図8】
図8は、オフセット補正データの収集に関するタイミングチャートである。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係るkVスイッチングに関する主要構成の構成例を示す図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係る高管電圧ゲインと低管電圧ゲインとの切替に関するタイミングチャートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、X線コンピュータ断層撮影装置の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、既出の図に関して前述したものと同一又は略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表されている場合もある。
【0008】
本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置(X線CT装置)には、第3世代CT、第4世代CT等様々なタイプがあり、いずれのタイプでも本実施形態に適用可能である。ここで、第3世代CTは、X線管と検出器とが一体として被検体の周囲を回転するRotate/Rotate-Typeである。第4世代CTは、リング状にアレイされた多数のX線検出素子が固定され、X線管のみが被検体の周囲を回転するStationary/Rotate-Typeである。また、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置には、X線管と検出器との1個のペアを回転リングに搭載した一管球型にも、X線管と検出器との複数のペアを回転リングに搭載した多管球型にも適用可能であるが、以下の説明においては、一管球型であるとする。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置1の構成を示す図である。X線コンピュータ断層撮影装置1は、X線管11から被検体Pに対してX線を照射し、照射されたX線をX線検出器12で検出する。X線コンピュータ断層撮影装置1は、X線検出器12からの出力に基づいて被検体Pに関するCT画像を生成する。
【0010】
図1に示すように、X線コンピュータ断層撮影装置1は、架台10、寝台30及びコンソール40を有する。なお、
図1では説明の都合上、複数個所に架台10が図示されているが、X線コンピュータ断層撮影装置1に実装される架台10は1個でもよいし複数個でもよい。架台10は、被検体PをX線CT撮影するための構成を有するスキャン装置である。寝台30は、X線CT撮影の対象となる被検体Pを載置し、被検体Pを位置決めするための搬送装置である。コンソール40は、架台10を制御するコンピュータである。例えば、架台10及び寝台30はCT検査室に設置され、コンソール40はCT検査室に隣接する制御室に設置される。架台10、寝台30及びコンソール40は互いに通信可能に有線または無線で接続されている。なお、コンソール40は、必ずしも制御室に設置されなくてもよい。例えば、コンソール40は、架台10及び寝台30とともに同一の部屋に設置されてもよい。また、コンソール40が架台10に組み込まれてもよい。
【0011】
図1に示すように、架台10は、X線管11、X線検出器12、回転フレーム13、X線高電圧装置14、制御装置15、ウェッジ16、コリメータ17及びデータ収集回路(DAS:Data Acquisition System)18を有する。
【0012】
X線管11は、X線を被検体Pに照射する。具体的には、X線管11は、熱電子を発生する陰極と、陰極から飛翔する熱電子を受けてX線を発生する陽極と、陰極と陽極とを保持する真空管とを含む。X線管11は、高圧ケーブルを介してX線高電圧装置14に接続されている。陰極と陽極との間には、X線高電圧装置14により管電圧が印加される。管電圧の印加により陰極から陽極に向けて熱電子が飛翔する。陰極から陽極に向けて熱電子が飛翔することにより管電流が流れる。X線高電圧装置14からの高電圧の印加及びフィラメント電流の供給により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子が飛翔し、熱電子が陽極に衝突することによりX線が発生される。例えば、X線管11には、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管がある。
【0013】
なお、X線を発生させるハードウェアはX線管11に限られない。例えば、X線管11に代えて、第5世代方式を用いてX線を発生させることにしても構わない。第5世代方式は、電子銃から発生した電子ビームを集束させるフォーカスコイルと、電磁偏向させる偏向コイルと、被検体Pの半周を囲い偏向した電子ビームが衝突することによってX線を発生させるターゲットリングとを含む。
【0014】
X線検出器12は、X線管11から照射され被検体Pを通過したX線を検出し、検出されたX線の線量に対応した電気信号をデータ収集回路18に出力する。X線検出器12は、チャネル方向に複数のX線検出素子が配列されたX線検出素子列がスライス方向(列方向)に複数配列された構造を有する。X線検出器12は、例えば、グリッド、シンチレータアレイ及び光センサアレイを有する間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有する。シンチレータは、入射X線量に応じた光量の光を出力する。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射面側に配置され、散乱X線を吸収するX線遮蔽板を有する。なお、グリッドは、コリメータ(1次元コリメータ又は2次元コリメータ)と呼ばれる場合もある。光センサアレイは、シンチレータからの光の光量に応じた電気信号に変換する。光センサとしては、例えば、フォトダイオードが用いられる。なお、X線検出器12は、直接変換型の検出器であってもよい。
【0015】
回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを回転軸(Z軸)回りに回転可能に支持する円環状のフレームである。具体的には、回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを対向支持する。回転フレーム13は、固定フレーム(図示せず)に回転軸回りに回転可能に支持される。制御装置15により回転フレーム13が回転軸回りに回転することによりX線管11とX線検出器12とを回転軸回りに回転させる。回転フレーム13は、制御装置15の駆動機構からの動力を受けて回転軸回りに一定の角速度で回転する。回転フレーム13の開口部19には、画像視野(FOV)が設定される。
【0016】
なお、本実施形態では、非チルト状態での回転フレーム13の回転軸又は寝台30の天板33の長手方向をZ軸方向、Z軸方向に直交し床面に対し水平である軸方向をX軸方向、Z軸方向に直交し床面に対し垂直である軸方向をY軸方向と定義する。
【0017】
X線高電圧装置14は、高電圧発生装置及びX線制御装置を有する。高電圧発生装置は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧及びX線管11に供給するフィラメント電流を発生する。X線制御装置は、X線管11が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行う。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であっても構わない。X線高電圧装置14は、架台10内の回転フレーム13に設けられてもよいし、架台10内の固定フレーム(図示しない)に設けられても構わない。
