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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108729
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】粘着剤組成物及び粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/08 20060101AFI20230731BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230731BHJP
【FI】
C09J133/08
C09J7/38
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009929
(22)【出願日】2022-01-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡部 辰矢
(72)【発明者】
【氏名】村田 ちひろ
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J040DA002
4J040DF041
4J040KA16
4J040KA26
(57)【要約】
【課題】薄膜であっても高極性被着体及び低極性被着体のいずれに対しても、高い粘着力を示すとともに、保持力、曲面接着性も優れる粘着剤、及び粘着シートの提供。
【解決手段】共重合体(A)と硬化剤(B)を含み、共重合体(A)は、炭素数4~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a1)、脂肪族環式構造を有する(メタ)アクリレート(a2)、一般式(1)で表される(メタ)アクリレート(a3)、および水酸基を有する(メタ)アクリレート(a4)を含有するモノマー混合物の共重合体であり、(メタ)アクリレート(a3)の含有率は、モノマー混合物100質量%中、0.1~20質量%であり、硬化剤(B)は、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤及び金属キレート系硬化剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする粘着剤組成物によって解決される。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共重合体(A)と硬化剤(B)を含み、
共重合体(A)は、炭素数4~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a1)、脂肪族環式構造を有する(メタ)アクリレート(a2)、一般式(1)で表される(メタ)アクリレート(a3)、および水酸基を有する(メタ)アクリレート(a4)を含有するモノマー混合物の共重合体であり、
(メタ)アクリレート(a3)の含有率は、モノマー混合物100質量%中、0.1~20質量%であり、
硬化剤(B)は、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤及び金属キレート系硬化剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする粘着剤組成物。
【化1】
一般式(1)

(式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素数2~4のアルキレン基、Rは炭素数1~4のアルキル基、nは3~15の整数を示す。)
【請求項2】
前記モノマー混合物は、さらにカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート(a5)を含有することを特徴とする請求項1記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
さらに粘着付与樹脂を含み、
前記粘着付与樹脂は、ロジン系粘着付与樹脂、合成炭化水素系粘着付与樹脂及びテルペンフェノール系粘着付与樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1または2記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
さらにポリオレフィンを含む、請求項1~3いずれか1項記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
請求項1~4いずれか1項記載の粘着剤組成物から形成してなる粘着剤層を備えた、粘着シート。
【請求項6】
前記粘着剤層は、厚みが1~20μmである、請求項5記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物及び粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤組成物から形成した粘着剤層を有する粘着シートは、取り扱いが容易であることからラベルや接着用途として幅広い分野で使用されている。近年、コストダウンや環境負荷軽減の観点や、電子デバイスの軽量薄膜化により、様々な用途で粘着剤層の薄膜化が求められている。しかしながら、粘着シートの粘着力は、粘着剤層の膜厚の減少に伴って低下することが一般的である。このため、薄膜条件でも高い粘着力を有する粘着シートの開発が強く望まれている。さらに、様々な用途で使用するためには、ステンレス板のような高極性被着体やポリオレフィンのような低極性被着体のどちらにも強い粘着力を示し、保持力、曲面接着性にも優れていることが必要である。
特許文献1には、カルボキシル基を有する単量体を一定量含み、質量平均分子量とゲル分率を既定した薄膜の粘着膜を備える粘着シートが開示されている。
特許文献2には、n-ブチル(メタ)アクリレートを含むアクリル共重合体と合成炭化水素系粘着付与樹脂を含む粘着剤と薄膜の粘着シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-77820号公報
【特許文献2】国際公開第2020/27180号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これら従来の粘着シートでは、ステンレス板などの高極性被着体に対する粘着力は優れるものの、ポリオレフィンのような低極性被着体に対する粘着力が充分ではなく、とくに薄膜条件の場合であっても高極性被着体及び低極性被着体のいずれに対しても、高い粘着力を示すことは困難であり、加えて保持力と曲面適性をも満足することはできていないのが現状である。
【0005】
本発明は、薄膜であっても高極性被着体及び低極性被着体のいずれに対しても、高い粘着力を示すとともに、保持力、曲面接着性も優れる粘着剤、及び粘着シートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の粘着剤は、共重合体(A)と硬化剤(B)を含み、共重合体(A)は、炭素数4~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a1)、脂肪族環式構造を有する(メタ)アクリレート(a2)、一般式(1)で表される(メタ)アクリレート(a3)、および水酸基を有する(メタ)アクリレート(a4)を含有するモノマー混合物の共重合体であり、(メタ)アクリレート(a3)の含有率は、モノマー混合物100質量%中、0.1~20質量%であり、硬化剤(B)は、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤及び金属キレート系硬化剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする。
