(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108706
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】レーザ溶接装置及びレーザ溶接方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20230731BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20230731BHJP
G01B 11/02 20060101ALI20230731BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
B23K26/00 P
B23K26/21 G
G01B11/02 G
G01B11/24 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009897
(22)【出願日】2022-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 通雄
(72)【発明者】
【氏名】松岡 範幸
(72)【発明者】
【氏名】中川 龍幸
(72)【発明者】
【氏名】藤原 潤司
【テーマコード(参考)】
2F065
4E168
【Fターム(参考)】
2F065AA22
2F065AA53
2F065CC15
2F065DD03
2F065FF52
2F065GG04
2F065GG13
2F065HH04
2F065HH13
2F065JJ05
2F065JJ09
2F065LL03
2F065LL04
2F065LL12
2F065MM07
2F065PP25
4E168BA02
4E168CA07
4E168CB22
4E168EA17
4E168GA03
(57)【要約】
【課題】ワークのレーザ溶接中に、溶接部の最深部の溶け込み深さを正確に把握できるようにする。
【解決手段】イメージファイバ30は、互いに間隔をあけて配置された複数のコア31を有する。複数のコア31のそれぞれには、複数のレーザモジュール15aがそれぞれ接続される。第1測定光S1は、イメージファイバ30を介して伝送される。レーザ光Lと第1測定光S1とは、同軸状に重ね合わされてワーク60に向けて出射される。光干渉計装置20では、ワーク60で反射した第1測定光S1を受け取って、ワーク60の溶接部65の溶け込み深さが測定される。制御部26は、ワーク60のレーザ溶接中に、複数のコア31のうち第1測定光S1を出射させるコア31を選択的に切り替えるように、複数のレーザモジュール15aの動作を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の溶接方向に沿ってレーザ光を出射しながらワークを溶接するレーザ溶接装置であって、
前記レーザ光を発生させるレーザ発振器と、
前記レーザ光とは波長の異なる測定光をそれぞれ発生させる複数のレーザモジュールを有する測定光発振器と、
前記複数のレーザモジュールに対応してそれぞれの該レーザモジュールにそれぞれ接続される複数のコアを有し、前記測定光発振器で発生した前記測定光を伝送するイメージファイバと、
前記レーザ光と、前記イメージファイバを介して伝送された前記測定光とを同軸状に重ね合わせて前記ワークに向けて出射するレーザヘッドと、
前記ワークで反射した前記測定光を受け取って、該ワークの溶接部の溶け込み深さを測定する光干渉計装置と、
前記ワークのレーザ溶接中に、前記複数のコアのうち前記測定光を出射させる該コアを選択的に切り替えるように、前記複数のレーザモジュールの動作を制御する制御部とを備えた
ことを特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記光干渉計装置は、光干渉光学部と差分信号生成部とを含む検出部と、前記制御部とを有し、
前記光干渉光学部は、
前記測定光発振器の前記レーザモジュールから出射された前記測定光を、第1測定光と第2測定光とに分割するビームスプリッタと、
前記第2測定光を反射するミラーとを有し、
前記ビームスプリッタ及び前記ミラーは、前記複数のレーザモジュールに対応するように設けられ、
前記差分信号生成部は、前記ワークで反射した前記第1測定光及び前記ミラーで反射した前記第2測定光を、前記ビームスプリッタを介して受け取って、該第1測定光及び該第2測定光の光路長の位相差を示す差分信号を生成し、
前記制御部は、前記差分信号生成部で生成された差分信号に基づいて、前記ワークの前記溶接部の溶け込み深さを算出する演算部を有する
ことを特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記複数のコアは、前記イメージファイバの中心部から外周部に向かって間隔をあけて放射状に配置され、
前記制御部は、前記測定光の出射位置を、前記イメージファイバの中心部から外周部の前記コアに向かう渦巻き状の軌跡に沿って移動させる制御を行う
ことを特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記制御部は、
前記ワークの溶接開始位置では、前記測定光の出射位置を、前記イメージファイバの中心部から外周部の前記コアに向かう渦巻き状の軌跡に沿って移動させる制御を行う一方、
前記ワークの溶接終了位置では、前記測定光の出射位置を、前記イメージファイバの外周部から中心部の前記コアに向かう渦巻き状の軌跡に沿って移動させる制御を行う
ことを特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項5】
請求項1又は2において、
前記複数のコアは、前記溶接方向と交差する方向に間隔をあけて配置され、
前記制御部は、前記測定光の出射位置を、前記溶接方向と交差する方向に沿って移動させる制御を行う