【0018】
ウェッジ16は、被検体Pに照射されるX線の線量を調節する。具体的には、ウェッジ16は、X線管11から被検体Pへ照射されるX線の線量が予め定められた分布になるようにX線を減衰する。例えば、ウェッジ16としては、ウェッジフィルタ(wedge filter)やボウタイフィルタ(bow-tie filter)等のアルミニウム等の金属板が用いられる。
【0019】
コリメータ17は、ウェッジ16を透過したX線の照射範囲を限定する。コリメータ17は、X線を遮蔽する複数の鉛板をスライド可能に支持し、複数の鉛板により形成されるスリットの形態を調節する。なお、コリメータ17は、X線絞りと呼ばれる場合もある。
【0020】
データ収集回路18は、X線検出器12により検出されたX線の線量に応じた電気信号をX線検出器12から読み出す。データ収集回路18は、読み出した電気信号を増幅し、ビュー期間に亘り電気信号を積分することにより当該ビュー期間に亘るX線の線量に応じたデジタル値を有する投影データを収集する。データ収集回路18は、例えば、投影データを生成可能な回路素子を搭載した特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)により実現される。デジタルデータは、非接触データ伝送装置等を介してコンソール40に伝送される。
【0021】
なお、本実施形態では、積分型のX線検出器12及び積分型のX線検出器12が搭載されたX線コンピュータ断層撮影装置1を例として説明するが、本実施形態に係る技術は、光子計数型のX線検出器又は光子計数型のX線検出器が搭載されたX線コンピュータ断層撮影装置であっても適用可能である。
【0022】
制御装置15は、コンソール40の処理回路44の撮影制御機能441に従いX線CT撮影を実行するためにX線高電圧装置14やデータ収集回路18を制御する。制御装置15は、CPU(Central Processing Unit)あるいはMPU(Micro Processing Unit)等を有する処理回路と、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構とを有する。処理回路は、ハードウェア資源として、CPU等のプロセッサとROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリとを有する。また、制御装置15は、ASICやフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)により実現されてもよい。また、制御装置15は、他の複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)又は単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)により実現されてもよい。制御装置15は、コンソール40若しくは架台10に取り付けられた、後述する入力インターフェース43からの入力信号を受けて、架台10及び寝台30の動作制御を行う機能を有する。例えば、制御装置15は、入力信号を受けて回転フレーム13を回転させる制御や、架台10をチルトさせる制御、及び寝台30及び天板33を動作させる制御を行う。なお、架台10をチルトさせる制御は、架台10に取り付けられた入力インターフェースによって入力される傾斜角度(チルト角度)情報により、制御装置15がX軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム13を回転させることによって実現される。なお、制御装置15は架台10に設けられてもよいし、コンソール40に設けられても構わない。
【0023】
寝台30は、基台31、支持フレーム32、天板33及び寝台駆動装置34を備える。基台31は、床面に設置される。基台31は、支持フレーム32を、床面に対して垂直方向(Y軸方向)に移動可能に支持する筐体である。支持フレーム32は、基台31の上部に設けられるフレームである。支持フレーム32は、天板33を回転軸(Z軸)に沿ってスライド可能に支持する。天板33は、被検体Pが載置される柔軟性を有する板である。
【0024】
寝台駆動装置34は、寝台30の筐体内に収容される。寝台駆動装置34は、被検体Pが載置された支持フレーム32と天板33とを移動させるための動力を発生するモータ又はアクチュエータである。寝台駆動装置34は、コンソール40等による制御に従い作動する。
【0025】
コンソール40は、メモリ41、ディスプレイ42、入力インターフェース43及び処理回路44を有する。メモリ41とディスプレイ42と入力インターフェース43と処理回路44との間のデータ通信は、バス(BUS)を介して行われる。なお、コンソール40は架台10とは別体として説明するが、架台10にコンソール40又はコンソール40の各構成要素の一部が含まれてもよい。
【0026】
メモリ41は、種々の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。メモリ41は、例えば、投影データや再構成画像データを記憶する。メモリ41は、HDDやSSD等以外にも、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体であってもよい。メモリ41は、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ素子等との間で種々の情報を読み書きする駆動装置であってもよい。また、メモリ41の保存領域は、X線コンピュータ断層撮影装置1内にあってもよいし、ネットワークで接続された外部記憶装置内にあってもよい。メモリ41には、後述するデータベースを記憶する。
【0027】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路44によって生成された医用画像(CT画像)や、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。ディスプレイ42としては、種々の任意のディスプレイが、適宜、使用可能となっている。例えばディスプレイ42として、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro Luminescence Display)又はプラズマディスプレイが使用可能である。また、ディスプレイ42は、架台10に設けられてもよい。また、ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0028】
入力インターフェース43は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路44に出力する。例えば、入力インターフェース43は、投影データを収集する際の収集条件や、CT画像を再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件等を操作者から受け付ける。入力インターフェース43としては、例えば、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等が適宜、使用可能となっている。なお、本実施形態において、入力インターフェース43は、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等の物理的な操作部品を備えるものに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路44へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース43の例に含まれる。また、入力インターフェース43は、架台10に設けられてもよい。また、入力インターフェース43は、コンソール40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0029】
