(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108677
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】撮影支援装置、撮影支援方法および撮影支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G01M 15/02 20060101AFI20230731BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20230731BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20230731BHJP
H04N 23/63 20230101ALI20230731BHJP
H04N 23/667 20230101ALI20230731BHJP
【FI】
G01M15/02
F02D45/00 368S
H04N5/232 220
H04N5/232 939
H04N5/232 450
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009840
(22)【出願日】2022-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 武司
(72)【発明者】
【氏名】大林 航
(72)【発明者】
【氏名】安藤 赳虎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 孝
(72)【発明者】
【氏名】野上 哲男
【テーマコード(参考)】
2G087
3G384
5C122
【Fターム(参考)】
2G087AA01
2G087AA12
2G087AA14
2G087BB39
2G087CC02
2G087CC38
2G087EE11
3G384DA61
5C122DA12
5C122EA48
5C122FA05
5C122FH11
5C122FK34
5C122FK37
5C122FK41
5C122HA86
5C122HB01
5C122HB05
(57)【要約】
【課題】 検査対象のエンジンの状態診断に適した画像を容易に撮影することを可能にする撮影支援装置、撮影支援方法および撮影支援プログラムを提供する。
【解決手段】 カメラの位置および姿勢を撮影者に対して指示する撮影支援装置であって、エンジンの構造情報を記憶する記憶器と、演算器と、を備え、演算器は、プレ撮影による撮影画像からエンジンに含まれる所定の対象物の形状特徴量を求め、この求めた形状特徴量と、エンジンの構造情報とカメラの基準位置および基準姿勢とに基づいて定められる撮影画像における対象物の基準特徴量とに基づいて、撮影時のカメラの位置および姿勢が許容範囲内であるか否かを判定する判定処理を行い、許容範囲内ではない場合に、カメラの位置および姿勢が許容範囲内になるようにカメラの指示出力部にカメラの位置および姿勢のうちの少なくとも一方を変更する操作者への指示を出力させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掃気ポートを有するシリンダと前記シリンダ内を摺動するピストンとを備えたユニフロー掃気式2サイクルのエンジンの前記掃気ポートを通して前記ピストンをカメラで撮影する際に、前記カメラの位置および姿勢を撮影者に対して指示する撮影支援装置であって、
前記エンジンの構造情報を記憶する記憶器と、
演算器と、を備え、
前記演算器は、
記録用画像を撮影する本撮影の前後に画像を繰返し撮影するプレ撮影を前記カメラに開始させ、
プレ撮影による撮影画像から前記エンジンに含まれる所定の対象物の形状特徴量を求め、この求めた形状特徴量と、前記エンジンの構造情報と前記対象物を撮影する際の前記カメラの基準位置および基準姿勢とに基づいて定められる撮影画像における前記対象物の基準特徴量とに基づいて、撮影時の前記カメラの位置および姿勢が前記カメラの基準位置および基準姿勢に対する許容範囲内であるか否かを判定する判定処理を行い、
前記判定処理の結果、前記カメラの位置および姿勢が前記許容範囲内ではない場合に、前記カメラの位置および姿勢が前記許容範囲内になるように前記カメラの指示出力部に前記カメラの位置および姿勢のうちの少なくとも一方を変更する操作者への指示を出力させる、
撮影支援装置。
【請求項2】
前記判定処理は、
プレ撮影による撮影画像から求めた形状特徴量と前記基準特徴量とを比較し、比較した両者の差分が所定範囲内であるか否かを判定することによって、前記カメラの位置および姿勢が前記許容範囲内であるか否かを判定する、
請求項1に記載の撮影支援装置。
【請求項3】
前記判定処理は、
プレ撮影による撮影画像から求めた形状特徴量と前記基準特徴量とを比較し、比較した両者の差分と、前記カメラの基準位置および基準姿勢とに基づいて、撮影時の前記カメラの位置および姿勢を推定し、推定した前記カメラの位置および姿勢が前記許容範囲内であるか否かを判定する、
請求項1に記載の撮影支援装置。
【請求項4】
前記カメラは、プレ撮影による撮影画像を表示する表示部を備えており、
前記演算器は、
前記カメラの前記表示部に、プレ撮影による撮影画像に撮影者への指示を重ねて表示させる、
請求項1~3のいずれかに記載の撮影支援装置。
【請求項5】
前記演算器は、
前記判定処理の結果、前記カメラの位置および姿勢が前記許容範囲内である場合に、前記カメラに本撮影を行わせる、
請求項1~4のいずれかに記載の撮影支援装置。
【請求項6】
前記演算器は、
遠写モードと接写モードとの2つの動作モードを有し、
前記遠写モードのときに、前記対象物を前記掃気ポートの全体部分とし、前記判定処理を行い、
前記接写モードのときに、前記対象物を前記掃気ポートの一部分を通して見える前記ピストンとし、前記判定処理を行う、
請求項1~5のいずれかに記載の撮影支援装置。
【請求項7】
前記演算器は、
第1撮影画像より前または後に撮影された第2撮影画像において特定される物体から前記第1撮影画像に含まれる物体を識別する、
請求項1~6のいずれかに記載の撮影支援装置。
【請求項8】
掃気ポートを有するシリンダと前記シリンダ内を摺動するピストンとを備えたユニフロー掃気式2サイクルのエンジンの前記掃気ポートを通して前記ピストンをカメラで撮影する際に、前記カメラの位置および姿勢を撮影者に対して指示する撮影支援装置であって、
記録用画像を撮影する本撮影の前後に画像を繰返し撮影するプレ撮影を前記カメラに開始させ、
プレ撮影による撮影画像から前記エンジンに含まれる所定の対象物の形状特徴量を求め、この求めた形状特徴量と、前記エンジンの構造情報と前記対象物を撮影する際の前記カメラの基準位置および基準姿勢とに基づいて定められる撮影画像における前記対象物の基準特徴量とに基づいて、撮影時の前記カメラの位置および姿勢が前記カメラの基準位置および基準姿勢に対する許容範囲内であるか否かを判定する判定処理を行い、
前記判定処理の結果、前記カメラの位置および姿勢が前記許容範囲内ではない場合に、前記カメラの位置および姿勢が前記許容範囲内になるように前記カメラの指示出力部に前記カメラの位置および姿勢のうちの少なくとも一方を変更する操作者への指示を出力させる、
撮影支援方法。
【請求項9】
掃気ポートを有するシリンダと前記シリンダ内を摺動するピストンとを備えたユニフロー掃気式2サイクルのエンジンの前記掃気ポートを通して前記ピストンをカメラで撮影する際に、前記カメラの位置および姿勢を撮影者に対して指示する撮影支援プログラムであって、
コンピュータを、
記録用画像を撮影する本撮影の前後に画像を繰返し撮影するプレ撮影を前記カメラに開始させ、
プレ撮影による撮影画像から前記エンジンに含まれる所定の対象物の形状特徴量を求め、この求めた形状特徴量と、前記エンジンの構造情報と前記対象物を撮影する際の前記カメラの基準位置および基準姿勢とに基づいて定められる撮影画像における前記対象物の基準特徴量とに基づいて、撮影時の前記カメラの位置および姿勢が前記カメラの基準位置および基準姿勢に対する許容範囲内であるか否かを判定する判定処理を行い、
前記判定処理の結果、前記カメラの位置および姿勢が前記許容範囲内ではない場合に、前記カメラの位置および姿勢が前記許容範囲内になるように前記カメラの指示出力部に前記カメラの位置および姿勢のうちの少なくとも一方を変更する操作者への指示を出力させるように機能させる、
