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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023108897
(43)【公開日】2023-08-07
(54)【発明の名称】窒化ガリウム基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230731BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20230731BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20230731BHJP
【FI】
H01L21/304 611Z
H01L21/78 B
B23K26/53
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010196
(22)【出願日】2022-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長屋 正武
(72)【発明者】
【氏名】中林 正助
(72)【発明者】
【氏名】河口 大祐
(72)【発明者】
【氏名】油井 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 千秋
(72)【発明者】
【氏名】恩田 正一
(72)【発明者】
【氏名】小島 淳
【テーマコード(参考)】
4E168
5F057
5F063
【Fターム(参考)】
4E168AE01
4E168CB07
4E168CB18
4E168EA11
4E168JA12
4E168JA13
4E168JA14
4E168JA15
5F057AA14
5F057BA12
5F057BA15
5F057BB06
5F057CA02
5F057CA14
5F057CA31
5F057CA36
5F057DA03
5F057DA11
5F057DA19
5F057DA22
5F057DA31
5F057FA15
5F057FA22
5F057FA30
5F063AA37
5F063BA07
5F063BA20
5F063BA31
5F063BA33
5F063BA43
5F063CB03
5F063CB07
5F063CB28
5F063CC49
5F063DD59
5F063DD68
5F063DD85
5F063EE07
5F063EE22
5F063EE43
5F063EE44
(57)【要約】
【課題】製造時間の短縮化を図ることができるGaN基板の製造方法を提供する。
【解決手段】第1主面10aおよび第1主面10aと反対側の第2主面10bを有するGaNウェハ10を用意することと、GaNウェハ10の第2主面10bから当該GaNウェハ10の内部にレーザ光Lを照射することにより、GaNウェハ10の面方向に沿った変質層11を形成することと、変質層11を境界としてGaNウェハ10を分割することにより、GaNウェハ10からGaN基板を製造することとを行う。そして、GaNウェハ10を用意することでは、六方晶で構成され、第1主面10aおよび第2主面10bが{1-100}m面とされたGaNウェハ10を用意し、変質層11を形成することでは、GaNウェハ10の内部に変質層を構成するための照射痕が形成されるようにレーザ光Lを照射して変質層11を形成する。
【選択図】図1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ガリウムウェハ(10)から窒化ガリウム基板(100)を製造する窒化ガリウム基板の製造方法であって、
第1主面(10a)および前記第1主面と反対側の第2主面(10b)を有する前記窒化ガリウムウェハを用意することと、
前記窒化ガリウムウェハの第2主面から当該窒化ガリウムウェハの内部にレーザ光(L)を照射することにより、前記窒化ガリウムウェハの面方向に沿った変質層(11)を形成することと、
前記変質層を境界として前記窒化ガリウムウェハを分割することにより、前記窒化ガリウムウェハから前記窒化ガリウム基板を製造することと、を行い、
前記窒化ガリウムウェハを用意することでは、六方晶で構成され、前記第1主面および前記第2主面が{1-100}m面とされた前記窒化ガリウムウェハを用意し、
前記変質層を形成することでは、前記窒化ガリウムウェハの内部に前記変質層を構成するための照射痕(La)が形成されるように前記レーザ光を照射して前記変質層を形成する窒化ガリウム基板の製造方法。
【請求項2】
前記窒化ガリウムウェハを分割することの後、分割された2つの面のうちの少なくとも一方の面を平坦化することを行う請求項1に記載の窒化ガリウム基板の製造方法。
【請求項3】
前記変質層を形成することでは、前記レーザ光が前記窒化ガリウムウェハの面方向における一方向を走査方向として走査されるようにし、前記照射痕が形成されるように、前記走査方向とa軸方向との成す角度(θ)を60°未満とする請求項1または2に記載の窒化ガリウム基板の製造方法。
【請求項4】
