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特開2023-108707フレキシブルフラットケーブル用絶縁テープ、フレキシブルフラットケーブル及びフレキシブルフラットケーブルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108707
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】フレキシブルフラットケーブル用絶縁テープ、フレキシブルフラットケーブル及びフレキシブルフラットケーブルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 17/56 20060101AFI20230731BHJP
   H01B 7/08 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
H01B17/56 A
H01B7/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009898
(22)【出願日】2022-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】323004813
【氏名又は名称】株式会社TOTOKU
(71)【出願人】
【識別番号】516332439
【氏名又は名称】株式会社樫の木製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 順盟
(72)【発明者】
【氏名】山口 正
(72)【発明者】
【氏名】大隈 航大
【テーマコード(参考)】
5G311
5G333
【Fターム(参考)】
5G311CB01
5G311CC04
5G333AA03
5G333AA13
5G333BA04
5G333CC18
5G333DA03
5G333DA14
5G333DA18
(57)【要約】
【課題】内層における気泡の発生を抑えることができ、膨れなどの外観上の問題や密着性の低下などの品質上の問題を防止し、車載用途等の高温下で使用可能な構成のフレキシブルフラットケーブルを提供することを目的とする。
【解決手段】フレキシブルフラットケーブル1Bは、第1基材4と接着剤層5とを有する絶縁テープ3を有し、複数の導体線2を絶縁テープ3にて上下から挟んで接着剤層5を加熱し製造したものであり、接着剤層5は有機溶媒を含有した状態で第1基材4に塗工された後に加熱して前記有機溶媒の残留量を0.5wt%未満にしたことによって、導体線2を絶縁テープ3にて上下から挟んで接着剤層5を加熱し製造するに際して内層における気泡の発生を抑えた構成である。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と接着剤層とを有する絶縁テープであって、前記接着剤層は有機溶媒を含有した状態で前記基材に塗工された後に加熱して前記有機溶媒の残留量を0.5wt%未満にしたことによって、複数の導体線を上下から挟んで前記接着剤層を加熱しフレキシブルフラットケーブルを製造するに際して内層における気泡の発生を抑える構成であること
を特徴とするフレキシブルフラットケーブル用絶縁テープ。
【請求項2】
前記基材は、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレートまたはフッ素系樹脂から選択される一種からなり、前記接着剤層は、ポリエステル系接着剤、アクリル系接着剤またはオレフィン系接着剤からなること
を特徴とする請求項1に記載のフレキシブルフラットケーブル用絶縁テープ。
【請求項3】
前記有機溶媒は、芳香族炭化水素系溶媒またはケトン系溶媒を含む構成であること
を特徴とする請求項1または2に記載のフレキシブルフラットケーブル用絶縁テープ。
【請求項4】
基材と接着剤層とを有する絶縁テープを有し、複数の導体線を前記絶縁テープにて上下から挟んで前記接着剤層を加熱し製造したものであり、前記接着剤層は有機溶媒を含有した状態で前記基材に塗工された後に加熱して前記有機溶媒の残留量を0.5wt%未満にしたことによって、前記導体線を前記絶縁テープにて上下から挟んで前記接着剤層を加熱し製造するに際して内層における気泡の発生を抑えた構成であること
を特徴とするフレキシブルフラットケーブル。
