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特開2023-108771デッキ合成スラブ、及びデッキ合成スラブの耐火性能向上方法
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  • 特開-デッキ合成スラブ、及びデッキ合成スラブの耐火性能向上方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108771
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】デッキ合成スラブ、及びデッキ合成スラブの耐火性能向上方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20230731BHJP
   E04B 5/40 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
E04B1/94 E
E04B5/40 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009991
(22)【出願日】2022-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】郡 泰明
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001EA01
2E001FA11
2E001GA06
2E001HA32
(57)【要約】
【課題】性能規定型の耐火設計建物において、2時間を超える耐火性能が要求される床スラブとして提供可能なデッキ合成スラブ、およびデッキ合成スラブの耐火性能向上方法を提供する。
【解決手段】デッキ合成スラブ100は、デッキプレート3、及びデッキプレート3上に打設されたコンクリート4に加えて、デッキプレート3を被覆するロックウール6と、を備える。これにより、デッキ合成スラブ100は、ロックウール6にてデッキプレート3の加熱面(下面3c)を保護することができるため、耐火性能を向上し、性能規定型の耐火設計建物において、2時間を超える耐火性能の要求を満たすことができる。これにより、高度な耐火性能検証(ルートC)の耐火設計に使用することで、従来よりも経済的な設計を可能とすることができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
性能規定型の耐火性能検証での耐火設計建物において、2時間を超える耐火性能が要求される床スラブとして提供されるデッキ合成スラブであって、
デッキプレートと、
前記デッキプレート上に打設されたコンクリートと、
前記デッキプレートを被覆するロックウールと、を備えるデッキ合成スラブ。
【請求項2】
前記ロックウールの被覆厚さが20mmより大きい、請求項1に記載のデッキ合成スラブ。
【請求項3】
前記ロックウールは、前記デッキプレートの下面に対応する形状を有する、請求項1又は2に記載のデッキ合成スラブ。
【請求項4】
性能規定型の耐火性能検証での耐火設計建物において、2時間を超える耐火性能が要求される床スラブとして提供されるデッキ合成スラブのロックウール吹付による耐火性能向上方法であって、
デッキプレート、及び前記デッキプレート上に打設されたコンクリートを備えるデッキ合成スラブに対し、前記デッキプレートの下面に吹付ロックウール被覆を行う、デッキ合成スラブの耐火性能向上方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デッキ合成スラブ、及びデッキ合成スラブの耐火性能向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のデッキ合成スラブとして、特許文献1に記載されたものが知られている。このデッキ合成スラブは、デッキプレートと、デッキプレート上に打設されたコンクリートと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-41348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、デッキ合成スラブは建築基準法で定める耐火設計ルートのうち、一般的には仕様規定型のルートAが採用されている(図3参照)。一方、性能規定型のルートCは高度な設計ノウハウが必要であるものの、耐火上の要求性能と保有性能を各室単位で評価するため最適設計が可能であり、大規模な物件ではコスト削減効果が高い。