前記変質層を形成することでは、前記レーザ光が前記窒化ガリウムウェハの面方向における一方向を走査方向として走査されるようにし、前記照射痕が形成されるように、前記走査方向とa軸方向との成す角度(θ)を50°未満とする請求項1または2に記載の窒化ガリウム基板の製造方法。
【請求項5】
前記変質層を形成することでは、前記レーザ光が前記窒化ガリウムウェハの面方向における一方向を走査方向として走査されるようにし、前記照射痕が形成されるように、前記走査方向とa軸方向との成す角度(θ)を30°未満とする請求項1または2に記載の窒化ガリウム基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化ガリウム(以下では、単にGaNともいう)ウェハを分割してGaN基板を製造するGaN基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、GaNウェハを分割してGaN基板を製造する製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、この製造方法では、第1主面および第2主面を有するGaNウェハを用意し、第1主面または第2主面からレーザ光を照射してGaNウェハの内部に、GaNウェハの面方向に沿った変質層を形成する。そして、この製造方法では、変質層を境界としてGaNウェハを分割することでGaN基板を製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-57103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の製造方法では、第1主面および第2主面の面方位が特に規定されていない。そして、本発明者らの検討によれば、第1主面および第2主面を一般的に用いられる{0001}c面とし、このc面に沿って変質層を形成した場合、GaN基板を製造するための製造時間が長くなる可能性があることが確認された。
【0005】
本発明は上記点に鑑み、製造時間の短縮化を図ることができるGaN基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1では、GaNウェハ(10)からGaN基板(100)を製造するGaN基板の製造方法であって、第1主面(10a)および第1主面と反対側の第2主面(10b)を有するGaNウェハを用意することと、GaNウェハの第2主面から当該GaNウェハの内部にレーザ光(L)を照射することにより、GaNウェハの面方向に沿った変質層(11)を形成することと、変質層を境界としてGaNウェハを分割することにより、GaNウェハからGaN基板を製造することと、を行い、GaNウェハを用意することでは、六方晶で構成され、第1主面および第2主面が{1-100}m面とされたGaNウェハを用意し、変質層を形成することでは、GaNウェハの内部に変質層を構成するための照射痕(La)が形成されるようにレーザ光を照射して変質層を形成する。
【0007】
これによれば、第1主面および第2主面がm面で構成されるGaNウェハを用意し、レーザ光を照射してGaNウェハの面方向(すなわち、m面)に沿った変質層を形成するため、GaN基板の製造時間の短縮化を図ることができる。
【0008】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】第1実施形態におけるGaN基板の製造工程を示す断面図である。
図1B図1Aに続くGaN基板の製造工程を示す断面図である。
図1C図1Bに続くGaN基板の製造工程を示す断面図である。
図1D図1Cに続くGaN基板の製造工程を示す断面図である。
図1E図1Dに続くGaN基板の製造工程を示す断面図である。
図1F図1Eに続くGaN基板の製造工程を示す断面図である。
図2】GaNウェハの結晶方位を説明するための図である。
図3】レーザ光をGaNウェハに照射する際のレーザ光の経路を示す模式図である。
図4図3中の領域IVに照射されたレーザ光によって形成される照射痕およびウェハ用変質層を示す模式図である。
図5】a軸方向との成す角度、レーザ光の合計出力、および照射痕の関係を示す図である。
図6A】a軸方向と走査方向との成す角度が0°である場合の照射痕を示す模式図である。
図6B】a軸方向と走査方向との成す角度が10°である場合の照射痕を示す模式図である。
図6C】a軸方向と走査方向との成す角度が20°である場合の照射痕を示す模式図である。
図7】比較例におけるウェハ用変質層を構成するための照射痕を示す模式図である。
図8A】第1実施形態の製造方法で分割した面を示す模式図である。
図8B】比較例の製造方法で分割した面を示す模式図である。
図9A】第2実施形態におけるGaN基板の製造工程を含む半導体チップの製造工程を示す断面図である。
図9B図9Aに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
図9C図9Bに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
図9D図9Cに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
図9E図9Dに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