処理回路44は、入力インターフェース43から出力される入力操作の電気信号に応じてX線コンピュータ断層撮影装置1全体の動作を制御する。処理回路44は、X線検出器12から出力された電気信号に基づいて画像データを生成する。例えば、処理回路44は、ハードウェア資源として、CPUやMPU、GPU等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。処理回路44は、メモリに展開されたプログラムを実行するプロセッサにより、撮影制御機能441、再構成機能442、画像処理機能443、表示制御機能444、撮影計画機能445等を実行する。各機能441~445は単一の処理回路で実現される場合に限らない。複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各機能441~445を実現するものとしても構わない。
【0030】
撮影制御機能441において処理回路44は、被検体Pに対してデュアルエナジースキャンを行うためX線高電圧装置14と制御装置15とデータ収集回路18とを制御する。
【0031】
再構成機能442において処理回路44は、データ収集回路18から出力された高管電圧印加時の投影データと低管電圧印加時の投影データとに基づいて仮想単色X線画像や物質弁別画像等のDECT(Dual Energy CT)画像等を生成する。
【0032】
画像処理機能443において処理回路44は、DECT画像を、任意断面の断面画像や任意視点方向のレンダリング画像に変換する。変換は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて行われる。例えば、処理回路44は、当該DECT画像にボリュームレンダリングや、サーフェスボリュームレンダリング、画像値投影処理、MPR(Multi-Planer Reconstruction)処理、CPR(Curved MPR)処理等の3次元画像処理を施して、任意視点方向のレンダリング画像データを生成する。なお、任意視点方向のレンダリング画像の生成は再構成機能442により行われてもよい。
【0033】
表示制御機能444において処理回路44は、画像処理機能443により生成された各種画像をディスプレイ42に表示させる。ディスプレイ42に表示させる画像は、DECT画像、任意断面の断面画像、任意視点方向のレンダリング画像等を含む。ディスプレイ42に表示させる画像は、操作画面を表示するための画像を含む。
【0034】
撮影計画機能445において処理回路44は、デュアルエナジースキャンに関する撮影計画を設定する。
【0035】
以下、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置1のkVスイッチングについて詳細に説明する。
【0036】
図2は、第1実施形態に係るkVスイッチングに関する主要構成の構成例を示す図である。
図2に示すように、X線コンピュータ断層撮影装置1は、kVスイッチングに関する主要構成として、X線検出器12、X線高電圧装置14、制御装置15及びデータ収集回路18を有している。
【0037】
図2に示すように、X線検出器12は、複数のX線検出素子121を有する。各X線検出素子121は、入射X線量に応じた光量の光を出力するシンチレータとシンチレータからの光の光量に応じた電気信号に変換する光センサとを有する。複数のX線検出素子121は、それぞれ複数の読出スイッチ122に接続され、読出線123を介してデータ収集回路18に接続されている。
【0038】
読出スイッチ122は、読出制御回路512からの読出制御信号に基づいて駆動するスイッチング素子である。読出スイッチ122としては、例えば、MOS型の電界効果トランジスタ(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:MOS-FET)等を用いることが可能である。OFF信号に応答して読出スイッチ122は開き、X線検出素子121からの電気信号の読出しが遮断される。読出スイッチ122が開いている状態においてX線検出素子121は、入射X線を受けて電気信号を蓄電する。ON信号に応答して読出スイッチ122は閉じ、X線検出素子121に蓄電された電気信号(電荷信号)が読み出される。
【0039】
図3は、X線検出素子121の配列を示す平面図である。
図3に示すように、X線検出器12のX線入射面には列方向及びチャネル方向に関して2次元状に複数のX線検出素子121が配列されている。列方向はボアの中心軸に並行するZ軸方向に規定され、チャネル方向は回転フレーム13の回転方向に規定される。列方向に関して複数のX線検出素子列124が配列されている。
【0040】
本実施形態に係るX線検出器12は、逐次読出し方式により電気信号が読み出される。逐次読出し方式においては、X線検出素子列124単位で時間をずらしながら電気信号の読出しが行われる。一例としては、1列目のX線検出素子列124から最終列目のX線検出素子列124まで読出し開始タイミングを時間的にずらしなら順番に電気信号の読出しが行われる。
【0041】
図2に示すように、制御装置15は、駆動装置151とVT信号発生器152とを有する。駆動装置151は、モータ等のアクチュエータと、モータで発生した動力を伝達するためのベルト等の動力伝達機構とを含む。駆動装置151は、コンソール40からの制御信号に従って、回転フレーム13を回転軸(Z軸)回りに既定の角速度で回転する。
【0042】
VT信号発生器152は、第1の時間間隔で第1の切替信号を発生する。具体的には、VT信号発生器152は、回転フレーム13が既定角度回転する時間間隔に対応する第1の時間間隔毎に、電気パルス信号である第1の切替信号を生成する。VT信号発生器152は、一例として、駆動装置151に取り付けられたロータリーエンコーダにより実現される。第1の切替信号は、ビューの切り替えに用いられる制御信号であり、以下、VT信号と呼ぶ。VT信号の波形は、特に限定されないが、矩形であるとする。生成されたVT信号は、データ収集回路18に出力される。VT信号発生器152は、第1信号発生部の一例である。
【0043】
図2に示すように、X線高電圧装置14は、管電圧制御回路141を有する。管電圧制御回路141は、X線管11に印加される管電圧を高管電圧と低管電圧との間で交互に切り替える。第1実施形態に係る管電圧制御回路141は、VT信号発生器152からのVT信号に基づいて、管電圧を高管電圧と低管電圧との間で交互に切り替える。管電圧制御回路141は、管電圧制御部の一例である。
【0044】
図2に示すように、データ収集回路18は、データ収集制御回路51、A/D変換回路52及び補正回路53を有する。
【0045】
データ収集制御回路51は、FPGA等の制御回路により実現され、X線検出器12からの電気信号の読出とA/D変換回路52によるデータ収集とを制御する。具体的には、データ収集制御回路51は、ビュー切替制御回路511、読出制御回路512、ゲイン用同期信号発生回路513及びゲイン切替制御回路514を有する。ビュー切替制御回路511、読出制御回路512、ゲイン用同期信号発生回路513及びゲイン切替制御回路514は、ハードウェア的に別々の制御基板に実装されてもよいし、1個の制御基板に実装されてもよい。
【0046】
