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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108767
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】杭目印および改良地盤の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/34 20060101AFI20230731BHJP
【FI】
E02D5/34 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009987
(22)【出願日】2022-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】村島 正憲
(72)【発明者】
【氏名】武野 航大
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041AA01
2D041AA02
2D041BA31
2D041BA36
2D041BA44
2D041BA52
2D041DB12
(57)【要約】
【課題】杭に掘削機の掘削ツールが接触することを抑制できる、杭目印および改良地盤の施工方法を提供する。
【解決手段】杭目印10は、地盤Gに埋められる杭1に載せられる。杭目印10は、杭1の頭部2に着脱可能に構成される。杭目印10は、杭1の頭部2に載せられた状態で杭目印10の一部が杭1の周縁3から出るように構成される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に埋められる杭に載せられる杭目印であって、
前記杭の頭部に着脱可能に構成され、前記杭の頭部に載せられた状態において平面視で前記杭目印の一部が前記杭の周縁から出るように構成される、
杭目印。
【請求項2】
前記杭の頭部の上に配置される本体部と、前記杭目印が前記杭の頭部に載せられた状態で前記杭の周縁から出るように前記本体部に設けられる突出部と、を有し、
前記突出部は、前記本体部と一体に構成され、
前記本体部と前記突出部とは、剛性を有する板状部材によって構成される、
請求項1に記載の杭目印。
【請求項3】
前記杭目印を前記杭に対して位置決めする位置決め部を有する、
請求項2に記載の杭目印。
【請求項4】
前記位置決め部は、前記本体部から下方に延びる下垂部を有し、
前記下垂部は、前記杭目印が前記杭の頭部に載せられた状態で前記杭の周面に対向するように構成される、
請求項3に記載の杭目印。
【請求項5】
前記杭目印は、前記杭目印が前記杭の頭部に載せられた状態における平面視で所定方向に延びるように構成され、
前記下垂部は、前記杭目印の中心軸の周りにおいて前記所定方向に切欠部が設けられ、または、前記所定方向に干渉回避空間が設けられるように、構成され、
前記中心軸は、前記杭目印が前記杭の頭部に載せられた状態において前記杭の中心軸と一致する軸線である、
請求項4に記載の杭目印。
【請求項6】
さらに、前記本体部および前記突出部の少なくとも一つに設けられる把手を有する、
請求項2~5のいずれか一項に記載の杭目印。
【請求項7】
地盤に設けられる杭の頭部に杭目印を着脱可能に載せる第1工程と、
前記杭が埋設された地盤において前記杭および前記杭目印が埋まるように基礎を構築する領域に土を盛る第2工程と、
前記杭の上方の土を掘削機で掘ることによって前記基礎の形状にあう溝を形成する第3工程と、を含む、
改良地盤の施工方法。
【請求項8】
前記第3工程で、掘削機によって前記杭目印を前記杭から取り外し、前記杭の頭部を露出させる、
請求項7に記載の改良地盤の施工方法。
【請求項9】
前記杭目印は、前記杭の頭部の上に配置される本体部と、前記杭目印が前記杭の頭部に載せられた状態で前記杭の周縁から出るように前記本体部に設けられる突出部と、前記杭目印を前記杭に対して位置決めする位置決め部と、を備え、
前記杭目印は、前記杭目印が前記杭の頭部に載せられた状態における平面視で所定方向に延びるように構成され、
前記位置決め部は、前記本体部から下方に延びる下垂部を有し、前記下垂部は、前記杭目印の中心軸の周りにおいて前記所定方向に切欠部が設けられ、または、前記所定方向に干渉回避空間が設けられるように、構成され、