【請求項5】
前記基材は、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレートまたはフッ素系樹脂から選択される一種からなり、前記接着剤層は、ポリエステル系接着剤、アクリル系接着剤またはオレフィン系接着剤からなること
を特徴とする請求項4に記載のフレキシブルフラットケーブル。
【請求項6】
前記基材は第1基材であり、前記接着剤層が第2基材に設けられた補強テープを有し、前記第2基材は、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレートまたはフッ素系樹脂から選択される一種からなり、長手方向の一端側または他端側のいずれかないしは両方に前記補強テープが配されており、前記接着剤層は前記有機溶媒を含有した状態で前記第2基材に塗工された後に加熱して前記有機溶媒の残留量を0.5wt%未満にしたことによって、前記接着剤層を加熱し製造するに際して内層における気泡の発生を抑えた構成であること
を特徴とする請求項5に記載のフレキシブルフラットケーブル。
【請求項7】
前記有機溶媒は、芳香族炭化水素系溶媒またはケトン系溶媒を含む構成であること
を特徴とする請求項4~6のいずれか一項に記載のフレキシブルフラットケーブル。
【請求項8】
基材と接着剤層とを有する絶縁テープを有し、複数の導体線を前記絶縁テープにて上下から挟んで前記接着剤層を加熱し製造したフレキシブルフラットケーブルの製造方法であって、前記接着剤層は有機溶媒を含有した状態で前記基材に塗工した後に加熱することで前記有機溶媒の残留量を0.5wt%未満にした状態の前記絶縁テープにして、前記導体線を前記絶縁テープにて上下から挟んで前記接着剤層を加熱し製造することで内層における気泡の発生を抑えること
を特徴とするフレキシブルフラットケーブルの製造方法。
【請求項9】
前記基材は、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレートまたはフッ素系樹脂から選択される一種からなり、前記接着剤層は、ポリエステル系接着剤、アクリル系接着剤またはオレフィン系接着剤からなること
を特徴とする請求項8に記載のフレキシブルフラットケーブルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルフラットケーブル用絶縁テープ、フレキシブルフラットケーブル及びフレキシブルフラットケーブルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トルエン等の有機溶媒を含む接着剤を塗工したポリイミドフィルムを用いたフレキシブルフラットケーブルが提案されている(特許文献1:特開2018-056018号公報、特許文献2:特開2018-059060号公報、特許文献3:特開2021-138815号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-056018号公報
【特許文献2】特開2018-059060号公報
【特許文献3】特開2021-138815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~3には、接着剤層にはトルエン等の溶剤を含んでいてもよいとの記載がある。接着剤層に溶剤(有機溶媒)を含めない場合、接着性樹脂を溶解させるには高温加熱を行う必要があるが、高温状態を保持したまま接着剤をフィルムに塗工することは材料面や設備面からみても困難であり、実現性が乏しい。また、特許文献1~3には、トルエンを含む接着剤をポリイミドフィルムに塗布し、90℃で3分乾燥させたとの記述がある。接着剤に有機溶媒を含めた場合、接着剤の粘度を低下させることができ、一定粘度となった接着剤を所定の厚さに設定して基材となるフィルムに塗工することができるが、90℃で3分程度の乾燥条件ではトルエンは揮発せずに接着剤に残留する。対応策のひとつとして、ラミネート工程における加熱温度を高くすることが考えられる。