撮影支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮影支援装置、撮影支援方法および撮影支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶用2サイクルディーゼルエンジン等の大型のエンジンの検査においては、運用時においてエンジンの性能を維持するためにシリンダコンディションの定期的な確認が重要である。シリンダコンディションは、例えば、ピストンの上下運動により摺動するピストン、シリンダライナ等を含む摺動部品、例えば、ピストン、シリンダライナ、シリンダカバー等を含む燃焼室構成部品、または、注油システムの状態を意味する。しかし、船舶用の大型のエンジンにおいては、ピストンも大きいため、シリンダからピストンを取り出すことが容易ではない。そのため、このようなエンジンにおいてシリンダコンディションを確認するために、シリンダの側面に設けられた掃気ポートからシリンダ内部のピストンの画像を撮影し、その撮影画像からピストンおよびピストンに組み付けられたピストンリングの状態記録または状態診断を行っている。
【0003】
より具体的には、このようなエンジンのシリンダの内部空間は、シリンダの下方部分の側面に形成された掃気ポートを介して掃気管に接続されている。掃気管は、人が入れるぐらいの大きさを有している。船舶の乗組員または整備員等の撮影者は、エンジン停止時に掃気管内に入り、掃気ポート越しにシリンダ内のピストンおよびピストンリングを撮影する。
【0004】
特許文献1には、次のような撮影指示装置が記載されている。この撮影指示装置は、複数の物体のそれぞれについて、複数の撮影方向のそれぞれから当該物体を撮影した画像を予め記憶しておいて、この画像の中から、撮影指示装置は、取得した対象画像に類似する画像を検索する。撮影指示装置は、検索した画像が複数存在する場合には、検索した画像のそれぞれに対応する物体を当該画像の撮影方向から所定方向に所定角度分異なる撮影方向から撮影した画像同士の類似度を算出する。次に、撮影指示装置は、算出した類似度に基づいて、対象画像の撮影方向から所定方向に所定角度分異なる撮影方向からの対象物の撮影指示を出力する。この特許文献1の技術は、撮影した物体を複数の物体の中から特定するための技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述のピストンおよびピストンリングの撮影は、撮影者個人の判断でおこなわれるので、撮影したときのカメラの位置および撮影方向等が適切でないと、撮影画像がエンジンの状態診断に適した画像になるとは限らない。また、撮影者が、どのような撮影画像がエンジンの状態診断に適した画像であるかを十分に把握できていない場合もある。
【0007】
本開示は上記のような課題を解決するためになされたもので、検査対象のエンジンの状態診断に適した画像を容易に撮影することを可能にする撮影支援装置、撮影支援方法および撮影支援プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示のある態様に係る撮影支援装置は、掃気ポートを有するシリンダと前記シリンダ内を摺動するピストンとを備えたユニフロー掃気式2サイクルのエンジンの前記掃気ポートを通して前記ピストンをカメラで撮影する際に、前記カメラの位置および姿勢を撮影者に対して指示する撮影支援装置であって、前記エンジンの構造情報を記憶する記憶器と、演算器と、を備え、前記演算器は、記録用画像を撮影する本撮影の前後に画像を繰返し撮影するプレ撮影を前記カメラに開始させ、プレ撮影による撮影画像から前記エンジンに含まれる所定の対象物の形状特徴量を求め、この求めた形状特徴量と、前記エンジンの構造情報と前記対象物を撮影する際の前記カメラの基準位置および基準姿勢とに基づいて定められる撮影画像における前記対象物の基準特徴量とに基づいて、撮影時の前記カメラの位置および姿勢が前記カメラの基準位置および基準姿勢に対する許容範囲内であるか否かを判定する判定処理を行い、前記判定処理の結果、前記カメラの位置および姿勢が前記許容範囲内ではない場合に、前記カメラの位置および姿勢が前記許容範囲内になるように前記カメラの指示出力部に前記カメラの位置および姿勢のうちの少なくとも一方を変更する操作者への指示を出力させる。
【0009】
本開示のある態様に係る撮影支援方法は、掃気ポートを有するシリンダと前記シリンダ内を摺動するピストンとを備えたユニフロー掃気式2サイクルのエンジンの前記掃気ポートを通して前記ピストンをカメラで撮影する際に、前記カメラの位置および姿勢を撮影者に対して指示する撮影支援装置であって、記録用画像を撮影する本撮影の前後に画像を繰返し撮影するプレ撮影を前記カメラに開始させ、プレ撮影による撮影画像から前記エンジンに含まれる所定の対象物の形状特徴量を求め、この求めた形状特徴量と、前記エンジンの構造情報と前記対象物を撮影する際の前記カメラの基準位置および基準姿勢とに基づいて定められる撮影画像における前記対象物の基準特徴量とに基づいて、撮影時の前記カメラの位置および姿勢が前記カメラの基準位置および基準姿勢に対する許容範囲内であるか否かを判定する判定処理を行い、前記判定処理の結果、前記カメラの位置および姿勢が前記許容範囲内ではない場合に、前記カメラの位置および姿勢が前記許容範囲内になるように前記カメラの指示出力部に前記カメラの位置および姿勢のうちの少なくとも一方を変更する操作者への指示を出力させる。
【0010】
本開示のある態様に係る撮影支援プログラムは、掃気ポートを有するシリンダと前記シリンダ内を摺動するピストンとを備えたユニフロー掃気式2サイクルのエンジンの前記掃気ポートを通して前記ピストンをカメラで撮影する際に、前記カメラの位置および姿勢を撮影者に対して指示する撮影支援プログラムであって、コンピュータを、記録用画像を撮影する本撮影の前後に画像を繰返し撮影するプレ撮影を前記カメラに開始させ、プレ撮影による撮影画像から前記エンジンに含まれる所定の対象物の形状特徴量を求め、この求めた形状特徴量と、前記エンジンの構造情報と前記対象物を撮影する際の前記カメラの基準位置および基準姿勢とに基づいて定められる撮影画像における前記対象物の基準特徴量とに基づいて、撮影時の前記カメラの位置および姿勢が前記カメラの基準位置および基準姿勢に対する許容範囲内であるか否かを判定する判定処理を行い、前記判定処理の結果、前記カメラの位置および姿勢が前記許容範囲内ではない場合に、前記カメラの位置および姿勢が前記許容範囲内になるように前記カメラの指示出力部に前記カメラの位置および姿勢のうちの少なくとも一方を変更する操作者への指示を出力させるように機能させる。
【発明の効果】
【0011】
本開示は、以上に説明した構成を有し、検査対象のエンジンの状態診断に適した画像を容易に撮影することを可能にする撮影支援装置、撮影支援方法および撮影支援プログラムを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る撮影支援装置を内蔵したカメラの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、検査対象のエンジンの例を示す図である。
【
図3】
図3は、掃気ポート越しにピストンおよびピストンリングを撮影したときの撮影画像の一例を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、遠写モードの場合の撮影支援装置の動作の一例の概略を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、接写モードの場合の撮影支援装置の動作の一例の概略を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、遠写モードの場合の撮影支援装置の動作の説明に用いる図である。
【
図7】
図7は、遠写モードの場合の撮影支援装置の動作の説明に用いる図である。
【
図8】
図8は、遠写モードの場合の撮影支援装置の動作の説明に用いる図である。
【
図9】
図9は、遠写モードの場合の撮影支援装置の動作の説明に用いる図である。
【
図10】
図10は、接写モードの場合の撮影支援装置の動作の説明に用いる図である。
【
図11】
図11は、接写モードの場合の撮影支援装置の動作の説明に用いる図である。
【
図12】
図12は、接写モードの場合の撮影支援装置の動作の説明に用いる図である。
【
図13】
図13は、接写モードの場合の撮影支援装置の動作の説明に用いる図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、図面は理解しやすくするために、それぞれの構成要素を模式的に示したもので、形状及び寸法比等については正確な表示ではない場合がある。
【0014】
(実施形態)
図1は、本開示の一実施形態に係る撮影支援装置を内蔵したカメラの概略構成を示すブロック図である。
【0015】
カメラ1は、例えばスマートフォンまたはデジタルカメラである。カメラ1は、撮像部2、表示部3、入力部4、撮影画像のデータを記憶する画像記憶部5、及び制御部6を備えている。
