(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108623
(43)【公開日】2023-08-04
(54)【発明の名称】流体を貯蔵するための圧力容器
(51)【国際特許分類】
F17C 1/06 20060101AFI20230728BHJP
【FI】
F17C1/06
【審査請求】有
【請求項の数】31
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023009184
(22)【出願日】2023-01-25
(31)【優先権主張番号】202221004254
(32)【優先日】2022-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】518386656
【氏名又は名称】インディアン オイル コーポレイション リミテッド
【氏名又は名称原語表記】INDIAN OIL CORPORATION LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】セムワル、カラダール
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ、プランジャリ
(72)【発明者】
【氏名】ベラ、タパン
(72)【発明者】
【氏名】バデ、ラジェシュ ムラリダール
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ、アロック
(72)【発明者】
【氏名】ネオギ、スワティ
(72)【発明者】
【氏名】シン、グルプリート カプール
(72)【発明者】
【氏名】ラマクマール、サンカラ スリ ベンカタ
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172AB04
3E172AB05
3E172BA01
3E172BB05
3E172BC04
3E172BC05
3E172BC08
3E172DA36
(57)【要約】 (修正有)
【課題】流体を貯蔵するための圧力容器が開示される。
【解決手段】圧力容器は、円筒部と、円筒部の両端に配置された一対の楕円状ドームとを含む金属ライナーを含む。さらに、圧力容器は、円筒部および一対の楕円状ドームを覆って包む複合材料を含む。複合材料は、繊維で強化された高分子マトリックスから形成され、複合材料は、互いに対して所定の順序で配置されたフープ層及びヘリカル層の組み合わせを含む。フープ層が圧力容器の金属ライナーの円筒部に巻き付けられ、ヘリカル層が円筒部と一対の楕円状ドームの両方の上に巻き付けられている。ヘリカル層は、円筒部と一対の楕円状ドームとが交わる位置でヘリカル角度が画定されるように、一対の楕円ドームのそれぞれに巻き付けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を貯蔵するための圧力容器であって、
円筒部と、前記円筒部の両端に配置された一対の楕円状ドームとを備える金属ライナーと、
前記円筒部および前記一対の楕円状ドームを覆って包む複合材料であって、繊維で強化された高分子マトリックスから形成され、互いに対して所定の順序で配置されたフープ層及びヘリカル層の組み合わせを備える、複合材料と、
を備え、
フープ層は、前記圧力容器の前記金属ライナーの前記円筒部の上に巻き付けられ、
ヘリカル層は、前記円筒部と前記一対の楕円状ドームの両方の上に巻き付けられ、
前記ヘリカル層は、前記円筒部と前記一対の楕円状ドームとが交わる位置でヘリカル角度が画定されるように、前記一対の楕円状ドームのそれぞれに巻き付けられている、
圧力容器。
【請求項2】
前記ヘリカル角度が10°~45°の範囲にある、
請求項1に記載の圧力容器。
【請求項3】
前記圧力容器は、前記一対の楕円状ドームに一対の開口部を備え、
前記圧力容器の前記円筒部は、前記一対の開口部を通って、少なくとも1つの制御弁および少なくとも1つの圧力解放装置に接続されている、
請求項1に記載の圧力容器。
【請求項4】
前記流体が、液体および気体のうちの1つとして具体化される、
請求項1に記載の圧力容器。
【請求項5】
前記気体は、圧縮天然ガス、水素ガス、LPG、およびそれらの混合物のうちの1つとして具体化される、
請求項4に記載の圧力容器。
【請求項6】
前記高分子マトリックスを強化する前記繊維は、ガラス、アラミド、炭素、およびそれらの組み合わせとして具体化される、
請求項1に記載の圧力容器。
【請求項7】
前記高分子マトリックスは、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のうちの1つとして具体化される、
請求項1に記載の圧力容器。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂は、ポリエチレンおよびポリアミドのうちの1つとして具体化される、
請求項7に記載の圧力容器。
【請求項9】
前記熱硬化性樹脂は、エポキシ、変性エポキシ、ポリエステル、およびポリビニルエステルのうちの1つとして具体化される、
請求項7に記載の圧力容器。
【請求項10】
前記金属ライナーは、前記圧力容器の内面に配置され、スピン成形プロセスを用いて製造され、前記金属ライナーがT6処理およびO調整されている、
請求項1に記載の圧力容器。
【請求項11】
前記金属ライナーは、間にある前記円筒部に接続された前記一対の楕円状ドームによって取り囲まれ、前記金属ライナーは、前記円筒部に亘って均一な厚さを有し、前記一対の楕円状ドームのそれぞれに亘って異なる厚さを有する、
請求項1に記載の圧力容器。
【請求項12】
フープ層の数は、10~30、より好ましくは15~26の範囲である、
請求項1に記載の圧力容器。
【請求項13】
ヘリカル層の数は、25~45、より好ましくは29~40の範囲である、
請求項1に記載の圧力容器。
【請求項14】
前記フープ層の厚さは、0.11mm~0.66mm、より好ましくは0.22mm~0.44mmの範囲である、
請求項12に記載の圧力容器。
【請求項15】
前記ヘリカル層の厚さは、0.44mm~5mm、より好ましくは0.47mm~2.5mmの範囲である、
請求項13に記載の圧力容器。
【請求項16】
前記ヘリカル層の厚さは、前記円筒部において均一であり、
前記一対の楕円状ドームにおける前記ヘリカル層の厚さを決定するために下記式が与えられ、
【数1】
ここで、H
domeは、ある位置での層の厚さであり、H
cylinderは、円筒領域での層の厚さであり、R
cylinderは、赤道半径であり、R
openingは、極半径であり、B
φは、その角度で巻くための繊維帯幅であり、R
locationは、その位置での半径である、
請求項15に記載の圧力容器。
【請求項17】
前記ヘリカル層の厚さは、前記円筒部における前記ヘリカル層の厚さと比較して、前記一対の楕円状ドームでより大きく、
前記ヘリカル層の厚さは、前記一対の楕円状ドームのそれぞれの軌道の付近で最大であり、そこまで前記ヘリカル層が前記圧力容器を覆っている、
請求項16に記載の圧力容器。
【請求項18】
前記円筒部の長さ対直径の比は2.5~3の範囲であり、前記一対の楕円状ドームのそれぞれは1.25~1.30の範囲の半径対高さの比を有する、
請求項1に記載の圧力容器。
【請求項19】
前記ヘリカル角度は、前記楕円状ドームと前記円筒部とが交わる位置でより大きく、前記金属ライナーの厚さは、前記楕円状ドームと前記円筒部とが交わる位置でより小さい、
請求項1又は3に記載の圧力容器。
【請求項20】
前記楕円状ドームの前記一対の開口部の付近で前記金属ライナーの厚さが、前記円筒部における前記金属ライナーの厚さの4倍である、
請求項19に記載の圧力容器。
【請求項21】
前記圧力容器は、800barまでの流体の内圧に耐える、
請求項1に記載の圧力容器。
【請求項22】
流体を貯蔵するための圧力容器の製造方法であって、
前記圧力容器の金属ライナー上に複合材料を適用するステップであって、前記複合材料のフープ層が前記圧力容器の前記金属ライナーの円筒部の上に連続フィラメントワインディング操作で巻き付けられ、前記複合材料のヘリカル層が前記圧力容器の前記金属ライナーの前記円筒部と一対の楕円状ドームの両方の上に巻き付けられ、前記ヘリカル層が前記円筒部と前記一対の楕円状ドームとが交わる位置でヘリカル角度が画定されるように、前記一対の楕円状ドームのそれぞれに巻き付けられるステップと、
