(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108722
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】搬送物品の温度情報取得方法、無菌状態の良否判定方法、および無菌充填システム
(51)【国際特許分類】
B65B 55/02 20060101AFI20230731BHJP
B65B 55/10 20060101ALI20230731BHJP
B67C 7/00 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
B65B55/02 Z
B65B55/10 A
B65B55/10 E
B67C7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009918
(22)【出願日】2022-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】水野 資広
【テーマコード(参考)】
3E079
【Fターム(参考)】
3E079AA10
3E079AB01
3E079BB05
3E079DD00
3E079FF03
3E079GG01
3E079GG02
(57)【要約】
【課題】搬送中の容器等の物品の温度情報を容易に取得すること。
【解決手段】搬送物品の温度情報取得方法は、温度を検知可能に構成されている検温部を含むRFタグが設けられている物品を搬送しながら、物品が移動する搬送方向の複数の位置に配置されている通信部により、位置の通過時における物品の温度を示す温度データを複数の位置でそれぞれRFタグから読み取り、複数の位置でそれぞれ読み取られた温度データを含む温度履歴情報を取得する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度を検知可能に構成されている検温部を含むRFタグが設けられている物品を搬送しながら、
前記物品が移動する搬送方向の複数の位置に配置されている通信部により、前記位置の通過時における前記物品の温度を示す温度データを前記複数の位置でそれぞれ前記RFタグから読み取り、前記複数の位置でそれぞれ読み取られた前記温度データを含む温度履歴情報を取得する、
搬送物品の温度情報取得方法。
【請求項2】
前記物品は、容器に相当し、
前記RFタグは、前記容器の内表面および外表面の少なくとも一方における少なくとも1箇所に設けられ、
前記温度履歴情報は、前記RFタグ毎に取得される、
請求項1に記載の搬送物品の温度情報取得方法。
【請求項3】
軸線を中心に回転して前記物品を搬送する回転体により前記物品が支持されている状態で、前記通信部により前記RFタグから前記温度データを読み取る、
請求項1または2に記載の温度情報取得方法。
【請求項4】
前記物品を搬送しつつ、加温されている浄化媒体を前記物品に供給しながら、前記通信部により前記RFタグから前記温度データを読み取る、
請求項1から3のいずれか一項に記載の温度情報取得方法。
【請求項5】
温度の検知が可能に構成されている検温部およびデータを記憶する記憶部を含むRFタグが設けられている物品を搬送しながら、前記検温部により検知される前記物品の温度を示す温度データを前記記憶部に蓄積して記憶させるステップと、
前記記憶部に蓄積されている前記温度データを前記記憶部から温度履歴情報として取得するステップと、を備える、
搬送物品の温度情報取得方法。
【請求項6】
温度を検知可能に構成されている検温部を含むRFタグが設けられている物品を搬送しながら、加温されている殺菌媒体を前記物品に供給する殺菌ステップと、
前記殺菌ステップにおいて請求項1から3のいずれか一項に記載の温度情報取得方法により前記温度履歴情報を取得する取得ステップ、あるいは、前記殺菌ステップの後に、請求項5に記載の温度情報取得方法により前記温度履歴情報を取得する取得ステップと、
前記温度履歴情報に基づいて、無菌状態に至るために必要な規定温度および規定時間に達しているか否かに応じて良否を判定する判定ステップと、を備える、
無菌状態の良否判定方法。
【請求項7】
前記物品は、容器に相当し、
前記RFタグは、前記容器の1箇所以上に設けられ、
前記温度履歴情報は、前記RFタグ毎に取得され、
前記判定ステップにおいて、前記RFタグ毎に良否を判定する、
請求項6に記載の無菌状態の良否判定方法。
【請求項8】
前記殺菌媒体は、過酢酸水溶液、または過酸化水素水溶液に相当し、
前記殺菌ステップにおいて、前記殺菌媒体が所定の濃度に管理される、
請求項6または7に記載の無菌状態の良否判定方法。
【請求項9】
容器を搬送しながら、加温されている殺菌媒体を用いて前記容器を殺菌して前記容器に充填処理を行う無菌充填システムであって、
殺菌中の前記容器が移動する搬送方向の複数の位置に配置されている通信部と、
温度を検知可能に構成されている検温部を含み、前記容器に設けられるRFタグから前記通信部により読み取られる温度データを前記容器の無菌状態の良否判定に用いる制御部と、を備え、
前記通信部は、前記位置の通過時における前記容器の温度を示す温度データを前記複数の位置でそれぞれ前記RFタグから読み取り、
前記制御部は、
前記複数の位置でそれぞれ読み取られた前記温度データを含む温度履歴情報を取得する温度履歴情報取得部と、
前記温度履歴情報に基づいて、無菌状態に至るために必要な規定温度および規定時間に達しているか否かに応じて良否を判定する無菌状態取得部と、を含む、
無菌充填システム。
【請求項10】
容器を搬送しながら、加温されている殺菌媒体を用いて前記容器を殺菌して前記容器に充填処理を行う無菌充填システムであって、
温度を検知可能に構成されている検温部およびデータを記憶する記憶部を含み、前記容器に設けられるRFタグから読み取られる温度データを前記容器の無菌状態の良否判定に用いる制御部と、を備え、
前記制御部は、前記検温部により検知される殺菌中の前記容器の温度を示す温度データが蓄積されている前記記憶部から、前記記憶部に蓄積されている前記温度データを前記RFタグから温度履歴情報として取得し、前記温度履歴情報に基づいて、無菌状態に至るために必要な規定温度および規定時間に達しているか否かに応じて良否を判定する、
無菌充填システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、搬送中の容器等の物品の温度情報を取得する方法、搬送されながら殺菌される物品の無菌状態の良否を判定する方法、および無菌充填システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無菌充填機が据え付けられ、それに付随する配管、殺菌装置等が設置されると、生産開始に先立ち、製品の品質を担保するために種々の検証が行われる。その検証作業としては、例えば、配管内や装置筐体内等を殺菌および洗浄した上で、微生物を付着させた容器を殺菌装置により殺菌し、殺菌後の容器の表面からの拭き取り、培養により、生菌数を計測する。
容器の殺菌方法としては、例えば、容器の外表面および内表面に熱水を所定時間に亘り噴射する(特許文献1)。十分な殺菌・洗浄の効果を得るため、容器に噴射される水や、殺菌剤を含む殺菌液は、所定の温度に加温される。
【0003】
