(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108654
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】次亜塩素酸水供給装置及びこれを用いた空間除菌システム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/461 20230101AFI20230731BHJP
C02F 1/469 20230101ALI20230731BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
C02F1/461 Z
C02F1/469
A61L9/01 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009806
(22)【出願日】2022-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】植田 充彦
【テーマコード(参考)】
4C180
4D061
【Fターム(参考)】
4C180AA07
4C180CB01
4C180CB08
4C180HH01
4D061DA04
4D061DB09
4D061DC19
4D061EA02
4D061EA09
4D061EB01
4D061EB05
4D061EB11
4D061EB13
4D061EB16
4D061EB19
4D061EB30
4D061EB33
4D061EB39
4D061GC19
(57)【要約】
【課題】塩水の電気分解によって生じる残留成分を低減した次亜塩素酸水を生成することが可能な次亜塩素酸水供給装置及びこれを用いた空間除菌システムを提供する。
【解決手段】次亜塩素酸水供給装置1は、塩水を供給可能に構成された蛇行状の電解流路と、電解流路の前段を構成する無隔膜電解流路(陰陽電極間流路12)内に供給される塩水から一対の陰陽電極間(陽電極2と陰電極3との間)への通電によって次亜塩素酸水を連続的に電解生成する次亜塩素酸水生成部1aと、電解流路の後段を構成する有隔膜電解流路(陽電極側流路13及び陰電極側流路14)内のそれぞれに次亜塩素酸水生成部1aから供給される次亜塩素酸水を一対の陰陽電極間(陽電極2と陰電極3との間)への通電によって連続的に処理する次亜塩素酸水処理部1bと、を備え、次亜塩素酸水処理部1bの陽電極2側における電解流路から送出される次亜塩素酸水を外部に供給する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩水を供給可能に構成された蛇行状の電解流路と、
前記電解流路の前段を構成する無隔膜電解流路内に供給される前記塩水から一対の陰陽電極間への通電によって次亜塩素酸水を連続的に電解生成する次亜塩素酸水生成部と、
前記電解流路の後段を構成する有隔膜電解流路内のそれぞれに前記次亜塩素酸水生成部から供給される前記次亜塩素酸水を前記一対の陰陽電極間への通電によって連続的に処理する次亜塩素酸水処理部と、
を備え、
前記次亜塩素酸水処理部の陽電極側における電解流路から送出される次亜塩素酸水を外部に供給する、次亜塩素酸水供給装置。
【請求項2】
前記無隔膜電解流路は、平面状の陽電極と、前記陽電極と対向する平面状の陰電極と、前記陽電極と前記陰電極との間に設けられたスペーサ部材とを有して構成され、
前記一対の陰陽電極は、前記スペーサ部材によって前記無隔膜電解流路に前記陽電極及び前記陰電極を露出させることで蛇行状に構成されている、請求項1に記載の次亜塩素酸水供給装置。
【請求項3】
前記有隔膜電解流路は、前記陽電極が流路に沿って露出して延設された蛇行状の第一流路と、前記第一流路と対向して並設され、前記陰電極が流路に沿って露出して延設された蛇行状の第二流路と、前記第一流路と前記第二流路とを隔てて設けられ、流路を流通する溶液に含まれる陽イオンを透過させる隔膜と、を有して構成され、
前記一対の陰陽電極は、前記第一スペーサ部材によって前記第一流路に前記陽電極を露出させるとともに、前記第二スペーサ部材によって前記第二流路に前記陰電極を露出させることで蛇行状に構成されている、請求項2に記載の次亜塩素酸水供給装置。
【請求項4】
平面状の前記陽電極と、前記陽電極と対向する平面状の前記隔膜と、前記陽電極と前記隔膜との間に設けられ、流路に沿って前記第一流路内に前記陽電極及び前記隔膜を露出させる前記第一スペーサ部材とを有し、
前記第一流路は、流路に沿って露出する前記陽電極及び前記隔膜と、前記第一スペーサ部材とにより構成されており、
平面状の前記陰電極と、前記陰電極と対向する平面状の前記隔膜と、前記陰電極と前記隔膜との間に設けられ、流路に沿って前記第二流路内に前記陰電極及び前記隔膜を露出させる前記第二スペーサ部材とを有し、
前記第二流路は、流路に沿って露出する前記陰電極及び前記隔膜と、前記第二スペーサ部材とにより構成されている、請求項3に記載の次亜塩素酸水供給装置。
【請求項5】
前記スペーサ部材は、前記第一スペーサ部材と前記第二スペーサ部材を重ね合わせて構成されていることを特徴とする請求項4に記載の次亜塩素酸水供給装置。
【請求項6】
前記次亜塩素酸水処理部の陽電極側及び陰電極側のそれぞれの出口に設けられ、前記電解流路に前記塩水を供給する流れを生じさせる供給ポンプを備え、
前記供給ポンプは、前記次亜塩素酸水生成部からの前記次亜塩素酸水を前記第一流路及び前記第二流路に一定流速で供給することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の次亜塩素酸水供給装置。
【請求項7】
請求項3~6のいずれか一項に記載の次亜塩素酸水供給装置と、
前記第一流路と連通接続され、前記第一流路から送出される次亜塩素酸水を用いて次亜塩素酸水ミストを所定の空間に放出する除菌装置と、
を備えることを特徴とする空間除菌システム。
【請求項8】
前記所定の空間には、前記所定の空間内で発生する水を排出する排水管が設けられており、
前記第二流路は、前記排水管と連通接続され、前記第二流路から送出される次亜塩素酸水を前記排水管に導入可能に構成されていることを特徴とする請求項7に記載の空間除菌システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩水の電気分解によって生成した次亜塩素酸水の残留成分となるNaClO及びNaOHを抑制した次亜塩素酸水を供給する次亜塩素酸水供給装置及びこれを用いた空間除菌システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、塩水の電気分解をすることで、NaClOを主成分としHClO及びNaOHを含む次亜塩素酸水が生成される。次亜塩素酸水は弱酸性側にすることで、除菌力が向上することが知られており、イオン透過能を有する隔膜を使用して生成されるpH弱酸性側に制御する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、pHが弱酸性に調整するだけでは、残留成分となるNaClO及びNaOHの抑制が十分にできているとはいえない。NaClO及びNaOHは、次亜塩素酸水が揮発後も固形分として表面に残留する成分で、この残留成分が潮解及び水に再溶解することで金属の腐食を促進する要因となる。そのため、NaClO及びNaOH成分を多く含む次亜塩素酸水をミスト噴霧すると、微小な残留成分が蓄積されるため、長期間使用時の腐食が懸念される。
【0005】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、塩水の電気分解によって生じる残留成分を低減した次亜塩素酸水を供給することが可能な次亜塩素酸水供給装置及びこれを用いた空間除菌システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するため、本発明に係る次亜塩素酸水供給装置は、塩水を供給可能に構成された蛇行状の電解流路と、電解流路の前段を構成する無隔膜電解流路内に供給される塩水から一対の陰陽電極間への通電によって次亜塩素酸水を連続的に電解生成する次亜塩素酸水生成部と、電解流路の後段を構成する有隔膜電解流路内のそれぞれに次亜塩素酸水生成部から供給される次亜塩素酸水を一対の陰陽電極間への通電によって連続的に処理する次亜塩素酸水処理部と、を備え、次亜塩素酸水処理部の陽電極側における電解流路から送出される次亜塩素酸水を外部に供給する構造とする。
【0007】
また、本発明に係る空間除菌システムは、上述の次亜塩素酸水供給装置と、第一流路と連通接続され、第一流路から送出される次亜塩素酸水を用いて次亜塩素酸水ミストを所定の空間に放出する除菌装置とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、塩水の電気分解によって生じる残留成分を低減した次亜塩素酸水を供給することが可能な次亜塩素酸水供給装置及びこれを用いた空間除菌システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態1に係る次亜塩素酸水供給装置の概略図である。