図9F図9Eに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
図9G図9Fに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
図9H図9Gに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
図9I図9Hに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
図9J図9Iに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
図9K図9Jに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
図10】GaNウェハの平面模式図である。
図11A】チップ用変質層を形成せずにウェハ用変質層を形成した場合の模式図である。
図11B】チップ用変質層を形成した後にウェハ用変質層を形成した場合の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態におけるGaN基板100の製造方法について、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態のGaN基板100は、例えば、自動車等の車両に搭載され、車両用の各種電子装置を駆動するための半導体装置を構成するのに適用されると好適である。また、以下では、結晶の方位を示す場合、本来ならば所望の数字の上にバー(-)を付すべきであるが、電子出願に基づく表現上の制限が存在するため、本明細書では所望の数字の前にバーを付している。
【0012】
まず、本実施形態では、図1Aに示されるように、第1主面10aおよび第2主面10bを有し、バルクウェハ状とされているGaNウェハ10を用意する。本実施形態のGaNウェハ10は、六方晶単結晶ウェハとされており、結晶方位が図2のようになる。そして、本実施形態のGaNウェハ10は、第1主面10aおよび第2主面10bが{1-100}m面とされると共に第1主面10aおよび第2主面10bの面方向における一方向が〈0001〉方向に沿ったc軸方向やa軸方向に沿った方向とされている。なお、例えば、第1主面10aおよび第2主面10bを(1-100)m面とする場合には、[0001]c軸方向や[0010]a軸方向がm面の面方向に沿った方向となる。また、本実施形態では、後述するように、第2主面10b側からレーザ光Lが照射されるため、第2主面10bが鏡面加工等によって鏡面とされている。鏡面加工は、例えば、グラインダーを用いた研磨や、CMP(Chemical Mechanical Polishingの略)等の研磨によって行われる。さらに、本実施形態のm面とは、若干の製造誤差等を含むものであり、例えば、m面に対して±3°傾いた面も含むものである。言い換えると、本実施形態の第1主面10aおよび第2主面10bは、m面となるように形成された面ともいえる。
【0013】
次に、図1Bに示されるように、GaNウェハ10の第1主面10a側に保持部材20を配置する。保持部材20は、例えば、基材21と粘着剤22とを有するダイシングテープ等が用いられる。基材21は、製造工程中に反り難い材料で構成され、例えば、ガラス、シリコン基板、セラミックス等で構成される。粘着剤22は、粘着力を変化させることができる材料で構成され、例えば、温度や光によって粘着力が変化するものが用いられる。この場合、粘着剤22は、例えば、紫外線硬化樹脂、ワックス、両面テープ等で構成される。
【0014】
続いて、図1Cに示されるように、GaNウェハ10の第2主面10bからレーザ光Lを照射し、GaNウェハ10の第1主面10aから所定深さDとなる位置に、GaNウェハ10の面方向(すなわち、m面)に沿ったウェハ用変質層11を形成する。本実施形態では、この工程では、レーザ光Lを発振するレーザ光源、レーザ光源から出力されたレーザ光Lを変調する空間光変調器、空間光変調器によって変調されたレーザ光Lを集光する集光レンズ、変位可能なステージ等を有するレーザ装置を用意する。なお、空間光変調器は、例えば反射型液晶(LCOS:Liquid Crystal on Siliconの略)等で構成される。
【0015】
そして、ウェハ用変質層11を形成する際には、GaNウェハ10をステージに載置し、レーザ光Lの集光点がGaNウェハ10の面方向に沿って相対的に走査されるように、ステージ等の位置を調整する。本実施形態では、図3に示されるように、GaNウェハ10の面方向における一方向をX軸方向とすると共にX軸方向と直交する方向をY軸方向とすると、レーザ光Lは、次のように走査される。すなわち、レーザ光Lは、X軸方向に沿って走査された後、Y軸方向にずらされてから再びX軸方向に沿って走査される。このため、レーザ光Lの走査方向とは、言い換えると、X軸方向に沿った方向ともいえる。
【0016】