しかし、従来技術は、ラミネート工程における加熱温度を高くすると、加熱の際に、内層の接着剤に残留した有機溶媒が揮発して気泡が発生し、前記気泡がフレキシブルフラットケーブルに内包されてしまい、膨れなどの外観上の問題や、密着性の低下などの品質上の問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、有機溶媒が含有された接着剤を基材に塗工したことで所望の厚さで均一に塗工された構成にしつつ、塗工した前記接着剤を乾燥させて前記有機溶媒の残留量を0.5wt%未満に抑えた接着剤層にしたことで、複数の導体線を上下から挟んで前記接着剤層を加熱しフレキシブルフラットケーブルを製造するに際して内層における気泡の発生を抑えることができ、膨れなどの外観上の問題や密着性の低下などの品質上の問題を防止し、車載用途等の高温下で使用可能な構成のフレキシブルフラットケーブル用絶縁テープ、フレキシブルフラットケーブル及びフレキシブルフラットケーブルの製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
一実施形態として、以下に開示するような解決策により、前記課題を解決する。
【0007】
本発明に係るフレキシブルフラットケーブル用絶縁テープは、基材と接着剤層とを有する絶縁テープであって、前記接着剤層は有機溶媒を含有した状態で前記基材に塗工された後に加熱して前記有機溶媒の残留量を0.5wt%未満にしたことによって、複数の導体線を上下から挟んで前記接着剤層を加熱しフレキシブルフラットケーブルを製造するに際して内層における気泡の発生を抑える構成であることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、有機溶媒を含有した接着剤を塗工したことで、基材に均一な厚さの接着剤層が形成できる。尚且つ、前記接着剤層における前記有機溶媒の残留量を0.5wt%未満に抑えているので、フレキシブルフラットケーブルを製造するに際して、複数の導体線を上下から挟んで内層にて前記接着剤層を加熱するときの内層における気泡の発生を抑えることができ、膨れなどの外観上の問題や密着性の低下などの品質上の問題を防止し、車載用途等の高温下で使用可能な構成のフレキシブルフラットケーブル用絶縁テープにできる。前記フレキシブルフラットケーブル用絶縁テープは補強テープとして用いることもできる。
【0009】
本発明に係るフレキシブルフラットケーブルは、基材と接着剤層とを有する絶縁テープを有し、複数の導体線を前記絶縁テープにて上下から挟んで前記接着剤層を加熱し製造したものであり、前記接着剤層は有機溶媒を含有した状態で前記基材に塗工された後に加熱して前記有機溶媒の残留量を0.5wt%未満にしたことによって、前記導体線を前記絶縁テープにて上下から挟んで前記接着剤層を加熱し製造するに際して内層における気泡の発生を抑えた構成であることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、有機溶媒を含有した接着剤を塗工したことで、基材に均一な厚さの接着剤層が形成できる。尚且つ、前記接着剤層における前記有機溶媒の残留量を0.5wt%未満に抑えているので、複数の導体線を上下から挟んで内層にて前記接着剤層を加熱するときの内層における気泡の発生を抑えることができ、膨れなどの外観上の問題や密着性の低下などの品質上の問題を防止し、車載用途等の高温下で使用可能な構成のフレキシブルフラットケーブルにできる。
【0011】
前記基材は、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレートまたはフッ素系樹脂から選択される一種からなることが好ましい。この構成によれば、熱膨張係数が同じ耐熱性樹脂材料を用いているので、高温条件下においても歪みが抑えられて高い信頼性が得られる。
【0012】
前記接着剤は、ポリエステル系接着剤、アクリル系接着剤またはオレフィン系接着剤からなることが好ましい。この構成によれば、基材との優れた接着性が得られる。一例として、前記有機溶媒は、芳香族炭化水素系溶媒またはケトン系溶媒を含む構成である。前記内層における前記有機溶媒の前記残留量は検出限界以下の場合がある。
【0013】
