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特開2023-108718清掃用ドライシート、清掃用ドライシートの製造方法及び薬液塗工方法
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  • 特開-清掃用ドライシート、清掃用ドライシートの製造方法及び薬液塗工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108718
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】清掃用ドライシート、清掃用ドライシートの製造方法及び薬液塗工方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20230731BHJP
   B05C 11/02 20060101ALI20230731BHJP
   B32B 37/02 20060101ALI20230731BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20230731BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20230731BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20230731BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
B32B27/00 B
B05C11/02
B32B37/02
B05D7/00 A
B05D3/00 C
B05D5/00 Z
B05D3/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009911
(22)【出願日】2022-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】513242210
【氏名又は名称】株式会社Life-do.Plus
(74)【代理人】
【識別番号】100142217
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 宜紀
(74)【代理人】
【識別番号】100119367
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 理
(72)【発明者】
【氏名】久保 和弘
【テーマコード(参考)】
4D075
4F042
4F100
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AA51
4D075AA76
4D075AC54
4D075AC80
4D075AC88
4D075BB01Z
4D075BB08Z
4D075CA45
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA04
4D075DB20
4D075DB48
4D075DC38
4D075EA05
4D075EC07
4F042AA22
4F042CB03
4F042DD09
4F042DF23
4F042ED03
4F100AK42
4F100AK42A
4F100AR00B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA07
4F100DG15
4F100DG15A
4F100EH46
4F100EH46B
4F100EH61
4F100EJ93
4F100EJ94
4F100GB81
4F100JC00
4F100JC00B
(57)【要約】
【課題】製造に必要な装置等の導入コストが低く、薬液ロスが少なく、薬液による効果を強く発揮できる清掃用ドライシート、清掃用ドライシートの製造方法及び薬液塗工方法を提供する。