また、特許文献2には、容器の無菌性レベルの検証方法として、殺菌装置を稼働させない状態で容器に培地を充填し、生菌数を計測する培地充填試験と、容器の内面に菌懸濁液を噴射し、電子線の照射により容器を殺菌した後、培地を充填して生菌数を計測する菌付着試験とのそれぞれの結果を組み合わせることで、容器の無菌性レベルを算出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-231356号公報
【特許文献2】特開2010-36973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無菌充填システムにおける容器の無菌状態の検証としては、予め内表面および外表面に微生物を付着させた試料容器を用意し、試料容器に対して無菌充填システムの殺菌装置により殺菌処理が行われた後の菌数を計測する方法が一般的である。しかしながら、この検証は、典型的には1菌種あたり100本以上の試料容器に対して行われるため、各試料容器の用意、培養および生菌の計測に多大な手間と時間を要する。しかも、この検証に用いた菌が、無菌充填システムの機械に残存するおそれがある。
【0006】
また、殺菌・洗浄に用いる液は、加温されることで十分な殺菌効果を発揮するため、加温装置から容器までの殺菌液の温度低下を見込んで、加温装置により殺菌液が所定の温度に加温されるとしても、必ずしも容器に所望の温度の殺菌液が供給されるとは限らない。
ここで、容器は、無菌充填システムの搬送機構により所定の経路を経て搬送されながら殺菌・洗浄されるため、移動する容器に温度センサを取り付けたり、移動する容器に温度センサを接触させたりすることで、殺菌液が供給される容器の表面温度を検知することは、現実的ではない。つまり、温度センサの配線の問題に加え、容器に設けられた温度センサの搬送機構の部材への干渉、温度センサの設置による容器の重量増加による搬送の不安定化等の種々の問題が想定される。
【0007】
本開示は、上記のような問題の懸念なく、搬送中の容器等の物品の温度情報を容易に取得することを目的とする。
また、本開示は、物品への植菌の必要なく、物品の無菌状態の良否を容易に判定することを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述のように、搬送される容器に温度センサを設けて殺菌中の容器の温度を検知することが現実的ではないとしても、本開示の発明者は、試験装置を作り、殺菌中の容器の温度を熱電対により検知した。つまり、容器に熱電対を取り付け、また、容器に微生物を付着させた状態で、試験装置に配置された当該容器に向けて、ノズルから殺菌液を噴射させる試験を行い、殺菌中の容器の温度を熱電対により検知した。そして、殺菌後の容器を拭き取り、培養して生菌の数を計測した。その結果、殺菌中の容器の温度と、容器が無菌状態に至るまでの殺菌時間との間には相関が見られた(
図7参照)。
【0009】
その相関に基づく本開示の搬送物品の温度情報取得方法は、温度を検知可能に構成されている検温部を含むRFタグが設けられている物品を搬送しながら、物品が移動する搬送方向の複数の位置に配置されている通信部により、位置の通過時における物品の温度を示す温度データを複数の位置でそれぞれRFタグから読み取り、複数の位置でそれぞれ読み取られた温度データを含む温度履歴情報を取得する。
【0010】
また、本開示の他の温度情報取得方法は、温度の検知が可能に構成されている検温部およびデータを記憶する記憶部を含むRFタグが設けられている物品を搬送しながら、検温部により検知される物品の温度を示す温度データを記憶部に蓄積して記憶させるステップと、記憶部に蓄積されている温度データを記憶部から温度履歴情報として取得するステップと、を備える。
【0011】
さらに、本開示の無菌状態の良否判定方法は、温度を検知可能に構成されている検温部を含むRFタグが設けられている物品を搬送しながら、加温されている殺菌媒体を物品に供給する殺菌ステップと、殺菌ステップにおいて請求項1から3のいずれか一項に記載の温度情報取得方法により温度履歴情報を取得する取得ステップ、あるいは、殺菌ステップの後に、請求項5に記載の温度情報取得方法により温度履歴情報を取得する取得ステップと、温度履歴情報に基づいて、無菌状態に至るために必要な規定温度および規定時間に達しているか否かに応じて良否を判定する判定ステップと、を備える。
【0012】
本開示の無菌充填システムは、容器を搬送しながら、加温されている殺菌媒体を用いて容器を殺菌して容器に充填処理を行う無菌充填システムであって、殺菌中の容器が移動する搬送方向の複数の位置に配置されている通信部と、温度を検知可能に構成されている検温部を含み、容器に設けられるRFタグから通信部により読み取られる温度データを容器の無菌状態の良否判定に用いる制御部と、を備える。
通信部は、位置の通過時における容器の温度を示す温度データを複数の位置でそれぞれRFタグから読み取る。制御部は、複数の位置でそれぞれ読み取られた温度データを含む温度履歴情報を取得する温度履歴情報取得部と、温度履歴情報に基づいて、無菌状態に至るために必要な規定温度および規定時間に達しているか否かに応じて良否を判定する無菌状態取得部と、を含む。
【0013】
本開示の他の無菌充填システムは、容器を搬送しながら、加温されている殺菌媒体を用いて容器を殺菌して容器に充填処理を行う無菌充填システムであって、温度を検知可能に構成されている検温部およびデータを記憶する記憶部を含み、容器に設けられるRFタグから読み取られる温度データを容器の無菌状態の良否判定に用いる制御部と、を備え、制御部は、検温部により検知される殺菌中の容器の温度を示す温度データが蓄積されている記憶部から、記憶部に蓄積されている温度データをRFタグから温度履歴情報として取得し、温度履歴情報に基づいて、無菌状態に至るために必要な規定温度および規定時間に達しているか否かに応じて良否を判定する。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、検温部を含み、物品に設けられたRFタグから無線で温度データが取り出されることにより、移動系と固定系とに亘る配線の課題を払拭しつつ、搬送される物品の温度を示す温度データから温度履歴情報を取得することができる。
物品に一体化されるRFタグからデータを取り出すことは、特に、配線が困難な回転体を含む搬送機構により搬送される物品の温度検知において意義が大きい。RFタグは、物品搬送や殺菌処理等に悪影響を与えることなく、物品の表面または内部に設けることができる。
【0015】
また、本開示によれば、物品への植菌を行うことなく、加温されている殺菌媒体が供給される物品の温度を示す温度履歴情報に基づいて、物品の無菌状態の良否を容易に判定することが可能となる。かかる良否判定を行うにあたり物品に植菌する必要がないので、微生物が無菌充填システムの機械に残存するリスクがない。
しかも、一度でも、RFタグを設けた容器を搬送しながら殺菌することによって温度履歴情報を得たのならば、制御部により直ちに、無菌状態の良否を容易に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の実施形態に係る充填システムの一部を示す平面図である。
【
図2】(a)は、検温RFタグが設けられている容器が回転体により搬送されながら殺菌されている様子を示す側面模式図である。(b)は、検温RFタグが設けられている蓋を示す斜視図である。
