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特開2023-108605方法、医用画像処理装置及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108605
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】方法、医用画像処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/161 20060101AFI20230728BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20230728BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20230728BHJP
   G06T 5/00 20060101ALI20230728BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20230728BHJP
   G06T 1/40 20060101ALI20230728BHJP
【FI】
G01T1/161 A
A61B6/03 360T
A61B5/055 390
G01T1/161 B
G06T5/00 705
G06T1/00 290
G06T1/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004927
(22)【出願日】2023-01-17
(31)【優先権主張番号】63/302,449
(32)【優先日】2022-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/961,365
(32)【優先日】2022-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VERILOG
(71)【出願人】
【識別番号】512249180
【氏名又は名称】カリフォルニア大学
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
【住所又は居所原語表記】1111, Franklin Street, 12th Floor, Oakland, CA, U.S.A.
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】ティアンティアン リー
(72)【発明者】
【氏名】シャオヘン シエ
(72)【発明者】
【氏名】ウエンユエン チー
(72)【発明者】
【氏名】リ ヤン
(72)【発明者】
【氏名】エヴレン アズマ
(72)【発明者】
【氏名】ジンイ チ
【テーマコード(参考)】
4C093
4C096
4C188
5B057
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093CA06
4C093FF03
4C093FF35
4C093FF37
4C096AA18
4C096AB07
4C096AD19
4C096DC33
4C096FC20
4C188EE02
4C188EE25
4C188FF04
4C188FF07
4C188LL11
5B057AA07
5B057CE02
(57)【要約】
【課題】精度よく画像のノイズを除去することである。
【解決手段】実施形態の方法は、画像のノイズを除去するDeep Image Prior(DIP)ニューラルネットワークを訓練するための方法である。かかる方法は、解剖学的構造の第1の画像を含む第1の医用画像を受信することと、前記解剖学的構造の第2の画像を含む第2の医用画像を受信することと、訓練中に前記第2の医用画像をDIPニューラルネットワークに入力し、収束ノイズと前記DIPニューラルネットワークの出力とを組み合わせることによって、前記訓練の終了時に前記DIPニューラルネットワークの前記出力と組み合わされた前記収束ノイズが前記第1の医用画像に近似するように、入力された画像からノイズが除去された画像を生成するように前記DIPニューラルネットワークを訓練することと、を含む。前記DIPニューラルネットワークの前記出力が前記ノイズが除去された画像を表す。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像のノイズを除去するDeep Image Prior(DIP)ニューラルネットワークを訓練するための方法であって、
解剖学的構造の第1の画像を含む第1の医用画像を受信することと、
前記解剖学的構造の第2の画像を含む第2の医用画像を受信することと、
訓練中に前記第2の医用画像をDIPニューラルネットワークに入力し、収束ノイズと前記DIPニューラルネットワークの出力とを組み合わせることによって、前記訓練の終了時に前記DIPニューラルネットワークの前記出力と組み合わされた前記収束ノイズが前記第1の医用画像に近似するように、入力された画像からノイズが除去された画像を生成するように前記DIPニューラルネットワークを訓練することと、
を含み、
前記DIPニューラルネットワークの前記出力が前記ノイズが除去された画像を表す、方法。
【請求項2】
前記DIPニューラルネットワークを訓練することは、前記収束ノイズに対してダブルオーバーパラメータ化訓練プロセスを実行することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記DIPニューラルネットワークを訓練することが、
第1のノイズベクトルおよび第2のノイズベクトルを初期化することと、
前記第1のノイズベクトルおよび前記第2のノイズベクトルに基づく畳み込みベースの関数が前記第1の医用画像のノイズに収束する値に等しくなるように、前記第1のノイズベクトルおよび前記第2のノイズベクトルを訓練することによって前記ノイズが除去された画像を生成するように前記DIPニューラルネットワークを訓練することと、
前記畳み込みベースの関数を差し引いた前記第1の医用画像に近似するように前記DIPニューラルネットワークを訓練することと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の医用画像が、被検体のポジトロン放射断層撮影(Position Emission Tomography:PET)画像である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の医用画像が、前記PET画像に位置合わせされた前記被検体のコンピュータ断層撮影(Computed Tomography:CT)画像である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の医用画像が、前記PET画像に位置合わせされた前記被検体の磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)画像である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の医用画像が、被検体の単一光子放射コンピュータ断層撮影(Single-Photon Emission Computerized Tomography:SPECT)画像である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の医用画像が、前記SPECT画像に位置合わせされた前記被検体のコンピュータ断層撮影(CT)画像である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の医用画像が、前記SPECT画像に位置合わせされた前記被検体の磁気共鳴イメージング(MRI)画像である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の医用画像が、被検体の非ゲート心臓CT画像である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の医用画像が、前記非ゲート心臓CT画像に位置合わせされた前記被検体のゲート心臓CT画像である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