【
図2】
図2は、次亜塩素酸水供給装置の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、次亜塩素酸水供給装置の垂直方向の断面イメージ図である。
【
図4】
図4は、次亜塩素酸水供給装置の次亜塩素酸水生成部の水平方向の断面イメージ図である。
【
図5】
図5は、次亜塩素酸水供給装置の次亜塩素酸水処理部の水平方向の断面イメージ図である。
【
図6】
図6は、次亜塩素酸水供給装置を流通した次亜塩素酸水の特性と電気透析時間との関係を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態2に係る次亜塩素酸水供給装置の分解斜視図である。
【
図8】
図8は、次亜塩素酸水供給装置を構成するくし歯電極の製造プロセスを示す斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施の形態3に係る、次亜塩素酸水供給装置を用いた空間除菌システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る次亜塩素酸水供給装置は、塩水を供給可能に構成された蛇行状の電解流路と、電解流路の前段を構成する無隔膜電解流路内に供給される塩水から一対の陰陽電極間への通電によって次亜塩素酸水を連続的に電解生成する次亜塩素酸水生成部と、電解流路の後段を構成する有隔膜電解流路内のそれぞれに次亜塩素酸水生成部から供給される次亜塩素酸水を一対の陰陽電極間への通電によって連続的に処理する次亜塩素酸水処理部と、を備え、次亜塩素酸水処理部の陽電極側における電解流路から送出される次亜塩素酸水を外部に供給する構造とする。
【0011】
こうした構成によれば、電解流路に塩水を供給することによって、次亜塩素酸水生成部において無隔膜電解流路内で塩水を電気分解して次亜塩素酸水を生成し、さらに次亜塩素酸水処理部において有隔膜電解流路内に無隔膜電解流路で生成した次亜塩素酸水を流通させて、陽電極側から残留成分の要因となる陽イオンを分離低減した次亜塩素酸水として抽出することができる。このため、塩水の電気分解によって生じる残留成分を分離した次亜塩素酸水を外部に供給することが可能な、ワンパス式の次亜塩素酸水供給装置とすることができる。また、次亜塩素酸水生成部と次亜塩素酸処理部に共通の陽電極及び陰電極(一対の陰陽電極)を使用し、無隔膜電解流路と有隔膜電解流路が陰陽電極間の電圧を印加された状態で直接的につながっている。これにより、無隔膜電解流路内にて、陽電極側近傍には陰イオン、陰電極近傍には陽イオンが多く存在するような分布を持った状態で、有隔膜電解流路に流入するため、陽電極側には残留成分の要因となる陽イオンをあらかじめ減少させた状態で、電気透析処理を開始することができる。
【0012】
また、本発明に係る次亜塩素酸水供給装置では、無隔膜電解流路は、平面状の陽電極と、陽電極と対向する平面状の陰電極と、陽電極と陰電極との間に設けられたスペーサ部材とを有して構成される。一対の第一陰陽電極は、スペーサ部材によって無隔膜電解流路に陽電極及び陰電極を露出させることで蛇行状に構成されている。このようにすることで、スペーサ部材に形成される流路形状により、塩水を電気分解する能力を変化させることができるので、塩水を電気分解する面積及び時間を自由に設計することができる。
【0013】
また、本発明に係る次亜塩素酸水供給装置では、有隔膜電解流路は、陽電極が流路に沿って露出して延設された蛇行状の第一流路と、第一流路と対向して並設され、陰電極が流路に沿って露出して延設された蛇行状の第二流路と、第一流路と第二流路とを隔てて設けられ、流路を流通する溶液に含まれる陽イオンを透過させる隔膜とを有して構成される。一対の陰陽電極は、第一スペーサ部材によって第一流路に陽電極を露出させるとともに、第二スペーサ部材によって第二流路に陰電極を露出させることで蛇行状に構成されている。このようにすることで、塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水を、隔膜を挟んで同じ方向に電圧を印加しながら流通させるので、次亜塩素酸水から残留成分の要因となる陽イオンを分離低減することができる。このため、塩水の電気分解によって生じる残留成分を低減した次亜塩素酸水を生成することが可能な次亜塩素酸水処理部とすることができる。
【0014】
また、本発明に係る次亜塩素酸水供給装置では、有隔膜電解流路は、平面状の陽電極と、陽電極と対向する平面状の隔膜と、陽電極と隔膜との間に設けられ、流路に沿って第一流路内に陽電極及び隔膜を露出させる第一スペーサ部材とを有する。第一流路は、流路に沿って露出する陽電極及び隔膜と第一スペーサ部材とにより構成されている。また、平面状の陰電極と、陰電極と対向する平面状の隔膜と、陰電極と隔膜との間に設けられ、流路に沿って第二流路内に陰電極及び隔膜を露出させる第二スペーサ部材とを有する。第二流路は、流路に沿って露出する陰電極及び隔膜と、第二スペーサ部材とにより構成されている。このようにすることで、第一スペーサ部材に形成される流路形状、及び第二スペーサ部材に形成される流路形状により、塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水から残留成分の要因となる陽イオンを分離する能力を変化させることができるので、次亜塩素酸水から残留成分の要因となる陽イオンを分離する面積及び時間を自由に設計することができる。
【0015】
また、本発明に係る次亜塩素酸水供給装置では、スペーサ部材は、第一スペーサ部材と第二スペーサ部材を重ね合わせて構成されている。こうした構成によれば、構造を簡易化できるとともに、無隔膜電解流路と有隔膜電解流路との間の境界部による液漏れ及び流路内イオン分布の乱れを抑制して、流通させることができる。
【0016】
また、本発明に係る次亜塩素酸水供給装置は、次亜塩素酸水処理部の陽電極側及び陰電極側のそれぞれの出口に設けられ、電解流路に塩水を供給する流れを生じさせる供給ポンプを備える。供給ポンプは、次亜塩素酸水生成部からの次亜塩素酸水を第一流路及び第二流路に一定流速で供給することが好ましい。これにより、第一流路内にて電圧を印加している時間を一定にすることができるとともに、第二流路内にて電圧を印加している時間を一定にすることができる。このため、第一流路における次亜塩素酸水での残留成分の要因となる陽イオンが分離希薄化する濃度、及び第二流路における次亜塩素酸水での残留成分の要因となる陽イオンが濃縮化する濃度を安定にすることができる。
【0017】
本発明に係る空間除菌システムは、上述した次亜塩素酸水供給装置と、第一流路と連通接続され、第一流路から送出される次亜塩素酸水を用いて次亜塩素酸水ミストを所定の空間に放出する除菌装置とを備える構造とする。こうした構成によれば、第一流路から送出される次亜塩素酸水のミストを所定の空間に放出しても、所定の空間に残る残留成分が抑制される。つまり、第一流路から送出される次亜塩素酸水が塩水の電気分解によって生じる残留成分を低減した次亜塩素酸水であるため、所定の空間を除菌する際に、除菌性能を保ちながら、残留成分に起因する金属腐食の発生を抑制することができる。
【0018】
また、本発明に係る空間除菌システムは、所定の空間には、所定の空間内で発生する水を排出する排水管が設けられている。第二流路は、排水管と連通接続され、第二流路から送出される次亜塩素酸水を排水管に導入可能に構成されている構造とする。このようにすることで、第二流路から送出される次亜塩素酸水から、残留成分の要因となる陽イオンが濃縮されたアルカリ性溶液を含む洗浄性の高い次亜塩素酸水を排水管に流通させるので、アルカリ性溶液によって排水管の洗浄を行うことができる。
【0019】
(実施の形態1)
図1~
図3を参照して、本発明の実施の形態1に係る次亜塩素酸水供給装置1について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る次亜塩素酸水供給装置1の概略図である。
図2は、次亜塩素酸水供給装置1の分解斜視図である。
図3は、次亜塩素酸水供給装置1の垂直方向の断面イメージ図である。
【0020】
次亜塩素酸水供給装置1は、塩水(塩化ナトリウム水溶液)を供給して電気分解により次亜塩素酸水を生成し、さらに生成した次亜塩素酸水に含まれる残留成分(Na+イオン等の陽イオンを有する成分:例えば、NaClO、NaOH)を、内部を流通する次亜塩素酸水から分離低減して、かつワンパス式で取り出して供給することができる装置である。
【0021】
具体的には、