また、本実施形態では、レーザ光Lは、X軸方向に沿って走査される際、図4に示されるように、複数の照射痕Laがm面の面方向におけるY軸方向に沿って同時に形成されるようにGaNウェハ10に照射される。なお、照射痕Laとは、レーザ光が照射されることで形成される痕のことである。特に限定されるものではないが、本実施形態では、m面の面方向におけるY軸方向に沿って6個の照射痕Laが同時に形成されるように、6点分岐させたレーザ光LをGaNウェハ10に照射する。そして、このようにm面の面方向に沿って複数の照射痕Laが同時に形成されるようにレーザ光Lを照射することにより、製造時間の短縮化を図ることができる。
【0017】
但し、レーザ光Lを照射する場合には、具体的には後述するが、図4に示されるように、レーザ光Lを照射した位置に照射痕Laが形成される条件で行う。また、図4は、具体的には後述するが、レーザ光Lをa軸方向と平行な方向に沿って走査させた場合の結果に基づく模式図である。
【0018】
そして、GaNウェハ10には、レーザ光Lが照射されて照射痕Laが形成されることにより、照射痕Laが形成された部分の周囲に、熱エネルギーによってガリウムと窒素とが分解された改質層11aが形成される。より詳しくは、レーザ光Lを照射することにより、窒素がガスとして蒸発すると共にガリウムが析出された改質層11aが形成される。また、GaNウェハ10には、改質層11aからm面の面方向に沿って伝搬するクラック11bが形成される。これにより、GaNウェハ10の内部には、改質層11aとクラック11bとによって構成されるウェハ用変質層11が形成される。そして、本発明者らの検討によれば、本実施形態におけるGaNウェハ10のような六方晶構造である場合、クラックは、m面の面方向のうちのc軸方向に沿って伝搬され易いことが確認されている。
【0019】
なお、図4は、クラック11bによってY軸方向に隣合う改質層11aが繋がるように、Y軸方向に隣合う照射痕Laの間隔が調整された模式図を示している。また、図4は、6点分岐させたレーザ光Lを照射した場合の結果に基づく模式図であり、パルスピッチ(すなわち、a軸方向の照射痕Laの間隔)を3μm、送り速度を150mm/sとした結果に基づく模式図である。
【0020】
ここで、照射痕Laについて本発明者らがさらに詳細に検討したところ、図5に示される結果が得られた。なお、図5は、a軸方向との成す角度、レーザ光Lの合計出力、照射痕Laの有無を示した結果である。図5において、a軸方向との成す角度とは、レーザ光Lの走査方向(すなわち、X軸方向)とa軸方向との成す角度θのことであり、例えば、図6A図6Cに示される角度θのことである。図6Aは、成す角度θが0°である場合の照射痕Laおよび改質層11aの模式図であり、図6Bは、成す角度θが10°である場合の照射痕Laおよび改質層11aの模式図であり、図6Cは、成す角度θが20°である場合の照射痕Laおよび改質層11aの模式図である。但し、図6A図6Cでは、クラック11bを省略して示している。また、図5において、レーザ光Lの合計出力は、複数分岐させたレーザ光Lの合計出力である。例えば、本実施形態のようにレーザ光Lを6点分岐させた場合には、6点分岐させたレーザ光Lの合計出力である。
【0021】
図5に示されるように、本発明者らの検討によれば、明確な原理は明らかではないが、a軸方向と走査方向との成す角度θが60°以上となると、合計出力が1.0μJ以下の場合、照射痕Laが形成されない場合があることが確認された。また、a軸方向と走査方向との成す角度θが50°以上となると、合計出力が0.6μJ以下の場合、照射痕Laが形成されない場合があることが確認された。a軸方向と走査方向との成す角度θが30°以上となると、合計出力が0.4μJ以下の場合、照射痕Laが形成されない場合があることが確認された。なお、照射痕Laが形成されないとは、改質層11aおよびクラック11bも形成されないことであり、レーザ光Lを照射してもウェハ用変質層11が形成されないことである。
【0022】
したがって、本実施形態では、レーザ光Lを照射する際、レーザ光Lを照射した位置に照射痕Laが形成されるようにレーザ光Lを照射する。具体的には、上記のように、レーザ光Lを走査する場合、照射痕Laは、a軸方向と走査方向との成す角度θに依存して形成されるか否かが変化する。そして、照射痕Laが形成される条件は、a軸方向と走査方向との成す角度θが60°以上である場合、50°以上である場合、30°以上である場合で必要なレーザ光Lの合計出力が変化する。つまり、照射痕Laが形成される条件において、a軸方向と走査方向との成す角度θは、60°、50°、30°が境界角度となる。したがって、本実施形態では、レーザ光Lの合計出力に応じてa軸方向と走査方向との成す角度θを調整し、レーザ光Lを走査した際に照射痕Laが形成されるようにする。詳しくは、レーザ光Lの合計出力に応じ、a軸方向と走査方向との成す角度θを60°以上、60°未満、50°未満、30°未満のいずれかの範囲で調整する。そして、a軸方向と走査方向との成す角度θを60°未満で調整する場合には、a軸方向と走査方向との成す角度θを60°以上とする場合と比較して、レーザ光Lの合計出力を低くしても照射痕Laが形成される場合があり、この場合には、レーザ装置側の構成や調整等を簡略化できる。
【0023】