【0016】
撮像部2は、レンズ及び撮像素子等を有する。表示部3は、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイ等で構成される。入力部4は、表示部3の画面上に設置されたタッチパネルからなり、撮影者の操作による入力信号を制御部6の演算器7へ出力する。なお、入力部4は、上記タッチパネルに限らず、他の様々な構成を用いることができる。他の一例として、入力部4は、マイク等を備え、撮影者の音声操作による入力信号を制御部6の演算器7へ出力するように構成してもよい。
【0017】
制御部6は、カメラ本来の機能を実現するための演算器7及び記憶器8と、撮影支援装置11を構成する演算器12及び記憶器13とを有する。演算器7および演算器12は、例えばマイクロコントローラ等のコンピュータを備えている。例えば、演算器7,12は、CPU、RAM等のメモリ等を備えている。なお、演算器7および演算器12は共通の演算装置として構成されていてもよい。また、記憶器8および記憶器13は共通の記憶装置として構成されていてもよい。
【0018】
撮影者の操作による入力部4からの入力信号に応じて、演算器7が、記憶器8に記憶されている制御プログラムを実行することにより、カメラ1は、周知のプレ撮影及び本撮影を行う。プレ撮影では、本撮影の前後に撮像部2で動画として撮影、または所定時間間隔で繰返し撮影し、撮影画像をスルー画像としてリアルタイムで表示部3に表示させる。本撮影では、シャッター操作によってその操作タイミングで撮像部2で撮影された撮影画像を画像記憶部5に記憶させる。つまり、本撮影による撮影画像は記録用画像として記憶される。撮影者は、プレ撮影にて表示部3に表示されるスルー画像を見ながらシャッター操作を行うことにより所望する撮影を行うことができる。なお、プレ撮影をライブビュー撮影と呼び、スルー画像をライブビュー画像と呼んでもよい。
【0019】
撮影支援装置11の記憶器13には、撮影支援プログラム及びエンジンの構造情報等が記憶される。つまり、撮影支援装置11は、記憶器13に撮影支援プログラムがアプリケーションプログラムとしてインストールされ、演算器12が撮影支援プログラムを実行することにより実現される。撮影者は、カメラ1を用いて船舶に搭載されている検査対象のエンジンを撮影する。このときに撮影支援装置11を機能させる。なお、エンジンの「構造情報」は、CAD図面データなどから座標値が入力され、任意座標系で形状が再構築できるようにした情報を含む。
【0020】
なお、本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、または、それらの組み合わせを含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本明細書において、回路、ユニット、または手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、ユニット、または手段はハードウェアとソフトウェアとの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェアまたはプロセッサの構成に使用される。
【0021】
[検査対象のエンジンの構成]
図2は、検査対象のエンジンの例を示す図である。
図2に示すエンジン100は、船舶の推進用主機である大型のユニフロー掃気式2サイクルディーゼルエンジンである。2サイクルエンジンは、2ストロークエンジンとも称される。
【0022】
エンジン100は、鉛直方向に延びる複数のシリンダ110を有している。なお、
図2には、1つのシリンダ110のみが示されている。特に、ユニフロー掃気式2サイクルエンジンにおいて、各シリンダ110は、下方部分の周面に掃気ポート120を有し、上方部分に排気ポート130を有している。エンジン100は、シリンダ110ごとに、ピストン140、燃料噴射弁150、および排気弁160を備えている。ピストン140は、円筒状のシリンダ110の内径に応じた外径を有する円柱形状を有している。ピストン140は、掃気ポート120を上下方向に横切るようにしてシリンダ110内を摺動する。すなわち、ピストン140の摺動方向は鉛直方向である。ピストン140には、周面に環状のリング溝が形成されており、そのリング溝に環状のピストンリング210が組み付けられている。また、上端にピストン140が取り付けられたピストンロッド145の下端部分は、コネクティングロッド170を介してクランク軸180に連結されている。
【0023】
燃料噴射弁150は、シリンダ110の上端部分に位置しており、燃料供給装置190から燃料が供給される。燃料供給装置190は、燃料噴射弁150における燃料噴射パターンおよび燃料噴射タイミングを変更することができる。排気弁160は、排気ポート130を開閉する弁であって、排気弁駆動装置200によって駆動される。排気弁駆動装置200は、排気弁160の開閉パターンおよび開閉タイミングを変更することができる。
【0024】
シリンダ110の内部空間は、掃気ポート120を介して掃気管220に接続されている。掃気管220と掃気ポート120とは、掃気室230を介して接続されている。掃気管220は、水平方向に延び、複数のシリンダ110に接続されている。エンジン100には、掃気管220を通じて空気が掃気として供給される。
【0025】
掃気管220には、過給機240が接続されている。過給機240は、エンジン100に供給される空気を断熱圧縮するように構成されている。過給機240は、複数の圧縮機翼を備え、回転軸250回りに回転することにより、外部から導入された空気を圧縮する圧縮機260と、圧縮機260の回転軸250に連結され、圧縮機260の回転動力を生成するタービン270と、を備えている。
【0026】
圧縮機260で圧縮された空気は、掃気管220および掃気室230を介してエンジン100に掃気として供給される。エンジン100での燃焼により排気ポート130から排出された排ガスは、過給機240のタービン270に流入される。タービン270は、複数のタービン翼を備え、流入された排ガスによってタービン270が回転軸250回りに回転することにより、圧縮機260が回転する。
【0027】
このような船舶用のエンジン100において、掃気管220は、人が入れるぐらいの大きさを有している。船舶の乗組員または整備員等の撮影者は、エンジン停止時に所定のメンテナンスハッチから掃気管220または掃気室230内に入り、掃気ポート120越しにシリンダ110内のピストン140およびピストンリング210を撮影する。エンジン100は、エンジン100の停止時におけるピストン140の鉛直方向位置を調整可能に構成されている。ピストン140およびピストンリング210の撮影に際し、ピストン140は、ピストン140およびピストンリング210が掃気ポート120越しに見える検査位置P1に位置するように調整される。例えば、検査位置P1は、ピストン140の移動範囲の下限位置または下限位置から所定距離上方の位置に設定される。
【0028】
[撮影画像におけるエンジンの見え方の一例]
図3は、掃気ポート越しにピストンおよびピストンリングを撮影したときの撮影画像の一例を模式的に示す図である。
図3に示すように、撮影者が上述したように撮影した場合、撮影画像Gは、少なくとも1つの掃気ポート120と、掃気ポート120を通して見えるピストン140およびピストンリング210の一部とを含む。
図3の例では、撮影画像Gには、3つの掃気ポート120が写っている。掃気ポート120は、鉛直方向、すなわち、ピストン140の摺動方向に延びる長円形状を有している。長円形状は、上端部および下端部の円弧と、2つの円弧間を結ぶ直線部分とで構成される。言い換えると、掃気ポート120は、長手方向に直線部分を有する長円形状を有している。
【0029】
また、
図3の例では、撮影画像Gには、ピストン140の周面に組み付けられた4つのピストンリング210と、ピストン140の周面における露出部分である5つのリングランド280とが写っている。ピストンリング210の外周面は、シリンダ110の内周面に接して摺動するため、撮影画像Gにおいて、ピストンリング210は、リングランド280より高輝度である。一方、リングランド280の外周面は、シリンダ110の内周面に接しないことにより、燃焼カス、燃料残渣等が外周面に堆積するため、撮影画像Gにおいて、リングランド280は、ピストンリング210より低輝度である。このため、撮影画像Gにおいては、掃気ポート120を通して、複数の四角形状のピストンリング部分と複数の四角形状のリングランド部分とが鉛直方向に交互に並んで見える。
【0030】
