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特開2023-108547香味付与用水中油型乳化組成物及びそれを用いた乾燥食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108547
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】香味付与用水中油型乳化組成物及びそれを用いた乾燥食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20230728BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20230728BHJP
   A23L 19/12 20160101ALN20230728BHJP
   A23L 19/00 20160101ALN20230728BHJP
   A21D 13/80 20170101ALN20230728BHJP
   A23L 17/50 20160101ALN20230728BHJP
   A23L 25/00 20160101ALN20230728BHJP
【FI】
A23L27/00 C
A23L5/00 H
A23L19/12 A
A23L19/00 Z
A21D13/80
A23L17/50 Z
A23L25/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009721
(22)【出願日】2022-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000189970
【氏名又は名称】植田製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】久保田 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】白石 光平
(72)【発明者】
【氏名】和田 征太郎
(72)【発明者】
【氏名】塚元 幸子
【テーマコード(参考)】
4B016
4B032
4B035
4B036
4B042
4B047
【Fターム(参考)】
4B016LC02
4B016LG05
4B016LG06
4B016LK06
4B016LK07
4B016LK09
4B016LK20
4B032DB22
4B032DK11
4B032DK17
4B032DK18
4B032DL03
4B032DP54
4B032DP62
4B035LC01
4B035LC05
4B035LE03
4B035LG12
4B035LG13
4B035LG19
4B035LG27
4B035LG54
4B035LK04
4B035LK13
4B035LP24
4B035LP26
4B036LC01
4B036LC04
4B036LE04
4B036LF19
4B036LH10
4B036LH11
4B036LH13
4B036LH28
4B036LK02
4B036LK03
4B036LP09
4B036LP12
4B042AC03
4B042AD04
4B042AG68
4B042AH01
4B042AK06
4B042AK08
4B042AK09
4B042AP17
4B042AP19
4B047LB09
4B047LE03
4B047LF01
4B047LF09
4B047LF10
4B047LG10
4B047LG21
4B047LG25
4B047LG26
4B047LG30
4B047LG36
4B047LP07
4B047LP20
(57)【要約】
【課題】食品に塗布後、乾燥させることで、油脂の染み出しや呈味成分の変質、香気成分の揮発、及び乾燥後の表面のべたつきが抑えられ、さらには保存時の香味の変化も抑制された乾燥食品を得ることができる香味付与用水中油型乳化組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】特定の粘度特性を持つ水飴及び/又は還元水飴と、呈味成分及び/又は香気成分、食用油脂、乳化剤、水を含有する水中油型乳化組成物を食品に塗布後、乾燥させることで、汎用性が高く、多様な風味を付与できるとともに、前記課題を解決することができる。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖固形分を70質量%とした時の水溶液の粘度が25℃で500~10,000mPa・sである水飴及び/又は還元水飴と、呈味成分及び/又は香気成分、食用油脂、乳化剤、水を含有し、以下の(1)~(3)を満たす、乾燥させて用いることを特徴とする香味付与用水中油型乳化組成物。
(1)前記水飴及び/又は還元水飴の糖固形分を前記組成物中に10質量%以上含有する。
(2)前記組成物中の食用油脂の含有量が55質量%以下である。
(3)前記組成物中の前記水飴及び/又は還元水飴の糖固形分に対する食用油脂の質量比が0.01~4.0である。
【請求項2】