【解決手段】シート状部材SBが巻芯にロール状に巻かれてなるシートロールSRから、シート状部材SBを送給するシート状部材送給工程ST101と、シート状部材SBと、シート状部材SBの面と接するよう配されるローラ23との接触箇所SKを基準としてシート状部材SBの送給方向の後方側に、且つ、接触箇所SKの近傍に向かって噴霧するよう配置された噴霧装置22を用いてシート状部材SB及びローラ23に抗菌性を有する薬液を噴霧する薬液塗工工程ST102とを含むよう構成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状部材と、
前記シート状部材に塗布される、抗菌性を有し、被清掃物に抗菌効果を付与できる分量の薬液と、
を備える清掃用ドライシート。
【請求項2】
請求項1に記載の清掃用ドライシートであって、
前記薬液が、前記シート状部材及び該シート状部材の面と接するよう配されるローラに付着するよう噴霧されることを特徴とする清掃用ドライシート。
【請求項3】
請求項2に記載の清掃用ドライシートであって、
前記薬液が、前記シート状部材と、該シート状部材の面と接するよう配されるローラとの接触箇所を基準として前記シート状部材の送給方向の後方側に、且つ、前記接触箇所の近傍に向かって噴霧するよう配置された噴霧装置を用いて噴霧されることを特徴とする清掃用ドライシート。
【請求項4】
シート状部材が巻芯にロール状に巻かれてなるシートロールから、該シート状部材を送給するシート状部材送給工程と、
前記シート状部材送給工程において送給される前記シート状部に、抗菌性を有し、被清掃物に抗菌効果を付与できる分量の薬液を塗布する薬液塗工工程と、
を含む清掃用ドライシートの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の清掃用ドライシートの製造方法であって、
前記薬液塗工工程が、前記シート状部材送給工程において送給される前記シート状部材、及び、該シート状部材の面と接するよう配されるローラに前記薬液が付着するよう、前記薬液を噴霧することを特徴とする清掃用ドライシートの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の清掃用ドライシートの製造方法であって、
前記薬液塗工工程が、前記シート状部材と、該シート状部材の面と接するよう配されるローラとの接触箇所を基準として前記シート状部材の送給方向の後方側に、且つ、前記接触箇所の近傍に向かって噴霧するよう配置された噴霧装置を用いることを特徴とする清掃用ドライシートの製造方法。
【請求項7】
シート状部材が巻芯にロール状に巻かれてなるシートロールから、該シート状部材を送給するシート状部材送給工程と、
前記シート状部材送給工程において送給される前記シート状部に、抗菌性を有し、被清掃物に抗菌効果を付与できる分量の薬液を塗布する薬液塗工工程と、
を含む薬液塗工方法。
【請求項8】
請求項7に記載の薬液塗工方法であって、
前記薬液塗工工程が、前記シート状部材送給工程において送給される前記シート状部材、及び、該シート状部材の面と接するよう配されるローラに前記薬液が付着するよう、前記薬液を噴霧することを特徴とする薬液塗工方法。
【請求項9】
請求項8に記載の薬液塗工方法であって、
前記薬液塗工工程が、前記シート状部材と、該シート状部材の面と接するよう配されるローラとの接触箇所を基準として前記シート状部材の送給方向の後方側に、且つ、前記接触箇所の近傍に向かって噴霧するよう配置された噴霧装置を用いることを特徴とする薬液塗工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃に用いられる清掃用ドライシート及び該清掃用ドライシートの製造方法、並びに、該清掃用ドライシートの製造方法に適用可能な薬液塗工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フローリングや家具等の清掃に用いられる清掃具として、清掃用シートが知られている。清掃用シートは、フローリングや家具等(以下、「被清掃物」という。)の拭き掃除の用途に使用され、例えば、特許文献1に開示されるような、シート取付部材(棒状の把持部と、該把持部の端部に取り付けられたヘッド部とからなる)のヘッド部に取り付けて使用することもできる。
【0003】
また、清掃用シートは、薬液を塗工することで、清浄効果や抗菌効果、発香効果等、所望の効果を付与することができ、薬液の塗工態様に応じて、清掃用ウェットシートと清掃用ドライシートとの2つに大別される。
【0004】