【化1】

・・・一般式(1)
(式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素数2~4のアルキレン基、Rは炭素数1~4のアルキル基、nは3~15の整数を示す。)
【発明の効果】
【0007】
本発明により、薄膜であっても高極性被着体及び低極性被着体のいずれに対しても、高い粘着力を示すとともに、さらに保持力、曲面接着性も優れる粘着剤、及び粘着シートを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明について詳細に説明する前に用語を定義する。まず、シート、フィルム及びテープは同義語である。(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸を含む。(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートを含む。モノマーはエチレン性不飽和二重結合を有する単量体である。被着体は、粘着シートを貼り付ける相手方をいう。
尚、本明細書では、炭素数4~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a1)、脂肪族環式構造を有する(メタ)アクリレート(a2)、一般式(1)で表される(メタ)アクリレート(a3)、水酸基を有する(メタ)アクリレート(a4)、カルボキシル基を有する(メタ)アクリレート(a5)、炭素数4~7のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a-1)、および炭素数8~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a-2)をそれぞれ(メタ)アクリレート(a1)、(メタ)アクリレート(a2)、(メタ)アクリレート(a3)、(メタ)アクリレート(a4)、(メタ)アクリレート(a5)、(メタ)アクリレート(a-1)、(メタ)アクリレート(a-2)と称することがある。
本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に1種単独で、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0009】
《粘着剤組成物》
本発明の粘着剤組成物は、共重合体(A)と硬化剤(B)を含み、共重合体(A)は、炭素数4~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a1)、脂肪族環式構造を有する(メタ)アクリレート(a2)、一般式(1)で表される(メタ)アクリレート(a3)、および水酸基を有する(メタ)アクリレート(a4)を含有するモノマー混合物の共重合体であり、(メタ)アクリレート(a3)の含有率は、モノマー混合物100質量%中、0.1~20質量%であり、硬化剤(B)は、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤及び金属キレート系硬化剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。
【化2】

・・・一般式(1)
(式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素数2~4のアルキレン基、Rは炭素数1~4のアルキル基、nは3~15の整数を示す。)
【0010】
本発明では、脂肪族環式構造を有する(メタ)アクリレートを用いることで共重合体の極性を下げて低極性被着体との密着性を向上させると同時に低極性の粘着付与樹脂との相溶性を向上させ、一般式(1)で表されるポリアルキレンオキサイド鎖を有する(メタ)アクリレートを用いることで粘着剤層に凝集力と柔軟性を付与することができ、これらの複合により、薄膜でありながら高極性被着体及び低極性被着体のいずれに対しても、高い粘着力を示すとともに、保持力、曲面接着性をも両立できる。
【0011】
<共重合体(A)>
共重合体(A)は、炭素数4~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a1)、脂肪族環式構造を有する(メタ)アクリレート(a2)、一般式(1)で表される(メタ)アクリレート(a3)、および水酸基を有する(メタ)アクリレート(a4)を必須モノマーとして含み、必要に応じてカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート(a5)、およびその他モノマーを任意モノマーとしたモノマー混合物を溶液重合した共重合体である。
【0012】
[(メタ)アクリレート(a1)]
(メタ)アクリレート(a1)は、炭素数4~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートである。
(メタ)アクリレート(a1)の含有率は、モノマー混合物100質量%中に60~99質量%使用することが好ましく、70~98質量%がより好ましい。60~99質量%使用することで、粘着力と保持力、曲線接着性の両立がより容易になる。
(メタ)アクリレート(a1)は、炭素数4~7のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a-1)、及び、炭素数8~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a-2)を含有することが高極性の被着体及び低極性の被着体に対する粘着力の両立、粘着付与樹脂との相溶性の点から好ましい。
【0013】
(メタ)アクリレート(a-1)の(メタ)アクリレート(a-2)成分に対する含有割合は、質量比で、(a-1)/(a-2)=99/1~20/80が好ましく、98/2~50/50がより好ましく、95/5~60/40がさらに好ましい。この比率で使用することで、高極性の被着体に対する粘着力及び低極性の被着体に対する粘着力をより両立することができ、粘着付与樹脂との相溶性を向上させ、さらに粘着力を向上することができる。
【0014】
炭素数4~7のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a-1)としては、例えば、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート等が上げられる。これらの中でも、粘着力と保持力の両立の観点でn-ブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0015】
炭素数8~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a-2)としては、例えば、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、粘着力と保持力の両立の観点で2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0016】
