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特開2023-108673樹脂組成物、マスターバッチ及び樹脂成形品並びにマスターバッチの製造方法
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  • 特開-樹脂組成物、マスターバッチ及び樹脂成形品並びにマスターバッチの製造方法 図1
  • 特開-樹脂組成物、マスターバッチ及び樹脂成形品並びにマスターバッチの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108673
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】樹脂組成物、マスターバッチ及び樹脂成形品並びにマスターバッチの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/08 20060101AFI20230731BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20230731BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20230731BHJP
   B29B 9/06 20060101ALI20230731BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
C08L101/08
C08K3/22
C08K5/29
B29B9/06
C08J3/22 CFD
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009835
(22)【出願日】2022-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】301023582
【氏名又は名称】株式会社富士商会
(74)【代理人】
【識別番号】100119301
【弁理士】
【氏名又は名称】蟹田 昌之
(72)【発明者】
【氏名】上田 俊文
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 修三
(72)【発明者】
【氏名】板橋 良寛
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 裕樹
【テーマコード(参考)】
4F070
4F201
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA47
4F070AC13
4F070AC45
4F070FA03
4F070FB06
4F070FC05
4F201AA25
4F201AB11
4F201AB16
4F201BA02
4F201BC02
4F201BK02
4F201BK13
4F201BL08
4F201BL43
4J002AA01W
4J002CF06W
4J002CF07W
4J002DE076
4J002ER007
4J002FD136
4J002FD207
4J002GQ00
4J002HA09
(57)【要約】
【課題】水酸化マグネシウムを用いることによって優れた難燃性を有しつつも、耐久性・剛性・強度に優れたエステル結合を有する樹脂組成物等を提供する。
【解決手段】エステル結合を有する熱可塑性樹脂と、水酸化マグネシウムと、カルボジイミド基を備えた化合物と、を含有する樹脂組成物。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル結合を有する熱可塑性樹脂と、
水酸化マグネシウムと、
カルボジイミド基を備えた化合物と、を含有する樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.05重量部以上30重量部以下の前記水酸化マグネシウムを含有する請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂がPBTである請求項1または2に記載の樹脂組成物を用いたマスターバッチ。
【請求項4】
請求項1または2に記載の樹脂組成物または請求項3に記載のマスターバッチを用いた樹脂成形品。
【請求項5】
短軸混練機に、PBT、水酸化マグネシウム粉末、及びカルボジイミド基を備えた化合物を投入し、加熱、圧縮加圧、及び混錬を同時に行いながら混練物をペレット状に押し出すマスターバッチの製造方法。
【請求項6】
熱可塑性樹脂と、
カルボジイミド基を備えた化合物と、を含有し、
前記熱可塑性樹脂100重量部に対し、25重量部以上の前記カルボジイミド基を備えた化合物を含有する樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、マスターバッチ及び樹脂成形品並びにマスターバッチの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エステル結合を有する樹脂組成物において、水酸化マグネシウムを難燃剤として用いると、樹脂成形物の成形性や耐衝撃性が低下等することが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-321024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一実施形態は、水酸化マグネシウムを用いることによって優れた難燃性を有しつつも、耐久性・剛性・強度に優れたエステル結合を有する樹脂組成物、マスターバッチ及び樹脂成形品並びにマスターバッチの製造方法を提供することを目的とする。また、本発明の別の一実施形態は、カルボジイミド基を備えた化合物を容易に樹脂成形品に混ぜることを可能とする樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、次の一実施形態を含む。
