(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108664
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20230731BHJP
【FI】
H01L21/52 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009823
(22)【出願日】2022-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】岩田 広太郎
(72)【発明者】
【氏名】片瀬 琢磨
【テーマコード(参考)】
5F047
【Fターム(参考)】
5F047AA14
5F047BA14
5F047BA15
5F047BA21
5F047BA22
5F047BA52
5F047BA53
5F047BB11
5F047BC02
5F047BC12
5F047BC13
(57)【要約】
【課題】短時間でボイドの発生の少ない接合層の形成を可能にする。
【解決手段】第1部材表面に、金属粉を含有するペースト状の接合用組成物を塗布する塗布工程と、その接合用組成物に第2部材を積層した状態で加熱することにより、接合用組成物を焼結させて第1部材と第2部材とを接合する加熱工程と、を経て接合体を製造する方法であって、加熱工程では、接合用組成物中の揮発成分の量が、加熱前の接合用組成物中の揮発成分の総量に対して70質量%以下になるまで、0.5質量%以上2質量%/分以下の揮発速度で加熱する揮発工程と、該揮発工程後に温度を上昇させて接合用組成物を焼結させる焼結工程と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材表面に、金属粉を含有するペースト状の接合用組成物を塗布する塗布工程と、その接合用組成物に第2部材を積層した状態で加熱することにより、前記接合用組成物を焼結させて前記第1部材と前記第2部材とを接合する加熱工程と、を経て接合体を製造する方法であって、前記加熱工程では、前記接合用組成物中の揮発成分の量が、加熱前の前記接合用組成物中の揮発成分の総量に対して70質量%以下になるまで、0.5質量%/分以上2質量%/分以下の揮発速度で加熱する揮発工程と、該揮発工程後に温度を上昇させて前記接合用組成物を焼結させる焼結工程と、を有することを特徴とする接合体の製造方法。
【請求項2】
前記第2部材は半導体素子であり、前記揮発工程及び前記焼結工程は無加圧状態で行うことを特徴とする請求項1に記載の接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁回路基板に半導体素子を接合して接合体を製造する際に、金属粉を含有するペーストを絶縁回路基板の回路層と半導体素子との間に介在させて焼結させることによりこれらを接合して接合体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁回路基板等において、部材間の接合に、金属粉を含有するペーストを用い、これを焼結させることで両部材を接合する方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、パワーモジュールの製造方法において、基板の配線上にAu又はAgめっきを施しておき、その配線と半導体素子との間に焼結型Agペーストを介在させ、250~350℃、昇温速度が30℃/分以下、保持時間が1~30分、加圧が0.1~10MPaの条件で焼結型ペーストを酸化させながら接合する方法が開示されている。このAg焼結型ペーストにはナノオーダーのAgフィラーが含有されており、接合層として、空隙率5%以上30%未満の多孔質のAg層が形成される。
【0004】
また、特許文献2では、接合層を形成するための原料として、粒径が異なる範囲に属する第1銀粒子と第2銀粒子とを用いて、銀ペーストを作製しており、例えば金メッキを施したSiウェーハに銀メッキを施したCu板を銀ペースト層を介して積層し、その積層体を加圧することなく、加熱のみすることで銀ペーストを焼結させて接合することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5936407号公報