前記複合材料のオーバーラップを
(i)室温で24~35時間、
(ii)60℃~100℃の範囲の温度で4~15時間
という一連の段階で硬化させるステップであって、両方の硬化段階で前記圧力容器を1~2rpmの範囲の速度で回転させるステップと、
を備える、
圧力容器の製造方法。
【請求項23】
前記ヘリカル角度が10°~45°の範囲にある、
請求項22に記載の方法。
【請求項24】
フープ層の数は、10~30、より好ましくは15~26の範囲である、
請求項22に記載の方法。
【請求項25】
ヘリカル層の数は、25~45、より好ましくは29~40の範囲である、
請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記フープ層の厚さは、0.11mm~0.66mm、より好ましくは0.22mm~0.44mmの範囲である、
請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記ヘリカル層の厚さは、0.44mm~5mm、より好ましくは0.47mm~2.5mmの範囲である、
請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記ヘリカル層の厚さは、前記円筒部において均一であり、
前記一対の楕円状ドームにおける前記ヘリカル層の厚さを決定するために下記式が与えられ、
【数2】
ここで、H
domeは、ある位置での層の厚さであり、H
cylinderは、円筒領域での層の厚さであり、R
cylinderは、赤道半径であり、R
openingは、極半径であり、B
φは、その角度で巻くための繊維帯幅であり、R
locationは、その位置での半径である、
請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ヘリカル層の厚さは、前記円筒部における前記ヘリカル層の厚さと比較して、前記一対の楕円状ドームでより大きく、
前記ヘリカル層の厚さは、前記一対の楕円状ドームのそれぞれの軌道の付近で最大であり、そこまで前記ヘリカル層が前記圧力容器を覆っている、
請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記円筒部の長さ対直径の比は2.5~3の範囲であり、前記一対の楕円状ドームのそれぞれは1.25~1.30の範囲の半径対高さの比を有する、
請求項22に記載の方法。
【請求項31】
前記ヘリカル角度は、前記楕円状ドームと前記円筒部とが交わる位置でより大きく、前記金属ライナーの厚さは、前記楕円状ドームと前記円筒部とが交わる位置でより小さい、
請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧力容器に関し、より具体的には、高圧で流体を貯蔵するための軽量な圧力容器に関する。
【背景技術】
【0002】
水素は、そのクリーンな排出と高効率のため、従来のエネルギー源よりも好まれる。水素は、燃料電池に供給されると、内燃エンジンよりも3倍高いエネルギーを水とともに生成する。そのため、燃料としての水素ガスの利用を増やすメリットがある。水素ガスは、自動車セクターの車載貯蔵用に350~700barの圧力範囲で貯蔵される。世界的に、金属または複合材料のシリンダーは、加圧水素ガスを貯蔵するための最も原始的なソリューションであると考えられている。金属シリンダーは、製造が容易であるが、重く、車両に負担がかかり、燃料効率が低下する。典型的なType 1の金属シリンダーは、Type 3シリンダーの約3倍の重量がある。先行技術に記載された軽量のType 3シリンダーは、商業生産およびコストの面で課題を抱えている。Type 3のシリンダー(ISO 15869の規格ではType-3と呼ばれる)とは、樹脂含浸連続フィラメントで包まれた金属ライナーである。
【0003】
米国特許出願公開第20150219277号明細書は、樹脂含浸繊維ストランドでオーバーラップされた円筒容器を製造するプロセスを開示し、そのプロセスは、金属ライナーを製造することと、その繊維でオーバーラップすることを含む。さらに、その先行技術は、樹脂の不均一な堆積を防止するために繊維がオーバーラップされるライナーを回転させることを開示している。しかしながら、その先行技術は、提案された発明の重要な特徴において概説された他の側面を開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第20150219277号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
この概要は、発明の詳細な説明でさらに説明される概念の選択を簡略化された形式で紹介するために提供される。この概要は、本発明の重要なまたは本質的な発明概念を特定することを意図したものではなく、本発明の範囲を決定することも意図したものではない。
【0006】
本開示の一実施形態では、流体を貯蔵するための圧力容器が開示される。前記圧力容器は、円筒部と、前記円筒部の両端に配置された一対の楕円状ドームとを含む金属ライナーを含む。さらに、前記圧力容器は、前記円筒部および前記一対の楕円状ドームを覆って包む複合材料を含む。前記複合材料は、繊維で強化された高分子マトリックスから形成され、前記複合材料は、互いに対して所定の順序で配置されたフープ層及びヘリカル層の組み合わせを含む。フープ層は、前記圧力容器の前記金属ライナーの円筒部に巻き付けられ、ヘリカル層は、前記円筒部と前記一対の楕円状ドームの両方の上に巻き付けられる。前記ヘリカル層は、前記円筒部と前記一対の楕円状ドームとが交わる位置でヘリカル角度が画定されるように、前記一対の楕円状ドームのそれぞれに巻き付けられている。
【0007】
本開示の別の実施形態では、流体を貯蔵するための圧力容器を製造する方法が開示される。前記方法は、前記圧力容器の金属ライナーの上に複合材料を適用することを備える。前記複合材料のフープ層が前記圧力容器の前記金属ライナーの円筒部の上に連続フィラメントワインディング操作で巻き付けられ、前記複合材料のヘリカル層が前記圧力容器の前記円筒部と前記金属ライナーの一対の楕円状ドームの両方の上に巻き付けられる。前記ヘリカル層は、前記円筒部と前記一対の楕円状ドームとが交わる位置でヘリカル角度が画定されるように、前記一対の楕円状ドームのそれぞれに巻き付けられる。さらに、前記方法は、前記複合材料のオーバーラップを一連の段階で硬化させることを含む:(i)室温で24~35時間、(ii)60℃~100℃の範囲の温度で4~15時間。両方の硬化段階で、前記圧力容器を1~2rpmの範囲の速度で回転させる。
【0008】
本発明の利点および特徴をさらに明確にするために、添付の図面に示されている特定の実施形態を参照して、本発明のより具体的な説明を行う。これらの図面は、本発明の典型的な実施形態のみを示しており、したがって、その範囲を限定するものと見なされるべきではないことを理解されたい。本発明は、添付の図面を用いてさらに具体的かつ詳細に記載され、説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様、並びに利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むと、よりよく理解されるであろう。
【0010】
【
図1】
図1a及び1bは、本開示の一実施形態による、流体を貯蔵するための圧力容器の異なる平面図を示した図であり、
図1cは、本開示の一実施形態による、
図1aに示される圧力容器の一部を示す図である。
【
図2a】
図2aは、本開示の一実施形態による、圧力容器の概略図である。
【
図2b】
図2bは、本開示の一実施形態による、圧力容器の概略図である。
【
図3a】
図3aは、本開示の一実施形態による、圧力容器の例示的なワインディングシーケンスを示す図である。
【
図3b】