ビュー切替制御回路511は、VT信号に基づいてビューを切り替える。ビューは、A/D変換回路52によるデジタルデータのサンプリング期間に対応する。一例として、回転フレーム13が1周する間の時間期間は、1000個や2000個等の複数個のビューに分割される。ビューの切替によりビュー番号が1個ずつ加算される。ビュー切替制御回路511は、ビューの切替に従い、読出制御回路512及びA/D変換回路52を制御する。ビュー切替制御回路511は、ビュー切替部の一例である。
【0047】
読出制御回路512は、逐次読出し方式で複数のX線検出素子121にそれぞれ接続された複数の読出スイッチ122の開閉を制御する。具体的には、X線検出素子列124毎に電気信号の読出開始タイミングをずらしつつ、全てのX線検出素子列からの読出が完了するように複数の読出スイッチ122の開閉を制御する。読出スイッチ122を閉じる場合、ON信号を供給し、開く場合、OFF信号を供給する。
【0048】
ゲイン用同期信号発生回路513は、VT信号の第1の時間間隔よりも短い第2の時間間隔(高周波数)で第2の切替信号を発生する。第2の切替信号は、A/D変換回路52のゲイン(以下、DASゲインと呼ぶ)を切り替えるための同期信号に用いられるのでゲイン用同期信号と呼ぶ。一例として、ゲイン用同期信号は、VT信号に同期した、VT信号のパルス発生周期の整数倍のパルス発生周期を有する。ゲイン用同期信号の生成方法は、特に限定されないが、一例として、VT信号をアップサンプリングすることにより生成されればよい。ゲイン用同期信号は、ゲイン切替制御回路514とA/D変換回路52とに供給される。ゲイン用同期信号発生回路513は、第2信号発生部の一例である。
【0049】
ゲイン切替制御回路514は、ゲイン用同期信号に基づいてA/D変換回路52のDASゲインを切り替える。具体的には、ゲイン切替制御回路514は、ゲイン用同期信号に基づいて、高管電圧に対応するDASゲイン(以下、高管電圧ゲインと呼ぶ)と低管電圧に対応するDASゲイン(以下、低管電圧ゲインと呼ぶ)との間でDASゲインを切り替える。ゲイン切替制御回路514は、X線検出器12を介して収集されたデジタルデータに対応する管電圧に合致するように高管電圧ゲインと低管電圧ゲインとに切り替える。具体的には、高管電圧ゲインに切り替える場合、高ゲイン切替信号を供給し、低管電圧ゲインに切り替える場合、低ゲイン切替信号を供給する。ゲイン切替制御回路514は、ゲイン切替部の一例である。
【0050】
A/D変換回路52は、X線検出器12を介してビュー単位でデータ収集を行う。具体的には、A/D変換回路52は、ビュー切替制御回路511及びゲイン切替制御回路514による制御に従い、X線検出器12から読み出された電気信号を、高管電圧ゲイン又は低管電圧ゲインで、ビュー単位でデジタルデータに変換する。A/D変換回路52は、高管電圧の印加時に照射されたX線を受けて生成された電気信号については、高管電圧ゲインでA/D変換を行い、低管電圧の印加時に照射されたX線を受けて生成された電気信号については、低管電圧ゲインでA/D変換を行う。具体的には、A/D変換回路52は、ゲイン切替器521、高管電圧用のA/D変換器522及び低管電圧用のA/D変換器523を有する。A/D変換回路52は、データ収集部の一例である。
【0051】
ゲイン切替器521は、高管電圧用のA/D変換器522及び低管電圧用のA/D変換器523の前段に設けられ、ゲイン切替制御回路514による切替制御に従い、高管電圧ゲインと低管電圧ゲインとの間でDASゲインを切り替える。具体的には、ゲイン切替器521以後は高管電圧ゲインのためのA/D変換系統と低管電圧ゲインのためのA/D変換系統とに分岐されている。ゲイン切替器521は、例えば、3点スイッチ等の切替スイッチを有する。一方出力端子には高管電圧ゲインで電気信号を増幅してデジタルデータに変換するA/D変換器522が接続され、他方出力端子には低管電圧ゲインで電気信号を増幅してデジタルデータに変換するA/D変換器523が接続される。高ゲイン切替信号に応答して3点スイッチは、入力端子と一方出力端子とを接続し、X線検出器12から読み出された電気信号が高管電圧用のA/D変換器522に供給される。低ゲイン切替信号に応答して3点スイッチは、入力端子と他方出力端子とを接続し、X線検出器12から読み出された電気信号が低管電圧用のA/D変換器523に供給される。
【0052】
高管電圧用のA/D変換器522は、高管電圧ゲインで電気信号をデジタルデータに変換するA/D変換器である。具体的には、高管電圧用のA/D変換器522は、被検体Pに対するスキャン時であって高管電圧の印加時に対応する第1のビュー(以下、高管電圧ビューと呼ぶ)において、読出スイッチ122が閉じている時にX線検出素子121から供給された電気信号に高管電圧ゲインでA/D変換を施してデジタルデータに変換する。当該デジタルデータを高管電圧用投影データと呼ぶ。投影データは、画像再構成に供されるデジタルデータである。
【0053】
高管電圧用のA/D変換器522は、高管電圧ビューにおいて、読出スイッチ122が開いている時に生じる電気信号を高管電圧ゲインでA/D変換を施してデジタルデータに変換する。当該デジタルデータを高管電圧ゲインのドリフト補正データと呼ぶ。ドリフト補正データは、スキャン時におけるA/D変換回路52の特性変化に伴うデジタル値の時間的変動を表すデジタルデータである。投影データに生じる当該時間的変動を補正することをドリフト補正と呼ぶ。ドリフト補正データは、投影データに対するドリフト補正に使用される。また、A/D変換器522は、被検体Pに対するスキャン時外であって高管電圧の印加時において、読出スイッチ122が閉じている時にX線検出素子121から読み出された電気信号に高管電圧ゲインでA/D変換を施してデジタルデータに変換する。当該デジタルデータを高管電圧ゲインのオフセット補正データと呼ぶ。オフセット補正データは、個体差や経年劣化等に伴うA/D変換回路52の特性変化に伴うデジタル値の時間的変動を表すデジタルデータである。投影データに生じる当該時間的変動を補正することをオフセット補正と呼ぶ。オフセット補正データは、投影データに対するオフセット補正に使用される。
【0054】
低管電圧用のA/D変換器523は、低高管電圧ゲインで電気信号をデジタルデータに変換するA/D変換器である。具体的には、低管電圧用のA/D変換器523は、被検体Pに対するスキャン時であって低管電圧の印加時に対応する第2のビュー(以下、低管電圧ビューと呼ぶ)において、読出スイッチ122が閉じている時にX線検出素子121から供給された電気信号に低高管電圧ゲインでA/D変換を施してデジタルデータに変換する。当該デジタルデータを低管電圧用投影データと呼ぶ。
【0055】
低管電圧用のA/D変換器523は、低管電圧ビューにおいて、読出スイッチ122が閉じている時に生じる電気信号に低高管電圧ゲインでA/D変換を施してデジタルデータに変換する。当該デジタルデータを低管電圧ゲインのドリフト補正データと呼ぶ。また、低管電圧用のA/D変換器523は、被検体Pに対するスキャン時外であって低管電圧の印加時において、読出スイッチ122が閉じている時にX線検出素子121から読み出された電気信号に低高管電圧ゲインでA/D変換を施してデジタルデータに変換する。当該デジタルデータを低管電圧ゲインのオフセット補正データと呼ぶ。
【0056】
