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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108867
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】吊持用バランス装置
(51)【国際特許分類】
   B66F 19/00 20060101AFI20230731BHJP
【FI】
B66F19/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010148
(22)【出願日】2022-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】境 久嘉
(57)【要約】
【課題】運搬機器を吊持して運搬されるワークを静かに載置させる。
【解決手段】吊持用バランス装置1は、ワークが引っ掛けられるフック部20と、運搬機器と連結される連結部30と、内部に形成された空気室51aへの空気の供給を受けて、ワークの重量を空気室51aの圧力Pcによってバランスさせるバランス部50と、支持面63に形成された空気膜65によってワークを支持する支持部60と、空気膜65の圧力Pgが伝搬され、吊持対象のワーク重量に連動する空気膜65の圧力Pgの変化に応じた空気をバランス部50に供給し空気室51aの圧力Pcを調整する圧力調整部70を備える。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを吊持して運搬可能な運搬機器と前記ワークに連結された吊持用バランス装置であって、
前記ワークが引っ掛けられるフック部と、
前記運搬機器と連結される連結部と、
内部に形成された空気室への空気の供給を受けて、前記ワークの重量を前記空気室の圧力によってバランスさせるバランス部と、
支持面に形成され圧力を有する空気膜によって前記ワークを支持する支持部と、
前記空気膜の圧力が伝搬され、前記ワークの重量に連動する前記空気膜の圧力の変化に応じた空気を前記バランス部に供給し前記空気室の圧力を調整する圧力調整部と、
を備える、吊持用バランス装置。
【請求項2】
前記圧力調整部は、前記運搬機器により前記ワークを吊り上げ保持させる際に、前記空気膜の圧力の変化に応じた空気を前記バランス部に供給し前記空気室の圧力を調整する、
請求項1に記載の吊持用バランス装置。
【請求項3】
前記圧力調整部は、作業者が前記ワークを手で支える状態で前記ワークを降下させる際に、前記空気膜の圧力の変化に応じた空気を前記バランス部に供給し前記空気室の圧力を調整する、
請求項1又は2に記載の吊持用バランス装置。
【請求項4】
前記支持部は、前記支持面として所定曲率の曲面を有し、該支持面に沿って形成された前記空気膜の圧力によって前記ワークを支持する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の吊持用バランス装置。
【請求項5】
前記支持部と前記圧力調整部を接続し、前記空気膜の圧力を前記圧力調整部に伝搬させる伝搬路を更に備える、
請求項1から4のいずれか1項に記載の吊持用バランス装置。
【請求項6】
前記バランス部は、
前記空気室を形成するシリンダと、
前記シリンダ内に設けられ、前記支持部と接続されたロッドと連結されたピストンと、
を有し、
前記支持面において前記空気膜が特定の圧力分布を伴って形成される有効面積は、前記ピストンが圧力を受ける受圧面積と同じ大きさである、
請求項1から5のいずれか1項に記載の吊持用バランス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬機器がワークを運搬する際に補助する吊持用バランス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
重量の重いワークを、例えば真円度測定装置等の測定装置に載置する場合には、人力では運搬が困難であるため、クレーン等の運搬機器が用いられている。運搬機器によるワークの運搬を補助するために、バンランサーの利用が検討されている。例えば、特許文献1には、搬送物を吊持する吊持可動手段を任意の位置にバランスさせるバランサーが利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭51-3990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、載置対象のワークが精密加工を施されていたり、精密な案内面に支持される回転テーブルのテーブル上面にワークを載置したりする場合には、接触時の衝撃によるワーク、案内面及びテーブル上面の損傷を防止するために、ワークが静かに載置されることが要求される。しかし、上述した特許文献1のバンランサーでは、作業者の弁操作が必要であり、自動でバランスさせることができない。