【特許文献2】特許第6737381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種のペーストは、Ag等の金属粉末以外にも、樹脂や溶剤等が含まれている。これら金属粉末以外の樹脂や溶剤等は、接合時の温度で揮発して消失するが、その際に生じるガスがペーストから抜けきらないと、焼結後の接合層内にボイドとなって残存し、接合不良を生じる。
このボイドの発生を避けるために、昇温速度を遅くして、金属粉が焼結する前に、揮発成分が揮発するのに十分な時間を確保しようとすると、焼成時間が長くなり、生産性が損なわれる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、短時間でボイドの発生の少ない接合層の形成を可能にする接合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の接合体の製造方法は、第1部材表面に、金属粉を含有するペースト状の接合用組成物を塗布する塗布工程と、その接合用組成物に第2部材を積層した状態で加熱することにより、前記接合用組成物を焼結させて前記第1部材と前記第2部材とを接合する加熱工程と、を経て接合体を製造する方法であって、前記加熱工程では、前記接合用組成物中の揮発成分の量が、加熱前の前記接合用組成物中の揮発成分の総量に対して70質量%以下になるまで、0.5質量%/分以上2質量%/分以下の揮発速度で加熱する揮発工程と、該揮発工程後に温度を上昇させて前記接合用組成物を焼結させる焼結工程と、を有する。
【0009】
接合時の加熱プロファイルを制御し、揮発工程と焼結工程とを経ることにより、揮発工程で揮発成分を十分に揮発させてから焼結工程に進むので、ボイドの発生を効果的に抑制することができる。
揮発工程において、揮発速度が2質量%/分を超えて高くなり過ぎると、揮発成分が一気にガス化し、半導体素子と絶縁回路基板との間から抜け切れずに、ボイドが発生する。揮発成分の総量が70質量%まで低下しないうちに焼結温度付近まで上昇させてしまう場合もボイドが発生する。揮発速度が0.5質量%/分未満では、ボイドの発生は抑制できるが、時間がかかって生産性が損なわれる。好ましくは、65質量%以下になるまで揮発工程を実施するとよく、また、1質量%/分以下の揮発速度が好ましい。
【0010】
本発明の接合体の製造方法において、前記第2部材は半導体素子であり、前記接合工程は無加圧状態で行うことができる。脆性材料からなる半導体素子の破損の発生等を抑制できる。無加圧状態とは、絶縁回路基板にペースト状の接合用組成物を介して積層した半導体素子に対して、これらの積層方向に積極的に加圧しないことを意味しており、例えば、半導体素子の自重や、半導体素子の位置ずれ防止具等を半導体素子上に配置することにより、半導体素子にわずかな荷重が作用することまでを除外するものではない。
【発明の効果】
【0011】
本発明の接合体の製造方法は、短時間でボイドの発生の少ない接合層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態の製造方法を示すフローチャートである。
【
図2】
図1に示す製造方法により製造された半導体装置の例を示す断面図である。
【
図3】
図2に示す半導体装置の半導体素子接合前の状態を示す断面図である。
【
図4】実施例の温度変化と熱重量減少量との関係及び溶媒重量比と重量減少速度との関係を示すグラフである。
【
図6】種々の条件で測定した溶媒重量比と重量減少速度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る接合体の製造方法の実施形態について説明する。
一実施形態の接合体は、例えば、
図2に示すように、絶縁回路基板10にパワー半導体からなる半導体素子20を搭載した半導体装置(パワーモジュール)30である。絶縁回路基板10はセラミックス基板11の両面に金属層12,13が形成されており、金属層の一方12が回路層(第1部材)であり、その上に半導体素子(第2部材)20が接合層15を介して接合されている。
【0014】
絶縁回路基板10を構成するセラミックス基板11は、例えばAlN(窒化アルミニウム)、Si3N4(窒化珪素)等の窒化物系セラミックス、もしくはAl2O3(アルミナ)等の酸化物系セラミックスを用いることができ、厚さは特に限定されないが、例えば0.2mm~1.5mmの範囲内に設定される。