【
図3】
図1の充填システムに備えられる蓋殺菌装置を示す側面図である。
【
図4】検温RFタグ、リーダー、および制御部を示す模式図である。
【
図6】参考として、読み取り可否の検証試験の結果を示すグラフである。
【
図7】殺菌中の容器の温度と、容器が無菌状態に至るまでの殺菌時間との間の相関を示すグラフである。
【
図8】殺菌中の容器の温度と、容器が無菌状態に至るまでの殺菌時間との関係を説明するための模式的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、一実施形態について説明する。
〔全体構成〕
図1に構成の一例を示す無菌充填システム1は、殺菌剤を含む殺菌液を容器2(
図2(a))に噴射して殺菌する殺菌装置10と、殺菌処理を終えた容器2に例えば飲料、食品等の製品液を充填して密封する充填密封装置20と、容器2に装着される蓋25(
図2(b))に殺菌液を噴射して殺菌する蓋殺菌装置30(
図3)と、複数の回転体41を備えた容器搬送機構40と、筐体5と、制御盤6とを備えている。無菌充填システム1は、殺菌装置10よりも上流に、図示しない容器製造装置を備えていてもよい。
また、無菌充填システム1は、少なくとも当該システム1の立ち上げ時において、容器2に設けられている検温RFタグ7から温度データを読み取る複数のリーダー8を備えている。
【0018】
無菌充填システム1は、容器搬送機構40により容器2を上流側uから下流側dへ搬送しながら、容器2を無菌状態にまで殺菌し、無菌状態の容器2に対して充填、密封の処理を行い、図示しない検査装置等に向けて容器2を排出する。なお、容器搬送機構40は、コンベヤ装置を含んで構成されていてもよい。
【0019】
本開示における「無菌状態」は、例えば、6Dに相当する状態に相当する。6Dは、殺菌処理により菌数が6桁低減されていることを意味する。「無菌状態」は、6Dに限らず、製品に要求される無菌性のレベルに応じて行われる殺菌処理により無菌化された状態を言う。
【0020】
筐体5は、殺菌装置10の殺菌領域11および洗浄領域12、充填密封装置20の充填領域21および密封領域22、蓋殺菌装置30をそれぞれ囲む壁体51~56から構成されている。筐体5の内側は、筐体5の外側の大気圧に対して陽圧に設定されることで、清浄な雰囲気に維持されることが好ましい。
筐体5には、内側に設置されている機器の目視確認、点検、整備を行うためにドアや窓等の開口部57が設けられている。
【0021】
本実施形態において用いられる殺菌液(殺菌媒体)は、殺菌剤として過酢酸を含む過酢酸水溶液に相当する。但し、その限りではなく、無菌充填システム1は、殺菌剤として過酸化水素を含む過酸化水素水溶液を用いるように構成されていてもよい。
【0022】
製品液が充填される容器2は、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂材料からボトル状に形成されており、開口部2Aに樹脂製の蓋25(
図2(b))が装着されることで密封される。但し、容器2および蓋25は、金属材料から形成されていてもよい。
蓋25は、容器の本体としての容器2に取り付けられると、容器の一部をなす。つまり、容器2および蓋25の全体が、本開示における「容器」に相当する。
また、本実施形態には限らず、無菌充填システム1は、缶である容器2に対して殺菌処理、充填処理、および密封処理を行うように構成されていてもよい。
【0023】
〔容器搬送機構〕
容器搬送機構40を構成する複数の回転体41はそれぞれ、外周部に等間隔に配置され、容器2の首部2Bを把持する複数のグリッパ42を備えている。各回転体41は、
図1に矢印で示す向きに、鉛直方向に沿った軸線Zを中心に回転される。各容器2は、回転体41の回転方向に移動し、隣接する回転体41のグリッパ42へと渡される。つまり、複数の回転体41の円周に沿って、容器2の搬送路2Rが設定されている。
殺菌と、それに続く洗浄の処理は、
図2(a)に示すように、開口部2Aを下へ向けて倒立した姿勢に把持されている容器2に対して行われる。充填および密封の処理は、開口部2Aを上へ向けて正立した姿勢に把持されている容器2に対して行われる。
【0024】
〔殺菌装置〕
殺菌装置10は、図示しない容器製造装置、あるいは容器2の供給源から容器2を受け取ると、回転体41から、隣接する回転体41へと順次容器2を受け渡しながら、殺菌領域11において容器2に向けて殺菌液を噴射することで容器2を殺菌し、洗浄領域12において無菌状態の水(以下、無菌水)を容器2に向けて噴射することで容器2をすすぎ、充填領域21へと送る。
殺菌領域11に配置されている回転体41には、斜線のパターンが付されている。洗浄領域12に配置されている回転体41には、ドット状のパターンが付されている。蓋殺菌装置30(
図3)における殺菌領域31および洗浄領域32も同様である。
【0025】
殺菌装置10は、搬送中の容器2の開口部2Aから容器2の内側に向けて殺菌液を噴射する内側ノズル101と、搬送中の容器2の外表面に殺菌液を噴射する複数の外側ノズル102とを殺菌領域11に備えている。これらのノズル101,102から噴射される殺菌液は、容器2の内表面の全域と外表面の全域とに亘り供給される。
外側ノズル102は、例えば、容器2の底2Cおよび胴2Dにそれぞれ対応する位置に配置されている。胴2Dに対応する外側ノズル102は、容器2の位置を基準としたときの回転体41の径方向における外側と内側にそれぞれ配置されることが好ましい。
【0026】
内側ノズル101の噴射口101Aは搬送路2Rに沿って並んで配置され、外側ノズル102の噴射口102Aも同様である。これらの噴射口101A,102Aから搬送中の容器2に連続して殺菌液が噴射される。
【0027】
各ノズル101,102は、図示しない殺菌液の供給源に接続されている。各ノズル101,102に供給される殺菌液は、図示しない濃度管理装置により所定の濃度に管理されるとともに、図示しない熱交換器やヒーター等の加温装置を用いて常温よりも高い所定の温度に加温される。各ノズル101,102から噴射され、容器2から流れ落ちた殺菌液は、回収され、濃度管理装置および加温装置を含む所定の経路を循環することが好ましい。
【0028】
各ノズル101,102の数、位置、殺菌液を噴射する向き、殺菌液の流量等は、容器2の大きさや形状等に応じて適切に設定される。例えば、内側ノズル101は、図示を省略するが、開口部2Aの位置から胴2Dと底2Cとの境界付近に向けて殺菌液を噴射するとよい。その内側ノズル101から容器2の内側に供給された殺菌液は、容器2の内表面の全域を流れて開口部2Aから流出する。
また、外側ノズル102は、容器2の胴2Dの広い範囲に殺菌液が当たるように、噴射口102Aから胴2Dの外周面の接線方向に殺菌液を噴射するとよい。
【0029】
殺菌装置10は、洗浄領域12にも、内側ノズル101および外側ノズル102と同様に構成され、無菌水を容器2に噴射する内側ノズルおよび外側ノズルを備えている。
【0030】
無菌充填システム1を据え付け場所に据え付けて稼働可能な状態に至らしめる、つまり無菌充填システム1の立ち上げ作業を行う時には、エア、製品液、殺菌液等の配管の検査や、計器の検定等に続き、製品の品質を担保するための種々の検証が行われた後、製品の生産が開始される。