ことを特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記複数のコアは、前記溶接方向に沿って間隔をあけて配置され、
前記制御部は、前記測定光の出射位置を、前記溶接方向に沿って移動させる制御を行う
ことを特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記制御部は、前記測定光の出射位置を、前記溶接方向の下流側から上流側に向かって移動させる制御を行う
ことを特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のうち何れか1つにおいて、
前記複数のレーザモジュールは、同じ波長の前記測定光を出射し、
前記制御部は、前記測定光を前記複数のコアから異なるタイミングで出射させる制御を行う
ことを特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項9】
請求項1又は2において、
前記複数のレーザモジュールは、互いに異なる波長の前記測定光を出射し、
前記制御部は、前記複数の測定光を前記複数のコアから同時に出射させる制御を行う
ことを特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のうち何れか1つにおいて、
前記制御部は、さらに、前記光干渉計装置により前記ワークの前記溶接部における互いに異なる位置で測定された複数の溶け込み深さに基づいて、該溶接部における溶け込み形状を示す三次元データを取得する
ことを特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項11】
請求項10において、
前記制御部で取得された前記三次元データを表示する表示部を備えた
ことを特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項12】
請求項10又は11において、
前記制御部は、取得した前記三次元データに基づいて、前記溶接部のビード幅を測定する
ことを特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項13】
所定の溶接方向に沿ってレーザ光を出射しながらワークを溶接するレーザ溶接方法であって、
前記レーザ光と、複数のレーザモジュールにより該レーザ光とは波長の異なる測定光とを発生させる工程と、
前記レーザ光と、前記複数のレーザモジュールに対応してそれぞれの該レーザモジュールにそれぞれ接続される複数のコアを有するイメージファイバを介して伝送された前記測定光とを同軸状に重ね合わせて前記ワークに向けて出射する工程と、
前記ワークで反射した前記測定光に基づいて、該ワークの溶接部の溶け込み深さを測定する工程と、
前記ワークのレーザ溶接中に、前記複数のコアのうち前記測定光を出射させる該コアを選択的に切り替えるように、前記複数のレーザモジュールの動作を制御する工程とを備えた
ことを特徴とするレーザ溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ溶接装置及びレーザ溶接方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、溶接部における物体光のスポット径をレーザ光のスポット径よりも大きくして、物体光をキーホールの略全域に照射することで、物体光をキーホールの底部に照射できるようにしたレーザ溶接装置が開示されている。
【0003】
特許文献2には、レーザヘッドに設けられたダイクロイックミラーの角度を変更して、計測光をキーホール内部で走査することで、キーホールの幅広い範囲で溶け込み深さを測定するようにしたレーザ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5252026号公報
【特許文献2】米国特許第10413995号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1の発明では、物体光のスポット径に応じて、溶接部の溶け込み深さを測定する際の分解能や測定領域が決定される。そのため、さらなる高分解能化や測定領域の拡大が困難である。
【0006】
また、特許文献2の発明では、計測光を走査するための構成をレーザヘッドに搭載しているため、レーザヘッドやロボットが大型化してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワークのレーザ溶接中に、溶接部の最深部の溶け込み深さを正確に把握できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、所定の溶接方向に沿ってレーザ光を出射しながらワークを溶接するレーザ溶接装置であって、前記レーザ光を発生させるレーザ発振器と、前記レーザ光とは波長の異なる測定光をそれぞれ発生させる複数のレーザモジュールを有する測定光発振器と、前記複数のレーザモジュールに対応してそれぞれの該レーザモジュールにそれぞれ接続される複数のコアを有し、前記測定光発振器で発生した前記測定光を伝送するイメージファイバと、前記レーザ光と、前記イメージファイバを介して伝送された前記測定光とを同軸状に重ね合わせて前記ワークに向けて出射するレーザヘッドと、前記ワークで反射した前記測定光を受け取って、該ワークの溶接部の溶け込み深さを測定する光干渉計装置と、前記ワークのレーザ溶接中に、前記複数のコアのうち前記測定光を出射させる該コアを選択的に切り替えるように、前記複数のレーザモジュールの動作を制御する制御部とを備えたことを特徴とする。
【0009】