図3bは、本開示の一実施形態による、異なるヘリカル角度での楕円状ドームの1つにおける複合材料の例示的な厚さを示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態による、圧力容器の例示的な破壊特性を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の一実施形態による、流体を貯蔵するための圧力容器を製造する方法を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、本開示の一実施形態による、圧力容器の製造において実施される4軸フィラメントワインディング機のための、よくあるファイバー巻き経路を示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の一実施形態による、静水圧破裂試験において圧力容器に加えられる圧力を示す例示的なグラフを示す図である。
【
図8】
図8は、本開示の一実施形態による、圧力容器の例示的な破壊特性を示す図である。
【0011】
さらに、当業者は、図面中の要素が単純化のために図示されており、必ずしも一定の縮尺で描かれていない可能性があることを理解するであろう。例えば、フローチャートは、本発明の態様の理解を深めるのを助けるために、関連する最も顕著なステップに関する方法を示している。さらに、装置の構造に関して、装置の1つまたは複数の構成要素は、慣習の記号によって図面に表されている場合があり、図面は、細部で図面を不明瞭にしないように本発明の実施形態の理解に関連する特定の詳細のみを示す場合があり、これは、本明細書の説明の恩恵を受ける当業者には容易に明らかであろう。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の原理の理解を促進する目的で、ここからは、図面に示された実施形態を参照し、特定の用語を使用してそれを説明する。それにもかかわらず、それによって本発明の範囲を限定することは意図されておらず、例示されたシステムにおけるそのような変更およびさらなる修正、並びに、そこに例示された本発明の原理のそのようなさらなる適用は、本発明が関連する技術における当業者に通常想起されると考えられることが理解されるであろう。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。ここで提供されるシステム、方法、および例は、例示のみを目的としており、限定を意図するものではない。
【0013】
本明細書で使用される「ある」という用語は、「なし、または1つ、または1つを超える、または全て」と定義される。したがって、「なし」、「1つ」、「複数」、「複数であるが、すべてではない」、または「すべて」という用語は、すべて「ある」の定義に該当する。「ある実施形態」という用語は、「実施形態がないこと、または1つの実施形態、またはいくつかの実施形態、またはすべての実施形態」を指す場合がある。したがって、「ある実施形態」という用語は、「実施形態がない、または1つの実施形態、または1つより多い実施形態、またはすべての実施形態」を意味するものとして定義される。
【0014】
本明細書で使用される用語および構造は、ある実施形態及びその特定の特徴および要素を説明し、教示し、明らかにするためのものであり、請求項またはそれらの均等物の精神および範囲を限定、減縮、または縮小するものではない。
【0015】
より具体的には、「含む」、「備える」、「有する」、「からなる」、およびそれらの文法上の変形などであるがこれらに限定されない本明細書で使用される用語は、厳密な限定または減縮を指定するものではなく、特に明記されていない限り、1つまたは複数の機能または要素の追加の可能性を排除するものではなく、さらに、「備える必要がある」または「含む必要がある」という制限文言で別段の記載がない限り、リストされた機能および要素の1つまたは複数の削除の可能性を排除するものと見なされてはならない。
【0016】
特定の機能または要素が一度だけ使用されるように限定されていたかどうかにかかわらず、いずれにしても、「1つまたは複数の機能」または「1つまたは複数の要素」または「少なくとも1つの機能」または「少なくとも1つの要素」と呼ばれることがある。さらに、「1つまたは複数」または「少なくとも1つの」機能または要素という用語の使用は、「1つ以上ある必要がある...」または「1つ以上の要素が必要である」などの限定的な言葉で別段の指定がない限り、その機能または要素のいずれも存在しないことを排除するものではない。
【0017】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての用語、特に技術的および/または科学的用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有すると解釈され得る。
【0018】
本明細書では、ある「実施形態」を参照する。それは、添付の請求項に提示された任意の特徴および/または要素の可能な実装の例であることを理解されたい。ある実施形態は、添付の請求項の特定の特徴および/または要素が独自性、有用性および非自明性の要件を満たす潜在的な方法の1つまたは複数を明らかにする目的で記述されている。
【0019】
「第1の実施形態」、「さらなる実施形態」、「代替の実施形態」、「1つの実施形態」、「一実施形態」、「複数の実施形態」、「ある実施形態」、「他の実施形態」、「またの実施形態」、「さらなる実施形態」、「追加の実施形態」またはそれらの変形などであるがこれらに限定されない語句および/又は用語の使用は、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らない。別段の指定がない限り、1つまたは複数の実施形態に関連して説明された1つまたは複数の特定の特徴および/または要素は、1つの実施形態で見られる場合もあれば、2つ以上の実施形態で見られる場合もあり、すべての実施形態で見られる場合もあり、どの実施形態にも見られない場合もある。1つまたは複数の特徴および/または要素は、単一の実施形態のみの文脈で、または代替的に複数の実施形態の文脈で、またはさらに代替的にすべての実施形態の文脈で本明細書に記載され得るが、機能および/または要素は、別個に、または任意の適切な組み合わせで代わりに提供されてもよく、または全く提供されなくてもよい。逆に、別個の実施形態の文脈で説明される任意の特徴および/または要素は、単一の実施形態の文脈で一緒に存在するものとして代わりに実現されてもよい。
【0020】
本明細書に記載された特定のすべての詳細は、ある実施形態の文脈で使用され、それゆえ、添付の特許請求の範囲に対する限定要因として必ずしも解釈されるべきではない。添付の特許請求の範囲およびそれらの法的均等物は、以下の説明で例示として使用されるもの以外の実施形態の文脈で実現することが可能である。
【0021】
本開示の実施形態の1つは、アルミニウム合金ベースの金属ライナーを覆った繊維強化高分子マトリックスで作られた複合材料を含む、流体を貯蔵するための軽量な圧力容器を開示する。複合材料は、所定の順序で提供されるフープ層とヘリカル層との組み合わせを有し、フープ層は、前記圧力容器のライナーの円筒部のみに巻き付けられ、ヘリカル層は、前記圧力容器のライナーの円筒部とドーム部分の両方に巻き付けられる。ライナーの形状は、より大きい角度でワインディングする際に、ファイバーが滑らないように再形成されている。より高い巻き角のその繊維の結束効果により、ライナーの厚さが薄い領域、つまり前記ドーム部分と前記円筒部とが交わる位置で、複合層の厚さが増加する。これにより、シリンダーの強度が向上するが、シリンダーに巻かれる追加の複合材料の量は比較的少なくなる。それはさらに、破壊解析で観察されるような前記円筒部から前記ドーム部分へのクラックの成長を終了させる。これにより、破裂前に圧力解放装置の故障を防止する。これは、前記円筒部自体のクラックを制御し、漏洩時や事故時の前記容器の爆発を防ぐ。この点で、容器の安全性が大幅に向上する。
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
図1a及び1bは、本開示の一実施形態による、流体を貯蔵するための圧力容器100の異なる平面図を示す。
図1cは、本開示の一実施形態による、