増粘多糖類を含有する、請求項1に記載の香味付与用水中油型乳化組成物。
【請求項3】
増粘多糖類がキサンタンガムである、請求項1又は請求項2に記載の香味付与用水中油型乳化組成物。
【請求項4】
レシチン、及びHLBが5以上である乳化剤を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の香味付与用水中油型乳化組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の香味付与用水中油型乳化組成物を塗布後乾燥してなる乾燥食品。






【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品に呈味及び/又は香味を付与することができる香味付与用水中油型乳化組成物と、それを食品に塗布して乾燥させた乾燥食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、野菜や海藻類、魚介類、果物等を乾燥させた食品は、菓子やおつまみとしてそのまま食されたり、水や湯で戻して調理されたり、さらにはインスタント食品の具材として食されたりしている。
【0003】
これら乾燥食品は、乾燥時に味が変質したり、香りが失われたりしやすいため、それらを補うために種々の方法がとられている。例えば、予め着味液に浸漬してから乾燥させる方法や、乾燥後にシーズニングパウダーをまぶしたり、香気成分を含む油脂をスプレーしたりする方法が知られている。
【0004】
しかし、乾燥前に着味する方法では、乾燥によって揮発しやすい香気成分が失われたり、焦げ臭が付いたりして好ましい香味のものになりにくい。また、乾燥後に粉末状の呈味成分をそのまままぶす方法では食品の表面から呈味成分が外れやすいため、味付けが不十分となり、一方、乾燥後に香気成分をそのままスプレーする方法では、保存中に香気成分が揮発しやすいというデメリットがある。
【0005】
特許文献1には、水難溶性フレーバー素材を、糖と蛋白質を主体とする混合溶液に可溶化状に分散させたのち、糖溶液と混合することを特徴とする乾燥食品用香味付与剤の製造法が開示されている。この方法は、界面活性を有する水溶性蛋白質区分によって水難溶性フレーバー素材を分散させることを特徴としている。しかし、特殊な蛋白質であるため、蛋白質特有の異臭味があり、さらに乾燥後にはその異臭味が増すため、目的とする香味付与の邪魔となり、多様な風味を付与するには汎用性に欠ける。また、この方法では乾燥時に水難溶性フレーバー素材や液状油の染み出しが生じ、香気成分の揮発抑制効果や保存時のフレーバー損失及び劣化抑制効果は満足するものではなかった。さらには経日的に表面にべたつきが生じるといった問題点もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1-218569
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その課題は、油脂の染み出しや呈味成分の変質、香気成分の揮発、及び乾燥後の表面のべたつきが抑えられ、さらには保存時の香味の変化も抑制された乾燥食品を得ることができる香味付与用水中油型乳化組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定の粘度特性を持つ水飴及び/又は還元水飴と、呈味成分及び/又は香気成分、食用油脂、乳化剤、水を含有する水中油型乳化組成物を食品に塗布後、乾燥させることで、汎用性が高く、多様な風味を付与できるとともに、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち本発明は、以下の発明等に関する。
[1]糖固形分を70質量%とした時の水溶液の粘度が25℃で500~10,000mPa・sである水飴及び/又は還元水飴と、呈味成分及び/又は香気成分、食用油脂、乳化剤、水を含有し、以下の(1)~(3)を満たす、乾燥させて用いることを特徴とする香味付与用水中油型乳化組成物。
(1)前記水飴及び/又は還元水飴の糖固形分を前記組成物中に10質量%以上含有する。
(2)前記組成物中の食用油脂の含有量が55質量%以下である。
(3)前記組成物中の前記水飴及び/又は還元水飴の糖固形分に対する食用油脂の質量比が0.01~4.0である。
[2]増粘多糖類を含有する、[1]に記載の香味付与用水中油型乳化組成物。
[3]増粘多糖類がキサンタンガムである、[1]又は[2]に記載の香味付与用水中油型乳化組成物。
[4]レシチン、及びHLBが5以上である乳化剤を含有する、[1]~[3]のいずれか1項に記載の香味付与用水中油型乳化組成物。
[5][1]~[4]のいずれか1項に記載の香味付与用水中油型乳化組成物を塗布後乾燥してなる乾燥食品。
【発明の効果】
【0010】
