(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108672
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】接合材料及び該接合材料を用いた接合構造体
(51)【国際特許分類】
B23K 35/14 20060101AFI20230731BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20230731BHJP
B23K 35/26 20060101ALN20230731BHJP
C22C 28/00 20060101ALN20230731BHJP
【FI】
B23K35/14 Z
H01L21/60 311Q
B23K35/26 310Z
C22C28/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009833
(22)【出願日】2022-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】古澤 彰男
(72)【発明者】
【氏名】日根 清裕
(72)【発明者】
【氏名】石谷 伸治
(72)【発明者】
【氏名】高尾 蕗茜
【テーマコード(参考)】
5F044
【Fターム(参考)】
5F044LL07
(57)【要約】
【課題】微細接合部を形成する接合材料を提供する。
【解決手段】接合材料は、融点30℃以下の母相とCuナノ粒子とを含む接合材料であって、母相は、少なくともGaを含み、Cuナノ粒子は、平均粒子径10nm~1000nmであり、母相中にCuナノ粒子が分散され、Cuナノ粒子は接合材料の10質量%から75質量%である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点30℃以下の母相とCuナノ粒子とを含む接合材料であって、
前記母相は、少なくともGaを含み、
前記Cuナノ粒子は、平均粒子径10nm~1000nmであり、前記母相中に前記Cuナノ粒子が分散され、前記接合材料の10質量%から75質量%の範囲である、接合材料。
【請求項2】
前記母相にInまたは/およびSnが存在する、請求項1に記載の接合材料。
【請求項3】
基板電極と部品電極とを接合した接合部を備えた接合構造体であって、
前記接合部は、金属マトリクスとCuナノ粒子とで構成され、前記金属マトリクスに平均粒子径1nm~100nmのCuナノ粒子が分散しており、前記金属マトリクスは、少なくとも金属間化合物CuGa2相を含む、接合構造体。
【請求項4】
前記金属マトリクスに金属間化合物(Cu、Ni)Ga2相を含む、請求項3に記載の接合構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、100℃以下の温度で電極間を接合する接合部を形成することができる接合材料、およびこの接合材料を用いて形成される接合構造体に関する。より詳細には、例えば、センサデバイス、ヒューマンインターフェースの入出力デバイス等において、電子部品と回路基板とを接合する接合材料、および接合材料を用いて接合した微細な電子回路基板の接合構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
センサデバイスでは電子部品は、接合材料としてのはんだ材料を用いて回路基板に接合される。CSP(Chip Scale Package)のような半導体パッケージと回路基板とを接合する場合、一般的に融点が219℃のSn-3質量%Ag-0.5質量%Cuが接合材料として用いられている。
図7に、半導体パッケージ1が回路基板2に接合されている様子を断面図にて模式的に示す。
【0003】
尚、本明細書において、合金の組成を記載するために、例えば、「A-x質量%B-y質量%C(ここで、A、BおよびCは金属元素、x、yはパーセント数値)」なる表現法を用いる。これは、合金が金属元素A、BおよびCから構成され、合金全体を100質量%としたとき、金属元素Bがx質量%、金属元素Cがy質量%であり、残部が金属元素Aの質量%(=100-x-y)であることを意味する。
【0004】
先ず、はんだペースト印刷装置を用いて、例えば、融点が219℃のはんだ材料(例えばSn-3質量%Ag-0.5質量%Cu)を直径10~25μmの粒子に加工してフラックスと混合したペーストを回路基板電極3の上に転写する。次に、電子部品マウント装置を用いて半導体パッケージ1を搭載し、最後にリフロー加熱装置を用いてはんだ融点以上に加熱した後に冷却して接合部5を形成する。
【0005】
センサデバイス、ヒューマンインターフェースの入出力デバイス等の高機能化に伴い、半導体パッケージの多電極化・小型化・薄型化が進展し、半導体パッケージの電極数が従来は400端子以下であったものが、今後は1000端子以上に増加していくと考えられている。端子数の増加と小型化とを両立させるためには、半導体パッケージのライン/スペース幅を微細化することが必須であり、従来のライン幅10μm/スペース幅10μmであったものが、ライン幅3μm/スペース幅3μm以下に狭くなる。ライン幅の狭ピッチ化によって半導体パッケージ電極のサイズも微細化が進むため、微細な接合部を形成可能な接合材料が求められる。また、微細な接合部を形成するためには、電極間の短絡不良を防ぐために接合材料の転写量を微量にすることが必要であり、従来のスクリーン印刷では転写が困難になっており、ジェットディスペンスによる塗布が必須である。