清掃用ウェットシートは、清掃用シートが湿潤するよう薬液を塗布されたものであり、食べこぼしや皮脂汚れを拭き取るのに適している。
【0005】
これに対し、清掃用ドライシートは、清掃用シートが湿潤しないよう薬液を塗布されたもの、又は、薬液を塗布されないものであり、清掃用ウェットシートでは捕集しづらい髪の毛や埃等のゴミを捕集するのに適している。
【0006】
しかしながら、清掃用ドライシートは、その構成上、薬液の塗布量を増やすことができないため、薬液による効果を強く発揮することが難しい。例えば、抗菌効果を有する清掃用ウェットシートであれば、清掃した被清掃物に抗菌効果を付与することができ、被清掃物は清掃から一定期間、菌が増殖しづらい状態となる。これに対し、現存する抗菌効果を謳った清掃用ドライシートは、清掃した被清掃物に抗菌効果を付与することはなく、その効果は「清掃用シート自体が抗菌である」ということに留まる。
【0007】
また、このような薬液を、清掃用シートのシート状部材に塗工する方法としては、例えば特許文献2に開示されるようなロールコータと呼ばれる装置を用いた方法が一般的である。
【0008】
ロールコータは、一般的に、シート状部材(被塗工物)を、テンションをかけた状態で送給することで塗工面を張設するバックアップロールと、該塗工面に薬液を塗工するための部材(グラビアロール、アプリケータロール、ダイ等)とからなる。ロールコータは、薬液の塗布量(塗工された薬液の厚み)を制御したり、薬液をむら無く塗工したりすることが可能であるが、その構成上、装置が大型化しやすく、導入に大きなコストがかかるといった問題があった。
【0009】
これに対し、比較的、装置が小型であり、導入コストが低い塗工方法として、スプレーコータと呼ばれる装置を用いた方法がある。スプレーコータは、噴霧装置(スプレー)を用いたコーティング方法で、薬液をミスト化して、被塗工物に噴霧する塗工方法である。
【0010】
しかしながら、清掃用シートを製造する際、シート状部材は高速で送給されるため、シート状部材の送給方向に気流が発生する。この気流により、ミスト化した薬液がシート状部材外に流されてしまうため、スプレーコータを用いた塗工方法は、薬液の無駄(薬液ロス)が多くなってしまう。
【0011】
また、薬液による効果は、通常、薬液(有効成分)の塗布量に比例して強くなるが、単に、使用する薬液の量を増やしただけでは、薬液ロスも増えてしまい経済的でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2021-058474号公報
【特許文献2】特開2021-151631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、従来のこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明の目的の一は、清掃した被清掃物に抗菌効果を付与することができる清掃用ドライシート、清掃用ドライシートの製造方法及び該清掃用ドライシートの製造方法に適用可能な薬液塗工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0014】
本発明の第1の側面に係る清掃用ドライシートによれば、シート状部材と、前記シート状部材に塗布される、抗菌性を有し、被清掃物に抗菌効果を付与できる分量の薬液とを備えることができる。
【0015】
本発明の第2の側面に係る清掃用ドライシートによれば、前記薬液が、前記シート状部材及び該シート状部材の面と接するよう配されるローラに付着するよう噴霧されることを特徴とするよう構成できる。
【0016】
本発明の第3の側面に係る清掃用ドライシートによれば、前記薬液が、前記シート状部材と、該シート状部材の面と接するよう配されるローラとの接触箇所を基準として前記シート状部材の送給方向の後方側に、且つ、前記接触箇所の近傍に向かって噴霧するよう配置された噴霧装置を用いて噴霧されることを特徴とするよう構成できる。
【0017】
本発明の第4の側面に係る清掃用ドライシートの製造方法によれば、シート状部材が巻芯にロール状に巻かれてなるシートロールから、該シート状部材を送給するシート状部材送給工程と、前記シート状部材送給工程において送給される前記シート状部に、抗菌性を有し、被清掃物に抗菌効果を付与できる分量の薬液を塗布する薬液塗工工程とを含むよう構成できる。
