(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108844
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】火災検出装置
(51)【国際特許分類】
G08B 17/06 20060101AFI20230731BHJP
G08B 17/107 20060101ALI20230731BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
G08B17/06 J
G08B17/107 A
G08B17/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010110
(22)【出願日】2022-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】鷲頭 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】増澤 宏樹
【テーマコード(参考)】
5C085
5G405
【Fターム(参考)】
5C085AA01
5C085AA03
5C085AB01
5C085AC03
5C085AC12
5C085AC18
5C085BA12
5C085BA33
5C085CA30
5C085FA10
5C085FA40
5G405AA01
5G405AB01
5G405AB02
5G405AC02
5G405AD09
5G405CA02
5G405CA05
5G405CA31
5G405CA60
5G405FA30
(57)【要約】
【課題】火災の発生方向を推定することが可能となる火災検出装置を提供すること。
【解決手段】監視領域の火災を検出するための感知器100であって、火災に基づいて発生する熱気流であって、感知器100に供給される熱気流の温度を検出する2個の検出素子700と、熱気流の流路の方向を制御する制御構造であって、熱気流の流れを制御する制御構造と、2個の検出素子700の検出結果に基づいて、感知器100を基準とした火災の発生方向を推定する推定部と、を備え、熱気流は、水平方向において感知器100の外周側から中心側に向かって供給され、制御構造は、水平方向において感知器100の中心を基準とした楕円形状に配置されており、2個の検出素子700各々は、水平方向における制御構造の楕円形状の長軸230上において、制御構造の両側に、相互に対向して設けられている。
【選択図】
図35
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域の火災を検出するための火災検出装置であって、
前記火災に基づいて発生する熱気流であって、前記火災検出装置に供給される前記熱気流の温度を検出する2個の熱検出素子と、
前記熱気流の流路の方向を制御する制御構造であって、前記熱気流の流れを制御する前記制御構造と、
前記2個の熱検出素子の検出結果に基づいて、前記火災検出装置を基準とした前記火災の発生方向を推定する推定部と、
を備える火災検出装置。
【請求項2】
前記熱気流は、水平方向において前記火災検出装置の外周側から中心側に向かって供給され、
前記制御構造は、水平方向において前記火災検出装置の中心を基準とした楕円形状又は長円形状に配置されており、
前記2個の熱検出素子各々は、水平方向における前記制御構造の楕円形状又は長円形状の長軸上において、前記制御構造の両側に、相互に対向して設けられている、
請求項1に記載の火災検出装置。
【請求項3】
前記推定部は、水平方向において前記2個の熱検出素子が並べられている第1直線を基準とした方向、又は、前記第1直線に交差する第2直線を基準とした方向を、前記火災の発生方向として推定する、
請求項1又は2に記載の火災検出装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記2個の熱検出素子各々によって検出される温度上昇の相関に基づいて、前記火災の発生方向を推定する、
請求項1から3の何れか一項に記載の火災検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災を検出する火災検出装置が知られていた(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、防災性を向上させる観点から、火災の発生方向を推定するための技術が要望されていた。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、火災の発生方向を推定することが可能となる火災検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の火災検出装置は、監視領域の火災を検出するための火災検出装置であって、前記火災に基づいて発生する熱気流であって、前記火災検出装置に供給される前記熱気流の温度を検出する2個の熱検出素子と、前記熱気流の流路の方向を制御する制御構造であって、前記熱気流の流れを制御する前記制御構造と、前記2個の熱検出素子の検出結果に基づいて、前記火災検出装置を基準とした前記火災の発生方向を推定する推定部と、を備える。
【0007】
また、請求項2に記載の火災検出装置は、請求項1に記載の火災検出装置において、前記熱気流は、水平方向において前記火災検出装置の外周側から中心側に向かって供給され、前記制御構造は、水平方向において前記火災検出装置の中心を基準とした楕円形状又は長円形状に配置されており、前記2個の熱検出素子各々は、水平方向における前記制御構造の楕円形状又は長円形状の長軸上において、前記制御構造の両側に、相互に対向して設けられている。
【0008】
また、請求項3に記載の火災検出装置は、請求項1又は2に記載の火災検出装置において、前記推定部は、水平方向において前記2個の熱検出素子が並べられている第1直線を基準とした方向、又は、前記第1直線に交差する第2直線を基準とした方向を、前記火災の発生方向として推定する。
【0009】
また、請求項4に記載の火災検出装置は、請求項1から3の何れか一項に記載の火災検出装置において、前記推定部は、前記2個の熱検出素子各々によって検出される温度上昇の相関に基づいて、前記火災の発生方向を推定する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の火災検出装置によれば、2個の熱検出素子の検出結果に基づいて、火災検出装置を基準とした火災の発生方向を推定することにより、例えば、火災の発生方向を推定することが可能となる。また、熱気流の流れを制御する制御構造を備えることにより、例えば、熱気流の流れを適切に制御して各熱検出素子に供給することができるので、火災の発生方向の推定精度を向上させることが可能となる。
【0011】
請求項2に記載の火災検出装置によれば、2個の熱検出素子各々は、制御構造の楕円形状又は長円形状の長軸上において、制御構造の両側に、相互に対向して設けられていることにより、例えば、熱気流の流れを適切に制御して当該熱気流を各熱検出素子に供給することができるので、火災の発生方向の推定精度を向上させることが可能となる。
【0012】
請求項3に記載の火災検出装置によれば、2個の熱検出素子が並べられている第1直線を基準とした方向、又は、第1直線に交差する第2直線を基準とした方向を、火災の発生方向として推定することにより、例えば、消火又は避難等の防災支援のために有用な方向を、火災の発生方向として推定することができるので、防災支援を効率的且つ確実に行わせることが可能となる。
【0013】
請求項4に記載の火災検出装置によれば、2個の熱検出素子各々によって検出される温度上昇の相関に基づいて、火災の発生方向を推定することにより、例えば、火災の発生方向の推定精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図30】外カバー及び内カバーが取り外された状態の感知器の斜視図である。
【
図31】外カバーが取り外された状態の感知器の斜視図である。
【
図35】熱気流の流れと検出素子の検出結果を例示した図である。
【
図36】熱気流の流れと検出素子の検出結果を例示した図である。
【
図37】熱気流の流れと検出素子の検出結果を例示した図である。
【
図38】熱気流の流れと検出素子の検出結果を例示した図である。
【
図39】火災発生方向推定処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る火災検出装置の実施の形態を詳細に説明する。ただし、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0016】
〔実施の形態の基本的概念〕
まず、この実施の形態に係る火災検出装置の基本的概念を説明する。火災検出装置は、監視領域の火災を検出するための装置である。「監視領域」とは、火災検出装置による監視の対象となる領域であり、具体的には、室内又は室外の領域を示す概念であり、例えば、部屋、階段室、及び廊下等の任意の空間を示す概念である。