【0006】
エステル結合を有する熱可塑性樹脂と、
水酸化マグネシウムと、
カルボジイミド基を備えた化合物と、を含有する樹脂組成物。
【0007】
前記熱可塑性樹脂がPBTである上記の樹脂組成物を用いたマスターバッチ。
【0008】
上記の樹脂組成物またはマスターバッチを用いた樹脂成形品。
【0009】
短軸混練機に、PBT、水酸化マグネシウム粉末、及びカルボジイミド基を備えた化合物を投入し、加熱、圧縮加圧、及び混錬を同時に行いながら混練物をペレット状に押し出すマスターバッチの製造方法。
【0010】
熱可塑性樹脂と、
カルボジイミド基を備えた化合物と、を含有し、
前記熱可塑性樹脂100重量部に対し、25重量部以上の前記カルボジイミド基を備えた化合物を含有する樹脂組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、水酸化マグネシウムを用いることによって優れた難燃性を有しつつも、耐久性・剛性・強度に優れたエステル結合を有する樹脂組成物、マスターバッチ及び樹脂成形品並びにマスターバッチの製造方法を提供することができる。また、本発明の別の一実施形態によれば、カルボジイミド基を備えた化合物を容易に樹脂成形品に混ぜることを可能とする樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1で作製した樹脂組成物と比較例1で作製した樹脂組成物を並べてスマートフォンで撮影した写真である。
図2図1に映る、実施例1に係る樹脂組成物を用いて作製したマスターバッチの拡大写真である。
図3図1に映る、比較例1に係る樹脂組成物を用いて作製したマスターバッチの拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[樹脂組成物]
実施形態に係る樹脂組成物は、エステル結合を有する熱可塑性樹脂と、水酸化マグネシウムと、カルボジイミド基を備えた化合物と、を含有する樹脂組成物である。以下、詳細に説明する。
【0014】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂は、エステル結合を有する熱可塑性樹脂である。エステル結合を有する熱可塑性樹脂の一例には、PET、PBT、及びこれらの双方を有するものが含まれる。
【0015】
(水酸化マグネシウム)
水酸化マグネシウムは難燃剤として用いられる。本実施形態によれば、後述するとおり、カルボジイミド基を有する化合物によって水酸化マグネシウムによるエステル結合の加水分解を抑制することができる。
【0016】
本実施形態においては、例えば、熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.05重量部以上30重量部以下の水酸化マグネシウムを樹脂組成物に含有させることが好ましい。
【0017】
(カルボジイミド基を備えた化合物)
本実施形態は、水酸化マグネシウムとPET・PBTなどの各樹脂とのアロイ加工時の発泡現象を、カルボジイミド基を備えた化合物によって抑制することを特徴としている。換言すれば、本実施形態は、カルボジイミド基を備えた化合物を用いることにより、水酸化マグネシウムとPET・PBTなどの各樹脂とを含有しアロイ加工時の発泡現象が抑制された樹脂組成物を提供することを特徴としている。一般に、難燃性の樹脂組成物は、ベースとなる樹脂に難燃剤を混ぜ合わせ混練り機で加熱・溶融することにより作製される。しかるに、エステル結合を有する熱可塑性樹脂をベースとなる樹脂として用い、水酸化マグネシウムを難燃剤として用いる場合には、加熱・溶融により水酸化マグネシウムが分解されて急激に水分(HO)が発生し、これがエステル結合の加水分解を誘発してしまう。そして、加水分解が起こると、熱可塑性樹脂の分子量が低下して熱可塑性樹脂の発泡現象が起こり、樹脂組成物の耐久性・剛性・強度に悪影響を及ぼしてしまう。そこで、本実施形態では、カルボジイミド基を有する化合物を、エステル結合を有する熱可塑性樹脂に混ぜ合わせるものとする。このようにすれば、カルボジイミド基によってエステル結合の加水分解を抑制することができるため、水酸化マグネシウムを用いることによって優れた難燃性を有しつつも、耐久性・剛性・強度に優れたエステル結合を有する樹脂組成物を提供することができる。
【0018】
カルボジイミド基を有する化合物には、例えば、分子中に「-N=C=N-」で表記されるカルボジイミド基を有するポリマーを用いることができる。
【0019】
本実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.05重量部以上10重量部以下のカルボジイミド基を有する化合物を有することが好ましく、また例えば、熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.1重量部以上5重量部以下のカルボジイミド基を有する化合物を有することが好ましく、また例えば、熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.5重量部以上3重量部以下のカルボジイミド基を有する化合物を有することが好ましい。