【0015】
金属層12,13は、アルミニウム又はアルミニウム合金、もしくは銅又は銅合金により、例えば0.1mm~5.0mmの厚みとされ、通常はセラミックス基板11よりも小さい平面形状の矩形状に形成されている。これら金属層12,13は、セラミックス基板11との間にろう材(図示略)を介在させた状態で積層され、その積層方向に加圧した状態で加熱し、ろう材を溶融させて固化させることによって接合される。ろう材としては、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属層を形成する場合は、例えばAl-Si系、Al-Ge系、Al-Cu系、Al-Mg系又はAl-Mn系の合金が用いられ、銅又は銅合金からなる金属層を形成する場合は、例えばAg-Ti、Ag-Cu-Ti等の合金が用いられる。
【0016】
半導体素子20としては、必要とされる機能に応じて、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、FWD(Free Wheeling Diode)等の種々の半導体素子が選択される。
【0017】
この半導体素子20が、絶縁回路基板10の金属層(回路層)12の上に、接合層15を介して接合されている。半導体素子20の接合面には、金、銀、ニッケル等からなるメタライズ層21が形成される。
接合層15は、金属粉末、樹脂、溶剤を含有してなるペースト状の接合用組成物(
図3参照)16を塗布して焼結させたものである。金属粉末としては例えば銀、銅が用いられる。
【0018】
ペースト状の接合用組成物16として銀粉末を用いる場合の例を示すと、銀粉末に、脂肪酸銀、脂肪族アミン、溶媒、樹脂を含有して接合用組成物が構成される。具体的には以下の通りである。
【0019】
(銀粉末)
例えば、互いに粒径が異なる第1銀粒子(粒径が100nm以上500nm未満)、第2銀粒子(粒径が50nm以上100nm未満)、及び第3銀粒子(粒径が50nm未満)を含むことが好ましい。これら第1~第3銀粒子はいずれも一次粒子として互いに凝集し、凝集体(銀粉末)を形成している。第1~第3銀粒子の合計量を100体積%とするとき、第1銀粒子は55体積%以上95体積%以下、第2銀粒子は5体積%以上40体積%以下、第3銀粒子は5体積%以下の範囲で含むことが好ましい。なお、第1~第3銀粒子中の銀の純度は、90質量%以上であることが好ましく、99質量%以上であることがより好ましく、Au、Cu、Pdなどを含んでもよい。
【0020】
(脂肪酸銀)
本実施形態の脂肪酸銀としては、酢酸銀、シュウ酸銀、プロピオン酸銀、ミリスチン酸銀、酪酸銀等が挙げられる。
【0021】
(脂肪族アミン)
本実施形態の脂肪族アミンとしては、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン等が挙げられる。脂肪族アミンの炭素数は好ましくは8~12とすることが望ましい。
ここで、接合用組成物において、脂肪酸銀に対する脂肪族アミンのモル比、即ち、脂肪族アミンのモル量/脂肪酸銀のモル量は、1.5~3の範囲内にあることが好ましい。
【0022】
(溶媒)
本実施形態の溶媒は、1価アルコールと誘電率が30以上の高誘電率アルコールを含むアルコール系溶媒である。アルコール系溶媒以外に、水、アセテート系溶媒、炭化水素系溶媒、及びそれらの混合物等を含んでもよい。
【0023】
(樹脂)
接合用組成物は、更に樹脂を含んでもよい。樹脂としては、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0024】
また、接合用組成物は、粘度が20Pa・s以上250Pa・s以下とされている。より好ましくは、粘度が50Pa・s以上200Pa・s以下であるとよい。なお、上記粘度値は、25℃における値である。
【0025】
次に、この接合体(半導体装置30)の製造方法について説明する。
絶縁回路基板10の回路層12の表面に、上記のペースト状の接合用組成物16を塗布する塗布工程(S11)と、その接合用組成物16に半導体素子20を載置する載置工程(S12)と、これら半導体素子20及び絶縁回路基板10の積層体を加熱することにより、接合用組成物16を焼結させて接合層15を形成し、該接合層15により絶縁回路基板10の回路層12と半導体素子20とを接合する加熱工程(S13)とを有する。