前記第1工程において、前記杭目印の前記所定方向が前記溝の延長方向に沿うように前記杭目印を前記杭の頭部に載せ、
前記第3工程において、前記溝の延長方向に沿うように地盤を掘る、
請求項7または8に記載の改良地盤の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、杭目印および改良地盤の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤に杭または杭状の構造物(以下、単に、杭という。)を設けることによって地盤を改良する技術が知られている(例えば、特許文献1)。地盤の改良後、基礎を作るために、基礎の形状にあう溝を地盤に形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-180454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地盤の溝は掘削機で作られる。杭の位置は設計図に示されているが、操作者は、敷地における杭の位置を精確に把握することはできないことから、地盤における掘削中の部分と杭の位置との距離間隔を精確に把握し難い。このため、溝の掘削中に、掘削機のアームの先が杭の頭部に当たる場合がある。この場合、杭の頭部に亀裂が生じ得る。このような観点から、基礎の施工に改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記課題を解決する杭目印は、地盤に埋められる杭に載せられる杭目印であって、前記杭の頭部に着脱可能に構成され、前記杭の頭部に載せられた状態において平面視で前記杭目印の一部が前記杭の周縁から出るように構成される。
【0006】
この構成によれば、基礎の構築のための溝を形成する場合において、土を掘るとき、杭が現れる前に、杭目印が露出する。または、掘削機の掘削ツールが杭の頭部に接触する前に、掘削ツールが杭目印に接触する。掘削ツールが杭目印に接触すると、杭目印が地盤から掘り出されることによって杭目印が地盤から露出する。このため、操作者は、掘削中の場所に杭が埋まっていることを知ることができる。これによって、掘削機の掘削ツールが杭に接触することを抑制できる。
【0007】
(2)上記(1)に記載の杭目印において、前記杭の頭部の上に配置される本体部と、前記杭目印が前記杭の頭部に載せられた状態で前記杭の周縁から出るように前記本体部に設けられる突出部と、を有し、前記突出部は、前記本体部と一体に構成され、前記本体部と前記突出部とは、剛性を有する板状部材によって構成される。
【0008】
この構成によれば、本体部と突出部とは剛性を有する板状部材によって構成されるため、杭目印の上に被る土とともに杭目印を杭から外すことができる。
【0009】
(3)上記(2)に記載の杭目印において、前記杭目印を前記杭に対して位置決めする位置決め部を有する。
この構成によれば、杭目印を杭に対して位置決めし易い。
【0010】
(4)上記(3)に記載の杭目印において、前記位置決め部は、前記本体部から下方に延びる下垂部を有し、前記下垂部は、前記杭目印が前記杭の頭部に載せられた状態で前記杭の周面に対向するように構成される。この構成によれば、杭目印を杭に対して精確に位置決めできる。
【0011】
(5)上記(4)に記載の杭目印において、前記杭目印は、前記杭目印が前記杭の頭部に載せられた状態における平面視で所定方向に延びるように構成され、前記下垂部は、前記杭目印の中心軸の周りにおいて前記所定方向に切欠部が設けられ、または、前記所定方向に干渉回避空間が設けられるように、構成され、前記中心軸は、前記杭目印が前記杭の頭部に載せられた状態において前記杭の中心軸と一致する軸線である。
【0012】
この構成によれば、杭目印の所定方向と同じ方向に地盤を掘る場合、掘削機の掘削ツールが杭目印に接触すると、杭目印は、所定方向に沿う線に交差する線を中心として回転する。そうすると、杭目印において所定方向の一方の端部が持ち上げられるとともに、所定方向の他方の端部が杭に近づく。下垂部において所定方向には、切欠部または干渉回避空間が設けられているため、下垂部が、杭の周面に接触し難くなる。このようにして、杭目印の下垂部が杭の周面に接触する頻度を少なくできる。
【0013】