図1に示すように、次亜塩素酸水供給装置1は、塩水を電気分解して次亜塩素酸水をワンパス式で生成する次亜塩素酸水生成部1aと、次亜塩素酸水に含まれる残留成分の分離低減をワンパス式で行う次亜塩素酸水処理部1bと、次亜塩素酸水生成部1a及び次亜塩素酸水処理部1bに対して電気分解及び電気透析を行うための電流電圧を印加する電気分解・電気透析電源15と、次亜塩素酸水生成部1aの流路に塩水を流通させるとともに、次亜塩素酸水処理部1bの流路に次亜塩素酸水を流通させるための陽電極側供給ポンプ31(
図9参照)及び陰電極側供給ポンプ32(
図9参照)と、を備える。
【0022】
次亜塩素酸水生成部1aは、
図1~
図3に示すように、陽電極2と、陰電極3と、陽電極側スペーサ5と、陰電極側スペーサ6と、陽電極用パッキン7aと、陰電極用パッキン7bと、陽電極側槽筐体側面8aと、陰電極側槽筐体側面8bと、陰陽電極溶液供給口9と、第一陽電極溶液抽出口10と、第一陰電極溶液抽出口11と、陰陽電極間流路12と、を備える。
【0023】
次亜塩素酸水処理部1bは、陽電極2と、陰電極3と、隔膜4と、陽電極側スペーサ5と、陰電極側スペーサ6と、陽電極用パッキン7aと、陰電極用パッキン7bと、陽電極側槽筐体側面8aと、陰電極側槽筐体側面8bと、陰陽電極溶液供給口9と、第一陽電極溶液抽出口10と、第一陰電極溶液抽出口11と、陽電極側流路13と、陰電極側流路14と、を備える。
【0024】
陽電極2は、平面状の電極板である。陽電極2は、陽電極側スペーサ5によって陰陽電極間流路12及び陽電極側流路13の流路に沿って電極板の表面が露出している。陽電極2は、電気分解・電気透析電源15によって電流が流れると陽極として機能する電極である。陽電極2は、陰電極3と対向して略平行に配置されている。陽電極2は、チタン基材の表面に白金を含む触媒が形成されており、電気分解による次亜塩素酸の発生効率が高い材料を使用する。白金を含む触媒は、少なくとも陰陽電極間流路12及び陽電極側流路13の流路に沿って露出される陽電極2の面に形成されている。塩水の電気分解の後に、電気透析により陽イオンを移動させて、残留成分となるNaClO及びNaOHを抑制した次亜塩素酸水を生成することが主目的であるが、NaClOから分解してできたNaCl及び塩水が電気分解しきれずに残ったNaClも、白金電極により次亜塩素酸へと変化させることが可能となる。
【0025】
陰電極3は、平面状の電極板である。陰電極3は、陰電極側スペーサ6によって陰陽電極間流路12及び陰電極側流路14の流路に沿って電極板の表面が露出している。陰電極3は、電気分解・電気透析電源15によって電流が流れると陰極として機能する電極である。陰電極3は、陽電極2と対向して略平行に配置されている。陰電極3は、陽電極2と同様に表面に白金を含む触媒を形成する。白金を含む触媒は、少なくとも陰電極側流路12及び陽電極側流路14の流路に沿って露出される陰電極3の面に形成されている。また、陽電極側流路13及び陰電極側流路14に沿って露出させて電気透析を行う領域の陽電極2と陰電極3は同形状とし、対向距離の短い方がイオンの移動をさせやすい。対向距離が短いと流路を流れる流量が少なくなり、生成できる次亜塩素酸水も少なくなるため、必要な次亜塩素酸水生成量を確保したうえで、対向距離を10mm以下程度に短くすることが望ましい。
【0026】
そして、陽電極2及び陰電極3は、一対の対向電極として陰陽電極を構成する。
【0027】
隔膜4は、平面状の薄膜である。隔膜4は、陽電極2及び陰電極3と対向して略平行に配置されている。隔膜4は、陽電極側流路13と陰電極側流路14とを隔てるように設けている。隔膜4は、次亜塩素酸水の残留成分であるNaClO及びNaOHに関係するNa+イオンのような陽イオンを移動させることが可能なイオン交換膜(陽イオン交換膜)である。隔膜4は、陽電極2及び陰電極3に電圧を印加することで、陰電極3に陽イオンを移動させることができる。この陽イオン交換膜としては、デュポン社製ナフィオンなどが挙げられる。隔膜4は、流路の後段(後半部分)に配置され、隔膜4を有する部分が次亜塩素酸水処理部1bとなる。反対に流路の前段(前半部分)の隔膜4を有さない部分が次亜塩素酸水生成部1aとなる。隔膜4のサイズにより、次亜塩素酸水生成部1aの領域と、次亜塩素酸水処理部1bの領域とが決まる。具体的には、塩水の電気分解時間の比率を多くしたい場合には、隔膜4のサイズを小さくし、次亜塩素酸水の電気透析時間の比率を多くしたい場合には、隔膜4のサイズを大きくする。なお、陰電極3側は、陽イオンを濃縮するため、長時間使用時に水道水等に含まれるスケール成分が析出する可能性がある。スケール蓄積の低減のため、例えば、次亜塩素酸水供給装置1への通水ごとに、陽電極2と陰電極3の電位を入れ替えて転極し、付着したスケールを溶解させる。転極して使用することを想定する際には、陽電極2及び陰電極3は、同様の白金を含む触媒処理にしておくことが望ましい。
【0028】
陽電極側スペーサ5は、絶縁性の部材である。陽電極側スペーサ5は、陽電極2と隔膜4との間の距離を所定の間隔に制御する。陽電極側スペーサ5は、陽電極側スペーサ5の内部に、後述する陽電極側流路13を形作る陽電極側流路孔13aを有している。陽電極側流路孔13aは、陽電極側スペーサ5に形成された陽電極側流路13を形成する孔のことである。陽電極側流路孔13aは、陽電極側スペーサ5の表裏を貫通して形成されるとともに、水平方向に往復しながら一段ずつ上に上がっていくように、蛇行して形成されている。また、陽電極側スペーサ5の表面には、陽電極2及び隔膜4との密着性をあげるために、陽電極側スペーサ5と同じ蛇行形状のパッキン部材(図示せず)が取り付けられている。なお、陽電極側スペーサ5は、請求項の「第一スペーサ部材」に相当する。
【0029】
陰電極側スペーサ6は、絶縁性の部材である。陰電極側スペーサ6は、陰電極3と隔膜4との間の距離を所定の間隔に制御する。陰電極側スペーサ6は、陰電極側スペーサ6の内部に、後述する陰電極側流路14を形作る陰電極側流路孔14aを有している。陰電極側流路孔14aは、陰電極側スペーサ6に形成された陰電極側流路14を形成する孔のことである。陰電極側流路孔14aは、陰電極側スペーサ6の表裏を貫通して形成されるとともに、水平方向に往復しながら一段ずつ上に上がっていくように、蛇行して形成されている。ここで、陰電極側流路孔14aと陽電極側流路孔13aとは、互いに対向するように配置されている。また、陰電極側スペーサ6の表面には、陰電極3及び隔膜4との密着性をあげるために、陰電極側スペーサ6と同じ蛇行形状のパッキン部材(図示せず)が取り付けられている。なお、陰電極側スペーサ6は、請求項の「第二スペーサ部材」に相当する。
【0030】
次亜塩素酸水生成部1aでは、陽電極側スペーサ5と陰電極側スペーサ4が直接接触して、陽電極2と陰電極4の間の陰陽電極間スペーサとして機能する。この陰陽電極間のスペーサは、請求項の「スペーサ部材」に相当する。
【0031】
次亜塩素酸散水生成部1aは、陽電極2と陰電極3の間に、陽電極側スペーサ5と陰電極側スペーサ6が介在する。次亜塩素酸水処理部1bは、陽電極2と陰電極3の間に、陽電極側スペーサ5と隔膜4と陰電極スペーサ6が介在する。陽電極2と陰電極3は、略平行に配置されており、隔膜4の厚みを吸収するために、次亜塩素酸水処理部1bの陽電極側スペーサ5と陰電極側スペーサ6の厚みは、隔膜4の厚み分薄くなっている。隔膜4の厚み分を陽電極側スペーサ5及び陰電極側スペーサ6の厚みで吸収する手段として、陽電極側スペーサ5及び陰電極側スペーサ6の表面に配置されたパッキン部材を隔膜4の厚み以上にして設計し、パッキン部材をシリコン樹脂等変形して形状の吸収性のある材料にすることで、陽電極側スペーサ5及び陰電極側スペーサ6の両側から加圧して、隔膜4の厚みをパッキン部材で吸収しながら、パッキン部材の本来の目的である液漏れを防ぐことができる。
【0032】
陽電極用パッキン7aは、陽電極2の外周に電極サイズをくりぬいた形状をしており、陽電極側スペーサ5と密着して外周方向に、陽電極側流路13内の溶液(後述する陰陽電極供給溶液9a)が漏れないように、締め付け圧を加えて取り付けられている。陽電極用パッキン7aの部材としては、絶縁性のシリコンゴムを使用することができる。陽電極用パッキン7aは、陽電極2より厚みが厚くなっており、締め付け圧で押されることで押しつぶされて陽電極側スペーサ5と陽電極側槽筐体側面8aとを密着しながら、陽電極2の厚みで保持されることが望ましい。
【0033】
陰電極用パッキン7bは、陰電極3の外周に電極サイズをくりぬいた形状をしており、陰電極側スペーサ6と密着して外周方向に、陰電極側流路14内の溶液(後述する陰陽電極供給溶液9a)が漏れないように、締め付け圧を加えて取り付けられている。陰電極用パッキン7bの部材としては、絶縁性のシリコンゴムを使用することができる。陰電極用パッキン7bは、陰電極3より厚みが厚くなっており、締め付け圧で押されることで押しつぶされて陰電極側スペーサ6と陰電極側槽筐体側面8bと密着しながら、陰電極3の厚みで保持されることが望ましい。