本発明の香味付与用水中油型乳化組成物(以下、「本組成物」又は、単に「組成物」ともいう。)を食品に塗布後、乾燥させることで、油脂の染み出しや呈味成分の変質、香気成分の揮発、及び乾燥後の表面のべたつきが抑えられ、さらには保存時の香味の変化も抑制された乾燥食品を得ることができる。また、本組成物は乾燥、未乾燥の食品に関わらず塗布することができ、多様な風味を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施において必要な事項を説明する。
【0012】
まずは本組成物で使用する水飴及び還元水飴について述べる。水飴は、デンプンを酸や糖化酵素で加水分解して得られる単糖や二糖、多糖の混合物である。一方、還元水飴はそれら水飴をさらに水素添加し、グルコース末端を還元することにより製造される糖アルコール混合物の総称である。これらは液体状態、又は結晶状態で市販されているものを使用することができる。
【0013】
本組成物に用いる水飴及び/又は還元水飴は特定の粘度特性を持つ。すなわち、糖固形分を70質量%とした時の水溶液の粘度が25℃で500mPa・s以上である水飴及び/又は還元水飴を用いる。なお、本発明における当該粘度は、水飴及び/又は還元水飴の糖固形分を70質量%水溶液に調製し、ビスコテスターVT-04F(リオン株式会社製)、1号ローターを使用し、25℃で測定した値である。当該粘度が500mPa・sよりも低い水飴及び/又は還元水飴を用いると乾燥中、あるいは乾燥後に油脂の染み出しや呈味成分の変質、香気成分の揮発、乾燥後の表面のべたつきが生じ、さらには保存時の香味の変化の抑制も困難となる。当該粘度は、より好ましくは600mPa・s以上であり、800mPa・s以上が特に好ましい。粘度の上限は特に限定されないが、粘度が高すぎると本組成物の製造に困難をきたす場合があるため、より好ましくは10,000mPa・s以下であり、6,500mPa・s以下が特に好ましい。なお、水飴及び/又は還元水飴は、市販されているもの1種を単独で用いてもよいが、粘度特性が互いに異なる2種以上を併用することができる。その場合、糖固形分を70質量%とした時の25℃における水溶液の粘度が前記範囲を満たしていればよい。
【0014】
本組成物中には前記粘度範囲を満たす水飴及び/又は還元水飴の糖固形分を10質量%以上含有する。10質量%未満であると油脂の染み出しや呈味成分の変質、香気成分の揮発が生じ、さらには保存時の香味の変化の抑制も困難となる。より好ましくは15質量%以上であり、20質量%以上が特に好ましい。一方、上限値は特に限定されないが、高すぎると本組成物の製造に困難をきたす場合があるため60質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下が特に好ましい。
【0015】
次に食用油脂について述べる。本組成物に用いられる食用油脂は、動植物油脂及び/又はその加工油脂である。具体的には、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、なたね油、米油、ひまわり油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオバター、シア脂、マンゴー脂、サル脂、イリッペ脂、魚油、鯨油、又はそれらを原材料としたMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、水素添加油脂、エステル交換油脂、分別油脂のような化学的、酵素的、あるいは物理的処理を施して得られる油脂を1種、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本組成物を塗布後、乾燥させた食品の呈味成分や香気成分の感じやすさの観点から、上昇融点が55℃以下の食用油脂を使用することが好ましく、より好ましくは50℃以下であり、45℃以下が特に好ましい。
【0016】
本組成物中の食用油脂の含有量は組成物の総質量に対して55質量%以下である。より好ましくは50質量%以下であり、45質量%以下が特に好ましい。食用油脂の含有量が55質量%よりも高いと油脂の染み出しや呈味成分の変質、香気成分の揮発が生じ、さらには保存時の香味の変化の抑制も困難となる。一方、食用油脂の下限値は特に限定されないが、呈味成分の変質や香気成分の揮発、保存時の香味の変化の抑制の観点から、組成物の総質量に対して1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、10質量%以上が特に好ましい。
【0017】
本組成物中の、前記糖固形分に対する食用油脂の質量比は、0.01~4.0である。より好ましくは0.01~3.0であり、0.01~2.5が特に好ましい。糖固形分に対する食用油脂の質量比を前記範囲とすることで、油脂の染み出しや呈味成分の変質、香気成分の揮発が抑えられ、さらには保存時の香味の変化も抑制される。
【0018】
本組成物は、水相部と油相部を有する水中油型乳化組成物であることが必要である。すなわち本組成物は、糖固形分を70質量%とした時の水溶液の粘度が25℃で500~10,000mPa・sである水飴及び/又は還元水飴と水を含む水相部と、食用油脂を含む油相部を含有しており、これらが水中油型の乳化状態になっていることが重要である。油中水型の乳化状態であると、食品に塗布後、乾燥させると、食品の表面にほとんどの食用油脂が露出している状態となり、呈味成分の変質、香気成分の揮発が生じ、さらには保存時の香味の変化の抑制も困難となる。