本実施形態の無菌充填システム1においては、特に立ち上げ時の検証作業の一環として、無菌状態にまで容器2が殺菌されていることを検証するため、検温RFタグ7および複数のリーダー8を用いて殺菌処理中にある容器2の温度データを収集する。
【0031】
リーダー8は、壁体52の外側に配置され、開口部57に備わるガラス部材58を介して容器2に対向する。ガラス部材58は、容器2に設けられている検温RFタグ7とリーダー8との間の通信に必要な電磁波を透過させる。リーダー8は、ガラス部材58を支持する金属製の壁体52に固定されるブラケット83を用いて、ガラス部材58に対して平行に設置されている。その他、接着剤や粘着テープ等を用いてリーダー8をガラス部材58に貼り付けて設置することもできる。同一の開口部57に複数のリーダー8が設置されていてもよい。
【0032】
殺菌中の容器2の温度データを収集する目的から、リーダー8は少なくとも、容器2が移動する搬送方向の複数の箇所で、開口部57の位置に設置されていれば足りる。殺菌中の容器2の温度データと併せて、洗浄中の容器2の温度データを収集する場合は、洗浄領域12における搬送方向の複数の箇所にもリーダー8を設置するとよい。その他、容器2への製品液の充填後を含め、容器2の温度履歴を取得したい領域における搬送方向の複数の位置にリーダー8を設置することができる。
本実施形態においては、
図1に示すように、殺菌領域11および洗浄領域12における搬送方向における複数の位置にそれぞれリーダー8が設置されている。リーダー8は、搬送路2Rの近傍に設置されることが好ましい。
【0033】
リーダー8によりデータが読み取られる検温RFタグは、容器2の内表面および外表面の少なくとも一方における少なくとも1つ以上の任意の箇所に設けることができる。例えば、
図2(a)に示すように、容器2の底2Cと、胴2Dと、開口部2Aの近傍とにそれぞれ検温RFタグ7を設けることができる。
【0034】
図示しない加温装置により規定温度に加温された殺菌液がノズル101,102に供給され、ノズル101,102から容器2に規定時間に亘り噴射されるとしても、必ずしも容器2全体が一様に規定温度に到達し、規定時間に亘り維持されるとは限らない。容器2に設けられた複数の検温RFタグ7のそれぞれの検温部71により検知される温度は、それが同時に検知された温度であるとしても、相違する可能性がある。
【0035】
〔充填密封装置〕
充填密封装置20は、充填領域21に設置される充填機201と、密封領域22に設置される密封機202とを備えている。充填機201は、回転体41のグリッパ42に正立の姿勢で受け取った容器2に、容器2と同様、回転体41の回転に伴い移動する図示しない充填バルブから製品液を充填する。充填機201の回転体41の外周部には、図示しないタンクから製品液が供給される複数の充填バルブが設けられている。
密封機202は、蓋殺菌装置30から供給される蓋25を充填済の容器2に装着する。
【0036】
〔蓋殺菌装置〕
図3に示す蓋殺菌装置30は、蓋25を搬送しながら殺菌、すすぎの処理を行い、図示しないシュート部材等を通じて密封機202へと蓋25を排出する。
蓋殺菌装置30は、水平方向に沿った軸線Xを中心に回転される複数の回転体331を備えた蓋搬送機構33と、殺菌領域31を搬送される蓋25に殺菌液を噴射するノズル301,302(
図2(b))と、洗浄領域32を搬送される蓋25に無菌水を噴射する図示しないノズルとを備えている。搬送時に蓋25は、その軸線が回転体331の軸線Xに対して平行な向きに配置され、図示しないレールにより、回転体331の外周部に等間隔で設けられている爪の間に保持される。
【0037】
蓋25を殺菌する殺菌液としては、例えば、容器2の殺菌に用いられる殺菌液と同様の過酢酸水溶液を用いることができる。その場合は、殺菌装置10のノズル101,102が接続される殺菌液の供給源にノズル301,302を接続することができる。ノズル301,302に供給される殺菌液は、図示しない濃度管理装置により、所定の濃度に管理されるとともに、図示しない熱交換器やヒーター等の加温装置により常温よりも高い所定の温度に加温される。
【0038】
図2(b)に示すように、内側ノズル301は、雌ねじ251Aが形成されている蓋25の内側に向けて殺菌液を噴射する。外側ノズル302は、蓋25の外表面に殺菌液を噴射する。外側ノズル302は、例えば、蓋25の頂部252および側壁253にそれぞれ対応する位置に配置されている。
内側ノズル301の噴射口301Aは、蓋25が搬送される方向に並んでおり、外側ノズル302の噴射口302Aも同様である。各噴射口から搬送中の蓋25に連続して殺菌液が噴射される。
【0039】
蓋殺菌装置30は、洗浄領域32にも、内側ノズル301および外側ノズル302と同様に構成され、無菌水を蓋25に噴射する内側ノズルおよび外側ノズルを備えている。
【0040】
無菌充填システム1の立ち上げ時等において、無菌状態にまで蓋25が殺菌されていることを検証する必要がある場合がある。その場合は、無菌充填システム1は、少なくとも当該システム1の立ち上げ時において、蓋25に設けられている検温RFタグ7から温度データを読み取る複数のリーダー8を備えることが好ましい。リーダー8は、容器2の殺菌装置10に設けられる場合(
図2(a))と同様に、壁体56の外側に配置され、開口部57に備わるガラス部材58を介して蓋25に対向する。
【0041】
殺菌中の蓋25の温度データを収集する目的から、リーダー8は、少なくとも殺菌領域31において蓋25が移動する搬送方向の複数の箇所で、開口部57の位置に設置されていれば足りる。殺菌中の蓋25の温度データと併せて、洗浄中の蓋25の温度データを収集する場合は、洗浄領域32における搬送方向の複数の箇所にもリーダー8を設置するとよい。
RFタグ7は、例えば
図2(b)に示すように、蓋25の内周部251と、頂部252と、側壁253とにそれぞれ設けることができる。
【0042】
〔RFIDシステムの説明〕
以下、
図4および
図5を参照し、検温RFタグ7、リーダー8、および制御盤6を備えたRFIDシステムについて説明する。
検温RFタグ7は、被検知物の温度検知が可能に構成されている検温部を備えたRF(Radio Frequency)タグに相当する。
【0043】
ここで、RFタグは、RFID(Radio Frequency Identification)タグ、IC(Integrated Circuit)タグ、無線タグ等とも称され、アンテナと、ICチップとを備えている。RFタグは、電波の授受あるいは電磁誘導により、アンテナを備えた通信部と非接触で交信可能に構成されている。RFタグと、リーダーあるいはリーダライタ等の通信部とは、両者の間でデータの符号化、変調、復調、および復号化を行う。検温RFタグ7と通信部との交信距離等に応じて、公知の任意のRFタグを検温RFタグ7に採用することができる。
【0044】
検温RFタグ7は、構成の一例を
図5に示すように、検温部71や図示しないメモリを含むICチップ70と、ICチップ70に接続されたアンテナ72とを備えている。検温部71により、検温RFタグ7が設けられている容器2または蓋25の温度を検知する。
【0045】