【0034】
陽電極側槽筐体側面8aは、陽電極2の外側に直接接触するように配置されている。陽電極側槽筐体側面8aは、陽電極2の外側への溶液の染み込みを抑制するために、陽電極側槽筐体側面8aの内側表面には密着性を上げるためのパッキン(図示せず)が取り付けられてあり、締め付け圧を加えて電極外側への溶液の回り込みを抑制することが望ましい。なお、電極外側に溶液が回り込んだとしても、外部に漏れが発生することはない。陽電極2の内側表面にのみ白金を含む触媒を形成していることから、電極外側への溶液回り込みが抑制できれば電気透析の効率向上にもつながる。
【0035】
陰電極側槽筐体側面8bは、陰電極3の外側に直接接触するように配置されている。陰電極側槽筐体側面8bは、陰電極3の外側への溶液の染み込みを抑制するために、陰電極側槽筐体側面8bの内側表面には密着性を上げるためのパッキン(図示せず)が取り付けられてあり、締め付け圧を加えて電極外側への溶液の回り込みを抑制することが望ましい。なお、電極外側に溶液が回り込んだとしても、外部に漏れが発生することはない。陰電極3の内側表面にのみ白金を含む触媒を形成していることから、電極外側への溶液回り込みが抑制できれば電極透析の効率向上にもつながる。
【0036】
陰陽電極溶液供給口9は、電気分解する塩水を陰陽電極間流路12内に流すための接続口であり、チューブを接続できるコネクタ(図示せず)が取り付けられている。陽電極2の外側から塩水を供給するため、陰陽電極溶液供給口9は、陽電極2より外周の位置に加工されている。なお、陰陽電極溶液供給口9は、陽電極2及び陰電極3の両方の外側の位置にそれぞれ加工されているが、陽電極2または陰電極3の外周の位置の一方のみに加工されてもよい。
【0037】
陰陽電極供給溶液9aは、塩水である。陰陽電極供給溶液9aは、陰陽電極溶液供給口9から陰陽電極間流路12に導入される。
【0038】
陽電極溶液抽出口10は、電気透析した陽電極抽出溶液10aを流路から取り出すための接続口であり、チューブを接続できるコネクタ(図示せず)が取り付けられている。陽電極2の外側に陽電極抽出溶液10aを抽出するため、陽電極溶液抽出口10は、陽電極2より外周の位置に加工されている。
【0039】
陽電極抽出溶液10aは、HClOが主成分の次亜塩素酸水である。陽電極抽出溶液10aは、陽電極側流路13から陽電極溶液抽出口10に導入される。
【0040】
より詳細には、陽電極抽出溶液10aは、陰陽電極供給溶液9aを陰陽電極間流路12にて電気分解した後、陽電極側流路13に流通させて、残留成分の要因となる陽イオンを分離希薄化した溶液である。次亜塩素酸水生成部1aにおいて塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水を使用しているので、陽電極抽出溶液10aには、陽イオンであるNa+イオンが分離希薄化され、HClOの成分が主成分の次亜塩素酸水となる。pHは酸性を示す。
【0041】
陰電極溶液抽出口11は、電気透析した陰電極抽出溶液11aを流路から取り出すための接続口であり、チューブを接続できるコネクタ(図示せず)が取り付けられている。陰電極3の外側に陰電極抽出溶液11aを抽出するため、陰電極溶液抽出口11は、陰電極3より外周の位置に加工されている。
【0042】
陰電極抽出溶液11aは、NaClO及びNaOHが主成分の次亜塩素酸水である。陰電極抽出溶液11aは、陰電極側流路14から陰電極溶液抽出口11に導出される。
【0043】
より詳細には、陰電極抽出溶液11aは、陰陽電極供給溶液9aを陰陽電極間流路12にて電気分解した後、陰電極側流路14に流通させて、残留成分の要因となる陽イオンが濃縮化された溶液である。次亜塩素酸水生成部1aにおいて塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水を使用しているので、陰電極抽出溶液11aには、陽イオンであるNa+イオンが分離濃縮化され、NaOHとして生成されることで、NaOHとNaClOが主成分の次亜塩素酸水となる。pHはアルカリ性を示す。
【0044】
ここで、陰陽電極溶液供給口9は、鉛直方向の下方側に配置されることが望ましく、陽電極溶液抽出口10及び陰電極溶液抽出口11は、鉛直方向の上方側に配置されることが望ましい。流路内の電気透析反応及び電気分解反応により、酸素ガス及び水素ガス等が発生する際に、抽出口が上方に配置されてある方がガスをより効率的に溶液とともに排出することができる。
【0045】
陰陽電極間流路12は、陽電極2と陽電極間スペーサ5と陰電極間スペーサ6と陰電極3とによって囲まれた領域に形成される流路であり、いわゆる無隔膜電解流路である。陰陽電極間流路12は、陽電極間スペーサ5の陽電極間流路孔13aと陰電極間スペーサ6の陰電極間流路孔14aが重ね合わされた構造によって蛇行して構成されている。より詳細には、陰陽電極間流路12は、水平方向に往復し下から上に溶液が行きつくまでに水平方向の往復回数で電気分解を行う距離を稼いでいる。さらに陰陽電極間流路12の流路幅を小さくすることで距離が長くなり、電気分解時間を長くすることができる。陰陽電極間流路12において液の逆流を低減するため、陰陽電極間流路12が水平方向に往復する以外は一方向に下から上に向かう構造とすることが望ましい。陰陽電極間流路12は、陽電極側流路13及び陰電極側流路14に接続されており、内部に陰陽電極供給溶液9aが流通している。電気分解量は、印加される電圧電流及び流路内の流速によって制御される。流速は、陽電極溶液抽出口10の後段に陽電極側供給ポンプ31を設置し、陰電極溶液抽出口11の後段に陰電極側供給ポンプ32を設置して制御することができる。各供給ポンプは、一定流量で制御可能な方式が望ましく、例えばチューブポンプを使用することができる。一定流量で溶液を流すことで、流路内で電気分解する時間を一定に制御できるため、抽出する次亜塩素酸水の濃度を安定的に制御することができる。
【0046】
陰陽電極間流路12内では、電気分解された次亜塩素酸水は流通過程で混合されるものの、陽電極2近傍には塩水の陰イオン成分であるCl-イオンが多く分布し、陰電極3近傍には塩水の陽イオン成分であるNa+イオンが多く分布するような濃度勾配を持って流れている。そのため、陰陽電極間で電気分解を行うと、陽電極2近傍には酸性に寄った溶液が流れ、陰電極3近傍にはアルカリ性に寄った溶液が流れることになる。そのため、酸性及びアルカリ性に寄った次亜塩素酸水が、陽電極側流路13及び陰電極側流路14にそれぞれ流通される。具体的には、陽電極側流路13にはHCl及びHClOを多く含む酸性の次亜塩素酸水が流通され、陰電極側流路14NaOHを多く含むアルカリ性の次亜塩素酸水が抽出される。
【0047】
陽電極側流路13は、陽電極2と陽電極側スペーサ5と隔膜4とによって囲まれた領域で形成される流路である。陽電極側流路13は、陽電極側スペーサ5の陽電極側流路孔13aによって蛇行して構成されている。より詳細には、陽電極側流路13は、水平方向に往復し下から上に陽極側溶液が行きつくまでに水平方向の往復回数で電気透析を行う距離を稼いでいる。さらに陽電極側流路13の流路幅を小さくすることで距離が長くなり、電気透析時間を長くすることができる。陽電極側流路13において液の逆流を低減するため、陽電極側流路13が水平方向に往復する以外は一方向に下から上に向かう構造とすることが望ましい。陽電極側流路13は、その一方が陰陽電極間流路12に接続し、他方には陽電極溶液抽出口10が設けられており、内部に次亜塩素酸水生成部1aにおいて塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水が流通している。なお、陽電極側流路13は、請求項の「第一流路」に相当する。
【0048】
陰電極側流路14は、陰電極3と陰電極側スペーサ6と隔膜4とによって囲まれた領域で形成される流路である。陰電極側流路14は、陰電極側スペーサ6の陰電極側流路孔14aによって蛇行して構成されている。より詳細には、陰電極側流路14は、水平方向に往復し下から上に陰極側溶液が行きつくまでに水平方向の往復回数で電気透析を行う距離を稼いでいる。さらに陰電極側流路14の流路幅を小さくすることで距離が長くなり、電気透析時間を長くすることができる。陰電極側流路14において液の逆流を低減するため、陰電極側流路14が水平方向に往復する以外は一方向に下から上に流れる構造とすることが望ましい。陰電極側流路14は、その一方が陰陽電極間流路12に接続し、他方には陰電極溶液抽出口11が設けられており、内部に次亜塩素酸水生成部1aにおいて塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水が流通している。なお、陰電極側流路14は、請求項の「第二流路」に相当する。
【0049】