解剖学的構造の第1の画像を含む第1の医用画像を受信し、
前記解剖学的構造の第2の画像を含む第2の医用画像を受信し、
訓練中に前記第2の医用画像をDeep Image Prior(DIP)ニューラルネットワークに入力し、収束ノイズと前記DIPニューラルネットワークの出力とを組み合わせることによって、前記訓練の終了時に前記DIPニューラルネットワークの前記出力と組み合わされた前記収束ノイズが前記第1の医用画像に近似するように、入力された画像からノイズが除去された画像を生成するように前記DIPニューラルネットワークを訓練する処理回路、
を備え、
前記DIPニューラルネットワークの前記出力が前記ノイズが除去された画像を表す、医用画像処理装置。
【請求項13】
前記処理回路は、前記収束ノイズに対してダブルオーバーパラメータ化訓練プロセスを実行する、請求項12に記載の医用画像処理装置。
【請求項14】
前記処理回路が、
第1のノイズベクトルおよび第2のノイズベクトルを初期化し、
前記第1のノイズベクトルおよび前記第2のノイズベクトルに基づく畳み込みベースの関数が前記第1の医用画像のノイズに収束する値に等しくなるように、前記第1のノイズベクトルおよび前記第2のノイズベクトルを訓練することによって前記ノイズが除去された画像を生成するように前記DIPニューラルネットワークを訓練し、
前記畳み込みベースの関数を差し引いた前記第1の医用画像に近似するように前記DIPニューラルネットワークを訓練する、
請求項12に記載の医用画像処理装置。
【請求項15】
画像のノイズを除去するDeep Image Prior(DIP)ニューラルネットワークを訓練する処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記コンピュータに、
解剖学的構造の第1の画像を含む第1の医用画像を受信するステップと、
前記解剖学的構造の第2の画像を含む第2の医用画像を受信するステップと、
訓練中に前記第2の医用画像をDIPニューラルネットワークに入力し、収束ノイズと前記DIPニューラルネットワークの出力とを組み合わせることによって、前記訓練の終了時に前記DIPニューラルネットワークの前記出力と組み合わされた前記収束ノイズが前記第1の医用画像に近似するように、入力された画像からノイズが除去された画像を生成するように前記DIPニューラルネットワークを訓練するステップと、
を実行させ、
前記DIPニューラルネットワークの前記出力が前記ノイズが除去された画像を表す、
プログラム。
【請求項16】
前記DIPニューラルネットワークを訓練するステップは、前記収束ノイズに対してダブルオーバーパラメータ化訓練プロセスを実行することを含む、請求項15に記載のプログラム。
【請求項17】
前記DIPニューラルネットワークを訓練するステップは、
第1のノイズベクトルおよび第2のノイズベクトルを初期化することと、
前記第1のノイズベクトルおよび前記第2のノイズベクトルに基づく畳み込みベースの関数が前記第1の医用画像のノイズに収束する値に等しくなるように、前記第1のノイズベクトルおよび前記第2のノイズベクトルを訓練することによって前記ノイズが除去された画像を生成するように前記DIPニューラルネットワークを訓練することと、
前記畳み込みベースの関数を差し引いた前記第1の医用画像に近似するように前記DIPニューラルネットワークを訓練することと、
を含む、請求項15に記載のプログラム。
【請求項18】
画像のノイズを除去するDeep Image Prior(DIP)ニューラルネットワークを用いて画像のノイズを除去するための方法であって、
訓練中に解剖学的構造の第2の画像を含む第2の医用画像が入力され、収束ノイズと出力とを組み合わせることによって、前記訓練の終了時に前記出力と組み合わされた前記収束ノイズが解剖学的構造の第1の画像を含む第1の医用画像に近似するように、入力された画像からノイズが除去された画像を生成するように訓練された前記DIPニューラルネットワークに画像を入力し、
前記DIPニューラルネットワークにより生成されて出力された、前記入力された画像からノイズが除去された前記画像を取得する、
ことを含む、方法。
【請求項19】
画像のノイズを除去するDeep Image Prior(DIP)ニューラルネットワークを用いて画像のノイズを除去する医用画像処理装置であって、
訓練中に解剖学的構造の第2の画像を含む第2の医用画像が入力され、収束ノイズと出力とを組み合わせることによって、前記訓練の終了時に前記出力と組み合わされた前記収束ノイズが解剖学的構造の第1の画像を含む第1の医用画像に近似するように、入力された画像からノイズが除去された画像を生成するように訓練された前記DIPニューラルネットワークを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記DIPニューラルネットワークに画像を入力し、前記DIPニューラルネットワークにより生成されて出力された、前記入力された画像からノイズが除去された前記画像を取得する処理回路と、
を備える、医用画像処理装置。
【請求項20】
画像のノイズを除去するDeep Image Prior(DIP)ニューラルネットワークを用いて画像のノイズを除去する処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記コンピュータに、
訓練中に解剖学的構造の第2の画像を含む第2の医用画像が入力され、収束ノイズと出力とを組み合わせることによって、前記訓練の終了時に前記出力と組み合わされた前記収束ノイズが解剖学的構造の第1の画像を含む第1の医用画像に近似するように、入力された画像からノイズが除去された画像を生成するように訓練された前記DIPニューラルネットワークを記憶する記憶部に記憶された前記DIPニューラルネットワークを取得するステップと、
取得された前記DIPニューラルネットワークに画像を入力し、前記DIPニューラルネットワークにより生成されて出力された、前記入力された画像からノイズが除去された画像を取得するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、方法、医用画像処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