[(メタ)アクリレート(a2)]
(メタ)アクリレート(a2)は、脂肪族環式構造を有する(メタ)アクリレートである。
(メタ)アクリレート(a2)の含有率は、モノマー混合物100質量%中に0.1~10質量%使用することが好ましく、0.2~8質量%がより好ましい。0.1~10質量%使用することで、粘着力と保持力、曲線接着性の両立がより容易になる。
【0017】
(メタ)アクリレート(a2)が有する脂肪族環式構造としては、例えばシクロヘキシル基、ジシクロペンテニル基、ジシクロペンタニル基、イソボルニル基などが挙げられる。低極性被着体に対する粘着力や粘着付与樹脂との相溶性向上の観点から、ジシクロペンテニル基、ジシクロペンタニル基、またはイソボルニル基を有することが好ましい。
【0018】
(メタ)アクリレート(a2)としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。この中でも立体的な脂肪族環式構造を有するジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートが低極性被着体に対する粘着力や粘着付与樹脂との相溶性向上の観点で好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
【0019】
[(メタ)アクリレート(a3)]
(メタ)アクリレート(a3)は、一般式(1)で表される(メタ)アクリレートである。
【化3】

・・・一般式(1)
(式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素数2~4のアルキレン基、Rは炭素数1~4のアルキル基、nは3~15の整数を示す。)
【0020】
(メタ)アクリレート(a3)を使用することで、側鎖に存在する極性が高いポリオキシアルキレン鎖と(メタ)アクリレート(a2)由来の大きな脂肪族環式構造が互いに高極性被着体や低極性被着体へ密着することを妨害せず、高極性被着体と低極性被着体への粘着力の両立が可能となる。
【0021】
(メタ)アクリレート(a3)の含有率は、モノマー混合物100質量%中に0.1~20質量%であり、0.2~15質量%がより好ましい。0.1~20質量%使用することで、粘着力と保持力、曲線接着性の両立がより容易になる。
【0022】
一般式(1)において、nは3~15の整数を示す。nは、粘着力と保持力、曲面接着性の両立の観点から、3~15の整数であるが、好ましくは3~9の整数である。n=1~2となる側鎖が短い(メタ)アクリレートに比べて、n=3~15となる(メタ)アクリレートは、アクリルポリマー主鎖と高極性部位の距離が離れており、(メタ)アクリレート(a2)由来の大きな脂肪族環式構造に邪魔されることがなく、高極性被着体に対する密着性により優れたものとすることができる。また、側鎖が長すぎないことで、(メタ)アクリレート(a2)由来の脂肪族環式構造が低極性被着体に密着することを妨害することも抑制できる。
【0023】
(メタ)アクリレート(a3)は、常法により製造したものであっても、市販のモノマーから適宜選択したものであってもよい。
(メタ)アクリレート(a3)は、例えば、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、等が挙げられる。これらのモノマーは、例えば「ブレンマーPME200」、「ブレンマーPME400」、「ブレンマーAME400」(日油社製)、「NKエステルAM-30G」、「NKエステルAM-90G」、「NKエステルAM-130G」、「NKエステルAM-30PG」、「NKエステルM-40G」、「NKエステルM-90G」、「NKエステルM-130G」(新中村化学社製)、「ライトアクリレートMTG-A」、「ライトアクリレート130A」、「ライトエステル130MA」(共栄社化学社製)の商品名として市販されているものを用いることができる。
【0024】
[(メタ)アクリレート(a4)]
(メタ)アクリレート(a4)は、水酸基を有する(メタ)アクリレートである。
水酸基を有する(メタ)アクリレート(a4)は、モノマー混合物100質量%中に0.05~3質量%使用することが好ましく、0.1~2質量%がより好ましい。0.05~3質量%使用することで、粘着剤層の凝集力が増し、保持力や曲面接着性向上がより容易になる。
【0025】
水酸基を有する(メタ)アクリレート(a4)は、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートや、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリルレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートなどのグリコールモノ(メタ)アクリレート、等が挙げられる。これらの中でも、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0026】
[(メタ)アクリレート(a5)]
(メタ)アクリレート(a5)は、カルボキシル基を有する(メタ)アクリレートである。
本発明のモノマー混合物は、さらにカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート(a5)を含むことができる。
カルボキシル基を有する(メタ)アクリレート(a5)を含有することで、凝集力を発現しやすく、保持力と曲面接着性に優れたものとできるために好ましい。
カルボキシル基を有する(メタ)アクリレート(a5)は、共重合体(A)の酸価が0.1~24.0mgKOH/gとなる量を使用することが好ましく、0.2~20.0mgKOH/gがより好ましい。共重合体(A)の酸価が0.1~24.0mgKOH/gであることで、粘着剤層の凝集力付与と柔軟性付与をバランスよく行うことができ、粘着力と保持力、曲面接着性の両立がより容易になる。
【0027】
カルボキシル基を有する(メタ)アクリレート(a5)は、例えば(メタ)アクリル酸、β-カルボキシエチルアクリレート、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、2-アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。これらの中でも、凝集力付与の観点から(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0028】
[その他モノマー]
その他モノマーは、炭素数4~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a1)、脂肪族環式構造を有する(メタ)アクリレート(a2)、一般式(1)で表される(メタ)アクリレート(a3)、水酸基を有する(メタ)アクリレート(a4)、およびカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート(a5)以外のその他(メタ)アクリレート(a6)と、(メタ)アクリレート以外のモノマーである。