陽電極側流路13及び陰電極側流路14は、隔膜4を挟んで対称な形状で対向している。つまり、陽電極側流路13及び陰電極側流路14は、隔膜4を挟んで互いに対向する蛇行形状で構成されている。このようにして、陽電極側流路13と陰電極側流路14とは、いわゆる有隔膜電解流路を構成している。そして、陽電極側流路13内を流通する次亜塩素酸水に含まれるNa+イオンが陰電極側流路14側に移動する。イオンの移動量は、印加される電圧電流及び流路内の流速によって制御される。流速は、陽電極溶液抽出口10の後段に陽電極側供給ポンプ31を設置し、陰電極溶液抽出口11の後段に陰電極側供給ポンプ32を設置して制御することができる。各ポンプは、一定流量で制御可能な方式が望ましく、例えばチューブポンプを使用することができる。一定流量で溶液を流すことで、流路内で電気透析及び電気分解する時間を一定に制御できるため、抽出する次亜塩素酸水の濃度を安定的に制御することができる。
【0050】
次亜塩素酸水供給装置1では、無隔膜電解流路を構成する陰陽電極間流路12と、これに続く有隔膜電解流路を構成する陽電極側流路13及び陰電極側流路14とによって、次亜塩素酸水供給装置1としての蛇行状の電解流路をワンパス式に構成している。つまり、蛇行状の電解流路において、陰陽電極間流路12が電解流路の前段を構成し、陽電極側流路13及び陰電極側流路14が電解流路の後段を構成している。
【0051】
電気分解・電気透析電源15は、陽電極2及び陰電極3と接続され、陽電極2及び陰電極3に電流及び電圧を印加することができる直流電源である。電気分解・電気透析電源15は、一定の電流となるように定電流制御の電源として使用してもよいし、一定の電圧となるように定電圧制御の電源として使用してもよい。電気分解・電気透析電源15は、次亜塩素酸水生成部1a及び次亜塩素酸処理部1bにおける共通の陽電極2及び陰電極3に電流及び電圧を印加する。つまり、電気分解・電気透析電源15は、次亜塩素酸水生成部1aにおいて電気分解を生じされる電極の電源として機能し、次亜塩素酸処理部1bにおいて電気透析を生じさせる電極の電源として機能する。なお、電気分解・電気透析電源15は、スケール蓄積の低減のため、例えば、次亜塩素酸水供給装置1への次亜塩素酸水の通水ごとに、陽電極2と陰電極3の電位を入れ替えて転極し、付着したスケールを溶解させるように制御してもよい。
【0052】
以上のように、次亜塩素酸水供給装置1は、各部材によって構成される。
【0053】
次亜塩素酸水供給装置1は、
図3に示すように、上述した次亜塩素酸水生成部1aと次亜塩素酸水処理部1bとにより構成される。そして、次亜塩素酸水供給装置1は、次亜塩素酸水生成部1aに塩水を連続的に導入し、次亜塩素酸水処理部1bから次亜塩素酸水を次亜塩素酸水処理部1bに連続的に供給する。より詳細には、次亜塩素酸水供給装置1は、次亜塩素酸水生成部1aに連続的に導入される塩水を電気分解し、次亜塩素酸水処理部1bの陽電極側における陽電極側流路13から送出される陽電極抽出溶液10aを酸性の次亜塩素酸水として外部に供給する。また、次亜塩素酸水供給装置1は、次亜塩素酸水処理部1bの陰電極側における陰電極側流路14から送出される陰電極抽出溶液11aをアルカリ性の次亜塩素酸水として外部に供給する。
【0054】
次に、
図3及び
図4を参照して、次亜塩素酸水生成部1aでの処理動作について説明する。
図4は、次亜塩素酸水供給装置1の次亜塩素酸水生成部1aの水平方向の断面イメージ図である。
【0055】
図3及び
図4に示すように、次亜塩素酸水生成部1aでは、陰陽電極溶液供給口9を通って塩水である陰陽電極供給溶液9aが陰陽電極間流路12に連続的に供給される。そして、陰陽電極溶液供給口9から供給された陰陽電極供給溶液9aは、蛇行して形成された陰陽電極間流路12を流通していく。この際、陰陽電極供給溶液9aは、陰陽電極間流路12を流通していくと同時に、両端の陽電極2及び陰電極3に電圧が印加される。電圧が印加されると、陽電極2側には陰イオン(Cl
-イオン)、陰電極3側には陽イオン(Na
+イオン)が引き付けられ、電気分解により陽電極2側にはHCl及びHClO、陰電極3側にはNaOHが生成される。さらにHClOとNaOHが反応することで、NaClOが生成される。これを繰り返すことにより、NaClOが主成分となり、HClO及びNaOH及び残留したNaClが含まれる次亜塩素酸水が生成される。
【0056】
次亜塩素酸水生成部1aでの処理動作では、陰陽電極間流路12にて電気分解を行う時間を長くすることで、NaClの電気分解量を多くして、生成する次亜塩素酸水の中に残留するNaCl(塩水)を低減することができる。電気分解を行う時間を長くするためには、陰陽電極間流路12の距離を長くすることが必要であり、そのためには水平方向に往復しながら一段ずつ上に上がっていくように、蛇行して形成しており、水平方向に往復し下から上に溶液が行きつくまでに水平方向の往復回数で電気分解を行う距離を稼いでいる。さらに陰陽電極間流路12の断面積を小さくすることでも距離が長くなり、電気分解時間を長くすることができる。
【0057】
次に、
図3及び
図5を参照して、次亜塩素酸水処理部1bでの処理動作について説明する。
図5は、次亜塩素酸水供給装置1の次亜塩素酸水処理部1bの水平方向の断面イメージ図である。
【0058】
図3及び
図5に示すように、次亜塩素酸水処理部1bでは、次亜塩素酸水生成部1aにおいて塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水が陽電極側流路13に連続的に供給され、同様に次亜塩素酸水生成部1aにおいて塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水が陰電極側流路14に連続的に供給される。そして、次亜塩素酸水生成部1aにおいて塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水は、蛇行して形成された陽電極側流路13を流通していき、同じく蛇行して形成された陰電極側流路14を流通していく。この際、次亜塩素酸水生成部1aにおいて塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水は、同じ方向に流通されて陽電極側流路13及び陰電極側流路14をそれぞれ流通していくと同時に、両端の陽電極2及び陰電極3に電圧が印加される。電圧が印加されると、陽電極2側には陰イオン、陰電極3側には陽イオン(Na
+イオン)が引き付けられる。隔膜4は、陽イオンのみを透過可能な膜で構成されているため、陽電極側流路13を流通する次亜塩素酸水に含まれる陽イオン(Na
+イオン)は、隔膜4を透過して、陰電極側流路14の次亜塩素酸水を通って陰電極3側に陽イオン(Na
+イオン)が引き付けられる。反対に、陰電極側流路14を流通する陰イオンは、隔膜4を透過できないため、陽電極側流路13に含まれる陰イオンのみが陽電極2に引き付けられる。これを繰り返すことにより、陽電極側流路13を流通する次亜塩素酸水に含まれる陽イオン(Na
+イオン)が、陰電極側流路14を流通する次亜塩素酸水に移動して電気透析が進行し、陽電極側流路13を流通する次亜塩素酸水は、陽イオン(Na
+イオン)が分離希薄化され、陰電極側流路14を流通する次亜塩素酸水は、陽イオン(Na
+イオン)が濃縮化されて抽出される。その結果、陽電極溶液抽出口10から、陽電極抽出溶液10aとして、残留成分となるNaClO及びNaOHが分離希薄化してHClO成分が主成分となった次亜塩素酸水が抽出される。反対に、陰電極溶液抽出口11から、陰電極抽出溶液11aとして、残留成分を構成するNa
+イオンが濃縮化され、NaOHとして生成された成分を含む溶液(次亜塩素酸水)が抽出される。
【0059】
次亜塩素酸水処理部1bでの処理動作では、陽電極側流路13及び陰電極側流路14にて電気透析を行う時間を長くすることで、陽イオン(Na+イオン)の移動量をより多くして、陽電極抽出溶液10aのNaClO及びNaOHからなる残留成分をより低減することができる。電気透析を行う時間を長くするためには、陽電極側流路13及び陰電極側流路14の距離を長くすることが必要であり、そのためには水平方向に往復しながら一段ずつ上に上がっていくように、蛇行して形成しており、水平方向に往復し下から上に溶液が行きつくまでに水平方向の往復回数で電気透析を行う距離を稼いでいる。さらに陽電極側流路13及び陰電極側流路14の断面積を小さくすることで距離が長くなり、電気透析時間を長くすることができる。
【0060】
陽電極側流路13及び陰電極側流路14を通る各溶液の流速は、同じとなるように各ポンプを制御しているが、互いに異なるようにしてもよい。流速が異なる場合には、抽出される各溶液の濃度に影響する。例えば、陽電極側流路13の流速を相対的に速くして、陰電極側流路14の流速を相対的に遅くした場合には、陽電極側流路13及び陰電極側流路14の流速を同じにした場合に比べて、陰電極側流路14から抽出した陰電極抽出溶液11aは少量かつ濃度が濃い溶液となる。これにより、陰電極抽出溶液11aを排液する場合には、陰電極側流路14の流速を遅くすることが望ましい。