図1aに示される圧力容器の一部を示す。一実施形態では、圧力容器100は、本開示の範囲から逸脱することなく、液体および気体を含むがこれらに限定されない流体を貯蔵するために使用され得る。前記気体は、圧縮天然ガス、水素ガス、LPG、およびそれらの混合物のうちの1つとして具体化され得る。一実施形態では、圧力容器100は、本開示の範囲から逸脱することなく、800barまでの流体の内圧に耐えることができる。圧力容器100は、主に、金属ライナーと、金属ライナーの全体を覆って包むフィラメント巻き複合体と、を備える。圧力容器100の構造および製造の詳細は、本開示の後続のセクションで説明される。
【0024】
図1aおよび
図1bを参照すると、図示された実施形態では、圧力容器100は、金属ライナー102と、金属ライナー102を覆う複合材料104とを含み得るが、これらに限定されない。金属ライナー102は、円筒部106と、円筒部106の両端に配置された一対の楕円状ドーム108とを含み得る。一対の楕円状ドーム108は、個別に、第1の楕円状ドーム108-1および第2の楕円状ドーム108-2と呼ぶことができる。さらに、一対の楕円状ドーム108は、本開示の範囲から逸脱することなく、互換的に楕円状ドーム108-1、108-2と呼ぶことができる。
【0025】
金属ライナー102は、圧力容器100の内面に配置されてもよい。一実施形態では、金属ライン102は、スピン成形プロセスを使用して製造されてもよい。金属ライナー102は、T6処理およびO調整されてもよい。さらに、金属ライナー102は、間にある円筒部106に接続された楕円状ドーム108-1、108-2によって取り囲まれてもよい。金属ライナー102は、円筒部106に亘って均一な厚さを有し、楕円状ドーム108-1、108-2のそれぞれに亘って異なる厚さを有していてもよい。
【0026】
一実施形態では、金属ライナー102の厚さは、楕円状ドーム108-1、108-2と円筒部106とが交わる位置でより薄くてもよい。楕円状ドーム108-1、108-2の一対の開口部202-1、202-2の付近で金属ライナー102の厚さは、円筒部106における金属ライナー102の厚さの4倍であってもよい。一実施形態では、金属ライナー102は、本開示の範囲から逸脱することなく、アルミニウム合金ベースの材料で構成されてもよい。
【0027】
図示の実施形態では、圧力容器100は、楕円状ドーム108-1、108-2に一対の開口部202を含んでいてもよい。一対の開口部202は、個別に、第1の開口部202-1および第2の開口部202-2と呼ぶことができる。第1の開口部202-1は、第1の楕円状ドーム108-1の端部に形成され得る。同様に、第2の開口部202-2は、第2の楕円状ドーム108-2の端部に形成され得る。さらに、一実施形態では、本開示の範囲から逸脱することなく、一対の開口部202を交換可能に開口部202-1、202-2と呼ぶことができる。開口部202-1、202-2の中心線は、円筒部106の長手軸と一致する。
【0028】
図1a及び1bは、圧力容器100の例示的な寸法特性を示す。図示された寸法は例示的なものであり、限定と解釈されるべきではないことを理解されたい。
図2a及び2bを参照すると、一例では、金属ライナー102の円筒部106の厚さ「a」および高さ「h
c」は、4.8mmおよび1050mmである。また、円筒部106の直径「d」は、325mm~375mmの範囲である。楕円状ドーム108-1の各中心間の最短距離「R
1」は140mmである。最長距離「R
2」は、前記円筒部の半径と一致する。前記一対の開口部のそれぞれの直径「d
c」は、前記円筒部の厚さと合わせて50mmである。前記楕円状ドームの前記一対の開口部の間における前記圧力容器の全長は、1390mmである。
【0029】
一実施形態では、圧力容器100の円筒部106は、開口部202-1、202-2を通して、少なくとも1つの制御弁および少なくとも1つの圧力解放装置に接続されてもよい。特に、前記少なくとも1つの制御弁と、前記少なくとも1つの圧力解放装置とは、本開示の範囲から逸脱することなく、圧力容器100の開口部202-1、202-2に配置されてもよい。
【0030】
複合材料104は、円筒部106および楕円状ドーム108-1、108-2の上に巻き付けられてもよい。複合材料104は、互換的に複合オーバーラップ104と呼ばれてもよい。一実施形態では、複合材料104は、本開示の範囲から逸脱することなく、繊維で強化された高分子マトリックスから形成されてもよい。前記高分子マトリックスを強化する前記繊維は、ガラス、アラミド、炭素、およびそれらの組み合わせとして具体化されてもよい。好ましくは、炭素繊維は、エポキシ樹脂と混合可能なコーティングで適切にコーティングされる。さらに、前記高分子マトリックスは、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のうちの1つとして具体化されてもよい。一実施形態では、前記熱可塑性樹脂は、ポリエチレンおよびポリアミドのうちの1つとして具体化されてもよい。前記熱硬化性樹脂は、エポキシ、変性エポキシ、ポリエステル、およびポリビニルエステルのうちの1つとして具体化されてもよい。
【0031】
複合材料104は、互いに対して所定の順序で配置されたフープ層及びヘリカル層の組み合わせを含んでいてもよい。一実施形態では、フープ層は、圧力容器100の金属ライナー102の円筒部106の上に巻き付けられてもよい。一実施形態では、フープ層の数は、10~30、より好ましくは15~26の範囲であってもよい。前記フープ層の厚さは、0.11mm~0.66mm、より好ましくは0.22mm~0.44mmの範囲であってよい。
【0032】
さらに、ヘリカル層は、円筒部106と楕円状ドーム108-1、108-2の両方の上に巻き付けられてもよい。前記ヘリカル層は、円筒部106と楕円状ドーム108-1、108-2とが交わる位置でヘリカル角度が画定されるように、楕円状ドーム108-1、108-2のそれぞれに巻き付けられてもよい。一実施形態では、前記ヘリカル角度は、本開示の範囲から逸脱することなく、10°~45°の範囲にあってもよい。前記ヘリカル角度は、楕円状ドーム108-1、108-2と円筒部106とが交わる位置でより大きくてもよい。特に、前記ヘリカル角度は、第1の楕円状ドーム108-1と円筒部106とが交わる位置でより大きくてもよい。同様に、ヘリカル角度は、第2の楕円状ドーム108-2と円筒部106とが交わる位置でより大きくてもよい。
【0033】
一実施形態では、ヘリカル層の数は、25~45、より好ましくは29~40の範囲であってもよい。前記ヘリカル層の厚さは、0.44mm~5mm、より好ましくは0.47mm~2.5mmの範囲であってもよい。前記ヘリカル層の厚さは、円筒部106において均一であってもよい。楕円状ドーム108-1、108-2の前記ヘリカル層の厚さは、以下の式を使用して導き出されてもよい。
【0034】
【0035】
ここで、
Hdomeは、ある位置での層の厚さであり、
Hcylinderは、円筒領域での層の厚さであり、
Rcylinderは、赤道半径であり、
Ropeningは、極半径であり、
Bφは、その角度で巻くための繊維帯幅であり、
Rlocationは、その位置での半径である。
【0036】
一実施形態では、楕円状ドーム108-1、108-2における前記ヘリカル層の厚さは、円筒部106における前記ヘリカル層の厚さと比較して、より大きくてもよい。前記ヘリカル層の厚さは、楕円状ドーム108-1、108-2のそれぞれの軌道の近くで最大であり、そこまで前記ヘリカル層が前記圧力容器を覆っていてもよい。一実施形態では、円筒部106の長さ対直径の比は、2.5~3の範囲であってもよい。さらに、楕円状ドーム108-1、108-2のそれぞれは、1.25~1.30の範囲の半径対高さの比を有していてもよい。
【0037】
図1bを参照すると、ワインディングの厚さ「b」は、厚さが25mmである楕円状ドームの両端を除いて、前記圧力容器の前記円筒部全体を通して20.25mmである。前記楕円状ドームの中間の厚さは、得られた方程式を使用して決定され、22~27mmの範囲である。また、前記金属ライナーの前記円筒部の直径「d