Deep Image Prior(DIP)は、画像復元のための教師なし方法であり、PET(P)の画像ノイズ除去にうまく適用されている。しかし、DIPベースの方法は、ノイズの多い画像への過学習を避けるために、訓練(トレーニング)プロセスの早期停止に依存している。近年、Youらにより、arxiv.orgのサイトで「/pdf/2006.08857.pdf」として入手可能な、彼らの論文You C, Zhu Z, Qu Q, Ma Y., Robust recovery via implicit bias of discrepant learning rates for double over-parameterization, arXiv Prepr arXiv200608857 (2020)において、ダブルオーバーパラメータ化(Double Over-Parameterized:DOP)アプローチが提案された。YouらのDOP法は、同じ患者からのCT画像を解剖学的な事前情報として利用することによって、PET画像復元の使用に拡張することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】You C, Zhu Z, Qu Q, Ma Y., “Robust recovery via implicit bias of discrepant learning rates for double over-parameterization”, [online], [令和5年1月11日検索],インターネット,<URL:https://arxiv.org/abs/2006.08857>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、精度よく画像のノイズを除去することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の方法は、画像のノイズを除去するDeep Image Prior(DIP)ニューラルネットワークを訓練するための方法である。かかる方法は、解剖学的構造の第1の画像を含む第1の医用画像を受信することと、前記解剖学的構造の第2の画像を含む第2の医用画像を受信することと、訓練中に前記第2の医用画像をDIPニューラルネットワークに入力し、収束ノイズと前記DIPニューラルネットワークの出力とを組み合わせることによって、前記訓練の終了時に前記DIPニューラルネットワークの前記出力と組み合わされた前記収束ノイズが前記第1の医用画像に近似するように、入力された画像からノイズが除去された画像を生成するように前記DIPニューラルネットワークを訓練することと、を含む。前記DIPニューラルネットワークの前記出力が前記ノイズが除去された画像を表す。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A図1Aは、医用イメージング環境において画像ノイズ除去を行う方法のフロー図である。
図1B図1Bは、図1Aのノイズ除去プロセスを介してノイズ除去された例示的なノイズの多いPET画像である。
図1C図1Cは、解剖学的な事前情報として作用する例示的な入力画像である。
図2A図2Aは、PSFによるOSEMを使用して生成されたオリジナルPET画像である。
図2B図2Bは、ガウシアンフィルタを使用したノイズ除去およびDIPを使用したノイズ除去後の、図2AのオリジナルPET画像のノイズ除去された画像バージョンである。
図2C図2Cは、ガウシアンフィルタを使用したノイズ除去およびDIPを使用したノイズ除去後の、図2AのオリジナルPET画像のノイズ除去された画像バージョンである。
図2D図2Dは、本明細書に記載される技術による、図2AのオリジナルPET画像をノイズ除去することによって生成されたPET画像である。
図3A図3Aは、PSFによるTOF OSEMを使用して生成され、定量分析用に挿入された模擬病変を含むオリジナルPET画像である。
図3B図3Bは、ガウシアンフィルタを使用したノイズ除去およびDIPを使用したノイズ除去後の、図3AのオリジナルPET画像のノイズ除去された画像バージョンであり、それぞれ模擬病変がそこで見える。
図3C図3Cは、ガウシアンフィルタを使用したノイズ除去およびDIPを使用したノイズ除去後の、図3AのオリジナルPET画像のノイズ除去された画像バージョンであり、それぞれ模擬病変がそこで見える。
図3D図3Dは、本明細書に記載の技術による、図3AのオリジナルPET画像をノイズ除去することによって生成された一連のPET画像のうちの1つであり、模擬病変がそこで見える。
図3E図3Eは、本明細書に記載の技術による、図3AのオリジナルPET画像をノイズ除去することによって生成された一連のPET画像のうちの1つであり、模擬病変がそこで見える。
図3F図3Fは、本明細書に記載の技術による、図3AのオリジナルPET画像をノイズ除去することによって生成された一連のPET画像のうちの1つであり、模擬病変がそこで見える。
図3G図3Gは、本明細書に記載の技術による、図3AのオリジナルPET画像をノイズ除去することによって生成された一連のPET画像のうちの1つであり、模擬病変がそこで見える。
図3H図3Hは、本明細書に記載の技術による、図3AのオリジナルPET画像をノイズ除去することによって生成された一連のPET画像のうちの1つであり、模擬病変がそこで見える。
図3I図3Iは、本明細書に記載の技術による、図3AのオリジナルPET画像をノイズ除去することによって生成された一連のPET画像のうちの1つであり、模擬病変がそこで見える。
図4A図4Aは、本明細書に記載の技術による、代替構成を示すフロー図である。
図4B図4Bは、訓練前のgおよびhベクトルの内容の説明図である。
図4C図4Cは、訓練後のgおよびhベクトルの内容の説明図である。
図5図5は、本開示の一態様による、ポジトロン放射断層撮影(Positron Emission Tomography:PET)スキャナの斜視図である。
図6図6は、本開示の一態様による、図5のPETスキャナの概略図である。
図7図7は、本開示の一態様による、コンピュータ断層撮影(Computed Tomography:CT)イメージングシステムの概略図である。
図8図8は、本明細書に記載の方法の訓練損失曲線を様々なαで示し、DIP法と比較したグラフである。
図9図9は、DOPとDIPを比較し(100エポックごとにプロット)、また、ガウシアンポストフィルタを用いたPSF再構成によるTOF OSEMと、用いないものを比較した(反復ごとにプロット)、図3Aにマークされた挿入された病変のコントラスト対ノイズ曲線のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
添付の図面に関連して考慮した場合、以下の詳細な説明を参照することによって、同様のことがよりよく理解されるようになるので、本開示の完全な理解およびその付随する利点の多くが、容易に得られるであろう。
【0008】
本明細書において、用語「複数」は、2つまたは2つ以上として定義される。また、本明細において、「一実施形態」、「特定の実施態様」、「実施形態」、「実装」、「例」または同様の用語に関する参照は、本実施形態に関連して記載された特定の特性、構造、または特徴が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたるそのような語句または様々な箇所での出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を参照しているとは限らない。さらに、特定の特性、構造、または特徴は、1つ以上の実施形態において限定されることなく、任意の適切な方法で組み合わされてもよい。
【0009】