【0006】
さらに、半導体パッケージの薄型化が進むことで反りが生じやすくなるため、リフロー加熱時による接合時の加熱温度は100℃近傍で低く抑えることが望ましい。
【0007】
そこで、微細な接合部を形成可能な第1の接合材料として、金属ナノ粒子と分散媒とを混合したAgナノ粒子ペーストが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この接合材料を構成する金属ナノ粒子は、粒子径1~100nm以下の粒子が用いられており、このような粒子径を有する金属ナノ粒子を使用することで、微細な接合体を形成することができる。
【0008】
また、接合時の加熱温度を低く抑える第2の接合材料も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この接合材料は、Sn-Bi-Inの3種類の金属からなる合金をボール表面に膜形成して成る。Sn-Bi-Inの3元合金の融点は60~100℃であるため、この接合材料を使用することで、接合時の加熱温度を100℃近傍に下げることができる。
【0009】
更に、接合時の加熱温度を低く抑える第3の接合材料が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。この接合材料は、Gaが主成分であり、電極材料であるCuと反応させることでCuGa2の金属間化合物を生成して接合体を形成させる。この接合材料を使用することで30℃の温度で接合部を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2011/158659
【特許文献2】特開2021―48392号公報
【特許文献3】WO2020/100614
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の第1の接合材料では、固相拡散で接合体を形成するため、Snの場合は150℃~200℃、AgあるいはCuの場合は250~350℃の高温に加熱しなければならないという問題がある。
【0012】
上述の第2の接合材料は、Sn-Bi-Inの3元合金であり、100℃近傍の温度で接合体を形成することができるが、3元合金のナノ粒子は作製することが困難である。このため、ジェットディスペンスで使用可能な粘度が10Pa・s以下のペーストを作製できないという問題がある。
【0013】
上述の第3の接合材料は、Gaを主成分としているため30℃の温度で接合部を形成させることができるが、Gaの粘度が0.003Pa・sと低いため、電極に転写した際に形状を保持できず電極上にGaが広がるため、接合部が薄くなり接合信頼性が低下するという問題がある。
【0014】
そこで、本発明は、上述の接合材料を用いる場合の問題点である、高温加熱、高粘度、低信頼性という問題点を解決すべく、低温加熱、低粘度、高信頼性の接合材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題について検討を重ねた結果、本開示に係る接合材料は、融点30℃以下の母相とCuナノ粒子とを含む接合材料であって、母相は、少なくともGaを含み、Cuナノ粒子は、平均粒子径10nm~1000nmであり、母相中にCuナノ粒子が分散され、接合材料の10質量%から75質量%である。
【0016】
更に、本開示に係る接合構造体は、基板電極と部品電極とを接合した接合部を備えた接合構造体であって、接合部は、金属マトリクスとCuナノ粒子とで構成され、金属マトリクスに平均粒子径1nm~100nmのCuナノ粒子が分散しており、金属マトリクスは、少なくとも金属間化合物CuGa2相を含む。
【発明の効果】
【0017】
本開示に係る接合材料によれば、100℃以下の低温加熱であって、ジェットディスペンスで接合材料を電極上に転写可能な粘度10Pa・s以下であり、転写後に形状保持が可能な粘度1Pa・s以上の低粘度で接合部を形成可能であって、高信頼性な接合構造体を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施の形態1に係る接合材料を用いて形成される接合部を有する接合構造体の断面構造を模式的に示す概略断面図である。
【
図2】本実施の形態1に係る接合材料を使用して接合部を形成する過程を概念的に示し、
図2(a)は、加熱する前の接合材料の状態の断面構造を示す概略断面図であり、
図2(b)は、加熱してGaを含む母相が溶融して液相が生成する状態の断面構造を示す概略断面図でありし、
図2(c)は、接合材料を電極の上に塗布した状態の断面構造を示す概略断面図であり、
図2(d)は、半導体パッケージを搭載し、金属間化合物が形成されつつある状態の断面構造を示す概略断面図であり、
図2(e)は、はんだ付けで接合した後の接合部の断面構造を示す概略断面図である。
【
図3】接合材料に含まれるCuナノ粒子のメジアン粒子径と、接合材料の粘度、および形成される接合部の接合強度との関係を示すグラフを示す図である。
【