次に、図1Dに示されるように、GaNウェハ10の第2主面10b側に補助部材30を配置する。なお、補助部材30は、例えば、保持部材20と同様に、基材31と、粘着力を変化させることのできる粘着剤32とで構成される。この場合、補助部材30における基材は、例えば、ガラス、シリコン基板、セラミックス等で構成され、補助部材30における粘着剤32は、例えば、紫外線硬化樹脂、ワックス、両面テープ等で構成される。
【0024】
そして、図1Eに示されるように、保持部材20および補助部材30を把持してGaNウェハ10の厚さ方向に引張力等を印加し、ウェハ用変質層11を境界(すなわち、分割の起点)としてGaNウェハ10を分割する。そして、分割した一方をGaN基板100とする。本実施形態では、保持部材20に支持されている部分をGaN基板100とする。以下、GaNウェハ10のうちのGaN基板100が分割された面を新たなGaNウェハ10の第1主面10aとする。また、GaN基板100のうちのGaNウェハ10から分割された面をGaN基板100の他面100bとする。
【0025】
その後、図1Fに示されるように、GaNウェハ10の第1主面10aおよびGaN基板100の他面100bに対して研磨装置40等を用いたCMP(Chemical Mechanical Polishingの略)法を行うことにより、当該第1主面10aおよび他面100bを平坦化する。本実施形態では、このようにしてGaNウェハ10からGaN基板100が製造される。そして、このGaN基板100に各種の半導体素子が形成されてチップ単位に分割されることにより、GaN基板100を用いた半導体装置が製造される。また、新たなGaNウェハ10は、再び図1A以降の工程が繰り返されて複数枚のGaN基板100を製造するのに利用される。
【0026】
以上説明した本実施形態によれば、第1主面10aおよび第2主面10bがm面で構成されるGaNウェハ10を用意し、レーザ光Lを照射してGaNウェハ10の面方向(すなわち、m面)に沿ったウェハ用変質層11を形成している。そして、ウェハ用変質層11を起点としてGaNウェハ10を分割することでGaN基板100を製造している。このため、GaN基板100を製造する際の製造時間の短縮化を図ることができる。以下、第1主面10aおよび第2主面10bが{0001}c面とされ、c面に沿ってウェハ用変質層11を形成してGaNウェハ10からGaN基板100を製造する場合を比較例の製造方法とする。そして、本実施形態の効果を比較例の製造方法と対比しながら具体的に説明する。
【0027】
まず、本実施形態の製造方法によれば、本発明者らの検討では、深さDを200μmとし、送り速度を150mm/sとし、レーザ光Lの合計出力を1.0μJとし、レーザ光Lを6点分岐させてウェハ用変質層11を形成した場合、2インチのGaNウェハ10からGaN基板100を分割するのに要した時間が15分であることが確認された。
【0028】
一方、比較例の製造方法のようにc面に沿ったウェハ用変質層11を形成する場合には、クラック11bがm面に沿って形成され易いと共にc面に沿って形成され難いため、図7に示されるようにすることが好ましい。すなわち、最初にレーザ光Lを照射することで形成される照射痕を主照射痕Laとすると共に主照射痕Laの周囲に形成される改質層を主改質層11aとする。この場合、比較例の製造方法では、主改質層11aの間を含む位置に、追加のレーザ光Lを照射して追加照射痕Lbおよび追加改質層111bが形成されるようにすることが好ましい。なお、図7における主照射痕Laは、本実施形態における照射痕Laと同等のものと捉えることができる。つまり、比較例の製造方法では、本実施形態の製造方法と比較すると、追加照射痕Lbを形成するためのレーザ光Lを照射する時間が余分に必要となる。
【0029】
そして、本発明者らの検討では、比較例の製造方法でGaN基板100を製造する場合、深さDを200μmとし、送り速度を150mm/sとし、主照射痕Laを形成するためのレーザ光Lの合計出力を1.4μJとし、追加照射痕Lbを形成するためのレーザ光の合計出力を0.6μJとすると、2インチのGaNウェハ10からGaN基板100を分割するのに要した時間が300分であることが確認された。このため、本実施形態のGaN基板100の製造方法によれば、製造時間を十分に短縮することができる。
【0030】
(1)本実施形態では、GaNウェハ10の面方向(すなわち、m面)に沿ったウェハ用変質層11を形成している。そして、上記のように、ウェハ用変質層11を構成するクラック11bはm面に沿って延設され易い。このため、図8Aに示されるように、本実施形態のようにm面に沿ってウェハ用変質層11を形成した場合には、分割した各面10a、100bの平均表面粗さRaが0.26μmであり、最大凹凸差が2.3μmであることが確認された。一方、図8Bに示されるように、c面に沿ってウェハ用変質層11を形成した比較例では、分割した各面10a、100bの平均表面粗さRaが2.9μmであり、最大凹凸差が22.9μmであることが確認された。なお、最大凹凸差とは、基準面に対して最大凸部となる部分の高さと、基準面に対して最大凹部となる部分の深さとの差のことである。このため、本実施形態の製造方法によれば、比較例の製造方法と比較すると、表面粗さを1/10程度にできる。