【0017】
そして、以下に示す実施の形態では、「監視領域」が部屋である場合を例示して説明する。
【0018】
[各実施の形態の具体的内容]
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
【0019】
(構成)
まず、本実施の形態の感知器の構成について説明する。
図1は、本実施の形態に係る感知器の側面図であり、
図2は、感知器の斜視図であり、
図3は、感知器の正面図であり、
図4は、
図3のA-A断面図であり、
図5及び
図6は、感知器の分解斜視図である。なお、各図では、感知器100における本願の特徴に関連する要素を図示して、符号を付して説明することとし、説明した要素以外の要素については、従来の感知器と同様な構成を適用してもよい。また、
図3においては、感知器100の内部に設けられている検出素子700が、説明の便宜上矩形の点線で図示されている。また、
図4においては、断面のハッチングは説明の便宜上省略されている(他の断面図も同様とする)。
【0020】
なお、各図のX-Y-Z軸は相互に直交していることとし、Z軸が、垂直方向(つまり、感知器100の設置状態における縦方向又は厚み方向)を示しており、-Z向きを正面側と称し、また、+Z向きを背面側と称して説明する。また、X軸及びY軸が、水平方向(つまり、感知器100の設置状態における横方向又は幅方向)を示しているものとして説明する。また、
図3のXY平面において、感知器100の中心から離れる向きを外周側と称し、当該中心に近づく向き内側又は中心側と称して説明する。
【0021】
すなわち、「水平方向」とは、感知器100が天井900等の設置対象に設置された状態において、当該設置対象の設置面(感知器100が設置される平面)に平行となる方向を示していることとして以下説明する。
【0022】
なお、
図1の基準線801は、感知器100の中心を通り且つ図面上下方向に平行な中心線であり、説明の便宜上図示されている。なお、他の各図の基準線も説明の便宜上図示されている。
図1の基準線802は、検出素子700における検出部701(
図29)の中心を通り且つ図面上下方向に平行な中心線である。基準線803は、検出素子700における検出部701(
図29)の中心を通り且つ図面左右方向に平行な中心線である。
【0023】
図3の基準線804は、感知器100の中心を通り且つ図面上下方向(
図3のY軸方向)に平行な中心線であり、基準線805は、感知器100の中心を通り且つ図面左右方向(
図3のX軸方向)に平行な中心線であり、また、2個の検出素子700が設けられている位置に対応する位置を通る直線である。
【0024】
図4の基準線806は、受光部72の中心を通り且つ図面上下方向に平行な中心線であり、基準線807は、受光部72の中心を通り且つ図面左右方向に平行な中心線である。
図4の基準線808は、基部200と同一の高さ位置を示す線であり、基準線809は、突出部23における最も正面側の位置と同一の高さ位置(つまり、段部231における最も正面側の位置と同一の高さ位置)を示す線である。
【0025】
図5及び
図6の基準線810、811は、感知器100の中心を通り且つ図面上下方向に平行な中心線である。
【0026】
感知器100は、監視領域に設けられている火災検出装置であり、例えば、監視領域の火災を検出するための装置であり、また、感知器100を基準とした火災の発生方向を推定する装置である。
【0027】
火災の発生方向とは、感知器100の設置位置を基準とした場合の、火災の発生位置(つまり、火源の位置)の向きを示す概念である。なお、火災の発生方向は、例えば、2個以上の任意の個数の向きを含む概念であるが、本実施の形態では、感知器100が、火災の発生方向として、相互に直交する方向における相互に異なる4個の向きの内の何れかの向きを推定する場合について説明する。
【0028】
本実施の形態では、例えば、
図3に示すように、設置状態の感知器100において、+Y向きが北側を示しており、-Y向きが南側を示しており、+X向きが東側を示しており、-X向きが西側を示していることとし、
図1及び
図3に示すように、感知器100が、2個の検出素子700に対応する位置を通る直線である基準線805(
図3)が東西方向(X方向)に平行となるように設置されている場合について説明する。すなわち、本実施の形態では、感知器100が推定する火災の発生方向が、北側(+Y向き)、南側(-Y向き)、東側(+X向き)、及び西側(-X方向)の4個の向きの内の何れかの向きである場合について説明する。
【0029】
感知器100は、
図1に示すように例えば、設置対象である天井900に設置されている。
【0030】
なお、感知器100の設置対象は天井900に限らず、例えば、部屋の壁(不図示)等を設置対象としてもよいが、本実施の形態では、設置対象が天井900である場合(つまり、感知器100が天井900に設置されている場合)を例示して説明する。なお、バリエーションとして、感知器100が部屋の壁に設置された場合、「水平方向」とは、感知器100が設置対象である壁に設置された状態において、当該設置対象の設置面(感知器100が設置される平面)に平行となる方向を示すものと解釈することができる。
【0031】
なお、本実施の形態では、設置対象である天井900の天井面、またこのうち感知器100が設置される設置面はXY平面に沿う面、即ちXY平面に平行な面であるものとする。このとき、
図1の基準線801はXY平面に直交している。
【0032】
感知器100は、
図5及び
図6に示すように例えば、外カバー1、内カバー2、検煙部カバー3、検煙部ベース5、防虫網61(
図6)、基板62、端子盤63、嵌合金具64、検出素子700、発光部71、受光部72、及びライトガイド73を備える。
【0033】
(構成-外カバー)
図7及び
図8は、外カバーの斜視図であり、
図9は、外カバーの側面図であり、
図10は、外カバーの正面図であり、
図11は、外カバーの背面図である。なお、各図において、同様な複数の構成(例えば、
図9の接続部13、開口部14等)については、説明の便宜上一部の構成にのみ符号を付して説明する(他の図の他の構成要素も同様とする)。
【0034】
なお、
図10及び
図11の基準線812、814は、外カバー1の中心を通り且つ図面上下方向に平行な中心線であり、
図10及び
図11の基準線813、815は、外カバー1の中心を通り且つ図面左右方向に平行な中心線である。
【0035】
外カバー1は、感知器100の構成要素(内カバー2、及び検煙部カバー3等)を正面側から覆って収容するものであり、また、感知器100の外形の一部を形成するものである。外カバー1は、例えば、樹脂製のものである。外カバー1は、例えば、
図9の本体部11、天板部12、接続部13、開口部14、ラビリンス部15、及びライトガイド用開口部16(
図10)を備える。
【0036】
(構成-外カバー-本体部)
本体部11は、所定径の略円筒形状となっている部分である。
【0037】
(構成-外カバー-天板部)
天板部12は、本体部11の正面側に設けられている部分であり、本体部の外周よりも小径の円形の平板形状となっている部分である。
【0038】
(構成-外カバー-接続部)
接続部13は、本体部11と天板部12とを相互に接続する部分であり、
図9に示すように例えば、本体部11と天板部12との間において延在している部分である。
【0039】
(構成-外カバー-開口部)
開口部14は、熱気流を感知器100の内部に流入させたり、当該熱気流を感知器100の内部から流出させたりするための開口である。開口部14は、本体部11と天板部12との間の隙間に形成されており、また、複数の接続部13によって複数個に区画されている。
【0040】
なお、「熱気流」とは、監視領域の火災に伴って発生する検出対象を含む流体の流れ又は流体自体を示す概念であり、例えば、比較的高温の流体の流れ又は流体自体を示す概念である。「検出対象」とは、感知器100で検出される対象であり、具体的には、監視領域の火災に伴って発生する対象であり、例えば、火災に伴って発生する煙粒子等を含む概念である。
【0041】
(構成-外カバー-ラビリンス部)
ラビリンス部15は、検出素子700へ熱気流を誘導する制御構造である。ラビリンス部15は、例えば、検出対象を含む流体を検出空間300(
図4)に導入するものである。なお、ラビリンス部15の詳細については、後述する。
【0042】
なお、「制御構造」とは、検出素子700へ熱気流を誘導するための構成要素であり、具体的には、熱気流の流路の方向を制御する構成要素であって、熱気流の流れを制御する構成要素である。この制御構造は、例えば、ラビリンス部15、及び段部231(後述)を有する。なお、この制御構造の位置は任意であり、例えば、検出素子700の近傍の位置であってもよいし、あるいは、検出素子700から離れた位置であってもよい。
【0043】