補正回路53は、演算回路531と補正データ記憶装置532とを有するプロセッサである。演算回路531は、各種デジタルデータに基づいて種々のデータ演算を行う。一例として、演算回路531は、高管電圧ゲインのドリフト補正データに基づいて高管電圧ビューの投影データにドリフト補正を行い、低管電圧ゲインのドリフト補正データに基づいて低管電圧ビューの投影データにドリフト補正を行う。他の例として、演算回路531は、高管電圧ゲインのオフセット補正データに基づいて高管電圧ビューの投影データにオフセット補正を行い、低管電圧ゲインのオフセット補正データに基づいて低管電圧ビューの投影データにオフセット補正を行う。各種補正の施された高管電圧用及び低管電圧用の投影データは、データ伝送装置等を介してコンソール40に供給される。なお、ドリフト補正及びオフセット補正は、データ収集回路18により行われなくてもよく、例えば、コンソール40の処理回路44により行われてもよい。
【0057】
補正データ記憶装置532は、高管電圧ゲインのドリフト補正データ、高管電圧ゲインのオフセット補正データ、低管電圧ゲインのドリフト補正データ及び低管電圧ゲインのオフセット補正データを記憶する。
【0058】
次に、
図1のX線コンピュータ断層撮影装置1におけるkVスイッチングに係る主要構成の動作例について説明する。なお、X線検出素子列数は例示のため320列であるとする。
【0059】
図4は、各X線検出素子列からの電気信号の読出完了時刻を示す図である。
図4の縦軸はX線検出素子列の番号(収集列番号)を表し、横軸はビューを表す。
図4に示す斜めの実線は各X線検出素子列からの電気信号の読出を実施した時刻を結んだ線を表す。なお、各X線検出素子列からの電気信号の読出は瞬間的に行われるものとする。すなわち、斜めの実線は各X線検出素子列からの電気信号の読出完了時刻を表している。
図4においては列番号「1」のX線検出素子列から列番号「320」のX線検出素子列まで順番に電気信号の読出が行われるものとする。例えば、開始列「1」に属するX線検出素子121では各ビューの開始時刻から電気信号の蓄電(積分)が行われ、当該ビューの終了時刻において瞬間的に読出が行われ、次のビューの開始時刻から再び電気信号の蓄電が行われる。
図4に示すように、逐次読出し方式では各X線検出素子列単位で読出開始タイミングがずらされる。そのため、開始列「1」以外のX線検出素子列では、各ビューの開始時刻と読出実施時刻とが一致せず、電気信号の読出遅れが発生する。開始列「1」から離れているX線検出素子列ほど、開始列「1」での読出実施時刻(すなわち、ビューの開始時刻)に対して電気信号読出時刻が遅延(乖離)する。最終列「320」では開始列「1」での読出時刻から期間T41分の電気信号読出時刻の遅れが生じることとなる。
【0060】
各ビューにおいて、最終列「320」のX線検出素子列の読出が完了するまで管電圧の切り替えは禁止される。従って管電圧の切り替えが許容されるのは、最終列「320」のX線検出素子列の読出実施時刻から次のビューの開始時刻までの期間T42である。
【0061】
次に第1実施形態に係る高管電圧ゲインと低管電圧ゲインとの切替について説明する。
図5は、第1実施形態に係る高管電圧ゲインと低管電圧ゲインとの切替に関するタイミングチャートの一例を示す図である。X線検出素子列は、N列(row)あるものとする。
【0062】
図5に示すように、VT信号発生器152によりVT信号が一定の第1の時間間隔で繰り返し出力され、VT信号の出力を契機としてビュー切替制御回路511によりビューが切り替えられる。X線高電圧装置14により、管電圧(kV)がビュー毎に高管電圧と低管電圧とに交互に切り替えられる。現実的には、高管電圧と低管電圧とは瞬間的に切りかわらず、数ビュー程度の移行期が存在する。
図5においては、電圧値が安定している安定期が1.5ビューに設定され、管電圧の移行期も1.5ビューに設定されている。
【0063】
図5に示すように、VT信号に同期して、ゲイン用同期信号発生回路513により、ゲイン用同期信号が第1の時間間隔より短い第2の時間間隔で繰り返し出力される。ゲイン用同期信号は、ゲイン切替制御回路514とA/D変換回路52とに供給される。ゲイン切替制御回路514は、ゲイン用同期信号に基づいて、DASゲインを高管電圧ゲインと低管電圧ゲインとで交互に切り替える。より詳細には、安定期におけるゲイン用同期信号の第1のパルスに同期して、ゲイン切替制御回路514は、A/D変換回路52にゲイン切替指示を通知する。ゲイン切替指示として、高管電圧ゲインに切り替える場合、高ゲイン切替信号をA/D変換回路52に供給し、低管電圧ゲインに切り替える場合、低ゲイン切替信号をA/D変換回路52に供給する。
【0064】
高管電圧ゲインに切り替えるか低管電圧ゲインに切り替えるかについてのゲイン変更計画は、種々の実施例が可能である。一例として、撮影計画機能445の実現により処理回路44は、スキャン計画時において、1番目のビューは低管電圧ゲイン、4番目のビューは高管電圧ゲインのように、ビュー番号にDASゲインの種別を予め設定したリスト(以下、ゲイン切替計画と呼ぶ)を作成する。ゲイン切替計画は、スキャン前において、ゲイン切替制御回路514に供給される。スキャン時においてゲイン切替制御回路514は、現在のビュー番号をゲイン切替計画に当てはめて現在のビュー番号に対応するDASゲインの種別を特定し、特定された種別へのゲイン切替指示をA/D変換回路52に通知する。現在のビュー番号は、ビュー切替制御回路511から通知されればよい。
【0065】
他の例として、スキャン中にリアルタイムでコンソール40の処理回路44からゲイン切替指示をゲイン切替制御回路514に送信してもよい。より詳細には、処理回路44は、現在のビュー番号をゲイン切替計画に当てはめて現在のビュー番号に対応するDASゲインの種別を特定し、特定された種別へのゲイン切替指示をゲイン切替制御回路514に送信する。この際、処理回路44は、VT信号に同期してゲイン切替指示を送信するとよい。ゲイン切替制御回路514は、現在のビューの切替指示ビューにおいて、処理回路44からのゲイン切替指示と同一のゲイン切替指示をA/D変換回路52に通知すればよい。
【0066】
なお、ゲイン切替計画は、ビュー番号毎にDASゲインの種別が設定されたリストであるとしたが、これに限定されない。例えば、ゲイン切替計画は、ビュー番号が奇数番目と偶数番目とでDASゲインの種別が分かれる場合、奇数と偶数との各々にDASゲイン種別が設定されたリストでもよい。また、ゲイン切替計画は、ビュー番号とDASゲインの種別との関係式により表されてもよい。
【0067】
上記の通り、ゲイン用同期信号の第1のパルスにおいてゲイン切替指示がなされた場合、第1のパルスに後行する第2のパルスに同期して、A/D変換回路52のゲイン切替器521は、DASゲインの切替を実施する。
【0068】
具体的には、低管電圧の安定期(
図5の4ビュー目等)においては、ゲイン切替制御回路514は、ゲイン用同期信号の第1のパルスに同期して、A/D変換回路52に低管電圧ゲインへのゲイン切替指示を通知する。そして、第1のパルスの次の第2のパルスに同期して、ゲイン切替器521は、高管電圧ゲイン用から低管電圧ゲインに切り替える。DASゲインの切替直後において低管電圧用A/D変換器523の動作は不安定であるので、DASゲインの切替実施から次のビューの開始時刻までの期間は、低管電圧用A/D変換器523の安定化に供される。
【0069】
同様に、高管電圧の安定期(
図5の1ビュー目又は7ビュー目等)においては、ゲイン用同期信号の第1のパルスに同期して、A/D変換回路52に高管電圧ゲインへのゲイン切替指示を通知する。そして、第1のパルスの次の第2のパルスに同期して、ゲイン切替器521は、低管電圧ゲイン用から高管電圧ゲインに切り替える。DASゲインの切替実施から次のビューの開始時刻までの期間は、高管電圧用A/D変換器522の安定化に供される。
【0070】
なお、第2のパルスは第1のパルスに次のパルスでもよいし、同一ビューに出力されたパルスであれば、数個後のパルスでもよい。