【0005】
デッキ合成スラブは、設計ルートによって、要求性能に違いが見られる(例えば図4参照)。具体的に、ルートAの耐火設計においては、階数に応じて床の要求耐火時間が定められているが、要求耐火時間は最大でも2時間である。また、遮熱性においては1時間に安全率1.2をかけた1.2時間(72分)である。その一方、ルートCの耐火設計においては、要求性能が発熱量や侵入熱量などから定まるため、2時間超の耐火性能(遮熱性含む)が求められるケースがある。このような要求に対し、デッキ合成スラブのコンクリート内に耐火補強筋を設置する構成が採用されることがある。しかし、この耐火補強筋は変形を抑制する効果はあるものの、遮熱性向上には効果がないため、従来のデッキ合成スラブで2時間超の耐火性能を確保することは難しいという問題があった。
【0006】
また、ルートCで設計された建物において、テナント変更等の室の用途変更が生じる場合、設計時と前提条件が変わるため、要求耐火時間が大きくなり、当初2時間耐火で適用できていた箇所に、2時間超の耐火時間が要求される場合がある。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、性能規定型の耐火設計建物において、2時間を超える耐火性能が要求される床スラブとして提供可能なデッキ合成スラブ、およびそのデッキ合成スラブの耐火性能向上方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るデッキ合成スラブは、性能規定型の耐火設計建物において、2時間を超える耐火性能が要求される床スラブとして提供されるデッキ合成スラブであって、デッキプレートと、デッキプレート上に打設されたコンクリートと、デッキプレートを被覆するロックウールと、を備える。
【0009】
本発明に係るデッキ合成スラブは、デッキプレート、及びデッキプレート上に打設されたコンクリートに加えて、デッキプレートを被覆するロックウールと、を備える。これにより、デッキ合成スラブは、ロックウールにてデッキプレートの加熱面を保護することができるため、耐火性能を向上し、性能規定型の耐火設計建物において、2時間を超える耐火性能の要求を満たすことができる。これにより、高度な耐火性能検証(ルートC)の耐火設計に使用することで、従来よりも経済的な設計を可能とすることができる。
【0010】
ロックウールの被覆厚さが20mmより大きくてよい。この場合、ロックウールは、十分な耐火性能を発揮することができる。
【0011】
前記ロックウールは、前記デッキプレートの下面に対応する形状を有してよい。この場合、ロックウールの被覆厚さをデッキプレートの下面の形状に合わせて、適切な厚みとすることができる。
【0012】
本発明に係るデッキ合成スラブの耐火性能向上方法は、性能規定型の耐火性能検証での耐火設計建物において、2時間を超える耐火性能が要求される床スラブとして提供されるデッキ合成スラブのロックウール吹付による耐火性能向上方法であって、デッキプレート、及びデッキプレート上に打設されたコンクリートを備えるデッキ合成スラブに対し、デッキプレートの下面に吹付ロックウール被覆を行う。
【0013】
本発明に係るデッキ合成スラブの耐火性能向上方法によれば、上述のデッキ合成スラブと同趣旨の作用・効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、性能規定型の耐火設計建物において、2時間を超える耐火性能が要求される床スラブとして提供可能なデッキ合成スラブ、及びデッキ合成スラブの耐火性能向上方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係るデッキ合成スラブの概略断面図である。
図2図1のII-II線に沿った断面図である。
図3】耐火設計ルートを示す図である。
図4】デッキ合成スラブにおける、ルートAとルートCの主な違いを示す表である。
図5】試験方法を示す図である。
図6】試験条件を示す表である。
図7】山部の温度検出センサ、及び谷部の温度検出センサの測定結果を示し、遮熱性評価を行うための表である。
図8】たわみ量検出センサの測定結果を示し、非損傷性評価を行うための表である。