「検出空間」300とは、火災に起因する検出対象である煙(詳細には、煙粒子)を検出するための空間であり、遮光されている空間である。なお、この検出空間300が、「煙検出部」に対応するものと解釈してもよい。この検出空間300の位置又は大きさ等は任意であるが、
図4に示すように例えば、内カバー2の段部231における外周壁231Aよりも内側に配置されるように構成してもよい。あるいは、バリエーションとしては、検出空間300については、当該外周壁231Aの位置とは無関係に配置してもよい。なお、内カバー2の段部231及び外周壁231Aについては後述する。また、検出空間300は、例えば、段部231及びラビリンス部15よりも背面側に配置してもよい。なお、ここでの「背面側」が「下部」に対応するものと解釈してもよい。
【0044】
(構成-外カバー-ライトガイド用開口部)
ライトガイド用開口部16は、ライトガイド73(
図5及び
図6)の先端部を感知器100の外部に対して露出させるための貫通している開口部である。
【0045】
(構成-内カバー)
図12及び
図13は、内カバーの斜視図であり、
図14は、内カバーの側面図であり、
図15は、内カバーの正面図であり、
図16は、内カバーの背面図である。
【0046】
なお、
図15及び
図16の長軸230は、突出部23(
図15)の周形状である楕円の長軸を示しており、また、内カバー2の中心を通り且つ図面左右方向に平行な中心線も示している。
図15及び
図16の短軸230Aは、突出部23(
図15)の周形状である楕円の短軸を示しており、また、内カバー2の中心を通り且つ図面上下方向に平行な中心線も示している。
【0047】
内カバー2は、感知器100の構成要素(検煙部カバー3等)を覆って収容するものであり、また、正面視で円形となっているものである。内カバー2は、例えば、樹脂製のものである。内カバー2は、例えば、
図12の第1開口部21、第2開口部22、突出部23、及びライトガイド用開口部24を備える。
【0048】
(構成-内カバー-第1開口部)
第1開口部21は、熱気流を検出空間300の内部に流入させたり、当該熱気流を検出空間300の内部から流出させたりするための開口である。第1開口部21は、
図15に示すように例えば、正面視で内カバー2の中心に設けられている円形の開口である。第1開口部21は、段部231の正面側から背面側へ貫通する開口である。段部231の正面側から背面側へ貫通するとは、例えば、段部231を有する突出部23の正面側の面から背面側に向けて貫通することを示す概念であるものと解釈してもよい。また、ここでの段部231の正面側の面(つまり、突出部23の正面側の面)が、「上面」に対応し、また、段部231の背面側(つまり、突出部23の背面側)が、「下面側」に対応するものと解釈してもよい。
【0049】
(構成-内カバー-第2開口部)
第2開口部22は、検出素子700が挿通されて配置される開口である。第2開口部22は、
図15に示すように例えば、正面視で楕円形状となって突出部23における長軸230(正面視で外周壁231Aの周形状である楕円の長軸)上であって当該突出部23の両側に設けられている矩形の開口である。
【0050】
(構成-内カバー-突出部)
突出部23は、内カバー2における基部200(
図12、
図14、及び
図15)から正面側に向かって突出している部分である。「基部」200とは、感知器100の所定の基部であり、例えば、内カバー2における突出部23の外周側に設けられている面である。基部200の構成は任意であるが、
図1に示すように例えば、側面視において、外カバー1の開口部14における背面側(+Z方向)の縁よりも僅かに正面側(-Z方向)となる位置に設けてもよい。なお、突出部23の詳細については後述する。
【0051】
(構成-内カバー-ライトガイド用開口部)
ライトガイド用開口部24は、ライトガイド73(
図5及び
図6)が挿通されて配置される開口部である。
【0052】
(構成-検煙部カバー)
図17~
図19は、検煙部カバーの斜視図であり、
図20は、検煙部カバーの側面図であり、
図21は、検煙部カバーの正面図であり、
図22は、検煙部カバーの背面図である。
【0053】
なお、
図21の基準線816は、検煙部カバー3の中心を通り且つ図面上下方向に平行な中心線であり、基準線818はこれに直交する中心線である。光軸901は、組み立てられた状態の感知器100における発光部71(
図28)の光軸を示している。光軸902は、組み立てられた状態の感知器100における受光部72(
図28)の光軸を示している。
図22の基準線817は、検煙部カバー3の中心を通り且つ図面上下方向に平行な中心線であり、基準線819はこれに直交する中心線である。
【0054】
検煙部カバー3は、検煙部ベース5と共に、検出空間300(
図4)、発光側光学素子712(
図5及び
図6)、及び受光側光学素子722を覆うものであり、すなわち、検出空間300の内外を区画するものである。検煙部カバー3は、例えば、樹脂製のものである。検煙部カバー3は、
図17~
図19に示すように例えば、開口部31、発光側収容部32、及び受光側収容部33を備える。
【0055】
(構成-検煙部カバー開口部)
開口部31は、熱気流を検出空間300の内部に流入させたり、当該熱気流を検出空間300の内部から流出させたりするための開口である。開口部31は、
図21に示すように例えば、円形の開口であり、内カバー2の第1開口部21と略同径である。
【0056】
(構成-検煙部カバー-各収容部)
発光側収容部32は、発光側光学素子712(
図5及び
図6)を収容する部分である。
【0057】
受光側収容部33は、受光側光学素子722(
図5及び
図6)を収容する部分である。
【0058】
(構成-検煙部ベース)
図23~
図24は、検煙部ベースの斜視図であり、
図25は、検煙部ベースの側面図であり、
図26は、検煙部ベースの正面図であり、
図27は、検煙部ベースの背面図である。
【0059】
検煙部ベース5は、検煙部カバー3と共に、検出空間300(
図4)、発光側光学素子712(
図5及び
図6)、及び受光側光学素子722を覆うものであり、すなわち、検出空間300の内外を区画するものである。検煙部ベース5は、例えば、樹脂製のものである。検煙部ベース5は、例えば、全体として平板形状のものであり、発光側収容部51(
図23及び
図26)、及び受光側収容部52を備える。
【0060】
(構成-検煙部ベース-各収容部)
発光側収容部51は、発光側光学素子712(
図5及び
図6)を収容する部分であり、組み立てられた状態の感知器100において、検煙部カバー3の発光側収容部32に対応する位置に設けられている部分である。
【0061】
受光側収容部52は、受光側光学素子722(
図5及び
図6)を収容する部分であり、組み立てられた状態の感知器100において、検煙部カバー3の受光側収容部33に対応する位置に設けられている部分である。
【0062】
(構成-防虫網)
図6の防虫網61は、検出空間300(
図4)に対する熱気流の流入又は流出を可能にしつつ、当該検出空間300への虫の進入を防止するためのものである。防虫網61は、例えば、内カバー2の第1開口部21に設けられる円形のものであり、また、熱気流の流入又は流出を可能にし、且つ、虫の進入を防止可能とする程度の所定径の小孔(不図示)が複数設けられている。
【0063】
(構成-基板)
図5及び
図6の基板62は、各種素子、IC(マイクロコンピュータを含む集積回路)、メモリ、又は電気配線等を含む電気回路が実装されている回路基板である。基板62は、
図6に示すように例えば、正面側の面に発光素子711、及び受光素子721が実装されているものである。また、基板62は、これらの各素子に加えて、検出素子700も実装されるものである。
【0064】
基板62に実装されているマイクロコンピュータ(マイコン)は、感知器100の制御部であり、また、基板62に実装されているメモリは、感知器100の記録部である。
【0065】
感知器100の制御部は、感知器100を制御する制御手段であり、例えば、推定部としても機能する。「推定部」とは、2個の検出素子700の検出結果に基づいて、感知器100を基準とした火災の発生方向を推定する推定手段である。すなわち、推定部は、火災の発生方向、つまり、火災発生場所が感知器100からみて相対的にどの向きに位置するのかを推定する推定手段である。なお、制御部により実行される感知器100の動作又は処理については、後述する。
【0066】
感知器100の記録部は、プログラム及び各種のデータを記録する記録手段である。
【0067】
(構成-端子盤)
図5及び
図6の端子盤63は、感知器100の構成要素(検煙部カバー3等)を背面側から覆うものである。端子盤63は、嵌合金具64を介して天井900に取り付けられるものであり、すなわち、感知器100を天井900に取り付けるための取付部である。
【0068】
(構成-嵌合金具)