(6)上記(2)~(5)のいずれか1つに記載の杭目印において、さらに、前記本体部および前記突出部の少なくとも一つに設けられる把手を有する。この構成によれば、杭目印を持ち易くできる。
【0014】
(7)上記課題を解決する改良地盤の施工方法は、地盤に設けられる杭の頭部に杭目印を着脱可能に載せる第1工程と、前記杭が埋設された地盤において前記杭および前記杭目印が埋まるように基礎を構築する領域に土を盛る第2工程と、前記杭の上方の土を掘削機で掘ることによって前記基礎の形状にあう溝を形成する第3工程と、を含む。
【0015】
この構成によれば、基礎の構築のための溝を形成する場合において、土を掘っているとき、杭が現れる前に、杭目印が露出する。または、掘削ツールが杭に接触する前に杭目印に接触する。掘削ツールが杭目印に接触すると、杭目印が地盤から掘り出されることによって杭目印が地盤から露出する。このため、操作者は、掘削中の場所に杭が埋まっていることを知ることができる。これによって、掘削機の掘削ツールが杭に接触することを抑制できる。
【0016】
(8)上記(7)に記載の改良地盤の施工方法において、前記第3工程で、掘削機によって前記杭目印を前記杭から取り外し、前記杭の頭部を露出させる。この構成によれば、杭目印を杭から取り外すときに杭の上の土が除かれるため、杭の頭部を露出させ易い。
【0017】
(9)上記(7)または(8)に記載の改良地盤の施工方法において、前記杭目印は、前記杭の頭部の上に配置される本体部と、前記杭目印が前記杭の頭部に載せられた状態で前記杭の周縁から出るように前記本体部に設けられる突出部と、前記杭目印を前記杭に対して位置決めする位置決め部と、を備え、前記杭目印は、前記杭目印が前記杭の頭部に載せられた状態における平面視で所定方向に延びるように構成され、前記位置決め部は、前記本体部から下方に延びる下垂部を有し、前記下垂部は、前記杭目印の中心軸の周りにおいて前記所定方向に切欠部が設けられ、または、前記所定方向に干渉回避空間が設けられるように、構成され、前記第1工程において、前記杭目印の前記所定方向が前記溝の延長方向に沿うように前記杭目印を前記杭の頭部に載せ、前記第3工程において、前記溝の延長方向に沿うように地盤を掘る。
【0018】
この構成によれば、掘削機によって杭目印が掘り出されるときに、杭目印が杭に接触することを抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本開示の杭目印および改良地盤の施工方法は、杭に掘削機の掘削ツールが接触することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】地盤の模式図である。
図2】杭目印の斜視図である。
図3】杭目印の平面図である。
図4】杭目印の正面図である。
図5】杭目印の側面図である。
図6】杭目印および杭の模式図である。
図7】杭から外れる杭目印の様子を示す模式図である。
図8】地盤において杭目印および杭の配置を示す平面図である。
図9】掘削機によって溝を掘るときの様子を示す模式図である。
図10】掘削機の掘削ツールが杭目印に接触するときの様子を示す模式図である。
図11】杭目印の第1変形例を示す模式図である。
図12】杭目印の第2変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1を参照して、地盤Gを説明する。
地盤Gは、杭1によって改良されている。地盤Gは、セメントミルクによって杭1が形成される。地盤改良の工法として、柱状改良工法、または、ピュアパイル工法が挙げられる。地盤Gは、既製杭を打設することによって改良されてもよい。
【0022】
<杭目印>
図2図6を参照して杭目印10を説明する。杭目印10は、杭1の目印として、杭1に載せられる。例えば、杭目印10は、杭1の形成後、杭1の頭部2に載せられる。杭1および杭目印10は、基礎形成前の整地のために、埋め戻される。基礎のための溝6の掘削のとき、杭目印10は杭1の目印となる。
【0023】
杭目印10は、杭1の頭部2に着脱可能に構成される。杭目印10は、杭1の頭部2に載せられた状態で杭目印10の一部が杭1の周縁3から出るように構成される。杭目印10の構成部材は限定されない。例えば、杭目印10は、木材、樹脂、または金属によって構成される。杭目印10は、木材、樹脂材、および金属材から選択される複数の部材から構成されてもよい。杭目印10は、土の重さによって変形しない程度の剛性を有してもよい。杭目印10は、袋に土と詰めた構造体(例えば、土嚢)によって構成されてもよい。杭目印10は、ブロックのような構造体によって構成されてもよい。