【0018】
本発明の第5の側面に係る清掃用ドライシートの製造方法によれば、前記薬液塗工工程が、前記シート状部材送給工程において送給される前記シート状部材、及び、該シート状部材の面と接するよう配されるローラに前記薬液が付着するよう、前記薬液を噴霧することを特徴とするよう構成できる。
【0019】
本発明の第6の側面に係る清掃用ドライシートの製造方法によれば、前記薬液塗工工程が、前記シート状部材と、該シート状部材の面と接するよう配されるローラとの接触箇所を基準として前記シート状部材の送給方向の後方側に、且つ、前記接触箇所の近傍に向かって噴霧するよう配置された噴霧装置を用いることを特徴とするよう構成できる。
【0020】
本発明の第7の側面に係る薬液塗工方法によれば、シート状部材が巻芯にロール状に巻かれてなるシートロールから、該シート状部材を送給するシート状部材送給工程と、前記シート状部材送給工程において送給される前記シート状部に、抗菌性を有し、被清掃物に抗菌効果を付与できる分量の薬液を塗布する薬液塗工工程と、
を含むよう構成できる。
【0021】
本発明の第8の側面に係る薬液塗工方法によれば、前記薬液塗工工程が、前記シート状部材送給工程において送給される前記シート状部材、及び、該シート状部材の面と接するよう配されるローラに前記薬液が付着するよう、前記薬液を噴霧することを特徴とするよう構成できる。
【0022】
本発明の第9の側面に係る薬液塗工方法によれば、前記薬液塗工工程が、前記シート状部材と、該シート状部材の面と接するよう配されるローラとの接触箇所を基準として前記シート状部材の送給方向の後方側に、且つ、前記接触箇所の近傍に向かって噴霧するよう配置された噴霧装置を用いることを特徴とするよう構成できる。
【0023】
前記構成により、本発明に係る清掃用ドライシート、清掃用ドライシートの製造方法及び該清掃用ドライシートの製造方法は、既存の製造装置群に噴霧装置を導入することで実現できる。すなわち、導入に必要なものは、噴霧装置のみであるため、低廉に導入することができる。
【0024】
また、前記構成によれば、シート状部材の送給によって生じる気流と、ローラの回転によって生じる気流を利用して薬液ロスを抑えることができる。換言すると、薬液を無駄なく塗布でき、塗布量が増えるため、同量の薬液を使用する従来の方法に比べ、薬液による効果を強く発揮させることができる。これにより、従来の抗菌効果を謳った清掃用ドライシートは、清掃用シート自体が抗菌であるという効果に留まっていたのに対し、清掃用ドライシート1は、清掃した被清掃物に抗菌効果を付与するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る清掃用ドライシートの製造方法のフローチャートである。
図2】本発明に係る清掃用ドライシートの製造方法に用いる製造装置群の模式図である。
図3】薬液塗工工程を説明するための模式図である。
図4】薬液塗工工程を説明するための模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための清掃用ドライシート、清掃用ドライシートの製造方法及び薬液塗工方法を例示するものであって、本発明は清掃用ドライシート、清掃用ドライシートの製造方法及び薬液塗工方法を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
[清掃用ドライシートの製造方法]
【0027】
本発明の一実施の形態に係る清掃用ドライシート1を、製造装置群2を用いて製造する方法について、図1図4に基づいて説明する。
【0028】
図1に示すように、清掃用ドライシート1の製造方法は、シート状部材送給工程ST101、薬液塗工工程ST102及び切断工程ST103で構成されている。また、シート状部材送給工程ST101、薬液塗工工程ST102は、特許請求の範囲における「薬液塗工方法」の一例に該当する。以下で各工程について説明する。
〈シート状部材送給工程ST101〉
【0029】
シート状部材送給工程ST101は、図2に示すように、送給装置21を用いて、シートロールSRを掃用シートの材料であるシート状部材SBに巻き戻しながら、シート状部材SBを製造装置群2に送給する工程である。