また、掃気ポート120の側壁120a、120bは、掃気がスムーズに流通するように、シリンダ110の径方向に対して周方向に所定角度傾斜した方向に延びている。例えば、掃気ポート120の径方向外端部が径方向内端部に対して、シリンダ110の中心軸線に関して時計回りに進んだ位置に位置するように、掃気ポート120が向いている。
【0031】
そのため、掃気ポート120越しにシリンダ110内のピストン140およびピストンリング210を撮影する際に、ピストンリング210およびリングランド280に掃気ポート120の影がかからないようにするために、撮影者は、掃気ポート120の向きに合わせてシリンダ110の径方向に対して斜め角度から撮影する必要がある。また、撮影者がどのような撮影画像が画像診断に適しているのかをどの程度把握しているかも撮影者によってまちまちである。そのため、撮影者個人の判断による撮影では、エンジン100の状態診断に適した画像を撮影できるとは限らない。そこで、撮影支援装置11は、撮影者がエンジン100の状態診断に適した画像を撮影できるように指示を行う。
【0032】
次に、撮影支援装置11の動作について説明する。撮影支援装置11の動作は、演算器12の処理によって実現される。演算器12は、演算器7に指示を与えてカメラ1にプレ撮影及び本撮影等を行わせることができる。本例では、本撮影は、撮影者がシャッター操作を行うことなく、演算器12の指示によって自動的に行われる。そして、本撮影による撮影画像は、記録用画像として画像記憶部5に記憶される。記録用画像は、あとでエンジンの状態診断を行う際に用いられる。
【0033】
演算器12は、遠写モードと接写モードとの2つの動作モードを有する。遠写モードは接写モードに対してカメラ1から撮影対象物までの距離が長い場合の撮影モードである。なお、遠写モードや接写モードの過程で取得した画像をスルー画像としている。
【0034】
図4は、カメラ1を用いて掃気ポート120を撮影する遠写モードの場合の撮影支援装置11の動作、すなわち演算器12の処理の一例の概略を示すフローチャートである。
図6~
図9は、遠写モードの場合の撮影支援装置11の動作の説明に用いる図である。なお、記憶器13には、検査対象のエンジン100の構造情報が記憶されている。エンジン100の構造情報には、掃気ポート120の形状および寸法を含む掃気ポート120の構造情報と、シリンダ110の直径及びピストンリング210の幅を含むシリンダ110の構造情報とが含まれる。
【0035】
撮影者が入力部4を操作して撮影支援装置11を起動させると、例えば遠写モードが初期設定されている。そして遠写モードにおいて、撮影支援装置11はカメラ1にプレ撮影を開始させる(ステップS1)。プレ撮影では、撮像部2で撮影される画像がスルー画像としてリアルタイムで表示部3に表示される。遠写モードにおける撮影対象物は、掃気ポート120の全体部分である。具体的には、撮影対象物は、掃気ポート120の全体の輪郭部分としてもよいし、掃気ポート120全体を通して見えるピストン140及び複数のピストンリング210としてもよい。
【0036】
撮影支援装置11は、遠写モードのときには、例えば
図6に示すように、掃気ポート120の形状に応じた掃気ポート枠31をスルー画像に重ねて表示部3の画面中央に表示させる。掃気ポート枠31は、エンジン100の構造情報の1つである掃気ポート120の構造情報に基づいて定められる掃気ポート120の撮影画像上の基準の輪郭である。この掃気ポート枠31は、撮影画像の掃気ポート120の輪郭が掃気ポート枠31と一致したときに撮影された画像が、エンジン100の状態診断に最適な画像となるように、定められている。すなわち、撮影者は、表示部3に表示される撮影画像の掃気ポート120の輪郭を掃気ポート枠31に合わせるようにすればよい。
【0037】
上記のように、エンジン100の状態診断に最適な撮影対象物(ここでは掃気ポート120全体)の画像を撮影することができるカメラ1の位置および姿勢を、上記撮影対象物に対するカメラ1の基準位置および基準姿勢として定めている。
【0038】
なお、カメラ1の位置は、撮影対象物に対するカメラ1の3次元位置のことであり、より具体的に言えば、撮影対象物を基準にしたカメラ1の上下方向、左右方向及び遠近方向の位置である。また、カメラ1の姿勢には、カメラ1の左右方向の傾き具合(正面に向かってねじれ方向の傾斜角度)と撮影方向であるカメラ1の向き(正面に向かって上下左右方向の傾斜角度)とが含まれる。
【0039】
ここで、例えば、カメラ1が所定の撮影対象物に対して予め定められた基準位置および基準姿勢である場合に、エンジン100の構造情報に基づいて計算され、カメラ1で撮影される撮影画像中における上記撮影対象物の画像に含まれる二次元情報を「基準特徴量」とする。また、実際にカメラ1で撮影された撮影画像中における上記撮影対象物の画像に含まれる二次元情報を「形状特徴量」とする。そして、これら2つの特徴量を含む画像を重ね合わせたときの特徴量同士の距離や変形量、角度などの相対関係を数値としてあらわしたものを、上記基準特徴量と上記形状特徴量との「差分」とする。
【0040】
撮影支援装置11は、撮像部2から遠写モードにおけるプレ撮影での撮影画像を取得するたびに、撮影画像における掃気ポート120の形状特徴量を求める。そして、この求めた形状特徴量と、掃気ポート120の基準特徴量とに基づいて、撮影時のカメラ1の位置および姿勢がカメラ1の基準位置および基準姿勢に対する許容範囲内であるか否かを判定する(ステップS2:判定処理)。ここで、本例では、ステップS2を、撮影画像における掃気ポート120の形状特徴量と、掃気ポート120の基準特徴量との差分が、所定範囲からなる許容範囲内であるか否かを判定することにより、撮影時のカメラ1の位置および姿勢が許容範囲内であるか否かを判定する。すなわち、上記差分が許容範囲内であることが、カメラ1の位置および姿勢が許容範囲内であることである。無論、上記差分に関する許容範囲と、カメラ1の位置および姿勢に関する許容範囲とは異なるものである。掃気ポート120の基準特徴量は、例えば掃気ポート枠31に関する情報であり、掃気ポート120の構造情報とカメラ1の基準位置および基準姿勢とに基づいて定められる。
【0041】
なお、撮影支援装置11は、スルー画像のデータを取得し、画像処理によって少なくとも掃気ポート120の上下方向または略上下方向に延びる直線部分123,124(
図8参照)の輪郭を検出して掃気ポート120を認識する。つまり、撮影画像から掃気ポート120の2つの直線部分123,124の輪郭または全体の輪郭を検出することで掃気ポート120を認識する。
【0042】
撮影支援装置11は、ステップS2において、カメラ1の位置および姿勢が許容範囲内ではないと判定した場合、すなわち、上記差分が許容範囲内ではないと判定した場合には、上記差分に応じてカメラ1の表示部3にカメラ1の位置および姿勢のうちの少なくとも一方を変更する撮影者への指示をリアルタイムで出力させる(ステップS3)。この撮影者への指示は、上記差分が許容範囲内になるように上記差分を小さくするための指示であり、例えば、文字、記号、または文字および記号によってスルー画像に重ねて表示部3に表示される。ここで表示部3は指示出力部として機能する。
【0043】
具体的には、撮影支援装置11は、例えば、
図6に示すように、撮影画像の掃気ポート120の直線部分の延伸方向が掃気ポート枠31の直線部分の延伸方向に対して傾いており、その傾き角度が許容範囲内ではない場合には、その傾き角度が所定の許容範囲内になるようにカメラ1の姿勢を回転させる指示の記号D1、D2をスルー画像に重ねて表示部3に表示させる。この場合、撮影画像の掃気ポート120の直線部分の延伸方向と所定方向とのなす角度αが、撮影画像における形状特徴量の一例であり、掃気ポート枠31の直線部分の延伸方向と上記所定方向とのなす角度βが基準特徴量の一例であり、角度αとβとの差分である上記傾き角度が形状特徴量と基準特徴量との差分の一例である。
【0044】
また、撮影支援装置11は、
図6に示すように撮影画像の掃気ポート120が掃気ポート枠31からはみ出ている場合、すなわち、カメラ1が掃気ポート120に接近しすぎている場合には、カメラ1を掃気ポート120から遠ざける指示を表示部3に表示させるようにしてもよい。逆に、カメラ1が掃気ポート120から遠すぎる場合には、カメラ1を掃気ポート120に近づける指示を表示部3に表示させるようにしてもよい。ここで、カメラ1を遠ざける指示およびカメラ1を近づける指示はカメラ1の位置を変更する指示の一例である。この場合、例えば、撮影画像の掃気ポート120の左右の直線部分の間隔である第1間隔を形状特徴量とし、掃気ポート枠31の左右の直線部分の間隔である基準間隔を基準特徴量とすることができる。そして、第1間隔と基準間隔とを比較し、第1間隔が基準間隔よりも小さく、かつ両者の差分が許容値よりも大きい場合には、撮影支援装置11は、カメラ1を遠ざける指示を表示部3に表示させる。逆に、第1間隔が基準間隔よりも大きく、かつ両者の差分が許容値よりも大きい場合には、撮影支援装置11は、カメラ1を近づける指示を表示部3に表示させる。許容値以下の範囲が許容範囲である。