一例として、前記基材は第1基材であり、前記接着剤層が第2基材に設けられた補強テープを有し、前記第2基材は、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレートまたはフッ素系樹脂から選択される一種からなり、長手方向の一端側または他端側のいずれかないしは両方に前記補強テープが配されており、前記接着剤層は前記有機溶媒を含有した状態で前記第2基材に塗工された後に加熱して前記有機溶媒の残留量を0.5wt%未満にしたことによって、前記接着剤層を加熱し製造するに際して内層における気泡の発生を抑えた構成のフレキシブルフラットケーブルである。この構成によれば、補強テープを設けたことで、外部コネクタの挿入口のサイズに合わせて差し込むことが容易にできるので、本体の柔軟性を維持しつつ、外部コネクタとの優れた接続性能を有するフレキシブルフラットケーブルにできる。前記第1基材と前記第2基材には、材質が同じ組み合わせ、異なる組み合わせを選択して用いることができる。
【0014】
本発明に係るフレキシブルフラットケーブルの製造方法は、基材と接着剤層とを有する絶縁テープを有し、複数の導体線を前記絶縁テープにて上下から挟んで前記接着剤層を加熱し製造したフレキシブルフラットケーブルの製造方法であって、前記接着剤層は有機溶媒を含有した状態で前記基材に塗工した後に加熱することで前記有機溶媒の残留量を0.5wt%未満にした状態の前記絶縁テープにして、前記導体線を前記絶縁テープにて上下から挟んで前記接着剤層を加熱し製造することで内層における気泡の発生を抑えることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、有機溶媒を含有した接着剤を塗工した後に加熱することで、基材に均一な厚さの接着剤層が形成できる。尚且つ、前記接着剤層における前記有機溶媒の残留量を0.5wt%未満に抑えているので、複数の導体線を上下から挟んで内層にて前記接着剤層を加熱するときの内層における気泡の発生を抑えることができ、膨れなどの外観上の問題や密着性の低下などの品質上の問題を防止し、車載用途等の高温下で使用可能な構成のフレキシブルフラットケーブルにできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基材に均一な厚さの接着剤層が形成できる。尚且つ、複数の導体線を上下から挟んで内層にて前記接着剤層を加熱するときの内層における気泡の発生を抑えることができ、膨れなどの外観上の問題や密着性の低下などの品質上の問題を防止し、車載用途等の高温下で使用可能な構成のフレキシブルフラットケーブルが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1Aは本発明の実施形態に係るフレキシブルフラットケーブルの第1例を模式的に示す平面図であり、図1B図1Aに示すフレキシブルフラットケーブルの側面図である。
図2図2図1Aに示すフレキシブルフラットケーブルのII-II線断面図である。
図3図3Aは本実施形態に係る絶縁テープを模式的に示す断面図であり、図3Bは本実施形態に係る補強テープを模式的に示す断面図である。
図4図4Aは本実施形態に係るラミネートした状態のワークを模式的に示す平面図であり、図4B図4Aに示すワークの側面図であり、図4C図4Aに示すワークの底面図であり、図4D図4Aに示すワークを分断した状態を示す側面図である。
図5図5Aは本実施形態に係るフレキシブルフラットケーブルの第2例を模式的に示す平面図であり、図5B図5Aに示すフレキシブルフラットケーブルの側面図である。
図6図6図5Aに示すフレキシブルフラットケーブルのVI-VI線断面図である。
図7図7Aは本実施形態に係るフレキシブルフラットケーブルの第3例を模式的に示す側面図であり、図7Bは本実施形態に係るフレキシブルフラットケーブルの第4例を模式的に示す側面図であり、図7Cは本実施形態に係るフレキシブルフラットケーブルの第5例を模式的に示す側面図であり、図7Dは本実施形態に係るフレキシブルフラットケーブルの第6例を模式的に示す側面図であり、図7Eは本実施形態に係るフレキシブルフラットケーブルの第7例を模式的に示す側面図である。
図8図8Aは本実施形態に係るフレキシブルフラットケーブルの第8例を模式的に示す側面図であり、図8Bは本実施形態に係るフレキシブルフラットケーブルの第9例を模式的に示す側面図であり、図8Cは本実施形態に係るフレキシブルフラットケーブルの第10例を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。本実施形態に係るフレキシブルフラットケーブル1は、車載用途等の高温下で使用される電子機器の内部配線に適用される。フレキシブルフラットケーブル1は、複数の導体線2を、絶縁テープ3にて上下から挟んで当該絶縁テープ3における接着剤層5を加熱して熱硬化した一体構造になっている。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0019】