【0026】
(塗布工程:S11)
まず、
図3に示すように、絶縁回路基板10の回路層12にペースト状の接合用組成物16を塗布する。接合用組成物16の塗布厚さは特に限定されないが、例えば30μm以上140μm以下とする。塗布領域は、半導体素子20のメタライズ層21の面積と略同じ面積又はそれより若干大きい面積で同じ形状又は相似形に設定される。
なお、この接合用組成物16の塗布は、メタルマスク法やスクリーン印刷法等が一般的であるが、これに限らず、ディスペンサ等による吐出供給でもよい。
【0027】
(載置工程:S12)
絶縁回路基板10の回路層12上に塗布した接合用組成物16の上に半導体素子20を載置する。
(加熱工程:S13)
加熱工程(S13)では、絶縁回路基板10と半導体素子20との積層体を積層状態で加熱して接合用組成物16中の揮発成分を揮発させる揮発工程(S14)と、揮発工程後に温度を上昇させて接合用組成物16を焼結させて接合層15を形成する焼結工程(S15)と、を有する。半導体素子20はそのメタライズ層21が接合用組成物16に接した状態で積層される。
【0028】
(揮発工程:S14)
揮発工程(S14)では、ペースト状の接合用組成物16中の揮発成分の量が、加熱前の接合用組成物16中の揮発成分の総量に対して70質量%以下になるまで、0.5質量%/分以上2質量%/分以下の揮発速度で加熱する。
接合用組成物16中の揮発成分は、金属粉末以外の溶媒や樹脂等であり、前述の銀粉末を用いた接合用組成物の場合は、溶媒の一部、樹脂が該当する。
【0029】
この揮発工程において、揮発速度が2質量%/分を超えて高くなり過ぎると、揮発成分が一気にガス化し、半導体素子20と絶縁回路基板10との間から抜け切れずに、ボイドが発生する。揮発成分の総量が70質量%まで低下しないうちに焼結温度付近まで上昇させてしまう場合もボイドが発生する。揮発速度が0.5質量%/分未満では、ボイドの発生は抑制できるが、時間がかかって生産性が損なわれる。好ましくは、65質量%以下になるまで揮発工程を実施するとよく、また、1質量%/分以下の揮発速度が好ましい。
【0030】
この揮発成分の量は、熱重量・示差熱同時測定(TG-DTA)法により測定できる。熱重量・示差熱同時測定法は、試料及び基準物質の温度をプログラムに従って同じ条件で変化させながら、試料の重量変化を測定する熱重量測定(TG:Thermogravimetry)及び試料と基準物質の温度差を測定する示差熱測定(DTA:Differential Thermal Analysis)を同時に行う方法である。基準物質には、測定温度域において吸発熱のない物資として、空容器やα-アルミナが用いられる。この熱重量・示差熱同時測定を実施する際のプログラムを実際の揮発工程の温度プロファイルを模して設定することにより、得られた測定結果を実際の揮発工程における重量変化として推定することができる。
【0031】
この揮発工程は、例えば連続加熱炉等により大気雰囲気中で行ってもよいが、窒素雰囲気や低酸素雰囲気で行ってもよい。
【0032】
なお、この揮発工程及び後述の焼結工程を含めて加熱工程では、積層体を無加圧状態で加熱する。無加圧状態とは、絶縁回路基板10にペースト状の接合用組成物16を介して積層した半導体素子20に対して、これらの積層方向に積極的に加圧しないことを意味しており、例えば、半導体素子20の自重や、半導体素子20の位置ずれ防止具等を半導体素子20上に配置することにより、半導体素子20にわずかな荷重が作用することまでを除外するものではない。
【0033】
(焼結工程:S15)
揮発工程後の積層体を例えばバッチ式加熱炉(図示略)に投入し、150℃を超え300℃以下の温度にまで加熱して接合用組成物16を焼結し、接合層15を形成する。この場合も、積層体40は無加圧状態とされる。雰囲気は窒素雰囲気、又は酸素濃度が1000ppm以下の低酸素雰囲気が好ましい。加熱時間としては、加熱のピーク温度に10分以上240分以下に保持するのが好ましい。なお、揮発工程と焼結工程とを別の装置で実施してもよいが、同一の装置でプログラム運転により実施してもよい。
【0034】