嵌合金具64は、端子盤63及び天井900側の取付構造(例えば、嵌合金具64と嵌合又は係合して当該嵌合金具64が固定されて取り付けられるもの)に対して着脱自在の取付けられるものである。この嵌合金具64を用いることにより、端子盤63を含む感知器100が天井900に取り付け可能となる。なお、この嵌合金具64が「取付部」に対応するものと解釈してもよい。
【0069】
また、本実施の形態では不図示であるが、端子盤63とほぼ同径の円形の板状の部材である取付ベースを用いて、感知器100を天井900に取り付けることも想定されるが、この取付ベースを用いる場合、取付ベースが「取付部」に対応するものと解釈してもよい。なお、「取付ベース」とは、感知器100と天井900との相互間に設けられて、感知器100を天井900に設置して取り付けるための部材であるが、公知の構成を適用することができるので、詳細の説明を省略する。
【0070】
(構成-検出素子)
図5及び
図6の検出素子700は、監視領域の火災に伴って発生する熱気流の熱を検出する熱検出素子である。なお、検出素子700の詳細については後述する。
【0071】
(構成-発光部)
図28は、検出空間の内部を示す図である。なお、
図28においては、組み立てられた状態の感知器100において、正面側から検煙部カバー3の内部を見た状態が図示されており、検煙部ベース5の詳細構造の図示は、説明の便宜上省略されている。
【0072】
図28の発光部71は、検出対象である煙粒子を検出するための出射光を検出空間300内に出射する発光手段である。発光部71は、
図5及び
図6に示すように例えば、発光素子711、及び発光側光学素子712を備える。
【0073】
(構成-発光部-発光素子)
発光素子711は、光(出射光)を出射する構成要素であり、例えば、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を用いて構成することができる。発光素子711は、基板62に実装されている。
【0074】
(構成-発光部-発光側光学素子)
発光側光学素子712は、発光素子711が出射した出射光を、検出空間300内に導いて出射する構成要素であり、例えば、プリズムを用いて構成することができる。発光側光学素子712は、例えば、検煙部カバー3及び検煙部ベース5に収容されている。
【0075】
発光側光学素子712は、例えば、発光素子711からの光を、主に、検煙部ベース5に対して平行な方向(つまり、
図3のXY平面に平行な方向)に向かって出射するように構成されている。
【0076】
(構成-受光部)
図28の受光部72は、出射光が検出空間300内の検出対象である煙粒子により散乱されて生じる散乱光等を受光する受光手段である。受光部72は、
図5及び
図6に示すように例えば、受光素子721、及び受光側光学素子722を備える。
【0077】
(構成-受光部-受光素子)
受光素子721は、光(散乱光等)を受光する構成要素であり、例えば、フォトダイオードを用いて構成することができる。受光素子721は、基板62に実装されている。
【0078】
(構成-受光部-受光側光学素子)
受光側光学素子722は、検出空間300内の光を受光素子721に導く構成要素であり、例えば、プリズムを用いて構成することができる。受光側光学素子722は、検煙部カバー3及び検煙部ベース5に収容されている。
【0079】
受光側光学素子722は、煙粒子で散乱されて受光側光学素子722に入射した散乱光等を受光素子721に導くように構成されている。
【0080】
(構成-ライトガイド)
図5及び
図6のライトガイド73は、感知器100の表示灯として機能する構成要素であり、
図2及び
図3に示すように例えば、一部が感知器100の正面側に露出しているものである。例えば、基板62の正面側の面に発光側光学素子712とは別の発光素子(LED)が設けられていることとし、この発光素子からの光を導光して感知器100の正面側に出力する構成要素である。「表示灯」とは、感知器100の状態を表示する構成要素であり、例えば、感知器100の状態に応じた色(例えば、緑色又は赤色等)の光を出力して当該感知器の状態を表示するものである。
【0081】
(構成-検出素子の詳細)
次に、検出素子700の詳細について説明する。
図29は、検出素子の拡大図であり、
図30は、外カバー及び内カバーが取り外された状態の感知器の斜視図であり、
図31は、外カバーが取り外された状態の感知器の斜視図であり、
図32は、
図1のB-B断面図であり、
図33及び
図34は、感知器の斜視図である。
【0082】
なお、
図29の基準線820は、検出素子700における検出部701の中心を通り且つ図面左右方向に平行な中心線であり、基準線821は、検出素子700における検出部701の中心を通り且つ図面上下方向に平行な中心線である。
【0083】
検出素子700は、前述のように、監視領域の火災に伴って発生する熱気流の熱を検出する熱検出素子である。検出素子700は、例えば、熱に対応する温度を検出し、当該検出した温度を示す温度情報を出力するサーミスタ等を用いて構成することができる。検出素子700は、
図29に示すように例えば、検出部701及び端子部702を備える。検出部701は例えば、表裏両面をフィルム状の絶縁部材703で挟持されている。
【0084】
検出部701は、検出素子700における熱を検出する部分であり、例えば、温度変動による抵抗値変化する部分である。端子部702は、検出素子700を感知器100の電気回路に対して電気的に接続するための端子である。
【0085】
検出素子700は、端子部702を基板62の接続孔に挿入した状態ではんだ等を用いて当該基板62の配線に電気的に接続して固定することにより、
図30に示すように基板62に実装される。また、検出素子700は、内カバー2の第2開口部22(
図15)に挿通されるので、検出素子700(つまり、検出素子700の検出部701)は、
図32に示すように例えば、正面視で楕円形状となって突出部23における長軸230上であって、段部231の外周壁231Aの外側に配置されている。すなわち、2個の検出素子700(つまり、検出素子700の検出部701)は、段部231の外周壁231Aの外側に、段部231を有する突出部23、及びラビリンス部15を挟んで対向するように2個配置されている。また、2個の検出素子700は、制御構造(ラビリンス部15、及び段部231)の両側に設けられている。
【0086】
検出素子700は、
図1及び
図31に示すように例えば、内カバー2の基部200から第2開口部22(
図31)を介して突出するように配置されている。検出素子700の検出部701の少なくとも一部は、内カバー2の段部231(
図1及び
図31)の最上段よりも低い基部200側に位置する。
【0087】
なお、段部231の最上段とは、例えば、段部231における最も正面側の部分(
図1では、最も図面下側の部分に対応し、
図31では、最も図面上側の部分に対応)を示す概念である。また、段部231の最上段よりも低い基部200側とは、縦方向(
図1のX軸方向)において、基部200により近い側を示す概念である。すなわち、検出素子700の検出部701の少なくとも一部は、縦方向において、内カバー2の段部231の最上段に対応する高さ位置と、基部200に対応する高さ位置との間に設けられている。
【0088】
本実施の形態では、
図1に示すように例えば、検出素子700の検出部701の一部が、内カバー2の段部231の最上段に対応する高さ位置と、基部200に対応する高さ位置との間に設けられており、また、検出素子700の検出部701の他の一部(つまり、前述の検出素子700の検出部701の一部よりも、正面側の部分(つまり、
図1の図面下側の部分))は、内カバー2の段部231の最上段に対応する高さ位置よりも高さ方向において基部200から離れた位置に設けられている。なお、検出素子700の配置はこれに限らず、例えば、検出素子700の検出部701の全部が、縦方向において、内カバー2の段部231の最上段に対応する高さ位置と、基部200に対応する高さ位置との間に設けられるように配置してもよい。
【0089】
また、
図3に示すように例えば、2個の検出素子700の内の、設置状態の感知器100において感知器100の中心を基準にして、東側(+X向き)に設けられている検出素子700を第1検出素子7Aと称し、また、西側(-X向き)に設けられている検出素子700を第2検出素子7Bと称して説明する。
【0090】
(構成-突出部の詳細)
次に、
図12、
図14、及び
図15の突出部23の詳細について説明する。突出部23は、内カバー2の基部200から正面側に向かって突出している部分であり、例えば、段部231を備える。
【0091】
段部231は、前述の制御構造であり、
図14に示すように例えば、ラビリンス部15の突出部23の周縁に対応する段になっている部分(つまり、突出部23の肩部)である。段部231は、外周壁231A(
図32)に沿って検出素子700の検出部701へ熱気流を誘導する部分である。
【0092】
段部231の外周壁231Aは、