図9】本発明の第2実施形態に係るデッキ合成スラブ、及び当該デッキ合成スラブを製造するためのコンクリート増厚方法を説明するための断面図である。
図10】試験条件を示す表である。
図11】山部の温度検出センサ、及び谷部の温度検出センサの測定結果を示し、遮熱性評価を行うための表である。
図12】たわみ量検出センサの測定結果を示し、非損傷性評価を行うための表である。
図13】変形例に係るデッキプレートを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係るデッキ合成スラブ100の概略断面図である。図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。デッキ合成スラブ100は、性能規定型の(高度な耐火性能検証での)耐火設計建物において、2時間を超える耐火性能が要求される床スラブとして提供される。
【0018】
ここで耐火設計ルートについて図3及び図4を参照して説明する。図3は、耐火設計ルートを示す図である。図3は、「構造材料の耐火性ガイドブック(日本建築学会)」に規定された図である。デッキ合成スラブ100は建築基準法で定める耐火設計ルートのうち、一般的には仕様規定型のルートAが採用されている。一方、性能規定型のルートCは高度な設計ノウハウが必要であるものの、耐火上の要求性能と保有性能を各室単位で評価するため最適設計が可能であり、大規模な物件ではコスト削減効果が高い。デッキ合成スラブ100における、ルートAとルートCの主な違いを図4の表に示す。
【0019】
耐火性能については、図5に示す耐火性能確認試験において、「防耐火性能試験・評価業務方法書」に基づき、遮熱性、及び非損傷性について評価する。遮熱性は、デッキ合成スラブ100の裏面(上面)の上昇温度で評価する。非損傷性は、デッキ合成スラブ100のたわみ量BAで評価する。図5(a)に示すように、デッキ合成スラブ100の試験体を耐火炉101の上に配置し、上面に一定荷重を作用させ、上昇温度及びたわみ量BAを測定する。なお、試験に付いての更に詳細な内容は後述する。
【0020】
図4に示す通り、設計ルートによっても要求性能に違いが見られる。具体的に、ルートAの耐火設計においては、階数に応じて床の要求耐火時間が定められているが、要求耐火時間は最大でも2時間である。また、遮熱性においては1時間に安全率1.2をかけた1.2時間(72分)である。その一方、ルートCの耐火設計においては、要求性能が発熱量や侵入熱量などから定まるため、2時間超の耐火性能(遮熱性含む)が求められるケースがある。
【0021】
ここで、比較例として図2(b)に示すような耐火補強筋5を設置したデッキ合成スラブ200が挙げられる。この耐火補強筋5は変形を抑制する効果はあるものの、遮熱性向上には効果がないため、比較例に係るデッキ合成スラブ200で2時間超の耐火性能を確保することは難しい。
【0022】
以上のように、ルートCによる耐火設計では、2時間超の耐火性能が求められるケースがあり、比較例に係るデッキ合成スラブ200の耐火補強筋だけでは遮熱性能の向上が期待できない。またコンクリート厚さを大きくするとスラブの自重が重くなり、柱や梁のサイズアップ及び小梁の本数増加など、他の部材への影響が考えられる。
【0023】
これに対し、本実施形態に係るデッキ合成スラブ100は、高度な耐火性能検証(ルートC)での耐火設計建物において、2時間を超える耐火性能が要求される床スラブとして提供される。具体的に、デッキ合成スラブ100は、デッキプレート3と、コンクリート4と、ロックウール6と、を備える。デッキ合成スラブ100は、一対の梁材2によって支持される。
【0024】
図2(a)に示すように、デッキプレート3は、幅方向D2に山部3aと谷部3bとを交互に有している。山部3aは、谷部3bの底面から上方へ向かって突出するように設けられる。複数の山部3aは、互いに幅方向D2に離間した状態で、スパン方向D1に互いに平行をなすように延びている。山部3aは、谷部3bの両側壁を構成する。
【0025】
コンクリート4は、デッキプレート3上に打設される。コンクリート4は、デッキプレート3の谷部3bの内部に充填された状態で、山部3aの上面よりも高い位置まで充填される。これにより、コンクリート4は、デッキプレート3の上方にて、スパン方向D1及び幅方向D2に広がる上面を有する。当該上面がデッキ合成スラブ100の上面100aとなる。デッキプレート3の山部3a上におけるコンクリート4の厚さtは、50mm~100mmである。