【0071】
図5に示すように、VT信号に同期して、読出制御回路512により、X線検出器12に対する逐次的な蓄電(積分)と読出とが行われる。より詳細には、高管電圧又は低管電圧の安定期において読出スイッチ122を閉じてX線検出素子121により蓄電が行われる。蓄電は、X線検出素子列1列又は所定数列毎に蓄電開始時間をずらして、略1ビュー期間に相当する時間長に亘り行われる。蓄電が終了したX線検出素子列から順番にX線検出素子121から電気信号の読出が行われる。蓄電の終了時から所定時間の経過時までの期間T51において、読出スイッチ122を開いて、X線検出素子121から電気信号の読出が行われる。期間T51の終了時刻から所定時間の経過時刻までの期間T52にはドリフト補正データのための読み出しが行われる。期間T52においてはX線検出素子121に電気信号は蓄電されていないことが想定される。蓄電の無い状態でX線検出素子121からドリフト補正データが読み出される。
【0072】
上記の通り、読出はX線検出素子列124毎に同一ビュー内で時間をずらして開始される。1ビュー目のX線照射により蓄電された電気信号は次の2ビュー目において読み出される。
図5に示すように、1列目からN列目にかけて電気信号の読出遅れが増大することに伴い、2列目以降のX線検出素子列では、2ビュー目と3ビュー目とに跨がって読出が行われることとなる。
【0073】
電気信号の読出完了後、高管電圧用A/D変換器522又は低管電圧用A/D変換器523により、設定済みのDASゲインで電気信号をデジタルデータに変換される。具体的には、高管電圧の印加期間においてはDASゲインが高管電圧ゲインに設定されているので、電気信号がX線検出素子121から高管電圧用A/D変換器522に供給され、高管電圧ゲインで投影データに変換される。低管電圧の印加期間においてはDASゲインが低管電圧ゲインに設定されているので、電気信号がX線検出素子121から低管電圧用A/D変換器523に供給され、低管電圧ゲインで投影データに変換される。
【0074】
ここで、本実施形態と比較例とにおける差異について説明する。比較例は、VT信号に同期してゲイン切替指示とA/D変換回路によるデータ収集とを行われる方式である。
【0075】
図6は、比較例における高管電圧ゲインと低管電圧ゲインとの切替に関するタイミングチャートの一例を示す図である。なお、比較例も、
図5と同様、安定期と移行期とが1.5ビューに設定されているものとする。
【0076】
図6に示すように、比較例によれば、VT信号に同期してゲイン切替指示とA/D変換回路によるデータ収集とを行われる。例えば、4ビュー目においてVT信号に同期してゲイン切替指示が行われたとしても、当該ビューにおいて更なるVT信号は出力されないので、A/D変換回路によるデータ収集を行うことができない。次の5ビュー目において出力されたVT信号に同期して漸くデータ収集が行われる。1列目では、4ビュー目における低管電圧の印加時に蓄電された電荷の全てが、5ビュー目において低管電圧ゲインで読み出される。しかし、N列目等の2列目以降のX線検出素子列では、電気信号の読出が5ビュー目と6ビュー目とに跨がって行われる。しかし、6ビュー目では、DASゲインが高管電圧ゲインに切り換えられているので、低管電圧の印加時に蓄電された電荷が高管電圧ゲインで読み出されることとなる。すなわち、比較例においては、蓄電時に関する管電圧とDASゲインに関する管電圧とが、ビューを跨いで読出が行われるX線検出素子列において一致しないこととなる。この不一致により、低管電圧の印加時に蓄電された電気信号に対しては高管電圧ゲインでデータ収集が行われ、高管電圧の印加時に蓄電された電気信号に対しては低管電圧ゲインでデータ収集が行われることとなり、適切なゲインでデータ収集を行うことができない。また、安定期が2ビュー以上ある場合、同一管電圧について高管電圧ゲインと低管電圧ゲインとの双方でデータ収集が行われることとなり、投影データの質が悪化してしまう。
【0077】
本実施形態によれば、
図5に示すように、ビューを跨いで読出が行われるX線検出素子列であっても、蓄電時に関する管電圧とDASゲインに関する管電圧とが一致することとなる。これによりkVスイッチングに同期したDASゲインの切替が可能になる。また、その結果、高管電圧ビューにおいては高管電圧ゲインでデータ収集を行い、低管電圧ビューにおいては低管電圧ゲインでデータ収集を行うことができるので、高管電圧及び低管電圧の何れに対しても適切なDASゲインでデータ収集を行うことが可能になる。
【0078】
次に、ドリフト補正データの収集について説明する。データ収集回路18は、被検体に対するスキャン時内において、高管電圧ゲインのドリフト補正データと低管電圧ゲインの第2のドリフト補正データとを収集する。
【0079】
図7は、ドリフト補正データの収集に関するタイミングチャートである。
図7に示すように、管電圧制御回路141により、管電圧が高管電圧(High)と低管電圧(Low)との間で交互に切り替えられる。また、上記の通り、ゲイン切替制御回路514により、DASゲインが管電圧の切替に同期して高管電圧(High)用ゲインと低管電圧(Low)用ゲインとの間で交互に切り替えられる。管電圧の移行期については何れのDASゲインも設定されていないとする。
【0080】
A/D変換回路52は、高管電圧の印加時に対応する第1のビュー(高管電圧ビュー)において、読出スイッチ122が閉じている時にA/D変換器522から出力されたデジタルデータを、第1のDASゲイン(高管電圧ゲイン)で、投影データとして収集し、当該投影データの収集後で読出スイッチ122が開いている時にA/D変換器522から出力されたデジタルデータを、高管電圧ゲインで、第1のドリフト補正データ(高管電圧用のドリフト補正データ)として収集する。また、A/D変換回路52は、低管電圧の印加時に対応する第2のビュー(低管電圧ビュー)において、読出スイッチ122が閉じている時にA/D変換器523から出力されたデジタルデータを、低管電圧ゲインで、投影データとして収集し、当該投影データの収集後で読出スイッチ122が開いている時にA/D変換器523から出力されたデジタルデータを、低管電圧ゲインで、第2のドリフト補正データ(低管電圧用のドリフト補正データ)として収集する。したがって、高管電圧用のドリフト補正データは、低管電圧の印加時と移行期とにおいて欠落し、低管電圧用のドリフト補正データは、高管電圧の印加時と移行期とにおいて欠落することとなる。
【0081】
図7に示すように、演算回路531は、低管電圧ビューにおいて欠落した高管電圧ゲインのドリフト補正データD70を、当該低管電圧ビュー以前の高管電圧ビューにおいて収集された高電圧ゲインのドリフト補正データD71及び/又は同一の低管電圧ビューにおいて収集された低管電圧ゲインのドリフト補正データD72に基づいて生成する。同様に、演算回路531は、高管電圧ビューにおいて欠落した低管電圧ゲインのドリフト補正データD73を、当該高管電圧ビュー以前の低管電圧ビューにおいて収集された低電圧ゲインのドリフト補正データD74及び/又は同一の高管電圧ビューにおいて収集された高管電圧ゲインのドリフト補正データD71に基づいて生成する。収集済みのドリフト補正データに基づいて生成されたドリフト補正データを計算上のドリフト補正データと呼ぶことにする。計算上のドリフト補正データは種々の方法で生成可能である。以下、幾つかの生成方法について説明する。
【0082】