図14に示すように例えば、段部231の傾斜している部分に対応する部分である。外周壁231Aは、例えば、
図14の図面上下方向において基部200から離れるにつれて、内カバー2の中心側に向かうように傾斜している。外周壁231Aは、
図32に示すように例えば、正面視において周形状が楕円となっており、すなわち、突出部23は、正面視において楕円形状となっており、つまり、水平方向において感知器100の中心を基準とした楕円形状となっている。
【0093】
(構成-ラビリンス部の詳細)
次に、
図8、
図9、及び
図11のラビリンス部15の詳細について説明する。ラビリンス部15は、前述の制御構造であり、また、検出対象を含む流体を検出空間300に導入するものである。ラビリンス部15は、
図11に示すように例えば、複数の区画壁151を備える。
【0094】
区画壁151は、天板部12における背面側の面に固定されて設けられており、また、天板部12から背面側に向かって所定高さ分だけ突出しており、また、相互間の間隙152を介して相互に隣接して設けられている。区画壁151は、天板部12と一体的に形成してもよいし、あるいは、天板部12とは別体として形成した上で、接着剤等を用いて固定してもよいが、本実施の形態では、一体的に形成されているものとする。
【0095】
区画壁151は、組み立てられた状態の
図1の感知器100において、
図32に示すように例えば、内カバー2の段部231を有する突出部23の上面(正面側の面)から立設するように構成されている。区画壁151は、例えば、感知器100の内側から外側に向かって延在している。区画壁151の側端部151Aは、段部231の正面側において段部231の外周に沿って配置されている。よって、区画壁151の側端部151Aは、正面視において、楕円上に配置されており、つまり、水平方向において感知器100の中心を基準とした楕円形状に配置されている。なお、区画壁151の側端部151Aとは、区画壁151の一部に対応する部分であり、具体的には、区画壁151における段部231の外周側に対応する部分である。
【0096】
このように構成されているので、ラビリンス部15については、段部231の当該段部231の外周に沿って当該段部231の上面から複数の区画壁151を相互に間隙152を有して立設するように配置した構成要素であるものと解釈してもよい。
【0097】
(感知器の組み立て手順)
次に、感知器100の組み立て手順について説明する。ここでは、主に
図5及び
図6を参照しつつ、感知器100の組み立て手順の一例について説明する。
【0098】
まず、発光側光学素子712及び受光側光学素子722を、検煙部ベース5の発光側収容部51(
図23及び
図26)及び受光側収容部52に収容する。
【0099】
次に、検煙部カバー3を、検煙部ベース5に任意の手法(例えば、各構成要素に設けられている係合構造を利用する手法等)で取り付ける。この場合、発光側光学素子712及び受光側光学素子722は、検煙部カバー3の発光側収容部32(
図19)及び受光側収容部33にも収容されることになる。
【0100】
次に、発光素子711、受光素子721、及び検出素子700が実装されている基板62を、端子盤63の正面側(
図6の図面上側)から当該端子盤63に任意の手法(例えば、ネジで螺合する手法等)で取り付ける。また、嵌合金具64を、端子盤63の背面側(
図6の図面下側)から当該端子盤63に任意の手法(例えば、ネジで螺合する手法等)で取り付ける。
【0101】
次に、
図30に示すように、検煙部カバー3が取り付けられた状態の検煙部ベース5を、基板62の正面側(
図6の図面上側)から当該基板62に任意の手法(例えば、各構成要素に設けられている係合構造を利用する手法、又は、ネジで螺合する手法等)で取り付ける。
【0102】
次に、
図31に示すように、内カバー2を、検煙部カバー3等が取り付けられている端子盤63の正面側(
図6の図面上側)から当該端子盤63に任意の手法(例えば、各構成要素に設けられている係合構造を利用する手法等)で取り付ける。なお、この場合、検出素子700の一部は、内カバー2の第2開口部22に挿通されて、内カバー2から正面側に向かって突出することになる。また、ライトガイド73を、内カバー2のライトガイド用開口部24に挿通する。
【0103】
次に、防虫網61を、内カバー2の第1開口部21に設ける。
【0104】
次に、外カバー1を、内カバー2等が取り付けられている端子盤63の正面側(
図6の図面上側)から当該端子盤63に任意の手法(例えば、各構成要素に設けられている係合構造を利用する手法等)で取り付ける。なお、この場合、
図1に示すように、外カバー1のラビリンス部15は、内カバー2の突出部23に当接することになる。また、ラビリンス部15の区画壁151の一部(
図11において、外カバー1の中心で十字に交差している交差部分)によって、前述の防虫網61が押さえられて当該防虫網61が感知器100に固定されることになる。また、ライトガイド73の先端は、外カバー1のライトガイド用開口部16(
図7)を介して感知器100の外部に露出することになる。このようにして、
図1~
図4、
図33及び
図34に示す感知器100の組み立てが完了する。
【0105】
(熱気流の供給及び検出素子の検出結果)
次に、監視領域で火災が発生した場合に生じる煙粒子を含む熱気流の、感知器100への供給、及び検出素子の検出結果について説明する。
【0106】
図35~
図38は、熱気流の流れと検出素子の検出結果を例示した図である。なお、各図の(a)は、
図1のB-B断面図であり、(b)は、検出素子700が検出した熱の温度の代表例を示すグラフである。
【0107】
図35~
図38の(a)の断面図は、
図32の感知器100を半時計回り方向に90度回転させた状態が図示されている。また、この
図35~
図38の(a)においては、熱気流の流れが白抜き矢印で図示されている。
【0108】
図35~
図38の(b)のグラフは、第1検出素子7Aが検出した熱の温度の時間変化が実線で図示されており、また、第2検出素子7Bが検出した熱の温度の時間変化が点線で図示されている。なお、各図の(b)のグラフは、本願の感知器100に関して行われた、熱気流が供給される向きと、検出素子700の検出結果との相関関係を確認するための実験又はシミュレーションの代表的な結果を示している。
【0109】
(熱気流の供給及び検出素子の検出結果-東側からの供給)
図35(a)の白抜き矢印で示すように、熱気流が、長軸230に平行な方向において東側(+X向き)から感知器100に供給された場合、当該熱気流は、天井900に沿って感知器100に供給され、外カバー1の開口部14(
図1)を介して、外カバー1の内部に流入する。
【0110】
次に、外カバー1の内部に流入した熱気流の一部は、第1検出素子7Aに供給される。この後、第1検出素子7Aに供給された熱気流の一部は、段部231の外周壁231A(
図32)及びラビリンス部15における複数の区画壁151の側端部151A(
図32)に沿って誘導されて、第2検出素子7Bに供給される。なお、この場合、当該熱気流は、感知器100の構成要素に接触して放熱しつつ第2検出素子7Bに供給される。また、第1検出素子7Aに供給された熱気流の他の一部は、段部231を乗り越えて、ラビリンス部15の複数の区画壁151の相互間の間隙152(
図32)を介して、感知器100の外周側から内側へ誘導されて供給される。この後、当該熱気流は、内カバー2の第1開口部21、及び検煙部カバー3の開口部31を介して、検出空間300に流入する。特に、内カバー2の第1開口部21には防虫網61(
図6)が設けられているので、熱気流は、この防虫網61の複数の小孔(不図示)を介して、検出空間300に流入する。
【0111】
また、外カバー1の内部に流入した熱気流の他の一部は、第1検出素子7Aには供給されずに、段部231の外周壁231A(
図32)及びラビリンス部15における複数の区画壁151の側端部151A(
図32)に沿って誘導されて、第2検出素子7Bに供給される。なお、この場合も、当該熱気流は、感知器100の構成要素に接触して放熱しつつ移動して第2検出素子7Bに供給される。
【0112】
なお、実際には、外カバー1の内部に流入した熱気流においては、第1検出素子7A及び第2検出素子7Bのいずれにも供給されず、外カバー1から外部に流出する部分も存在するが、この部分についての説明は省略する(後述する他の方向から熱気流が供給された場合も同様)。
【0113】
よって、
図35(a)に示すように、熱気流が東側(+X向き)からの供給される場合、第1検出素子7Aに高温の熱気流が供給され、第2検出素子7Bに低温の熱気流が供給されることになるので、
図35(b)に示すように、第1検出素子7Aが検出した熱の温度上昇率(つまり、所定時間内の温度の上昇量)が、第2検出素子7Bが検出した熱の温度上昇率よりも大きくなり、特に、これらの温度上昇率の差分は比較的大きくなっている。なお、ここでの「高温」及び「低温」とは、温度の相対的な表現であり、すなわち例えば、高温の熱気流の温度の方が、低温の熱気流の温度よりも高いことを示している。