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、運搬機器により吊持して運搬されるワークを静かに載置させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様においては、ワークを吊持して運搬可能な運搬機器と前記ワークに連結された吊持用バランス装置であって、前記ワークが引っ掛けられるフック部と、前記運搬機器と連結される連結部と、内部に形成された空気室への空気の供給を受けて、前記ワークの重量を前記空気室の圧力によってバランスさせるバランス部と、支持面に形成され圧力を有する空気膜によって前記ワークを支持する支持部と、前記空気膜の圧力が伝搬され、前記ワークの重量に連動する前記空気膜の圧力の変化に応じた空気を前記バランス部に供給し前記空気室の圧力を調整する圧力調整部と、を備える、吊持用バランス装置を提供する。
【0007】
また、前記圧力調整部は、前記運搬機器により前記ワークを吊り上げ保持させる際に、前記空気膜の圧力の変化に応じた空気を前記バランス部に供給し前記空気室の圧力を調整することとしてもよい。
【0008】
また、前記圧力調整部は、作業者が前記ワークを手で支える状態で前記ワークを降下させる際に、前記空気膜の圧力の変化に応じた空気を前記バランス部に供給し前記空気室の圧力を調整することとしてもよい。
【0009】
また、前記支持部は、前記支持面として所定曲率の曲面を有し、該支持面に沿って形成された前記空気膜の圧力によって前記ワークを支持することとしてもよい。
【0010】
また、前記支持部と前記圧力調整部を接続し、前記空気膜の圧力を前記圧力調整部に伝搬させる伝搬路を更に備えることとしてもよい。
【0011】
また、前記バランス部は、前記空気室を形成するシリンダと、前記シリンダ内に設けられ、前記支持部と接続されたロッドと連結されたピストンと、を有し、前記支持面において前記空気膜が特定の圧力分布を伴って形成される有効面積は、前記ピストンが圧力を受ける受圧面積と同じ大きさであることとしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、運搬機器により吊持して運搬されるワークを静粛に載置できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一の実施形態に係る吊持用バランス装置1の概要を説明するための模式図である。
図2】吊持用バランス装置1の構成を説明するための模式図である。
図3】支持面63の構成を説明するための図である。
図4】空気膜65の圧力分布を説明するための模式図である。
図5】圧力調整部70の内部構成を説明するための模式図である。
図6】バイアス圧力の調整を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<吊持用バランス装置の構成>
本発明の一の実施形態に係る吊持用バランス装置の構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、一の実施形態に係る吊持用バランス装置1の概要を説明するための模式図である。図2は、吊持用バランス装置1の構成を説明するための模式図である。吊持用バランス装置1は、作業者がワークWを測定装置100へ運搬する際に利用する装置である。
【0016】
測定装置100は、一例として、ワークWの真円度を測定する真円度測定装置である。測定装置100は、図1に示すように、回転テーブル110を有する。測定対象のワークWは、回転テーブル110の載置面112に載置される。測定装置100は、不図示の変位検出器等のプローブを用いて、載置面112に載置されたワークWの真円度を測定する。
【0017】
ワークWの重量が重い場合には、作業者は、人力ではワークWを運搬することが困難であるため、運搬機器であるクレーン200を介してワークWを載置面112へ運搬させる。例えば、作業者は、測定装置100に周囲に置かれたワークWを、クレーン200によって持ち上げた後に運搬して、載置面112に載置させる。
【0018】
ところで、ワークWを載置面112に載置する際には、接触時の衝撃によるワークW、案内面111及び載置面112の損傷を防止するために、ワークWを載置面112に静かに載置することが要求される。特に、ワークWが精密加工を施されている場合や、載置面112を支持する案内面111が精密な機構を伴なう場合には、ワークW、案内面111及び載置面112のいずれかが損傷すると測定精度が低下してしまうおそれがある。
【0019】
そこで、本実施形態では、任意の重量のワークWを載置面112に静かに載置させるために、吊持用バランス装置1が利用されている。吊持用バランス装置1は、図1に示すように、ワークWを吊持して測定装置100の載置面112へ運搬可能なクレーン200とワークWに連結されている。
【0020】
吊持用バランス装置1は、図2に示すように、フック部20と、連結部30と、バランス部50と、支持部60と、伝搬路68と、圧力調整部70を有する。なお、これらの構成要素は、例えば図1に示す筐体10内に配置されている。