【0061】
次に、
図6を参照して、実際に次亜塩素酸水供給装置1(次亜塩素酸水生成部1a及び次亜塩素酸水処理部1b)を流通して陽電極溶液抽出口10及び陰電極溶液抽出口11からそれぞれ抽出した陽電極抽出溶液10a及び陰電極抽出溶液11aの次亜塩素酸水の特性(導電率、pH、及び有効塩素濃度)について説明する。
図6は、次亜塩素酸水供給装置1を流通した次亜塩素酸水の特性と電気透析時間との関係を示す図である。より詳細には、
図6の(a)は、次亜塩素酸水供給装置1による電気透析時間と導電率の関係を示す図である。
図6の(b)は、次亜塩素酸水供給装置1による電気透析時間とpHの関係を示す図である。
図6の(c)は、次亜塩素酸水供給装置1による電気透析時間と有効塩素濃度の関係を示す図である。
【0062】
なお、
図6での実験評価では、次亜塩素酸水生成部1aに、流路断面積24mm
2、流路長360mmの陰陽電極間流路12を形成したものを用い、次亜塩素酸水処理部1bに、流路断面積24mm
2、流路長320mmの陽電極側流路13及び陰電極側流路14を形成したものを用いた。また、陽電極側供給ポンプ31及び陰電極側要求ポンプ32の流量条件としては、ともに103mL/h及び153mL/h及び250mL/hの条件の流速で流通させて次亜塩素酸水生成部1aの電気分解時間、及び次亜塩素酸水処理部1bの電気透析時間を調整し、陽電極抽出溶液10a及び陰電極抽出溶液11aの導電率、pH、及び有効塩素濃度の測定を行った。
【0063】
また、陰陽電極溶液供給口9に供給した陰陽電極供給溶液9aの塩水は、導電率:429μS/cm、pH:6.6、有効塩素濃度:0ppm、及び塩化物イオン濃度:156ppmとなるものを使用した。また電気分解・電気透析電源15には、0.2Aの定電流を印加可能な電源を使用して電気分解及び電気透析を行った。ここで、電気分解時間とは、溶液が陽電極2及び陰電極3に陰陽電極間流路12内で直接触れている時間を指しており、電気分解時間が長いほど、流速は遅いことになる。また、電気透析時間とは、溶液が陽電極2及び陰電極3に陽電極側流路13及び陰電極側流路14内で直接触れている時間を指しており、電気透析時間が長いほど、流速は遅いことになる。今回、陽極側及び陰極側の流速は同一に設定して電気透析を行っている。
【0064】
図6の(a)に示す導電率の推移を見ると、電気透析時間が長いほど、言い換えると流速が遅くなるほど、陽電極溶液抽出口10から抽出した陽電極抽出溶液10aの導電率(陽極側の導電率)が低下し、陰極側溶液抽出口11から抽出した陰極側抽出溶液11aの導電率(陰極側の導電率)は増加している。これは、次亜塩素酸水生成部1aで生成された次亜塩素酸水を、次亜塩素酸水処理部1bの陽電極側流路13に流通させると、陽極側溶液に含まれる陽イオンであるNa
+イオンが隔膜4を通って陰極側に移動し、陽極側はNaClOからHClOに変化して導電率が低下したと考えられる。NaClOは、Na
+イオンとClO
-イオンに電離するが、HClOは分子として存在することが主であるため、NaClOからHClOに変化することで導電率は低下する。
【0065】
図6の(b)に示すpHの推移を見ると、陽電極抽出溶液10aのpH(陽極側のpH)は弱酸性側に変化し、陰電極抽出溶液11aのpH(陰極側のpH)はアルカリ性側に変化している。このことから、陽極側でのHClOへの変化の影響がうかがえる。陽極側において電気透析時間を長くするほどpHが中性に近づいているのは、溶液中にわずかに残っている塩化物イオンが電気分解によって次亜塩素酸に変化しているためと考えられる。一方、陰極側は、Na
+イオンが移動することでNaOHが形成されて、アルカリ性へと変化するためである。
【0066】
図6の(c)に示す有効塩素濃度の推移を見ると、陽電極抽出溶液10aの有効塩素濃度(陽極側の有効塩素濃度)は、電気透析時間とともに増加する。また、陰電極抽出溶液11aについても同様に、有効塩素濃度(陰極側の有効塩素濃度)は、電気透析時間とともに増加する。これは、陽電極側供給ポンプ31及び陰電極側供給ポンプ32の流速が遅くなると、次亜塩素酸水生成部1aでの電気分解時間が増加して次亜塩素酸水生成量が増え、同様に次亜塩素酸水処理部1bの陰電極抽出口11で抽出される次亜塩素酸水量も増えることが要因と考えられる。
【0067】
次亜塩素酸水供給装置1は、陽極側からは除菌力の高いHClO主体の次亜塩素酸水を、陰極側からは洗浄力の高いNaClO及びNaOH主体の次亜塩素酸水を同時に抽出することができる。HClO主体の次亜塩素酸水は、残留成分の抑制された溶液で、除菌力を維持しながら、空間噴霧時でも残留成分起因による金属腐食を抑制することが可能になる。一方、NaClO及びNaOH主体の次亜塩素酸水は、残留成分が残る溶液のため空間噴霧はできないが、洗浄力の高い溶液であり排水口等の酸性の汚れがある部位に流すことで洗浄効果をもたらすことができる。次亜塩素酸水処理装置1では、陽極側で生成するHClO主体の次亜塩素酸水を空間除菌に使用しつつ、反対側の陰極側で生成されるNaClO及びNaOH主体の次亜塩素酸水も洗浄として活用が可能となる。
【0068】
以上、本実施の形態1に係る次亜塩素酸水供給装置1によれば、以下の効果を享受することができる。
【0069】
(1)次亜塩素酸水供給装置1は、塩水を供給可能に構成された蛇行状の電解流路と、電解流路の前段を構成する無隔膜電解流路(陰陽電極間流路12)内に供給される塩水から一対の陰陽電極間(陽電極2と陰電極3との間)への通電によって次亜塩素酸水を連続的に電解生成する次亜塩素酸水生成部1aと、電解流路の後段を構成する有隔膜電解流路(陽電極側流路13及び陰電極側流路14)内のそれぞれに次亜塩素酸水生成部1aから供給される次亜塩素酸水を一対の陰陽電極間(陽電極2と陰電極3との間)への通電によって連続的に処理する次亜塩素酸水処理部1bと、を備え、次亜塩素酸水処理部1bの陽電極2側における電解流路から送出される次亜塩素酸水を外部に供給する構造とした。
【0070】
こうした構成によれば、電解流路に塩水を供給することによって、次亜塩素酸水生成部1aにおいて無隔膜電解流路(陰陽電極間流路12)内で塩水を電気分解して次亜塩素酸水を生成し、さらに次亜塩素酸水処理部1aにおいて有隔膜電解流路(陽電極側流路13及び陰電極側流路14)内に無隔膜電解流路で生成した次亜塩素酸水を流通させて、陽電極側から残留成分の要因となる陽イオンを分離低減した次亜塩素酸水として抽出することができる。このため、塩水の電気分解によって生じる残留成分を分離した次亜塩素酸水を外部に供給することが可能な、ワンパス式の次亜塩素酸水供給装置1とすることができる。また、次亜塩素酸水生成部1aと次亜塩素酸処理部1bに共通の陽電極2及び陰電極3を使用し、無隔膜電解流路と有隔膜電解流路が陰陽電極間の電圧を印加された状態で直接的につながっている。これにより、無隔膜電解流路内にて、陽電極2側近傍には陰イオン、陰電極3近傍には陽イオンが多く存在するような分布を持った状態で、有隔膜電解流路に流入するため、陽電極2側には残留成分の要因となる陽イオンをあらかじめ減少させた状態で、電気透析処理を開始することができる。
【0071】
(2)次亜塩素酸水供給装置1では、無隔膜電解流路(陰陽電極間流路12)は、平面状の陽電極2と、陽電極2と対向する平面状の陰電極3と、陽電極2と陰電極3との間に設けられたスペーサ部材(陽電極側スペーサ5及び陰電極側スペーサ6)とを有して構成され、一対の陰陽電極(陽電極2及び陰電極3)は、スペーサ部材によって無隔膜電解流路に陽電極2及び陰電極3を露出させることで蛇行状に構成した。このようにすることで、スペーサ部材に形成される流路形状により、塩水を電気分解する能力を変化させることができるので、塩水を電気分解する面積及び時間を自由に設計することができる。
【0072】
(3)次亜塩素酸水供給装置1では、有隔膜電解流路(陽電極側流路13及び陰電極側流路14)は、陽電極2が流路に沿って露出して延設された蛇行状の陽電極側流路13と、陽電極側流路13と対向して並設され、陰電極2が流路に沿って露出して延設された蛇行状の陰電極側流路14と、陽電極側流路13と陰電極側流路14とを隔てて設けられ、流路を流通する溶液に含まれる陽イオンを透過させる隔膜4とを有して構成される。一対の陰陽電極は、陽電極側スペーサ5によって陽電極側流路13に陽電極2を露出させるとともに、陰電極側スペーサ6によって陰電極側流路14に陰電極3を露出させることで蛇行状に構成した。このようにすることで、塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水を、隔膜4を挟んで同じ方向に電圧を印加しながら流通させるので、次亜塩素酸水から残留成分の要因となる陽イオンを分離低減することができる。このため、塩水の電気分解によって生じる残留成分を低減した次亜塩素酸水を生成することが可能な次亜塩素酸水処理部1aとすることができる。