図4】接合材料に含まれるCuナノ粒子の含有比率と、接合材料の粘度、および形成される接合部の接合強度との関係を示すグラフを示す図である。
【
図5】種々のCuナノ粒子の粒子径と含有率を用いた接合材料の粘度と、形成した接合部の接合強度の結果を示す表1である。
【
図6】種々のGaを含む母相と、種々のCuナノ粒子の粒子径と含有率を用いた接合材料の粘度と、形成した接合部の接合強度の結果を示す表2である。
【
図7】半導体パッケージが回路基板に接合されている状態の断面構造を模式的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
第1の態様に係る接合材料は、融点30℃以下の母相とCuナノ粒子とを含む接合材料であって、母相は、少なくともGaを含み、Cuナノ粒子は、平均粒子径10nm~1000nmであり、母相中にCuナノ粒子が分散され、接合材料の10質量%から75質量%の範囲である。
【0020】
第2の態様に係る接合材料は、上記第1の態様において、母相にInまたは/およびSnが存在してもよい。
【0021】
第3の態様に係る接合構造体は、基板電極と部品電極とを接合した接合部を備えた接合構造体であって、接合部は、金属マトリクスとCuナノ粒子とで構成され、金属マトリクスに平均粒子径1nm~100nmのCuナノ粒子が分散しており、金属マトリクスは、少なくとも金属間化合物CuGa2相を含む。
【0022】
第4の態様に係る接合構造体は、上記第3の態様において、金属マトリクスに金属間化合物(Cu、Ni)Ga2相を含んでもよい。
【0023】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の実施の形態に係る接合材料及び該接合材料を用いた接合構造体を更に詳細に説明する。以下の説明は、本開示を実施するための具体的な形態の例示であって、本開示は、そのような形態に限定されるものではない。
【0024】
(実施の形態1)
<接合材料>
図2の(a)乃至(e)は、実施の形態1に係る接合材料を使用して接合部を形成する過程を概念的に示す一連の概略断面図である。
図2(a)は、加熱する前の接合材料の状態の断面構造を示す概略断面図である。
図2(b)は、加熱してGaを含む母相が溶融して液相が生成する状態の断面構造を示す概略断面図である。
図2(c)は、接合材料を電極の上に塗布した状態の断面構造を示す概略断面図である。
図2(d)は、半導体パッケージを搭載し、金属間化合物が形成されつつある状態の断面構造を示す概略断面図である。
図2(e)は、はんだ付けで接合した後の接合部の断面構造を示す概略断面図である。
実施の形態1に係る接合材料は、Gaを含む母相108とCuナノ粒子109とを含む。Cuナノ粒子109は、平均粒子径10nm~1000nmであり、母相中にCuナノ粒子が分散され、接合材料の10質量%から75質量%の範囲である。
この接合材料110は、Gaを含む母相108とCuナノ粒子109とを所定の比率(即ち、含有比率)で混合して調製される。調製する工程は、Gaを含む母相108の融点以上である、例えば40℃に加熱し、Gaを含む母相108が液相の状態で行う。
【0025】
Gaを含む母相108は、例えば、100質量%Ga(融点30℃)であり、Gaを含む母相はInまたはSnを含んでもよい。Cuナノ粒子109(融点1085℃)のメジアン粒子径は例えば平均100nmである。また、材料を製造するに際して不可避的に含まれることになる他の成分を含んでよい。いずれの場合も、本開示の課題に対して許容できない悪影響が生じない範囲において含んでよい。
【0026】
Gaを含む母相108とCuナノ粒子109との合計質量、即ち、接合材料110の質量に対する、Cuナノ粒子109の質量比率、即ち、含有比率は、例えば65質量%である。
【0027】
<効果>
実施の形態1に係る接合材料を用いてはんだ付けして接合部を形成するに際して、Gaを含む母相が溶融するまで接合材料を加熱すると、生成する低粘度の液相中にCuナノ粒子が溶解・拡散して反応し、CuとGaとの間で少なくとも1種の金属間化合物が生成する。その後、冷却すると接合部が形成される。
図1に示すように、この接合部において、生成した金属間化合物はマトリクス構造(または3次元ネットワーク構造)106(後述の第1の金属相に対応)を形成し、この構造中に、Cuナノ粒子に由来する第2の金属相107(金属間化合物の形成に関与しないでCuナノ粒子が残存している場合)を含む。第1の金属相105は主としてGaを含むが、それに加えて、Niをも含み得る。第2の金属相107は主としてCuを含む。金属間化合物が3次元ネットワーク構造を形成することによって、ネットワーク構造内に第2の金属相を保持できる。
【0028】
また、金属間化合物のネットワーク構造を構成できる接合材料のGaを含む母相とCuナノ粒子の構成を変えることによって、接合部の耐熱温度および接合強度をコントロールすることが可能となる。具体的には、Cuナノ粒子のメジアン粒子径、Cuナノ粒子の含有比率等を適宜選択することによって、望ましいペースト粘度(これは接合部の塗布厚に対応)および接合強度を達成できる。
【0029】