[絶縁テープ]
図3Aは本実施形態に係る絶縁テープ3を模式的に示す断面図である。絶縁テープ3は、耐熱性の絶縁フィルムからなる第1基材4に、接着剤層5が設けられている構成である。有機溶媒を含んだ接着剤を第1基材4に塗工したことで、第1基材4に基材に均一な厚さの接着剤層5が形成されている。そして、接着剤層5における前記有機溶媒の残留量を0.5wt%未満に抑えた構成である。絶縁テープ3は補強テープ6として用いることもできる。
【0020】
図3Bは本実施形態に係る補強テープ6を模式的に示す断面図である。補強テープ6は、耐熱性の絶縁フィルムからなる第2基材7に、接着剤層5が設けられている構成である。有機溶媒を含んだ接着剤を第2基材7に塗工したことで、第2基材7に基材に均一な厚さの接着剤層5が形成されている。そして、接着剤層5における前記有機溶媒の残留量を0.5wt%未満に抑えた構成である。第2基材7は第1基材4と異なる材質にする場合がある。
【0021】
続いて、第1例のフレキシブルフラットケーブル1Aについて、以下に説明する。
【0022】
[第1例]
図1Aは、第1例のフレキシブルフラットケーブル1Aを模式的に示す平面図であり、図1Bはその側面図である。フレキシブルフラットケーブル1Aは、接着剤層5が設けられた第1基材4からなる絶縁テープ3の上に、導体線2が所定ピッチで配されており、各導体線2の上に、接着剤層5が設けられた第1基材4からなる絶縁テープ3が配されてラミネートされた構成である。そして、長手方向の両端側にて導体線2の上面が露出しており、また、前記長手方向の両端側に対応する下方位置に、接着剤層5が設けられた第2基材7からなる補強テープ6が配されてラミネートされた構成である。
【0023】
導体線2は、良導電性の金属導体により形成されている。良導電性の金属導体としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、銅アルミニウム合金等や、これらの表面にめっきが施されたものを好適に採用することができる。めっきとしては、はんだめっき、錫めっき、金めっき、銀めっき、ニッケルめっき、錫ニッケル合金めっき等を採用することができる。特に、銅や銅合金を用いることにより、良好な柔軟性が得られる。導体線2は、一例として、所定ピッチで5~25芯数で配されている。なお、導体線2の材質は上記構成に限定されない。また、導体線2の芯数は上記構成に限定されない。
【0024】
導体線2の断面形状は、矩形、平角状、円形、楕円形が適用できる。各導体線2の厚さ、直径および断面積は特定の数値に限定されるものではないが、一例として、直径0.1~0.35mmの丸線、またはこの丸線を圧延して厚さが0.03~0.1mm、かつ、幅が0.2~0.8mmにした平角線を好適に採用することができる。各導体線2のピッチは0.25~1.25mm程度にすることができる。本実施形態は、導体線2は、断面形状が矩形で平角状の軟銅線を採用している。これにより、良好な柔軟性に加えて、外部コネクタにおける電極との優れた接続性能が得られる。
【0025】
導体線2の表面は、熱硬化性ポリウレタン樹脂等の耐熱性の絶縁被膜が設けられていてもよい。絶縁被膜は、はんだ付けの際に良好に分解可能な材質が好ましい。導体線2の表面に耐熱性の絶縁被膜を設けることで、各導体線2の互いの絶縁性を確保できるので、狭ピッチで配線することができる。
【0026】
図2は第1例のフレキシブルフラットケーブル1AにおけるII-II線断面図である。この例では、下から順に、第2基材7、接着剤層5、第1基材4、接着剤層5、複数の導体線2、接着剤層5、第1基材4が配されてラミネートされている。接着剤層5の厚さは、一例として、5~40μmである。接着剤層5の厚さを5μm以上にすることで、導体線2を挟み込んだ際に接着剤が過少になって導体線間に空隙が発生することを防止できる。接着剤層5の厚さを40μm以下にすることで、塗工して乾燥させた際に有機溶媒の残留量が0.5wt%未満に減少するのに必要な乾燥時間などの管理が容易になって生産性が向上する。接着剤層5の厚さは、25~40μmであることがより好ましい。