【0026】
コンクリート4の内部には、ひび割れ拡大防止筋7が配置されている。ひび割れ拡大防止筋7は、スパン方向D1、及び幅方向D2に平行に広がる網部材である。ひび割れ拡大防止筋7は、山部3aと上面100aとの間に配置される。
【0027】
ロックウール6は、デッキプレート3を被覆する部材である。ロックウール6は、デッキプレート3の下面3cにロックウール粒状綿を吹き付けることによって形成される。ロックウール6は、デッキプレート3の下面3cの凸凹形状に応じて所定の厚みで、下面3cの全面にわたって形成される。ロックウール6の被覆厚さは、20mmより大きく、25mm以上であってよい。また、ロックウール6の被覆厚さは、65mm以下であってよい。但し、下面吹付となるため、脱落回避の観点から、被覆厚さは25mm以上~35mm以下での実施が望ましい。
【0028】
次に、図5図8を参照して、デッキ合成スラブ100の性能について説明する。図5は、試験方法を示す図である。図6は、実施例1及び比較例の試験条件を示す表である。まず、図5(b)に示すように、試験体に係るデッキ合成スラブ100のスパン方向D1の支持スパンの寸法L1は3600mmであり、幅方向D2の寸法W1は2000mmである。デッキ合成スラブ100のデッキプレートにおいて、幅方向D2の山部間のピッチは300mmである。また、デッキ合成スラブ100のデッキプレートの幅方向D2の端部には谷部が配置されている。デッキ合成スラブ100の幅方向D2の端部100bから一つ目の山部の中心と、デッキプレート3の端部との寸法W2は250mmである。図5(b)に示すように、デッキ合成スラブ100の上面100aには、温度検出センサ102A,102B、及びたわみ量検出センサ103が設けられている。温度検出センサ102A,102Bのスパン方向D1の一方側の支持箇所からの寸法L2は900mmである。温度検出センサ102Aは、端部100bから一つ目の山部の中央位置に設けられ、端部100bからの幅方向D2の寸法W2は250mmである。温度検出センサ102Bは、端部100cから二つ目の谷部の中央位置に設けられ、端部100cからの幅方向D2の寸法W3は400mmである。たわみ量検出センサ103は、デッキ合成スラブ100の中央位置に配置されており、支持箇所からのスパン方向D1の寸法L4は1800mmである。端部100bからの幅方向D2の寸法W4は1000mmである。その他の条件については図6に示す。なお、比較例に係る試験体を「No.1」とし、実施例1に係る試験体を「No.2」としている。なお、比較例に係る「No.1」については2時間(120分)で加熱を終了し、実施例1に係る「No.2」については3時間(180分)で加熱を終了している。
【0029】
図7は、山部の温度検出センサ102A、及び谷部の温度検出センサ102Bの測定結果を示し、遮熱性評価を行うための表である。図7に示すように、上面100aの温度については、デッキプレートが加熱面(下面)に露出している比較例の「No.1耐火補強筋仕様」と比較し、実施例1に係る「No.2ロックウール被覆仕様」の方が温度上昇が緩やかであり、加熱3時間(180分)時点でも、規定値を下回っていることが確認できる。
【0030】
図8は、たわみ量検出センサ103の測定結果を示し、非損傷性評価を行うための表である。図8に示すように、たわみ量についても、比較例に係る「No.1耐火補強筋仕様」と比較し、実施例1に係る「No.2ロックウール被覆仕様」の方が、たわみ量の上昇が緩やかであり、加熱3時間でも規定値を下回ることが確認できる。実施例1に係る「No.2ロックウール被覆仕様」は、ロックウールで被覆されているため、デッキプレートの温度上昇による強度低下及びコンクリートのヤング率低下を遅延させられる。
【0031】
次に、本実施形態に係るデッキ合成スラブ100の作用・効果について説明する。
【0032】
本実施形態に係るデッキ合成スラブ100は、デッキプレート3、及びデッキプレート3上に打設されたコンクリート4に加えて、デッキプレート3を被覆するロックウール6と、を備える。これにより、デッキ合成スラブ100は、ロックウール6にてデッキプレート3の加熱面(下面3c)を保護することができるため、耐火性能を向上し、性能規定型の耐火設計建物において、2時間を超える耐火性能の要求を満たすことができる。これにより、高度な耐火性能検証(ルートC)の耐火設計に使用することで、従来よりも経済的な設計を可能とすることができる。