その結果、例えばセンサデバイスのような多電極、狭ピッチの半導体パッケージの接合に本発明の接合材料を使用しても接合部でクラック発生が起こり難く、接合構造体の信頼性が低下することは抑制される。また、本実施の形態1に係る接合材料を用いて接合するに際して、加熱装置ではんだ付けする場合、Gaを含む母相は30℃以下の温度で溶融する。このため、100℃以下の低い温度ではんだ付けが可能となり、センサデバイスを接合する組み立て過程における薄型の半導体パッケージに反りを生じさせることなく組み立てることが可能となる。
【0030】
<接合構造体>
図1は、本実施の形態1に係る接合材料を用いて形成される接合部103を有する接合構造体の断面構造を模式的に示す概略断面図である。
図1には、一方の対象物としての半導体パッケージ101の外部電極102を、接合部103によって他方の対象物としての絶縁回路基板104の電極105に接合した態様を一例として示している。尚、図示した接合部103は、Gaを含む母相、およびCuナノ粒子を含んで成る接合材料を用いて形成されている。
【0031】
接合部103は、Gaを主成分とする第1の金属相106と、Cuナノ粒子に由来するCuを主成分とする第2の金属相107と、により成る。図示するように、第2の金属相107は、マトリクスである第1の金属相106によって包囲されている。第1の金属相106は、3次元ネットワーク構造を有し、図示するようにその内部に第2の金属相107を有し、外部電極102と電極105とを接合している。このような第1の金属相106は、形成される金属間化合物の融点に対応する融点、例えば200℃以上の融点を有する。その結果、接合部を200℃以上、例えば250℃に近い高温まで加熱しても、ネットワーク構造が溶融することなく保持される。従って、接合部103が破断することはなく、優れた耐熱性を有する。
【0032】
本実施の形態1に係る接合材料によって接続する対象物は、電気的かつ物理的に接合すべき対象、即ち、電気的な導通を確保すると共に、機械的に接着すべき、いずれの適当な電子部品、電気部品等であってもよい。具体的には、半導体パッケージ、絶縁基板、リードフレーム、回路基板等の電極、その他の種々の電気・電子部品の電極等を例示できる。そのような接続すべき対象物の一例として、例えば、半導体パッケージの場合を説明する。
【0033】
<第1の金属相>
第1の金属相は、Gaを含む母相108と、Cuナノ粒子109に由来するCuから成る金属間化合物CuGa2相とを含む。さらに、金属間化合物(Cu、Ni)Ga2相を含んでもよい。(Cu、Ni)Ga2相のNiは、外部電極102または/および電極105に含まれるNiであってもよい。
【0034】
<第2の金属相>
第2の金属相は、Cuナノ粒子109に由来するが、Gaを含む母相108が液相となった際に、液相拡散によってCuナノ粒子109がGaを含む母相108に溶解する。このため、第2の金属相107の大きさは、元のCuナノ粒子109の粒子径と比較して小さくなり、例えば、約1/10の大きさになる。なお、1/10は例示であってこれに限られない。
【0035】
<半導体パッケージ>
半導体パッケージは、半導体素子を樹脂や金属でパッケージングし、外周または底面に電極を備えた電子部品である。外周に電極を備えた形態には、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J-leaded)、QFP(Quad Flat Package)等があり、底面に電極を備えた形態には、BGA(Ball Grid Array)、LGA(Land Grid Array)、CSP(Chip Scale Package)等がある。
【0036】
半導体パッケージは、いずれの適当な寸法を有してもよく、その機能に応じて、37mm×37mm、25mm×25mmと大きい寸法のもの、あるいは10mm×10mm、5mm×5mm等の小さい寸法のものを用いてもよい。半導体パッケージは、いずれの適当な厚みを有してもよく、半導体素子の寸法に応じて0.4mm、0.3mm、0.2mm、0.15mm等の厚さを有してよい。半導体パッケージは、いずれの適当な電極ピッチを有してよく、0.4mmピッチ、0.3mmピッチ、さらには0.25mmピッチ以下のものを用いてもよい。
【0037】
<絶縁基板>
絶縁基板は、一般的にガラスエポキシ製であり、接合材料との接合性を確保するため絶縁基板の接合材料側に電極層として、例えばCuが35μmの厚みで電解めっき法により成膜され、エッチングによってパターン形成されていてもよい。電極層は、接合材料との接合性が良い金属であるNi、Ag、Sn、Pd等を用いてもよい。厚みも成膜厚みばらつきを考慮して10μm以上あればよく、成膜方法も電解めっき法に限らず蒸着法、無電解めっき法等を用いてもよい。
【0038】
従って、本実施の形態1に係る接合構造体は、対象物としての半導体パッケージ101と絶縁基板104との間に接合部103を有する。また、その接合部103は、本実施の形態1に係る接合材料をこれらの対象物の間に配置し、上述の第1の金属相106と第2の金属相107とを有して成る。
【0039】
<接合方法>
図2を用いて、本実施の形態1に係る接合材料を用いて対象物の間に接合部103を形成することによって本実施の形態1に係る接合構造体を形成する過程を模式的に示す。