1」は350mmに固定されている。前記圧力容器の金属アダプターは、51mmの直径「d
c」(厚さを含む)を有していてもよい。
図1cに示すように、前記金属アダプターの厚さ「c」は、10.2mmである。前記金属アダプターの口からドームの端までの完全な形状の全長は、Tcであり1390mmである。
【0038】
(設計と応力解析)
本開示の後続のセクションでは、例示的な設計パラメータ、使用条件、応力解析、および圧力容器100を設計するために実施される他の例示的な設計考慮事項について説明する。
【0039】
表1は、本開示の一実施形態による、ISO 15869規格によって指定された要件とともに、前記圧力容器の開発のために採用された様々な使用条件を示している。当業者は、表1が本開示のより良い理解を提供するために含まれていることを理解すべきであり、したがって、限定として解釈されるべきではない。
【0040】
【0041】
表2は、本開示の一実施形態による、ISO 15869規格によって指定された要件とともに、圧力容器100の開発のために採用された様々な設計パラメータを示している。当業者は、表2が本開示のより良い理解を提供するために含まれていることを理解すべきであり、したがって、限定として解釈されるべきではない。
【0042】
【0043】
(圧力容器の設計)
前記フープ層と前記ヘリカル層の厚さを決定するための設計計算方法は、楕円状ドーム108-1、108-2での複合材料の厚さ計算とともに、金属ライナー102の形状に厚さの変化を組み込んだ後に、方法化されたネッティング解析の拡張である。
【0044】
円筒部106内のヘリカル層およびフープ層の所望の数は、ヘリカル層およびフープ層の合計厚さを、個々のヘリカル層およびフープ層の厚さのそれぞれで割ることで決定することができる。ヘリカルおよびフープ層の厚さは、樹脂含浸繊維ロービングの厚さに依存する。圧力容器100の開発に使用される樹脂含浸炭素繊維ロービングの厚さは、本開示の後のセクションで論じる製造特性に依存する。前記樹脂含浸炭素繊維ロービングの厚さは、0.1mm~3.0mmの範囲、より好ましくは0.22~1.5mmの範囲であってもよい。楕円状ドーム108-1、108-2におけるヘリカル層の所望の数は、金属ライナー102の耐荷重特性を考慮した後に計算される。一例では、少なくとも20のフープ層と21のフープ層が、ネッティング解析に従って適切である。ISO 15869規格の基準を満たすために、さらにヘリカル層とフープ層が追加される。したがって、圧力容器100の設計中に、滑りが生じない巻き角度および範囲を決定するために、異なる巻き角度が試みられる。
【0045】
図3aは、本開示の一実施形態による、圧力容器の例示的なワインディングシーケンスを示す。滑らない巻き角度として、10°、15°、25°、35°、及び45°の試行角度が得られる。ヘリカル層とフープ層は、所望の特性を維持しながらシリンダーの重量が最小になるように配置される。円筒部106と楕円状ドーム108-1、108-2とが交わる位置の被覆を強化するために、ワインディングパターンに45°の角度を追加することにさらに重点が置かれる。ヘリカル層およびフープ層の数および厚さは、要件および所望の特性に応じて変えることができる。これらの層を有する様々な他の順列および組み合わせもまた、本開示の範囲内に入る。例示のために、一例を以下に要約する。上記の議論に基づいて、ワインディングシーケンスを例えば、
図3aに示す。
【0046】
表3は、本開示の一実施形態による、楕円状ドーム108-1、108-2および円筒部106内の異なる位置について計算された、巻き角度、フープ厚さ、およびヘリカル厚さなどの例示的なパラメータを示す。当業者は、表3が本開示のより良い理解を提供するために含まれていることを理解すべきであり、したがって、限定として解釈されるべきではない。
【0047】
【0048】
ここで、X(R)は、X軸に沿った金属ライナー102の楕円状ドーム108-1、108-2の半径を表し、Y軸は、縦方向またはY軸に沿った楕円状ドーム108-1、108-2のそれぞれの長さを表す。
【0049】
図3bは、本開示の一実施形態による、楕円状ドーム108-1、108-2の1つにおける複合材料の例示的な厚さを、異なるヘリカル角度で示している。例として、10°、15°、25°、35°、及び45°といった5つの角度のヘリカル角度が考慮される。したがって、円筒部106での各ヘリカル巻き角度のために、楕円状ドーム108-1、108-2で異なるヘリカル巻き角度が得られる。楕円状ドーム108-1、108-2の輪郭は、円筒部106から開口部202-1、202-2に向かって徐々に先細りになっている。
図3bにおいて、R
gはドーム部分108-1、108-2の内側赤道半径である。また、R
fはドーム108-1、108-2の外側赤道半径である。さらに、t
0は、円筒部106におけるライナーの厚さである。座標(x
i,y
i)および(x
i
i,y
i)は、ドーム108-1、108-2の外側および内側ドーム座標である。108-1、108-2の内部ドーム座標は、
図2aに示すように、超音波を使用してトレースされた内部ライナー曲線から計算される。θ
iは、所定のドーム高さのライナーの座標をXY座標系からラジアル座標系に変換するための係数である。
【0050】
したがって、楕円状ドーム108-1、108-2の巻き角度およびヘリカル厚さは、楕円状ドーム108-1、108-2の異なる部分で軸方向に沿って変化し得る。単一層のヘリカル厚さは、本開示の範囲から逸脱することなく、0.44mmと見なされる。フープ層の厚さは、単繊維層を0.22mmとみなして計算される。
【0051】
(応力解析)
ISO 15869規格に従って、応力解析は設計破裂圧力で実行され、開発されたFEAモデルの詳細は次のとおりである。
【0052】
金属ライナー102および複合材料104は、それぞれ、body-1およびbody-2として機能する。これらのCADボディ(body-1およびbody-2)にはSHELL181が使用され、5mmの要素サイズでメッシュ化された。他の3種類の要素がFEレベルで作成された。SURF154は、ライナーの内面、つまりbody-1に作用する内圧荷重を定義するために使用された。それは、圧力などの表面荷重を適用するための要素の追加レイヤーを与える。ライナーの外面と複合オーバーラップ104の内面との間の接触は、2つの本体間の接触対(body-1およびbody-2)によって画定される。body-1のCONTACT174要素とbody-2のTARGET170要素は、これら2つの本体間の接触を検出するための表面要素の層を与える。モデリングプライは、ACP Preモジュールで定義された。次に、形状を静的構造モジュールに転送して、境界条件を定義し、破裂圧力を計算した。そのモデルは、容器の故障を予測するため、ACP Postモジュールで後処理された。エンジニアリングデータは、ISO 527-4に従ってクーポン・ラミネート・テストを使用して実験的に決定された。繊維重量分率が0.56のカーボンエポキシラミネートの試験結果を、以下の表4に要約する。
【0053】
表4は、本開示の一実施形態による、応力分析に使用される炭素/エポキシ複合材の例示的な特性を示している。当業者は、表4が本開示のより良い理解を提供するために含まれていることを理解すべきであり、したがって、限定として解釈されるべきではない。
【0054】
【0055】
この静的構造モジュールの応力解析結果は、容器の理論上の破裂圧力を予測するために使用された。フォン・ミーゼス(Von Mises)の降伏条件がこの応力解析に使用された。フォン・ミーゼス応力は、接線方向の応力と、X及びY方向の応力との合成応力である。フォン・ミーゼスの降伏条件は、フォン・ミーゼス応力を材料の設計応力と比較することにより、特定の設計が特定の荷重に耐えられるかどうかを予測するために主に使用される。
【0056】
この条件によれば、容器が荷重に耐えるには、材料に引き起こされるフォン・ミーゼス応力が材料の設計強度よりも小さくなければならない。フォン・ミーゼス応力が設計応力を超えると、圧力容器100は破裂する。
【0057】
