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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108704
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】押圧ローラ
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/06 20060101AFI20230731BHJP
   B65H 27/00 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
B65H5/06 B
B65H27/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009894
(22)【出願日】2022-01-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】518165682
【氏名又は名称】若水技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126675
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 将彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 康男
(72)【発明者】
【氏名】清水 賢二
(72)【発明者】
【氏名】清水 宏晃
【テーマコード(参考)】
3F049
3F104
【Fターム(参考)】
3F049AA01
3F049CA02
3F049CA04
3F049CA11
3F049LB07
3F104AA03
3F104JD18
3F104JD20
(57)【要約】
【課題】 多種多様な薄膜銘柄に対応できる汎用性を保持しつつ、押圧対象とされる薄膜への皺の発生を押さえる押圧ローラを提供する。
【解決手段】 本開示による押圧ローラは、薄膜が巻き取られて成る巻取製品又は薄膜を送り出す搬送ガイドローラに薄膜を押圧する押圧ローラであって、回転軸と、円筒状の芯と、円筒状の弾性体層と、を備えている。円筒状の芯は、回転軸に同軸に固定されている。円筒状の弾性体層は、円筒状の芯の外周面を覆うように芯に固着されている。そして、弾性体層は、軸方向に沿って外周面の凹凸が反復するように、かつ軸方向に交差する方向に延びるように、外周面に設けられた溝を有している。また、溝は、軸方向の中央部から両端部へ至るほど深く、かつ、溝底から溝開口端へ向かうのに伴い、両端部のうち中央部を跨がない方の端部に近づくように傾斜している。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜が巻き取られて成る巻取製品又は薄膜を送り出す搬送ガイドローラに薄膜を押圧する押圧ローラであって、
回転軸と、
前記回転軸に同軸に固定された円筒状の芯と、
前記円筒状の芯の外周面を覆うように前記芯に固着された円筒状の弾性体層と、を備え、
前記弾性体層は、軸方向に沿って外周面の凹凸が反復するように、かつ前記軸方向に交差する方向に延びるように、外周面に設けられた溝を有しており、
前記溝は、前記軸方向の中央部から両端部へ至るほど深く、かつ、溝底から溝開口端へ向かうのに伴い、前記両端部のうち前記中央部を跨がない方の端部に近づくように傾斜している、押圧ローラ。
【請求項2】
前記溝は、前記中央部から前記両端部へ螺旋状に延びる螺旋溝を有する、請求項1に記載の押圧ローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜が巻き取られて成る巻取製品又は薄膜を送り出す搬送ガイドローラに薄膜を押圧する押圧ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来技術による押圧ローラの使用形態を例示する概略図である。図示例のように、押圧ローラ1は、プラスチックフィルム等の薄膜60を巻き取る巻取ローラ51に巻き取られている巻取製品61、及び薄膜60を搬送する搬送ガイドローラ53等に、薄膜60を押圧する目的で使用される。生産した製品である薄膜60が巻取ローラ51に巻取られる時に、ロール状に巻き取られる巻取製品61への空気の捲き込みを抑制するために、製品である薄膜60の巻き上がり境界近傍に圧力が印加される。また、生産機内で薄膜60を搬送する際に、駆動ロールである搬送ガイドローラ53に対して薄膜60が滑れば駆動系が不成立となるため、その抑制を目的として、搬送ガイドローラ53に対して薄膜60を押し付けるために圧力が印加される。図示例では、押圧ローラ1の押圧力は、アクチュエータ9によって生成される。
【0003】
図2は、押圧ローラ1の概略構成を例示する概略図である。また、図3は、押圧ローラ1の概略構成を例示する断面図である。これらの図に例示するように、押圧ローラ1は、円筒状の芯11の外周面を円筒状のゴムなどの弾性体層3が覆う構造を成すのが、一般的である。芯11は回転軸5に支持されており、回転軸5は軸受け7に、回転自在に支持されている。軸受け7にはアクチュエータ9が連結している。アクチュエータ9の押圧力が、軸受け7から回転軸5及び芯11を通じて弾性体層3に伝えられる。それにより、弾性体層3が、押圧の対象とする薄膜60を挟んで、巻取製品61あるいは搬送ガイドローラ53に押し当てられる(図1参照)。図示例では、アクチュエータ9は、シリンダ内に送られる流体によりピストンを押し出すように構成されている。