(1)上述のようにして調製した接合材料110を絶縁基板(図示せず)の電極の上にディスペンサーによって供給し、接合材料110の上に半導体パッケージ(図示せず)を搭載し、その後、これらを所定温度に加熱して接合部を形成する。
図2(a)は、加熱する前の接合材料110の状態の断面構造を模式的に示す概略断面図である。Gaを含む母相108内にCuナノ粒子109が存在しており、Gaを含む母相108の融点未満であるため接合材料110は固体である。
【0040】
(2)接合材料110を電極105の上に塗布する際には、接合材料110を、Gaを含む母相(固相)108の融点以上である、例えば40℃に加熱する。
図2(b)は、40℃に加熱し液相となったGaを含む母相111が生成した接合材料112の状態の断面構造を示す概略断面図である。Gaを含む母相111が液体になり、接合材料112の粘度は、4.1Pa・sになる。接合材料112の粘度が10Pa・s以下になるとジェットディスペンサーで塗布することが可能になる。
【0041】
(3)
図2(c)は、接合材料112を電極105の上に塗布した状態を示す。Gaを含む母相111が液相の状態にある場合、Gaを含む母相111とCuナノ粒子109の間の反応が加速して状態が変化するため、塗布後は速やかにGaを含む母相(液相)111を固相状態の母相(固相)108にすることが望ましい。例えば、絶縁基板(図示せず)をGaの融点未満の温度である20℃の支持台に載せた状態で塗布してもよい。
【0042】
(4)
図2(d)は、半導体パッケージを搭載し、金属間化合物が形成されつつある状態を示す。半導体パッケージを搭載し、Gaを含む母相(固相)108の融点以上に加熱することで、Cuナノ粒子109は、液相となったGaを含む母相(液相)111に拡散して金属間化合物が形成される。このように半導体パッケージを搭載した状態で、例えば、酸素濃度200ppmの窒素雰囲気で、Gaを含む母相(固相)108の融点より高い温度である、例えば100℃まで加熱してはんだ付けをする。
【0043】
(5)加熱保持時間の経過と共に金属間化合物の形成量が増加し、
図2(e)に示すようにGaを含む母相(液相)108にCuナノ粒子109が拡散して第1の金属相106となってネットワーク構造が形成される。また、Cuナノ粒子109の残部が第2の金属相107となる。その後に室温まで冷却すると、接合部が形成される。この接合部では、第1の金属相106のネットワーク構造内に、Cuナノ粒子109に由来する第2の金属相107が存在する。
【0044】
上述のように、接合部を形成できる接合材料110は、融点が30℃以下のGaを含む母相(固相)108(例えば100質量%Ga、融点30℃)と、形成される金属間化合物より高い融点を有する金属ナノ粒子(例えばCuナノ粒子、融点1085℃)と、を混合して調製する。従って、この接合材料を、例えば、100℃に加熱するだけでGaを含む母相が溶融するので、短時間でCuは溶融したGa中に溶解し、そこで拡散して液相中のGaと金属間化合物を形成できる。よって、短時間で接合部を、従って、接合構造体を形成できる。
【0045】
従って、本実施の形態1に係る接合部の形成方法または接合方法は、接合すべき2つの対象物の一方に、本実施の形態1に係る接合材料を供給する工程、供給した接合材料の上に他方の対象物を載置して、2つの対象物の間に接合材料を配置する工程、接合材料および対象物を、Gaを含む母相の融点より高い温度、好ましくは20℃高い温度に加熱する工程、例えば100℃に加熱する工程、加熱状態を所定時間(例えば20秒~10分、好ましくは1分またはそれ以上の時間)保持し、その後、冷却する工程を含んで成る。
【0046】
<Gaを含む母相>
Gaを含む母相108は、例えば、100質量%Ga(融点30℃)である。Gaを含む母相108は、Ga単体に限られず、Gaとの間で共晶点を有する元素を混合してもよい。そのような元素として、InまたはSnの1つ、あるいはInとSnの2つを混合した3元合金であってもよい。Gaを含む母相108の融点を30℃以下に保つために、Inの場合は23質量%以下、Snの場合は10質量%以下であることが望ましい。
【0047】
<Cuナノ粒子>
本実施の形態1に係る接合材料において、Cuナノ粒子109は、粒状形態を有し、通常、Cuのみで構成されている。粒状形態とは、球状、略球状、楕円球状、多面体およびコアシェル、ならびにこれらの少なくとも2つの組み合わせの形状等を含む、いわゆる「粒(つぶ)」状の形態である。また、材料を製造するに際して不可避的に含まれることになる他の成分を含んでもよい。
【0048】
<Cuナノ粒子の粒子径>
Cuナノ粒子の大きさに関しては、「メジアン粒子径」なる概念を用いる。このメジアン粒子径は、動的光散乱法による粒子径測定によって得られる体積基準の粒子径分布の積算値の50%径、いわゆるDv50を意味する。このメジアン粒子径は、レーザー光を照射した時の散乱光のゆらぎを計測して算出している。
【0049】
本明細書において言及するCuナノ粒子のメジアン径は、サブミクロンサイズの粒子径分布測定に一般的に使用される動的光散乱法粒度分布測定装置(Malvern Panalytical社製、製品番号:ゼータサイザーナノZS)を用いて分散媒として純水を使用して測定した。
【0050】