その他モノマーは、粘着剤の粘着力や保持力、曲面接着性を損なわない範囲で用いることができる。具体的には、(メタ)アクリレート(a1)以外のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート等や、例えばアミド結合を有するモノマー、エポキシ基を有するモノマー、アミノ基を有するモノマー、芳香環を有するモノマー、(メタ)アクリレート(a3)を除くアルコキシ(ポリ)アルキレンオキサイドを有するモノマー及びその他ビニルモノマー等が挙げられる。
【0029】
(メタ)アクリレート(a1)以外のアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-オクタデシル(メタ)アクリレート及びイソオクタデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリレート(a1)以外のアルキル(メタ)アクリレートモノマーを用いる場合、その含有率は、モノマー混合物100質量%中、0.1~20質量%であることが好ましい。
【0030】
アミド結合を有するモノマーは、例えば(メタ)アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N、N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-(ブトキシメチル)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系化合物;N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、及びアクリロイルモルホリン等の複素環含有化合物等が挙げられる。
エポキシ基を有するモノマーは、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、及び3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アミノ基を有するモノマーは、例えばモノメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、及びモノエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のモノアルキルアミノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アミド結合を有するモノマー、エポキシ基を有するモノマー及びアミノ基を有するモノマーを用いる場合、その含有率は、モノマー混合物100質量%中、それぞれ0.1~1質量%であることが好ましい。
【0031】
芳香環を有するモノマーは、例えばフェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、及びエチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
芳香環を有するモノマーを用いる場合、その含有率は、モノマー混合物100質量%中、0.1~10質量%であることが好ましい。
【0032】
(メタ)アクリレート(a3)を除くアルコキシ(ポリ)アルキレンオキサイドを有するモノマーは、例えば2-メトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、及びフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリレート(a3)を除くアルコキシ(ポリ)アルキレンオキサイドを有するモノマーを用いる場合、その含有率は、モノマー混合物100質量%中、0.1~10質量%であることが好ましい。
【0033】
その他ビニルモノマーは、酢酸ビニル、及びアクリロニトリルなどが挙げられるがこれらに限定されない。
その他ビニルモノマーを用いる場合、その含有率は、モノマー混合物100質量%中、0.1~10質量%であることが好ましい。
【0034】
[共重合体(A)の製造]
共重合体(A)は、例えば、モノマー混合物に重合開始剤を加え、溶液重合することで得ることができる。前記溶液重合に使用する溶剤は、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、及びイソプロパノール等が好ましく、酢酸エチルがより好ましい。
【0035】
溶液重合は、モノマー混合物100質量部に対して重合開始剤を0.001~1質量部程度加えて重合を行うことが好ましい。通常、重合は、窒素気流下で、50℃~90℃程度の温度で6時間~20時間行うことができる。また、重合の際、連鎖移動剤を使用して共重合体の質量平均分子量を適宜調整することができる。
【0036】
本発明において共重合体(A)の質量平均分子量は、40万~150万が好ましく、50万~130万がより好ましく、60万~120万がさらに好ましい。Mwを40万~150万の範囲にすることで、粘着力と保持力、曲面接着性の両立が容易になる。なお、本発明で質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の値である。
【0037】
連鎖移動剤は、例えばn-ドデシルメルカプタン、メルカプトイソブチルアルコール、メルカプト酢酸、2-メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2-エチルヘキシル、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、グリシジルメルカプタン、α-メチルスチレンダイマー、四塩化炭素、クロロホルム、及びハイドロキノン等が挙げられる。連鎖移動剤は、モノマー混合物100質量部に対して0.01~1質量部程度を使用できる。
【0038】
重合開始剤は、アゾ系化合物及び有機過酸化物が一般的である。
アゾ系化合物は、例えば2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(
2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル
)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,
4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチ
ルプロピオネート)、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2'-アゾビ
ス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、及び2,2'-アゾビス(2-(2-
イミダゾリン-2-イル)プロパン)等が挙げられる。
有機過酸化物は、例えば過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒド
ロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキ
シジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパ
ーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチ
ルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド
等が挙げられる。
【0039】
<硬化剤(B)>