【0004】
近年、電池のセパレータに用いられるプラスチックフィルムや電極用の金属箔など、多種多様なフィルムにおいて20ミクロンを下回るような薄膜の需要が拡大している。ミクロンオーダーの厚さの薄膜60を巻き取ったり、搬送したりするには、押圧ローラ1にも搬送ガイドローラ53と同等ないしそれ以上の精度が求められる。
【0005】
図4に誇張して例示するように、巻取製品61或いは搬送ガイドローラ53(これら双方を含めて符号50を付している)上の薄膜60を、押圧ローラ1により単純に押さえたのみでは、押圧力がアクチュエータ9近傍の両端部では強く、反力を受ける中央部では弱い、という軸方向の不均一が現れる。この不均一を緩和する方法として、押圧力を大きくすることが想定されるが、印加する押圧力は薄膜60に永久歪みを与えない程度に設定する必要があり、過大に設定することはできない。このため、図5に例示するように、押圧ローラ1の中央部は薄膜60から浮き上がることとなり、薄膜60が外力を受けた両端に引張られ、皺(しわ)の原因となる。図5は、押圧ローラ1を押圧面から見た概略図であり、薄膜60に接している弾性体層3の表面領域を、白抜きで表している。
【0006】
この問題に対処するために、図6の断面図に概略構成を例示するように、円筒状の芯11の中央部のみを回転軸6により支持する構造を有する押圧ローラ2が提案されている。特許文献1に記載される加圧ローラも、同一の思想に基づくものである。しかし、押圧ローラ2は、押圧対象とされる多種多様な銘柄の薄膜60毎に、精密に作り込むことを要し、汎用性に欠け、コスト高となる、という問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-173393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、多種多様な薄膜銘柄に対応できる汎用性を保持しつつ、押圧対象とされる薄膜への皺の発生を抑える押圧ローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のうち第1の態様によるものは、薄膜が巻き取られて成る巻取製品又は薄膜を送り出す搬送ガイドローラに薄膜を押圧する押圧ローラであって、回転軸と、円筒状の芯と、円筒状の弾性体層と、を備えている。円筒状の芯は、前記回転軸に同軸に固定されている。円筒状の弾性体層は、前記円筒状の芯の外周面を覆うように前記芯に固着されている。そして、前記弾性体層は、軸方向に沿って外周面の凹凸が反復するように、かつ前記軸方向に交差する方向に延びるように、外周面に設けられた溝を有している。また、前記溝は、前記軸方向の中央部から両端部へ至るほど深く、かつ、溝底から溝開口端へ向かうのに伴い、前記両端部のうち前記中央部を跨がない方の端部に近づくように傾斜している。
【0010】
この構成によれば、弾性体層が押圧対象となる薄膜を押圧するときに、弾性体層のうち溝に挟まれた部分、すなわち溝の底から突起した個々の壁状の部分が、その根元に発生する曲げモーメントにより、傾斜方向に変形するため、薄膜が柔軟に押さえられる。加えて、溝の深さは、軸方向の中央部から両端部へ至るほど大きいので、中央部から両端部に至るほど、柔軟性が増す。このため、従来問題となっていた、押圧力が両端部では強く、中央部では弱い、という軸方向の不均一が解消ないし改善され、押圧対象となる薄膜に皺が発生し難くなる。押圧対象となる薄膜は、溝の底から突起した個々の壁状の部分が、その根元に発生する曲げモーメントにより、傾斜方向に変形することにより柔軟に押さえられるので、本構成による押圧ローラは、薄膜の銘柄毎に精密に作り込むことを要さず、汎用性の高いものとなる。
【0011】
本発明のうち第2の態様によるものは、第1の態様による押圧ローラであって、前記溝は、前記中央部から前記両端部へ螺旋状に延びる螺旋溝を有している。
この構成によれば、押圧対象となる薄膜の端が、原反の端を基準とする安定した位置へ移動する間、あるいは薄膜の反りの影響により、溝内へ落ち込むことが抑制される。それにより、溝内に薄膜の端が落ちることにより折れ込みが発生するという不具合が抑制される。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明によれば、多種多様な薄膜銘柄に対応できる汎用性を保持しつつ、押圧対象とされる薄膜への皺の発生を抑える押圧ローラが実現する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】従来技術による押圧ローラの使用形態を例示する概略図である。
図2】従来技術による押圧ローラの概略構成を例示する概略図である。
図3図2の押圧ローラの概略構成を例示する断面図である。
図4図2の押圧ローラの問題点を例示する概略図である。
図5図2の押圧ローラの問題点を例示する概略図である。
図6】別の従来技術による押圧ローラの概略構成を例示する断面図である。
図7】本発明の一実施の形態による押圧ローラの概略構成を例示する断面図である。
図8図7の押圧ローラの弾性体層の拡大断面図である。
図9図7の押圧ローラを押圧面から見た概略図である。