【0114】
なお、温度上昇率がより大きいことは、温度上昇がより速いことを示しており、また、温度上昇率がより小さいことは、温度上昇がより遅いことを示している。
【0115】
(熱気流の供給及び検出素子の検出結果-西側からの供給)
図36(a)の白抜き矢印で示すように、熱気流が、長軸230に平行な方向において西側(-X向き)から感知器100に供給された場合、当該熱気流は、天井900に沿って感知器100に供給され、外カバー1の開口部14(
図1)を介して、外カバー1の内部に流入する。
【0116】
次に、外カバー1の内部に流入した熱気流の一部は、第2検出素子7Bに供給される。この後、第2検出素子7Bに供給された熱気流の一部は、段部231の外周壁231A(
図32)及びラビリンス部15における複数の区画壁151の側端部151A(
図32)に沿って誘導されて、第1検出素子7Aに供給される。なお、この場合、当該熱気流は、感知器100の構成要素に接触して放熱しつつ第1検出素子7Aに供給される。また、第2検出素子7Bに供給された熱気流の他の一部は、前述の場合と同様にして、検出空間300に流入する。
【0117】
また、外カバー1の内部に流入した熱気流の他の一部は、第2検出素子7Bには供給されずに、段部231の外周壁231A(
図32)及びラビリンス部15における複数の区画壁151の側端部151A(
図32)に沿って誘導されて、第1検出素子7Aに供給される。なお、この場合も、当該熱気流は、感知器100の構成要素に接触して放熱しつつ移動して第1検出素子7Aに供給される。
【0118】
よって、
図36(a)に示すように、熱気流が西側(-X向き)からの供給される場合、第2検出素子7Bに高温の熱気流が供給され、第1検出素子7Aに低温の熱気流が供給されることになるので、
図36(b)に示すように、第2検出素子7Bが検出した熱の温度上昇率が、第1検出素子7Aが検出した熱の温度上昇率よりも大きくなり、特に、これらの温度上昇率の差分は比較的大きくなっている。
【0119】
(熱気流の供給及び検出素子の検出結果-北側からの供給)
図37(a)の白抜き矢印で示すように、熱気流が、短軸230Aに平行な方向において北側(+Y向き)から感知器100に供給された場合、当該熱気流は、天井900に沿って感知器100に供給され、外カバー1の開口部14(
図1)を介して、外カバー1の内部に流入する。
【0120】
次に、外カバー1の内部に流入した熱気流の一部は、段部231の外周壁231A(
図32)及びラビリンス部15における複数の区画壁151の側端部151A(
図32)に沿って誘導されて、第1検出素子7A及び第2検出素子7Bに供給される。
【0121】
なお、この場合、感知器100の構成(例えば、ラビリンス部15の構成等)により、第2検出素子7Bに供給される熱気流(
図37(a)で反時計回り方向に供給されている熱気流)が、第1検出素子7Aに供給される熱気流(
図37(a)で時計回り方向に供給されている熱気流)よりも多くなる。より具体的には、例えば、
図37(a)に示したように、ラビリンス外周(つまり、ラビリンス部15の外周)側に於いて気流の流れ方向と区画壁151とが成す角度θ1>θ2であること等により、第1検出素子7Aに向かう熱気流は、分流してラビリンス開口部(つまり、間隙152)からラビリンス内部(つまり、ラビリンス部15の内側)に取り込まれる成分が比較的多くなる。このため、第1検出素子7Aに供給される成分が減少して第1検出素子7Aで受熱される時間当たりの熱エネルギー量が比較的小さくなる。一方、第2検出素子7Bに向かう熱気流は、このような分流が比較的生じにくく、検出素子7Bに供給される成分の減少が抑制されるので、検出素子7Bで受熱される時間当たりの熱エネルギー量が比較的大きくなる。よって、同じ時間においては、第2検出素子7Bで検出される熱気流の温度の方が、第1検出素子7Aで検出される熱気流の温度よりも高くなる。
【0122】
また、外カバー1の内部に流入した熱気流の他の一部は、前述の場合と同様にして、検出空間300に流入する。
【0123】
よって、
図37(a)に示すように、熱気流が北側(+Y向き)からの供給された場合、
図37(b)に示すように、第2検出素子7Bが検出した熱の温度上昇率が、第1検出素子7Aが検出した熱の温度上昇率よりも大きくなり、特に、これらの温度上昇率の差分は比較的小さくなっている。詳細には、熱気流が北側(+Y向き)からの供給された場合の、各検出素子700が検出した熱の温度上昇率の差分は、熱気流が西側(-X向き)からの供給された場合の、各検出素子700が検出した熱の温度上昇率の差分よりも、極めて小さくなる。
【0124】
(熱気流の供給及び検出素子の検出結果-南側からの供給)
図38(a)の白抜き矢印で示すように、熱気流が、短軸230Aに平行な方向において南側(-Y向き)から感知器100に供給された場合、当該熱気流は、天井900に沿って感知器100に供給され、外カバー1の開口部14(
図1)を介して、外カバー1の内部に流入する。
【0125】
次に、外カバー1の内部に流入した熱気流の一部は、段部231の外周壁231A(
図32)及びラビリンス部15における複数の区画壁151の側端部151A(
図32)に沿って誘導されて、第1検出素子7A及び第2検出素子7Bに供給される。
【0126】
なお、この場合、感知器100の構成(例えば、ラビリンス部15の構成等)により、第1検出素子7Aに供給される熱気流(
図38(a)で反時計回り方向に供給されている熱気流)が、第2検出素子7Bに供給される熱気流(
図38(a)で時計回り方向に供給されている熱気流)よりも多くなる。より具体的には、例えば、
図38(a)に示したように、ラビリンス外周側に於いて気流の流れ方向と区画壁151とが成す角度θ3>θ4であること等により、第2検出素子7Bに向かう熱気流は、分流してラビリンス開口部からラビリンス内部に取り込まれる成分が比較的多くなる。このため、第2検出素子7Bに供給される成分が減少して第2検出素子7Bで受熱される時間当たりの熱エネルギー量が比較的小さくなる。一方、第1検出素子7Aに向かう熱気流は、このような分流が比較的生じにくく、検出素子7Aに供給される成分の減少が抑制されるので、検出素子7Aで受熱される時間当たりの熱エネルギー量が比較的大きくなる。よって、同じ時間においては、第1検出素子7Aで検出される熱気流の温度の方が、第2検出素子7Bで検出される熱気流の温度よりも高くなる。
【0127】
また、外カバー1の内部に流入した熱気流の他の一部は、前述の場合と同様にして、検出空間300に流入する。
【0128】
よって、
図38(a)に示すように、熱気流が南側(-Y向き)からの供給された場合、
図38(b)に示すように、第1検出素子7Aが検出した熱の温度上昇率が、第2検出素子7Bが検出した熱の温度上昇率よりも大きくなり、特に、これらの温度上昇率の差分は比較的小さくなっている。詳細には、熱気流が南側(-Y向き)からの供給された場合の、各検出素子700が検出した熱の温度上昇率の差分は、熱気流が東側(+X向き)からの供給された場合の、各検出素子700が検出した熱の温度上昇率の差分よりも、極めて小さくなる。
【0129】
なお、このような各検出素子700の温度上昇の差は、ラビリンス部15ないし段部231の大きさ(ラビリンス部15ないし段部231の外周の内側面積)が同程度である場合には、例えばラビリンス外周形状(つまり、ラビリンス部15の外周形状)を円形とした場合に比べて、例えば本実施形態に示した通りラビリンス外周形状を楕円形として、或いは長円形としてその長軸230上に各熱検出素子700を配置する場合のほうが顕著であることが、本願発明者によるシミュレーションや実測からわかっている。
【0130】
(火災検出の動作)
次に、感知器100による火災検出の動作について説明する。感知器100の制御部は、例えば、受光部72で受光した光の光量に基づいて火災を検出する動作を行うが、この動作は、公知の動作を適用することができるので、概要のみ説明する。
【0131】
(火災検出の動作-火災を検出しない場合)
例えば、監視領域で火災が発生していない場合、
図28の検出空間300には煙粒子を含む熱気流が流入しないので、発光部71から出射された出射光に基づく散乱光が発生せず、受光部72が散乱光を受光しないことになる。この場合、感知器100の制御部は、火災を検出しない。
【0132】
(火災検出の動作-火災を検出する場合)
一方、例えば、監視領域で火災が発生した場合、
図28の検出空間300には煙粒子を含む熱気流が流入するので、発光部71から出射された光が煙粒子に照射されて、比較的大きな光量の散乱光が発生して、当該散乱光を受光部72が受光することになる。この場合、感知器100の制御部は、火災を検出する。
【0133】
(火災発生方向推定処理)
次に、火災発生方向推定処理について説明する。火災発生方向推定処理とは、火災が発生した方向を推定する処理である。