【0019】
本組成物は、呈味成分及び/又は香気成分を含有する。
【0020】
本発明における呈味成分とは、塩味、甘味、辛味、苦味、酸味、旨味の中から選択される味覚を1つ以上生じさせる食品素材を意味する。その形状は本発明の効果を損ねない範囲であれば特に限定されるものではなく、液体状、粉末状、粒状のものを用いることができる。また、これらは水溶性、油溶性、水及び油のいずれにも不溶性であるものを使用することができる。例えば野菜類、果物類、ハーブ類、肉類、魚介類、香辛料などやその抽出物、それらの抽出物を乾燥させたものが挙げられ、具体的には塩、醤油、酢、砂糖、はちみつ、乾燥野菜、果汁、果肉、果皮、胡椒、唐辛子、カレー粉、ビーフエキス、チキンエキス、鰹エキス、乳製品、酵母エキス、アミノ酸などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
本組成物における呈味成分の含有量は特に限定されず、本発明の効果を損ねない範囲で、目的とする風味などにより適宜調節することができる。水溶性の呈味成分は水相部に溶解させて用い、不溶性の呈味成分や、水に入れるとままこになりやすい呈味成分は、水相部、油相部又は水中油型乳化組成物のいずれに分散させて用いてもよい。
【0022】
本発明における香気成分とは香料やシーズニングオイル、前記の呈味成分に含まれる香りの成分を意味する。香料とは、各種の天然原料を各種有機溶媒などで抽出処理したものや、酵素処理することで得られる天然香料のほか、化学合成で得られた化合物より得られる合成香料、及び天然香料と合成香料を混合した香料製剤などを示す。本組成物は水溶性、油溶性いずれの香料も含むことができるが、耐熱性の高い油溶性香料の方が好ましい。一方、シーズニングオイルとは、野菜類、果物類、ハーブ類、肉類、魚介類、香辛料などの原料素材の香気成分を食用油脂に移したものである。
【0023】
本組成物における香気成分の含有量は特に限定されず、本発明の効果を損ねない範囲で、目的とする風味などにより適宜調節することができる。例えば、香料を使用する場合は、その力価によるが0.01~10質量%の範囲であれば良好な風味を付与できるが、これらの量に限定されない。また、シーズニングオイルを使用する場合は、その主成分が食用油脂であるため、本発明においては食用油脂とシーズニングオイルの合計含有量が好ましい範囲となるように調節する。
【0024】
本組成物は、さらに乳化剤を含有する。使用される乳化剤としては、一般に食用に使用される乳化剤であれば良く、例えばグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ポリソルベートなどが挙げられ、これらの1種、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。乳化剤を含有することで、油脂の染み出しや呈味成分の変質、香気成分の揮発が抑えられ、さらには保存時の香味の変化も抑制される。
【0025】
本発明では、特にレシチンとHLBが5以上である乳化剤を併用することが好ましい。
なお、HLBとは、親水性疎水性バランス(Hydrophile Lipophile Balance)の略であって、乳化剤が親水性か親油性かを知る指標となるもので、0~20の値をとる。HLB値が小さい程、親油性が強いことを示し、大きい程、親水性が強いことを示す。
【0026】
レシチンとはホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン等のリン脂質の混合物をいい、具体的には大豆、なたね、ひまわり、卵などから得られるペースト状のレシチンや、これらを粉末化した高純度レシチン、溶剤で分画した分画レシチン、酵素処理したリゾレシチンなどを使用できる。
【0027】
HLBが5以上である乳化剤としては特に限定するものではないが、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる1種、又は2種以上を含有することが好ましい。より好ましくはHLBが5~10である有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステルからなる群より1種以上を選択してなる乳化剤と、HLBが11~16であるポリグリセリン脂肪酸エステルを併用することである。
【0028】
前記HLBが5~10である有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステルのHLBは、好ましくは5~8である。さらにその主要構成脂肪酸は、好ましくは炭素数16~22の飽和脂肪酸であり、より好ましくはパルミチン酸、又はステアリン酸であり、ステアリン酸が特に好ましい。なお、本願の主要構成脂肪酸とは構成脂肪酸中で最も多い脂肪酸のことである。
【0029】