【0033】
ロックウール6の被覆厚さが20mmより大きくてよい。この場合、ロックウール6は、十分な耐火性能を発揮することができる。
【0034】
ロックウール6の被覆厚さが25mm以上~35mm以下であってよい。この場合、耐火性能を更に向上し、ロックウール6の脱落を回避することができる。
【0035】
ロックウール6は、デッキプレート3の下面3cに対応する形状を有してよい。本実施形態では、デッキプレート3の下面3cは凸凹形状を有しているため、ロックウール6も凸凹形状を有する。この場合、ロックウール6の被覆厚さをデッキプレート3の下面3cの形状に合わせて、適切な厚みとすることができる。
【0036】
本実施形態に係るデッキ合成スラブ100の耐火性能向上方法は、性能規定型の耐火性能検証での耐火設計建物において、2時間を超える耐火性能が要求される床スラブとして提供されるデッキ合成スラブ100のロックウール吹付による耐火性能向上方法であって、デッキプレート3、及びデッキプレート3上に打設されたコンクリート4を備えるデッキ合成スラブ100に対し、デッキプレート3の下面3cに吹付ロックウール被覆を行う。
【0037】
本実施形態に係るデッキ合成スラブ100の耐火性能向上方法によれば、上述のデッキ合成スラブ100と同趣旨の作用・効果を得ることができる。
【0038】
〔第2実施形態〕
図9は、本発明の第2実施形態に係るデッキ合成スラブ300、及び当該デッキ合成スラブ300を製造するためのコンクリート増厚方法を説明するための断面図である。図9(c)に示すデッキ合成スラブ300は、性能規定型の耐火設計建物において、2時間を超える耐火性能が要求される床スラブとして提供される。デッキ合成スラブ300は、図2に示すデッキ合成スラブ100のコンクリート4よりも厚みが大きいコンクリート304を備える。デッキプレート3の山部3a上におけるコンクリート304の厚さt2は、100mmより大きく、115mm以上であってよい。なお、コンクリート304の厚さt2は、150mm以下であってよい。
【0039】
コンクリート304内には、谷部3bの位置に耐火補強筋5が配置される。耐火補強筋5は、谷部3bの内部空間における略中央位置において、スパン方向D1に延びる。耐火補強筋5は、下被り40mmを超える高さに配置される。なお、下被りの寸法は、谷部3bの底面からの高さ寸法である。
【0040】
コンクリート304の内部には、ひび割れ拡大防止筋8が配置されている。ひび割れ拡大防止筋8は、ひび割れ拡大防止筋7よりも上方に配置される。ひび割れ拡大防止筋7は、増厚前のコンクリート4の上面100aの位置に配置される。
【0041】
デッキ合成スラブ300のコンクリート増厚方法について説明する。この方法は、図9(a)に示す既設のデッキ合成スラブ200に対して実施される。まず、図9(b)に示すように、デッキ合成スラブ200に対し、既設のコンクリート4上にひび割れ拡大防止筋8を直接配置する。ひび割れ拡大防止筋8は、既設のコンクリート4の上面100aに直接配置される。コンクリート304aを再度打設することで、コンクリート304の厚さを大きくする。ここでは、既設のコンクリート4の上面100aに追加分のコンクリート304aを打設する。これにより、デッキ合成スラブ300が完成する。
【0042】
次に、図10図12を参照して、デッキ合成スラブ300の性能について説明する。デッキ合成スラブ300の試験体として、図10に示す実施例2を用いる以外、試験条件は第1実施形態と同様である。なお、比較例に係る試験体を「No.1」とし、実施例2に係る試験体を「No.2」としている。なお、比較例に係る「No.1」については2時間(120分)で加熱を終了し、実施例1に係る「No.2」については231分で加熱を終了している。
【0043】
図11は、山部の温度検出センサ102A、及び谷部の温度検出センサ102Bの測定結果を示し、遮熱性評価を行うための表である。図11に示すように、比較例の「No.1山上80mm仕様」と比較し、実施例2に係る「No.2山上115mm仕様」の方がコンクリートの厚さが厚い分、温度上昇が緩やかであり、加熱3時間を超えても、規定値を下回ることが確認できる。
【0044】