本開示は、ノイズ除去プロセス中に訓練されるニューラルネットワークを使用した医用画像の画像ノイズ除去のための方法について説明する。一態様によれば、PET(Positron Emission Tomography)スキャナ(PET装置)、または単一光子放射コンピュータ断層撮影(Single-Photon Emission Computerized Tomography:SPECT)スキャナ(SPECT装置)で撮像されているのと同じ患者(被検体)からのコンピュータ断層撮影(CT(Computed Tomography))画像または磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)画像を、解剖学的な事前情報として使用することができる。図1Aおよび図1Cに示すように、訓練されるニューラルネットワークの入力としてCT画像を使用することができるが、MRI画像も同様に使用することができる。図1Aおよび図1Bに示すように、ノイズ除去される画像は、CTスキャナ(例えば図7参照)を使用して患者に対して以前に撮像されたのと同じ領域のノイズの多いPET画像であるが、SPECT画像も同様に使用することができる。なお、本明細書において、ノイズの多い各種の画像とは、ノイズを含む各種の画像を指す。
【0010】
【数1】
【0011】
本明細書では、クリーンな画像とは、例えば、ノイズの少ない画像又はノイズがない画像を指す。図1Aでは、U字型のエンコーダ・デコーダネットワークが、クリーンな画像を表現するために、スキップ接続で図示されている。特性チャネルの数が、各層の下に記載されている。DOPの訓練可能なパラメータの数は、9161401(θ:3155641;g,h:6005760)である。DIPネットワークは、θと同じネットワーク構造を使用する。ネットワークの各層には、3D畳み込み、ReLU活性化、およびバッチ正規化が含まれる。ノイズ層は、訓練用ラベル画像(ノイズの多いPET画像として図示され、ターゲット画像と呼ばれることもある)と同じサイズの2つのgおよびhベクトルによってモデル化され、デコーダの出力に加えられる。株式会社キヤノンの「Cartesion TOF(Time of Flight) PET/CTスキャナ」で取得した患者データセットを使用して、結果として生じたノイズ除去効果を評価した。注入された18FDGの放射能量は100MBqで、注入後60分にPET/CTイメージングを開始した。6寝台の放射スキャンを、1つの寝台位置当たり1.5分間行った。PET画像はOSEM(ordered subset expectation maximization metho)を使用して3反復12サブセットで再構成された(マトリックスサイズ337×337×129、ボクセルサイズ2.11×2.11×2.11mm)。ノイズの多いPET画像を136×184×120ピクセルにトリミングして、訓練用ラベル画像として使用し、同じサイズの位置合わせしたCT画像をネットワーク入力として使用した。(その結果、gおよびhベクトルもそれぞれ136×184×120ピクセルとなった)。入力画像は訓練用ラベル画像と同じサイズである必要はなく、特にランダムノイズを入力として使用される場合は、訓練用ラベル画像のサイズに合わせて入力画像をダウンサンプリングまたはアップサンプリングしてもよい。
【0012】
図1Aには、ADAMオプティマイザを使用するアーキテクチャが図示されているが、代わりに他のオプティマイザ(例えば、確率的勾配降下法オプティマイザ)を使用することができる。なお、オプティマイザは、例えば、最適化アルゴリズムとも称される。初期の学習率は5e-4が選択された。gおよびhベクトルもまた、最初は小さいランダム値(例えば、ガウス分布を有する5e-4のオーダーの値)で満たされている。gおよびhを小さいランダム値で初期化することにより、gとhの畳み込みの差分(すなわち、g°g-h°h)はノイズに収束し、少なくともPET画像のコンテクスト(context)ではノイズがスパースでない場合にも収束する。
【0013】
θとg,hとでは異なる学習率が使用され、その比率はパラメータαで制御した。ネットワークは、各寝台位置に対して2000エポック分訓練されている。不一致学習率比αの画像復元の品質に対する効果は、図3D図3Iに示され、図3Bおよび図3Cに示すように、DIP法および従来のガウシアンポストフィルタからのものと比較することができる。一般に、図2Dの本方法は、図2Aのオリジナルのノイズの多いPET画像および図2Bのガウシアンポストフィルタされた画像と比較して、著しいノイズの低減を示した。DOPとDIPの両方に対して学習曲線はゼロに近かったものの、図2Dのノイズ除去された画像は、図2CのDIP法と比較して、過学習の問題を示していない。不一致学習率比αが、収束点を制御した。αの値が大きくなると、結果として生じる画像はより滑らかになる。図3Eおよび図3Fに示すように、α=3または4は、ほとんどの細部を維持しながら、良好な画像ノイズ除去を生じさせる。定量的に、DOP法は、図3CのDIP法および図3Bのガウシアンフィルタ法よりも良好なコントラスト対背景ノイズのトレードオフをもたらした。さらに、不一致学習率比を用いるDOP法は、ネットワーク幅の調整または早期終了を行うことなく、PETの画質を向上させることができる。不一致学習率比αは、ドメイン固有のアプリケーションに基づいて画像の滑らかさを制御するために調整することができる。
【0014】
ドメイン固有のイメージング問題に対処するために、異なるパラメータαを使用して2つ以上のニューラルネットワークを(連続的または並行して)訓練することができ、診断する医療従事者が適切なノイズおよび滑らかさのレベルを有する画像を選択することができるように、医療従事者は、結果として生じる画像のそれぞれを表示させることができる。システムは、初期のイメージング研究のイメージング条件、および医療従事者が以前に使用したパラメータαを追跡し、最初に、以前の多数の画像ノイズ除去プロセスで使用されたのと同じパラメータαを用いてイメージングノイズ除去を行うことができる(例えば、最もよく使用されるパラメータαを一般的にまたはイメージングプロトコル固有に追跡することによって)。その後のノイズ除去は、パラメータαの他の近い値で行うことができる。例えば、医療従事者がイメージングプロセスX1に対してパラメータα=3を最も頻繁に使用する場合、後のイメージングプロセスX1のノイズ除去は、パラメータαを使用し、次いでパラメータα=2.5およびパラメータα=3.5を使用してノイズ除去が行われることになる。結果として生じるノイズ除去された画像は、利用可能になり次第医療従事者に対して表示することができる。あるいは、システムは並列処理技術を使用して、n回のノイズ除去を並列に行うことができる(例えば、パラメータα=3、パラメータα=3.5、およびパラメータα=2.5)。最もよく使用されるものからさらに離れた他のノイズ除去は、後で行うことができる。異なるイメージングプロトコルであるX2では、最もよく使用されるパラメータαは4であり、システムはX2-styleの画像を処理する際に、代わりにそのパラメータ値で開始することができる。
【0015】
本明細書で説明するように、ニューラルネットワークがノイズの多い画像を生成するように訓練されないように、別々にモデル化される対象の画像のノイズを表現するために、ベクトルgおよびhの畳み込みベースの関数が使用される。いくつかの実施形態では、その画像ノイズは、ポアソンまたはガウスのような分布を有するべきである。代替実施形態では、ベクトルgおよびhの少なくとも1つは、訓練中の学習されたノイズパターンがガウス分布またはポアソン分布に従うように制約するように訓練される。
【0016】
以上、図1A図1C図2D、および図3D図3Iに関するPET画像のノイズ除去について説明したが、この技術は他のタイプの画像にも適用可能である。例えば、ゲート心臓CT画像をノイズ除去する際に、非ゲート心臓CT画像を解剖学的な事前情報として使用することができる。