図5は、UHF(Ultra High Frequency;極超短波)周波数帯の電波方式でパッシブ型の検温RFタグ7を示している。かかる検温RFタグ7の搬送波の周波数帯は920MHz帯に相当する。検温RFタグ7には、リーダー8からの電波受信を通じて電力が供給されるため交信用の電池を内蔵しない、パッシブ型のRFタグを採用することが好ましい。そうすると、電池寿命の管理が不要である。なお、検温RFタグ7は、検温部71を作動させるための電池を内蔵していてもよい。
【0046】
図5に示す検温RFタグ7におけるアンテナ72は、検温RFタグ7の長手方向の両側に位置するダイポールアンテナに相当し、ICチップ70は整合回路を含む。ダイポールアンテナや整合回路等は、例えば、樹脂材料からなる絶縁性の基材7Aの表面に、アルミニウム合金の粉体、あるいはカーボンナノチューブ等を含む導電性インクを用いて印刷され、絶縁性の保護層により覆われている。検温RFタグ7は、全体として薄いフィルム状に形成されている。
【0047】
検温RFタグ7は、樹脂製の容器2の内表面または外表面に、例えば、基材7Aの裏側に設けられている粘着層により貼り付けて設置することができる。殺菌液・無菌水(浄化媒体)の噴射により検温RFタグ7が容器2や蓋25から剥がれないように、必要に応じて、接着性を有するフィルムにより検温RFタグ7の全域に亘り基材7Aの表面から覆ってもよい。
【0048】
容器2や蓋25が金属製である場合は、金属表面における反射により電波が拡散して交信距離が短くなったり交信不可となったりすることを避けるため、検温RFタグ7と、容器2や蓋25における設置部位との間には、空隙を設定する、あるいは、電磁波を透過させる絶縁性の部材を介在させるとよい。その絶縁性の部材と、水濡れや洗浄・殺菌時の圧力等から保護する部材とを兼ねて、検温RFタグ7が全体に亘り、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂材料から形成された被覆体により覆われて封止されていてもよい。
【0049】
リーダー8は、アンテナ81と、コントローラ82とを備えている。コントローラ82は、電源回路、復調回路、発信回路、メモリ、復号化を行う制御回路、および制御盤6と接続される入出力インタフェース部等を含んでいる。本実施形態において、リーダー8が検温RFタグ7からデータを読み取るとき、アンテナ81から発せられる電波または磁界により、検温RFタグ7のアンテナ72に電力が供給される。その電力によりICチップ70の検温部71等の回路やメモリが動作し、検温部71により検知された温度を示す温度データおよび固有のIDが、ICチップ70の回路による符号化および変調を経て、電波または磁界によりアンテナ72からリーダー8のアンテナ81へと送信される。コントローラ82は、アンテナ81に受信したデータを復調および復号化してメモリに読み出す。
【0050】
例えば、リーダー8がそれぞれ配置されている位置P1,P2,P3,P4,P5を同一の容器2が逐次通過する際には、位置P1,P2,P3,P4,P5のそれぞれの通過時における容器2の温度を示す温度データが、位置P1,P2,P3,P4,P5でそれぞれ検温RFタグ7からリーダー8に読み取られる。読み取られた温度データは、リーダー8から制御盤6へと出力される。
【0051】
つまり、RFID技術によれば、回転体41,331等により移動中の容器2や蓋25に設けられている検温RFタグ7から、筐体5等の固定系に設けられているリーダー8へと電線を介さずに、検温RFタグ7により検知された温度のデータを読み取ることができ、時間差で順次取得された複数の温度データから、容器2の温度の履歴情報を取得することも可能である。
検温RFタグ7にパッシブ型のRFタグが採用されていると、リーダー8から検温RFタグ7へ給電しつつ交信することができるので、電池も、給電用の電線も必要ない。
【0052】
図6には、容器2や蓋25の移動する速度と同等である約3m/秒相当の速度で移動する部材(充填バルブに接続される部材)に検温RFタグを設け、リーダーにより読み取り可否を検証した試験の結果を示す。移動部材は充填機の回転体に設けられているため、当該回転体の側方に設置されるリーダーにより、移動部材に設けられている検温RFタグから温度データが周期的に読み取られる。
【0053】
上記検証試験において、筐体の壁体に設けられてガラス部材を介して移動部材に対向するリーダーから移動部材までの最小距離は、本実施形態におけるリーダー8から搬送中の容器2までの最小距離、およびリーダー8から搬送中の蓋25までの最小距離と同等である。
かかる検証試験の結果により、搬送中の容器2や蓋25に設けられている検温RFタグ7から温度データを安定して読み取ることができる。
リーダー8に備わるアンチコリジョン機能により、同一の容器2または同一の蓋25に設けられている複数の検温RFタグ7から、各検温RFタグ7を識別しつつ一括して温度データを読み取ることが可能である。
【0054】
充填機201の移動部材に設けられた検温RFタグとリーダーとを用いた検証試験では、高速回転時の読み取り可否の検証と併せ、充填機の回転体を充填バルブの1ピッチ回転させては止めて読み取り可否を確認することを繰り返すことにより、リーダーによる読み取りが可能な限界の角度を調査した。その結果、リーダーに特定の充填バルブが正対する位置を基準として、回転方向の両側に±10ピッチの範囲に亘り読み取り可能であることが確認された。検証試験に用いた充填機は120個の充填バルブを備えているので、読み取り可能な限界の角度は、約60°に相当する。
【0055】
上記の読み取り可能角度の確認結果と、容器2とリーダー8との距離からすれば、容器2に設けられた複数の検温RFタグ7のいずれも読み取り可能角度内に存在するので、容器2に設けられている全ての検温RFタグ7からデータを一括で読み取り、それらをIDにより識別しながら、複数の検温RFタグ7がそれぞれ示す容器2の温度データを取得することができる。蓋25についても同様である。
【0056】
検温RFタグ7を含むRFIDシステムの具体的な装置構成は、本実施形態の限りではない。例えば、コントローラ82の機能を制御盤6が備えている場合は、コントローラ82を省き、アンテナ81が直接的に制御盤6に接続されていてもよい。
【0057】
制御盤6は、演算装置およびメモリと、コントローラ82等に電線により接続される入出力インタフェース部と、記憶部とを備えたコンピュータ装置であり、所謂PLC(Programmable Logic Controller)に相当する。
図4には、検温RFタグ7から読み取られた温度データの利用に関する制御盤6のプログラムモジュールを示している。制御盤6は、プログラムのモジュールとして、温度履歴情報取得部61と、無菌状態良否判定部62と、記憶部63とを備えている。
【0058】
温度履歴情報取得部61は、容器2および蓋25について個別に、搬送方向の複数の位置でそれぞれ読み取られた温度データを含む容器2の温度履歴情報を取得し、記憶部63に蓄積して記憶させる。
無菌状態良否判定部62は、容器2および蓋25について個別に、記憶部63から読み出される温度履歴情報に基づいて、無菌状態に至るために必要な規定温度および規定時間に達しているか否かに応じて良否を判定する。
【0059】
〔殺菌中の容器温度と殺菌時間との関係〕