【0024】
図2に示されるように、杭目印10は、本体部11と、突出部12と、を有する。本体部11は、杭1の頭部2の上に配置される。突出部12は、杭目印10が杭1の頭部2に載せられた状態において平面視で杭1の周縁3から出るように本体部11に設けられる。
【0025】
杭目印10は、杭目印10が杭1の頭部2に載せられた状態における平面視で所定方向DAに延びるように構成される。平面視における杭目印10の外形において、所定方向DAの寸法が最も大きい。杭目印10は中心軸CAを有する。杭目印10の中心軸CAは、杭目印10が杭1の頭部2に載せられた状態において、杭1の中心軸CYと一致する軸線と定義される。
【0026】
突出部12は、本体部11と一体に構成される。例えば、本体部11と突出部12とは、剛性を有する板状部材によって構成される。板状部材として、木板、板状の集成板、鉄板、アルミニウム板、銅板、および、樹脂製プレートが挙げられる。
【0027】
図3および図4に示されるように、杭目印10は、位置決め部13を有してもよい。位置決め部13は、杭目印10を杭1に対して位置決めする。位置決め部13は、本体部11から下方に延びる下垂部14を有する。下垂部14は、杭目印10が杭1の頭部2に載せられた状態で杭1の周面4に対向するように構成される。下垂部14は、杭目印10の中心軸CAを囲むように構成される。
【0028】
図5に示されるように、下垂部14は、切欠部15を有してもよい。下垂部14において、切欠部15は、杭目印10の中心軸CAの周りにおいて所定方向DAに切り欠かれるように構成される。
【0029】
図6は、杭目印10が載せられた杭1を示す。杭目印10は、突出部12が杭1の周縁3から出るように、杭1に載せられる。位置決め部13は、杭1の周面4に対向するように、位置する。
【0030】
図7に示されるように、切欠部15が設けられることによって、杭目印10が大きく傾いた場合に、下垂部14が杭1の周面4に接触することが少なくなる。例えば、掘削機20が杭目印10の所定方向DAと同じ方向に沿って地盤Gを掘る場合、杭目印10は、杭1の周縁3との接点Pを中心として回転する。杭目印10が杭1の頭部2に載せられた状態から、接点Pを中心として杭目印10が傾くと、切欠部15に杭1の一部が入る。
【0031】
杭目印10は、把手17を有してもよい。把手17は、作業者が把持する部分である。把手17は、本体部11および突出部12の少なくとも一方に設けられる。例えば、把手17は、突出部12の端縁付近に設けられる。把手17は、把手17と突出部12とによって環状部17Aが構成されるように、突出部12に設けられる。一例では、把手17は、環状部17Aに作業者の手および掘削ツール28の爪29が入るように、構成される。
【0032】
<改良地盤の施工方法>
図8図10を参照して、改良地盤の施工方法を説明する。改良地盤の施工方法は、第1工程~第3工程を含む。改良地盤の施工方法は、地盤Gに埋まっている杭1に対して適用される。杭1は、セメント成分を含む。例えば、杭1は、セメントミルクによって形成される。杭1は、セメントミルクと土との攪拌物によって形成されてもよい。杭1の一例は、セメントミルク杭である。杭1は、鋼管であってもよい。
【0033】
第1工程において、杭1の頭部2に杭目印10を着脱可能に載せる。具体的には、杭目印10を杭1の頭部2に載せる。平面視で、突出部12が杭1の周縁3から出るように、杭目印10を杭1に載せる。
【0034】
また、図8に示されるように、杭目印10の所定方向DAが溝6の延長方向DXに沿うように杭目印10を杭1の頭部2に載せる。ここで、溝6は、形成予定の溝6を示す。形成予定の溝6の位置は、位置決め糸(例えば、水糸)によって示される。
【0035】
第2工程において、杭1が埋設された地盤Gにおいて基礎を構築する領域に土を盛る。このとき、杭1および杭目印10が埋まるように土を盛る。
【0036】
第3工程において、杭1の上方の土を掘削機20で掘ることによって基礎の形状にあう溝6を形成する。このとき、掘削機20で杭目印10を杭1から取り外すことによって、杭1の頭部2を露出させてもよい。