第1の発明では、イメージファイバは、互いに間隔をあけて配置された複数のコアを有する。複数のコアのそれぞれには、複数のレーザモジュールがそれぞれ接続される。測定光は、イメージファイバを介して伝送される。レーザ光と測定光とは、同軸状に重ね合わされてワークに向けて出射される。光干渉計装置では、ワークで反射した測定光を受け取って、ワークの溶接部の溶け込み深さが測定される。制御部は、ワークのレーザ溶接中に、複数のコアのうち測定光を出射させるコアを選択的に切り替えるように、複数のレーザモジュールの動作を制御する。
【0010】
このように、ワークのレーザ溶接中に、複数の異なる位置で溶接部の溶け込み深さを測定することで、複数の測定結果に基づいて、溶接部の最深部の溶け込み深さを正確に把握することができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記光干渉計装置は、光干渉光学部と差分信号生成部とを含む検出部と、前記制御部とを有し、前記光干渉光学部は、前記測定光発振器の前記レーザモジュールから出射された前記測定光を、第1測定光と第2測定光とに分割するビームスプリッタと、前記第2測定光を反射するミラーとを有し、前記ビームスプリッタ及び前記ミラーは、前記複数のレーザモジュールに対応するように設けられ、前記差分信号生成部は、前記ワークで反射した前記第1測定光及び前記ミラーで反射した前記第2測定光を、前記ビームスプリッタを介して受け取って、該第1測定光及び該第2測定光の光路長の位相差を示す差分信号を生成し、前記制御部は、前記差分信号生成部で生成された差分信号に基づいて、前記ワークの前記溶接部の溶け込み深さを算出する演算部を有することを特徴とする。
【0012】
第2の発明では、第1測定光及び第2測定光の光路長の位相差に基づいて、ワークの溶接部の溶け込み深さを算出することで、溶け込み深さを高精度に測定することができる。
【0013】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記複数のコアは、前記イメージファイバの中心部から外周部に向かって間隔をあけて放射状に配置され、前記制御部は、前記測定光の出射位置を、前記イメージファイバの中心部から外周部の前記コアに向かう渦巻き状の軌跡に沿って移動させる制御を行うことを特徴とする。
【0014】
第3の発明では、レーザヘッドの移動に伴って溶接方向が変更された場合でも、測定光の出射パターンを切り替える必要が無く、測定光を連続して広範囲に出射することができる。
【0015】
第4の発明は、第3の発明において、前記制御部は、前記ワークの溶接開始位置では、前記測定光の出射位置を、前記イメージファイバの中心部から外周部の前記コアに向かう渦巻き状の軌跡に沿って移動させる制御を行う一方、前記ワークの溶接終了位置では、前記測定光の出射位置を、前記イメージファイバの外周部から中心部の前記コアに向かう渦巻き状の軌跡に沿って移動させる制御を行うことを特徴とする。
【0016】
第4の発明では、ワークの溶接開始位置と溶接終了位置において、溶接部の溶け込み深さの最深部を正確に把握することができる。
【0017】
具体的に、溶接開始位置では、ワークの溶接部の中心部が先行して溶融するため、中心部から外周部に向かって測定光の出射位置を移動させることで、溶け込み深さの最深部を正確に把握することができる。
【0018】
また、溶接終了位置では、ワークの溶接部の外周部から中心部に向かって測定光の出射位置を移動させ、溶接終了位置の中心部に測定光を出射させることで、溶け込み深さの最深部を正確に把握することができる。
【0019】
第5の発明は、第1又は2の発明において、前記複数のコアは、前記溶接方向と交差する方向に間隔をあけて配置され、前記制御部は、前記測定光の出射位置を、前記溶接方向と交差する方向に沿って移動させる制御を行うことを特徴とする。
【0020】
第5の発明では、溶接方向と交差する方向に沿って測定光を出射して、測定光の出射範囲を広げながら、溶接部の溶け込み深さを測定することができる。
【0021】
第6の発明は、第5の発明において、前記複数のコアは、前記溶接方向に沿って間隔をあけて配置され、前記制御部は、前記測定光の出射位置を、前記溶接方向に沿って移動させる制御を行うことを特徴とする。
【0022】
第6の発明では、溶接方向と交差する方向に加えて溶接方向にも測定光をジグザグ状に出射して、測定光の出射範囲をさらに広げながら、溶接部の溶け込み深さを測定することができる。
【0023】
第7の発明は、第6の発明において、前記制御部は、前記測定光の出射位置を、前記溶接方向の下流側から上流側に向かって移動させる制御を行うことを特徴とする。
【0024】
第7の発明では、溶接部の溶け込み深さは、溶接方向の上流側の方が、下流側よりも浅く測定される傾向にある。そのため、溶接方向の下流側から上流側にかけて測定することで、溶け込み深さの最深部を正確に測定することができる。
【0025】
第8の発明は、第1乃至7の発明のうち何れか1つにおいて、前記複数のレーザモジュールは、同じ波長の前記測定光を出射し、前記制御部は、前記測定光を前記複数のコアから異なるタイミングで出射させる制御を行うことを特徴とする。
【0026】
第8の発明では、測定光を複数のコアから異なるタイミングで出射することで、測定光の出射範囲を徐々に広げながら、溶接部の溶け込み深さを測定することができる。
【0027】
第9の発明は、第1又は2の発明において、前記複数のレーザモジュールは、互いに異なる波長の前記測定光を出射し、前記制御部は、前記複数の測定光を前記複数のコアから同時に出射させる制御を行うことを特徴とする。
【0028】
第9の発明では、互いに波長の異なる複数の測定光を、複数のコアから同時に出射することで、複数の異なる位置における溶接部の溶け込み深さを同時に測定することができる。
【0029】