検温RFタグ7を含むRFIDシステムにより得られる容器2の温度履歴情報は、例えば、容器2の無菌状態を担保するために利用することができる。
図7は、有線の温度センサである熱電対を用いて得られた殺菌中の容器2の温度履歴情報から導かれた、殺菌中の容器2の温度(横軸)と、殺菌開始から、容器2が殺菌効果「6D」に相当する無菌状態に至るまでに要する殺菌時間(縦軸)との間の関係を示す。
図7の縦軸は、対数軸に相当する。
図7に示す関係を導くために用いられた温度履歴情報は、加温されている殺菌液を噴射するノズルが設けられた試験装置に容器2を固定して、殺菌中の容器2に取り付けられている熱電対から電線を通じて検知回路に取り出される温度信号を記憶装置に蓄積させることで得られたものである。試験装置による容器2の殺菌は、微生物(菌)を容器2に付着させた状態の容器に、所定時間に亘りノズルから連続して殺菌液を噴射させることで行い、殺菌後に容器2の表面全体を綿棒で拭き取り、培養処理を経て菌数を計測した。
【0060】
上記の容器温度-殺菌時間の相関性に係る試験は、容器2の内表面における数箇所と、容器2の外表面における数箇所とに熱電対を取り付けるとともに、容器2の内表面における数箇所および容器2の外表面における数箇所に、微生物を付着させて行った。当該試験に用いられた殺菌液は、過酢酸水溶液であり、過酢酸の濃度は濃度管理装置により1800ppmに管理されている。加温装置により加温される殺菌液の温度条件と、殺菌液を噴射する殺菌処理の時間の条件とを変えて、殺菌液の温度と、無菌状態に至るまでの殺菌時間との間の関係を調べた。
【0061】
その結果を
図7のグラフに示しているように、殺菌中の容器2の温度と、容器2が無菌状態に至るまでの殺菌時間との間には相関がある。つまり、容器2の温度に応じて、無菌状態に至るまでに必要な殺菌時間が変わる。
図7に示すように、容器2の温度が高いほど、無菌状態に至るまでに必要な殺菌時間は短い。
図7は、無菌状態の良否判定に用いられる典型的な微生物であるBacillus subtilisについてのデータを示している。但し、他の微生物についても、その温度依存の度合に違いはあるとしても、殺菌中の容器2の温度と、容器2が無菌状態に至るまでの殺菌時間との間には、同様の相関があり、容器2の温度が高いほど、無菌状態に至るまでに必要な殺菌時間は短い。
【0062】
なお、
図7に示す容器温度は、容器2に設けられた複数の熱電対からそれぞれ得られる温度のうち、代表としての一の熱電対から得られる温度に基づく。他の熱電対による検知温度も、代表の熱電対による検知温度とほぼ同様であり、無菌状態に至るまでの殺菌時間との相関性を示す。但し、殺菌液の噴流が直接的に当たっているか間接的に当たっているかの違い等により、無菌状態に至るまでの必要殺菌時間に差が出る可能性はある。
【0063】
無菌状態に至るまでの時間は、殺菌液の濃度にも依存するが、濃度は濃度管理装置により管理されており、容器2に噴射される殺菌液の濃度は一定である。一方、殺菌液の温度については、加温装置により殺菌液が一定温度に加温されているとしても、ノズル101,102から容器2に噴射される殺菌液の温度は、加温装置における殺菌液の温度と必ずしも一致しない。
【0064】
図7に示すような相関性に基づくと、搬送中の容器2についても、容器2の温度履歴情報を取得するならば、その情報に基づいて、容器2が無菌状態に至るために必要な規定温度および規定時間に達しているか否かに応じて良否を判定することができる。
ここで、殺菌液の濃度が変わることで、殺菌時間が変化するとしても、上記相関性は維持される。また、任意の濃度の過酸化水素溶液等の他の殺菌液を用いる場合にも、
図7に示す例と同様に、容器温度が低くなるにつれて殺菌時間が長くなるのと同じ傾向を示す相関性が存在する。さらに、殺菌対象が容器2から蓋25に変わっても、同様の相関性が存在する。殺菌対象は、広く、種々の形状で、種々の材料から形成された搬送物品に一般化することができる。
また、搬送される物品の温度履歴情報は、上述したようにRFID技術を利用して取得することができる。
そうすると、搬送物品の殺菌中の温度と、搬送物品が無菌状態に至るまでの殺菌時間との間の相関性から、殺菌液の濃度や、殺菌液に含まれる殺菌剤を問わず、搬送物品の温度履歴情報に基づく無菌状態の良否判定を行うことができる。搬送物品の温度履歴情報に基づく無菌状態の良否判定は、殺菌装置10や容器搬送機構40等の具体的な装置構成を選ばず、つまり、特定の無菌充填システム1に限らず、他の無菌充填システムにも適用可能である。
【0065】
〔無菌状態の良否判定方法〕
以下、殺菌中の容器2の温度履歴情報に基づいて、無菌充填システム1により生産される製品の無菌状態の検証として、容器2の無菌状態の良否を判定する工程の一例を説明する。かかる良否判定を行うにあたり、容器2に微生物を付着させる必要はない。
容器2の無菌状態の良否判定は、無菌充填システム1の立ち上げ時に行うことができる他、生産開始後にも行うことができる。
【0066】
無菌状態の良否判定を行うにあたり、容器2の任意の箇所に、検温RFタグ7を基材7Aに積層された粘着層や、接着剤等を用いて設置する。また、少なくとも殺菌領域11を含む領域に亘り、容器2の搬送方向における複数の位置にそれぞれリーダー8を設置する。
【0067】
殺菌領域11において容器2に殺菌液が噴射される時間(殺菌時間)は、殺菌装置10のノズル101,102が配置されている搬送区間の長さ、および容器2の移動速度に応じて決まる。図示しない加温装置により殺菌液が加温される温度(加温温度)は、
図7に示す相関性の情報において、殺菌時間に対応する温度よりも高い温度に設定されている。
図7より、殺菌中に、容器2の温度がT
1℃の状態が、t
1秒に亘り維持されていれば、6Dの無菌状態に至る。これに基づくと、例えば、
図8に示すように、殺菌時間がt
1+Δt
1秒であって、容器2の部位による温度差を考慮して、無菌状態に至るために容器温度がT
1+ΔT
1℃以上である必要があるとすると、加温装置から容器2までの殺菌液の温度低下をも見込んで、加温温度をT
1+ΔT
1℃よりも高い温度に設定することができる。
【0068】
続いて、少なくとも殺菌装置10および搬送機構40を生産時と同様に稼働させ、検温RFタグ7が設けられている容器2を搬送しながら、加温されている殺菌液をノズル101,102から噴射させることで容器2を殺菌する(殺菌ステップ)。
殺菌ステップが開始されると、加温されている殺菌液が噴射されることで容器2の温度は上昇する。容器2が殺菌領域11を搬送されている間、リーダー8が設置されている位置P1~P5を逐次容器2が通過する度に、当該位置の通過時における容器2の温度を示す温度データが検温RFタグ7からリーダー8に読み取られ、リーダー8から制御盤6へと出力される。制御盤6の温度履歴情報取得部61は、搬送方向の複数の位置でそれぞれ読み取られた温度データを含む容器2の温度履歴情報を取得し、記憶部63に蓄積して記憶させる(温度履歴情報取得ステップ)。
【0069】
容器2の殺菌を終えたならば、制御盤6の無菌状態良否判定部62は、記憶部63から読み出される温度履歴情報に基づいて、無菌状態に至るために要する規定温度Tおよび規定時間tに達しているか否かに応じて良否を判定する(無菌状態良否判定ステップ)。
【0070】
規定時間tは、殺菌装置10による殺菌時間を最大として、適宜に定めることができる。例えば、規定時間tを上述の殺菌時間(t