【0045】
また、撮影支援装置11は、
図8のように、撮影画像の掃気ポート120の上の円弧部分を含む円121と下の円弧部分を含む円122とを検出するとともに、直線部分123,124を検出する。そして、上下の円121、122の大きさが異なる場合、すなわち、円121、122の径が異なる場合には、カメラ1の上下方向の位置の変更の指示を表示部3に表示させる。例えば、
図8の場合は、上の円121の径が掃気ポート枠31の上の円弧の径よりも小さく、これらの径の差分が許容値よりも大きい場合であり、かつ、下の円122が掃気ポート枠31の下の円弧の径よりも大きく、これらの径の差分が許容値よりも大きい場合である。この場合には、説明
図M1に示されるようにカメラ1の位置を上方へ変更して撮影方向を水平にする指示を表示部3に表示させる。逆の場合には、カメラ1の位置を下方へ変更して撮影方向を水平にする指示を表示部3に表示させる。なお、
図8では、理解しやすいように、対象となる1つの掃気ポート120のみを表示部3に図示している。
【0046】
上記
図8の場合の説明において、上と下の円121、122の径である撮影画像の掃気ポート120の上と下の円弧の径が、撮影画像における形状特徴量の一例であり、掃気ポート枠31の上と下の円弧の径が基準特徴量の一例であり、許容値以下の範囲が許容範囲である。なお、上と下の円121、122の径の差分を撮影画像における形状特徴量の一例とし、掃気ポート枠31の上と下の円弧の径の差分である0を基準特徴量の一例とする場合も考えられる。
【0047】
また、カメラ1の上下方向の位置が適正な位置となる場合には、撮影画像の掃気ポート120の左右の直線部分123,124が平行となる。撮影支援装置11は、直線部分123,124が平行となり、撮影画像の掃気ポート120が掃気ポート枠31から左側にはみ出している場合には、カメラ1の位置を右方向へ寄せる指示を表示部3に表示させるようにしてもよい。逆に、撮影画像の掃気ポート120が掃気ポート枠31から右側にはみ出している場合には、カメラ1の位置を左方向へ寄せる指示を表示部3に表示させるようにしてもよい。この場合には、直線部分123,124の画像上の水平位置座標を撮影画像における形状特徴量とし、掃気ポート枠31の左右の直線部分の水平位置座標を基準特徴量としてもよい。
【0048】
そして、撮影支援装置11は、ステップS2において、カメラ1の位置および姿勢が許容範囲内であると判定した場合、すなわち、予め定められた全ての形状特徴量について、撮影画像における掃気ポート120の形状特徴量と、掃気ポート120の基準特徴量との差分が許容範囲内であると判定した場合に、カメラ1に本撮影を行わせる(ステップS4)。この際、例えば、
図7に示す対象の掃気ポート120の周辺領域R1の平均輝度が所定範囲の輝度となり、掃気ポート120の境界領域R2における掃気ポート120の境界部分が明確となるように、カメラ1のシャッタースピード及び焦点距離を調整して撮影する。この撮影画像は、ピストンリング210の領域およびリングランド280の領域が明確なものになり、画像記憶部5に記憶される。なお、
図7に示すように、任意の1つの掃気ポート120が画面中央の掃気ポート枠31にぴったりはまった状態は、全ての形状特徴量に関する差分が0になった状態である。
【0049】
さらに、撮影支援装置11は、
図9に示すように、撮影画像の掃気ポート120内における複数の各ピストンリング210の位置を検出し、ピストンリング210の配置情報を記憶する。この際、撮影支援装置11は、高輝度のピストンリング210とその上下の低輝度のリングランド280との境界となる直線を画像処理により検出し、高輝度の領域をピストンリング210として検出する。また、低輝度の領域をリングランド280として検出してもよい。各ピストンリング210およびリングランド280は、4本の直線からなる四角形を輪郭として検出される。
【0050】
上記ステップS2において、本例で用いる各形状特徴量に関する差分の許容範囲は、全ての形状特徴量について、撮影画像における掃気ポート120の形状特徴量と、掃気ポート120の基準特徴量との差分が許容範囲内であると判定したときに撮影された画像が、エンジン100の状態診断に好適な画像となるように定められている。
【0051】
上記遠写モードにおいて、撮影者は、表示部3の画面にスルー画像に重ねて表示された指示に基づいてカメラ1を適切な位置および姿勢にすればよいので、エンジン100の状態診断に適した掃気ポート120の画像を容易に撮影することができる。また、本例では、スルー画像に目標となる掃気ポート枠31が重ねて表示されるので、撮影者がカメラ1を適切な位置および姿勢にするのが容易になる。
【0052】
なお、上記ステップS2において、プレ撮影による撮影画像から求めた撮影対象物(掃気ポート120)の形状特徴量と基準特徴量との差分と、上記撮影対象物に対するカメラ1の基準位置および基準姿勢とに基づいて、撮影時のカメラ1の位置および姿勢を推定し、推定したカメラ1の位置および姿勢がカメラ1の基準位置および基準姿勢に対する許容範囲内であるか否かを判定するようにしてもよい。
【0053】
次に、
図5は、接写モードの場合の撮影支援装置11の動作、すなわち演算器12の処理の一例の概略を示すフローチャートである。
図10~
図13は、接写モードの場合の撮影支援装置11の動作の説明に用いる図である。
【0054】
例えば、遠写モードで本撮影が終了してから撮影者がカメラ1を掃気ポート120に近づけると、接写モードにおけるプレ撮影が開始される(ステップS11)。この接写モードにおいて撮影する対象物は、掃気ポート120の一部分を通して見えるピストン140である。具体的には、撮影対象物を、ピストン140に組み付けたピストンリング210としてもよいし、ピストン140の周面における露出部分であるリングランド280としてもよい。また、撮影対象物をピストンリング210とリングランド280の両方としてもよい。本例では、撮影対象物をピストンリング210とする。
【0055】
接写モードにおけるプレ撮影が開始(ステップS11)されると、また、本撮影(ステップS15)が終了した後には、撮影支援装置11は、例えば
図10に示すように、表示部3に表示するスルー画像上の撮影対象物に対してマークD3,D4を表示する。マークD3は、本撮影が終了した対象物であることを示し、マークD4は、本撮影が行われていない対象物であることを示す。撮影支援装置11は、遠写モードに続く接写モードにおけるプレ撮影の開始時には、遠写モードの本撮影後に記憶したピストンリング210の配置情報に基づいてマークD4を表示するようにしてもよい。このようなマークD3,D4を表示することにより、撮影者は、次に撮影するべきピストンリング210を容易に把握することができる。
【0056】
撮影者は、例えばマークD4が付された上から2番目のピストンリング210を撮影するために、カメラ1を接近させて同ピストンリング210をスルー画像のほぼ中央に位置させる。すると、撮影支援装置11は、同ピストンリング210を本撮影の対象物として選択し(ステップS12)、同ピストンリング210が今回の本撮影の対象物として選択されたことを示すマークD5をスルー画像上に表示する。なお、同ピストンリング210を選択するために同ピストンリング210がスルー画像のほぼ中央になるように誘導する指示をスルー画像上に表示させるようにしてもよい。
【0057】
そして、撮影支援装置11は、撮像部2から接写モードにおけるプレ撮影での撮影画像を取得するたびに、撮影画像における上記対象物として選択されたピストンリング210の形状特徴量を求める。そして、この求めた形状特徴量と、同ピストンリング210の基準特徴量とに基づいて、撮影時のカメラ1の位置および姿勢がカメラ1の基準位置および基準姿勢に対する許容範囲内であるか否かを判定する(ステップS13:判定処理)。ここで、本例では、ステップS13を、撮影画像における上記対象物として選択されたピストンリング210の形状特徴量と、同ピストンリング210の基準特徴量との差分が、所定範囲からなる許容範囲内であるか否かを判定することにより、撮影時のカメラ1の位置および姿勢が許容範囲内であるか否かを判定する。すなわち、上記差分が許容範囲内であることが、カメラ1の位置および姿勢が許容範囲内であることである。無論、上記差分に関する許容範囲と、カメラ1の位置および姿勢に関する許容範囲とは異なるものである。
【0058】