【0037】
図9および図10に示されるように、溝6の延長方向DXに沿うように掘削機20によって地盤Gを掘り起こす。掘削機20の一例は、バックホー21である。バックホー21は、2個のクローラ22の間に溝6を挟むようにして、移動する。操作者は、バックホー21のアーム23を溝6の延長方向DXに沿うように動作させる。地盤Gは、形成予定の溝6の延長方向DXに沿うように掘り起こされる。杭1の近くの地盤Gが掘り起こされると、杭目印10が現れる。または、バックホー21の掘削ツール28(例えば、バケット)の爪29が杭目印10に接触すると、杭目印10が持ち上げられる。そうすると、土から杭目印10が現れる。このとき、操作者は、掘削中の場所に杭1があることに気づく。
【0038】
杭目印10の所定方向DAが溝6の延長方向DXに沿うように杭目印10が杭1の頭部2に載せられている場合、突出部12が杭1の周縁3から突出するため、バックホー21の掘削ツール28の爪29が杭目印10の突出部12に引っ掛かり易い。
【0039】
杭目印10が上述の切欠部15を有する場合であって、かつ、杭目印10の所定方向DAが溝6の延長方向DXに沿うように杭目印10が杭1の頭部2に載せられ、加えて、延長方向DXに沿って地盤Gを掘る場合、次の効果がある。このよう条件の場合、バックホー21の掘削ツール28の爪29が杭目印10の突出部12に接触すると、杭目印10が持ち上げられる。このとき、杭目印10は、上述の接点Pを中心として回転する。このように杭目印10が回転すると、杭目印10において所定方向DAの端部が杭1の周面4に近づく。すなわち、切欠部15が杭1の周面4に近づく。このため、杭目印10が傾くと切欠部15に杭1の一部が入るようになる。このように、杭目印10の下垂部14に切欠部15が設けられていない場合に比べて、杭目印10の下垂部14が杭1に接触する頻度は少なくなる。
【0040】
本実施形態の作用を説明する。
地盤Gの改良後、整地のため杭1は埋め戻される。基礎のための溝6を掘削するとき、バックホー21の操作者は設計図を確認しながら溝6を形成する。しかし、操作者は、杭1の位置を精確に把握できないために、操作者が設計図から把握している杭1の位置と実際の杭1の位置とがずれる場合がある。このため、バックホー21のバケットの爪29を杭1に接触させる虞がある。本実施形態の杭目印10は、杭1の目印として杭1の頭部2に載せられる。杭目印10は、杭1の頭部2に載せられた状態で杭目印10の一部が杭1の周縁3から出るように構成される。このため、地盤Gの掘削において、杭1よりも先に露出し易い。杭目印10が杭1よりも先に露出することによって、操作者は、杭1が現れる前に、杭1の場所を予め知ることができる。これによって、掘削機20の掘削ツール28が杭1に接触することを抑制できる。
【0041】
本実施形態の効果を説明する。
(1)杭目印10は、地盤Gに埋められる杭1に載せられる。杭目印10は、杭1の頭部2に着脱可能に構成される。杭目印10は、杭1の頭部2に載せられた状態において平面視で杭目印10の一部が杭1の周縁3から出るように構成される。
【0042】
この構成によれば、基礎の構築のための溝6を形成する場合において、土を掘るとき、杭1が現れる前に、杭目印10が露出する。または、掘削機20の掘削ツール28が杭1の頭部2に接触する前に、掘削ツール28が杭目印10に接触する。掘削ツール28が杭目印10に接触すると、杭目印10が地盤Gから掘り出されることによって杭目印10が地盤Gから露出する。このため、操作者は、掘削中の場所に杭1が埋まっていることを知ることができる。操作者が杭1の場所を知ることによって、掘削を慎重に行うようになる。このため、杭1に掘削機20の掘削ツール28が接触することを抑制できる。
【0043】
(2)杭目印10は、杭1の頭部2の上に配置される本体部11と、突出部12と、を有する。突出部12は、杭目印10が杭1の頭部2に載せられた状態で杭1の周縁3から出るように本体部11に設けられる。突出部12は、本体部11と一体に構成される。本体部11と突出部12とは、剛性を有する板状部材によって構成される。この構成によれば、杭目印10の上に被る土とともに杭目印10を杭1から外すことができる。
【0044】