【0027】
第1基材4の厚さは、一例として、10~100μmである。第1基材4の厚さを10μm以上にすることで、十分な絶縁性能を確保することが容易にできる。第1基材4の厚さを100μm以下にすることで、必要な柔軟性を維持することが容易にできる。第1基材4の厚さは、12~35μmであることがより好ましい。第2基材7の厚さは、一例として、50~350μmである。第2基材7の厚さを50μm以上にすることで、外部コネクタに接続し易い強度を確保することが容易にできる。第2基材7の厚さを350μm以下にすることで、外部コネクタの規格に適した厚さにすることが容易にできる。第2基材7の厚さは、100~230μmであることがより好ましい。一例として、第1基材4はポリイミドからなる。一例として、第2基材7はポリエチレンナフタレートからなる。一例として、第1基材4はポリイミドからなる。一例として、第2基材7はポリエチレンナフタレートからなる。
【0028】
続いて、本実施形態に係るフレキシブルフラットケーブル1Aの製造方法について、以下に説明する。
【0029】
有機溶媒を含んだ接着剤を、ロールコータなどの塗工機を用いて、第1基材4に塗工する。同様に、有機溶媒を含んだ接着剤を、ロールコータなどの塗工機を用いて、第2基材7に塗工する。前記接着剤は、ポリエステル系接着剤、アクリル系接着剤またはオレフィン系接着剤からなる。前記有機溶媒は、芳香族炭化水素系溶媒またはケトン系溶媒を含む構成であり、一例として、メチルエチルケトンまたはトルエンを含んでいる。
【0030】
塗工した接着剤は、ヒータや乾燥炉などの乾燥機を用いて、所定の乾燥温度および所定の乾燥時間で、前記有機溶媒を揮発させる。前記乾燥温度は、一例として、120℃~150℃である。前記乾燥時間は、一例として、1~10分間である。前記乾燥機を用いて、塗工した後に加熱し有機溶媒を揮発させた状態の接着剤層5は、有機溶媒の残留量が0.5wt%未満になっている(図3A図3B)。
【0031】
そして、接着剤層5が内層になる向きで、第1基材4にて上下から導体線2を挟んで、熱ロールによって、所定の加熱温度で加熱しながらラミネートを行い、一体構造にする。必要に応じて第2基材7を第1基材4のラミネートと同時にラミネートする。一例として、前記熱ロールを所定間隔で複数配置し、必要に応じて複数の熱ロールにワークを通過させる。前記加熱温度は、一例として、150℃~200℃である。なお、第1基材4や第2基材のラミネートは、熱ロールに代えて、熱プレスを用いることもできる。また、第2基材7は、第1基材4のラミネートと同時にラミネートする構成に限られず、後工程でラミネートする場合や後工程で熱プレスする場合もある。
【0032】
図4A図4Cは、熱ロールによってラミネートした状態のワークを示している。ラミネートした状態のワークは、切断機によって分断されて、図4Dに示すように、導体線2の上面が長手方向の両端側にて露出しており、前記長手方向の両端側に対応する下方位置に第2基材7が配されている構成になる。その後、必要に応じてエージングし、外観検査および導通試験を行って、フレキシブルフラットケーブル1Aにする。
【0033】
続いて、第2例のフレキシブルフラットケーブル1Bについて、以下に説明する。
【0034】
[第2例]
図5Aは、第2例のフレキシブルフラットケーブル1Bを模式的に示す平面図であり、図5Bはその側面図であり、図6はフレキシブルフラットケーブル1BにおけるVI-VI線断面図である。フレキシブルフラットケーブル1Bは、接着剤層5が設けられた第1基材4からなる絶縁テープ3の上に、導体線2が所定ピッチで配されており、各導体線2の上に、接着剤層5が設けられた第1基材4からなる絶縁テープ3が配されてラミネートされた構成である。そして、長手方向の両端側にて導体線2の上面が露出している構成である。第2例は、補強テープ6を有していない構成である。第2例の製造方法は、上述の第1例と同様である。
【0035】
続いて、第3例のフレキシブルフラットケーブル1Cと、第4例のフレキシブルフラットケーブル1Dについて、以下に説明する。
【0036】
[第3例]