第10の発明は、第1乃至9の発明のうち何れか1つにおいて、前記制御部は、さらに、前記光干渉計装置により前記ワークの前記溶接部における互いに異なる位置で測定された複数の溶け込み深さに基づいて、該溶接部における溶け込み形状を示す三次元データを取得することを特徴とする。
【0030】
第10の発明では、溶接部の溶け込み形状を示す三次元データを取得することで、溶け込み形状を把握し易くなる。
【0031】
第11の発明は、第10の発明において、前記制御部で取得された前記三次元データを表示する表示部を備えたことを特徴とする。
【0032】
第11の発明では、溶接部の溶け込み形状を示す三次元データをモニタ等に表示することで、溶け込み形状を視覚的に把握し易くなる。
【0033】
第12の発明は、第10又は11の発明において、前記制御部は、取得した前記三次元データに基づいて、前記溶接部のビード幅を測定することを特徴とする。
【0034】
第12の発明では、溶接部の溶け込み形状を示す三次元データに基づいて、溶接部のビード幅を把握することができる。
【0035】
第13の発明は、所定の溶接方向に沿ってレーザ光を出射しながらワークを溶接するレーザ溶接方法であって、前記レーザ光と、複数のレーザモジュールにより該レーザ光とは波長の異なる測定光とを発生させる工程と、前記レーザ光と、前記複数のレーザモジュールに対応してそれぞれの該レーザモジュールにそれぞれ接続される複数のコアを有するイメージファイバを介して伝送された前記測定光とを同軸状に重ね合わせて前記ワークに向けて出射する工程と、前記ワークで反射した前記測定光に基づいて、該ワークの溶接部の溶け込み深さを測定する工程と、前記ワークのレーザ溶接中に、前記複数のコアのうち前記測定光を出射させる該コアを選択的に切り替えるように、前記複数のレーザモジュールの動作を制御する工程とを備えたことを特徴とする。
【0036】
第13の発明では、ワークのレーザ溶接中に、複数の異なる位置で溶接部の溶け込み深さを測定することで、複数の測定結果に基づいて、溶接部の最深部の溶け込み深さを正確に把握することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、ワークのレーザ溶接中に、溶接部の最深部の溶け込み深さを正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本実施形態1に係るレーザ溶接装置の構成を示す図である。
【
図2】測定光の検出信号に対して高速フーリエ変換処理を実行して、溶け込み深さを算出した状態を示すグラフ図である。
【
図3】イメージファイバを入射端側から見たときの図である。
【
図4】複数のコアに対する第1測定光の入射順序と溶接方向との関係を示す図である。
【
図5】第1コアから第9コアで測定された溶け込み深さの状態を示す図である。
【
図6】複数の異なる位置で測定された溶け込み深さを合成した三次元データを模式的に示す図である。
【
図7】表示部に表示させる三次元データを示す図である。
【
図8】本実施形態1の変形例において、複数のコアに対する第1測定光の入射順序と溶接方向との関係を示す図である。
【
図9】本実施形態2に係るイメージファイバを入射端側から見たときの図である。
【
図10】溶接終了位置における測定光の出射パターンを示す図である。
【
図11】本実施形態2の変形例に係るイメージファイバを入射端側から見たときの図である。
【
図12】溶接終了位置における測定光の出射パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0040】
《実施形態1》
図1に示すように、レーザ溶接装置1は、レーザ光発振器10と、測定光発振器15と、光干渉計装置20と、イメージファイバ30と、レーザヘッド50と、ロボット2と、ロボット制御部16とを備える。
【0041】
レーザ光発振器10は、レーザ光Lを発生させる。レーザ光発振器10は、伝送ファイバ11によってレーザヘッド50と接続される。レーザ光Lは、レーザ光発振器10から伝送ファイバ11を介して、レーザヘッド50に伝送される。
【0042】
測定光発振器15は、複数のレーザモジュール15aを有する。複数のレーザモジュール15aは、レーザ光Lとは波長の異なる測定光Sをそれぞれ発生させる。複数のレーザモジュール15aは、同じ波長の測定光Sを出射する。なお、複数のレーザモジュール15aは、互いに異なる波長の測定光Sを出射するようにしてもよい。
【0043】
測定光発振器15のレーザモジュール15aで発生した測定光Sは、光干渉計装置20に入射する。なお、レーザ光Lと測定光Sとの波長差は、100nm以上とすることが好ましい。
【0044】
測定光発振器15は、レーザ光Lと波長が異なるとともに、波長幅の短い測定光Sを連続的に出射し、出射する測定光Sの中心波長を、周期的に変化させる。このように測定光Sの中心波長を周期的に変化させる動作を波長走査と呼ぶ。
【0045】
光干渉計装置20は、Swept Source Optical Coherence Tomography(SS-OCT:波長走査型光干渉断層法)の技術を用いて、ワーク60の溶接部65の溶け込み深さを測定する。
【0046】
光干渉計装置20は、検出部21と、制御部26とを有する。検出部21は、光干渉光学部22と、差分信号生成部25とを含む。
【0047】
光干渉光学部22は、複数のビームスプリッタ23と、複数の参照ミラー24とを有する。複数のビームスプリッタ23及び複数の参照ミラー24は、複数のレーザモジュール15aに対応するように設けられる。ビームスプリッタ23は、測定光発振器15のレーザモジュール15aから出射された測定光Sを、第1測定光S1と第2測定光S2とに分割する。
【0048】
第1測定光S1とは、測定対象である溶接部65に出射される測定光のことを意味し、第2測定光S2とは、基準面である参照ミラー24に出射される測定光を意味する。
【0049】