《送給装置21》
【0030】
送給装置21は、図2に示すように、送給装置21によってシートロールSRに回転駆動を与えることで、シート状部材SBに巻き戻しながら、シート状部材SBを送給する装置である。なお、シート状部材SBの送給方法は特に限定されず、必ずしも送給装置21を用いる必要はない。
〈薬液塗工工程ST102〉
【0031】
薬液塗工工程ST102は、図2に示すように、噴霧装置22を用いてシート状部材SBに薬液を塗布する工程である。薬液は、抗菌性を有するものであれば特に限定されないが、以下では、薬液として塩化ベンザルコニウム(日油株式会社製 カチオンF2-50R、濃度50%)を使用した場合を例として説明する。
【0032】
なお、一般的な清掃用ドライシートに使用されている流動パラフィン(ゴミをくっつきやすくするための着塵剤)は、使用しないほうが好ましい。薬液中の抗菌成分の濃度が高まり、清掃用ドライシート1の抗菌効果をより高めることができるためである。
《噴霧装置22》
【0033】
噴霧装置22は、薬液をミスト化して噴霧する装置であって、図3に示すように、シート状部材SBと、シート状部材SBの面と接するよう配されるローラ23との接触箇所SKを基準としてシート状部材SBの送給方向の後方側に配置される。加えて、噴霧装置22は、接触箇所SKの近傍に向かって噴霧するよう配置される。
【0034】
なお、噴霧装置22の態様は特に限定されないが、例えば、薬液をミスト化して噴霧するためのノズル、使用する薬液を収容するための薬液タンク、薬液タンクからノズルに向かって薬液が供給されるよう圧力をかけるためのコンプレッサーとで構成することができる。また、噴霧装置22の配置も前述の態様に限定されず、シート状部材SB、及び、ローラ23に薬液が付着するような態様であればどのように配置してもよい。
《ローラ23》
【0035】
ローラ23は、シート状部材SBの面と接するよう配されるローラであってその態様は特に限定されない。すなわち、ローラ23は、薬液塗工工程ST102に用いる為に別途用意しなくてもよく、既存の製造装置群2が有するローラを利用できるため、薬液塗工工程ST102に必要な装置等を低廉に導入することができる。
《薬液塗工工程ST102による効果》
【0036】
薬液塗工工程ST102を適用することによる効果を以下で説明する。
(従来の方法を適用した場合)
【0037】
通常、清掃用ドライシートの製造において、製造効率を上げるため、シート状部材は、送給装置によって高速で送給されるため、製造装置群内では、シート状部材の送給方向に気流KR1が発生する。
【0038】
このため、図4に示すように、単にシート状部材SBと対向するように噴霧装置22'を配置した場合(一般的なスプレーコータの配置と同様である。)、ミスト化した薬液は、気流KR1によって流され、薬液ロスが多くなってしまう。このため、従来の方法を適用した清掃用ドライシート(以下、「比較対象1」という。)は、薬液の塗布量が低減し、薬液による効果が弱まるため、清掃した被清掃物に抗菌効果を付与することはなく、その効果は、「清掃用シート自体が抗菌である」ということに留まる。
(薬液塗工工程ST102を適用した場合)
【0039】
これに対し、薬液塗工工程ST102を適用した場合は、図3に示すように、気流KR1(シート状部材SBの送給によって生じる気流)に加え、ローラ23の回転によっても気流KR2が生じる。これらの気流によって、ミスト化した薬液は、接触箇所SKに向かって流れる。これにより、薬液は、シート状部材SBとローラ23に付着する。また、ローラ23は、シート状部材SBの送給に合わせて回転するため、ローラ23に付着した薬液は、最終的に、シート状部材SBに付着する。このようにシート状部材SBに薬液を塗布することで、薬液ロスを抑えることができる。すなわち、薬液を無駄なく塗布でき、薬液の塗布量が増えるため、清掃用ドライシート1は、同量の薬液を使用した比較対象1に比べ、薬液による効果を強く発揮させることができる。
【0040】