1+Δt
1秒)に定めることができる。
規定温度Tは、規定時間tと、
図7に示す相関性の情報とに基づいて設定することができる。上述の殺菌時間(t
1+Δt
1秒)および加温温度(T
1+ΔT
1℃よりも高い温度)の例においては、例えば、規定温度TをT
1+ΔT
1℃に設定することができる。
【0071】
無菌状態良否判定部62は、温度履歴情報から、容器温度が規定時間tに亘り規定温度T以上に維持されている場合には、「良」、つまり容器2の無菌状態が担保されていると判定することができる。温度履歴情報から、容器温度が規定温度Tに達していない、あるいは、規定温度Tに達してはいても規定時間tに亘り連続して維持されていない場合には、無菌状態良否判定部62は、「否」、つまり容器2の無菌状態が担保されていないと判定することができる。
【0072】
容器2の複数の箇所に複数の検温RFタグ7が設けられ、容器2の部位毎に個別の温度履歴情報が取得される場合は、容器2の部位毎に無菌状態の良否判定を行うことが可能である。仮に、容器2の一部の部位について判定結果が「否」であるのならば、例えば、規定温度Tを上げる、ノズル101,102のうち当該部位に対応するノズルの増設、噴射角度や噴射圧力の調整等を行い、再度、容器2を搬送しながら殺菌装置10により殺菌し、殺菌中の容器2から温度履歴情報を取得し、温度履歴情報に基づいて無菌状態の良否判定を行うとよい。
【0073】
蓋25の無菌状態の良否判定も、蓋25に設けられた検温RFタグ7から蓋25の搬送方向における複数の位置でリーダー8に読み取られた温度データを含む温度履歴情報に基づいて、制御盤6により同様に行うことができる。
【0074】
温度履歴情報は、必ずしも無菌状態の良否判定に用いられるばかりではなく、例えば、洗浄領域12において容器2のすすぎが十分に行われているか否かを判定するために用いることもできる。その場合は、洗浄領域12における搬送方向の複数の位置にそれぞれ設置されたリーダー8により、容器2に設けられている検温RFタグ7から逐次温度を読み取ることで、すすぎ中の容器2の温度履歴情報を取得することができる。その温度履歴情報に基づいて、制御盤6により、容器温度がすすぎの規定の時間に亘りすすぎの規定の温度以下に維持されている場合は、容器2に無菌水が十分に当たっていることが想定されるので、すすぎの程度が「良」であると判定し、そうでない場合は、すすぎの程度が「否」であると判定することが可能である。
【0075】
蓋殺菌装置の洗浄領域32で蓋25のすすぎが十分に行われているか否かの判定も、容器2のすすぎの判定と同様に、蓋25の搬送方向における複数の位置にそれぞれ設置されたリーダー8により、蓋25に設けられている検温RFタグ7から読み取られた温度データからなる温度履歴情報に基づいて、制御盤6により、蓋25のすすぎの程度の良否を判定することができる。
【0076】
〔本実施形態による効果〕
以上で説明した本実施形態によれば、容器2や蓋25等に設けた検温RFタグ7から無線で温度データが取り出されるので、移動系と固定系とに亘る配線の課題を払拭しつつ、搬送される容器2や蓋25のそれぞれの温度データから温度履歴情報を取得することができる。
容器2等の物品に一体化される検温RFタグ7からデータを取り出すことは、特に、スリップリング等を用いても配線が困難な、複数の回転体41を含む搬送機構40により搬送される物品の温度検知においてこそ意義が大きい。また、仮に、搬送物品に有線の温度センサを取り付けるのならば、センサ素子およびケースの大きさが検温RFタグ7と比べて大型であるため、温度センサが物品の表面から突出したり、物品の重量よりも重量が大きい温度センサが物品に取り付けられたりするので、搬送への支障が想定される。さらに、物品の表面に殺菌液等が供給されることを想定すると、温度センサにより物品の表面が広範囲に隠されてしまい殺菌が妨げられるおそれがある。こうした懸念に対し、本実施形態において物品の温度検知に用いる検温RFタグ7は、小型で薄いフィルム状の部材であって、その重量は容器2や蓋25の重量と比べて十分に軽いため、物品搬送や殺菌処理に悪影響を与えない。その点に鑑みても、物品に検温RFタグ7を設け、検温RFタグ7からデータを取り出すことの意義は大きい。
【0077】
さらに、典型的な無菌状態の検証方法としては、容器(容器2または蓋25)に直接微生物を付着させ、殺菌後の菌数を計測するところ、本実施形態によれば、容器への植菌を行うことなく、殺菌液が供給される容器の表面温度を示す温度履歴情報に基づいて、容器の無菌状態の良否を容易に判定することが可能となる。かかる良否判定を行うにあたり容器に植菌する必要がないので、典型例とは異なり、無菌状態を担保する目的で行われる検証によって微生物が無菌充填システム1の機械に残存するリスクがない。
しかも、典型例は、多数の試料容器を用意して殺菌処理を行い、培養後の菌数を計測するといった非常に手間と時間を要する作業が必要となるが、本実施形態によれば、一度でも、検温RFタグ7付きの容器を搬送しながら殺菌することによって温度履歴情報を得たのならば、制御盤6により直ちに、無菌状態の良否を典型例と比べて至極容易に判定することができる。検温RFタグ7は安価で容易に入手できるため、リーダー8を調達するコストを含めても、多大な手間と時間を要する典型例と比べて、無菌状態の検証に要するコストを抑えることができる。
【0078】
〔変形例〕
上記実施形態における温度履歴情報の取得方法および無菌状態の良否判定方法に代えて、無菌充填システムに適用することが可能な温度履歴情報の取得方法および無菌状態の良否判定方法について説明する。併せて、無菌充填システム1に代替可能な無菌充填システムについても説明する。本変形例の無菌充填システムは、搬送路の近傍にリーダー8を備える必要がなく、記憶部を備えた検温RFタグ7-1(図示省略)を用いる。こうした点、および制御盤6の一部のプログラムモジュールを除いて、本変形例の無菌充填システムは、上記実施形態の無菌充填システム1と同様に構成することができるから、本変形例の無菌充填システムの図示を省略する。
【0079】
本変形例において容器(容器2または蓋25)の温度履歴情報の取得に用いられる検温RFタグ7-1は、データを記憶部に記憶可能に構成されていることを除いて、上記実施形態における検温RFタグ7(
図5)と同様に構成されている。
検温RFタグ7-1が設けられている容器が搬送されている間、検温部71により逐次検知される温度を示す温度データが、ICチップ70の動作により記憶部に蓄積して記憶される(温度情報蓄積ステップ)。当該記憶部に蓄積されている温度データは、容器の温度履歴情報に相当する。したがって、制御盤6は、検温RFタグ7の記憶部に蓄積されている温度データを、適宜なタイミングで、例えば、容器の殺菌を終えた後に、記憶部から温度履歴情報として取得することができる(温度履歴情報取得ステップ)。
【0080】
ICチップ70により、例えば、殺菌領域11においてノズル101,102が配置されている区間の始端で温度データの蓄積が開始され、当該区間の終端で温度データの蓄積を終える。検温RFタグ7-1の記憶部は、温度履歴情報の取得が必要な搬送路2Rの区間または搬送路3Rの区間に亘り検知される温度データを蓄積するのに足りる記憶容量を有していることが好ましい。但し、その限りではなく、記憶容量が不足する場合は、例えば、容器の殺菌が行われている途中で、検温RFタグ7-1の記憶部から制御盤6の記憶部63に温度履歴情報を取得したのならば、それ以降に検温部71により検知された温度のデータを検温RFタグ7-1の既存の記憶データに上書きして記憶部に記憶させるとよい。