この焼結工程により、接合用組成物16中に含まれる銀粉末と脂肪酸銀と脂肪族アミンが反応して形成される錯体の銀が、高誘電率アルコールにより、還元されて銀ナノ粒子になる。この銀ナノ粒子と銀粉末が焼結して接合層を形成し、回路層12に半導体素子20がこの接合層15を介して接合された半導体装置30が作製される。
【0035】
以上のようにして製造される半導体装置30は、半導体素子20と絶縁回路基板10とを接合している接合層15が、揮発工程により有機分等を揮発させてから、焼結工程で焼結されるので、接合層15にボイドが発生することを抑制することができ、良好な接合状態を得ることができる。
なお、接合用組成物16として、銀粉末に、脂肪酸銀、脂肪族アミン、溶媒、樹脂を含有して構成したが、この組成に限らず、他の金属粉末によって構成してもよい。
【実施例0036】
窒化珪素(Si3N4)からなるセラミックス基板の表面に銅からなる回路層(第1部材)を形成した絶縁回路基板と、端面に金のメタライズ層を形成したシリコンからなる半導体素子(第2部材)とを用意した。この半導体素子は1辺が10mmの正方形板状とした。絶縁回路基板の1個の回路層の上に半導体素子を接合した。
【0037】
また、粒径100nm以上500nm未満の第1銀粒子、粒径50nm以上100nm未満の第2銀粒子、粒径50nm未満の第3銀粒子が、体積%で、80:17.5:2.5の比率で含有する銀粉末を用意し、脂肪酸銀として酢酸銀を22.0質量%、脂肪族アミンとしてアミノデカンを41.3質量%、溶媒としてブチルカルビトールアセテートを36.7質量%含有する混合溶液を用意し、この混合溶液(24.00質量%)と銀粉末(75.00質量%)と高誘電率アルコールとしての1,2,4-ブタントリオール(D1)(1.00質量%)を混合した後、撹拌及び混練し、ペースト状の接合用組成物を得た。
【0038】
この接合用組成物をセラミックス基板の回路層上に塗布し、塗布された接合用組成物の上に半導体素子を配置して、80℃の温度に60分間保持する揮発工程、その後250℃に加熱する焼結工程を経て、接合した。いずれも1000ppm以下の酸素濃度雰囲気で実施した。比較例として、揮発工程を経由せずに250℃まで2℃/分の一定速度で加熱して焼結させた例も作製した。
【0039】
そして、ネッチ・ジャパン株式会社の熱重量・示差熱同時測定装置(STA2500Regulus)を用い、揮発工程及び焼結工程の温度プロファイルを模して、熱重量と示差熱を同時測定した。
図4は実施例、
図5が比較例を示している。いずれも図の左側には。横軸が経過時間で、温度(℃)とその時の重量減少量(質量%)をプロットしている。温度を実線、重量減少量を破線で示している。図の右側には、その重量減少量を溶媒重量比(質量%)に換算して横軸とし、重量減少速度(質量%/分)をプロットしている。
【0040】
図4の実施例では、揮発工程において80℃付近で60分程度保持しており、その間に重量が徐々に減少し、揮発工程終了時で97%~98%程度の重量減少量となり、その後焼結工程への昇温時に91%付近まで減少している。右側の溶媒重量比のグラフでみると、溶媒重量比が70%までの間では重量減少速度が1質量%/分以下(約0.5質量%/分)と小さく、70%を下回ると急激に重量減少速度が増大し、以降、一定の比率で低下している。
これに対して、
図5の比較例では、左側の時間経過のグラフでは、加熱初期の60分程度の間に一気に92%程度まで重量減少している。右側の溶媒重量比のグラフでは、60%程度まで重量減少速度がほぼ一定の比率で増大し、60%を下回ると、一定の比率で低下している。
【0041】
また、主として揮発工程の温度条件を変えて他の条件でも実施し、
図4の右側に示すような溶媒重量比をプロットしたのが
図6であり、1質量%/分以下の重量減少速度で溶媒重量比が70質量%以下になるまで揮発工程を実施することにより、ボイドの発生を抑制できることが確認された。溶媒重量比が70質量%以下になるまで揮発工程を実施することとすれば、重量減少速度は最大2質量%/分であってもボイドの発生は抑制できると思われる。なお、0.5質量%/分未満では、ボイドの発生は抑制できるが、時間がかかって生産性が損なわれるため、0.5質量%/分以上が好ましい。
【0042】
図7及び
図8は接合層の超音波探傷像であり、
図7が実施例、
図8が比較例を示している。
図7ではボイドは認められなかったが、
図8の比較例ではボイドが発生しているのがわかる。