一例として、設計計算により求めた圧力容器100に用いた複合材料104のフープ強度は、1982.7MPaであることが判明した。与えられた圧力でのフォン・ミーゼス応力は、応力解析の結果によって決定され、そこから1982.7MPaとなる対応する破裂圧力が計算される。それは、圧力容器100が、破裂圧力未満の圧力まで内圧に耐えることができ、その後、負荷を増加させると失敗することを示している。設計破裂圧力を超える712barの内圧を受けた圧力容器100の応力解析は、シミュレートされた破裂圧力であり、この荷重で円筒部106に発生するフォン・ミーゼス応力は1983MPaであり、設計強度の1982.7MPaよりも高い。712barの設計破裂圧力でのフォン・ミーゼス応力は、設計強度より高いので、圧力容器100は設計破裂圧力まで耐えることができるだろう。
【0058】
複合オーバーラップ104の破壊特性を予測するために、様々な破壊理論が使用された。その結果を
図4に示す、ここで、4(A、(B)、(C)、(D)、(E)、及び(F)は、それぞれ、Tsai-Wu、Tsai-Hill、Hoffmann、Puck、最大ひずみ、及び、最大応力条件を使用して予測された破壊特性を示す。赤のゾーン(グレースケールでは黒)は、破裂時に破損する可能性が最大であり、つまり、破裂前に亀裂が発生する箇所になる可能性がある。
【0059】
図5は、本開示の一実施形態による、流体を貯蔵するための圧力容器100を製造する方法500を示すフローチャートを示す。簡潔のため、
図1a、
図1b、
図2a、
図2b、
図3a、
図3b、および
図4の説明において既に詳細に説明された圧力容器100の特徴は、
図5の説明では詳細に説明されていない。
【0060】
方法500は、ブロック502で、圧力容器100の金属ライナー102の上に複合材料104を適用することを含む。一実施形態では、複合材料104のフープ層は、圧力容器100の金属ライナー102の円筒部106上に連続フィラメントワインディング操作で巻き付けられてもよい。複合材料104のヘリカル層は、圧力容器100の金属ライナー102の円筒部106と一対の楕円状ドーム108-1、108-2の両方の上に巻き付けられてもよい。さらに、前記ヘリカル層は、円筒部106と一対の楕円状ドーム108-1、108-2とが交わる位置でヘリカル角度が画定されるように、一対の楕円状ドーム108-1、108-2のそれぞれに巻き付けられてもよい。
【0061】
方法500は、ブロック504で、一連の段階で複合オーバーラップを硬化させることを含む。第1の硬化段階では、前記方法は、複合オーバーラップを室温で24~35時間硬化させることを含む。その後、第2の硬化段階で、前記方法は、複合オーバーラップを60℃~100℃の範囲の温度で4~15時間硬化させることを含む。両方の硬化段階で、圧力容器100は、本開示の範囲から逸脱することなく、1~2rpmの範囲の速度で回転されてもよい。圧力容器100の例示的な製造プロセスは、本開示の後続のセクションでさらに詳述される。
【0062】
(圧力容器の製造)
スピン成形された金属ライナー102はマンドレルとして使用され、複合材料104は金属ライナー102の上に巻かれる。複合材料104を巻き付けるために、4軸フィラメントワインディング機が使用される。そのワインディングパラメータは、繊維の滑りや破損、層間剥離、不適切な帯幅によるファイバースプール間の大きなギャップ、および、繊維の体積分率が低いために複合材料の性能が不十分になる可能性を回避するように設定される。ワインディングプロセスの自動化は、人間の介入による欠陥が発生する可能性をさらに減少させる。
【0063】
図6は、本開示の一実施形態による、圧力容器100の製造において実施される4軸フィラメントワインディング機のための、よくあるファイバー巻き経路を示す。本開示は、圧縮水素ガスを貯蔵するためのtype-3シリンダーの製造プロセスを容易にするプロセスを開示する。先に説明したように、圧力容器100は、金属ライナー102および炭素-エポキシ複合オーバーラップ104を含む。圧力容器100を開発するプロセスは、本開示の後続のセクションで説明されるように、様々なパラメータに依存する。
【0064】
ライナーのプロファイルは、ワインディングパラメータを決定する上で重要な役割を果たす。ワインディングパラメータを最適化するための研究では、ワインディング中に大きい値の巻き付け角度を使用しやすくするために、長さと直径の比率が1.25~1.30の間の楕円状ドームヘッドを使用することが示された。楕円状ドーム108-1、108-2と円筒部106とが交わる位置は、適切な被覆をもたらし、それによって圧力容器100の安全性を高める。
【0065】
金属ライナー102のような継ぎ目のないアルミニウム合金ライナーは、スピン成形プロセスを使用して製造され、金属ライナー106の延性を改善し、欠陥サイズを縮小するために、T6熱処理およびO調整される。これは、金属ライナー102の材料における水素脆化のしやすさを低下させる。
【0066】
ネッティング解析を使用して導き出されたワインディングパターンは、フィラメントワインディング技術を使用して金属ライナー102の周りに巻き付けられる。炭素繊維は、エポキシマトリックス系の補強材として機能する。その繊維の体積分率は、複合材料104の強度を決定する上で重要な役割を果たす。電子式テンショナーは、ワインディング時のテンション機構として使用される。
【0067】
スプールからマンドレルまでのファイバーの経路は、ファイバーの破損を防ぎ、帯幅を改善し、マンドレルにファイバーを確実に適切に配置するために、滑らかで適切でなければならない。繰り出しアイにおける配置プーリーの数は、繊維張力能力と、ワインディング中に繊維が破損することなく繊維の体積分率を高めるためのシステム要件との関数として計算される。張力の適切な値は、複合材料を巻いている間に、余分な樹脂を絞り出すのに役立つ。過度の張力は、層の剥離につながる。全ての複合材料層の厚さの関数として必要な張力は、適切なワインディングのために決定される。
【0068】
レジンバスは、ワインディングの前にファイバーを濡らすのに重要な役割を果たす。不規則な繊維の濡れは、マトリックスが荷重を伝達するため、補強材間の荷重伝達を妨げる。繊維が過度に濡れると、繊維の体積分率が減少する。レジンバスが適切に機能するためには、必要な角度でドクターブレードを取り付ける必要がある。ワインディング中の樹脂の硬化を防ぐため、温度コントローラーがレジンバスシステムに追加される。ワインディングの中間に樹脂が硬化すると、層間剥離が発生する。
【0069】
後続の層の張力がかかった繊維によってマンドレルに押し出された余分な樹脂は、繰り出しアイにアドオンとして追加された可動ドクターブレードを使用して自動的に収集される。その接触角は、巻き付け位置に依存する関数に従って変化する。ファイバーは、滑らないように測地線ファイバー経路を横切って配置される。測地線ファイバー経路は、シリンダー半径、滑らない開口半径、およびドームの高さの関数として決定される。
【0070】
そのワインディングパラメータは、主に、帯幅、巻き速度、繰り出しアイのオフセット、およびファイバー張力であり、巻き角度、層数、滑らない開口半径、極付近で必要なファイバー結束、および機械の能力によって異なる。ワインディング中にフープ層からヘリカル層に、またはその逆に変更するためのファイバー経路は、プロセスの自動化を助けるように決定される。
【0071】
楕円状ドーム108-1、108-2内の個々の複合材料層の厚さ分布は、ワインディングパラメータに依存する。層厚、滑らない開口半径、ドーム位置、円筒半径、および円筒領域での層厚の間の相関関係は、製造試行の結果を用いて導き出される。金属ライナーの上への複合材料の巻き付けに関連する様々なパラメータは、本開示の後続のセクションで説明される。
【0072】
(プロセスパラメータ)
a)繊維張力機構:ファイバースプールは、最初に105005 Dynaspede電動テンショナーを使用して張力をかけ、5Kgのトルクを与えることができる。そのコントローラーの値は、ファイバースプールを出てテンションプーリーに入る乾燥ファイバーに1.75Kgのトルクを与えるように最初に設定される。
【0073】