【0020】
[マスターバッチ]
マスターバッチは、実施形態に係る樹脂組成物をペレット状にしたものである。
【0021】
[樹脂成形品]
樹脂成形品は、樹脂組成物を成形することにより作製される。実施形態に係る樹脂組成物を用いた樹脂成形品の一例には、単繊維(スパン)・長繊維(モノフィラメント、マルチフィラメント)・フェルト・ニードルパンチ・織物・編み物、敷き物・壁材・内装材など建材、車両などの内装材、アパレル・テキスタイル製品、及び寝装寝具類が含まれる。実施形態に係る樹脂組成物は、特に、優れた難燃性に加えて、耐久性・剛性・強度を有するため、機能性において高いハードルを要求される繊維や繊維加工品などの樹脂成形品に好ましく用いることができる。
【0022】
以上説明したように、本実施形態によれば、水酸化マグネシウムを用いることによって優れた難燃性を有しつつも、耐久性・剛性・強度に優れたエステル結合を有する樹脂組成物、マスターバッチ及び樹脂成形品を提供することができる。実施形態に係る樹脂組成物をリン系難燃剤混合の樹脂組成物と併用することにより、リン系難燃剤混合の樹脂組成物だけでは得られない、ドリップ抑制や自消性、黒煙抑制、白華抑制、そして加工性の良さに優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0023】
[製造方法]
実施形態に係る樹脂組成物は、エステル結合を有する熱可塑性樹脂と、水酸化マグネシウムと、カルボジイミド基を有する化合物を、例えば、加熱、圧縮加圧、及び混錬することにより作製することができる。
【実施例0024】
実施例1について説明する。短軸混練機に、ベース樹脂(PBT)、機能剤(水酸化マグネシウム粉末)、及びカルボジイミド基を備えた化合物を投入し、加熱、圧縮加圧、及び混錬を同時に行いながら混練物をペレット状に押し出し、マスターバッチを作製した。カルボジイミド基を備えた化合物には、カルボジシルキ製品(日清紡ケミカル社製;カルボジライト)を用いた。ベース樹脂(PBT)と機能剤(水酸化マグネシウム粉末)は、PBT:水酸化マグネシウム粉末=70:30の混率(重量比)で用いた。また、カルボジイミド基を備えた化合物は、(PBT+水酸化マグネシウム粉末):カルボジイミド基を備えた化合物=100:2の混率(重量比)で用いた。作製したマスターバッチは、カルボジイミド基を備えた化合物を2/102で含有している。短軸混練機における加工温度は、例えば、「投入直後250度-中間270度-中間280度-吐出口230度」などのように、230以上280度以下の範囲に設定した。
【0025】
[比較例1]
比較例1として、カルボジイミド基を備えた化合物を用いない点を除き、実施例1と同様の方法で樹脂組成物を作製し、マスターバッチ化した。
【0026】
[考察]
図1は、実施例1で作製した樹脂組成物と比較例1で作製した樹脂組成物を並べてスマートフォンで撮影した写真である。図1において、向かって左側に映るマスターバッチ(ものさしのおおよそ0mmから5mmの範囲にある樹脂組成物)が、比較例1に係る樹脂組成物を用いて作製したマスターバッチである。また、図1において、向かって右側に映るマスターバッチ(ものさしのおおよそ5mmから12mmの範囲にある樹脂組成物)が実施例1に係る樹脂組成物を用いて作製したマスターバッチである。図1の右側に映る実施例1で作製した樹脂組成物の重量は、図1の左側に映る比較例1で作製した樹脂組成物の重量と同じであり、両者はともに5gである。
【0027】
図2は、図1に映る、実施例1に係る樹脂組成物を用いて作製したマスターバッチの拡大写真である。図3は、図1に映る、比較例1に係る樹脂組成物を用いて作製したマスターバッチの拡大写真である。
【0028】
図1乃至図3で写真に示されているとおり、比較例1に係る樹脂組成物においては発泡現象が生じているのに対し、実施例1に係る樹脂組成物においては、このような発泡現象が抑制されている。
【0029】
なお、実施例1のマスターバッチを用いて樹脂成形品(最終製品)を製造する場合には、例えば、熱可塑性樹脂100重量部に対して、2重量部以上10重量部以下の実施例1のマスターバッチを添加し(つまり、熱可塑性樹脂に対して、実施例1のマスターバッチを2%から30%添加する)、さらに状況に応じて他の機能剤(難燃剤)を添加することが好ましい。
【0030】
[別の実施形態]
別の実施形態に係る樹脂組成物は、水酸化マグネシウムを含有せず、熱可塑性樹脂と、カルボジイミド基を備えた化合物と、を含有し、熱可塑性樹脂100重量部に対し、25重量部以上のカルボジイミド基を備えた化合物を含有する樹脂組成物である。このような樹脂組成物によれば、カルボジイミド基を備えた化合物を容易に樹脂成形品に混ぜることを可能とする樹脂組成物を提供することができる。また、このような別の実施形態に係る樹脂組成物をリン系難燃剤混合の樹脂組成物と併用することにより、リン系難燃剤混合の樹脂組成物の加水分解を抑制することができる。別の実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、加熱、圧縮加圧、及び混錬することにより作製することができる。
【0031】
以上、実施形態及び実施例について説明したが、これらの説明は一例を示すものであり、これらの説明によって請求の範囲に記載された構成は何ら限定されるものではない。上記の説明と異なる形態であっても、請求の範囲に記載された構成を備える形態であれば、本発明の効果を奏するものであり、本発明に含まれる。
図1
図2
図3