参照ミラー24は、第2測定光S2を反射する。参照ミラー24で反射された第2測定光S2は、差分信号生成部25に導光される。第1測定光S1は、カプラ20aを介してイメージファイバ30に入射する。カプラ20aは、複数のビームスプリッタ23のそれぞれに対応して複数設けられる。第1測定光Sは、イメージファイバ30及びレーザヘッド50を介して、ワーク60の溶接部65に出射される。この際、第1測定光S1は、レーザヘッド50内の光学系によって、レーザ光Lと同軸状に重ね合わされる。
【0050】
ワーク60の溶接部65に出射された第1測定光S1の一部は、溶接部65で反射され、イメージファイバ30を介して光干渉計装置20に入射する。光干渉計装置20に入射した第1測定光S1は、ビームスプリッタ23で反射され、差分信号生成部25に入射する。
【0051】
ここで、ビームスプリッタ23を透過してから差分信号生成部25に入射されるまでに、第1測定光S1が通過した光路の長さを、第1測定光S1の光路長とする。
【0052】
第2測定光S2は、ビームスプリッタ23で反射され、参照ミラー24に導光される。参照ミラー24に導光された第2測定光S2は、参照ミラー24で反射した後、差分信号生成部25に入射する。
【0053】
ここで、ビームスプリッタ23で反射してから差分信号生成部25に入射されるまでに、第2測定光S2が通過した光路の長さを、第2測定光S2の光路長とする。第2測定光S2の光路長は、基準値として予め測定しておく。
【0054】
通常、第1測定光S1の光路長と第2測定光S2の光路長は、同じになるように予め調整される。例えば、ワーク60に溶け込みが生じていない場合に、参照ミラー24は、2つの光路長が同じになるように位置が調整される。
【0055】
このとき、第1測定光S1と第2測定光S2とが1つの光束に結合されることで干渉光となり、干渉光を示す検出信号が差分信号生成部25に入射される。
【0056】
差分信号生成部25は、ワーク60で反射した第1測定光S1及び参照ミラー24で反射した第2測定光S2を受け取って、第1測定光S1及び第2測定光S2の光路長の位相差を示す差分信号を生成する。
【0057】
具体的に、差分信号生成部25は、差動ディテクタ25aと、A/D変換器25bとを有する。差動ディテクタ25aは、第1測定光S1及び第2測定光S2の干渉光に含まれるノイズの影響を除去する。差動ディテクタ25aは、ノイズを除去した干渉光を、その強度に応じて電気信号に変換して、第1測定光S1及び第2測定光S2の光路長の位相差を示す差分信号を生成する(
図2参照)。差動ディテクタ25aは、生成した差分信号をA/D変換器25bへ出力する。
【0058】
A/D変換器25bには、波長走査の繰り返し周波数と同期したトリガ出力が、測定光発振器15から入力される。入力されたトリガ出力に基づくことで、A/D変換器25bは、測定光発振器15の繰り返しの周期と同期して、差動ディテクタ25aから出力される差分信号についての集録を行う。
【0059】
干渉光には、第1測定光S1と第2測定光S2との光路長差に応じた干渉が生じる。第1測定光S1と第2測定光S2の光路長の位相差を示す差分信号は、制御部26の演算部27へ出力される。演算部27は、入力された差分信号に基づいて、ワーク60の溶接部65の溶け込み深さを算出する。
【0060】
具体的に、演算部27は、入力された差分信号に対して、高速フーリエ変換(FFT)処理を実行し、処理の結果に基づいて、溶接部65の溶け込み深さを算出する(
図2参照)。
【0061】
図3に示すように、イメージファイバ30は、複数のコア31と、クラッド32と、保護皮膜33とを有する。イメージファイバ30は、第1測定光S1をレーザヘッド50に伝送する。
【0062】
複数のコア31は、互いに間隔をあけて配置される。
図3に示す例では、3行×3列で配置された合計9つのコア31を有する。コア31は、例えば、石英ガラスで構成される。本実施形態では、コア31の直径を10μm~100μmとしている。複数のコア31は、複数のレーザモジュール15aに対応してそれぞれ配置される。複数のコア31は、複数のレーザモジュール15aに対して直接又は間接的に接続される。
【0063】
クラッド32は、例えば、フッ素がドープされた石英ガラスで構成される。クラッド32の屈折率は、コア31の屈折率よりも低い。
【0064】
クラッド32の外周部には、保護皮膜33が設けられる。保護皮膜33は、例えば、合成樹脂で構成される。保護皮膜33は、石英ガラスで構成されたコア31及びクラッド32を機械的に保護する。保護皮膜33は、イメージファイバ30から第1測定光S1が漏れ出したり、外部からイメージファイバ30に光が漏れ込むのを抑える。
【0065】
制御部26は、複数のレーザモジュール15aの動作を制御する。具体的に、制御部26は、ワーク60のレーザ溶接中に、複数のコア31のうち第1測定光Sを出射させるコア31を選択的に切り替えるように、複数のレーザモジュール15aの動作を制御する。本実施形態では、レーザ溶接速度を5m/minとしている。
【0066】
ワーク60は、上下に重ね合わされた上側板61と下側板62とを有する。レーザ溶接装置1は、上側板61の上面にレーザ光Lを出射することで、上側板61と下側板62とを溶接する。
【0067】
レーザヘッド50は、第1コリメートレンズ51と、第2コリメートレンズ52と、ダイクロイックミラー53と、集光レンズ54と、XYZステージ55とを有する。
【0068】
第1コリメートレンズ51は、伝送ファイバ11の出射端から出射されたレーザ光Lを平行化する。第2コリメートレンズ52は、イメージファイバ30の出射端から出射された第1測定光S1を平行化する。
【0069】
XYZステージ55は、第2コリメートレンズ52の入射側に配置される。XYZステージ55には、イメージファイバ30の出射端が接続される。XYZステージ55は、ダイクロイックミラー53に対する第1測定光S1の入射位置を調整する。