前記HLBが11~16であるポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBは、12~14であることが好ましい。
【0030】
本組成物中の乳化剤の含有量としては特に限定されないが、0.01~5.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.05~3.0質量%であり、0.1~2.0質量%が特に好ましい。
【0031】
本組成物のより好ましい様態として増粘多糖類を含有する。増粘多糖類とは一般に高い粘性をもち、複数の糖からなる水溶性の多糖類を指すが、本発明で用いられる増粘多糖類としては、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ペクチン、タマリンドシードガム、グアーガム、ジェランガム、カードラン、プルラン、アルギン酸ナトリウム、カラギーナンなどのガム質が挙げられ、これらの1種、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中で、キサンタンガム、タマリンドシードガム、グアーガムが好ましく、キサンタンガムが特に好ましい。本組成物中における増粘多糖類の含有量は特に限定されないが、本組成物の総質量に対して0.01~1.0質量%が好ましい。
【0032】
本組成物は、前記成分以外に必要に応じてその他の原材料を含むことができる。例えば、デンプン類、デキストリン、食物繊維、酸化防止剤、着色料、pH調整剤、ビタミン、ミネラルなどが挙げられる。これらは、本発明の効果を損ねない範囲で含有することができる。
【0033】
本組成物は、水分を含有する。含有量としては本組成物中の水飴及び/又は還元水飴、増粘多糖類、乳化剤、水溶性の呈味成分や香料などの水溶性成分を溶解することができる量であればよく、本発明の効果を損ねない範囲で適宜調節することができる。
【0034】
次に本組成物の製造方法について述べる。本組成物は、特に限定されないが、従来の水中油型乳化組成物の製造方法と同様の方法により製造することができる。本発明の水中油型乳化組成物の製造方法は、水溶性成分を水に溶解させて水相部を得る工程と、油溶性成分を食用油脂に溶解させて油相部を得る工程、得られた水相部に油相部を添加して水中油型に乳化する工程とを備える。
【0035】
具体的には、水に水飴及び/又は還元水飴、増粘多糖類、水溶性乳化剤、呈味成分や水溶性香料などの水溶性成分を添加し、撹拌しながら加熱溶解させ水相部を得る。一方で食用油脂に油溶性乳化剤、油溶性香料、その他油溶性成分を添加し、撹拌しながら加熱溶解させ油相部を得る。増粘多糖類は、ままこになる場合は油相部に分散させたり、エタノールなどに分散させたりして添加しても良い。
【0036】
次に、水相部に油相部を添加し、乳化工程を経て水中油型乳化組成物を得る。乳化工程における乳化機としては、従来用いられているホモゲナイザーやホモミキサーなどを用いることができ、単にプロペラミキサーを用いた乳化タンクであっても良い。乳化前に水相部、油相部をそれぞれ殺菌しても良く、乳化後に殺菌しても良い。乳化、殺菌後は必要に応じて冷却しても良く、冷却方法としては、そのまま容器に移し替えて冷蔵庫や冷凍庫などで保管する方法や、容器ごとクーリングトンネルに通して連続式に行う方法が挙げられ、パーフェクターやオンレーターなどの掻取式連続熱交換装置での冷却であっても良い。
【0037】
本発明の乾燥食品とは、食品に本組成物を塗布し、べたつかない程度の水分量まで乾燥させて得られる食品である。塗布される食品としては特に限定されないが、農産物(野菜類、果実類、穀類、豆類、ナッツ類)、畜産物(肉類、乳類)、水産物(魚介類、海藻類)などやそれらを加工したもの、菓子類(焼き菓子、スナック菓子、米菓、和菓子)などが挙げられ、生あるいは半生の状態に塗布し、乾燥させても良く、既に乾燥されたものに塗布し、乾燥させても良い。
【0038】
本組成物を食品に塗布する方法は特に限定されず、刷毛で塗る方法、一部又は全部を浸漬する方法、噴霧する方法、滴下しながら付着させる方法など公知の方法を適宜採用することができる。さらには前記方法をミキサー、レボリングパン、エンローバーといった機器を用いて行っても良い。また、塗布方法や使用する機器に合わせて本発明の効果を損なわない範囲で本組成物を水で薄めて粘度調整したり、あるいは60℃程度まで加温したりして塗布することができる。
【0039】
乾燥方法としては特に限定されず、熱風乾燥法、凍結乾燥法、真空乾燥法、マイクロウェーブ乾燥法や、フライなどの公知の方法を適宜採用することができる。乾燥温度及び乾燥時間は、本組成物や本組成物を塗布される食品の水分量などによって適宜設定することができる。
【実施例0040】
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。なお、表2に示す糖液の配合率、及び表3~7に示す各組成物の配合率は質量%を示す。
【0041】
<水中油型乳化組成物の調製>
組成物の調製に用いた各成分を以下に示す。