【0021】
フック部20は、吊持用バランス装置1の下部に配置されており、バランス部50と連結されている。フック部20には、ワークWが引っ掛けられる。例えば、図1に示すように、フック部20は、ワークWに固定されたボルト22にスリング23を介して連結されている。
【0022】
連結部30は、吊持用バランス装置1の上部に配置されており、支持部60と連結されている。連結部30は、クレーン200と連結される部分である。連結部30は、ボルト32と、金属ブロック33と、ワイヤ34を有する。
【0023】
ボルト32は、図1に示すように、クレーン200のフック202と連結されている。金属ブロック33は、ボルト32が固定されている所定厚さのブロックである。ボルト32は、金属ブロック33の中央に固定されている。ワイヤ34は、複数設けられており、金属ブロック33と支持部60を連結するための部材である。
【0024】
バランス部50は、内部に形成された空気室51aへの空気の供給を受けて、ワークWの重量を空気室51aの圧力によってバランスさせる。空気は、例えば、コンプレッサ(不図示)から供給路67および圧力調整部70を経由し供給路57を介して供給される。圧力調整部70の上流の供給路67には、空気の供給を調整する空気供給ユニットが設けられていてもよく、当該空気供給ユニットは、エアフィルタ、ミストセパレータ、レギュレータ等を含みうる。バランス部50は、図2に示すように、シリンダ51と、ピストン52と、パイプロッド53と、バネ部材54を有する。
【0025】
シリンダ51は、円筒部材であり、空気室51aを形成している。空気室51aは、空気によって加圧される加圧室である。シリンダ51の下部のキャップ51bにフック部20が固定されている。
【0026】
ピストン52は、シリンダ51内に配置されている。本実施形態では、シリンダ51がピストン52に対して上下動する。具体的には、シリンダ51は、圧力調整部70から空気室51aへの空気の供給を受けて、ワークWの重量とバランスするようにピストン52に対して上下動する。
【0027】
パイプロッド53は、内部を空気が通過するように中空のパイプ形状となっている。パイプロッド53の一端部はピストン52に連結し、パイプロッド53の他端部は支持部60に連結されている。パイプロッド53は、シリンダ51のヘッド部51cを挿通するように配置されている。また、パイプロッド53の一端側には、空気室51aと連通するための連通口53aが形成されている。パイプロッド53の他端は、供給路57と接続されている。これにより、供給路57からの空気が、連通口53aを介して空気室51aに流入する。
【0028】
バネ部材54は、コイル状に成形されて空気室51aにおいてパイプロッド53の周囲に配置されている。バネ部材54の一端部はピストン52に接している。バネ部材54の他端部はパイプロッド53に沿って伸縮自在に案内される。例えば、作業停止などの理由で空気室51a内の空気圧が低下し、シリンダ51が自重で降下する時、バネ部材54は緩衝機能を発揮し、バネ部材54の他端部でヘッド部51cを受ける。
【0029】
支持部60は、バランス部50を介してワークWを支持する。支持部60は、バランス部50の上方に配置されている。支持部60は、パイプロッド53と連結しており、パイプロッド53を介してバランス部50を吊持する。支持部60は、図2に示すように、連結部材61と、エアパッド62と、支持面63を有する。
【0030】
連結部材61及びエアパッド62は、上下で対向するように配置されている。連結部材61は、パイプロッド53の他端部と連結されている。連結部材61は、半球状に形成されている。連結部材61の下面である対向面61aは、所定曲率で湾曲した凸状の曲面となっている。
【0031】
エアパッド62は、上面である支持面63が所定曲率で湾曲した凹状の曲面に成形され、連結部材61の下面である対向面61aに所定間隔だけ離れて対向するように配置されている。
【0032】
エアパッド62の上面である支持面63と連結部材61の対向面61aとの間の隙間に、供給路67から供給孔63bを経由して圧縮空気が供給されて、後述の圧力分布を有する空気膜65が形成されることにより、静圧空気軸受が構成される。これによって、エアパッド62は、連結部材61及びパイプロッド53を介してワークWを非接触で支持する。
【0033】
支持面63と対向面61aが、それぞれ所定の曲率で湾曲した凹曲面と凸曲面となっていることで、連結部材61をエアパッド62に対してセンタリングし易いと共に、連結部材61がエアパッド62に対してずれることを防止できる。
【0034】
図3は、支持面63の構成を説明するための図である。支持面63は、ここでは円形状となっている。支持面63には、給気溝63a、供給孔63b、連通孔63cが形成されている。
【0035】
給気溝63aは、支持面63において環状に形成された細い溝である。給気溝63aには供給路67から供給孔63bを経由して圧縮空気が供給され、環状の給気溝63aに沿ってほぼ均一な圧力Pgが形成される。