ピストンリング210の基準特徴量は、シリンダ110の構造情報とカメラ1の基準位置および基準姿勢とに基づいて定められる。カメラ1の基準位置および基準姿勢は、エンジン100の状態診断に最適な撮影対象物(ここではピストンリング210)の画像を撮影することができる撮影対象物に対するカメラ1の位置および姿勢として定められている。
【0059】
以下では、例えば
図13に示すように、シリンダ110の構造情報であるシリンダ110の直径及びピストンリング210の幅を含む情報等に基づいて定めることができるピストンリング210の撮影画像上の基準の輪郭を基準輪郭210Sとして説明する。また、カメラ1で実際に撮影されるピストンリング210の撮影画像における輪郭を撮影輪郭210Rとして説明する。ピストンリング210の基準輪郭210Sは、撮影画像のピストンリング210の撮影輪郭210Rが基準輪郭210Sと一致したときに撮影された画像が、エンジン100の状態診断に最適な画像となるように、定められる。なお、本例では、ピストンリング210の基準輪郭210Sは表示部3には表示されない。
【0060】
撮影支援装置11は、ステップS13において、カメラ1の位置および姿勢が許容範囲内ではないと判定した場合、すなわち、上記差分が許容範囲内ではないと判定した場合には、上記差分に応じてカメラ1の表示部3にカメラ1の位置および姿勢のうちの少なくとも一方を変更する撮影者への指示をリアルタイムで出力させる(ステップS14)。この撮影者への指示は、上記差分が許容範囲内になるように上記差分を小さくするための指示であり、例えば、文字、記号、または文字および記号によってスルー画像に重ねて表示部3に表示される。こここで表示部3は指示出力部として機能する。
【0061】
具体的には、例えば、
図12の説明
図M2に示すように、撮影画像のピストンリング210の撮影輪郭210R内の面積と同ピストンリング210の基準輪郭210S内の面積とを比較し、撮影輪郭210R内の面積が基準輪郭210S内の面積よりも小さく、かつ両者の差分が許容値よりも大きい場合には、撮影支援装置11は、カメラ1を近づける指示を表示部3に表示させる。逆に、ピストンリング210の撮影輪郭210R内の面積が基準輪郭210S内の面積よりも大きく、かつ両者の差分が許容値よりも大きい場合には、撮影支援装置11は、カメラ1を遠ざける指示を表示部3に表示させる。ピストンリング210の撮影輪郭210R内の面積及び基準輪郭210S内の面積は、それぞれ台形の面積として算出することができる。ここで、基準輪郭210S内の面積は、撮影されるピストンリング210が所望の解像度となるように設定されている。この場合、撮影輪郭210R内の面積が撮影画像における形状特徴量の一例であり、基準輪郭210S内の面積が基準特徴量の一例であり、許容値以下の範囲が許容範囲である。
【0062】
なお、掃気ポート120越しにシリンダ110内のピストン140およびピストンリング210を撮影する際に、ピストンリング210およびリングランド280に掃気ポート120の影がかからないようにするため、撮影者は、掃気ポート120の向きに合わせてシリンダ110の径方向に対して斜め角度から撮影する。この結果、撮影画像において掃気ポート120越しに写るピストンリング210およびリングランド280は、水平方向で遠近差が生じる。このような遠近差によってピストンリング210の撮影輪郭210Rの左側の辺よりも右側の辺の方が短くなる。なお、先に参照した
図10、
図11等では、遠近差による歪みを無視して図示している。
【0063】
また、ピストンリング210には、ピストン140がシリンダ110内で上下動することにより、鉛直方向に延びる摺動傷が形成される。エンジン100の状態を診断する際には、例えば、ピストンリング210の撮影画像から摺動傷を検出し、その摺動傷の状態からピストンリング210の良否判定等の診断が行われる。シリンダ110の径方向に対して所定角度斜めからピストンリング210を撮影することにより、撮影画像から摺動傷を検出しやすい。よって、ピストンリング210の基準輪郭210Sは、シリンダ110の径方向に対して所定角度斜めからピストンリング210を撮影することを想定し、水平方向の遠近差を考慮して台形状に定められる。上記所定角度は、掃気ポート120の向きに応じて斜めに設定される角度である。なお、
図13では、理解しやすいように、対象となる1つのピストンリング210のみを表示部3に図示している。
【0064】
また、撮影支援装置11は、
図13に示すように、ピストンリング210の撮影輪郭210Rの上下方向の長さc、dの比d/cを算出し、基準輪郭210Sの上下方向の長さa、bの比b/aと比較する。なお、cは、撮影輪郭210Rの頂点HとJの上下方向の距離であり、dは、撮影輪郭210Rの頂点IとKの上下方向の距離である。ここで、例えば、sを所定の正の値からなる許容値とすれば、(d/c)-(b/a)>sの場合には、撮影支援装置11は、カメラ1の位置を左方向へ寄せてやや右向きに撮影する指示を表示部3に表示させる。逆に、(d/c)-(b/a)<(-s)の場合には、カメラ1の位置を右方向へ寄せてやや左向きに撮影する指示を表示部3に表示させる。この場合、ピストンリング210の撮影輪郭210Rの上下方向の長さの比d/cが、撮影画像における形状特徴量の一例であり、基準輪郭210Sの上下方向の長さの比b/aが基準特徴量の一例である。また、(-s)以上で、s以下の範囲が許容範囲である。
【0065】
上記では、ピストンリング210の上下方向の長さc、dに着目して、ピストンリング210の撮影画像における形状特徴量と基準特徴量の差分が許容範囲内ではない場合に、カメラ1の水平方向の位置および撮影方向を指示するようにしている。この場合と同様にして、ピストンリング210の水平方向の長さL1、L2に着目して、ピストンリング210の撮影画像における形状特徴量と基準特徴量の差分が許容範囲内ではない場合に、カメラ1の上下方向の位置および撮影方向を指示するようにしていてもよい。なお、L1は、撮影輪郭210Rの頂点HとIの水平方向の距離であり、L2は、撮影輪郭210Rの頂点JとKの水平方向の距離である。この場合、例えば、ピストンリング210の撮影輪郭210Rの水平方向の長さの比L2/L1を撮影画像における形状特徴量とし、基準輪郭210Sの水平方向の長さの比を基準特徴量とすることができ、基準特徴量は1である。例えば、tを所定の正の値からなる許容値とすれば、(L2/Ll)-1>tの場合には、撮影支援装置11は、カメラ1の位置を上方へ寄せて撮影方向を水平にする指示を表示部3に表示させる。逆に、(L2/Ll)-1<(-t)の場合には、カメラ1の位置を下方へ寄せて撮影方向を水平にする指示を表示部3に表示させる。この場合、(-t)以上で、t以下の範囲が許容範囲である。
【0066】
そして、撮影支援装置11は、ステップS13において、カメラ1の位置および姿勢が許容範囲内であると判定した場合、すなわち、予め定められた全ての形状特徴量について、撮影画像におけるピストンリング210の形状特徴量と、ピストンリング210の基準特徴量との差分が許容範囲内であると判定した場合に、カメラ1に本撮影を行わせる(ステップS15)。この際、ピストンリング210の領域が鮮明となるように、カメラ1のシャッタースピード及び焦点距離を調整して撮影し、その撮影画像を画像記憶部5に記憶させる。
【0067】
次に、撮影支援装置11は、ステップS16において、他に撮影対象物があるか否かを判定し、他に対象物がある場合にはステップS12に戻って次の撮影対象物を選択し、他に対象物がない場合には、接写モードを終了する。
【0068】
上記ステップS13において、本例で用いる各形状特徴量に関する差分の許容範囲は、全ての形状特徴量について、撮影画像におけるピストンリング210の形状特徴量と、ピストンリング210の基準特徴量との差分が許容範囲内であると判定したときに撮影された画像が、エンジン100の状態診断に好適な画像となるように定められている。
【0069】
上記接写モードにおいて、撮影者は、表示部3の画面にスルー画像に重ねて表示された指示に基づいてカメラ1を適切な位置および姿勢にすればよいので、エンジン100の状態診断に適したピストンリング210の画像を容易に撮影することができる。
【0070】
なお、上記ステップS13において、プレ撮影による撮影画像から求めた撮影対象物(例えばピストンリング210)の形状特徴量と基準特徴量との差分と、上記撮影対象物に対するカメラ1の基準位置および基準姿勢とに基づいて、撮影時のカメラ1の位置および姿勢を推定し、推定したカメラ1の位置および姿勢がカメラ1の基準位置および基準姿勢に対する許容範囲内であるか否かを判定するようにしてもよい。
【0071】