【0042】
[水飴]
ハローデックス(糖固形分72質量%):林原社製
テトラップ(糖固形分72質量%):林原社製
【0043】
[還元水飴]
エスイー57(糖固形分70質量%):物産フードサイエンス社製
エスイー100(糖固形分70質量%):物産フードサイエンス社製
エスイー500(糖固形分70質量%):物産フードサイエンス社製
【0044】
[食用油脂]
なたね油:植田製油社製
パームオレイン(ヨウ素価60):植田製油社製
パーム油(ヨウ素価52):植田製油社製
【0045】
[乳化剤]
(レシチン)
レシチン(1)(大豆レシチン、商品名:日清レシチンDX):日清オイリオグループ社製
レシチン(2)(酵素分解レシチン、商品名:サンレシチンA-1):太陽化学社製
(ポリグリセリン脂肪酸エステル)
ポリグリセリン脂肪酸エステル(1)(ジグリセリンステアリン酸エステル、商品名:ポエムJ-2081V、HLB6):理研ビタミン社製
ポリグリセリン脂肪酸エステル(2)(ジグリセリンステアリン酸エステル、商品名:サンソフトQ-18D、HLB7):太陽化学社製
ポリグリセリン脂肪酸エステル(3)(デカグリセリンステアリン酸エステル、商品名:サンソフトQ-18S、HLB12):太陽化学社製
ポリグリセリン脂肪酸エステル(4)(デカグリセリンオレイン酸エステル、商品名:ポエムJ-0381V、HLB14):理研ビタミン社製
(有機酸モノグリセリド)
有機酸モノグリセリド(コハク酸ステアリン酸モノグリセリド、商品名:ポエムB-30、HLB5.5):理研ビタミン社製
(ショ糖脂肪酸エステル)
ショ糖脂肪酸エステル(ショ糖ステアリン酸エステル、商品名:シュガーエステルS-770、HLB7):三菱ケミカル社製
【0046】
[増粘多糖類]
増粘多糖類(1)(キサンタンガム、商品名:エコーガム):DSP五協フード&ケミカル社製
増粘多糖類(2)(タマリンドシードガム、商品名:グリロイド3S):DSP五協フード&ケミカル社製
【0047】
実施例、比較例に用いた水飴及び還元水飴の粘度を表1に示した。なお、当該粘度は、水飴及び還元水飴の糖固形分を70質量%水溶液に調製し、ビスコテスターVT-04F(リオン株式会社社製)、1号ローターを使用し、25℃で測定した値である。
【0048】
【表1】
【0049】
実施例、比較例に用いた水飴及び/又は還元水飴は表2に示す配合により調製した。
【0050】
【表2】
【0051】
<実施例1>
表3に示す配合に従って、以下の方法により実施例1の香味付与用水中油型乳化組成物を得た。なたね油にレシチン(1)及びポリグリセリン脂肪酸エステル(1)を混合し、70℃まで加温して溶解させ、青ネギ香料(長岡香料社製)を添加し、油相部を得た。一方、水に糖液(1)を混合し、70℃に加温して水相部を得た。前記水相部を撹拌しながら、そこへ前記得られた油相部を添加し、プロペラミキサーを用いて乳化し、加熱殺菌及び冷却し、実施例1のネギ風味の香味付与用水中油型乳化組成物を得た。
【0052】
<実施例2~8、比較例1~4>
表3に示す配合に従って、糖液の種類、糖液の配合率、なたね油の配合率、水の配合率を変えたこと以外は実施例1と同様にして実施例2~8、及び比較例1~4のネギ風味の香味付与用水中油型乳化組成物を得た。
【0053】
<比較例5>
表3に示す配合に従って、以下の方法により比較例5の組成物を得た。水に糖液(1)を混合し、70℃に加温した。そこへレシチン(1)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(1)、及び青ネギ香料(長岡香料社製)を添加し、プロペラミキサーを用いて乳化し、加熱殺菌及び冷却し、比較例5の組成物を得た。
【0054】
<比較例6>
表3に示す配合に従って、レシチン(1)及びポリグリセリン脂肪酸エステル(1)を混合しないこと以外は実施例1と同様にして比較例6の組成物を得た。
【0055】
<乾燥後の油脂の染み出し、組成物表面のべたつき評価>
前記で得られた実施例1~8及び比較例1~6の組成物について、乾燥後の油脂の染み出し及び組成物表面のべたつきについて次の方法で評価した。得られた組成物1gを直径90mmのシャーレ底面全体に塗布し、110℃で100分間熱風乾燥した後、25℃で30分間放冷した。乾燥した組成物の上に直径90mmの濾紙を乗せ、相対湿度40%、温度25℃の条件で一晩静置した。油脂の染み出しは濾紙へ移行した油脂量によって、組成物表面のべたつきは濾紙への組成物の張り付きによって評価した。
【0056】
[評価]
(油脂の染み出し)
◎(極めて良好) :油脂の染み出しがない
〇(良好) :ほとんど油脂の染み出しがない
△(不良) :部分的に油脂の染み出しがある
×(極めて不良) :大部分に油脂の染み出しがある
【0057】
(組成物表面のべたつき)
◎(極めて良好) :組成物の濾紙への張り付きがなく、乾燥した組成物の表面がさらさらしている
〇(良好) :組成物の濾紙への張り付きはないが、乾燥した組成物の表面がややべたついている