図3に、接合材料に含まれるCuナノ粒子109のメジアン粒子径を種々変えた接合材料を調製し、40℃に加熱した状態で、ずり速度s
-1で測定した粘度、およびそれを用いて形成した接合部の接合強度を測定した結果を示すグラフを示す。
【0051】
Gaを含む母相としては、100質量%Gaを用いた。また、Gaを含む母相とCuナノ粒子との合計質量に対するCuナノ粒子の質量比率、即ち、含有比率は65質量%であった。接合材料をCu板(20mm×10mm)の上に厚み20μmになるようジェットディスペンサーで塗布し、Cu試験片(1mm×1mm)を載せ、100℃で1分間加熱した後に室温まで冷却し、接合部を形成した接合構造体を得た。
【0052】
図3において、横軸はCu粒子のメジアン粒子径であり、縦軸は平行平板粘度計で測定した接合材料の粘度(
図3の●)と、ボンドテスターで測定した1mm×1mmのCu試験片の接合強度(
図3の〇)である。
【0053】
図3から理解できるように、Cuナノ粒子のメジアン粒子径が10nmの時は、接合材料の粘度が9.5Pa・sであり、5nmの時は17Pa・sになることから、Cuナノ粒子のメジアン径が10nm未満になると粘度が10Pa・sを超えると考えられる。これはメジアン径が小さくなると、Cuナノ粒子の比表面積が大きくなり、その結果、固液間の接触抵抗が大きくなるためであると考えられる。特に好ましい態様において、粘度は8Pa・s以下であることが特に望ましいという観点を考慮すると、Cuナノ粒子のメジアン粒子径は30nm以上であることがより好ましい。
【0054】
また、Cuナノ粒子のメジアン粒子径が1000nmを超えて大きくなると、接合強度が急に低下する。これは、Cuナノ粒子の比表面積が小さくなり、その結果、Cuナノ粒子の溶融に由来する液相への溶解・拡散量が減少して金属間化合物の生成が抑制されるためであると考えられる。特に好ましい態様において、接合強度は11MPa以上であることが特に望ましいという観点を考慮すると、Cuナノ粒子のメジアン粒子径は300nm以下であることがより好ましい。
【0055】
本実施の形態1の好ましい態様では、接合材料を構成するCuナノ粒子のメジアン粒子径は10nm~1000nmであり、より好ましい態様では、30nm~300nmである。Cuナノ粒子がこの範囲のメジアン粒子径を有することで、ジェットディスペンサーでの塗布が可能となり、かつ、十分な接合強度を有する接合構造体が得られる。
【0056】
<Gaを含む母相とCuナノ粒子の混合比率>
本実施の形態1に係る接合材料は、Gaを含む母相およびCuナノ粒子を含んで成る。Gaを含む母相とCuナノ粒子とが反応して金属間化合物を形成するので、形成される接合部の性能にとって、Gaを含む母相とCuナノ粒子との配合比率が重要な要素となる。
【0057】
図4に、Gaを含む母相とCuナノ粒子との総量に対するCuナノ粒子の含有量の比率(質量基準)、即ち、Cuナノ粒子の含有比率を種々変えた接合材料を調製した。これを40℃に加熱した状態で、ずり速度s
-1で測定した粘度、およびそれを用いて形成した接合部の接合強度を測定した結果を示すグラフを示す。
【0058】
Gaを含む母相として100質量%Gaを用い、Cuナノ粒子はメジアン径100nmの粒子を用いた。接合材料をCu板(20mm×10mm)の上に厚み20μmになるようジェットディスペンサーで塗布し、Cu試験片(1mm×1mm)を載せ、100℃で1分間加熱した後に室温まで冷却し、接合部を形成した接合構造体を得た。
【0059】
図4において、横軸はCu粒子の含有比率であり、縦軸は平行平板粘度計で測定した接合材料の粘度(
図4の●)と、ボンドテスターで測定した1mm×1mmのCu試験片の接合強度(
図4の〇)である。
【0060】
図4のグラフから明らかなように、粘度を10Pa・s以下にするために必要なCuナノ粒子の含有比率は75質量%以下である。粘度は8Pa・s以下がより好ましく、その場合、必要なCuナノ粒子の含有比率は65質量%以下である。
【0061】
また、Cuナノ粒子の含有比率が小さくなって10質量%未満になると、金属間化合物を形成するために必要なCuの量が不足する。その結果、未反応のGaを含む母相が残存するために接合強度が低下すると考えられる。11MPa以上の接合強度が特に望ましいので、その場合、Cuナノ粒子の含有比率は55質量%以上であることが好ましい。
【0062】
図4のグラフから分かるように、Cuナノ粒子の含有比率が10~75質量%であれば接合材料の粘度が10Pa・s以下であり、ジェットディスペンサーで塗布することが可能である。Cuナノ粒子の含有比率が、55質量%以上であれば接合強度は11MPa以上であり、より好ましい。また、Cuナノ粒子の含有比率が65質量%以下であれば粘度は8MPa・s以下になり、より好ましい。
【0063】
<実施例および比較例>
接合構造体の接合部形成においては接合材料を40℃に加熱した時の粘度、およびその接合材料を用いて形成した接合部の接合強度の両立が必要である。この両立について更に検討するため、Cuナノ粒子のメジアン粒子径ならびに含有比率を種々変えて接合材料を調製し、先と同様にして粘度と接合強度を測定する実験を実施した。その結果を
図5の表1に示す。
【0064】
尚、