本実施形態において、遠写モードのときに所定の第1条件を満たしたときにプレ撮影を継続したまま接写モードへ移行し、接写モードのときに所定の第2条件を満たしたときにプレ撮影を継続したまま遠写モードへ移行するようにしてもよい。上記の第1条件は、例えば、遠写モードからカメラ1をピストン140に接近させたときに、プレ撮影画像であるスルー画像において掃気ポート120の輪郭の全ての部分が検出されている状態から上下の円弧部分の輪郭が検出できない状態となることである。また、第2条件は、例えば、接写モードのときにスルー画像において撮影対象物として選択されているピストンリング210が検出されている状態から同撮影対象物の検出に所定回数連続して失敗することである。
【0072】
なお、本実施形態では、遠写モードのステップS4及び接写モードのステップS15において、撮影支援装置11の演算器12がカメラ1に本撮影を行わせるようにしたが、これに限らない。例えば、撮影支援装置11の演算器12は、撮影者に撮影操作を行わせる指示を表示部3に表示させるようにしてもよい。この場合、入力部4から入力される撮影者による撮影操作信号に基づいて、カメラ1は本撮影を行う。
【0073】
また、本実施形態において、カメラ1の位置および姿勢に関して遠写モードにおいて撮影者に指示する指示項目と、接写モードにおいて撮影者に指示する指示項目とが別々に設定されており、遠写モードの場合の指示項目と接写モードの場合の指示項目との間に異なる指示項目を有するようにしてもよい。例えば、遠写モードの場合の指示項目として、カメラ1の姿勢のうち左右方向の傾きに関する項目と、上下方向のカメラ1の位置に関する項目とが設定されていてもよい。そして、この場合の接写モードの場合の指示項目として、カメラ1の姿勢のうち撮影対象物に対するカメラ1の撮影方向に関する項目と、撮影対象物との距離方向におけるカメラ1の位置に関する項目と、上下方向のカメラ1の位置に関する項目とが設定されていてもよい。
【0074】
また、本実施形態において、演算器12は、第1撮影画像より前または後に撮影された第2撮影画像において特定される物体から第1撮影画像に含まれる物体を識別するようにしてもよい。ここで、第1撮影画像および第2撮影画像はプレ撮影による撮影画像であってもよいし、本撮影による撮影画像であってもよい。
【0075】
例えば、遠写モードから接写モードへ移行する際には、撮影画像は、例えば
図7のように複数の掃気ポート120が撮影された状態の第2の撮影画像から、例えば
図10のように1つの掃気ポート120が撮影された状態の第1の撮影画像に変化する。この場合、演算器12は、第2の撮影画像から複数の掃気ポート120の配置情報を取得して各々の掃気ポート120を特定し、第1の撮影画像に含まれる掃気ポート120を識別するようにしてもよい。また、逆に、接写モードから遠写モードへ移行する際には、撮影画像は、1つの掃気ポート120が撮影された状態の第1の撮影画像から、複数の掃気ポート120が撮影された状態の第2の撮影画像に変化する。この場合も、演算器12は、第2の撮影画像から複数の掃気ポート120の配置情報を取得して各々の掃気ポート120を特定し、第1の撮影画像に含まれる掃気ポート120を識別するようにしてもよい。ここで、掃気ポート120の識別とは、例えば、複数ここでは例えば
図7の3つの掃気ポート120のうちの、どの掃気ポート120であるかを認識することをいう。
【0076】
また、遠写モードから接写モードへ移行する際には、撮影画像は、例えば
図7のように複数のピストンリング210が撮影された状態の第2の撮影画像から、例えば
図11のように接写モードで対象物とされるピストンリング210が拡大して撮影された状態の第1の撮影画像に変化する。この場合、演算器12は、第2の撮影画像から複数のピストンリング210の配置情報を取得して各々のピストンリング210を特定し、第1の撮影画像に含まれる拡大して撮影されたピストンリング210を識別するようにしてもよい。また、逆に、接写モードから遠写モードへ移行する際には、撮影画像は、接写モードで対象物とされるピストンリング210が拡大して撮影された状態の第1の撮影画像から、複数のピストンリング210が撮影された状態の第2の撮影画像に変化する。この場合も、演算器12は、第2の撮影画像から複数のピストンリング210の配置情報を取得して各々のピストンリング210を特定し、第1の撮影画像に含まれる拡大して撮影されたピストンリング210を識別するようにしてもよい。ここで、ピストンリング210の識別とは、例えば、複数(ここでは4つ)のピストンリング210のうちの、どのピストンリング210であるかを認識することをいう。
【0077】
この場合の一例について述べる。例えば、演算器12は、遠写モードおよび接写モードのときに、プレ撮影による撮影画像から求めた形状特徴量と基準特徴量とを比較し、比較した両者の差分と、カメラ1の基準位置および基準姿勢とに基づいて、撮影時のカメラ1の位置および姿勢を推定し、推定したカメラ1の位置および姿勢を時系列データとして記憶する。そして、遠写モードにおいて本撮影またはプレ撮影による撮影画像における掃気ポート120内の複数のピストンリング210の配置情報を記憶しておいて、遠写モードから接写モードへ移行する際に、記憶した複数のピストンリング210の配置情報と時系列データとに基づいて、接写モードでの対象物となる1つのピストンリング210を識別するようにしてもよい。
【0078】
また、本実施形態では、遠写モード及び接写モードにおいて、撮影者への指示を出力する指示出力部として表示部3を用いたが、これに限らない。スマートフォンのようにカメラ1にスピーカが備えられていれば、スピーカを指示出力部とし、撮影者への指示をスピーカからの音声出力によって行うように構成してもよい。また、カメラ1がデジタルカメラであって、液晶モニター等のモニターを備えている場合には表示部3がモニターであってもよいし、液晶等を用いた電子式ファインダを備えている場合には表示部3が電子式ファインダであってもよい。
【0079】
また、本実施形態では、プレ撮影において表示部3にスルー画像を表示させるようにしたが、これに限らない。表示部3にプレ撮影時のスルー画像を表示しない場合、あるいはスルー画像を表示していたとしても、撮影者への指示をスピーカからの音声出力によって行うように構成してもよい。
【0080】
また、カメラ1にバイブレータを備え、バイブレータを指示出力部として用いてもよい。例えば、カメラ1の位置および姿勢が許容範囲内でない場合にはバイブレータを振動させ、許容範囲内になると振動を停止させるようにしてもよい。このようなバイブレータと前述の表示部3やスピーカを組み合わせて指示出力部として用いるようにしてもよい。
【0081】
上記説明から、当業者にとっては、本開示の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本開示を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本開示の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【0082】
(まとめ)
本開示のある態様に係る撮影支援装置は、掃気ポートを有するシリンダと前記シリンダ内を摺動するピストンとを備えたユニフロー掃気式2サイクルのエンジンの前記掃気ポートを通して前記ピストンをカメラで撮影する際に、前記カメラの位置および姿勢を撮影者に対して指示する撮影支援装置であって、前記エンジンの構造情報を記憶する記憶器と、演算器と、を備え、前記演算器は、記録用画像を撮影する本撮影の前後に画像を繰返し撮影するプレ撮影を前記カメラに開始させ、プレ撮影による撮影画像から前記エンジンに含まれる所定の対象物の形状特徴量を求め、この求めた形状特徴量と、前記エンジンの構造情報と前記対象物を撮影する際の前記カメラの基準位置および基準姿勢とに基づいて定められる撮影画像における前記対象物の基準特徴量とに基づいて、撮影時の前記カメラの位置および姿勢が前記カメラの基準位置および基準姿勢に対する許容範囲内であるか否かを判定する判定処理を行い、前記判定処理の結果、前記カメラの位置および姿勢が前記許容範囲内ではない場合に、前記カメラの位置および姿勢が前記許容範囲内になるように前記カメラの指示出力部に前記カメラの位置および姿勢のうちの少なくとも一方を変更する操作者への指示を出力させる。
【0083】
この構成によれば、撮影者は、指示出力部から出力される指示に基づいてカメラを適切な位置および姿勢にすればよいので、エンジンの状態診断に適した対象物の画像を容易に撮影することができる。
【0084】