【0070】
ダイクロイックミラー53は、レーザ光Lを透過するとともに、第1測定光S1を反射する。ダイクロイックミラー53は、レーザ光L及び第1測定光S1を同軸状に重ね合わせて、集光レンズ54に導光する。
【0071】
集光レンズ54は、レーザ光L及び第1測定光S1を集光する。集光レンズ54で集光されたレーザ光L及び第1測定光S1は、ワーク60に出射される。
【0072】
なお、集光レンズ54は、ワーク60の溶接部65から反射した第1測定光S1を、ダイクロイックミラー53を介して、光干渉計装置20に再度、入射させる機能も有する。
【0073】
ロボット2は、ロボットアーム3を有する。ロボットアーム3の先端部には、レーザヘッド50が取り付けられる。ロボットアーム3は、複数の関節部4を有する。
【0074】
ロボット2は、ロボット制御部16からの指令に基づいて、レーザヘッド50を所定の溶接方向に沿って移動させ、ワーク60に対するレーザヘッド50の位置を変更する。これにより、ワーク60に対するレーザ光L及び第1測定光S1の位置を移動させ、レーザ溶接を行う。
【0075】
ロボット制御部16は、レーザ光発振器10、レーザヘッド50、及びロボット2に接続される。ロボット制御部16は、レーザ光発振器10、レーザヘッド50、及びロボット2の動作を制御する。ロボット制御部16は、レーザヘッド50の移動速度の他に、レーザ光Lの出力開始や停止、レーザ光Lの出力強度などを制御する機能も備える。
【0076】
レーザ溶接装置1では、上側板61と下側板62とを有するワーク60の溶接部65を溶接するのにあたり、ワーク60の上方から上側板61の上面にレーザ光Lが出射される。
【0077】
レーザ光Lが出射された溶接部65は、その上部から溶融して溶融池が形成される。溶接部65が溶融する際に、溶融池から溶融金属が蒸発し、蒸発時に生じる蒸気の圧力によってキーホール66が形成される。ここでは、溶融池とキーホール66とを合わせて溶接部65として扱う。溶融池の溶接方向の後方には、溶融池が凝固することで溶接ビードが形成される。
【0078】
このとき、複数のレーザモジュール15aのうち1つのレーザモジュール15aから出射された第1測定光S1が、ダイクロイックミラー53により、レーザ光発振器10から出射されたレーザ光Lと同軸状に重ね合わされる。レーザ光Lと第1測定光S1とは、キーホール66の内部に出射される。出射された第1測定光S1は、キーホール66の底部で反射し、ダイクロイックミラー53を介して、光干渉計装置20に入射する。
【0079】
光干渉計装置20の差分信号生成部25では、第1測定光S1と第2測定光S2の光路長の位相差を示す差分信号が生成される。制御部26の演算部27では、差分信号に基づいて、キーホール66の深さを、溶接部65の溶け込み深さとして算出する。レーザ溶接装置1では、特定した溶け込み深さに基づいて、溶接部65の良否を判断するようにしている。
【0080】
ところで、キーホール66は、溶接部65で溶融した金属が蒸発し、蒸発時の蒸気の圧力によって形成される。形成されるキーホール66の形状は、レーザ光Lの出射時間や溶融池の状態によって変化する。
【0081】
具体的に、キーホール66の溶接方向の前方の内壁部は、レーザヘッド50の移動速度(溶接速度)が速くなるほど、キーホール66の後方に向かって湾曲した形状となる傾向を示す。そのため、キーホール66の溶接方向の前方の内壁部では、溶け込みが浅い湾曲形状が生じてしまうこととなる。
【0082】
そこで、本実施形態では、溶接部65の最深部の溶け込み深さを正確に把握するために、複数の異なる位置で溶接部65の溶け込み深さを測定するようにした。
【0083】
具体的に、
図4に示すように、イメージファイバ30は、3行×3列の合計9つのコア31を有する。ここで、
図4で上段のコア31を、左から順に、「コア1」、「コア2」、「コア3」と呼ぶ。
図4で中段のコア31を、左から順に、「コア4」、「コア5」、「コア6」と呼ぶ。
図4で下段のコア31を、左から順に、「コア7」、「コア8」、「コア9」と呼ぶ。
【0084】
制御部26は、ワーク60のレーザ溶接中に、複数のレーザモジュール15aの動作を制御する。制御部26は、複数のコア31のうち第1測定光S1を出射させるコア31を選択的に切り替えるように、複数のレーザモジュール15aの出射タイミングを変更させる。
【0085】
図4でレーザヘッド50が右進している場合、つまり、溶接方向が右方向である場合、溶接方向の下流側に位置する「コア1」、「コア4」、「コア7」の順に、第1測定光S1を入射させる。「コア7」に第1測定光S1を入射させた後は、「コア2」、「コア5」、「コア8」の順に、第1測定光S1を入射させる。「コア8」に第1測定光S1を入射させた後は、「コア3」、「コア6」、「コア9」の順に、第1測定光S1を入射させる。その後、「コア1」に戻って、同様の動作を繰り返す。
【0086】
これにより、第1測定光S1の出射位置を、溶接方向と交差する方向、及び溶接方向に沿った方向にジグザグ状に移動させることで、第1測定光S1の出射範囲を広げながら、溶接部65の溶け込み深さを測定することができる。
【0087】
また、溶接部65の溶け込み深さは、溶接方向の上流側の方が、下流側よりも浅く測定される傾向にある。そのため、第1測定光S1の出射位置を、溶接方向の下流側から上流側に向かって移動させることで、溶接部65の溶け込み深さの最深部を正確に測定することができる。
【0088】
なお、第1測定光S1の出射位置を、溶接方向の上流側から下流側に向かって移動させるようにしてもよい。
【0089】
そして、