△(不良) :組成物の濾紙への部分的に張り付きがあり、乾燥した組成物の表面がべたついている
×(極めて不良) :組成物の濾紙への大部分に張り付きがあり、乾燥した組成物の表面がべたついている
【0058】
<乾燥食品の作製>
前記で得られた実施例1~8及び比較例1~6の組成物2.5gをそれぞれ水0.5gと混合し、市販のカットネギ10gに全量噴霧した後、80℃で4時間熱風乾燥し、乾燥ネギを得た。
【0059】
<乾燥食品の評価>
[評価]
得られた乾燥ネギについて、以下の項目を評価した。香味の変化は、ジッパー付きアルミ製パウチに乾燥ネギを入れ、温度25℃、相対湿度40%の条件で20日間保存した後の香味を評価した。
【0060】
(香味)
◎(極めて良好) :付与した味、香りが極めて良好に感じられる
〇(良好) :付与した味、香りが良好に感じられる
△(不良) :付与した味、香りが少し感じられる
×(極めて不良) :付与した味、香りがほとんど感じられない
【0061】
(触感)
◎(極めて良好) :手で触ってべたつきがない
〇(良好) :手で触ってほとんどべたつきがない
△(不良) :手で触って少しべたつく
×(極めて不良) :手で触ってべたつく
【0062】
(油脂の染み出し)
◎(極めて良好) :油脂の染み出しがない
〇(良好) :油脂の染み出しがほとんどない
△(不良) :部分的に油脂の染み出しがある
×(極めて不良) :全体的に油脂の染み出しがある
【0063】
(香味の変化)
◎(極めて良好) :保存前と比較し、味又は香りに変化が無く良好で、香りの強さにも変化がない
〇(良好) :保存前と比較し、味又は香りがやや変質し、香りがやや弱いが良好に感じられる
△(不良) :保存前と比較し、味又は香りが変質し、香りが弱く感じる
×(極めて不良) :保存前と比較し、味又は香りが大きく変質し、香りが極めて弱く感じる
【0064】
実施例1~8、比較例1~6における組成物の配合率、組成物中の糖固形分の質量%、組成物中の糖固形分に対する食用油脂の質量比(以下表中、「食用油脂/糖固形分」と表記)、評価結果を表3に示した。
【0065】
【表3】
【0066】
表3の結果から明らかなように、実施例1~8の組成物においては乾燥後の油脂の染み出しや表面のべたつきの評価で良好な結果が得られた。また、乾燥食品の評価においても乾燥ネギ表面に油脂の染み出しやべたつきがなく、付与した香料の香りが良好に感じられ、香味の変化が抑えられた乾燥ネギを得ることができた。一方、比較例1では乾燥後の油脂の染み出しや表面のべたつきの評価で不良な結果となった。また、乾燥食品の評価においても、乾燥ネギ表面に油脂の染み出しやべたつきが生じ、付与した香料の香りも弱く、さらには保存後の香りが弱く感じられた。比較例2~4では乾燥後の表面のべたつきの評価は良好であったが、油脂の染み出しが生じていた。また、乾燥食品の評価においても、乾燥ネギ表面に油脂の染み出しが生じ、付与した香料の香りも弱く、さらには保存後の香りが極めて弱く感じられた。食用油脂を含まない比較例5では乾燥後の油脂の染み出しや表面のべたつきの評価は良好であったが、乾燥食品の評価において、付与した香料の香りも弱く、さらには保存後の香りも極めて弱く感じられた。乳化剤を含まない比較例6では乾燥後の表面のべたつきの評価は良好であったが、油脂の染み出しが生じていた。また、乾燥食品の評価においても、乾燥ネギ表面に油脂の染み出しが生じ、付与した香料の香りも弱く、さらには保存後の香りも極めて弱く感じられた。
【0067】
<実施例9~11>
表4に示す配合に従って、以下の方法により実施例9~11の香味付与用水中油型乳化組成物を得た。パームオレイン(ヨウ素価60)にレシチン(1)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(1)を混合し、70℃まで加温して溶解させ、わさび香料(三栄源エフ・エフ・アイ社製)を添加し、油相部を得た。一方、水に糖液(3)、粉末醤油(仙波糖化工業社製)を混合し、必要に応じ、ポリグリセリン脂肪酸エステル(3)、増粘多糖類(1)を混合し、70℃に加温して水相部を得た。前記水相部を撹拌しながら、そこへ前記得られた油相部を添加し、プロペラミキサーを用いて乳化し、加熱殺菌及び冷却し、実施例9~11のわさび醤油風味の香味付与用水中油型乳化組成物を得た。
【0068】
<乾燥食品の作製>
前記得られた実施例9~11の組成物2.5gを市販の裂きイカ10gと混合した後、100℃で30分間熱風乾燥し、わさび醤油風味の裂きイカを得た。
【0069】
<乾燥食品の評価>
[評価]
得られたわさび醤油風味の裂きイカについて、実施例1~8及び比較例1~6と同様に、乾燥食品の評価を行った。
【0070】
実施例9~11における組成物の配合率、組成物中の糖固形分の質量%、組成物中の糖固形分に対する食用油脂の質量比(以下表中、「食用油脂/糖固形分」と表記)、評価結果を表4に示した。
【0071】
【表4】
【0072】
表4の結果から、実施例9~11の組成物を用いると、乾燥後の裂きイカの表面に油脂の染み出しやべたつきがなく、わさびの香りや醤油の風味が良好に感じられ、またそれらの香味の変化が抑えられた裂きイカを得ることができた。