加えて、噴霧装置22からの直接的な塗布と、ローラ23を介しての塗布との2段階で薬液を塗布することになるため、薬液を均一に塗布でき、薬液によってもたらされる効果を充分に発揮可能な清掃用ドライシート1を製造できる。これにより、従来の抗菌効果を謳った清掃用ドライシートは、清掃用シート自体が抗菌であるという効果に留まっていたのに対し、本発明に係る清掃用ドライシートの製造方法により製造された清掃用ドライシート1は、清掃した被清掃物に抗菌効果を付与することができる。
【0041】
以上の効果を実証するため、以下の実験1~3を行った。
(実験1:塗布量の増加について)
【0042】
まず、実験1として、薬液塗工工程ST102を適用することで、薬液の塗布量が増加することを実証するための実験を行った。
【0043】
実験の方法としては、従来の方法と薬液塗工工程ST102を適用した方法のそれぞれで、シート状部材(坪量30g/mのメッシュ状のポリエチレンテレフタレート繊維による不織布)に薬液を塗布し、その前後のシート状部材の重さを計測し、その差を求めることでシート状部材に塗布された薬液の重さを調べ、比較する。実験の結果を表1に示す。
【表1】
【0044】
以上のとおり、清掃用ドライシート1は比較対象1よりも塗布量が増えているので、薬液塗工工程ST102を適用することで薬液の塗布量が増え、薬液ロスを抑えることが明らかとなった。
(実験2:清掃した被清掃物の抗菌効果について)
【0045】
次に、実験2として、薬液塗工工程ST102を適用することで、清掃用ドライシート1で清掃した被清掃物に抗菌効果が付与されることを実証するための実験を行った。
【0046】
実験の方法としては、比較対象1と清掃用ドライシート1のそれぞれで、試験片(5cm×5cmのポリエチレンフィルム)の表面を5往復拭き取り、この試験片に、「抗菌加工製品-抗菌性試験方法・抗菌効果」に基づく抗菌性試験(JIS Z 2801)を行い、以下の式により抗菌活性値Rを算出する。
【数1】
【0047】
ここでいう「無加工試験片」は、無加工の試験片に対応し、「抗菌加工試験片」は、比較対象1又は清掃用ドライシート1で表面を5往復拭き取った後の試験片に対応する。
【0048】
また、試験片に滴下する試験菌液の初期菌濃度は、黄色ブドウ球菌が8.6×10個/mL、大腸菌が5.2×10個/mLである。
【0049】
そして、抗菌活性値Rが、2.0以上の場合は「抗菌性良好」、1.0以上2.0未満の場合は「有意な抗菌性あり」、1.0未満の場合は「抗菌性わずか、あるいは抗菌性なし」と評価する。実験の結果を表2に示す。なお、表2では、「抗菌性良好」を「◎」、「有意な抗菌性あり」を「○」、「抗菌性わずか、あるいは抗菌性なし」を「×」で示す。
【表2】
【0050】
以上のとおり、清掃用ドライシート1で表面を5往復拭き取った後の試験片は、「抗菌性良好」であったことから、掃用ドライシート1で清掃した被清掃物に抗菌効果が付与されることが明らかとなった。
(実験3:ゴミを捕集する機能について)
【0051】
次に、実験3として、薬液塗工工程ST102を適用した清掃用ドライシート1のゴミの捕集率についての実験を行った。清掃用ドライシートの本質的な機能は、「ゴミを捕集する機能」であるところ、この実験は、抗菌性を高める構成(流動パラフィンを使用しない構成)である清掃用ドライシート1の、「ゴミを捕集する機能」が劣化していないことを実証するための実験である。
【0052】
実験の方法としては、特許文献1に開示されるようなシート取付部材に取り付けられた比較対象2と清掃用ドライシート1のそれぞれで被清掃物(30cm×60cmのフローリング)上を60cmのストロークで2往復拭き取る。なお、ここでいう比較対象2とは、清掃用ドライシート1と同様の方法で、塩化ベンザルコニウムに代えて流動パラフィン(株式会社MORESCO製 モレスコホワイトP-150)を塗工した清掃用ドライシートである。
【0053】
これらの清掃用ドライシートで被清掃物を拭き取った際に捕集したゴミの割合(捕集率)で評価する。また、ゴミとして、約8cmの髪の毛を用いた場合と、JIS試験用ダスト(7種、関東ローム層、細粒)を用いた場合との2パターンで実験を行った。実験の結果を表3に示す。
【表3】
【0054】
以上のとおり、清掃用ドライシート1の捕集率は、比較対象2の捕集率と比べ、大きな差はなく、JIS試験用ダストの捕集率はむしろ清掃用ドライシート1の方が高いという結果となった。これにより、清掃用ドライシート1の「ゴミを捕集する機能」は、流動パラフィンを使用した清掃用ドライシートと比べ劣化していないことが明らかとなった。