【0017】
また、解剖学的な事前情報として使用する低ノイズ画像が利用可能でない場合でも、説明した技術を使用することがさらに可能である。また、図4Aに示すように、オリジナルの入力画像としてランダムノイズを使用することも可能である。図4Bおよび図4Cは、図1Aおよび図4Aの両方における訓練前および訓練後のgおよびhベクトルの内容を示す。
【0018】
さらに別の代替実施形態では、システムが2つのタイプ以上のノイズを学習することができるように、2つ以上のノイズベクトル(例えばgおよびh)を使用して、ノイズ除去される画像のノイズをモデル化することができる。例えば、3つのノイズベクトルを使用することができる。
【0019】
図8は、本明細書に記載の方法の訓練損失曲線を様々なαで示し、DIP法と比較したものである。図9は、DOPとDIPを比較し(100エポックごとにプロット)、また、ガウシアンポストフィルタを用いたPSF再構成によるTOF OSEMと、用いないものを比較した(反復ごとにプロット)、図3Aにマークされた挿入された病変のコントラスト対ノイズ曲線のグラフである。
【0020】
ここで、上述したニューラルネットワーク(DIPニューラルネットワーク)を訓練する装置は、後述するPETスキャナ800や後述するCTスキャナ等の医用診断装置(医用画像処理装置)であってもよいし、このような医用診断装置以外の外部のサーバ(訓練装置)であってもよい。すなわち、訓練装置又は医用画像処理装置は、DIPニューラルネットワークを訓練するための方法(処理)を実行する。例えば、DIPニューラルネットワークを訓練するための方法は、解剖学的構造の第1の画像を含む第1の医用画像(例えば、PET画像又はSPECT画像)を受信することと、解剖学的構造の第2の画像を含む第2の医用画像(例えば、CT画像又はMRI画像)を受信することとを含む。DIPニューラルネットワークを訓練するための方法は、更に、訓練中に第2の医用画像をDIPニューラルネットワークに入力し、収束ノイズとDIPネットワークの出力とを組み合わせることによって、訓練の終了時にDIPネットワークの出力と組み合わされた収束ノイズが第1の医用画像に近似するように、入力された画像からノイズが除去された画像を生成するようにDIPニューラルネットワークを訓練することを含む。ここで、DIPネットワークの出力が、ノイズが除去された画像を表す。訓練済みのDIPニューラルネットワークは、精度よく画像のノイズを除去することができる。このため、このような訓練済みのDIPニューラルネットワークを用いて画像のノイズを除去することで、精度よく画像のノイズを除去することができる。
【0021】
また、DIPニューラルネットワークを訓練するための方法において、上述したDIPニューラルネットワークを訓練することは、収束ノイズに対してダブルオーバーパラメータ化訓練プロセスを実行することを含む。
【0022】
また、DIPニューラルネットワークを訓練するための方法において、上述したDIPニューラルネットワークを訓練することが、第1のノイズベクトル(例えばgベクトル)および第2のノイズベクトル(例えばhベクトル)を初期化することと、第1のノイズベクトルおよび第2のノイズベクトルに基づく畳み込みベースの関数が第1の医用画像のノイズに収束する値に等しくなるように、第1のノイズベクトルおよび第2のノイズベクトルを訓練することによってノイズが除去された画像を生成するようにDIPニューラルネットワークを訓練することと、畳み込みベースの関数を差し引いた第1の医用画像に近似するようにDIPニューラルネットワークを訓練することと、を含む。
【0023】
ここで、第1の医用画像が、被検体のPET画像である場合、第2の医用画像が、PET画像に位置合わせされた被検体のCT画像であってもよいし、PET画像に位置合わせされた被検体のMRI画像であってもよい。
【0024】
また、第1の医用画像が、被検体のSPECT画像である場合、第2の医用画像が、SPECT画像に位置合わせされた被検体のCT画像であってもよいし、SPECT画像に位置合わせされた被検体のMRI画像であってもよい。
【0025】
また、第1の医用画像が、被検体の非ゲート心臓コンピュータ断層撮影(CT)画像である場合、第2の医用画像が、非ゲート心臓CT画像に位置合わせされた被検体のゲート心臓CT画像であってもよい。
【0026】
また、訓練済みのDIPニューラルネットワークを用いて画像のノイズを除去する装置は、後述するPETスキャナ800又は後述するCTスキャナ等の医用診断装置(医用画像処理装置)であってもよい。例えば、医用画像処理装置は、訓練済みのDIPニューラルネットワークに画像を入力する。すると、DIPニューラルネットワークは、入力された画像からノイズが除去された画像を生成し、出力する。医用画像処理装置は、DIPニューラルネットワークから出力された、ノイズが除去された画像を取得し、取得された画像をディスプレイに表示させる。
【0027】
図5および図6は、それぞれが長方形の検出器モジュールとして構成されている多数のGRD(例えば、GRD1、GRD2、~GRDN)を含むPETスキャナ800を示す。一実施態様によれば、検出器リングは40個のGRDを含む。別の実施態様では、48個のGRDがあり、より多くの数のGRDを使用して、PETスキャナ800のためのより大きなボアサイズを生成する。
【0028】
各GRDは、ガンマ線を吸収してシンチレーション光子を放出する個々の検出器結晶の2次元アレイを含むことができる。シンチレーション光子は、同じくGRD内に配置された光電子増倍管(PMT)の2次元アレイによって検出することができる。光導体は、検出器結晶のアレイとPMTの間に配置することができる。さらに、各GRDは、様々なサイズの多数のPMTを含むことができ、その各々は、複数の検出器結晶からシンチレーション光子を受信するように配置される。各PMTは、シンチレーションイベントがいつ発生するかを示すアナログ信号、および検出イベントを生成するガンマ線のエネルギーを生成することができる。さらに、1つの検出器結晶から放出される光子は、2つ以上のPMTによって検出することができ、各PMTで生成されるアナログ信号に基づいて、検出イベントに対応する検出器結晶を、例えば、アンガーロジックおよび結晶復号を使用して判定することができる。
【0029】
図6は、被検体OBJから放出されるガンマ線を検出するように配置されたガンマ線光子計数検出器(Gamma-Ray Photon Counting Detector:GRD)を有するPETスキャナシステムの概略図を示す。GRDは、各ガンマ線の検出に対応するタイミング、位置、およびエネルギーを測定することができる。一実施形態では、図5および図6に示すように、ガンマ線検出器はリング状に配置される。検出器結晶は、2次元アレイ状に配置された個々のシンチレータ素子を有するシンチレータ結晶であり得る。シンチレータ素子は、任意の既知のシンチレータ材料であり得る。PMTは、各シンチレータ素子からの光が複数のPMTによって検出されて、シンチレーションイベントのアンガー算術および結晶復号を可能にするように、配置することができる。
【0030】
図6は、PETスキャナ800の配置の例を示し、ここでは撮像される対象の被検体OBJが寝台816上に置かれており、GRD1からGRDNのGRDモジュールが、被検体OBJおよび寝台816の周囲に円周方向に配置されている。GRDは、ガントリ840に固定接続されている環状の構成要素820に固定接続することができる。ガントリ840は、PET撮影装置の多くの部品を収容する。PET撮影装置のガントリ840はまた、被検体OBJおよび寝台816が通過することができる開口部も含み、対消滅イベントにより被検体OBJから反対方向に放出されるガンマ線をGRDによって検出することができ、かつタイミングおよびエネルギー情報を使用してガンマ線対の同時計数を判定することができる。