【0073】
<実施例12>
表5に示す配合に従って、以下の方法により実施例12の香味付与用水中油型乳化組成物を得た。なたね油にレシチン(1)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(2)を混合し、70℃まで加温して溶解させ、チョコレート香料(長岡香料社製)を添加し、油相部を得た。一方、水に糖液(1)、ココアパウダー(大東カカオ社製)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(3)、増粘多糖類(1)を混合し、70℃に加温して水相部を得た。前記水相部を撹拌しながら、そこへ前記得られた油相部を添加し、プロペラミキサーを用いて乳化し、加熱殺菌及び冷却し、実施例12のチョコレート風味の香味付与用水中油型乳化組成物を得た。
【0074】
<乾燥食品の作製>
前記得られた実施例12の組成物2.5gを市販のアーモンド10gに刷毛で塗った後、120℃で10分間熱風乾燥し、チョコレート風味のアーモンドを得た。
【0075】
<乾燥食品の評価>
[評価]
得られたチョコレート風味のアーモンドについて、実施例1~11及び比較例1~6と同様に、乾燥食品の評価を行った。
【0076】
実施例12における組成物の配合率、組成物中の糖固形分の質量%、組成物中の糖固形分に対する食用油脂の質量比(以下表中、「食用油脂/糖固形分」と表記)、評価結果を表5に示した。
【0077】
【表5】
【0078】
表5の結果から、実施例12の組成物を用いると、乾燥後のアーモンドの表面に油脂の染み出しやべたつきがなく、チョコレートの風味が良好に感じられ、さらにその香味の変化が抑えられたアーモンドを得ることができた。
【0079】
<実施例13>
表6に示す配合に従って、以下の方法により実施例13の香味付与用水中油型乳化組成物を得た。
ビーフシーズニングオイル(ファインフーズ社製)にレシチン(1)を投入し、70℃まで加温して溶解させ、油相部を得た。一方、水に糖液(1)、増粘多糖類(2)、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル(3)、ビーフエキスパウダー(東海物産社製)を混合し、70℃に加温して水相部を得た。前記水相部を撹拌しながら、そこへ前記得られた油相部を添加し、プロペラミキサーを用いて乳化し、加熱殺菌及び冷却し、実施例13のビーフ風味の香味付与用水中油型乳化組成物を得た。
【0080】
<乾燥食品の作製>
前記得られた実施例13の組成物4gを市販のポテトチップス20gに刷毛で塗った後、120℃で8分間熱風乾燥し、ビーフ風味のポテトチップスを得た。
【0081】
<乾燥食品の評価>
[評価]
得られたビーフ風味のポテトチップスについて、実施例1~12及び比較例1~6と同様に、乾燥食品の評価を行った。
【0082】
実施例13における組成物の配合率、組成物中の糖固形分の質量%、組成物中の糖固形分に対する食用油脂の質量比(以下表中、「食用油脂/糖固形分」と表記)、評価結果を表6に示した。
【0083】
【表6】
【0084】
表6の結果から、実施例13の組成物を用いると、乾燥後のポテトチップスの表面に油脂の染み出しやべたつきがなく、ビーフの風味が良好に感じられ、さらにその香味の変化が抑えられたポテトチップスを得ることができた。
【0085】
<実施例14>
表7に示す配合に従って、以下の方法により実施例14の香味付与用水中油型乳化組成物を得た。パーム油(ヨウ素価52)に有機酸モノグリセリドを投入し、70℃まで加温し、アナトー色素を添加し、油相部を得た。一方、水に糖液(1)、レモン果汁パウダー(佐藤食品工業社製)、レシチン(2)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(4)、増粘多糖類(1)を混合し、70℃に加温して水相部を得た。前記水相部を撹拌しながら、そこへ前記得られた油相部を添加し、プロペラミキサーを用いて乳化し、加熱殺菌及び冷却し、実施例14のレモン風味の香味付与用水中油型乳化組成物を得た。
【0086】
<乾燥食品の作製>
前記得られた実施例14の組成物0.3gを市販のクッキー2gの表面に均一に刷毛で塗った後、オーブンで140℃、8分間乾燥し、レモン風味のクッキーを得た。
【0087】
<乾燥食品の評価>
[評価]
得られたレモン風味のクッキーについて、実施例1~13及び比較例1~6と同様に、乾燥食品の評価を行った。
【0088】
実施例14における組成物の配合率、組成物中の糖固形分の質量%、組成物中の糖固形分に対する食用油脂の質量比(以下表中、「食用油脂/糖固形分」と表記)、評価結果を表7に示した。
【0089】
【表7】
【0090】
表7の結果から、実施例14の組成物を用いると、乾燥後のクッキーの表面に油脂の染み出しやべたつきがなく、レモンの風味が良好に感じられ、さらにその香味の変化が抑えられたレモン風味のクッキーを得ることができた。