【0031】
したがって、本実施形態の製造方法によれば、図1Fの工程を行う際、平坦化する際に除去するGaNを低減できるため、材料損失を低減することもできる。さらに、平坦化する際に除去するGaNを低減できるため、平坦化する際の製造時間も短縮化できる。なお、図8Bは、図7のように主照射痕Laおよび追加照射痕Lbを形成してウェハ用変質層11を形成し、このウェハ用変質層11を境界として分割した面の模式図である。
【0032】
(2)本実施形態では、照射痕Laが形成されるように、レーザ光Lの走査方向とa軸方向との成す角度θを調整する。このため、適切にウェハ用変質層11を形成することができる。この場合、例えば、走査方向とa軸方向との成す角度θを60°未満とした場合には、a軸方向と走査方向との成す角度θを60°以上とする場合と比較して、レーザ光Lの合計出力を低くしても照射痕Laが形成される場合があり、レーザ装置側の構成や調整等を簡略化できる。
【0033】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、GaNウェハ10の構成を変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0034】
本実施形態では、まず、図9Aに示されるように、一面50aおよび他面50bを有し、バルクウェハ状とされたGaNで構成される基礎ウェハ50を用意する。なお、基礎ウェハ50は、六方晶単結晶ウェハとされており、結晶方位は、図2のようになる。そして、本実施形態の基礎ウェハ50は、一面50aおよび他面50bが{1-100}m面とされると共に第1主面10aおよび第2主面10bの面方向における一方向が〈0001〉方向に沿ったc軸方向やa軸方向に沿った方向とされている。また、本実施形態の基礎ウェハ50は、例えば、シリコン、酸素、ゲルマニウム等がドーパントされ、不純物濃度が5×1017~5×1019cm-3とされている。基礎ウェハ50の厚みについては任意であるが、例えば400μm程度のものを用意している。
【0035】
次に、図9Bに示されるように、基礎ウェハ50の一面50a上に、10~60μm程度のGaNで構成されるエピタキシャル膜60を形成することにより、複数のチップ形成領域RAが切断ラインSLで区画されるGaNウェハ10を用意する。本実施形態では、エピタキシャル膜60は、n型エピタキシャル層61と、n型エピタキシャル層62とがGaNウェハ10側から順に成膜されて構成される。例えば、n型エピタキシャル層61は、シリコン、酸素、ゲルマニウム等がドーパントされ、不純物濃度が5×1017~1×1018cm-3程度とされる。n型エピタキシャル層62は、シリコン等がドーパントされ、不純物濃度が1×1017~4×1017cm-3程度とされる。
【0036】
なお、n型エピタキシャル層62は、後述する拡散層72等の一面側素子構成部分71が形成される部分であり、例えば、厚さが8~10μm程度とされる。n型エピタキシャル層61は、後述する半導体チップ110の厚さを確保するための部分であり、例えば、厚さが40~50μm程度とされる。n型エピタキシャル層61とn型エピタキシャル層62との厚みの大小については任意であるが、ここでは、後述する半導体チップ110の厚みを確保できるようにn型エピタキシャル層61をn型エピタキシャル層62よりも厚くしてある。
【0037】
以下では、GaNウェハ10のうちのエピタキシャル膜60側の面をGaNウェハ10の第1主面10aとし、GaNウェハ10のうちの基礎ウェハ50側の面をGaNウェハ10の第2主面10bとする。また、上記のように、基礎ウェハ50が六方晶で構成され、エピタキシャル膜60が基礎ウェハ50の第1主面10a上に成膜され、GaNウェハ10の第2主面10bが基礎ウェハ50の他面50bで構成されている。このため、GaNウェハ10は、六方晶で構成され、第1主面10aおよび第2主面10bが{1-100}m面とされて構成される。そして、各チップ形成領域RAは、GaNウェハ10の第1主面10a側に構成される。
【0038】
次に、図9Cに示されるように、一般的な半導体製造プロセスを行い、各チップ形成領域RAに、拡散層72やゲート電極73、図示しない表面電極、配線パターン、パッシベーション膜等の半導体素子における一面側素子構成部分71を形成する工程を行う。なお、ここでの半導体素子は、種々の構成のものが採用され、例えば、高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistorの略)等のパワーデバイスや、発光ダイオード等の光半導体素子が採用される。その後、必要に応じ、GaNウェハ10の第1主面10a側に、レジスト等で構成される表面保護膜を形成する。
【0039】
続いて、図9Dに示されるように、上記図1Bと同様の工程を行い、GaNウェハ10の第1主面10a側に保持部材20を配置する。
【0040】
次に、図9Eに示されるように、GaNウェハ10の第2主面10bからレーザ光Lを照射し、切断ラインSLにチップ用変質層12を形成する。本実施形態では、図10に示されるように、切断ラインSLによって囲まれる各チップ形成領域RAの平面形状は、矩形状とされている。