(方法1) 演算回路531は、ある高管電圧ビューから次の高管電圧ビューになるまでの期間における複数ビュー分の高管電圧ゲインの計算上のドリフト補正データD70を、直前の高管電圧ゲインで収集した実測の高管電圧用のドリフト補正データD71に基づいて計算する。具体的には、低管電圧ビュー(安定期)における高管電圧用のドリフト補正データが、直前の高管電圧ビュー(安定期)における実測の高管電圧用のドリフト補正データの繰り返しになると見做して、当該実測の高管電圧用のドリフト補正データの移動平均を、低管電圧ビュー(安定期)における高管電圧用のドリフト補正データに設定する。なお、低管電圧ビュー(安定期)の直前及び直後の移行期における高管電圧用のドリフト補正データについては、直前の高管電圧ビュー(安定期)における実測の高管電圧用のドリフト補正データの移動平均に設定されてもよいし、当該移動平均に適宜補正を施して計算してもよい。低管電圧ゲインのドリフト補正データの欠落部分についても同様に生成可能である。
【0083】
(方法2) 演算回路531は、ある高管電圧ビューから次の高管電圧ビューになるまでの期間の複数ビュー分の高管電圧ゲインのドリフト補正データD70を、当該複数ビューにおける実測の低管電圧用のドリフト補正データD72に基づいて計算する。具体的には、当該複数ビューにおける実測の低管電圧用のドリフト補正データD72の振る舞いの傾向を解析して補正値を算出し、当該補正値を、直前の高管電圧ビューのドリフト補正データD71に対して適用して、計算上の高管電圧用のドリフト補正データD70を計算する。低管電圧ゲインのドリフト補正データの欠落部分についても同様に生成可能である。
【0084】
(方法3) 演算回路531は、ある高管電圧ビューから次の高管電圧ビューになるまでの期間の複数ビュー分の高管電圧ゲインのドリフト補正データD70を、当該複数ビューにおける実測の低管電圧用のドリフト補正データD72に基づいて計算する。具体的には、当該複数ビューにおける実測の低管電圧用のドリフト補正データD70を、直前の高管電圧ゲインのドリフト補正データD71の平均値に合致するようにバイアスを掛けることにより、計算上の高管電圧用のドリフト補正データD70を計算する。低管電圧ゲインのドリフト補正データの欠落部分についても同様に生成可能である。
【0085】
(方法4) 演算回路531は、機械学習モデルを使用してドリフト補正データの欠落部分を生成する。一例として、第1のビューの高管電圧ゲインのドリフト補正データを入力して当該第1のビューに後行する第2のビューの高管電圧ゲインのドリフト補正データを出力するように訓練された機械学習モデルを用いることが可能である。この場合、演算回路531は、高管電圧ビューにおける実測の高管電圧ゲインのドリフト補正データを当該機械学習モデルに適用して、当該高管電圧ビューに後行する低管電圧ビューの計算上の高管電圧ゲインのドリフト補正データを生成することが可能である。低管電圧ゲインのドリフト補正データの欠落部分についても同様に生成可能である。他の例として、第1のビューの低管電圧ゲインのドリフト補正データを入力して当該第1のビューの高管電圧ゲインのドリフト補正データを出力するように訓練された機械学習モデルを用いることが可能である。この場合、演算回路531は、低管電圧ビューにおける実測の低管電圧ゲインのドリフト補正データを当該機械学習モデルに適用して、当該低管電圧ビューにおける計算上の高管電圧ゲインのドリフト補正データを生成することが可能である。低管電圧ゲインのドリフト補正データの欠落部分についても同様に生成可能である。
【0086】
(方法5) 演算回路531は、高管電圧ゲインのドリフト補正データの欠落部分を、X線検出器12及び/又はデータ収集回路18内のデバイスの温度データに基づいて、直前の実測の高管電圧ゲインのドリフト補正データを補正して生成してもよい。X線検出器12及び/又はデータ収集回路18内のデバイスについて、温度測定器により温度データが測定されている。欠落部分に対応するビューに先行するビューにおける当該デバイスの温度変動を解析し、当該温度変動に基づいて計算上の高管電圧用のドリフト補正データを生成することが可能である。低管電圧ゲインのドリフト補正データの欠落部分についても同様に生成可能である。
【0087】
上記方法により生成された実測又は計算上のドリフト補正データは、対応するDASゲインの種別及びビュー番号に関連付けて補正データ記憶装置532に記憶される。本実施形態によれば、高管電圧ゲインのドリフト補正データと低管電圧ゲインのドリフト補正データとを収集することが可能になる。また、上記方法により欠落部分を補間することにより、全ビューに亘り高管電圧ゲインのドリフト補正データと低管電圧ゲインのドリフト補正データとを収集することが可能になる。
【0088】
次に、オフセット補正データの収集について説明する。データ収集回路18は、高管電圧ゲインに対応する第1のオフセット補正データと低管電圧ゲインに対応する第2のオフセット補正データとを収集する。
【0089】
図8は、オフセット補正データの収集に関するタイミングチャートである。
図8に示すように、CT検査は、スキャン前、スキャン及びスキャン後の局面を有する。スキャン局面においては、上記の通り、kVスイッチングによるデュアルエナジースキャンが行われる。スキャン前及び/又はスキャン後において、データ収集回路18により、高管電圧ゲインのオフセット補正データと低管電圧ゲインのオフセット補正データとが収集される。データ収集回路18は、高管電圧の印加時において、読出スイッチ122が閉じている時又は開いている時にA/D変換器522から出力されたデジタルデータを高管電圧ゲインのオフセット補正データとして収集し、低管電圧の印加時において、読出スイッチ122が閉じている時又は開いている時にA/D変換器523から出力されたデジタルデータを低管電圧ゲインのオフセット補正データとして収集する。各DASゲインのオフセット補正データは、360度分のビューの全てで収集される必要はなく、任意のビューにおいて収集されればよい。収集された各DASゲインのオフセット補正データは、収集したビューと収集していないビューとの双方について使用可能である。
【0090】
オフセット補正データの収集方法は、大別して3パターンが考えられる。
【0091】
図8に示すように、パターン1では、スキャン前において高管電圧ゲインのオフセット補正データと低管電圧ゲインのオフセット補正データとの両方が収集される。高管電圧ゲインのオフセット補正データが先に収集され、低管電圧ゲインのオフセット補正データが後に収集されてもよいし、低管電圧ゲインのオフセット補正データが先に収集され、高管電圧ゲインのオフセット補正データが後に収集されてもよい。
【0092】
図8に示すように、パターン2では、スキャン前において高管電圧ゲインのオフセット補正データが収集され、スキャン後において低管電圧ゲインのオフセット補正データが収集される。反対に、スキャン前において低管電圧ゲインのオフセット補正データが収集され、スキャン後において高管電圧ゲインのオフセット補正データが収集されてもよい。
【0093】
図8に示すように、パターン3では、スキャン前及びスキャン後の双方で、高管電圧ゲインのオフセット補正データと低管電圧ゲインのオフセット補正データとの両方が収集される。例えば、スキャン前において高管電圧ゲインのオフセット補正データが低管電圧ゲインのオフセット補正データに先行して収集され、スキャン後において低管電圧ゲインのオフセット補正データが高管電圧ゲインのオフセット補正データに先行して収集される。なお、スキャン前及びスキャン後各々での高管電圧ゲインのオフセット補正データと低管電圧ゲインのオフセット補正データとの収集順序は特に限定されない。
【0094】
上記方法により生成された実測又は計算上のオフセット補正データは補正データ記憶装置532に記憶される。本実施形態によれば、高管電圧ゲインのオフセット補正データと低管電圧ゲインのオフセット補正データとを収集することが可能になる。