本発明の粘着剤組成物は、さらに硬化剤(B)を含むことが必要であり、硬化剤(B)は、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤及び金属キレート系硬化剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。硬化剤を含むことで、凝集力を向上させ、保持力と曲面接着性を実用レベルまで向上できる。
【0040】
イソシアネート系硬化剤は、例えばトリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、及びポリメチレンポリフェニルイソシアネート等のジイソシアネートとトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、ならびにそのビュレット体、ならびにそのイソシアヌレート体、ならびに前記ジイソシアネートと、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、及びポリイソプレンポリオール等のうちのいずれかのポリオールとのアダクト体などの分子内に3個以上のイソシアネート基を有する化合物;トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、及びポリメチレンポリフェニルイソシアネート等のジイソシアネート、ならびにヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート体等の分子内に2個のイソシアネート基を有する化合物;等が挙げられる。これらの中でも、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体が、粘着物性を容易に調整できるため好ましい。なお、イソシアネート基の個数は平均個数である。
【0041】
エポキシ系硬化剤は、例えばビスフェノールA-エピクロロヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1、3-ビス(N、N'-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、及びN,N,N',N'-テトラグリシジルアミノフェニルメタン等が挙げられる。
【0042】
金属キレート系硬化剤は、例えばアルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロムおよびジルコニウムなどの多価金属と、アセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルとの配位化合物等が挙げられる。
【0043】
硬化剤(B)のうち、イソシアネート系硬化剤はアクリル系共重合体100質量部に対して、0.1~3質量部を含むことが好ましい。エポキシ系硬化剤はアクリル系共重合体100質量部に対して、0.01~0.5質量部を含むことが好ましい。金属キレート系硬化剤は、0.1~2質量部を含むことが好ましい。上記範囲の量、硬化剤(B)を使用することで、粘着力と保持力の両立が容易になる。
【0044】
本発明の粘着剤組成物は、硬化剤として、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤及び金属キレート系硬化剤以外の硬化剤を含んでも良い。
イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤及び金属キレート系硬化剤以外の硬化剤としては、例えば、アジリジン系硬化剤、アミン系硬化剤、及びアミノ樹脂系硬化剤等が挙げられる。
【0045】
<粘着付与樹脂>
本発明の粘着剤組成物は、さらに粘着付与樹脂を含んでもよい。粘着剤組成物は、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、合成炭化水素系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、テルペンフェノール系粘着付与樹脂等が挙げられ、この中でもロジン系粘着付与樹脂、合成炭化水素系粘着付与樹脂及びテルペンフェノール系粘着付与樹脂より選ばれる少なくとも1種の粘着付与樹脂を含むことが好ましい。これらの粘着付与樹脂を含むことで、粘着力をより向上できる。
さらに、ロジン系粘着付与樹脂と合成炭化水素系粘着付与樹脂を併用して用いることで、相溶性と高極性被着体、低極性被着体への粘着力の両立がより容易になるために好ましい。
【0046】
ロジン系粘着付与樹脂は、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンの未変性ロジンをアルコールなどでエステル化したロジンエステルや、未変性ロジンを変性した不均化ロジン、重合ロジン、水添ロジンなどの変性ロジン、これら変性ロジンをさらにアルコールなどでエステル化した不均化ロジンエステル、重合ロジンエステル、水添ロジンエステルなどの変性ロジンエステル、未変性ロジンにフェノールを付加したロジンフェノール等が好ましい。これらの中でも粘着力及び透明性がより向上するためロジンエステル、及び変性ロジンエステルが好ましい。なお、ロジンエステル及び変性ロジンエステルには、エステル化に用いたアルコールなどの水酸基の一部が未反応で残存している場合もある。エステル化に用いるアルコールは、メタノールなどの単官能アルコール、エチレングリコールなどの2官能アルコール、グリセリンなどの3官能アルコール、及びペンタエリスリトールなどの4官能アルコールが挙げられるが、アクリル系共重合体との相溶性を考慮すると3官能以下のアルコールが好ましい。
【0047】
合成炭化水素系粘着剤付与樹脂は、例えば、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、フェノール系樹脂、石油系樹脂等が挙げられる。これらの中でもアクリル系重合体との相溶性が良く粘着性能がより向上できる点から、スチレン系樹脂が好ましい。
【0048】
本発明の粘着剤組成物で用いられる粘着付与樹脂としては、高極性被着体と低極性被着体の粘着力を両立するという観点で、ロジン系粘着付与樹脂、合成炭化水素系粘着付与樹脂が好ましく、合成炭化水素系粘着付与樹脂がより好ましい。
【0049】
粘着付与樹脂の軟化点は、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。また、軟化点の上限は、170℃が好ましく、160℃がより好ましく、155℃がさらに好ましい。粘着付与樹脂の軟化点が80~170℃であることで粘着力と保持力を高いレベルで両立し易くなる。なお、軟化点は、JISK5902に規定されている乾球法にしたがって測定した軟化温度である。
【0050】
粘着付与樹脂は共重合体(A)100質量部に対して10~50質量部使用することが好ましく、15~40質量部がより好ましい。粘着付与樹脂を10~50質量部用いることで粘着力と凝集力、曲面接着性をより容易に両立することができる。
【0051】
<ポリオレフィン>
本発明の粘着剤組成物は、さらにポリオレフィンを含むことができる。ポリオレフィンを含むことで、ポリオレフィン製の低極性被着体に対する粘着力を向上できる。
【0052】