前記判定処理は、プレ撮影による撮影画像から求めた形状特徴量と前記基準特徴量とを比較し、比較した両者の差分が所定範囲内であるか否かを判定することによって、前記カメラの位置および姿勢が前記許容範囲内であるか否かを判定するようにしてもよい。この場合、前記比較した両者の差分が前記所定範囲内になることが、前記カメラの位置および姿勢が前記許容範囲内になることである。よって、演算器は、前記判定処理の結果、前記カメラの位置および姿勢が前記許容範囲内ではない場合に、前記比較した両者の差分が前記所定範囲内になるように前記カメラの指示出力部に前記カメラの位置および姿勢のうちの少なくとも一方を変更する操作者への指示を出力させるようにしてもよい。
【0085】
前記判定処理は、プレ撮影による撮影画像から求めた形状特徴量と前記基準特徴量とを比較し、比較した両者の差分と、前記カメラの基準位置および基準姿勢とに基づいて、撮影時の前記カメラの位置および姿勢を推定し、推定した前記カメラの位置および姿勢が前記許容範囲内であるか否かを判定するようにしてもよい。
【0086】
前記カメラは、プレ撮影による撮影画像を表示する表示部を備えており、前記演算器は、前記カメラの前記表示部に、プレ撮影による撮影画像に撮影者への指示を重ねて表示させるようにしてもよい。
【0087】
前記演算器は、前記判定処理の結果、前記カメラの位置および姿勢が前記許容範囲内である場合に、前記カメラに本撮影を行わせるようにしてもよい。
【0088】
前記演算器は、遠写モードと接写モードとの2つの動作モードを有し、前記遠写モードのときに、前記対象物を前記掃気ポートの全体部分とし、前記判定処理を行い、前記接写モードのときに、前記対象物を前記掃気ポートの一部分を通して見える前記ピストンとし、前記判定処理を行うようにしてもよい。
【0089】
具体的には、前記遠写モードのときの対象物を、前記掃気ポートの全体の輪郭部分としてもよいし、前記掃気ポート全体を通して見える前記ピストン及び当該ピストンに組み付けた複数のピストンリングとしてもよい。また、前記接写モードのときの対象物を、前記掃気ポートを通して見える前記ピストンに組み付けたピストンリングとしてもよいし、前記ピストンの周面における露出部分であるリングランドとしてもよい。
【0090】
また、前記遠写モードのときに前記カメラの位置および姿勢に関して撮影者に対して指示する項目と、前記接写モードのときに前記カメラの位置および姿勢に関して撮影者に対して指示する項目との間で異なる項目を有するようにしてもよい。
【0091】
また、前記演算器は、前記遠写モードのときに所定の第1条件を満たしたときにプレ撮影を継続したまま前記接写モードへ移行し、前記接写モードのときに所定の第2条件を満たしたときにプレ撮影を継続したまま前記遠写モードへ移行するようにしてもよい。
【0092】
また、前記演算器は、前記遠写モードのときに、前記遠写モードにおける前記判定処理の結果、前記カメラの位置および姿勢が前記許容範囲内である場合に、前記カメラに本撮影を行わせ、この本撮影による撮影画像における前記掃気ポート内の前記複数のピストンリングの配置情報を記憶し、前記遠写モードから前記接写モードへ移行したときに、前記カメラに備えられた表示部にプレ撮影による撮影画像に前記配置情報に基づく情報(例えば
図10に示すマークD3,D4等)を重ねて表示させるようにしてもよい。そして、前記接写モードにおける前記判定処理の結果、前記カメラの位置および姿勢が前記許容範囲内である場合に、前記カメラに本撮影を行わせるようにしてもよい。
【0093】
前記演算器は、第1撮影画像より前または後に撮影された第2撮影画像において特定される物体から前記第1撮影画像に含まれる物体を識別するようにしてもよい。ここで、第1撮影画像および第2撮影画像はプレ撮影による撮影画像であってもよいし、本撮影による撮影画像であってもよい。
【0094】
例えば、遠写モードから接写モードへ移行する際には、撮影画像は、複数の掃気ポートが撮影された状態の第2の撮影画像から、1つの掃気ポートが撮影された状態の第1の撮影画像に変化する。この場合、演算器は、第2の撮影画像から複数の掃気ポートの配置情報を取得して各々の掃気ポートを特定し、第1の撮影画像に含まれる掃気ポートを識別するようにしてもよい。また、逆に、接写モードから遠写モードへ移行する際には、撮影画像は、1つの掃気ポートが撮影された状態の第1の撮影画像から、複数の掃気ポートが撮影された状態の第2の撮影画像に変化する。この場合も、演算器は、第2の撮影画像から複数の掃気ポートの配置情報を取得して各々の掃気ポートを特定し、第1の撮影画像に含まれる掃気ポートを識別するようにしてもよい。
【0095】
また、遠写モードから接写モードへ移行する際には、撮影画像は、複数のピストンリングが撮影された状態の第2の撮影画像から、接写モードで対象物とされるピストンリングが拡大して撮影された状態の第1の撮影画像に変化する。この場合、演算器は、第2の撮影画像から複数のピストンリングの配置情報を取得して各々のピストンリングを特定し、第1の撮影画像に含まれる拡大して撮影されたピストンリングを識別するようにしてもよい。また、逆に、接写モードから遠写モードへ移行する際には、撮影画像は、接写モードで対象物とされるピストンリングが拡大して撮影された状態の第1の撮影画像から、複数のピストンリングが撮影された状態の第2の撮影画像に変化する。この場合も、演算器は、第2の撮影画像から複数のピストンリングの配置情報を取得して各々のピストンリングを特定し、第1の撮影画像に含まれる拡大して撮影されたピストンリングを識別するようにしてもよい。
【0096】
この場合の一例について述べる。例えば、演算器は、遠写モードおよび接写モードのときに、プレ撮影による撮影画像から求めた形状特徴量と基準特徴量とを比較し、比較した両者の差分と、カメラの基準位置および基準姿勢とに基づいて、撮影時のカメラの位置および姿勢を推定し、推定したカメラの位置および姿勢を時系列データとして記憶する。そして、遠写モードにおいて本撮影またはプレ撮影による撮影画像における掃気ポート内の複数のピストンリングの配置情報を記憶しておいて、遠写モードから接写モードへ移行する際に、記憶した複数のピストンリングの配置情報と時系列データとに基づいて、接写モードでの対象物となる1つのピストンリングを識別するようにしてもよい。
【0097】
本開示のある態様に係る撮影支援方法は、掃気ポートを有するシリンダと前記シリンダ内を摺動するピストンとを備えたユニフロー掃気式2サイクルのエンジンの前記掃気ポートを通して前記ピストンをカメラで撮影する際に、前記カメラの位置および姿勢を撮影者に対して指示する撮影支援装置であって、記録用画像を撮影する本撮影の前後に画像を繰返し撮影するプレ撮影を前記カメラに開始させ、プレ撮影による撮影画像から前記エンジンに含まれる所定の対象物の形状特徴量を求め、この求めた形状特徴量と、前記エンジンの構造情報と前記対象物を撮影する際の前記カメラの基準位置および基準姿勢とに基づいて定められる撮影画像における前記対象物の基準特徴量とに基づいて、撮影時の前記カメラの位置および姿勢が前記カメラの基準位置および基準姿勢に対する許容範囲内であるか否かを判定する判定処理を行い、前記判定処理の結果、前記カメラの位置および姿勢が前記許容範囲内ではない場合に、前記カメラの位置および姿勢が前記許容範囲内になるように前記カメラの指示出力部に前記カメラの位置および姿勢のうちの少なくとも一方を変更する操作者への指示を出力させる。
【0098】
本開示のある態様に係る撮影支援プログラムは、掃気ポートを有するシリンダと前記シリンダ内を摺動するピストンとを備えたユニフロー掃気式2サイクルのエンジンの前記掃気ポートを通して前記ピストンをカメラで撮影する際に、前記カメラの位置および姿勢を撮影者に対して指示する撮影支援プログラムであって、コンピュータを、記録用画像を撮影する本撮影の前後に画像を繰返し撮影するプレ撮影を前記カメラに開始させ、プレ撮影による撮影画像から前記エンジンに含まれる所定の対象物の形状特徴量を求め、この求めた形状特徴量と、前記エンジンの構造情報と前記対象物を撮影する際の前記カメラの基準位置および基準姿勢とに基づいて定められる撮影画像における前記対象物の基準特徴量とに基づいて、撮影時の前記カメラの位置および姿勢が前記カメラの基準位置および基準姿勢に対する許容範囲内であるか否かを判定する判定処理を行い、前記判定処理の結果、前記カメラの位置および姿勢が前記許容範囲内ではない場合に、前記カメラの位置および姿勢が前記許容範囲内になるように前記カメラの指示出力部に前記カメラの位置および姿勢のうちの少なくとも一方を変更する操作者への指示を出力させるように機能させる。
【符号の説明】
【0099】
1 カメラ
3 表示部
11 撮影支援装置
12 演算器
13 記憶器
100 エンジン
110 シリンダ
120 掃気ポート
140 ピストン
210 ピストンリング
280 リングランド