【0081】
本変形例において容器の無菌状態の良否を判定する際は、容器における適宜な箇所に検温RFタグ7-1を設け、その容器を搬送しながら、加温されている殺菌媒体を容器に噴射して容器を殺菌する(殺菌ステップ)。殺菌の過程において検温RFタグ7-1の記憶部に蓄積される温度データは、殺菌ステップを終え、容器を搬送機構から取り外した後、例えば、リーダー8と同様に構成された図示しないリーダーを介して制御盤6に出力され、記憶部63に温度履歴情報として記憶される(温度履歴情報取得ステップ)。
この温度履歴情報に基づいて、制御盤6のプログラムモジュールにより、上記実施形態と同様に、容器が無菌状態に至るために必要な規定温度および規定時間に達している場合は「良」と判定し、そうでない場合は「否」と判定するとよい(無菌状態良否判定ステップ)。
【0082】
上記以外にも、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
例えば、殺菌液として過酸化水素水溶液を用いる場合は、過酸化水素水溶液を用いて、容器温度-殺菌時間の相関性に係る試験を行うことで、
図7に相当する相関性のデータを取得し、上記実施形態と同様に得た温度履歴情報に基づいて、規定温度および規定時間に達しているか否かに応じて無菌状態の良否を判定することができる。
過酸化水素水溶液を用いる場合は、無菌水で容器2や蓋25をすすぐことに代えて、加熱され且つ加圧されている空気(浄化媒体としての温風)を容器2や蓋25に噴射することで、容器等から殺菌剤の成分を除去することが好ましい。その場合に、温風により容器2や蓋25から殺菌剤成分が十分に除去されているか否かの判定も、上記実施形態における容器2等のすすぎの程度の判定と同様に行うことができる。
【0083】
〔付記〕
以上で説明した温度履歴情報取得方法、無菌状態の良否判定方法、および無菌充填システムは、以下を開示する。
〔1〕搬送物品の温度情報取得方法は、温度を検知可能に構成されている検温部71を含むRFタグ7が設けられている物品2,25を搬送しながら、物品2,25が移動する搬送方向の複数の位置に配置されている通信部8により、位置の通過時における物品2,25の温度を示す温度データを複数の位置でそれぞれRFタグ7から読み取り、複数の位置でそれぞれ読み取られた温度データを含む温度履歴情報を取得する。
〔2〕物品2,25は、容器に相当し、RFタグは、容器の内表面および外表面の少なくとも一方における少なくとも1箇所に設けられ、温度履歴情報は、RFタグ毎に取得される。
〔3〕軸線X,Zを中心に回転して物品2,25を搬送する回転体41,331により物品2,25が支持されている状態で、通信部8によりRFタグ7から温度データを読み取る。
〔4〕物品2,25を搬送しつつ、加温されている浄化媒体を物品2,25に供給しながら、通信部8によりRFタグから温度データを読み取る。
〔5〕搬送物品2,25の温度情報取得方法は、温度の検知が可能に構成されている検温部71およびデータを記憶する記憶部を含むRFタグ7-1が設けられている物品2,25を搬送しながら、検温部71により検知される物品2,25の温度を示す温度データを記憶部に蓄積して記憶させるステップと、記憶部に蓄積されている温度データを記憶部から温度履歴情報として取得するステップと、を備える。
〔6〕無菌状態の良否判定方法は、温度を検知可能に構成されている検温部71を含むRFタグ7,7-1が設けられている物品2,25を搬送しながら、加温されている殺菌媒体を物品2,25に供給する殺菌ステップと、殺菌ステップにおいて〔1〕から〔3〕のいずれか一項に記載の温度情報取得方法により温度履歴情報を取得する取得ステップ、あるいは、殺菌ステップの後に、〔5〕に記載の温度情報取得方法により温度履歴情報を取得する取得ステップと、温度履歴情報に基づいて、無菌状態に至るために必要な規定温度および規定時間に達しているか否かに応じて良否を判定する判定ステップと、を備える。
〔7〕物品2,25は、容器に相当し、RFタグ(7,7-1)は、容器の1箇所以上に設けられ、温度履歴情報は、RFタグ毎に取得され、判定ステップにおいて、RFタグ毎に良否を判定する。
〔8〕殺菌媒体は、過酢酸水溶液、または過酸化水素水溶液に相当し、殺菌ステップにおいて、殺菌媒体が所定の濃度に管理される。
〔9〕容器2,25を搬送しながら、加温されている殺菌媒体を用いて容器2,25を殺菌して容器2,25に充填処理を行う無菌充填システムは、殺菌中の容器2,25が移動する搬送方向の複数の位置に配置されている通信部8と、温度を検知可能に構成されている検温部を含み、容器2,25に設けられるRFタグ7から通信部8により読み取られる温度データを容器2,25の無菌状態の良否判定に用いる制御部6と、を備える。通信部8は、位置の通過時における容器2,25の温度を示す温度データを複数の位置でそれぞれRFタグから読み取る。制御部6は、複数の位置でそれぞれ読み取られた温度データを含む温度履歴情報を取得する温度履歴情報取得部61と、温度履歴情報に基づいて、無菌状態に至るために必要な規定温度および規定時間に達しているか否かに応じて良否を判定する無菌状態取得部62と、を含む。
〔10〕容器2,25を搬送しながら、加温されている殺菌媒体を用いて容器2,25を殺菌して容器2,25に充填処理を行う無菌充填システムは、温度を検知可能に構成されている検温部71およびデータを記憶する記憶部を含み、容器2,25に設けられるRFタグ7-1から読み取られる温度データを容器2,25の無菌状態の良否判定に用いる制御部6と、を備える。制御部6は、検温部71により検知される殺菌中の容器2,25の温度を示す温度データが蓄積されている記憶部から、記憶部に蓄積されている温度データをRFタグ7-1から温度履歴情報として取得し、温度履歴情報に基づいて、無菌状態に至るために必要な規定温度および規定時間に達しているか否かに応じて良否を判定する。
【符号の説明】
【0084】
1 無菌充填システム
2 容器(物品)
2A 開口部
2B 首部
2C 底
2D 胴
2R,3R 搬送路
5 筐体
6 制御盤
7 検温RFタグ
7A 基材
8 リーダー(通信部)
10 殺菌装置
11 殺菌領域
12 洗浄領域
20 充填密封装置
21 充填領域
22 密封領域
25 蓋
30 蓋殺菌装置
31 殺菌領域
32 洗浄領域
33 蓋搬送機構
40 容器搬送機構
41,331 回転体
42 グリッパ
51~56 壁体
57 開口部
58 ガラス部材
61 温度履歴情報取得部
62 無菌状態良否判定部
63 記憶部
70 ICチップ
71 検温部
72 アンテナ
81 アンテナ
82 コントローラ
83 ブラケット
101 内側ノズル
102 外側ノズル
101A,102A 噴射口
201 充填機
202 密封機
251 内周部
251A 雌ねじ
252 頂部
253 側壁
301 内側ノズル
302 外側ノズル
301A,302A 噴射口
331 回転体
u 上流側
d 下流側
P1,P2,P3,P4,P5 位置
X,Z 軸線