図4でレーザヘッド50が右進から前進に変化した場合、つまり、溶接方向が上方向である場合、溶接方向の下流側に位置する「コア7」、「コア8」、「コア9」の順に、第1測定光S1を入射させる。「コア9」に第1測定光S1を入射させた後は、「コア4」、「コア5」、「コア6」の順に、第1測定光S1を入射させる。「コア6」に第1測定光S1を入射させた後は、「コア1」、「コア2」、「コア3」の順に、第1測定光S1を入射させる。その後、「コア7」に戻って、同様の動作を繰り返す。
【0090】
なお、レーザヘッド50が前進から左進に変化した場合や、左進から後進に変化した場合についても同様に、第1測定光S1を入射させるコア31を、溶接方向の下流側から上流側に向かって切り替えるようにすればよいため、説明を省略する。
【0091】
図5に示すように、複数のコア31から第1測定光S1をそれぞれ出射して、溶接部65の複数箇所の溶け込み深さを測定する。ここで、
図5のグラフ図の横軸である深さ(周波数)は、1~4の値を取っているが、1<2<3<4という関係にあり、「4」が最も溶け込み深さが深い値となる。
【0092】
本実施形態では、キーホール66の開口径をφ0.5mm、キーホール66の最深部の深さを2~3mmと想定している。例えば、キーホール66の最深部の深さが3mmの場合、
図5のグラフ図の深さ(周波数)の「4」が、3mmに相当する。
【0093】
制御部26は、ワーク60の溶接部65における互いに異なる位置で測定された複数の溶け込み深さに基づいて、溶接部65における溶け込み形状を示す三次元データを取得する。
【0094】
具体的に、
図6に示すように、複数のコア31の位置と、各コア31での測定値とを合成した三次元データでは、溶接部65のキーホール66の形状を模式的に表現することができる。そして、
図6に示す例では、複数のコア31のうち、「コア5」から出射した第1測定光S1で測定した溶け込み深さが、溶接部65の最深部であることが分かる。
【0095】
図7に示すように、制御部26で取得された三次元データを、表示部28で表示するようにしてもよい。このように、溶接部65の溶け込み形状を示す三次元データを表示部28に表示することで、溶接部65の溶け込み形状を視覚的に把握し易くなる。
【0096】
また、制御部26は、取得した三次元データに基づいて、溶接部65のビード幅Wを測定するようにしてもよい。例えば、
図6で上段の「コア1」から出射された第1測定光S1の出射位置と、
図6で下段の「コア7」から出射された第1測定光S1の出射位置との間の距離を測定することで、溶接部65のビード幅Wを把握することができる(
図7参照)。
【0097】
なお、本実施形態では、3行×3列の合計9つのコア31を有するイメージファイバ30を用いた構成について説明したが、この形態に限定するものではない。例えば、5行×5列の合計25つのコア31を有するイメージファイバ30を用いてもよい。この場合、9つのコア31を有するイメージファイバ30よりも測定箇所を増やすことができるので、溶接部65の溶け込み深さをより正確に把握することができる。また、溶接部65における溶け込み形状を示す三次元データの分解能が高まるので、溶接部65のキーホール66の形状をより滑らかに表現することができる。
【0098】
-実施形態1の変形例-
以下、前記実施形態1と同じ部分については、同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
【0099】
本変形例では、複数のコア31に対する第1測定光S1の入射順序が、実施形態1とは異なっている。
【0100】
具体的に、
図8でレーザヘッド50が右進している場合、つまり、溶接方向が右方向である場合、溶接方向の下流側に位置する「コア1」、「コア4」、「コア7」の順に、第1測定光S1を入射させる。「コア7」に第1測定光S1を入射させた後は、「コア8」、「コア5」、「コア2」の順に、第1測定光S1を入射させる。「コア2」に第1測定光S1を入射させた後は、「コア3」、「コア6」、「コア9」の順に、第1測定光S1を入射させる。その後、「コア1」に戻って、同様の動作を繰り返す。
【0101】
そして、
図8でレーザヘッド50が右進から前進に変化した場合、つまり、溶接方向が上方向である場合、溶接方向の下流側に位置する「コア7」、「コア8」、「コア9」の順に、第1測定光S1を入射させる。「コア9」に第1測定光S1を入射させた後は、「コア6」、「コア5」、「コア4」の順に、第1測定光S1を入射させる。「コア4」に第1測定光S1を入射させた後は、「コア1」、「コア2」、「コア3」の順に、第1測定光S1を入射させる。その後、「コア7」に戻って、同様の動作を繰り返す。
【0102】
なお、レーザヘッド50が前進から左進に変化した場合や、左進から後進に変化した場合についても同様に、第1測定光S1を入射させるコア31を、溶接方向の下流側から上流側に向かって切り替えるようにすればよいため、説明を省略する。
【0103】
なお、第1測定光S1の出射位置を、溶接方向の上流側から下流側に向かって移動させるようにしてもよい。
【0104】
《実施形態2》
図9に示すように、イメージファイバ30は、複数のコア31と、クラッド32とを有する。なお、保護皮膜については、図示を省略している。
【0105】
複数のコア31は、イメージファイバ30の中心部から外周部に向かって間隔をあけて放射状に配置される。
図9に示す例では、中心部のコア31の周囲に沿って、6つのコア31が間隔をあけて配置される。
【0106】
制御部26は、第1測定光S1の出射位置を、イメージファイバ30の中心部から外周部のコア31に向かう渦巻き状の軌跡に沿って移動させる制御を行う。
図9に示す例では、イメージファイバ30の中心部のコア31に第1測定光S1を入射させた後、
図9で右上のコア31に第1測定光S1を入射させる。その後、イメージファイバ30の外周部のコア31に沿って、第1測定光S1の入射位置を、時計回り方向に順番に移動させる。