【0031】
図6では、ガンマ線検出データを取得、記憶、処理、および分配するための回路およびハードウェアも示されている。この回路およびハードウェアは、プロセッサ870、ネットワークコントローラ874、メモリ878、およびデータ取得システム(Data Acquisition System:DAS)876を含む。PET撮像装置はまた、GRDからDAS876、プロセッサ870、メモリ878、およびネットワークコントローラ874に検出測定結果をルーティングするデータチャネルも含む。データ取得システム876は、検出器からの検出データの取得、デジタル化、およびルーティングを制御することができる。一実施形態では、DAS876は、寝台816の動きを制御する。プロセッサ870は、本明細書で説明するように、本明細書に記載される方法に従って検出データから画像を再構成すること、検出データの前再構成処理、および画像データの後再構成処理を含む機能を実行する。
【0032】
プロセッサ870は、本明細書に記載される方法を実行するように構成され得る。例えば、メモリ878に訓練済みのDIPニューラルネットワークが記憶されており、プロセッサ870は、訓練済みのDIPニューラルネットワークをメモリ878から取得し、取得された訓練済みのDIPニューラルネットワークを用いて画像のノイズを除去する。プロセッサ870は、処理回路の一例である。また、メモリ878は、記憶部の一例である。プロセッサ870は、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)、または他の複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)のような、個々の論理ゲートとして実装可能なCPUを含むことができる。FPGAまたはCPLDの実装は、VHDL、Verilog、またはその他のハードウェア記述言語でコード化されてよく、そのコードはFPGAもしくはCPLD内の電子メモリに直接記憶されてもよく、または個別の電子メモリとして記憶されてもよい。さらに、メモリは、ROM、EPROM、EEPROM、またはフラッシュメモリなどの不揮発性であってもよい。メモリはまた、静的または動的RAMなど揮発性であり得、FPGAまたはCPLDとメモリとの間の相互作用だけでなく電子メモリを管理するための、マイクロコントローラまたはマイクロプロセッサなどのプロセッサを提供してもよい。
【0033】
あるいは、プロセッサ870内のCPUは、本明細書に記載された方法を実行する一連のコンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラムを実行することができ、そのプログラムは、任意の上述の非一時的電子メモリおよび/もしくはハードディスクドライブ、CD、DVD、フラッシュドライブ、またはその他の任意の既知の記憶媒体に記憶されている。さらに、コンピュータ可読命令は、ユーティリティアプリケーション、バックグラウンドデーモン、もしくはオペレーティングシステムの構成要素、またはこれらの組み合わせで提供されてもよく、米国のインテル社のCeleron、Xenon、i3、i5、i7、もしくはi9、または米国のAMD社のRyzenもしくはOpteronプロセッサなどのプロセッサ、およびMicrosoft VISTA、UNIX(登録商標)、Solaris、LINUX(登録商標)、Apple、MAC-OS、ならびに当業者に既知の他のオペレーティングシステムと協働して実行される。さらに、CPUは、命令を実行するために並行して協同的に動作する、複数のプロセッサとして実装することができる。
【0034】
一実施態様では、再構成された画像は、ディスプレイに表示することができる。ディスプレイは、LCDディスプレイ、CRTディスプレイ、プラズマディスプレイ、OLED、LED、または当該技術分野において既知のその他のディスプレイであり得る。
【0035】
メモリ878は、ハードディスクドライブ、CD-ROMドライブ、DVDドライブ、フラッシュドライブ、RAM、ROM、または当該技術分野において既知のその他の電子記憶装置であり得る。
【0036】
米国のインテル社製のインテルイーサネット(登録商標)PROネットワークインタフェースカードなどのネットワークコントローラ874により、PET撮像装置の様々な部分間でインタフェースすることができる。さらに、ネットワークコントローラ874はまた、外部ネットワークとインタフェースすることもできる。
【0037】
理解できるように、この外部ネットワークは、インターネットなどの公共ネットワーク、またはLANもしくはWANネットワークなどのプライベートネットワーク、またはこれらの任意の組み合わせであり得、PSTNもしくはISDNサブネットワークを含むこともできる。外部ネットワークはまた、イーサネット(登録商標)ネットワークなどの有線とすることができ、またはEDGE、3Gおよび4G無線セルラーシステムを含むセルラーネットワークなどの無線とすることもできる。無線ネットワークはまた、WiFi、Bluetooth(登録商標)、または任意の他の既知の無線通信形式とすることもできる。
【0038】
本開示の一実施形態によれば、上述の方法は、CT装置またはスキャナからのデータに適用されるように実装することができる。図7は、CT装置またはCTスキャナに含まれる放射線ガントリの実装を示す。図7に示すように、放射線ガントリ750は、側面からの様子が示されており、さらに、X線管751、環状フレーム752、および複数列または2次元アレイ型X線検出器753を含む。X線管751およびX線検出器753は、被検体OBJを挟んで正反対に環状フレーム752上に取り付けられ、環状フレーム752は回転軸RAの周りで回転可能に支持される。回転ユニット757は、被検体OBJが軸RAに沿って図示されたページの奥の方向またはページの手前の方向に移動されている間に、0.4秒/回転のような高速で環状フレーム752を回転させる。
【0039】
本開示のX線CT装置の実施形態は、添付図面を参照しながら以下に説明される。X線CT装置は、例えばX線管およびX線検出器が、検査される被検体の周りを共に回転する回転/回転型装置、ならびに、多くの検出器素子が環状または面状に配列され、かつX線管のみが、検査される被検体の周りを回転する固定/回転型装置などの様々な型の装置を含むことに留意されたい。本開示は、いずれのタイプにも適用可能である。ここでは、現在主流である回転/回転型が例示される。
【0040】
マルチスライスX線CT装置は高電圧発生器759をさらに含み、X線管751がX線を生成するように、高電圧発生器759はスリップリング758を通してX線管751に印加される管電圧を発生させる。X線は、被検体OBJに向かって照射され、被検体OBJの断面領域が円で表される。例えば、X線管751は、第2のスキャン中の平均X線エネルギーよりも小さい、第1のスキャン中の平均X線エネルギーを有する。このようにして、異なるX線エネルギーに対応して、2回以上のスキャンを得ることができる。X線検出器753は、被検体OBJを通り抜けて伝播してきた照射X線を検出するために、被検体OBJを挟んでX線管751から反対側に位置している。X線検出器753は、個々の検出器要素またはユニットをさらに含み、光子計数検出器であってもよい。第4世代のジオメトリシステムにおいて、X線検出器753は、被検体OBJの周囲に360°配置された複数の検出器のうちの1つであってもよい。