b)テンション機構:さまざまな滑車が一定の間隔で配置される。テンションプーリーによる張力の増加は、繊維トウとプーリーの接触面積、プーリーの材質、繊維トウとプーリーの材質の摩擦係数に依存する。この場合、テフロンプーリーが使用され、サンドブラスト処理はこれらプーリーの摩擦係数を増加させる。
【0074】
c)繰り出しアイ:繰り出しアイは、ファイバースプールをまとめて配置して帯幅を形成する上で重要な役割を果たす。隣接する繊維トウ間に隙間がなく、繊維トウ間に重複がない帯幅は、効率的な帯幅と見なされる。これにより、1回のワインディングサイクルで、より優れた複合材料の被覆が得られ、極部分付近の繊維結束の影響が減少し、補強材間の荷重伝達が改善され、ワインディング時間が短縮される。
【0075】
d)レジンバス:樹脂の含浸は、複合材料の特性を決定する上で重要な役割を果たす。複合材料中の樹脂分率が高いと、複合材料の強度が低下する。したがって、粘度の低い樹脂を使用して樹脂を含浸させる。余分な樹脂を絞り出すために追加された2つのドクターブレードは、繊維の体積分率が高く、極限引張強度と機械的特性が優れた複合材料を与える。樹脂のゲル化時間は50分で、レジンバスに温度調節器を付けることで長くすることができる。レジンバスは、ゲル化時間を2時間増加させる15℃の温度に維持される。ワインディング中に以前に巻き付けられた複合材料が部分的に硬化すると、層間剥離が発生する可能性があり、温度コントローラーを取り付けることが許容されるそれの解決策である。
【0076】
e)ワインディング機構:複合材料は、4軸フィラメントワインディングマシンを使用して、測地線ファイバー経路を渡って巻き付けられる。巻き速度は、繊維の滑り特性に影響を与えることにより、ワインディング中の繊維配置の精度に影響を与える。測地線ファイバー経路は、CADFILソフトウェアで決定され、これは、巻き角度、開口半径、摩擦係数、オフセット、帯幅、マンドレルプロファイル、およびドーム曲率に依存する。これらのワインディングパラメータは、必要なワインディングパターンに合わせて最適化される。マンドレルチャップは、パラメータの変化を伴うワインディングの進行とともに変化する。製造上の欠陥が発生する可能性が最も低いワインディングパラメータの推定値を表6に示す。
【0077】
表6は、本開示の一実施形態による、楕円状ドーム108-1、108-2および円筒部106上に複合材料を巻き付けるための例示的なワインディングパラメータを示している。当業者は、表6が本開示のより良い理解を提供するために含まれていることを理解すべきであり、したがって、限定として解釈されるべきではない。
【0078】
【0079】
(複合オーバーラップの統合)
a)樹脂の分量の削減:余分な樹脂を拭き取る工程を自動化するため、ドクターブレードが繰り出しアイに追加される。接触角は30~60°の間で変化する。これにより、複合層の統合後に絞り出された余分な樹脂が拭き取られることで、シリンダーの繊維体積分率が向上する。
【0080】
b)硬化:製造されたプロトタイプは、複合オーバーラップにおける樹脂の不均一な堆積を回避するため、硬化が完了するまで軸方向に回転する。樹脂は硬化中に収縮し、容器を適切に回転させると、マトリックスが複合材料全体に均一に分散されて荷重が適切に伝達されるため、均一な収縮が保証される。
【0081】
したがって、圧力容器100は試験のために製造される。圧力容器100について測定された総重量は、30~35kgの範囲であることが見出された。圧力容器100は、既存技術で利用可能な従来のシリンダーと比較して、約30~54%の重量の減少をもたらす。
【0082】
(試験)
この試験は、国際規格ISO 15869に従って実施された。
【0083】
実行された例示的な試験の解説と結果を以下に説明する。
【0084】
1.静水圧破裂試験
静水圧破裂試験は、ISO 15869規格に従って、圧力容器100を用いて実施される。圧力容器100は、0.48MPa/sの速度で50MPaまで静水圧で加圧され、その後、加圧速度は0.37MPa/sに低下する。
図7に示されるように、70MPa、つまり最小破裂圧力で10秒間、制御ユニットで保たれると、圧力容器100は812barの圧力で破裂した。この圧力は、標準の推奨圧力(つまり700bar)を上回っている。
【0085】
2.破壊解析
設計モデルを検証するため、有限要素解析の結果が実験的に得られた結果と比較された。圧力容器の理論上の破裂圧力は71MPaであると予測されたが、その実際の値は81MPaであると決定された。したがって、この設計は10MPaの安全係数を有し、破裂圧力を予測することで圧力容器の設計に使用できる。
図4に示すさまざまな破壊基準による圧力容器の理論上の破壊特性を、
図8(A)および(B)に示すように得られた破壊特性と比較した。Tsai-Wu破壊基準は、破壊を予測するための信頼できる基準であることがわかった。理論上の破壊と実際の破壊の比較を
図8(C)に示す。
【0086】
上述の圧力容器100および圧力容器100を製造する方法は、以下の利点をもたらす。
【0087】
本開示は、流体を貯蔵するための軽量の圧力容器100を提供する。本開示はまた、軽量の圧力容器100を、容器の重量、コスト、および安全性に関して、より優れた性能結果をもたらす実用的なアプローチで製造する方法を開示する。
【0088】
圧力容器100は、従来の圧力容器よりも30~50%軽量である。圧力容器100は、710barまでの内圧に耐える。圧力容器100は、高圧下で流体を貯蔵するために使用される。圧力容器100は、主に中型の車両用であり、軽量であるため、燃費効率を向上させ、車両における負荷を軽減する。
【0089】
本開示では、金属ライナー102の形状を再形成した後、ワインディングパターンにおいてより大きい巻き角度を含めることが可能であり、これらのより大きい巻き角度のワインディングの間、繊維の滑りを回避する。より大きい巻き角度の繊維結束効果は、ライナーの厚さが薄い領域、つまり、楕円状ドーム108-1、108-2と円筒部106とが交わる位置における複合材料層の厚さを増加させる。これは圧力容器100の強度を向上させる一方で、圧力容器100の金属ライナー102に巻かれる追加の複合材料の量は比較的少なくなる。さらに、破壊解析結果で観察されるように、円筒部106から楕円状ドーム108-1、108-2部分へのクラックの成長を停止させ、それによって破裂前の圧力解放装置の故障を防止する。これは、円筒部106自体のクラックを制御することで、漏洩時や事故時の圧力容器100の爆発を防止する。これにより、圧力容器100のコストに影響を与えることなく、圧力容器100の安全性が大幅に改善される。
【0090】
圧力容器100は、ISO 15869に定められたすべての安全基準を満たしながら、商業的に実現可能でより経済的な方法によって製造される。圧力容器100は、複合材料104の連続層の間のギャップを回避するために整然と巻かれ、800barまでの流体の内圧を維持することができる。本開示は、流体を貯蔵するための圧力容器100を製造する方法も開示する。
【0091】
先に説明したように、この方法は、圧力容器のライナーの円筒部とドーム部分の両方の上に、可能な巻き角度の最大値と最小の繊維結束効果で部分的にドーム部分を覆うヘリカル層を交互に、圧力容器のライナーの円筒部の上に連続フィラメントワインディング操作で複合フープ層に適用することを含む。より具体的には、本開示は、圧縮水素ガスを貯蔵するための軽量複合圧力容器、およびより優れた重量性能をもたらす圧力容器100の製造方法に関する。より具体的には、本開示は、圧縮水素ガスを貯蔵するための、圧力容器100などの軽量複合Type 3の圧力容器/シリンダー、および圧力容器100の設計および製造方法に関する。
【0092】
本主題を説明するために特定の言葉が使用されているが、それによって生じる制限は意図されていない。当業者には明らかなように、本明細書で教示する発明概念を実施するために、方法に対して様々な作業上の変更を加えることができる。図面および前述の説明は、実施形態の例を与える。当業者は、記載された要素のうちの1つまたは複数を単一の機能要素に組み合わせてもよいことを理解するであろう。あるいは、特定の要素を複数の機能要素に分割してもよい。一の実施形態の要素をその他の実施形態に追加してもよい。