【0107】
そして、
図9で左上のコア31まで第1測定光S1を入射させた後、イメージファイバ30の中心部のコア31に第1測定光S1を入射させ、同様の動作を繰り返す。なお、第1測定光S1の入射位置を、中心部のコア31に戻さずに、外周部のコア31に沿って周回させるようにしてもよい。
【0108】
このようにすれば、レーザヘッド50の移動に伴って溶接方向が変更された場合でも、第1測定光S1の出射パターンを切り替える必要が無く、第1測定光S1を連続して広範囲に出射することができる。
【0109】
また、本実施形態では、ワーク60の溶接開始位置と溶接終了位置とで、第1測定光S1の出射パターンを変更するようにしている。
【0110】
具体的に、ワーク60の溶接開始位置では、
図9に示すように、第1測定光S1の出射位置を、イメージファイバ30の中心部から外周部のコア31に向かう渦巻き状の軌跡に沿って移動させる。
【0111】
具体的に、溶接開始位置では、ワーク60の溶接部65の中心部が先行して溶融するため、溶接部65の中心部から外周部に向かって第1測定光S1の出射位置を移動させることで、溶け込み深さの最深部を正確に把握することができる。
【0112】
一方、ワーク60の溶接終了位置では、
図9に示すように、第1測定光S1の出射位置を、イメージファイバ30の外周部から中心部のコア31に向かう渦巻き状の軌跡に沿って移動させる。
【0113】
具体的に、溶接終了位置では、ワーク60の溶接部65の外周部から中心部に向かって第1測定光S1の出射位置を移動させ、溶接終了位置の中心部に第1測定光S1を出射させることで、溶け込み深さの最深部を正確に把握することができる。
【0114】
-実施形態2の変形例-
図10に示すように、イメージファイバ30は、複数のコア31と、クラッド32とを有する。なお、保護皮膜については、図示を省略している。
【0115】
複数のコア31は、イメージファイバ30の中心部から外周部に向かう渦巻き形状となるように、互いに間隔をあけて配置される。
【0116】
制御部26は、第1測定光S1の出射位置を、イメージファイバ30の中心部から外周部のコア31に向かう渦巻き状の軌跡に沿って移動させる制御を行う。
【0117】
このようにすれば、レーザヘッド50の移動に伴って溶接方向が変更された場合でも、第1測定光S1の出射パターンを切り替える必要が無く、第1測定光S1を連続して広範囲に出射することができる。
【0118】
また、本変形例では、ワーク60の溶接開始位置と溶接終了位置とで、第1測定光S1の出射パターンを変更するようにしている。
【0119】
具体的に、ワーク60の溶接開始位置では、
図10に示すように、第1測定光S1の出射位置を、イメージファイバ30の中心部から外周部のコア31に向かう渦巻き状の軌跡に沿って移動させる。
【0120】
一方、ワーク60の溶接終了位置では、
図11に示すように、第1測定光S1の出射位置を、イメージファイバ30の外周部から中心部のコア31に向かう渦巻き状の軌跡に沿って移動させる。
【0121】
《その他の実施形態》
前記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0122】
本実施形態では、複数のレーザモジュール15aは、同じ波長の第1測定光S1を出射し、制御部26は、第1測定光Sを複数のコア31から異なるタイミングで出射させる制御を行うようにしたが、この形態に限定するものではない。
【0123】
例えば、複数のレーザモジュール15aは、互いに異なる波長の第1測定光S1を出射し、制御部26は、複数の第1測定光S1を複数のコア31から同時に出射させる制御を行うようにしてもよい。
【0124】
具体的に、複数のレーザモジュール15aのうち1つから出射される第1測定光S1の波長を1300nmとした場合、その他のレーザモジュール15aから出射される第1測定光S1の波長を、1350nm、1400nm、・・・となるように、50nmずつずらすようにすればよい。
【0125】
このように、互いに波長の異なる複数の第1測定光S1を、複数のコア31から同時に出射することで、複数の異なる位置における溶接部65の溶け込み深さを同時に測定することができる。
【0126】
また、本実施形態では、制御部26の演算部27において、光干渉計装置20の差分信号生成部25からの差分信号を受けてワーク60の溶接部65の溶け込み深さを算出するようにしているが、光干渉計装置20自体に別の演算部(図示せず)を設けて、ワーク60の溶接部65の溶け込み深さを算出するようにしてもよい。
【0127】
また、本実施形態では、光干渉計装置20は、光干渉光学部22と差分信号生成部25とを含む検出部21を有する構成としたが、差分信号生成部25を別体で設けるようにしてもよい。
【0128】
また、本実施形態では、ロボット制御部16と、光干渉計装置20の制御部26とを別体で構成するようにしたが、ロボット制御部16が、光干渉計装置20の制御部26の機能を含むようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0129】
以上説明したように、本発明は、ワークのレーザ溶接中に、溶接部の最深部の溶け込み深さを正確に把握することができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0130】
1 レーザ溶接装置
10 レーザ光発振器
15 測定光発振器
15a レーザモジュール
20 光干渉計装置
21 検出部
22 光干渉光学部
23 ビームスプリッタ
24 参照ミラー(ミラー)
25 差分信号生成部
26 制御部
27 演算部
28 表示部
30 イメージファイバ
31 コア
50 レーザヘッド
60 ワーク
65 溶接部
L レーザ光
S 測定光
S1 第1測定光
S2 第2測定光