【0041】
CT装置は、X線検出器753から検出された信号を処理するための、その他のデバイスをさらに含む。データ取得回路またはデータ取得システム(Data Acquisition System:DAS)754は、それぞれのチャネルに対するX線検出器753からの出力信号を電圧信号に変換し、その信号を増幅し、さらにその信号をデジタル信号へと変換する。X線検出器753およびDAS754は、1回転当たりの所定全投影数(Total number of Projections Per Rotation:TPPR)を処理するように構成されている。
【0042】
上述のデータは、非接触データ送信機755を通じて、放射線ガントリ750外部のコンソール内に収容された、前処理デバイス756に送信される。前処理デバイス756は、生データに関する感度補正など、特定の補正を実行する。記憶装置762は、再構成処理直前の段階で投影データとも呼ばれる、結果データを記憶する。記憶装置762は、再構成デバイス764、入力デバイス765、およびディスプレイ766と共に、データ/制御バス761を通して、システムコントローラ760に接続されている。システムコントローラ760は、CTシステムを駆動させるのに十分なレベルに電流を制限する、電流調整器763を制御する。一実施形態では、システムコントローラ760は、最適化されたスキャン取得パラメータを実装する。
【0043】
検出器は、様々な世代のCTスキャナシステムにおいて、患者に対して、回転されるおよび/または固定される。一実施態様では、上述のCTシステムは、第3世代ジオメトリシステムと第4世代ジオメトリシステムとが組み合わせられた例であり得る。第3世代システムでは、X線管751とX線検出器753とは、正反対に環状フレーム752上に取り付けられ、環状フレーム752が回転軸RAの周りを回転するときに、被検体OBJの周りを回転する。第4世代ジオメトリシステムでは、検出器は患者の周りに固定して設置され、X線管は患者の周りを回転する。代替的実施形態では、放射線ガントリ750は、Cアームおよびスタンドによって支持されている環状フレーム752上に配列された多数の検出器を有する。
【0044】
記憶装置762は、X線検出器753でX線の放射照度を示す測定値を記憶することができる。さらに、記憶装置762は、本明細書に記載された方法を含むCT画像再構成、物質分解、およびPQR推定方法を実行するための専用プログラムを記憶することができる。
【0045】
再構成デバイス764は、本明細書で説明した方法を実行することができる。再構成デバイス764は、1つ以上の最適化された画像再構成パラメータに従って再構成を実施してもよい。さらに、再構成デバイス764は、ボリュームレンダリング処理および画像差分処理などの前再構成処理画像処理を、必要に応じて実行することができる。
【0046】
前処理デバイス756によって実行される投影データの前再構成処理は、例えば検出器キャリブレーション、検出器非直線性、および極性効果に対する補正を含むことができる。
【0047】
再構成デバイス764によって実行される後再構成処理は、フィルタの生成および画像の平滑化、ボリュームレンダリング処理、ならびに画像差分処理を、必要に応じて含むことができる。画像再構成プロセスは、上記で導出した最適な画像再構成パラメータを実施してもよい。画像再構成プロセスは、フィルタ逆投影、逐次近似画像再構成法、または確率論的画像再構成法を使用して実行することができる。
【0048】
再構成デバイス764は、メモリを使用して、例えば投影データ、前方投影訓練データ、訓練画像、未修整画像、キャリブレーションデータおよびパラメータ、ならびにコンピュータプログラムを記憶することができる。また、再構成デバイス764はまた、軟組織領域における得られた空間分布に基づいて参照データセットを算出し、投影データセットを入力データとして、かつ参照データセットを教師データとして機械学習プロセスの全てまたは一部を行うことによってフィルタを生成することを含む、機械学習の処理支援を含んでもよい。また、人工ニューラルネットワークの適用を含む場合がある機械学習の適用により、画質を代表する1つ以上の評価値を生成することができる。
【0049】
説明した再構成デバイス764およびノイズ除去装置は、1つのプロセッサで個別に実装されてもよく、またはプロセッサのネットワークもしくはクラウドに実装されてもよい。再構成デバイス764およびノイズ除去装置は、離散論理ゲートとして実行され得るCPU(処理回路)を、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)、またはその他の複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)として含み得る。FPGAまたはCPLDの実装は、VDHL、Verilog、またはその他のハードウェア記述言語でコード化されてよく、そのコードはFPGAもしくはCPLD内の電子メモリに直接記憶されてもよく、または個別の電子メモリとして記憶されてもよい。さらに、記憶装置62は、ROM、EPROM、EEPROM、またはフラッシュメモリなどの不揮発性であり得る。記憶装置762は、静的または動的RAMなど揮発性であり得、FPGAまたはCPLDとメモリとの間の相互作用だけでなく電子メモリを管理するための、マイクロコントローラまたはマイクロプロセッサなどのプロセッサが提供され得る。一実施形態では、再構成デバイス764は、再構成画像を処理して生成するためのCPUおよびグラフィック処理ユニット(Graphics Processing Unit:GPU)を含むことができる。GPUは、専用グラフィックスカードまたはCPUとリソースを共有する統合グラフィックスカードであってもよく、NVIDIA TeslaおよびAMD FireStreamを含む、人工知能に特化した様々なタイプのGPUのうちの1つであってもよい。
【0050】
例えば、記憶装置762に訓練済みのDIPニューラルネットワークが記憶されており、プロセッサは、訓練済みのDIPニューラルネットワークを記憶装置762から取得し、取得された訓練済みのDIPニューラルネットワークを用いて画像のノイズを除去する。プロセッサは、処理回路の一例である。また、記憶装置762は、記憶部の一例である。
【0051】
あるいは、再構成デバイス764内のCPUは、本明細書に記載された機能を実行する一連のコンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラムを実行することができ、そのプログラムは、任意の上述の非一時的電子メモリおよび/もしくはハードディスクドライブ、CD、DVD、フラッシュドライブ、またはその他の任意の既知の記憶媒体に記憶されている。さらに、コンピュータ可読命令は、ユーティリティアプリケーション、バックグラウンドデーモン、もしくはオペレーティングシステムの構成要素、またはこれらの組み合わせとして提供されてもよく、米国のIntel(登録商標)社のXEON(登録商標)プロセッサまたは米国のAMD社のOPTERON(商標)プロセッサなどのプロセッサ、ならびにMicrosoft(登録商標)10、UNIX(登録商標)、SOLARIS(登録商標)、LINUX(登録商標)、Apple MAC-OS(登録商標)、および当業者に既知の他のオペレーティングシステムと協働して実行される。さらに、再構成デバイス764内のCPUは、命令を実行するために並行して協同的に動作する、複数のプロセッサとして実装することができる。