図39は、火災発生方向推定処理を説明するための図である。火災発生方向推定処理が実行されてタイミングは任意であるが、例えば、「(火災検出の動作)」で説明したように、火災を検出した場合に起動されることとし、当該処理が起動されたところから説明する。
【0134】
=第1ステップ=
まず、第1ステップにおいて、感知器100の制御部は、第1検出素子7A及び第2検出素子7Bからの温度情報を取得し、取得した温度情報に基づいて、第1検出素子7A及び第2検出素子7Bで検出した熱気流の熱の温度上昇率を特定する。
【0135】
=第2ステップ=
次に、第2ステップにおいて、感知器100の制御部は、第1ステップで特定した温度上昇率に基づいて、各温度上昇率の大小を特定する。具体的には、
図39の「温度上昇率」の欄に示すように、各検出素子700の温度上昇率相互間の相対的な大小関係を特定する。
【0136】
ここでは、例えば、感知器100の東側(+X向き)で火災が発生した場合、
図35(a)に示すように、東側から熱気流が供給されるので、感知器100の制御部は、
図39の「番号」=「1」に対応する欄に記載されている通り、第1検出素子7A側の温度上昇率が、第2検出素子7B側の温度上昇率よりも大きいものと特定する。
【0137】
また、例えば、感知器100の西側(-X向き)で火災が発生した場合、
図36(a)に示すように、西側から熱気流が供給されるので、感知器100の制御部は、
図39の「番号」=「2」に対応する欄に記載されている通り、第2検出素子7B側の温度上昇率が、第1検出素子7A側の温度上昇率よりも大きいものと特定する。
【0138】
また、例えば、感知器100の北側(+Y向き)で火災が発生した場合、
図37(a)に示すように、北側から熱気流が供給されるので、感知器100の制御部は、
図39の「番号」=「3」に対応する欄に記載されている通り、第2検出素子7B側の温度上昇率が、第1検出素子7A側の温度上昇率よりも大きいものと特定する。
【0139】
また、例えば、感知器100の南側(-Y向き)で火災が発生した場合、
図38(a)に示すように、南側から熱気流が供給されるので、感知器100の制御部は、
図39の「番号」=「4」に対応する欄に記載されている通り、第1検出素子7A側の温度上昇率が、第2検出素子7B側の温度上昇率よりも大きいものと特定する。
【0140】
=第3ステップ=
次に、第3ステップにおいて、感知器100の制御部は、第1ステップで特定した温度上昇率に基づいて、各温度上昇率の差分が大きいか小さいかを特定する。具体的には、
図39の「温度上昇率の差分」の欄に示すように、差分が大きいか小さいかを特定する。
【0141】
具体手的には任意であるが、例えば、各温度上昇率の差分が大きいか小さいかを特定するための閾値情報が、感知器100の記録部に格納されていることとし、この閾値情報に基づいて特定することとする。「閾値情報」とは、各温度上昇率の差分が大きいか小さいかを特定するための情報であり、例えば、
図35(b)に示す各温度上昇率の差分と、
図38(b)に示す各温度上昇率の差分とを識別し、また、
図36(b)に示す各温度上昇率の差分と、
図37(b)に示す各温度上昇率の差分とを識別するために用いられる情報である。ここでは、例えば、上述の識別を行える程度の値の閾値として、
図35(b)に示す差分と
図38(b)に示す差分との間の値を示す情報が、閾値情報として格納されていることとする。この閾値情報を用いることにより、
図35(b)に示す差分と
図38(b)に示す差分各々の大小を特定することが可能となる。また、
図36(b)に示す差分及び
図37(b)に示す差分は、
図35(b)に示す差分及び
図38(b)に示す差分とほぼ同様な値となるので、この閾値情報を用いることにより、
図36(b)に示す差分と
図37(b)に示す差分各々の大小も特定することが可能となる。
【0142】
そして、第1ステップで特定した各温度上昇率相互間の差分(つまり、第1検出素子7Aが検出した熱気流の熱の温度と、第2検出素子7Bが検出した熱気流の熱の温度との差分)と、閾値情報が示す閾値とを比較し、比較結果に基づいて特定する。具体的には、第1ステップで特定した各温度上昇率相互間の差分が、閾値情報が示す閾値よりも大きい場合、各温度上昇率の差分が大きいものと特定する。また、第1ステップで特定した各温度上昇率相互間の差分が、閾値情報が示す閾値よりも小きい場合、各温度上昇率の差分が小きいものと特定する。
【0143】
ここでは、例えば、感知器100の東側(+X向き)で火災が発生して、
図35(a)に示すように、東側から熱気流が供給された場合、各温度上昇率相互間の差分が
図35(b)に示すように比較的大きくなり、すなわち、閾値情報が閾値よりも大きくなる。この場合、感知器100の制御部は、
図39の「番号」=「1」に対応する欄に記載されている通り、各温度上昇率の差分が大きいものと特定する。
【0144】
また、例えば、感知器100の西側(-X向き)で火災が発生して、
図36(a)に示すように、西側から熱気流が供給された場合、各温度上昇率相互間の差分が
図36(b)に示すように比較的大きくなり、すなわち、閾値情報が閾値よりも大きくなる。この場合、感知器100の制御部は、
図39の「番号」=「2」に対応する欄に記載されている通り、各温度上昇率の差分が大きいものと特定する。
【0145】
また、例えば、感知器100の北側(+Y向き)で火災が発生して、
図37(a)に示すように、北側から熱気流が供給された場合、各温度上昇率相互間の差分が
図37(b)に示すように比較的小さくなり、すなわち、閾値情報が閾値よりも小さくなる。この場合、感知器100の制御部は、
図39の「番号」=「3」に対応する欄に記載されている通り、各温度上昇率の差分が小さいものと特定する。
【0146】
また、例えば、感知器100の南側(-Y向き)で火災が発生して、
図38(a)に示すように、南側から熱気流が供給された場合、各温度上昇率相互間の差分が
図38(b)に示すように比較的小さくなり、すなわち、閾値情報が閾値よりも小さくなる。この場合、感知器100の制御部は、
図39の「番号」=「4」に対応する欄に記載されている通り、各温度上昇率の差分が小さいものと特定する。
【0147】
=第4ステップ=
次に、第4ステップにおいて、感知器100の制御部は、第2ステップ及び第3ステップでの特定結果に基づいて、火災の発生方向を推定する。すなわち、2個の検出素子700各々によって検出される温度上昇の相関に基づいて、火災の発生方向を推定する。具体的には、
図39に示すように、第2ステップで、第1検出素子7A側の温度上昇率が第2検出素子7B側の温度上昇率よりも大きいものと特定し、且つ、第3ステップで、各温度上昇率の差分が大きいものと特定した場合、火災の発生方向として、東側を推定する。また、第2ステップで、第2検出素子7B側の温度上昇率が第1検出素子7A側の温度上昇率よりも大きいもの、且つ、第3ステップで、各温度上昇率の差分が大きいものと特定した場合、火災の発生方向として、西側を推定する。また、第2ステップで、第2検出素子7B側の温度上昇率が第1検出素子7A側の温度上昇率よりも大きいもの、且つ、第3ステップで、各温度上昇率の差分が小さいものと特定した場合、火災の発生方向として、北側を推定する。また、第2ステップで、第1検出素子7A側の温度上昇率が第2検出素子7B側の温度上昇率よりも大きいものと特定し、且つ、第3ステップで、各温度上昇率の差分が小さいものと特定した場合、火災の発生方向として、南側を推定する。
【0148】
すなわち、感知器100の制御部は、水平方向において2個の検出素子700が並べられている第1直線(長軸230)を基準とした方向(東側、西側)、又は、第1直線に交差する第2直線(短軸230A)を基準とした方向(北側、南側)を、火災の発生方向として推定する。
【0149】
ここでは、例えば、感知器100の東側(+X向き)で火災が発生して、
図35(a)に示すように、東側から熱気流が供給された場合、
図39の「番号」=「1」に対応する「火災の発生方向」の欄に記載されている通り、火災の発生方向として東側を推定する。
【0150】
また、例えば、感知器100の西側(-X向き)で火災が発生して、
図36(a)に示すように、西側から熱気流が供給された場合、
図39の「番号」=「2」に対応する「火災の発生方向」の欄に記載されている通り、火災の発生方向として西側を推定する。
【0151】
また、例えば、感知器100の北側(+Y向き)で火災が発生して、
図37(a)に示すように、北側から熱気流が供給された場合、
図39の「番号」=「3」に対応する「火災の発生方向」の欄に記載されている通り、火災の発生方向として北側を推定する。
【0152】
また、例えば、感知器100の南側(-Y向き)で火災が発生して、
図38(a)に示すように、南側から熱気流が供給された場合、
図39の「番号」=「4」に対応する「火災の発生方向」の欄に記載されている通り、火災の発生方向として南側を推定する。
【0153】