【0095】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態に係るkVスイッチングに関する主要構成の構成例を示す図である。なお以下の説明において、第1実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0096】
図9に示すように、第2実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置1は、kVスイッチングに係る主要構成として、X線検出器12、X線高電圧装置14、制御装置15及びデータ収集回路18を有する。データ収集回路18のデータ収集制御回路54は、ビュー切替制御回路541、読出制御回路542、ゲイン用同期信号発生回路543及びゲイン切替制御回路544の他、VT+信号発生器545を有する。
【0097】
ビュー切替制御回路541は、第1実施形態のビュー切替制御回路511と同様、VT信号発生器152からのVT信号に基づいてビューを切り替える。
【0098】
読出制御回路542は、第1実施形態の読出制御回路512と同様、逐次読出し方式で複数のX線検出素子121にそれぞれ接続された複数の読出スイッチ122の開閉を制御する。
【0099】
ゲイン用同期信号発生回路543は、第1実施形態のゲイン切替制御回路514と同様、ゲイン用同期信号を発生する。
【0100】
VT+信号発生器545は、全てのX線検出素子列124からの電気信号読出が終了したことを通知する信号であるVT+信号を発生する。上記の通り、読出制御回路542は、X線検出素子列124単位で、蓄電ビューにおいてON信号を読出スイッチ122に供給し、読出ビューにおいてOFF信号を供給する。VT+信号発生器545は、読出制御回路542のOFF信号の供給を監視し、最終列のX線検出素子列124に対する読出スイッチ122へのOFF信号の供給が行われたことを契機としてVT+信号を発生する。なお、VT+信号発生器545は、OFF信号の供給時刻から任意の遅延時間だけ遅れてVT+信号を発生してもよい。VT+信号は、管電圧制御回路142とゲイン切替制御回路544とに供給される。
【0101】
ゲイン切替制御回路544は、ゲイン用同期信号とVT+信号とに基づいてDASゲインを切り替える。具体的には、ゲイン切替制御回路544は、ゲイン用同期信号とVT+信号との双方が出力されたタイミング(すなわち、ゲイン用同期信号とVT+信号とのANDのタイミング)で、DASゲインを高管電圧ゲインと低管電圧ゲインとの間で切り替える。高管電圧ゲインに切り替えるか低管電圧ゲインに切り替えるかについてのゲイン変更計画は、第1の実施形態と同様である。なお、処理回路44がゲイン切替指示をゲイン切替制御回路514に送信する場合、VT+信号に同期してゲイン切替指示を送信するとよい。これによりゲイン切替制御回路514は、VT+信号を受けた次のビューでA/D変換回路52にゲイン切替指示を通知することができる。
【0102】
第2実施形態に係る管電圧制御回路142は、VT信号ではなく、VT+信号に基づいて管電圧を高管電圧と低管電圧との間で切り替える。VT+信号に基づいて管電圧を切り替えることにより、全てのX線検出素子列124の読出が完了した直後から管電圧の切替動作を実施することが可能になる。
【0103】
次に、第2実施形態に係る高管電圧ゲインと低管電圧ゲインとの切替について説明する。
図10は、第2実施形態に係る高管電圧ゲインと低管電圧ゲインとの切替に関するタイミングチャートの一例を示す図である。
【0104】
図10に示すように、VT信号発生器152によりVT信号が一定の第1の時間間隔で繰り返し出力され、VT信号の出力を契機としてビュー切替制御回路511によりビューが切り替えられる。また、VT+信号発生器545によりVT+信号が、最終列の信号読出が終了したタイミングで出力される。ゲイン切替制御回路544は、VT+信号が出力された次のビューにおけるゲイン用同期信号の第1のパルスの出力に同期してゲイン切替指示を、A/D変換回路52に通知する。そしてA/D変換回路52のゲイン切替器521は、第1のパルスに後行する第2のパルスの出力に同期して、DASゲインを切り替える。第2のパルスは、第1のパルスの次に出力されるパルスでもよいし、数個後のパルスでもよい。これにより第1実施形態と同様、蓄電時に関する管電圧とDASゲインに関する管電圧とが一致することとなる。
【0105】
なお、第2実施形態においても、
図5に示す第1実施形態と同様、VT信号に同期して、読出制御回路512により、X線検出器12に対する逐次的な蓄電(積分)と読出とが行われる。より詳細には、高管電圧又は低管電圧の安定期のビューにおいて読出スイッチ122を閉じてX線検出素子121により蓄電が行われる。蓄電は、X線検出素子列1列又は所定数列毎に蓄電開始時間をずらして、略1ビュー期間に相当する時間長に亘り行われる。蓄電が終了したX線検出素子列から順番にX線検出素子121から電気信号の読出が行われる。蓄電の終了時から所定時間の経過時までの期間T101において、読出スイッチ122を開いて、X線検出素子121から電気信号の読出が行われる。期間T101の終了時刻から所定時間の経過時刻までの期間T102にはドリフト補正データのための読み出しが行われる。
【0106】
上記の通り、第2の実施形態によれば、VT+信号に同期して管電圧の切替とDASゲインの切替とが行われるので、KVスイッチングに同期してDASゲインを切り替えることが可能になる。
【0107】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、データ収集に係るゲインを管電圧の切替に同期して切り替えることができる。
【0108】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、プログラムを実行するのではなく、論理回路の組合せにより当該プログラムに対応する機能を実現しても良い。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1、
図2及び
図9における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0109】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0110】
1 X線コンピュータ断層撮影装置
10 架台
11 X線管
12 X線検出器
13 回転フレーム
14 X線高電圧装置
15 制御装置
16 ウェッジ
17 コリメータ
18 データ収集回路
19 開口部
30 寝台
31 基台
32 支持フレーム
33 天板
34 寝台駆動装置
40 コンソール
41 メモリ
42 ディスプレイ
43 入力インターフェース
44 処理回路
51,54 データ収集制御回路
52 A/D変換回路
53 補正回路
121 X線検出素子
122 読出スイッチ
123 読出線
124 X線検出素子列
141,142 管電圧制御回路
151 駆動装置
152 VT信号発生器
441 撮影制御機能
442 再構成機能
443 画像処理機能
444 表示制御機能
445 撮影計画機能
511 ビュー切替制御回路
512 読出制御回路
513 ゲイン用同期信号発生回路
514 ゲイン切替制御回路
521 ゲイン切替器
522 高管電圧用A/D変換器
523 低管電圧用A/D変換器
531 演算回路
532 補正データ記憶装置
541 ビュー切替制御回路
542 読出制御回路
543 ゲイン用同期信号発生回路
544 ゲイン切替制御回路
545 VT+信号発生器