図5の表1の粘度の欄において、粘度の目安を10Pa・s以下とし、それに対して丸印(○)は良い評価を意味し、二重丸印(◎)は8MPa・s以下で十分良い評価を意味し、バツ印(×)は所定の粘度を満たさない評価を意味する。
【0065】
また、
図5の表1の接合強度の欄において、接合部の接合強度の目安を10MPaとし、それに対して丸印(○)は良い評価を意味し、二重丸印(◎)は11MPa・s以上で十分良い評価を意味し、バツ印(×)は所定の接合強度を満たさない評価を意味する。粘度および接合強度の双方に関して○または◎の評価であった実験例を「実施例」とし、いずれかの評価が×であった実験例を「比較例」としている。
【0066】
[実施例1]
図5の表1のCuナノ粒子を用いて調製した接合材料110の粘度を平行平板粘度計で測定すると4.1Pa・sであった。これは、ジェットディスペンサーで塗布するのに十分良い粘度であることを意味する。また、接合材料110を、Cu板(20mm×10mm)の上に厚み20μmで塗布し、その上にCu試験片(1mm×1mm)を載せ、100℃で1分間加熱して接合構造体を形成した。このCu試験片の接合強度をボンドテスターで測定した結果は11.3MPaであり、この数値は十分良い接合強度であった。
【0067】
[実施例2~5および比較例1~4]
図5の表1のCuナノ粒子を用いて、Cuナノ粒子の含有比率を65質量%に調製した接合材料を用いて、実施例1と同様に、粘度と接合強度を測定した。
【0068】
図5の表1から分かるように、Cuナノ粒子の大きさ(メジアン粒子径)が10nm以上であれば粘度は10Pa・s以下であり、ジェットディスペンサーで塗布することができる。しかしながら、Cuナノ粒子の大きさが1000nmを超えると接合強度が10MPa未満に低下するため、必ずしも十分とは言えない。これらの結果から、ジェットディスペンサーで塗布できる粘度と十分な接合強度を得るために必要なCuナノ粒子のメジアン粒子径は10nm~1000nmである。また、8Pa・s以下の粘度と11MPa以上の接合強度を得るためにはCu粒子のメジアン径を30~300nmにすることが好ましい。
【0069】
[実施例6~11および比較例5~6]
上述の実施例および比較例と同様に、
図5の表1のCuナノ粒子のメジアン径と含有比率とを種々変えて接合材料を調製し、先と同様にして接合部を形成して、その粘度および接合強度を測定する実験を実施した。尚、表中における実施例および比較例の区別、ならびにそれらの評価については、上述と同様である。
【0070】
実施例6では、Cuナノ粒子の含有比率が75質量%となる接合材料を調製した。上述の実験と同様にして、粘度を測定し、形成した接合構造体の接合部の接合強度を測定した。
【0071】
この接合材料の粘度は9.9Pa・sであり、ジェットディスペンサーで塗布可能な性能を持っていることがわかる。また、接合強度をボンドテスターで測定した結果は11.6MPaであり、良好な接合強度であった。
【0072】
実施例7では、Cuナノ粒子の含有比率が55質量%となる接合材料を調製した。上述の実験と同様にして、粘度を測定し、形成した接合構造体の接合部の接合強度を測定した。
この接合材料の粘度は3.0Pa・sであり、ジェットディスペンサーで塗布可能な良好な性能を持っていることがわかる。また、接合強度をボンドテスターで測定した結果は11.1MPaであり、良好な接合強度であった。
【0073】
実施例8では、Cuナノ粒子の含有比率が45質量%となる接合材料を調製した。上述の実験と同様にして、粘度を測定し、形成した接合構造体の接合部の接合強度を測定した。
この接合材料の粘度は2.4Pa・sであり、ジェットディスペンサーで塗布可能な良好な性能を持っていることがわかる。また、接合強度をボンドテスターで測定した結果は10.9MPaであり、十分な接合強度であった。
【0074】
実施例9では、Cuナノ粒子の含有比率が30質量%となる接合材料を調製した。上述の実験と同様にして、粘度を測定し、形成した接合構造体の接合部の接合強度を測定した。
この接合材料の粘度は1.9Pa・sであり、ジェットディスペンサーで塗布可能な良好な性能を持っていることがわかる。また、接合強度をボンドテスターで測定した結果は10.9MPaであり、十分な接合強度であった。
【0075】
実施例10では、Cuナノ粒子の含有比率が20質量%となる接合材料を調製した。上述の実験と同様にして、粘度を測定し、形成した接合構造体の接合部の接合強度を測定した。
この接合材料の粘度は1.8Pa・sであり、ジェットディスペンサーで塗布可能な良好な性能を持っていることがわかる。また、接合強度をボンドテスターで測定した結果は10.6MPaであり、十分な接合強度であった。
【0076】
実施例11では、Cuナノ粒子の含有比率が10質量%となる接合材料を調製した。上述の実験と同様にして、粘度を測定し、形成した接合構造体の接合部の接合強度を測定した。
この接合材料の粘度は1.6Pa・sであり、ジェットディスペンサーで塗布可能な良好な性能を持っていることがわかる。また、接合強度をボンドテスターで測定した結果は10.2MPaであり、十分な接合強度であった。
【0077】
[実施例12~18]
上述の実施例および比較例と同様に、Gaを含む母相と、Cuナノ粒子のメジアン径と含有比率を種々変えて接合材料を調製し、先と同様にして接合部を形成して、その粘度および接合強度を測定する実験を実施した。その結果を