ポリオレフィンは、塩素化されているポリオレフィン(以下、塩素化ポリオレフィン)と、塩素化されていないポリオレフィン(以下、非塩素化ポリオレフィン)に分類されるが、塩素化ポリオレフィンは、例えば、塩素化ポリプロピレン、酸変性塩素化ポリプロピレン、アクリル変性塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、塩素化エチレン酢酸ビニルコポリマー等が挙げられる。これらの中でも、溶解性に優れポリオレフィン製被着体への粘着力が高いという点から塩素化ポリプロピレン、酸変性塩素化ポリプロピレン、アクリル変性塩素化ポリプロピレンが好ましく、塩素化ポリプロピレンがより好ましい。塩素化ポリオレフィンの塩素含有率は、ポリオレフィン製の低極性被着体に対する粘着力向上効果が高いという点から、20質量%以上~45質量%以下が好ましく、28質量%以上~45質量%以下がより好ましい。
【0053】
また、非塩素化ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、αオレフィン-プロピレンコポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、ポリブテン、マレイン化ポリプロピレン、マレイン化ポリブテン、ポリブタジエン及びその水素化物、ポリイソプレン及びその水素化物、マレイン化ポリブタジエン、マレイン化ポリイソプレン、ポリブタジエンポリオール及びその水素化物、ポリイソプレンポリオール及びその水素化物、プロセスオイルや流動パラフィン等の潤滑油等が挙げられる。
これらの中でも、溶解性に優れポリオレフィン製被着体への粘着力が高いという点からαオレフィン-ポリプロピレンコポリマー、マレイン化ポリプロピレン、ポリブテン、潤滑油が好ましい。潤滑油としては、パラフィン系潤滑油、ナフテン系潤滑油等が好ましい。
本発明の粘着剤で用いられるポリオレフィンとして、溶解性に優れポリオレフィン製被着体への粘着力が高いという点から塩素化ポリオレフィンが好ましく、その中でも塩素化ポリプロピレンがより好ましい。
【0054】
ポリオレフィンは、共重合体(A)100質量部に対して0.01~10質量部使用することが好ましく、0.02~5質量部がより好ましい。ポリオレフィンを0.01~10質量部用いることで低極性被着体に対する粘着力と凝集力、曲面接着性をより容易に両立することができる。
【0055】
本発明の粘着剤組成物は、さらに任意成分として難燃助剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、ワックス、乳剤、磁性体、誘電特性調整剤を含むことができる。
【0056】
《粘着シート》
本発明の粘着シートは、基材、及び本発明の粘着剤から形成した粘着剤層を備えていることが好ましい。また別の態様として、芯材の両面に粘着剤層を有する両面粘着シート、または基材及び芯材を有さず粘着剤層のみで構成されたキャスト粘着シートも好ましい。前記粘着剤層は、粘着剤を基材上に塗工し、乾燥することで形成できる。または、粘着剤を剥離性シート上に塗工し、乾燥して粘着剤層を形成した後、基材を貼り合わせることで形成できる。なお粘着剤層の基材と接しない面に剥離性シートを貼り合わせて保管するのが通常である。
【0057】
前記粘着剤を塗工する際に、溶液重合で説明した溶剤を添加して粘度を調整することが
できる。
【0058】
前記基材は、例えばセロハン、プラスチック、ゴム、発泡体、布帛、ゴムびき布、樹脂含浸布、ガラス、及び木材等が好ましい。基材の形状は、板状及びフィルム状を選択できるが、取り扱いが容易であるフィルム状が好ましい。基材は、単独または2種以上の積層体を使用できる。
【0059】
前記プラスチックは、例えばポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリノルボルネン、ポリアリレート、ポリアクリル、ポリフェニレンサルファイドム、ポリスチレン、ポリアミド、及びポリイミド;等が挙げられる。
【0060】
粘着剤の塗工方法は、特に制限は無く、例えばマイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ-ター、及びスピンコーター等が挙げられる。塗工に際して乾燥工程を行うことが好ましい。乾燥装置は、特に制限は無く、例えば熱風乾燥機、赤外線ヒーター及び減圧法等が挙げられる。乾燥温度は、通常60~160℃程度である。
粘着剤層の厚さは、1~20μmであることが好ましいが、1~15μmがより好ましく、1~10μmであることがさらに好ましい。1~20μmにすることで、粘着力と保持力、曲面接着性を両立することができる。
【0061】
本発明の粘着シートは、ポリオレフィンを始めとするプラスチック、ガラス、ダンボール、及び金属等といった高極性から低極性まで被着体を選ばずに様々な用途で使用できる。具体的には、
【実施例0062】
以下に、実施例をもって本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、実施例で「部」とあるのは「質量部」を、「%」とあるのは「質量%」を意味する。
また、表中の配合量は、質量部であり、溶剤以外は、不揮発分換算値である。尚、表中の空欄は配合していないことを表す。
【0063】
なお、共重合体の質量平均分子量(Mw)と酸価の測定は、次の方法により行なった。
<質量平均分子量(Mw)の測定>
質量平均分子量の測定はGPCを用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、質量平均分子量の決定はポリスチレン換算で行った。
装置名:島津製作所製、LC-GPCシステム「Prominence」
カラム:東ソー社製GMHXL4本、東ソー社製HXL-H1本を直列に連結した。
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流量:1.0ml/分
カラム温度:40℃
【0064】
<酸価の測定>
共栓三角フラスコ中に試料1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解した後、0.1N-アルコール性水酸化カリウム溶液にて滴定した。酸価(単位:mgKOH/g)は次式により求めた。なお、酸価は乾燥した試料の数値とした。
酸価={(5.61×a×F)/S}/(不揮発分濃度/100)
S:試料の採取量(g)
a:0.1N-アルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1N-アルコール性水酸化カリウム溶液のファクター
【0065】
(共重合体(A-1)の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記述する。)に窒素雰囲気下、2-エチルヘキシルアクリレート20部、n-ブチルアクリレート64.8部、イソボルニルアクリレート5部、メトキシトリエチレングリコールアクリレート(共栄社化学社製、ライトアクリレートMTG-A)10部、2-ヒドロキシエチルアクリレート0.2部、酢酸エチル70部、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.015部を仕込んだ。撹拌しながら加熱を行い重合反応の開始を確認して還流温度で2時間反応した。次いで、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.03部を反応溶液に添加し6時間反応を継続した。その後、反応容器を冷却し酢酸エチル130部を加え、質量平均分子量90万の共重合体(A-1)溶液を得た。
【0066】