〈切断工程ST103〉
【0055】
切断工程ST103は、薬液塗工工程ST102にて薬液を塗布されたシート状部材SBを送給方向に所定の間隔で切断し、シート状部材SBを清掃用ドライシートの形状にする工程であり、図2に示すように、切刃を有するカッターロール24と、カッターロール24の切刃を受けるためのアンビルロール25とを用いてシート状部材SBを切断する。
【0056】
なお、切断工程ST103の態様は特に限定されず、例えば、シート状部材SBを完全に切断するのではなく、ミシン目を設けるようにしてもよい。
〈その他の工程〉
【0057】
清掃用ドライシート1の製造方法は前述の工程に限定されず、適宜追加することができる。例えば、薬液塗工工程ST102の後に、再度、薬液を塗工する工程を追加したり、シート状部材SBを乾燥させる工程を追加したりすることで、清掃用ドライシート1の薬液に起因する効果や湿潤具合等を調整できるようにしてもよい。
【0058】
また、切断工程ST103の後に、清掃用ドライシート1を積層し、包装する工程を追加してもよい。
[清掃用ドライシート1]
【0059】
本発明に係る清掃用ドライシート1は、本発明に係る清掃用ドライシート1の製造方法を用いて製造された清掃用ドライシートであって、シート状部材と、シート状部材及びシート状部材の面と接するよう配されるローラに付着するよう噴霧される薬液とで構成される。
【0060】
この構成により、本発明に係る清掃用ドライシート1は、導入にコストがかかるロールコータを使用せずに製造できるので、製造に必要な装置等の導入コストを抑えることができる。
【0061】
また、薬液ロスを抑えることができ、塗布量が増えるため、同量の薬液を使用して製造された他の清掃用ドライシートに比べ、薬液による効果を強く発揮させることができる。
【0062】
通常、ドライシートに薬液を塗布する場合、清掃用ドライシートを湿潤させないよう薬液の量を抑えて塗布することになるが、薬液が少ないとシートに薬液が含浸する度合いが斑になりやすい。薬液が斑に塗布されると、薬液によってもたらされる効果(抗菌効果)も斑なり、全体としての効果も低減するため好ましくない。
【0063】
これに対し、清掃用ドライシート1は、噴霧装置22からの直接的な塗布と、ローラ23を介しての塗布との2段階で薬液を塗布されることになるため、本発明に係る清掃用ドライシート1は少ない薬液であっても均一に塗布され、薬液によってもたらされる効果を充分に発揮することができる。
【0064】
これにより、従来の抗菌効果を謳った清掃用ドライシートは、清掃用シート自体が抗菌であるという効果に留まっていたのに対し、清掃用ドライシート1は、清掃した被清掃物に抗菌効果を付与することができる。
[本発明に係る清掃用ドライシート1の製造方法(薬液塗工方法)及び清掃用ドライシート1の効果]
【0065】
以上説明したように、本発明に係る清掃用ドライシート1及び清掃用ドライシート1の製造方法(薬液塗工方法)は、噴霧装置22のみ導入すれば、既存の製造装置2群が有するローラ23を利用して実現できるため、製造に必要な装置等を低廉に導入することができる。
【0066】
また、シート状部材SBの送給によって生じる気流KR1と、ローラ23の回転によって生じる気流KR2を利用することで、薬液ロスを抑えることができる。ひいては薬液を無駄なく塗布でき、塗布量が増えるため、薬液による効果を強く発揮させることができる。
【0067】
さらにまた、噴霧装置22からの直接的な塗布と、ローラ23を介しての塗布との2段階で薬液を塗布することになるため、薬液を均一に塗布でき、薬液によってもたらされる効果を充分に発揮することができる。
【0068】
これにより、本発明に係る清掃用ドライシート1及び清掃用ドライシート1の製造方法(薬液塗工方法)によって製造される清掃用ドライシートは、清掃した被清掃物に抗菌効果を付与することができる。
【符号の説明】
【0069】
1…清掃用ドライシート
2…製造装置群
21…送給装置
22、22'…噴霧装置
23…ローラ
24…カッターロール
25…アンビルロール
SR…シートロール
SB…シート状部材
SK…接触箇所
KR1、KR2…気流
図1
図2
図3
図4