【0073】
(4)次亜塩素酸水供給装置1では、有隔膜電解流路(陽電極側流路13及び陰電極側流路14)は、平面状の陽電極2と、陽電極3と対向する平面状の隔膜4と、陽電極2と隔膜4との間に設けられ、流路に沿って陽電極側流路13内に陽電極2及び隔膜4を露出させる陽電極側スペーサ5とを有する。陽電極側流路13は、流路に沿って露出する陽電極2及び隔膜4と陽電極側スペーサ5とにより構成されている。また、平面状の陰電極3と、陰電極3と対向する平面状の隔膜4と、陰電極3と隔膜4との間に設けられ、流路に沿って陰電極側流路14に陰電極3及び隔膜4を露出させる陰電極側スペーサ6とを有する。陰電極側流路14は、流路に沿って露出する陰電極3及び隔膜4と、陰電極側スペーサ6とにより構成した。このようにすることで、陽電極側スペーサ5に形成される流路形状、及び陰電極側スペーサ6に形成される流路形状により、塩水を電気分解して生成した次亜塩素酸水から残留成分の要因となる陽イオンを分離する能力を変化させることができるので、次亜塩素酸水から残留成分の要因となる陽イオンを分離する面積及び時間を自由に設計することができる。
【0074】
(5)次亜塩素酸水供給装置1では、スペーサ部材は、陽電極側スペーサ5と陰電極側スペーサ6を重ね合わせて構成した。こうした構成によれば、構造を簡易化できるとともに、無隔膜電解流路と有隔膜電解流路の境界部による液漏れや流路内イオン分布の乱れを抑制して、流通させることができる。
【0075】
(6)次亜塩素酸水供給装置1は、次亜塩素酸水処理部1bの陽電極2側及び陰電極3側のそれぞれの出口に設けられ、無隔膜電解流路(陰陽電極間流路12)に塩水を、有隔膜電解流路(陽電極側流路13及び陰電極側流路14)に次亜塩素酸水生成部1aからの次亜塩素酸水を供給する供給ポンプ(陽電極側供給ポンプ31及び陰電極側供給ポンプ32)を備える。供給ポンプは、塩水を、及び次亜塩素酸水生成部1aからの次亜塩素酸水を陽電極側流路13及び陰電極側流路14に一定流速で供給するようにした。これにより、陽電極側流路13内にて電圧を印加している時間を一定にすることができるとともに、陰電極側流路14内にて電圧を印加している時間を一定にすることができる。このため、陽電極側流路13における次亜塩素酸水での残留成分の要因となる陽イオンが分離希薄化する濃度、及び陰電極側流路14における次亜塩素酸水での残留成分の要因となる陽イオンが濃縮化する濃度を安定にすることができる。
【0076】
(実施の形態2)
図7を参照して、本発明の実施の形態2に係る次亜塩素酸水供給装置20について説明する。
図7は、本発明の実施の形態2に係る次亜塩素酸水供給装置20の分解斜視図である。なお、以下で説明する実施の形態2に係る次亜塩素酸水供給装置20は、実施の形態1に係る次亜塩素酸水供給装置1の陽電極2及び陰電極3をくし歯形状にした構造である。実施の形態2の説明においては、実施の形態1に係る次亜塩素酸水供給装置1と実質的に同様の構成については、同様の符号を付し、説明を一部簡略化または省略する。
【0077】
図7に示すように、次亜塩素酸水供給装置20は、塩水を電気分解して次亜塩素酸水をワンパス式で生成する次亜塩素酸水生成部20aと、次亜塩素酸水に含まれる残留成分の分離低減をワンパス式で行う次亜塩素酸水処理部20bと、を備える。そして、次亜塩素酸水供給装置20では、一対の陽陰電極がくし歯形状に加工した電極(くし歯陽電極22及びくし歯陰電極23)によって構成される。
【0078】
より詳細には、次亜塩素酸水供給装置20は、くし歯陽電極22と、くし歯陽電極22のくし歯部が対向するように配置したくし歯陰電極23とを、蛇行状の電解流路(陰陽電極間流路12、並びに、陽電極側流路13及び陰電極側流路14)に、くし歯部の対向した領域を配置した構成を有する。言い換えれば、次亜塩素酸水供給装置20は、くし歯陽電極22とくし歯陰電極23との対向部において、無隔膜電解流路(陰陽電極間流路12)、並びに、これに続く有隔膜電解流路(陽電極側流路13及び陰電極側流路14)をそれぞれ形成し、次亜塩素酸水生成部20aと次亜塩素酸水処理部20bをそれぞれ構成している。これにより、次亜塩素酸水供給装置20では、次亜塩素酸水生成部1aにおいて無隔膜電解流路内で塩水を電気分解して次亜塩素酸水を生成し、さらに次亜塩素酸水処理部1aにおいて有隔膜電解流路内に無隔膜電解流路で生成した次亜塩素酸水を流通させて、陽電極側から残留成分の要因となる陽イオンを分離低減した次亜塩素酸水として抽出することができる。
【0079】
次に、
図8を参照して、くし歯陽電極22及びくし歯陰電極23について説明する。
図8は、次亜塩素酸水供給装置20を構成するくし歯電極(くし歯陽電極22及びくし歯陰電極23)の製造プロセスを示す斜視図である。
【0080】
くし歯陽電極22及びくし歯陰電極23は、1枚の電極板21を切断・分離することで、それぞれを取り出すことができる。
【0081】
第一工程は、電極板21を準備・用意する工程である。電極板21は、2つ分のくし歯電極を型形作ることが可能な面積寸法を有する薄い平板である。電極板21の一方の表面は、触媒加工されている。
【0082】
第二工程は、電極板21を切断する工程である。刃物を電極板21の下端から上端まで蛇行状に走らせて、電極板21を切断する。これにより、電極板21は、くし歯陽電極22及びくし歯陰電極23のくし歯に対応して切断される。
【0083】
第三工程は、切断された電極板21を2つのくし歯電極(くし歯陽電極22及びくし歯陰電極23)に分離する工程である。
【0084】
第四工程は、切断及び分離された電極板21の片方(くし歯陽電極22又はくし歯陰電極23)を反転させて、対向配置する工程である。より詳細には、第四工程では、切断及び分離された電極板21の触媒加工された面を対向配置して一対の陰陽電極を形成する。
【0085】
以上のようにすることで、一対の陰陽電極とすることができる。第四工程の反転及び対向配置した2つのくし歯電極(くし歯陽電極22及びくし歯陰電極23)は、左端又は右端で上下に接続されており、反対側に向かってくし歯が複数本伸びている構造をしている。反対側に向かって伸びたくし歯陽電極22及びくし歯陰電極23のくし歯は、お互い上下で対向するように配置されている。くし歯電極を反転する際、下端は平坦になり、上端には凸部がくるような配置にすることで、上端の凸部に電気接続を取りやすくなるため、反転する向きを
図8のように上端に凸部がくるようにすることが好ましい。片方のくし歯電極(くし歯陽電極22又はくし歯陰電極23)を反転させるため、電極板21の同じ触媒処理面が、くし歯陽電極22及びくし歯陰電極23の対向面となることができる。陽電板21は、チタン基材の表面に白金を含む触媒が形成されており、電気分解による次亜塩素酸の発生効率が高い材料を使用する。上下反転した際に、くし歯陽電極22及びくし歯陰電極23の対向性を良くするために、等しいピッチでくし歯加工しておくことが好ましい。電極板21を切断する際に、切断する刃物が通るため、刃物の通る幅分が加工で除去され、くし歯の幅が細ることを考慮してくし歯形状の設計をしておくことが好ましい。
【0086】
また、電極形状がくし歯形状であるため、陽電極用パッキン7a及び陰電極用パッキン7bについては、くし歯陽電極22及びくし歯陰電極23をくり抜いた形状となっている。
【0087】
以上、本実施の形態2に係る次亜塩素酸水供給装置20によれば、以下の効果を享受することができる。
【0088】
(7)次亜塩素酸水供給装置20は、一方の表面に触媒加工された1枚の電極板21を下端から上端まで蛇行状に切断して、2つのくし歯電極(くし歯陽電極22及びくし歯陰電極23)に分離し、くし歯陽電極22又はくし歯陰電極23の片方を反転及び対向配置して、くし歯陽電極22及びくし歯陰電極23のくし歯部が一対の陰陽電極を形成するようにした。このようにすることで、一対の陰陽電極を形成するために2枚の電極板21を使用することなく、1枚の電極板21により実現することができ、必要部材の削減ができる。
【0089】
(実施の形態3)
図1及び
図9を参照して、本発明の実施の形態3に係る、次亜塩素酸水供給装置1を用いた空間除菌システム30について説明する。
図9は、本発明の実施の形態3に係る、次亜塩素酸水供給装置1を用いた空間除菌システム30の概略図である。なお、以下で説明する実施の形態3に係る空間除菌システム30は、実施の形態1に係る次亜塩素酸水供給装置1を組み込んだシステムである。実施の形態3の説明においては、実施の形態1に係る次亜塩素酸水供給装置1と実質的に同様の構成については、同様の符号を付し、説明を一部簡略化または省略する場合がある。