【0093】
(付記)
(付記1)
流体を貯蔵するための圧力容器であって、
円筒部と、前記円筒部の両端に配置された一対の楕円状ドームとを備える金属ライナーと、
前記円筒部および前記一対の楕円状ドームを覆って包む複合材料であって、繊維で強化された高分子マトリックスから形成され、互いに対して所定の順序で配置されたフープ層及びヘリカル層の組み合わせを備える、複合材料と、
を備え、
フープ層は、前記圧力容器の前記金属ライナーの前記円筒部の上に巻き付けられ、
ヘリカル層は、前記円筒部と前記一対の楕円状ドームの両方の上に巻き付けられ、
前記ヘリカル層は、前記円筒部と前記一対の楕円状ドームとが交わる位置でヘリカル角度が画定されるように、前記一対の楕円状ドームのそれぞれに巻き付けられている、
圧力容器。
【0094】
(付記2)
前記ヘリカル角度が10°~45°の範囲にある、
付記1に記載の圧力容器。
【0095】
(付記3)
前記圧力容器は、前記一対の楕円状ドームに一対の開口部を備え、
前記圧力容器の前記円筒部は、前記一対の開口部を通って、少なくとも1つの制御弁および少なくとも1つの圧力解放装置に接続されている、
付記1に記載の圧力容器。
【0096】
(付記4)
前記流体が、液体および気体のうちの1つとして具体化される、
付記1に記載の圧力容器。
【0097】
(付記5)
前記気体は、圧縮天然ガス、水素ガス、LPG、およびそれらの混合物のうちの1つとして具体化される、
付記4に記載の圧力容器。
【0098】
(付記6)
前記高分子マトリックスを強化する前記繊維は、ガラス、アラミド、炭素、およびそれらの組み合わせとして具体化される、
付記1に記載の圧力容器。
【0099】
(付記7)
前記高分子マトリックスは、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のうちの1つとして具体化される、
付記1に記載の圧力容器。
【0100】
(付記8)
前記熱可塑性樹脂は、ポリエチレンおよびポリアミドのうちの1つとして具体化される、
付記7に記載の圧力容器。
【0101】
(付記9)
前記熱硬化性樹脂は、エポキシ、変性エポキシ、ポリエステル、およびポリビニルエステルのうちの1つとして具体化される、
付記7に記載の圧力容器。
【0102】
(付記10)
前記金属ライナーは、前記圧力容器の内面に配置され、スピン成形プロセスを用いて製造され、前記金属ライナーがT6処理およびO調整されている、
付記1に記載の圧力容器。
【0103】
(付記11)
前記金属ライナーは、間にある前記円筒部に接続された前記一対の楕円状ドームによって取り囲まれ、前記金属ライナーは、前記円筒部に亘って均一な厚さを有し、前記一対の楕円状ドームのそれぞれに亘って異なる厚さを有する、
付記1に記載の圧力容器。
【0104】
(付記12)
フープ層の数は、10~30、より好ましくは15~26の範囲である、
付記1に記載の圧力容器。
【0105】
(付記13)
ヘリカル層の数は、25~45、より好ましくは29~40の範囲である、
付記1に記載の圧力容器。
【0106】
(付記14)
前記フープ層の厚さは、0.11mm~0.66mm、より好ましくは0.22mm~0.44mmの範囲である、
付記12に記載の圧力容器。
【0107】
(付記15)
前記ヘリカル層の厚さは、0.44mm~5mm、より好ましくは0.47mm~2.5mmの範囲である、
付記13に記載の圧力容器。
【0108】
(付記16)
前記ヘリカル層の厚さは、前記円筒部において均一であり、
前記一対の楕円状ドームにおける前記ヘリカル層の厚さを決定するために下記式が与えられ、
【数2】
ここで、H
domeは、ある位置での層の厚さであり、H
cylinderは、円筒領域での層の厚さであり、R
cylinderは、赤道半径であり、R
openingは、極半径であり、B
φは、その角度で巻くための繊維帯幅であり、R
locationは、その位置での半径である、
付記15に記載の圧力容器。
【0109】
(付記17)
前記ヘリカル層の厚さは、前記円筒部における前記ヘリカル層の厚さと比較して、前記一対の楕円状ドームでより大きく、
前記ヘリカル層の厚さは、前記一対の楕円状ドームのそれぞれの軌道の付近で最大であり、そこまで前記ヘリカル層が前記圧力容器を覆っている、
付記16に記載の圧力容器。
【0110】
(付記18)
前記円筒部の長さ対直径の比は2.5~3の範囲であり、前記一対の楕円状ドームのそれぞれは1.25~1.30の範囲の半径対高さの比を有する、
付記1に記載の圧力容器。
【0111】
(付記19)
前記ヘリカル角度は、前記楕円状ドームと前記円筒部とが交わる位置でより大きく、前記金属ライナーの厚さは、前記楕円状ドームと前記円筒部とが交わる位置でより小さい、
付記1又は3に記載の圧力容器。
【0112】
(付記20)
前記楕円状ドームの前記一対の開口部の付近で前記金属ライナーの厚さが、前記円筒部における前記金属ライナーの厚さの4倍である、
付記19に記載の圧力容器。
【0113】
(付記21)
前記圧力容器は、800barまでの流体の内圧に耐える、
付記1に記載の圧力容器。
【0114】
(付記22)
流体を貯蔵するための圧力容器の製造方法であって、
前記圧力容器の金属ライナー上に複合材料を適用するステップであって、前記複合材料のフープ層が前記圧力容器の前記金属ライナーの円筒部の上に連続フィラメントワインディング操作で巻き付けられ、前記複合材料のヘリカル層が前記圧力容器の前記金属ライナーの前記円筒部と一対の楕円状ドームの両方の上に巻き付けられ、前記ヘリカル層が前記円筒部と前記一対の楕円状ドームとが交わる位置でヘリカル角度が画定されるように、前記一対の楕円状ドームのそれぞれに巻き付けられるステップと、
前記複合材料のオーバーラップを
(i)室温で24~35時間、
(ii)60℃~100℃の範囲の温度で4~15時間
という一連の段階で硬化させるステップであって、両方の硬化段階で前記圧力容器を1~2rpmの範囲の速度で回転させるステップと、
を備える、
圧力容器の製造方法。
【0115】
(付記23)
前記ヘリカル角度が10°~45°の範囲にある、
付記22に記載の方法。
【0116】
(付記24)
フープ層の数は、10~30、より好ましくは15~26の範囲である、
付記22に記載の方法。
【0117】
(付記25)
ヘリカル層の数は、25~45、より好ましくは29~40の範囲である、
付記22に記載の方法。
【0118】
(付記26)
前記フープ層の厚さは、0.11mm~0.66mm、より好ましくは0.22mm~0.44mmの範囲である、
付記24に記載の方法。
【0119】
(付記27)
前記ヘリカル層の厚さは、0.44mm~5mm、より好ましくは0.47mm~2.5mmの範囲である、
付記25に記載の方法。
【0120】
(付記28)
前記ヘリカル層の厚さは、前記円筒部において均一であり、
前記一対の楕円状ドームにおける前記ヘリカル層の厚さを決定するために下記式が与えられ、
【数3】
ここで、H
domeは、ある位置での層の厚さであり、H
cylinderは、円筒領域での層の厚さであり、R
cylinderは、赤道半径であり、R
openingは、極半径であり、B
φは、その角度で巻くための繊維帯幅であり、R
locationは、その位置での半径である、
付記27に記載の方法。
【0121】
(付記29)
前記ヘリカル層の厚さは、前記円筒部における前記ヘリカル層の厚さと比較して、前記一対の楕円状ドームでより大きく、
前記ヘリカル層の厚さは、前記一対の楕円状ドームのそれぞれの軌道の付近で最大であり、そこまで前記ヘリカル層が前記圧力容器を覆っている、
付記28に記載の方法。
【0122】
(付記30)
前記円筒部の長さ対直径の比は2.5~3の範囲であり、前記一対の楕円状ドームのそれぞれは1.25~1.30の範囲の半径対高さの比を有する、
付記22に記載の方法。
【0123】
(付記31)
前記ヘリカル角度は、前記楕円状ドームと前記円筒部とが交わる位置でより大きく、前記金属ライナーの厚さは、前記楕円状ドームと前記円筒部とが交わる位置でより小さい、
付記22に記載の方法。
【外国語明細書】