図4は、支持面63に沿って形成される空気膜65の圧力分布を説明するための模式図である。なお、図4では、ワークWの重量が大きい場合の圧力Pgの環状の分布が実線で示され、ワークWの重量が小さい場合の圧力Pgの環状の分布が破線で示されている。環状の圧力分布において、圧力Pgは、支持面63の外周縁辺および内周縁辺に向かってなだらかに大気圧Paまで降下する様態を示す。また、圧力Pgは、支持面63が支持するワークWの重量と連動する。ここでは、ワークWの重量が大きくなると圧力PgはPg_2に上昇し、ワークWの重量が小さくなると圧力PgはPg_1に降下する。
【0036】
供給孔63bは、剛性を備える空気膜65を形成するための絞りの機能を有しており、連通する給気溝63aに圧縮空気を供給するための孔である。供給孔63bは、ここでは、120度間隔で3つ設けられている。これにより、上述の通り環状の給気溝63a内においてほぼ均一な圧力Pgが得られる。上述の給気溝63a内のワークWの重量と連動する圧力Pgに対して、支持面63における軸受有効面積Ae(支持面63の実面積内における圧力分布で決まる定数)が設定され、下記の式(1)が成立する。
ワークWの重量=軸受有効面積Ae×圧力Pg ・・式(1)
【0037】
ここで、バランス部50のピストン52が圧力を受ける面積を受圧面積Ap(定数)とし、空気室51aの圧力をPcとするとき、下記の式(2)が成立する。
ワークWの重量=受圧面積Ap×圧力Pc ・・式(2)
【0038】
さらに、軸受有効面積Aeと受圧面積Apを同じ大きさ(軸受有効面積Ae=受圧面積Ap)に設計することにより、下記の式(3)が得られる。
圧力Pg=圧力Pc ・・式(3)
【0039】
連通孔63cは、給気溝63aにおいて供給孔63bとは異なる位置に設けられている。連通孔63cは、給気溝63a内の圧力Pgを伝搬路68へ案内するための孔である。
【0040】
エアパッド62の外縁には、図3に示すように、つまみ部62aが複数(ここでは、3つ)設けられている。つまみ部62aには、図2に示すように、金属ブロック33に連結されたワイヤ34が係合している。
【0041】
伝搬路68は、図2に示すように支持部60と圧力調整部70とを接続しており、支持面63の空気膜65の給気溝63a内の圧力Pgを圧力調整部70に伝搬させる。ワークWの重量が変わると、式(1)に従って圧力Pgが変動して圧力調整部70に伝搬される。
【0042】
圧力調整部70は、バランス部50の空気室51aの圧力を調整する機能を有する。圧力調整部70は、供給路67の下流に設けられており、出力口となる供給路57を経由した空気室51aへの空気の供給を調整する。例えば、圧力調整部70は、空気室51aの圧力Pcが式(2)により所定圧になるように、空気室51aに空気を供給する。
【0043】
また、圧力調整部70は、伝搬路68を介して支持部60と接続されており、圧力調整部70には支持部60の空気膜65の給気溝63a内の圧力Pgが伝搬される。圧力調整部70は、伝搬される圧力Pgの変化に応じた空気をバランス部50に供給し、空気室51aの圧力Pcを調整する。このように給気溝63a内の圧力Pgが圧力調整部70に伝搬されることで、圧力調整部70は、ワークWの重量の増減に伴い式(1)に従って圧力Pgが変化し、自動で空気室51aの圧力Pcを調整する。上述のように、支持面63において空気膜65が有する所定の圧力分布に従って形成される軸受有効面積Aeが、ピストン52が圧力を受ける受圧面積Acと同じ大きさであるため、ワークWの重量に応じた空気室51aの圧力Pcを調整することで、ワークWの重量をバランスさせることが可能になる。
【0044】
圧力調整部70は、ワークWを載置面112に載置させる際に、空気膜65の給気溝63a内の圧力Pgの変化に応じた空気をバランス部50に供給し空気室51aの圧力Pcを調整する。ワークWが載置面112に接触し始めてから載置面112への載置が完了するまでに、支持部60に作用する負荷が変化するが、その際に負荷変動を抑制するように空気室51aの圧力Pcを調整することで、ワークWを載置面112に円滑かつ静かに載置させることができる。
同様に、圧力調整部70は、ワークWを持ち上げる際にも、空気膜65の圧力分布の変化に応じた空気をバランス部50に供給し空気室51aの圧力を調整する。例えば、運搬機器であるクレーン200で測定装置100の周囲に置かれたワークWを持ち上げる力を加え始めてから完全に持ち上げるまで、支持部60に作用する負荷が変化するが、空気室51aの圧力Pcを調整することで持ち上げる際にもバランスを自動でとることができる。
【0045】
圧力調整部70は、作業者がワークWを手で支える状態でワークWを載置面112に向けて下降させる際に、空気膜65の圧力の変化に応じた空気をバランス部50に供給し空気室51aの圧力を調整してもよい。例えば、作業者がワークWに手を添えて過大な力で降下方向の加速度を上げようとすると、空気膜65の圧力も上昇するが、これに連動してバランス部50の空気室51aの圧力も上昇する。このため、上述の過大な力に対抗する力が発生し、ワークWの載置面112への衝撃的な接触を抑制できる。