【0090】
本実施の形態3に係る空間除菌システム30は、浴室空間において、次亜塩素酸水供給装置1から生成された次亜塩素酸水をミスト噴霧装置36から噴霧するとともに排水口38に流すことで、浴室空間に対する除菌と洗浄とを行うシステムである。なお、浴室空間は、請求項の「所定の空間」に相当する。
【0091】
具体的には、
図9に示すように、空間除菌システム30は、次亜塩素酸水供給装置1(次亜塩素酸水生成部1a及び次亜塩素酸水処理部1b)と、陽電極側供給ポンプ31と、陰電極側供給ポンプ32と、陽電極側抽出溶液タンク33と、陰電極側抽出溶液タンク34と、陽電極側抽出溶液浴室配管35と、ミスト噴霧装置36と、陰電極側抽出溶液浴室配管37と、排水口38と、を備える。
【0092】
次亜塩素酸水供給装置1を構成する次亜塩素酸水生成部1aは、塩水(塩化ナトリウム水溶液)を供給して、電気分解により次亜塩素酸水を生成する部位である。上述した通り、次亜塩素酸水生成部1aによって生成される次亜塩素酸水には、次亜塩素酸水の成分であるNaClO及びHClOが生成されて含まれる。また、他の成分として、電気分解で生成されるNaOH、NaClOから分解してできたNaCl、及び塩水が電気分解しきれずに残ったNaClなどが含まれる。
【0093】
次亜塩素酸水処理部1bは、次亜塩素酸水生成部1aから供給される次亜塩素酸水を流通させて、陽電極側流路13から除菌力の高いHClO主体の次亜塩素酸水である陽電極抽出溶液10aを抽出し、陰電極側流路14から洗浄力の高いNaClO及びNaOH主体の次亜塩素酸水である陰電極抽出溶液11aを抽出する部位である。陽電極抽出溶液10aは、陽電極側抽出溶液タンク33で貯められた後、陽電極側抽出溶液浴室配管35にてミスト噴霧装置36に送液される。そして、ミスト噴霧装置36から陽電極抽出溶液10aが浴室空間に噴霧される。また、陰電極抽出溶液11aは、陰電極側抽出溶液タンク34で貯められた後、陰電極側抽出溶液浴室配管37にて排水口38に送液される。排水口38に陰電極抽出溶液11aが流通され、排水口38を経由して排水管に流れる。
【0094】
陽電極側供給ポンプ31は、陰陽電極溶液供給口9、陰陽電極間流路12、陽電極側流路13、及び陽電極溶液抽出口10の順に流通する各溶液(陰陽電極供給溶液9a、陽電極抽出溶液10a)の流れを生じさせるポンプである。この際、陽電極側供給ポンプ31は、次亜塩素酸水生成部1aを流れる溶液の流速を一体に制御すると同時に、次亜塩素酸水処理部1bを流れる溶液の流速を一定に制御する。一定の流速で送液が可能なポンプとして、例えばチューブポンプあるいはダイヤフラムポンプなどが挙げられる。
【0095】
陰電極側供給ポンプ32は、陰陽電極溶液供給口9、陰陽電極間流路12、陰電極側流路14、及び陰電極溶液抽出口11の順に流通する各溶液(陰陽電極供給溶液9a、陰電極抽出溶液11a)の流れを生じさせるポンプである。この際、陰電極側供給ポンプ32は、次亜塩素酸水生成部1aを流れる溶液の流速を一体に制御すると同時に、次亜塩素酸水処理部1bを流れる溶液の流速を一定に制御する。一定の流速で送液が可能なポンプとして、例えばチューブポンプあるいはダイヤフラムポンプなどが挙げられる。
【0096】
陰陽電極間流路12の流速は、陽電極側供給ポンプ31と陰電極側供給ポンプ32との合計量として制御される。また、陽電極側供給ポンプ31及び陰電極側供給ポンプ32は、請求項の「供給ポンプ」に相当する。
【0097】
陽電極側抽出溶液タンク33は、陽電極側流路13から抽出した除菌力の高いHClO主体の次亜塩素酸水である陽電極抽出溶液10aを、ミスト噴霧装置36に送液されるまで、一時的に貯めておくタンクである。陽電極側抽出溶液タンク33は、陽電極側抽出溶液浴室配管35を介してミスト噴霧装置36と接続される。
【0098】
陰電極側抽出溶液タンク34は、陰電極側流路14から抽出した洗浄力の高いNaClO及びNaOH主体の次亜塩素酸水である陰電極抽出溶液11aを、排水口38に送液されるまで、一時的に貯めておくタンクである。陰電極側抽出溶液タンク34は、陰電極側抽出溶液浴室配管37を介して排水口38と接続される。
【0099】
陽電極側抽出溶液浴室配管35は、陽電極側抽出溶液タンク33から、ミスト噴霧装置36まで送液するための配管である。浴室の壁裏及び天井に施工されてあり、天井に設置されたミスト噴霧装置36と接続されている。
【0100】
陰電極側抽出溶液浴室配管37は、陰電極側抽出溶液タンク34から、排水口38まで送液するための配管である。浴室の壁裏及び床面に施工されてあり、排水口38に接続されている。
【0101】
ミスト噴霧装置36は、次亜塩素酸水を浴室空間にミスト状にして噴霧する装置である。より詳細には、ミスト噴霧装置36は、陽電極側抽出溶液タンク33から陽電極側抽出溶液浴室配管35を通って搬送されてくる次亜塩素酸水である陽電極抽出溶液10aを微細なミストにして放出する装置である。ミスト噴霧装置36は、浴室空間の天井から浴室空間全体にミストが噴霧できるように噴霧部が天井から浴室側に突出して設置されている。ミストの噴霧方式としては、圧縮空気を使用して微細化する二流体噴霧方式、超音波素子を使用して10μm以下の微細ミストを噴霧する超音波方式、又は回転体から溶液を放出して破砕し1μm以下の微細ミストを噴霧する破砕噴霧方式などが挙げられる。
【0102】
排水口38は、浴室空間内で発生した水あるいは汚れを浴室空間外に排出するための排水管と接続するための接続口である。排水口38には、陰電極側抽出溶液タンク34から陰電極側抽出溶液浴室配管37を通って陰電極抽出溶液11aを搬送し、洗浄力の高いNaClO及びNaOH主体の次亜塩素酸水である陰電極抽出溶液11aにより、排水口38及び排水口38に接続される排水管の汚れを洗浄することができる。
【0103】
以上、本実施の形態3に係る、次亜塩素酸水供給装置1を用いた空間除菌システム30によれば、以下の効果を享受することができる。
【0104】
(8)空間除菌システム30は、次亜塩素酸水供給装置1と、陽電極側流路13と連通接続され、陽電極側流路13から送出される次亜塩素酸水を用いて次亜塩素酸水ミストを所定の空間に放出するミスト噴霧装置36とを備える構造とした。こうした構成によれば、陽電極側流路13から送出される次亜塩素酸水のミストを所定の空間に放出しても、所定の空間に残る残留成分が抑制される。つまり、陽電極側流路13から送出される次亜塩素酸水が塩水の電気分解によって生じる残留成分を低減した次亜塩素酸水であるため、所定の空間を除菌する際に、除菌性能を保ちながら、残留成分に起因する金属腐食の発生を抑制することができる。
【0105】
(9)空間除菌システム30では、浴室空間には、浴室空間内で発生する水を排出する排水口38が設けられており、陰電極側流路14は、排水口38と連通接続され、陰電極側流路14から送出される次亜塩素酸水を排水口38に導入可能に構成されている構造とした。このようにすることで、陰電極側流路14から送出される次亜塩素酸水から、残留成分の要因となる陽イオンが濃縮されたアルカリ性溶液を含む洗浄性の高い次亜塩素酸水を排水口38(及び排水口38に接続された排水管)に流通させるので、アルカリ性溶液によって排水管の洗浄を行うことができる。
【0106】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明に係る次亜塩素酸水供給装置は、塩水の電気分解によって生成したHClO主体の次亜塩素酸水に含まれる残留成分を低減した次亜塩素酸水を連続的に供給することが可能な装置であり、こうした次亜塩素酸水を用いてミスト噴霧することで浴室空間のカビ及び菌に対して除菌を行いながら、浴室内で使用される金属等への腐食を抑制することを可能とする有用な手段である。
【符号の説明】
【0108】
1 次亜塩素酸水供給装置
1a 次亜塩素酸水生成部
1b 次亜塩素酸水処理部
2 陽電極
3 陰電極
4 隔膜
5 陽電極側スペーサ
6 陰電極側スペーサ
7a 陽電極用パッキン
7b 陰電極用パッキン
8a 陽電極側槽筐体側面
8b 陰電極側槽筐体側面
9 陰陽電極溶液供給口
9a 陰陽電極供給溶液
10 陽電極溶液抽出口
10a 陽電極抽出溶液
11 陰電極溶液抽出口
11a 陰電極抽出溶液
12 陰陽電極間流路
13 陽電極側流路
13a 陽電極側流路孔
14 陰電極側流路
14a 陰電極側流路孔
15 電気分解・電気透析電源
20 くし歯電極次亜塩素酸水供給装置
20a くし歯電極次亜塩素酸水生成部
20b くし歯電極次亜塩素酸水処理部
21 電極板
22 くし歯陽電極
23 くし歯陰電極
30 空間除菌システム
31 陽電極側供給ポンプ
32 陰電極側供給ポンプ
33 陽電極側抽出溶液タンク
34 陰電極側抽出溶液タンク
35 陽電極側抽出溶液浴室配管
36 ミスト噴霧装置
37 陰電極側抽出溶液浴室配管
38 排水口