図6の表2に示す。尚、表2中における実施例および比較例の区別、ならびにそれらの評価については、上述の
図5の表1と同様である。
【0078】
実施例12では、Ga-8質量%Inの母相と、メジアン径100nmのCuナノ粒子を用い、Cuナノ粒子の含有比率が65質量%となる接合材料を調製した。上述の実験と同様にして、粘度を測定し、形成した接合構造体の接合部の接合強度を測定した。
この接合材料の粘度は5.1Pa・sであり、ジェットディスペンサーで塗布可能な良好な性能を持っていることがわかる。また、接合強度をボンドテスターで測定した結果は10.1MPaであり、十分な接合強度であった。
【0079】
実施例13では、Ga-23質量%Inの母相と、メジアン径10nmのCuナノ粒子と、を用い、Cuナノ粒子の含有比率が10質量%となる接合材料を調製した。上述の実験と同様にして、粘度を測定し、形成した接合構造体の接合部の接合強度を測定した。
【0080】
この接合材料の粘度は9.1Pa・sであり、ジェットディスペンサーで塗布可能な性能を持っていることがわかる。また、接合強度をボンドテスターで測定した結果は11.4MPaであり、良好な接合強度であった。
【0081】
実施例14では、Ga-2質量%Snの母相と、メジアン径1000nmのCuナノ粒子を用い、Cuナノ粒子の含有比率が65質量%となる接合材料を調製した。上述の実験と同様にして、粘度を測定し、形成した接合構造体の接合部の接合強度を測定した。
【0082】
この接合材料の粘度は3.1Pa・sであり、ジェットディスペンサーで塗布可能な良好な性能を持っていることがわかる。また、接合強度をボンドテスターで測定した結果は10.2MPaであり、十分な接合強度であった。
【0083】
実施例15では、Ga-10質量%Snの母相と、メジアン径300nmのCuナノ粒子を用い、Cuナノ粒子の含有比率が35質量%となる接合材料を調製した。上述の実験と同様にして、粘度を測定し、形成した接合構造体の接合部の接合強度を測定した。
【0084】
この接合材料の粘度は7.9Pa・sであり、ジェットディスペンサーで塗布可能な良好な性能を持っていることがわかる。また、接合強度をボンドテスターで測定した結果は11.3MPaであり、良好な接合強度であった。
【0085】
実施例16では、Ga-10質量%In-5質量%Snの母相と、メジアン径30nmのCuナノ粒子を用い、Cuナノ粒子の含有比率が55質量%となる接合材料を調製した。上述の実験と同様にして、粘度を測定し、形成した接合構造体の接合部の接合強度を測定した。
【0086】
この接合材料の粘度は8.2Pa・sであり、ジェットディスペンサーで塗布可能な性能を持っていることがわかる。また、接合強度をボンドテスターで測定した結果は11.2MPaであり、良好な接合強度であった。
【0087】
実施例17では、Ga-20質量%In-10質量%Snの母相と、メジアン径100nmのCuナノ粒子を用い、Cuナノ粒子の含有比率が65質量%となる接合材料を調製した。上述の実験と同様にして、粘度を測定し、形成した接合構造体の接合部の接合強度を測定した。
【0088】
この接合材料の粘度は8.7Pa・sであり、ジェットディスペンサーで塗布可能な性能を持っていることがわかる。また、接合強度をボンドテスターで測定した結果は11.5MPaであり、良好な接合強度であった。
【0089】
これらの結果から、Gaを主成分とする母相と、Cuナノ粒子とを混合した接合材料は、ジェットディスペンサーで塗布な10Pa・s以下の粘度であり、この接合材料を用いて接合部を形成する。これにより、接合部は、Gaを主成分とする第1の金属相と、Cuナノ粒子に由来する第2の金属相とで構成され、第1の金属相が第2の金属相を内含し、半導体パッケージの電極と絶縁基板の電極を接合した接合構造体を形成する。融点が低いGaを含む母相の存在によって、100℃以下の低温で接合部を形成でき、その接合部は形成される金属間化合物のネットワーク構造のために、十分な接合強度を有する。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本開示の接合材料を用いると、接合材料の粘度が10Pa・s以下であるためジェットディスペンサーで電極上に塗布して形状保持が可能であり、Gaを含む母相が30℃以上で液相になるため、100℃の低温加熱で接合部を形成可能である。さらに、形成された接合部は、Gaを含む母相とCuナノ粒子の金属間化合物のネットワーク構造を有しているため十分な接合強度を有している。このため、センサデバイスやヒューマンインターフェースの入出力デバイス等において半導体パッケージと回路基板との接合に利用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 半導体パッケージ
2 回路基板
3 回路基板電極
4 半導体パッケージ電極
5 接合部
101 半導体パッケージ
102 外部電極
103 接合部
104 絶縁基板
105 電極
106 第1の金属相
107 第2の金属相
108 Gaを含む母相(固相)
109 Cuナノ粒子
110 接合材料(固相)
111 Gaを含む母相(液相)
112 接合材料(液相)