【0041】
本実施形態では、この工程を行う際には、上記のウェハ用変質層11を形成する際に用いるレーザ装置と同様のレーザ装置を用意する。そして、GaNウェハ10をステージに載置し、レーザ光Lの集光点が切断ラインSLに沿って相対的に走査されるように、ステージ等の位置を調整する。
【0042】
これにより、切断ラインSLには、ウェハ用変質層11と同様に、熱エネルギーによってガリウムと窒素とが分解された改質層を含むチップ用変質層12が形成される。なお、チップ用変質層12は、窒素が分離されることにより、微小な空孔が構成された状態となっている。
【0043】
また、本実施形態では、チップ用変質層12を形成する際には、ステージ等を適宜移動させ、GaNウェハ10の厚さ方向の異なる二箇所所以上の複数箇所に集光点が移動するようにレーザ光Lを照射する。この場合、GaNウェハ10の厚さ方向の異なる箇所にチップ用変質層12が形成されるが、各チップ用変質層12は、互いに離れていてもよいし、繋がっていてもよい。また、GaNウェハ10の厚さ方向の異なる二箇所以上の複数個所に集光点を移動させる場合には、GaNウェハ10の第1主面10a側から第2主面10b側に向かって集光点が移動される。
【0044】
さらに、本実施形態のチップ用変質層12は、後述する図9Fのウェハ用変質層11を形成する際、ウェハ用変質層11を形成することによって発生する窒素がチップ用変質層12の空孔を介して外部に放出できるように形成される。
【0045】
続いて、図9Fに示されるように、上記図1Cと同様の工程を行い、GaNウェハ10の第2主面10bからレーザ光Lを照射し、GaNウェハ10の第1主面10aから所定深さDとなる位置に、GaNウェハ10の面方向に沿ったウェハ用変質層11を形成する。
【0046】
この場合、本実施形態では、チップ用変質層12と交差する、またはチップ用変質層12の直下を通るようにウェハ用変質層11を形成する。これにより、本実施形態では、ウェハ用変質層11を形成する際に各チップ形成領域RAに大きな歪みが印加されることを抑制できる。
【0047】
すなわち、チップ用変質層12を形成しない場合には、図11Aに示されるように、ウェハ用変質層11を形成する際に発生した窒素が外部に放出され難いため、ウェハ用変質層11を形成したことによるGaNウェハ10の歪みが大きくなり易い。一方、本実施形態では、チップ用変質層12が形成されており、ウェハ用変質層11は、チップ用変質層12と交差する、またはチップ用変質層12の直下を通るように形成されている。このため、図11Bに示されるように、ウェハ用変質層11を形成する際に発生する窒素は、チップ用変質層12の空孔を介して外部に放出され易くなる。したがって、ウェハ用変質層11を形成したことによるGaNウェハ10の歪みが大きくなることを抑制でき、各チップ形成領域RAに印加される歪みを小さくできる。
【0048】
また、ウェハ用変質層11を形成する際の所定深さDは、後述する半導体チップ110のハンドリングのし易さや耐圧等に応じて設定され、10~200μm程度とされる。この場合、ウェハ用変質層11は、エピタキシャル膜60の厚さに応じて形成される場所が変更され、エピタキシャル膜60の内部、エピタキシャル膜60と基礎ウェハ50との境界、またはGaNウェハ10の内部のいずれかに形成される。なお、図9Fでは、エピタキシャル膜60とGaNウェハ10との境界にウェハ用変質層11を形成する例を示している。
【0049】
但し、後述するように、GaNウェハ10における基礎ウェハ50の少なくとも一部は、リサイクルウェハ80として再利用される。このため、ウェハ用変質層11は、エピタキシャル膜60の内部、またはエピタキシャル膜60と基礎ウェハ50との境界に形成されることが好ましい。また、ウェハ用変質層11が基礎ウェハ50の内部に形成される場合には、ウェハ用変質層11は、基礎ウェハ50の第1主面10a側に形成されることが好ましい。さらに、ウェハ用変質層11がエピタキシャル膜60の内部に形成される場合、ウェハ用変質層11は、半導体素子を構成するn型エピタキシャル層62ではなく、n型エピタキシャル層61の内部に形成される。
【0050】
以下では、GaNウェハ10のうちのウェハ用変質層11より第2主面10b側の部分をリサイクルウェハ80とし、GaNウェハ10のうちのウェハ用変質層11より第1主面10a側の部分をGaN基板100として説明する。
【0051】
次に、図9Gに示されるように、上記図1Dと同様の工程を行い、GaNウェハ10の第2主面10b側に補助部材30を配置する。そして、図9Hに示されるように、保持部材20および補助部材30を把持してGaNウェハ10の厚さ方向に引張力等を印加し、ウェハ用変質層11を境界(すなわち、分割の起点)としてGaNウェハ10をリサイクルウェハ80とGaN基板100とに分割する。つまり、GaNウェハ10から、各チップ形成領域RAに一面側素子構成部分71が形成されたGaN基板100を製造する。
【0052】