図7Aは、第3例のフレキシブルフラットケーブル1Cを模式的に示す側面図である。フレキシブルフラットケーブル1Cは、接着剤層5が設けられた第1基材4からなる絶縁テープ3の上に、導体線2が所定ピッチで配されており、各導体線2の上に、接着剤層5が設けられた第1基材4からなる絶縁テープ3が配されてラミネートされた構成である。そして、長手方向の一端側にて導体線2の上面が露出しており、また、前記長手方向の一端側に対応する下方位置に、接着剤層5が設けられた第2基材7からなる補強テープ6が配されてラミネートされた構成である。そして、長手方向の他端側にて導体線2の下面が露出しており、また、前記長手方向の他端側に対応する上方位置に、接着剤層5が設けられた第2基材7からなる補強テープ6が配されてラミネートされた構成である。
【0037】
[第4例]
図7Bは、第4例のフレキシブルフラットケーブル1Dを模式的に示す側面図である。フレキシブルフラットケーブル1Dは、接着剤層5が設けられた第1基材4からなる絶縁テープ3の上に、導体線2が所定ピッチで配されており、各導体線2の上に、接着剤層5が設けられた第1基材4からなる絶縁テープ3が配されてラミネートされた構成である。そして、長手方向の一端側にて導体線2の上面が露出しており、また、長手方向の他端側にて導体線2の下面が露出している構成である。
【0038】
続いて、第5例のフレキシブルフラットケーブル1Eと、第6例のフレキシブルフラットケーブル1Fと、第7例のフレキシブルフラットケーブル1Gについて、以下に説明する。
【0039】
[第5例]
図7Cは、第5例のフレキシブルフラットケーブル1Eを模式的に示す側面図である。フレキシブルフラットケーブル1Eは、接着剤層5が設けられた第1基材4からなる絶縁テープ3の上に、導体線2が所定ピッチで配されており、各導体線2の上に、接着剤層5が設けられた第1基材4からなる絶縁テープ3が配されてラミネートされた構成である。そして、長手方向の一端側にて導体線2の上面が露出しており、また、前記長手方向の一端側に対応する下方位置に、接着剤層5が設けられた第2基材7からなる補強テープ6が配されてラミネートされた構成である。そして、長手方向の他端側にて導体線2が全周に亘って露出している構成である。
【0040】
[第6例]
図7Dは、第6例のフレキシブルフラットケーブル1Fを模式的に示す側面図である。フレキシブルフラットケーブル1Fは、接着剤層5が設けられた第1基材4からなる絶縁テープ3の上に、導体線2が所定ピッチで配されており、各導体線2の上に、接着剤層5が設けられた第1基材4からなる絶縁テープ3が配されてラミネートされた構成である。そして、長手方向の一端側にて導体線2の上面が露出しており、また、長手方向の他端側にて導体線2が全周に亘って露出している構成である。
【0041】
[第7例]
図7Eは、第7例のフレキシブルフラットケーブル1Gを模式的に示す側面図である。フレキシブルフラットケーブル1Gは、接着剤層5が設けられた第1基材4からなる絶縁テープ3の上に、導体線2が所定ピッチで配されており、各導体線2の上に、接着剤層5が設けられた第1基材4からなる絶縁テープ3が配されてラミネートされた構成である。そして、長手方向の一端側にて導体線2が全周に亘って露出しており、また、長手方向の他端側にて導体線2が全周に亘って露出している構成である。
【0042】
続いて、第8例のフレキシブルフラットケーブル1Kと、第9例のフレキシブルフラットケーブル1Lと、第10例のフレキシブルフラットケーブル1Mについて、以下に説明する。
【0043】
[第8例]
図8Aは、第8例のフレキシブルフラットケーブル1Kを模式的に示す側面図である。フレキシブルフラットケーブル1Kは、接着剤層5が設けられた第1基材4からなる絶縁テープ3の上に、導体線2が所定ピッチで配されており、各導体線2の上に、接着剤層5が設けられた第1基材4からなる絶縁テープ3が配されてラミネートされた構成である。そして、長手方向の一端側にて導体線2の上面が露出しており、且つ、前記長手方向の一端側に対応する下方位置に、接着剤層5が設けられた第2基材7からなる補強テープ6が配されてラミネートされた構成である。そして、長手方向の他端側にて導体線2の上面が露出しており、且つ、前記長手方向の他端側に対応する下方位置に、接着剤層5が設けられた第2基材7からなる補強テープ6が配されてラミネートされた構成である。導体線2の端部は第2基材7に設けられて熱硬化した接着剤層5によって第2基材7に固定されている。
【0044】
[第9例]