図10図7の押圧ローラの溝の配置を例示する図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図7は、本発明の一実施の形態による押圧ローラの概略構成を例示する断面図である。この押圧ローラ101は、回転軸5、円筒状の芯11、及び円筒状の弾性体層21を有している。芯11は、回転軸5に同軸に固定されている。弾性体層21は、円筒状の芯11の外周面を覆うように芯11に固着されている。ここで「固着」とは、互いにずれないようにその位置を保つことができれば足り、弾性体層21の弾性復元力により密着していてもよく、接着剤により固着されていてもよい。弾性体層21は、例えば合成ゴム製である。回転軸5及び芯11は、例えば金属製である。
【0015】
図8は、押圧ローラ101の弾性体層21の拡大断面図である。弾性体層21は、その軸方向に沿って外周面の凹凸が反復するように、外周面に設けられた溝23を有している。溝23は、弾性体層21の軸方向に交差する方向に延びるように、弾性体層21の外周面に設けられている。軸方向に交差する方向は、軸方向に直交する方向でもよく、斜めに交差する方向でも良い。一例として、後述する図10に明示するように、溝23は螺旋状の溝として形成されている。溝23は、軸方向の中央部から両端部へ至るほど深く、かつ、溝23の底から開口端(すなわち図において溝23の上面)へ向かうのに伴い、両端部のうち中央部を跨がない方の端部に近づくように傾斜している。図示例では、特に、溝23は所定の間隔をもって軸方向に沿って外周面に凹凸が反復するように配置されている。また、溝23は、軸方向の中央において軸方向に直交する面を仮想的な対称面として、両端部へ至るほど深く、かつ、溝底から表面へ向かうのに伴い、両端部のうち近い方の端部に近づくように傾斜している。
【0016】
押圧ローラ101は、上記の通り構成されているので、弾性体層21が薄膜60を押圧するときに、弾性体層21のうち溝23に挟まれた部分、すなわち溝23の底から突起した個々の壁状の部分が、その根元(すなわち基端)に発生する曲げモーメントにより、傾斜方向に変形するため、押圧対象となる薄膜60(図1参照)が柔軟に押さえられる。加えて、溝23の深さは、軸方向の中央部から両端部へ至るほど大きいので、中央部から両端部に至るほど、柔軟性が増す。このため、従来問題となっていた、押圧力が両端部では強く、中央部では弱い、という軸方向の不均一が、図9に例示するように解消ないし改善され、押圧対象となる薄膜60に皺が発生し難くなる。図9は、押圧ローラ101を押圧面から見た概略図であり、薄膜60に接している弾性体層21の表面領域を、白抜きで表している。
【0017】
押圧対象となる薄膜60は、溝23の底から突起した個々の壁状の部分が、その根元に発生する曲げモーメントにより傾斜方向に変形することにより、柔軟に押さえられるので、図4に例示した既存の押圧ローラ2とな異なり、押圧ローラ101は、薄膜60の銘柄毎に精密に作り込むことを要さず、汎用性の高いものとなる。
【0018】
図10は、押圧ローラ101の溝23の配置を例示する図面代用写真であり、弾性体層21の外周面の一部を拡大して示している。図示例では、溝23は、弾性体層21の軸方向中央部から両端部へ螺旋状に延びる螺旋溝として形成されている。螺旋状の溝23は、軸方向中央において軸方向に直交する面を仮想的な対称面25として、近いほうのローラ端部へ螺旋状に延びている。螺旋状の溝23は、複数条の螺旋溝で形成され、薄膜60(図1参照)を装置内に通す際、ローラ上の薄膜60の端が、原反の端を基準とする安定した位置へ移動する間や、薄膜60の反りの影響による溝23内への落ち込みを抑制することができる。薄膜搬送の性質上、薄膜60はローラ軸方向に垂直に走行するため、溝23が押圧ローラ101の軸方向に直交する方向に延びるように環状に設置されていれば、溝23内に薄膜60の端が落ちて折れ込みが発生し得る。これに対し、軸方向に捩れを有す螺旋状に溝23を配置することにより、折れ等の不良をより効果的に抑制できる。
【0019】
なお、押圧ローラ101は、図7に例示するように、対象となる薄膜に駆動力を伝達しない従動ローラに限らず、回転軸5に駆動力が付与され、薄膜60に駆動力を伝える駆動ローラであってもよい。また、押圧対象となる薄膜60は、プラスチックフィルムに限らず、例えば金属薄膜であってもよい。
【符号の説明】
【0020】
1,2 押圧ローラ、 3 弾性体層、 5 回転軸、 7 軸受け、 9 アクチュエータ、 11 芯、 21 弾性体層、 23 溝、 25 対称面、 51 巻取ローラ、 50,53 搬送ガイドローラ、 60 薄膜、 50,61 巻取製品、 101 押圧ローラ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2022-10-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜が巻き取られて成る巻取製品又は薄膜を送り出す搬送ガイドローラに薄膜を押圧する押圧ローラであって、
回転軸と、
前記回転軸に同軸に固定された円筒状の芯と、
前記円筒状の芯の外周面を覆うように前記芯に固着された円筒状の弾性体層と、を備え、
前記弾性体層は、軸方向に沿って外周面の凹凸が反復するように、かつ前記軸方向に交差する方向に延びるように、前記外周面に設けられた溝を有しており、
前記溝は、前記軸方向の中央部から両端部へ至るほど深く、かつ、溝底から溝開口端へ向かうのに伴い、前記両端部のうち前記中央部を跨がない方の端部に近づくように傾斜しており、
前記弾性体層は、前記外周面のうち前記溝を除いた部分の径が、前記軸方向の一端から他端まで一定である、押圧ローラ。
【請求項2】
前記溝は、前記中央部から前記両端部へ螺旋状に延びる螺旋溝を有する、請求項1に記載の押圧ローラ。