以下、GaN基板100のうちのリサイクルウェハ80と分割された面をGaN基板100の他面100bとし、他面100bと反対側の面をGaN基板100の一面100aとする。同様に、リサイクルウェハ80のうちのGaN基板100と分割された面をリサイクルウェハ80の一面80aとする。そして、ウェハ用変質層11がGaNウェハ10の面方向に沿って形成されているため、分割されたリサイクルウェハ80の一面80aは、m面となる。
【0053】
その後、図9Iに示されるように、リサイクルウェハ80の一面80aおよびGaN基板100の他面100bに対して研磨装置40等を用いたCMP法を行うことにより、当該一面80aおよび他面100bを平坦化する。なお、図9Iでは、GaN基板100に形成されている一面側素子構成部分71等を省略して示している。
【0054】
また、一面80aが平坦化されたリサイクルウェハ80は、再び基礎ウェハ50とされて上記図9A以降の工程を行うのに利用される。これにより、基礎ウェハ50は、後述する半導体チップ110を構成するのに複数回利用されることができる。
【0055】
その後、図9Jに示されるように、一般的な半導体製造プロセスを行い、GaN基板100の他面100bに、裏面電極を構成する金属膜92等の半導体素子における他面側素子構成部分91を形成する工程を行う。なお、他面側素子構成部分91を形成する工程を行った後、必要に応じて、金属膜92とGaNウェハ10の第2主面10bとをオーミック接触とするため、レーザアニール等の加熱処理等を行うようにしてもよい。
【0056】
続いて、図9Kに示されるように、保持部材20をエキスパンドし、チップ用変質層12を境界(すなわち、分岐の起点)として各チップ形成領域RAを分割することにより、半導体チップ110が構成される。その後、加熱処理や光を照射する等して粘着剤22の粘着力を弱まらせ、一面100a側を粘着剤22から引き剥がすように半導体チップ110をピックアップする。これにより、半導体チップ110が製造される。なお、各チップ形成領域RAを分割する前には、必要に応じ、金属膜92のうちの各チップ形成領域RAの境界にスリット等を形成しておくことにより、チップ形成領域RA毎に金属膜92を容易に分割できる。この場合、図9Jの工程において、分割される部分を覆うメタルマスクを用意し、分割される部分に金属膜92が形成されないようにしてもよい。
【0057】
以上説明したように、基礎ウェハ50とエピタキシャル膜60とを積層してGaNウェハ10を構成しても、m面に沿ってウェハ用変質層11を形成することにより、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0058】
(1)本実施形態では、基礎ウェハ50とエピタキシャル膜60とを積層してGaNウェハ10を構成しており、エピタキシャル膜60の不純物濃度等を適宜調整することにより、製造される半導体チップ110の特性を容易に変更できる。
【0059】
(2)本実施形態では、リサイクルウェハ80を再び基礎ウェハ50として利用する。このため、半導体チップ110を製造する度に基礎ウェハ50を新たに用意する必要がなく、基礎ウェハ50を有効利用できる。したがって、半導体チップ110の生産性の向上を図ることができる。
【0060】
(3)本実施形態では、ウェハ用変質層11を形成する前にチップ用変質層12を形成し、ウェハ用変質層11を形成する際には、チップ用変質層12を介してウェハ用変質層11を形成する際に発生する窒素が放出されるようにしている。このため、各チップ形成領域RAに発生する歪みを小さくでき、半導体チップ110に不具合が発生することを抑制できる。
【0061】
(他の実施形態)
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0062】
例えば、上記各実施形態において、GaNウェハ10にレーザ光Lを複数分岐させて照射する場合、分岐数は適宜変更可能であり、6点分岐未満であってもよいし、7点分岐以上であってもよい。また、GaNウェハ10にレーザ光Lを照射する場合、レーザ光を分岐させなくてもよい。
【0063】
そして、上記各実施形態において、GaNウェハ10からGaN基板100を分割した後、GaN基板100の分割された他面100bを平坦化しなくてもよい。例えば、GaN基板100に半導体素子としての光半導体素子等を形成する場合には、凹凸を残存させることにより、効果的に光を取り出すことが可能となる。
【0064】
また、上記第2実施形態において、チップ用変質層12を形成せず、ダイシングブレード等で各チップ形成領域RAが分割されるようにしてもよい。この場合、ウェハ用変質層11を形成する前に各チップ形成領域RAを分割することにより、ウェハ用変質層11を形成する際に発生する窒素を放出できる。但し、ダイシングブレード等で各チップ形成領域RAを分割する場合には、図9Jの工程を行った後に各チップ形成領域RAを分割するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10 GaNウェハ
10a 第1主面
10b 第2主面
11 ウェハ用変質層
100 GaN基板
L レーザ光
La 照射痕
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図9G
図9H
図9I
図9J
図9K
図10
図11A
図11B