【0052】
また、一実施態様では、再構成された画像は、ディスプレイ766に表示することができる。ディスプレイ766は、LCDディスプレイ、CRTディスプレイ、プラズマディスプレイ、OLED、LED、または当該技術分野において既知の他のディスプレイであり得る。
【0053】
記憶装置762は、ハードディスクドライブ、CD-ROMドライブ、DVDドライブ、フラッシュドライブ、RAM、ROM、または当該技術分野において既知のその他の電子記憶装置であり得る。
【0054】
上述した他の実施形態に加えて、追加の実施形態が以下に記載される括弧書きに開示されている。
【0055】
(1)画像をノイズ除去するための方法であって、解剖学的構造の第1の画像を含む第1の医用画像を受信することと、解剖学的構造の第2の画像を含む第2の医用画像を受信することと、訓練中に第2の医用画像をDeep Image Prior(DIP)ニューラルネットワークに入力し、収束ノイズとDIPネットワークの出力とを組み合わせることによって、訓練の終了時にDIPネットワークの出力と組み合わされた収束ノイズが第1の医用画像を近似するように、ノイズ除去された画像を生成するようにDIPニューラルネットワークを訓練することであって、DIPネットワークの出力がノイズ除去された画像を表す、ことと、を含むが、これらに限定されない方法。
【0056】
(2)DIPニューラルネットワークを訓練することが、収束ノイズに対してダブルオーバーパラメータ化訓練プロセスを使用することを含む、(1)に記載の方法。
【0057】
(3)DIPニューラルネットワークを訓練することが、第1および第2のノイズベクトルを初期化することと、第1および第2のノイズベクトルに基づく畳み込みベースの関数が第1の医用画像のノイズに収束する値に等しくなるように、第1および第2のノイズベクトルを訓練することによってノイズ除去された画像を生成するようにDIPニューラルネットワークを訓練することと、畳み込みベースの関数を差し引いた第1の医用画像を近似するようにDIPニューラルネットワークを訓練することと、を含むが、これらに限定されない(1)または(2)のいずれかに記載の方法。
【0058】
(4)第1の医用画像が、被検体のポジトロン放射断層撮影(PET)画像である、(1)~(3)のいずれか1つに記載の方法。
【0059】
(5)第2の医用画像が、PET画像に位置合わせされた被検体のコンピュータ断層撮影(CT)画像である、(4)に記載の方法。
【0060】
(6)第2の医用画像が、PET画像に位置合わせされた被検体の磁気共鳴イメージング(MRI)画像である、(4)に記載の方法。
【0061】
(7)第1の医用画像が、被検体の単一光子放射コンピュータ断層撮影(SPECT)画像である、(1)~(3)のいずれか1つに記載の方法。
【0062】
(8)第2の医用画像が、SPECT画像に位置合わせされた被検体のコンピュータ断層撮影(CT)画像である、(7)に記載の方法。
【0063】
(9)第2の医用画像が、SPECT画像に位置合わせされた被検体の磁気共鳴イメージング(MRI)画像である、(7)に記載の方法。
【0064】
(10)第1の医用画像が、被検体の非ゲート心臓コンピュータ断層撮影(CT)画像である、(1)~(3)のいずれか1つに記載の方法。
【0065】
(11)第2の医用画像が、非ゲート心臓CT画像に位置合わせされた被検体のゲート心臓CT画像である、(10)に記載の方法。
【0066】
(12)医用画像処理装置であって、解剖学的構造の第1の画像を含む第1の医用画像を受信し、解剖学的構造の第2の画像を含む第2の医用画像を受信し、訓練中に第2の医用画像をDeep Image Prior(DIP)ニューラルネットワークに入力し、収束ノイズとDIPネットワークの出力とを組み合わせることによって、訓練の終了時にDIPネットワークの出力と組み合わされた収束ノイズが第1の医用画像を近似するように、ノイズ除去された画像を生成するようにDIPニューラルネットワークを訓練し、DIPネットワークの出力がノイズ除去された画像を表す、ように構成された処理回路、を含むが、これらに限定されない、医用画像処理装置。
【0067】
(13)DIPニューラルネットワークを訓練するように構成された処理回路が、収束ノイズに対してダブルオーバーパラメータ化訓練プロセスを使用するように構成された処理回路を含む、(12)に記載の装置。
【0068】
(14)DIPニューラルネットワークを訓練するように構成された処理回路が、第1および第2のノイズベクトルを初期化し、第1および第2のノイズベクトルに基づく畳み込みベースの関数が第1の医用画像のノイズに収束する値に等しくなるように、第1および第2のノイズベクトルを訓練することによってノイズ除去された画像を生成するようにDIPニューラルネットワークを訓練し、畳み込みベースの関数を差し引いた第1の医用画像を近似するようにDIPニューラルネットワークを訓練する、ように構成された処理回路を含む、(12)に記載の装置。
【0069】
(15)第1の医用画像が、被検体のポジトロン放射断層撮影(PET)画像である、(12)~(14)のいずれか1つに記載の装置。
【0070】
(16)第2の医用画像が、PET画像に位置合わせされた被検体のコンピュータ断層撮影(CT)画像である、(15)に記載の装置。
【0071】
(17)第2の医用画像が、PET画像に位置合わせされた被検体の磁気共鳴イメージング(MRI)画像である、(15)に記載の装置。
【0072】
(18)第1の医用画像が、被検体の単一光子放射コンピュータ断層撮影(SPECT)画像である、(12)~(14)のいずれか1つに記載の装置。
【0073】
(19)第2の医用画像が、SPECT画像に位置合わせされた被検体のコンピュータ断層撮影(CT)画像である、(18)に記載の装置。
【0074】
(20)第2の医用画像が、SPECT画像に位置合わせされた被検体の磁気共鳴イメージング(MRI)画像である、(18)に記載の装置。
【0075】
(21)第1の医用画像が、被検体の非ゲート心臓コンピュータ断層撮影(CT)画像である、(12)~(14)のいずれか1つに記載の装置。
【0076】
(22)第2の医用画像が、非ゲート心臓CT画像に位置合わせされた被検体のゲート心臓CT画像である、(21)に記載の装置。
【0077】
(23)コンピュータによって実行されると、コンピュータに(1)~(11)のいずれか1つの方法を実行させるコンピュータ可読命令を記憶する、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【0078】
明らかに、以上の教示を考慮して、数々の修正および変形が可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内で、本明細書に具体的に記載されている以外の方法で開示を実施し得ることを理解されたい。
【0079】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、精度よく画像のノイズを除去することができる。
【0080】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0081】
762 記憶装置
764 再構成デバイス
870 プロセッサ
878 メモリ
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9