(3)杭目印10は、杭目印10を杭1に対して位置決めする位置決め部13を有する。この構成によれば、杭目印10を杭1に対して位置決めし易い。
【0045】
(4)位置決め部13は、本体部11から下方に延びる下垂部14を有する。下垂部14は、杭目印10が杭1の頭部2に載せられた状態で杭1の周面4に対向するように構成される。この構成によれば、杭目印10を杭1に対して精確に位置決めできる。また、杭1を埋め戻すとき、土の流れによって杭目印10が押される場合があるが、下垂部14が杭1に接触することによって杭目印10の位置ずれが妨げられる。このように、土の流れによって杭目印10が杭1から外れることを抑制できる。
【0046】
(5)杭目印10は、杭目印10が杭1の頭部2に載せられた状態における平面視で所定方向DAに延びるように構成される。下垂部14は、杭目印10の中心軸CAの周りにおいて所定方向DAに切欠部15が設けられる。
【0047】
杭目印10の所定方向DAと同じ方向に地盤Gを掘る場合、掘削機20の掘削ツール28が杭目印10に接触すると、杭目印10は、所定方向DAに沿う線に交差する線を中心として回転する。この線は、例えば、上述の接点Pを通る。そうすると、杭目印10において所定方向DAの一方の端部が持ち上げられるとともに、所定方向DAの他方の端部が杭1に近づく。下垂部14において所定方向DAには切欠部15が設けられているため、下垂部14が、杭1の周面4に接触し難くなる。このようにして、杭目印10の下垂部14が杭1の周面4に接触する頻度を少なくできる。
【0048】
(6)杭目印10は把手17を有してもよい。把手17は、本体部11および突出部12の少なくとも一つに設けられる。この構成によれば、杭目印10を持ち易くできる。把手17は、突出部12の端縁付近に設けられてもよい。このような把手17の配置によれば、把手17は、掘削機20の掘削ツール28の爪29に係合され易くなる。このため、掘削機20によって、杭目印10を杭1から外すとともに、杭目印10を移動させることが可能になる。
【0049】
(7)改良地盤の施工方法は、第1工程~第3工程を含む。第1工程では、杭1の頭部2に杭目印10を着脱可能に載せる。第2工程では、杭1が埋設された地盤Gにおいて杭1および杭目印10が埋まるように基礎を構築する領域に土を盛る。第3工程では、杭1の上方の土を掘削機20で掘ることによって基礎の形状にあう溝6を形成する。
【0050】
この構成によれば、基礎の構築のための溝6を形成する場合において、土を掘っているとき、杭1が現れる前に、杭目印10が露出する。または、掘削ツール28が杭1に接触する前に杭目印10に接触する。掘削ツール28が杭目印10に接触すると、杭目印10が地盤Gから掘り出されることによって杭目印10が地盤Gから露出する。このため、操作者は、掘削中の場所に杭1が埋まっていることを知ることができる。これによって、掘削機20の掘削ツール28が杭1に接触することを抑制できる。
【0051】
(8)第3工程において、掘削機20で杭目印10を杭1から取り外すことによって、杭1の頭部2を露出させる。この構成によれば、杭目印10を杭1から取り外すときに杭1の上の土が除かれるため、杭1の頭部2を露出させ易い。
【0052】
(9)第1工程において、杭目印10の所定方向DAが溝6の延長方向DXに沿うように杭目印10を杭1の頭部2に載せる。第3工程において、溝6の延長方向DXに沿うように地盤Gを掘る。杭目印10は、杭目印10が杭1の頭部2に載せられた状態における平面視で所定方向DAに延びるように構成される。下垂部14は、杭目印10の中心軸CAの周りにおいて所定方向DAに切欠部15が設けられる。この構成によれば、掘削機20によって杭目印10が掘り出されるときに、杭目印10が杭1に接触することを抑制できる。
【0053】
<変形例>
上記実施形態は、杭目印10および改良地盤の施工方法が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。杭目印10および改良地盤の施工方法は、上記実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その例は、実施形態の構成の一部を置換、変更、省略した形態、または、実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に実施形態の変形例を示す。