(共重合体(A-2~23、A’-1~3)の製造)
モノマーの種類及び配合量を表1、2記載に変えた以外は、共重合体(A-1)と同様にして、共重合体(A-2~23、A’-1~3)を得た。
【0067】
(共重合体(A-24)の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記述する。)に窒素雰囲気下、2-エチルヘキシルアクリレート20部、n-ブチルアクリレート62.8部、イソボルニルアクリレート5部、メトキシトリエチレングリコールアクリレート(共栄社化学社製、ライトアクリレートMTG-A)10部、2-ヒドロキシエチルアクリレート0.2部、アクリル酸2部、酢酸エチル30部、メチルエチルケトン40部、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.015部を仕込んだ。撹拌しながら加熱を行い重合反応の開始を確認して還流温度で2時間反応した。次いで、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.03部を反応溶液に添加し6時間反応を継続した。その後、反応容器を冷却し酢酸エチル130部を加え、質量平均分子量30万の共重合体(A-24)溶液を得た。
【0068】
(共重合体(A-25)の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記述する。)に窒素雰囲気下、2-エチルヘキシルアクリレート20部、n-ブチルアクリレート62.8部、イソボルニルアクリレート5部、メトキシトリエチレングリコールアクリレート(共栄社化学社製、ライトアクリレートMTG-A)10部、2-ヒドロキシエチルアクリレート0.2部、アクリル酸2部、酢酸エチル35部、メチルエチルケトン35部、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.015部を仕込んだ。撹拌しながら加熱を行い重合反応の開始を確認して還流温度で2時間反応した。次いで、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.03部を反応溶液に添加し6時間反応を継続した。その後、反応容器を冷却し酢酸エチル130部を加え、質量平均分子量40万の共重合体(A-25)溶液を得た。
【0069】
(共重合体(A-26)の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記述する。)に窒素雰囲気下、2-エチルヘキシルアクリレート20部、n-ブチルアクリレート62.8部、イソボルニルアクリレート5部、メトキシトリエチレングリコールアクリレート(共栄社化学社製、ライトアクリレートMTG-A)10部、2-ヒドロキシエチルアクリレート0.2部、アクリル酸2部、酢酸エチル50部、メチルエチルケトン20部、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.015部を仕込んだ。撹拌しながら加熱を行い重合反応の開始を確認して還流温度で2時間反応した。次いで、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.03部を反応溶液に添加し6時間反応を継続した。その後、反応容器を冷却し酢酸エチル130部を加え、質量平均分子量60万の共重合体(A-26)溶液を得た。
【0070】
(共重合体(A-27)の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記述する。)に窒素雰囲気下、2-エチルヘキシルアクリレート20部、n-ブチルアクリレート62.8部、イソボルニルアクリレート5部、メトキシトリエチレングリコールアクリレート(共栄社化学社製、ライトアクリレートMTG-A)10部、2-ヒドロキシエチルアクリレート0.2部、アクリル酸2部、酢酸エチル50部、アセトン20部、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.015部を仕込んだ。撹拌しながら加熱を行い重合反応の開始を確認して還流温度で2時間反応した。次いで、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.03部を反応溶液に添加し6時間反応を継続した。その後、反応容器を冷却し酢酸エチル130部を加え、質量平均分子量120万の共重合体(A-27)溶液を得た。
【0071】
(共重合体(A-28)の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記述する。)に窒素雰囲気下、2-エチルヘキシルアクリレート20部、n-ブチルアクリレート62.8部、イソボルニルアクリレート5部、メトキシトリエチレングリコールアクリレート(共栄社化学社製、ライトアクリレートMTG-A)10部、2-ヒドロキシエチルアクリレート0.2部、アクリル酸2部、酢酸エチル40部、アセトン30部、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.015部を仕込んだ。撹拌しながら加熱を行い重合反応の開始を確認して還流温度で2時間反応した。次いで、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.03部を反応溶液に添加し6時間反応を継続した。その後、反応容器を冷却し酢酸エチル130部を加え、質量平均分子量150万の共重合体(A-28)溶液を得た。
【0072】
【表1】
【0073】
表1、2の略号を以下に記載する。
2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
BA:n-ブチルアクリレート
CHA:シクロヘキシルアクリレート
IBXA:イソボルニルアクリレート
DCPA:ジシクロペンタニルアクリレート
MTG-A:メトキシトリエチレングリコールアクリレート(n=3)
AM-90G:メトキシポリエチレングリコールアクリレート(n=9)
AM-130G:メトキシポリエチレングリコールアクリレート(n=13)
HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート
AA:アクリル酸
【0074】
(実施例1)
共重合体(A-1)100部に対して、硬化剤としてトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体1.0部(不揮発分換算)、ロジン系粘着付与樹脂であるペンセルD-125(荒川化学社製)10部、合成炭化水素系粘着付与樹脂であるFTR6100(三井化学社製)10部、ポリオレフィンであるスーパークロン360T(日本製紙社製)を1部配合し、更に溶剤として酢酸エチルを加えて不揮発分を30%に調整して粘着剤組成物を得た。
【0075】
得られた粘着剤組成物を、厚さ38μmの剥離性シート(ポリエチレンテレフタレート製)上に、乾燥後の厚さが10μmになるようにコンマコーターで塗工を行い、100℃で2分間乾燥することで粘着剤層を形成した。次いで、この粘着剤層に、厚さ25μmの基材(ポリエチレンテレフタレート製、以下、PETシートという)を貼り合せ、温度23℃相対湿度50%の条件で1週間熟成することで「剥離性シート/粘着剤層/PETシート」という構成の粘着シートを得た。
【0076】