図12は、たわみ量検出センサ103の測定結果を示し、非損傷性評価を行うための表である。図12に示すように、たわみ量については、比較例の「No.1山上80mm仕様」と比較し、加熱2時間まで「No.2山上115mm仕様」の方が若干小さい程度であったが、その後加熱3時間を超えても剛性は安定しており、3時間超の耐火性能を有することが確認できる。
【0045】
本実施形態に係るデッキ合成スラブ300の作用・効果について説明する。
【0046】
本実施形態に係るデッキ合成スラブ300は、デッキプレート3、及びデッキプレート3上に打設されたコンクリート304を備えている。このうち、コンクリート304は、デッキプレート3の山部3a上における厚さが100mmより大きい。これにより、デッキ合成スラブ300は、コンクリート304の厚みを十分に厚くすることで耐火性能を向上し、性能規定型の耐火設計建物において、2時間を超える耐火性能の要求を満たすことができる。これにより、例えば既存スラブに対するコンクリート増し打ちにより、耐火要求時間が2時間を超える用途へのテナント変更にも軽微な施工によって対応することができる。
【0047】
コンクリート304内に耐火補強筋5が配置されてよい。この場合、耐火補強筋5がデッキ合成スラブ300の変形を抑制することができる。
【0048】
耐火補強筋5は、下被り40mmを超える高さに配置されてよい。この場合、適切な高さ位置にて耐火補強筋5による補強を行うことができる。
【0049】
耐火補強筋5は、下被り45mm以上の高さに配置されてよい。この場合、コンクリート被り厚さを増すことで耐火補強筋の温度上昇を遅延でき、耐火時間を長くすることができる。
【0050】
耐火補強筋5は、下被り45mm以上~65mm以下の高さに配置されてよい。この場合、耐火時間を長くしつつ、合成スラブの引張縁に生じる曲げを効率的に負担でき、耐火性能を更に向上することができる。
【0051】
デッキプレート3の山部3a上におけるコンクリート304の厚さが115mm以上であってよい。この場合、耐火性能を更に向上することができる。
【0052】
デッキ合成スラブ1において、テナント変更等での室の用途変更により、要求耐火時間が上昇したものであって、コンクリートを再度打設することでコンクリート厚さを大きくしてよい。この場合、室の用途変更に対し、軽微な施工によって対応できる。
【0053】
デッキ合成スラブ1において、要求耐火時間が2時間超であり、1回の打設では打設荷重とデッキプレートの型枠性能の比較において、施工上安全な範囲を超えるコンクリート厚さとなる仕様であり、2回以上にコンクリートの打設を分けて構成されてよい。この場合、施工上の安全性を確保しながら、コンクリートの増厚をすることができる。
【0054】
本実施形態に係るデッキ合成スラブ300のコンクリート増厚方法は、既設のコンクリート4上にひび割れ拡大防止筋8を直接配置し、コンクリート304aを再度打設することで、コンクリート304の厚さを大きくする。これにより、上述のデッキ合成スラブ300と同趣旨の作用・効果を得ることができる。
【0055】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0056】
例えば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、デッキプレートの形状は適宜変更されてよい。例えば、図2(a)に示すデッキプレートよりもデッキ高さが低いものを採用してよい。具体的に、図13(c)に示すデッキプレート3のように、図2(a)に示すデッキプレートを標準形として、当該標準形に対する高さ比率を0.67にしてよい。例えば、図2(a)に示すデッキプレートよりもデッキ高さが高いものを採用してよい。具体的に、図13(b)に示すデッキプレート3のように、標準形に対する高さ比率を1.60にしてよい。また、図13(a)に示すデッキプレート3のように、デッキプレートとして、略平板状に形成される底面から、上方へリブが突出するような、縦リブ形式のデッキプレートを採用してよい。また、コンクリート内部に配置される鉄筋も適宜変更してよい。
【符号の説明】
【0057】
3…デッキプレート、4,304…コンクリート、5…耐火補強筋、6…ロックウール、7,8…ひび割れ拡大防止筋、100,300…デッキ合成スラブ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13