【0054】
図11に示されるように、杭目印10は、土嚢30であってもよい。土嚢30は、杭1の頭部2に載せられた状態で杭目印10の一部が杭1の周縁3から出るように構成される。一例では、土嚢30は、平面視で矩形に構成される。土嚢30が杭1の頭部2に載せられた状態において、土嚢30の長手方向における端部が杭1の周縁3から出る。
【0055】
図12に示されるように、下垂部14は、所定方向DAに干渉回避空間16が設けられるように、杭目印10の中心軸CAを囲むように構成されてもよい。干渉回避空間16は、杭目印10が杭1の頭部2に載せられた状態において、上述の接点Pを中心として杭目印10が傾いたときに、下垂部14が杭1の周面4に接触しないようにするための空間である。例えば、下垂部14が杭目印10の中心軸CAを囲むように構成される場合において、杭目印10が接点Pを中心に45度に傾いたときに、下垂部14が杭1の周面4に接触しないように、下垂部14が構成される。この場合、下垂部14は、例えば、楕円に構成される。
【符号の説明】
【0056】
CA…中心軸、DX…延長方向、G…地盤、1…杭、2…頭部、3…周縁、4…周面、6…溝、10…杭目印、11…本体部、12…突出部、13…位置決め部、14…下垂部、15…切欠部、16…干渉回避空間、20…掘削機。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-07-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に埋められる杭に載せられ、前記杭の頭部に着脱可能に構成され、前記杭の頭部に載せられた状態において平面視で一部が前記杭の周縁から出るように構成される、杭目印であって、
前記杭の頭部の上に配置される本体部と、
前記杭目印が前記杭の頭部に載せられた状態で前記杭の周縁から出るように前記本体部に設けられる突出部と、
前記杭目印を前記杭に対して位置決めする位置決め部と、を有し、
前記突出部は、前記本体部と一体に構成され、かつ、前記本体部と前記突出部とは、剛性を有する板状部材によって構成され、
前記本体部および前記突出部を含む部分は、前記杭の頭部に載せられた状態における平面視で所定方向に延びるように構成され、かつ、平面視で、前記所定方向における前記杭目印の幅が、他のいずれの方向の前記杭目印の幅よりも大きく、
前記位置決め部は、前記本体部から下方に延びる下垂部を有し、
前記下垂部は、前記杭目印が前記杭の頭部に載せられた状態で前記杭の外側の周面に対向するように構成され、
前記下垂部は、前記杭目印の中心軸の周りにおいて前記所定方向に切欠部が設けられるように、構成され、
前記中心軸は、前記杭目印が前記杭の頭部に載せられた状態において前記杭の中心軸と一致する軸線である、
杭目印。
【請求項2】
さらに、前記本体部および前記突出部の少なくとも一つに設けられる把手を有する、
請求項1に記載の杭目印。
【請求項3】
地盤に設けられる杭の頭部に杭目印を着脱可能に載せる第1工程と、
前記杭が埋設された地盤において前記杭および前記杭目印が埋まるように基礎を構築する領域に土を盛る第2工程と、
前記杭の上方の土を掘削機で掘ることによって前記基礎の形状にあう溝を形成する第3工程と、を含む、
改良地盤の施工方法。
【請求項4】
前記第3工程で、掘削機によって前記杭目印を前記杭から取り外し、前記杭の頭部を露出させる、
請求項3に記載の改良地盤の施工方法。
【請求項5】
前記杭目印は、前記杭の頭部の上に配置される本体部と、前記杭目印が前記杭の頭部に載せられた状態で前記杭の周縁から出るように前記本体部に設けられる突出部と、前記杭目印を前記杭に対して位置決めする位置決め部と、を備え、
前記杭目印は、前記杭目印が前記杭の頭部に載せられた状態における平面視で所定方向に延びるように構成され、
前記位置決め部は、前記本体部から下方に延びる下垂部を有し、前記下垂部は、前記杭目印の中心軸の周りにおいて前記所定方向に切欠部が設けられ、または、前記所定方向に干渉回避空間が設けられるように、構成され、
前記第1工程において、前記杭目印の前記所定方向が前記溝の延長方向に沿うように前記杭目印を前記杭の頭部に載せ、
前記第3工程において、前記溝の延長方向に沿うように地盤を掘る、
請求項3または4に記載の改良地盤の施工方法。