(実施例2~45、比較例1~9)
組成および配合量を表2、3記載の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2~45及び比較例1~9の粘着剤組成物および粘着シートを得た。
【0077】
《粘着シートの評価》
得られた粘着シートを以下の方法で評価した。結果を表2、3に示す。
(1)粘着力
得られた粘着シートを幅25mm・縦100mmの大きさに準備した。23℃、相対湿度50%雰囲気下、前記粘着シートから剥離性シートを剥がして露出した粘着剤層をステンレス(SUS)板に貼り付け、2kgロールで1往復圧着した。24時間放置した後に引張試験機を用いて180度方向に300mm/分の速度で引き剥がす180°ピール試験において粘着力を測定し、下記の評価基準に基づいて評価を行った。(JIS Z 0237:2000に準拠)
A:「粘着力が12N以上であり、非常に良好。」
B:「粘着力が10N以上12N未満であり、良好。」
C:「粘着力が6N以上10N未満であり、実用可。」
D:「粘着力が6N未満であり、実用不可。」
上記同様にポリプロピレン(PP)板に対して粘着力を測定し、下記の評価基準に基づいて評価を行った。
A:「粘着力が10N以上であり、非常に良好。」
B:「粘着力が8N以上10N未満であり、良好。」
C:「粘着力が4N以上8N未満であり、実用可。」
D:「粘着力が4N未満であり、実用不可。」
【0078】
(2)保持力
得られた粘着シートを幅25mm・長さ100mmの大きさに切り取り試料とした。次いで23℃-50%RH雰囲気下、JIS Z 0237に準拠して、試料から剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層の先端部幅25mm・長さ25mm部分を研磨したステンレス(SUS)板に貼着し、2kgロールで1往復圧着した後、70℃雰囲気で1kgの荷重をかけ、7万秒保持した。評価は、SUS板から試料が落下した場合はその秒数を示す。試料が落下しなかった場合は、粘着剤層とSUS板の接着先端部が、荷重により下にずれたmm数を示す。評価基準を以下に示す。
A:「試料のずれが0.05mm未満であり、非常に良好。」
B:「試料のずれが0.05mm以上0.2mm未満であり、良好。」
C:「試料のずれが0.2mm以上で落下なし、実用可。」
D:「試料が落下、実用不可。」
【0079】
(3)曲面接着性
得られた粘着シートを23℃相対湿度50%の恒温恒湿室にて、幅15mm・長さ25mmの測定試料を準備した。当該測定試料から剥離シートを剥がし露出した粘着剤層を、10mmφの円筒状ポリプロピレン(PP)樹脂の円周方向に貼り付け、72時間放置した。その後さらに80℃雰囲気下で24時間放置後、貼り付けられた測定試料の末端部分の剥がれた状態を目視で観察し、下記基準で評価した。
A:末端部分に剥がれがなく、非常に良好。
B:末端部分に剥がれが長さ3mm未満であり、良好。
C:末端部分の剥がれが長さ3mm以上8mm未満であり、実用可。
D:末端部分の剥がれが長さ8mm以上であり実用不可。
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
表2、3の略号を以下に記載する。
<粘着付与樹脂>
D-125:ペンセルD-125(荒川化学社製、ロジン系粘着付与樹脂)
FTR6100:FTR6100(三井化学社製、合成炭化水素系粘着付与樹脂(スチレン系粘着付与樹脂))
T115:YSポリスターT115(ヤスハラケミカル社製、テルペンフェノール系粘着付与樹脂)
PX1000:YSレジンPX1000(ヤスハラケミカル社製、テルペン系粘着付与樹脂)
<ポリオレフィン>
360T:スーパークロン360T(日本製紙社製、塩素化ポリプロピレン、塩素含有率31%)
930:スーパークロン930(日本製紙社製、塩素化ポリプロピレン、塩素含有率21%)
<硬化剤>
TDI/TMP:トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(不揮発分37.5%)
TETRAD-X:N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン(三菱ガス化学社製)
アルミキレートA:アルミニウムトリスアセチルアセトネート(川研ファインケミカル社製)
【0083】
表2、3に示すように本発明の粘着シートは、高極性被着体であるステンレス板と低極性被着体であるポリプロピレン板の両方に対する粘着力に優れ、さらに保持力、曲面接着性に優れていることが確認できた。これに対し、比較例粘着シートでは、いずれかの項目が不良となっており、実用上問題があり、実用不可であることが分かる。
【手続補正書】
【提出日】2022-05-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共重合体(A)と硬化剤(B)と粘着付与樹脂とを含み、
共重合体(A)は、炭素数4~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a1)、脂肪族環式構造を有する(メタ)アクリレート(a2)、一般式(1)で表される(メタ)アクリレート(a3)、および水酸基を有する(メタ)アクリレート(a4)を含有するモノマー混合物の共重合体であり、
(メタ)アクリレート(a3)の含有率は、モノマー混合物100質量%中、0.1~20質量%であり、
硬化剤(B)は、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤及び金属キレート系硬化剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、
粘着付与樹脂は、ロジン系粘着付与樹脂と合成炭化水素系粘着付与樹脂を併用して用いることを特徴とする粘着剤組成物。
[化1]
一般式(1)

(式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素数2~4のアルキレン基、Rは炭素数1~4のアルキル基、nは3~15の整数を示す。)
【請求項2】
前記モノマー混合物は、さらにカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート(a5)を含有することを特徴とする請求項1記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
さらにポリオレフィンを含む、請求項1または2記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
請求項1~いずれか1項記載の粘着剤組成物から形成してなる粘着剤層を備えた、粘着シート。
【請求項5】
前記粘着剤層は、厚みが1~20μmである、請求項記載の粘着シート。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0076
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0076】
(実施例2~45、比較例1~9)
組成および配合量を表2、3記載の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2~45及び比較例1~9の粘着剤組成物および粘着シートを得た。
ただし、実施例29~33は参考例である。