=第5ステップ=
次に、第5ステップにおいて、感知器100の制御部は、第4ステップで推定した火災の発生方向を示す情報である火災発生方向情報を出力する。具体的には任意であるが、例えば、感知器100と通信可能に電気的に接続されている防災受信盤又は防災表示盤等の任意の防災設備側に、火災発生方向情報を送信して出力してもよい。あるいは、感知器100に対して、火災発生方向を表示するための表示灯又はディスプレイ等の表示手段、又は、火災発生方向を音声出力するためのスピーカ等の音声出力手段が設けられていることとし、これらの表示手段又は音声出力手段を介して出力してもよい。これにて、火災発生方向推定処理を終了する。
【0154】
(実施の形態の効果)
このように実施の形態によれば、2個の検出素子700の検出結果に基づいて、感知器100を基準とした火災の発生方向を推定することにより、例えば、火災の発生方向を推定することが可能となる。また、熱気流の流れを制御する制御構造を備えることにより、例えば、熱気流の流れを適切に制御して各検出素子700に供給することができるので、火災の発生方向の推定精度を向上させることが可能となる。
【0155】
また、2個の検出素子700各々は、制御構造の楕円形状の長軸230上において、制御構造の両側に、相互に対向して設けられていることにより、例えば、熱気流の流れを適切に制御して当該熱気流を各検出素子700に供給することができるので、火災の発生方向の推定精度を向上させることが可能となる。
【0156】
また、2個の検出素子700が並べられている第1直線(長軸230)を基準とした方向(東側、西側)、又は、第1直線に交差する第2直線(短軸230A)を基準とした方向(北側、南側)を、火災の発生方向として推定することにより、例えば、消火又は避難等の防災支援のために有用な方向を、火災の発生方向として推定することができるので、防災支援を効率的且つ確実に行わせることが可能となる。
【0157】
また、2個の検出素子700各々によって検出される温度上昇の相関に基づいて、火災の発生方向を推定することにより、例えば、火災の発生方向の推定精度を向上させることが可能となる。
【0158】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0159】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0160】
(ラビリンス部について)
上記実施の形態では、
図8のラビリンス部15が外カバー1に設けられる場合について説明したがこれに限らない。例えば、ラビリンス部15を内カバー2に設けてもよい。具体的には、ラビリンス部15を内カバー2と一体的に形成したり、あるいは、別個として形成されたラビリンス部15を接着剤等を用いて内カバー2に固定したりして設けてもよい。
【0161】
(外周壁について)
上記実施の形態では、外周壁231Aは、
図32に示すように例えば、正面視において周形状が楕円となっており、すなわち、突出部23は、正面視において楕円形状となっている場合について説明したが、これに限らない。例えば、外周壁231Aを、正面視において周形状が正円以外の長円となるように、構成してもよい。あるいは、外周壁231Aを楕円及び長円以外の他の任意の形状となるように構成してもよい。
【0162】
(突出部について)
上記実施の形態では、突出部23としては、
図12に示すように例えば、全体が基部200から突出している形状を例示したが、これに限らない。例えば、前述の段部231の機能を有する限りにおいて任意であり、例えば、段部231に対応する構成のみを内カバー2に設けてもよい。この場合、
図12の突出部23については、周上に段部231に対応する突出した部分が設け、当該突出した部分の内側については基部200と同じ高さ位置となるように凹ませてもよい。
【0163】
(制御構造について)
上記実施の形態の制御構造に対応するラビリンス部15及び段部231の具体的な構成については、実施の形態で説明した構成に限らない。例えば、前述の「(熱気流の供給及び検出素子の検出結果)」で説明したように、各向きからの熱気流が供給された場合の検出素子700の検出結果が、
図35~
図38に示す特性を示す限りにおいて任意であり、図示されている構成以外の他の構成を適用してもよい。
【0164】
(用語の解釈について)
上記実施の形態では、段部231が「制御構造」に対応するものと説明したが、例えば、段部231を含む突出部23が「制御構造」に対応」するものと解釈してもよい。
【0165】
(組み合わせについて)
上記実施の形態の特徴、及び変形例の特徴を任意に組み合わせてもよい。
【0166】
(付記)
付記1の火災検出装置は、監視領域の火災を検出するための火災検出装置であって、前記火災に基づいて発生する熱気流であって、前記火災検出装置に供給される前記熱気流の温度を検出する2個の熱検出素子と、前記熱気流の流路の方向を制御する制御構造であって、前記熱気流の流れを制御する前記制御構造と、前記2個の熱検出素子の検出結果に基づいて、前記火災検出装置を基準とした前記火災の発生方向を推定する推定部と、を備える。
【0167】
付記2の火災検出装置は、付記1に記載の火災検出装置において、前記熱気流は、水平方向において前記火災検出装置の外周側から中心側に向かって供給され、前記制御構造は、水平方向において前記火災検出装置の中心を基準とした楕円形状又は長円形状に配置されており、前記2個の熱検出素子各々は、水平方向における前記制御構造の楕円形状又は長円形状の長軸上において、前記制御構造の両側に、相互に対向して設けられている。
【0168】
付記3の火災検出装置は、付記1又は2に記載の火災検出装置において、前記推定部は、水平方向において前記2個の熱検出素子が並べられている第1直線を基準とした方向、又は、前記第1直線に交差する第2直線を基準とした方向を、前記火災の発生方向として推定する。
【0169】
付記4の火災検出装置は、付記1から3の何れか一項に記載の火災検出装置において、前記推定部は、前記2個の熱検出素子各々によって検出される温度上昇の相関に基づいて、前記火災の発生方向を推定する。
【0170】
(付記の効果)
付記1に記載の火災検出装置によれば、2個の熱検出素子の検出結果に基づいて、火災検出装置を基準とした火災の発生方向を推定することにより、例えば、火災の発生方向を推定することが可能となる。また、熱気流の流れを制御する制御構造を備えることにより、例えば、熱気流の流れを適切に制御して各熱検出素子に供給することができるので、火災の発生方向の推定精度を向上させることが可能となる。
【0171】
付記2に記載の火災検出装置によれば、2個の熱検出素子各々は、制御構造の楕円形状又は長円形状の長軸上において、制御構造の両側に、相互に対向して設けられていることにより、例えば、熱気流の流れを適切に制御して当該熱気流を各熱検出素子に供給することができるので、火災の発生方向の推定精度を向上させることが可能となる。
【0172】
付記3に記載の火災検出装置によれば、2個の熱検出素子が並べられている第1直線を基準とした方向、又は、第1直線に交差する第2直線を基準とした方向を、火災の発生方向として推定することにより、例えば、消火又は避難等の防災支援のために有用な方向を、火災の発生方向として推定することができるので、防災支援を効率的且つ確実に行わせることが可能となる。
【0173】
付記4に記載の火災検出装置によれば、2個の熱検出素子各々によって検出される温度上昇の相関に基づいて、火災の発生方向を推定することにより、例えば、火災の発生方向の推定精度を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0174】
1 外カバー
2 内カバー
3 検煙部カバー
5 検煙部ベース
7A 第1検出素子
7B 第2検出素子
11 本体部
12 天板部
13 接続部
14 開口部
15 ラビリンス部
16 ライトガイド用開口部
21 第1開口部
22 第2開口部
23 突出部
24 ライトガイド用開口部
31 開口部
32 発光側収容部
33 受光側収容部
51 発光側収容部
52 受光側収容部
61 防虫網
62 基板
63 端子盤
64 嵌合金具
71 発光部
72 受光部
73 ライトガイド
100 感知器
151 区画壁
151A 側端部
152 間隙
200 基部
231 段部
231A 外周壁
230 長軸
230A 短軸
300 検出空間
700 検出素子
701 検出部
702 端子部
703 絶縁部材
711 発光素子
712 発光側光学素子
721 受光素子
722 受光側光学素子
801 基準線
802 基準線
803 基準線
804 基準線
805 基準線
806 基準線
807 基準線
808 基準線
809 基準線
810 基準線
811 基準線
812 基準線
813 基準線
814 基準線
815 基準線
816 基準線
817 基準線
818 基準線
819 基準線
820 基準線
821 基準線
900 天井