図8Bは、第9例のフレキシブルフラットケーブル1Lを模式的に示す側面図である。フレキシブルフラットケーブル1Lは、接着剤層5が設けられた第1基材4からなる絶縁テープ3の上に、導体線2が所定ピッチで配されており、各導体線2の上に、接着剤層5が設けられた第1基材4からなる絶縁テープ3が配されてラミネートされた構成である。そして、長手方向の一端側にて導体線2の上面が露出しており、且つ、前記長手方向の一端側に対応する下方位置に、接着剤層5が設けられた第2基材7からなる補強テープ6が配されてラミネートされた構成である。そして、長手方向の他端側にて導体線2の下面が露出しており、且つ、前記長手方向の他端側に対応する上方位置に、接着剤層5が設けられた第2基材7からなる補強テープ6が配されてラミネートされた構成である。導体線2の端部は第2基材7に設けられて熱硬化した接着剤層5によって第2基材7に固定されている。
【0045】
[第10例]
図8Cは、第10例のフレキシブルフラットケーブル1Mを模式的に示す側面図である。フレキシブルフラットケーブル1Mは、接着剤層5が設けられた第1基材4からなる絶縁テープ3の上に、導体線2が所定ピッチで配されており、各導体線2の上に、接着剤層5が設けられた第1基材4からなる絶縁テープ3が配されてラミネートされた構成である。そして、長手方向の一端側にて導体線2の上面が露出しており、且つ、前記長手方向の一端側に対応する下方位置に、接着剤層5が設けられた第2基材7からなる補強テープ6が配されてラミネートされた構成である。そして、長手方向の他端側にて導体線2が全周に亘って露出している構成である。
【0046】
続いて、実施例1~2と、参考例1と、比較例1~2について、以下に説明する。
【0047】
[実施例]
上述の第1例のフレキシブルフラットケーブル1Aを実施例1~2として試作した。試作手順は、次のとおりである。有機溶媒を含んだ接着剤を、ロールコータなどの塗工機を用いて、第1基材4に塗工し当該第1基材4に均一な厚さの接着剤層5を形成した。同様に、有機溶媒を含んだ接着剤を、ロールコータなどの塗工機を用いて、第2基材7に塗工し当該第2基材7に均一な厚さの接着剤層5を形成した。接着剤層5は、ポリエステル系接着剤からなる。前記有機溶媒は、メチルエチルケトンを含んでいる。第1基材4はポリイミドからなる。第2基材7はポリエチレンナフタレートからなる。
【0048】
塗工した接着剤は、乾燥炉を用いて、所定の乾燥温度および所定の乾燥時間で、前記有機溶媒を揮発させた。前記乾燥温度は、135℃~150℃である。前記乾燥時間は、1分間である。塗工した後に加熱し有機溶媒を揮発させた状態の接着剤層5は、有機溶媒の残留量が0.5wt%未満になっている。このことは、熱分析装置を用いて熱重量分析を行って確認した。そして、接着剤層5が内層になる向きで、絶縁テープ3にて上下から導体線2を挟んで、熱ロールによって、所定の加熱温度で加熱しながらラミネートを行い、一体構造にした。また、補強テープ6を同時にラミネートした。前記加熱温度は、200℃である。そして、目視にて、内層における気泡の発生を確認した。
【0049】
[参考例、比較例]
上述の第1例と同様の構成部材を用いた構成であって、接着剤を塗工した後の乾燥温度条件のみを異ならせて参考例1と、比較例1~2を試作した。
【0050】
各試料の評価結果を次の表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
表1に示すように、実施例1と実施例2は、ラミネートする前段階にて、接着剤層5における残留溶媒は0.5wt%未満であり、また、ラミネートした後の内層には気泡の発生が見られなかった。比較例1と比較例2は、ラミネートする前段階にて、接着剤層における残留溶媒は1wt%超であり、また、ラミネートした後の内層には気泡が多発した。参考例1は、ラミネートする前段階にて、接着剤層における残留溶媒は0.5wt%であり、また、ラミネートした後の内層における気泡の発生率は比較例1の1/10以下に改善された。
【0053】
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1K、1L、1M フレキシブルフラットケーブル
2 導体線
3 絶縁テープ
4 第1基材
5 接着剤層
6 補強テープ
7 第2基材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8