【0046】
図5は、圧力調整部70の内部構成を説明するための模式図である。図5に示す圧力調整部70は、ここでは、高精度な圧力調整が可能なリレー式の圧力調整弁である。当該圧力調整弁は、第2入口71cからの入力と出口71bからの出力の比を1:1にリレー制御可能であり、正負のバイアス調整も可能である。圧力調整部70は、図5に示すように、第1入口71aと、出口71bと、第2入口71cと、コントロール室72と、カプセル部73と、パイロット弁74と、ダイヤフラム75a、75bと、主弁76aと、リリーフ弁76bと、バイアス調整ネジ77を有する。
【0047】
第1入口71aは、コンプレッサからの空気(当該空気の圧力を一次圧力と呼ぶ)が供給路67を経由して流入する開口である。出口71bは、バランス部50に供給される空気(当該空気の圧力を二次圧力と呼ぶ)が流出する開口である。第2入口71cは、伝搬路68と接続されており、空気膜65の給気溝63a内の圧力Pg(当該圧力を入力圧力と呼ぶ)が伝搬される(入力される)開口である。
【0048】
コントロール室72は、バランス部50の圧力Pcを調整するための部屋である。コントロール室72内の圧力は、バランス部50の空気室51aの圧力Pcと同じである。
【0049】
カプセル部73は、コントロール室72内に膨張・収縮可能に設けられ、給気溝63a内の圧力Pgが伝搬される部屋である。カプセル部73内の圧力は、給気溝63a内の圧力Pgと同じである。カプセル部73の圧力がコントロール室72の圧力よりも大きい場合には、カプセル部73が膨張し、カプセル部73の圧力がコントロール室72の圧力よりも小さい場合には、カプセル部73が収縮する。
【0050】
パイロット弁74は、カプセル部73と連結しており、カプセル部73の膨張・収縮に連動して移動する。例えば、カプセル部73が膨張するとパイロット弁74が下方へ移動し、コントロール室72の空気がパイロット室78に流入する。
【0051】
ダイヤフラム75aは、パイロット室78に設けられており、ダイヤフラム75bは、コントロール室72に設けられている。パイロット室78に上方のコントロール室72から空気が流入すると、一対のダイヤフラム75a、75bが空気の圧力によって下方に移動する。
【0052】
主弁76a及びリリーフ弁76bは、互いに連結しており、ダイヤフラム75a、75bの移動に連動して上下に移動可能となっている。例えば、ダイヤフラム75a、75bが下方へ移動すると、主弁76aも下方へ移動し、第1入口71aからの空気がコントロール室72に流入する。
【0053】
バイアス調整ネジ77は、二次圧力の入力圧力に対するバイアスを調整するためのネジである。通常、二次圧力は、入力圧力に対してゼロバイアスに設定されている。バイアス調整ネジ77を操作することで、例えば、図6に示すように、バイアス圧力を0.2MPa増加させたり、バイアス圧力を0.2MPa減少させたりすることができる。図6は、バイアス圧力の調整を説明するための図である。
【0054】
<本実施形態における効果>
本実施形態に係る吊持用バランス装置1は、図2に示すように、内部に形成された空気室51aへの空気の供給を受けてワークWの重量を空気室51aの圧力Pcによってバランスさせるバランス部50と、支持面63に形成された図4に示す特定の圧力分布を有する空気膜65によってワークWを支持する支持部60とを有する。さらに、吊持用バランス装置1は、空気膜65の給気溝63a内の圧力Pgが伝搬され、ワークWの重量に連動する圧力Pgの変化に応じた空気をバランス部50に供給し空気室51aの圧力Pcを調整する圧力調整部70を有する。
上記の構成を有することによって、ワークWの重量の変化があると、重量変化に伴う圧力Pgの変化が圧力調整部70に伝搬される。このため、ワークWの重量とバランスされる空気室51aの圧力Pcが絶えず自動で調整されることになる。この結果、運搬されるワークWの重量の軽重にかかわらず、任意位置において自動でバランスさせることができるので、ワークWを静かに載置させることが可能となる。
また、本実施形態の場合には、電気によるセンサ及び空気圧制御を用いることなく、機械式のみでワークWの重量とバランスする圧力Pcを自動調整する制御を行っているため、電気が不要であり、コストパフォーマンスに優れた装置を提供可能となる。
【0055】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0056】
1 吊持用バランス装置
20 フック部
30 連結部
50 バランス部
51 シリンダ
51a 空気室
52 ピストン
60 支持部
63 支持面
65 空気膜
68 伝搬路
70 圧力調整部
112 載置面
100 測定装置
200 クレーン
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6